説明

酸化オレフィン製造工程

【課題】本発明は、出口における酸化オレフィンの濃度が約2.2体積%より大きい、エポキシ化触媒を用いたオレフィンのエポキシ化工程である。
【解決手段】特に、本発明は、少なくともエチレンと酸素を含む供給物と改善されたエポキシ化用媒体を接触させることによるエチレンのエポキシ化工程に関する。高生産性でエポキシ化工程における選択性が改善されている触媒は、直径約0.01ミクロンから約5ミクロンの範囲の細孔を有し、微分細孔容積のピークが約0.01ミクロンから約5ミクロン範囲である第1の細孔の形態を有する表面を有する固形支持体を含む。表面は、第1の細孔の形態を有するとは異なる、直径約1ミクロンから約20ミクロンの範囲の細孔を有し、微分細孔容積のピークが約1ミクロンから約20ミクロンの範囲である第2の細孔の形態を有する。二峰性の細孔表面には、触媒作用に効果的な量の銀又は銀含有化合物、促進量のレニウム又はレニウム含有化合物、及び促進量の1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ金属含有化合物がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンと酸素からなる供給ガスと、二峰性細孔径分布を有する担体上に沈着した銀化合物及びレニウム化合物からなる触媒を接触させることによるもので、酸化オレフィンの濃度が反応器出口にて約2.2体積%より大きいことを特徴とする、オレフィンから酸化オレフィンにエポキシ化する工程に関する。特に、本発明は、高触媒作業速度でエチレンを酸化エチレンにエポキシ化するために有用な改善された触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、商業的に実践されるオレフィンのエポキシ化は、規定された処理条件下で、酸素とオレフィンからなる供給ガスと触媒を連続的に接触させることにより行われる。生成された酸化オレフィンの混合生成物と、通常の未反応の酸素及びオレフィン、且つ、全燃焼生成物には、分離工程が施され、未反応の供給ガス成分が生成物及び所望しない副生成物から分離される。
【0003】
経済的理由から、最大生産性と最高の選択性で酸化オレフィンの生成プラントが稼働するのが好ましい。生産性を最大にするためには、触媒作業速度を上げなければならず、通常、反応器出口で固定酸化オレフィン濃度での流量、即ち、気体空間速度(Gas Hourly Space Velocity)を上げて、及び/又は、オレフィンと酸素の変換率を調整することにより反応器出口での酸化オレフィン濃度を変えて行われる。
【0004】
プラントの設計のため全ての酸化オレフィン生成プラントでは流量の増加能力が制限されてきたことから、生産性を上げる最も一般的な手順は、反応器出口での酸化オレフィン濃度の調節である。一般に、従来技術における出口濃度の調整は、触媒温度を上昇させ、それによりオレフィンと酸素の変換率を増加させることにより行われる。しかし、反応器出口での酸化オレフィンのレベルを上げることにより、工程の選択性は著しく低下し、所望する生産性増加を妨げる。従って、殆どのプラントは、適度な生産性で高選択性を達成するため、低酸化オレフィン出口濃度で操業している。「低酸化オレフィン出口濃度」は、酸化オレフィンの出口濃度が通常1.8体積%以下であることを意味してる。
【0005】
より高い生産性でオレフィンをエポキシ化するための改善された触媒の生成には、絶えず利点がある。この点において、及び特定の利点のためには、これら触媒が高生産性では著しく選択性を損なうことで知られていることから、エチレンの高選択性エポキシ化のための触媒となる。
【0006】
通常、これら触媒は、α―アルミナなどの多孔質耐熱支持体からなり、その表面に、触媒量の銀と、エポキシ化工程における選択性の増加に役立つ少なくとも1つの促進剤を有する。銀触媒の促進剤としてのアルカリ金属及び遷移金属の使用は、蒸気相内でのエチレンの部分的酸化による酸化エチレン生成において周知である。米国特許第3,962,136号及び米国特許第4,010,115号に記載されるように、触媒は、更にアルカリ金属のような元素から成ってもよい。特に、米国特許第3,962,136号及び米国特許第4,010,115号は、レニウム(Re)無しのAg/アルカリ金属触媒を開示している。
【0007】
この20年にわたり、レニウムは、多孔質耐熱支持体により支持される銀系触媒を促進するアルカリ金属の選択性を向上するために有効であるとして記載されていた。先行技術の参考文献として、米国特許第4,761,394号及び米国特許第4,833,261号がある。硫黄、Mo、W及びCrのうちの1つの使用によりアルカリ金属とレニウムで促進される銀系触媒の更なる改善が、例えば、米国特許第4,766,105号、米国特許第4,820,675号及び米国特許第4,808,738号に開示されている。
【0008】
その他の触媒の例が、例えば、米国特許第4,010,155号、米国特許第4,012,425号、米国特許第4,123,385号、米国特許第4,066,575号、米国特許第4,039,561号及び米国特許第4,350,616号に開示されている。米国特許第4,761,394号及び米国特許第4,766,105号で検討されるように、このような高選択性触媒は、銀の他に、レニウム、モリブデン、タングステン及び/又は亜硝酸形成性化合物などの、選択性増進促進剤を含む。
【0009】
米国特許出願公開第20060009647 A1号は、フッ化物鉱化担体上に沈着した銀成分からなる触媒を用いたオレフィンのエポキシ化工程において、混合生成物中の酸化オレフィンの分圧が60kPaより大きい事を開示している。また、この刊行物は、銀成分と1つ以上の高選択性ドーパントを含む触媒を用いた同様の工程において、混合生成物中の酸化オレフィンの分圧が20kPaより大きい事を開示している。しかし、米国特許出願公開第20060009647 A1号の開示は、高い生産性での触媒性能に細孔径分布が与える影響について教示していない。
【0010】
支持銀系エポキシ化用触媒の化学組成物の他に、完成した触媒及び支持体の物理的特性も、触媒開発の不可欠な部分となっている。一般に、銀系の触媒支持体は、細孔容積と細孔径分布の特性を示している。更に、表面積と水分吸収は、このような触媒支持体において周知の特性である。完成した触媒の物理的特性とこれら特性の触媒性能への影響が、特に触媒がレニウムで促進される場合に、従来考えられていたものより更に複雑であることが現在分かっている。表面積、細孔容積と細孔径分布に加え、細孔径分布のパターン、特に異なる形態の数と特定の特質が、触媒選択性に著しくプラスの影響を与えることが新たに分かっている。特に、触媒が非常に高い作業速度、つまり、酸化オレフィンの生産が高レベルである場合に、この効果はとりわけ際立っている。
【0011】
上記を考慮すると、高生産性において増大した性能を発揮する、新しく且つ改良された銀系のエポキシ化用触媒を提供する継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
生産性が増加した(本明細書において、反応器出口のガス内中の酸化エチレン濃度と表現される)二峰性細孔径分布を有する担体により支持された銀とレニウムとを含む触媒は、向上した性能を示している。単峰性細孔径分布を有する従来の触媒が高生産性での選択性において著しい損失を示しているのに対し、本発明による触媒は、高生産性での選択性において僅かな損失のみを示している。
【0013】
特に、本発明は、反応器内での、少なくとも酸素とオレフィンとを含む供給物と、二峰性細孔径分布を有する支持体、触媒作用に効果的な量の銀又は銀含有化合物、促進量のレニウム又はレニウム含有化合物、及び、促進量の1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ金属含有化合物を含む触媒との接触を含み、前記反応器は少なくとも反応器出口を含み、前記接触で生成された酸化オレフィンの濃度は前記反応器出口にて約2.2体積%より大きい、オレフィンから酸化オレフィンへのエポキシ化工程を提供する。
【0014】
本発明で使用される二峰性細孔径分布を有する支持体は、平均径が約0.01μmから約5μmの範囲である第1の細孔の形態と、平均径が約5μmから約30μmの範囲である第2の細孔の形態を有する細孔径分布を含む。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態においては、反応器出口における酸化オレフィンの濃度は、約2.4体積%より大きい。本発明の更に別の実施形態においては、反応器出口における酸化エチレンの濃度は、約2.6体積%より大きい。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、反応器出口における酸化オレフィンの濃度は、オレフィンと酸素の変換率を調整することにより得られる。つまり、反応器出口における酸化オレフィンの濃度は、エポキシ化反応の際の反応温度を上げることにより得られる。反応温度の上昇は、触媒選択性に、常に悪影響を与える。触媒選択性の低下は経済的に望ましくなく、高生産性の効果を低下させる。選択性の低下は重大であり、即ち、反応器出口における酸化オレフィンの濃度の増加におく重点が1より少ないのに対し、選択性におく重点はより多い。本発明による触媒は、高生産性おいて僅かな選択性の低下のみを示している、即ち、オレフィンと酸素の変換率が高く、よって、従来技術の触媒の状態と比較して、著しく経済的な利益があることが分かっている。
【0017】
また、本発明は、上述の触媒の存在下で、固定床管型反応器における、エチレンと分子酸素の気相酸化法を含む、エチレンから酸化エチレンへの酸化工程も提供する。本発明のこの様態においては、反応器出口における酸化エチレン濃度は約2.2体積%より大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における唯一の図は、反応器出口における酸化エチレン濃度が約2.2と等しい又はそれより大きい場合の利用における、本発明の支持銀系触媒と従来技術の銀系触媒の触媒性能を比較したものを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、本発明は、反応器内での、少なくとも酸素とオレフィンを含む供給物と、二峰性細孔径分布を有する支持体、触媒作用に効果的な量の銀又は銀含有化合物、促進量のレニウム又はレニウム含有化合物、及び、促進量の1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ金属含有化合物を含む触媒との接触を含み、反応器は少なくとも反応器出口を含み、接触で生成された酸化オレフィンの濃度は反応器出口にて約2.2より大きく、好ましくは約2.4より大きく、更に好ましくは約2.6体積%より大きい、オレフィン、好ましくはエチレンを酸化オレフィン、好ましくは酸化エチレンにエポキシ化する工程を提供する。
【0020】
本発明においては、反応器出口における酸化オレフィンの濃度は、オレフィンと酸素の変換率を調整することにより得られる。つまり、反応器出口における酸化オレフィンの濃度は、エポキシ化反応の際の反応温度を上げることにより得られる。反応温度の上昇は、触媒選択性に、常に悪影響を与える。触媒選択性の低下は経済的に望ましくなく、高生産性の効果を低下させる。選択性の低下は重大であり、即ち、反応器出口における酸化オレフィンの濃度の増加におく重点が1より少ないのに対し、選択性におく重点はより多い。本発明による触媒は、高生産性おいて僅かな選択性の低下のみを示している、即ち、オレフィンと酸素の変換率が高く、よって、従来技術の触媒の状態と比較して、著しく経済的な利益があることが分かっている。
【0021】
本発明において使用される支持体は、多孔質であってもよい数々の固形の耐熱性支持体から選ぶことができ、好ましい細孔構造を提供することができる。アルミナは、オレフィンのエポキシ化用触媒支持体として有用であることが知られており、好ましい支持体といえる。アルミナ支持体は、様々な不純物と添加物を含んでもよく、触媒的エポキシ化反応に影響してもしなくてもよい。好適なアルミナ支持体の製造工程においては、高純度酸化アルミニウム、好ましくはα‐アルミナと、一時的及び維持性結合剤が十分に混ぜ合わされる。燃焼材料として知られる一時的結合材は、分解の際に支持体の細孔構造を変える、適度から高分子量の熱分解性有機化合物である。維持性結合剤は、通常、融解温度がアルミナ以下であり、完成した支持体に機械的強度を付与する粘土状無機物である。乾燥混合した後、十分な水及び/又は他の適切な液体をペースト状の物質に加え、塊の形成を促進する。触媒支持体の粒子は、押出などの従来の方法によりペーストから形成される。その後、粒子を乾燥し、引き続き高温で焼成する。
【0022】
支持体は、α―アルミナ、炭、軽石、マグネシア、ジルコニア、チタニア、珪藻土、酸性白土、炭化ケイ素、シリカ、炭化ケイ素、粘土類、人口ゼオライト、天然ゼオライト、二酸化ケイ素及び/又は二酸化チタン、セラミック又はその組合せなどの材料を含んでもよい。好適な支持体は、非常に高純度のα−アルミナからなり、即ち、少なくとも約95重量%の純度、更に好ましくは少なくとも98重量%のα−アルミナである。残る成分は、シリカ、アルカリ金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム)及び、微量のその他の金属含有及び/又は金属非含有添加剤又は不純物などの、α−アルミナ以外の無機酸化物を含んでもよい。
【0023】
本発明で使用される固形支持体は、二峰性細孔径分布を有している。更に詳細には、本発明で使用される固形支持体は、平均径が約0.01μmから約5μmの範囲である第1の細孔の形態を含む表面を有する。好適には、第1の細孔の形態は、約0.1μmから約4μmの範囲の平均径を有する。本発明で使用される固形支持体の表面は、第1の細孔の形態とは異なる第2の細孔の形態も有する。詳細には、第2の細孔の形態は、約5μmから約30μmの範囲の平均径を有する。好適には、第2の細孔の形態は、約5μmから約20μmの範囲の平均径を有する。必ずというわけではないが、通常、第1の細孔の形態は、多くても全細孔容積の50%からなり、第2の形態は、少なくとも全細孔容積の50%からなる。別の実施形態においては、第1の細孔の形態は、多くても全細孔容積の45%からなり、第2の形態は、少なくとも全細孔容積の55%からなる。本発明の範囲を限定することなく、記載の二峰性細孔径分布を有する触媒は、拡散チャネルにより分離された反応室で有利な細孔構造を提供する、と思われる。
【0024】
必ずというわけではないが、完成した触媒の吸水値は、通常、約0.2cc/gから約0.8cc/g、好ましくは約0.25cc/gから約0.6cc/gの範囲である。完成した支持体のBET表面積は、約0.3から約4.0m/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは約0.3から約1.5m/g、最も好ましくは約0.3m/gから約1m/gである。水銀圧入法で測定した適切な細孔容積は、通常約0.2ml/gから約0.8ml/gの範囲であり、好ましくは約0.25ml/gから約0.60ml/gである。
【0025】
使用される支持体の性質に関わらず、通常、固定床エポキシ化反応器での使用に適切な寸法の粒子、塊、断片、小粒、輪、球体、ワゴン車輪状、十字分割された中空円筒などに成形される。反応器の種類は、オレフィンの触媒的酸化により酸化オレフィンを生成できる限り、限定されない。望ましくは、支持体粒子は、約3mmから約12mmの範囲、好ましくは約5mmから約10mmの範囲の相当直径を有し、通常は触媒が設置される管型反応器の内径に適合している。相当直径とは、体積比に対して使用される支持体粒子と同じ外部表面(即ち、粒子の細孔内の表面を無視した)を有する球体の直径である。
【0026】
一般に、及び、上記で簡潔に述べたように、本発明の適切な触媒支持体は、アルミナなどの耐熱材料、水及び他の適切な液体、燃焼材料又は適切な細孔率調整剤、及び結合材を混合することにより生成することができる。燃焼材料は、セルロース、例えばメチルセルロース、エチルセルロース及びカルボキシエチルセルロースなどの置換セルロース類、例えばステアリン酸メチル又はエチルなどの有機ステアリン酸エステルなどのステアリン酸類、ワックス類、粒状ポリオレフィン類、特にポリエチレン及びポリプロピレン、クルミ殻粉などの、支持体生成に使用される焼成温度で分解可能なものを含む。燃焼材料は、支持体の細孔率を改良するために使用され、完成した支持体を生成するため、基本的に焼成中に完全に除去される。本発明の支持体は、結晶シリカ化合物の形成を実質的に防止するのに十分な量のシリカなどの結合材とアルカリ金属化合物を含んで形成されるのが好ましい。適切な結合材には、粘土状無機物が含まれる。例えば、特に便利な結合材料は、ベーマイト、アンモニア安定化シリカゾル及び可溶性ナトリウム塩の混合物である。
【0027】
ペーストは、支持体の粉の原材料と水又は別の適切な液体を混合することで形成され、通常ペーストは、所望の形状に押出又は成形され、その後約1200℃から約1600℃の温度で焼成又はか焼して支持体を形成する。粒子が押出で形成される場合、従来の押出助剤も含むことが望ましい。必要な押出助剤の量は、使用される設備に関わる要素の数によって決まる。しかし、これらの事項は、セラミック材料を押出する分野の当業者にとっては、十分な一般知識である。焼成後、水溶性残留物を除去するために支持体を洗浄することが好ましい。洗浄は、最も一般的には水で行われるが、他の溶剤あるいは水溶性/非水溶性溶液での洗浄もまた有効である。
【0028】
二峰性細孔径分布を有する適切な支持体は、Saint-Gobain Norpro社、 Sud Chemie社、ノリタケ社、CeramTec社及びIndustrie Bitossi社により市販されている。
【0029】
オレフィンから酸化オレフィンへの酸化用触媒を生成するためには、上記特性を持つ支持体は、触媒作用に効果的な量の銀をその表面上に備えている。触媒は、支持体上に銀前駆体化合物を沈着するのに十分である適切な溶剤内に溶解した銀化合物、錯体又は塩で、支持体を含浸することにより生成される。銀水溶液の使用が好ましい。含浸後、余分な溶液が含浸支持体から除去され、含浸支持体は、本分野で知られるように、溶剤を蒸発させ、銀又は銀化合物を支持体上に沈着させるため、加熱される。
【0030】
本発明により生成される好適な触媒は、支持体を含む触媒の総重量に対して、金属として表される銀を約45重量%まで含む。銀は、表面上と多孔質耐熱支持体の細孔とにわたって沈着される。金属として表される銀の含有量は、触媒の総重量に対して約1%〜約40%が好ましいが、約8%から約35%の銀含有量が更に好ましい。支持体上に沈着された又は支持体上に存在する銀の量は、触媒作用に効果的な量の銀、即ち、酸化エチレンを生成するためのエチレンと酸素の反応を経済的に触媒する量である。本明細書で使用される用語「触媒作用に効果的な量の銀」とは、エチレンと酸素から酸化エチレンへの測定可能な変換率を提供する銀の量を言う。銀前駆体である有用な銀含有化合物には、シュウ酸銀、硝酸銀、酸化銀、炭酸銀、カルボン酸銀、クエン酸銀、フタル酸銀、乳酸銀、プロピオン酸銀、酪酸銀及び高脂肪酸塩と、その組合せが含まれるが、他を排除するものではない。
【0031】
また、銀の沈着の前、同時又は後に、支持体上には、レニウム含有化合物又はレニウム含有錯体であってもよい、促進量のレニウム化合物が沈着される。レニウム促進剤は、レニウム金属として表される支持体を含む全触媒の重量に対して約0.001重量%から約1重量%の量で存在してもよく、好ましくは約0.005重量%から約0.5重量%であり、更に好ましくは約0.01重量%から約0.1重量%である。
【0032】
また、銀及びレニウムの沈着の前、同時又は後に、支持体上には、促進量のアルカリ金属又は2つ以上のアルカリ金属の混合物と、任意の促進量のIIA族アルカリ土類金属成分又は2つ以上のIIA族アルカリ土類金属成分の混合物、及び/又は遷移金属成分又は2つ以上の遷移金属成分の混合物が沈着され、その全ては、適切な溶剤に溶解した金属イオン、金属化合物、金属錯体及び/又は金属塩の形である。支持体は、同時又は別の工程で、様々な触媒促進剤に含浸される。本発明の支持体、銀、アルカリ金属促進剤、レニウム成分及び任意の追加促進剤の特定の組合せは、銀と支持体と促進剤無し又は1つのみの同じ組合せにより、1つ以上の触媒特性を向上させる。
【0033】
明細書で使用される触媒の特定の成分の「促進量」という用語は、その成分を含まない触媒と比較した場合に、触媒の触媒性能を向上させるために有効に作用する成分の量を言う。使用される正確な濃度は、もちろん、その他の要因、所望の銀含有量、支持体の性質、液体の粘度、及び、含浸溶液に促進剤を送るために使用される特定の化合物溶解性によって決まる。触媒特性の例として、とりわけ、実現性(暴走への耐性)、選択性、活性、変換率、安定性及び収率が挙げられる。1つ以上の個々の触媒特性は「促進量」により高められるが、他の触媒特性が高められる又は高められない場合があり、また、更には低下する場合があることは、当業者であれば理解する。更に、異なる触媒特性が異なる処理条件により高められることも理解される。例えば、一組の処理条件で高選択性を有する触媒は、異なる組の条件で処理されてもよく、選択性よりは活性において向上が見られる。エポキシ化工程においては、他の触媒特性を犠牲にしても特定の触媒特性の利点が得られるよう、意図的に処理条件を変更することが望ましい。好適な処理条件は、その他の要因、原料費、エネルギー費、副生成物除去費などにより決定される。
【0034】
適切なアルカリ金属促進剤は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム又はその組合せから選ぶことができるが、セシウムが好ましく、セシウムと他のアルカリ金属の組合せが特に好ましい。支持体上に沈着されるか存在するアルカリ金属の量は、促進量となる。好適には、量の範囲は、金属として測定された場合の全触媒の重量に対して、約10ppmから約3000ppmであり、更に好ましくは約15ppmから約2000ppmであり、更により好ましくは約20ppmから約1500ppmであり、特に好ましいのは約50ppmから約1000ppmである。
【0035】
適切なアルカリ土類金属促進剤は、元素周期表のIIA族からの元素からなり、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム又はその組合せであってもよい。適切な遷移金属促進剤は、元素周期表のIVA、VA、VIA、VIIA及びVIIIA族からの元素又はその組合せから成ってもよい。遷移金属が元素周期表のIVA、VA又はVIA族から選ばれた元素からなるのが最も好ましい。存在してもよい適切な遷移金属は、モリブデン、タングステン、クロム、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タンタル、ニオブ又はその組合せを含む。
【0036】
支持体上に沈着されるアルカリ土類金属促進剤及び/又は遷移金属促進剤の量は、促進量となる。遷移金属促進剤は、通常金属として表される全触媒のグラム当たり約0.1ミクロモルからグラム当たり約10ミクロモルの量で存在してもよく、好ましくはグラム当たり約0.2ミクロモルからグラム当たり約5ミクロモルであり、更に好ましくはグラム当たり約0.5ミクロモルからグラム当たり約4ミクロモルである。触媒は、促進量である1つ以上の硫黄化合物、1つ以上のリン化合物、1つ以上のホウ素化合物、1つ以上のハロゲン含有化合物又はその組合せを更に含んでもよい。
【0037】
支持体を含浸するために使用される銀溶液は、本分野で知られるような任意の溶剤又は錯化/可溶化剤を含んでもよい。多種多様な溶剤又は錯化/可溶化剤は、含浸媒体内で所望の濃度になるよう銀を可溶化するために用いることができる。有用な錯化/可溶化成分は、アミン類、アンモニア、シュウ酸、乳酸及びその組合せを含む。アミン類は、1から5つの炭素原子を有するアルキレンジアミンを含む。好適な一実施形態においては、溶液は、シュウ酸銀及びエチレンジアミンの水溶液からなる。錯化/可溶化剤は、含浸溶液中に銀1モルにつき約0.1から約5.0モルの量で存在してもよく、好ましくは約0.2から約4.0モル、更に好ましくは銀1モルにつき約0.3から約3.0モルである。
【0038】
溶剤が使用される場合は、有機溶剤でも水でもよく、極性であっても略又は完全に非極性であってもよい。一般に溶液は、溶液成分を可溶化するために十分な溶媒和力を有するべきである。同時に、溶剤は溶媒和促進剤への不適切な影響又は相互作用を避けるよう選ばれるのが好ましい。有機溶剤の例として、アルコールでは特にアルカノール類、グリコールでは特にアルキルグリコール類、ケトン類、アルデヒド類、アミン類、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、ニトロトルエン、グリム類では特にグリム、ジグリム、テトラグリムなどが挙げられるが、これに限定されない。分子あたり1から約8つの炭素原子を有する有機系溶剤が好ましい。混合溶剤が本明細書で所望する機能を果たす限り、幾つかの有機溶剤の混合物、又は、水と1つ以上の有機溶剤の混合物が用いられても良い。
【0039】
含浸溶液中の銀の濃度は、通常約0.1重量%から、使用される特定の溶剤/可溶化剤の組合せが溶解可能な最大限までの範囲である。通常、0.5%から約45重量%の銀を含む溶液の使用が非常に適しており、5から35重量%の銀の濃度が好ましい。
【0040】
選択された支持体の含浸は、例えば、過剰溶液含浸法、初期湿潤含浸法、吹き付け塗装などの、いずれかの従来の方法で行われる。通常、支持体の材料は、十分な量の溶液が支持体に吸収されるまで、銀含有溶液に接触させて留置される。好適には、多孔質支持体を含浸するために使用される銀含有溶液の量は、支持体の細孔充填の必要分未満である。中間での乾燥が有る又は無い1回の含浸又は一連の含浸は、溶液中の銀成分の濃度に部分的に応じて使用されてもよい。含浸工程は、例えば、米国特許第4,761,394号、米国特許第4,766,105号、米国特許第4,908,343号、米国特許第5,057,481号、米国特許第5,187,140号、米国特許第5,102,848号、米国特許第5,011,807号、米国特許第5,099,041号及び米国特許第5,407,888号に記載されている。周知の先行技術の工程の様々な促進剤の前蒸着、共蒸着及び後蒸着が使用できる。
【0041】
銀含有化合物、即ち、銀前駆体、レニウム成分、アルカリ金属成分及び任意の他の促進剤に支持体を含浸した後、含浸支持体は、銀含有化合物を活性銀種に変換し、触媒前駆体とするために含浸支持体から揮発性成分を除去するのに十分な時間で、焼成される。焼成は、約0.5から約35バールの範囲の圧力で、好ましくは段階的な変化率で、約200℃から約600℃、好ましくは約200℃から約500℃、更に好ましくは約200℃から約450℃の範囲の温度まで、含浸支持体を加熱することにより行うことができる。一般に、温度が高いほど、要する加熱時間は短い。本分野においては、広範囲の加熱時間が示唆されてきており、例えば、米国特許第3,563,914号は300秒未満の加熱を開示し、米国特許第3,702,259号は、通常約0.5から約8時間の継続時間であるところ、100℃から375℃の温度での2から8時間の加熱を開示している。しかし、実質的に全ての含有銀が活性銀種に変換されるような、温度と相関する加熱時間のみが重要である。この目的のためには、連続的又は段階的加熱が使用できる。
【0042】
焼成の際、含浸支持体を、不活性ガス、又は、不活性ガスと約10ppmから21体積%の酸素含有酸化成分との混合物からなるガス雰囲気に晒してもよい。本発明の目的において、不活性ガスは、焼成のために選ばれた条件下では実質的に触媒又は触媒前駆体と反応しないガスとして定義される。非限定的な例として、窒素、アルゴン、クリプトン、ヘリウム及びその組み合わせが挙げられ、窒素の不活性ガスが好ましい。酸素含有酸化成分の非限定的な例として、分子酸素(O2)、CO2、NO、NO2、N2O、N2O3、N2O4、又はN2O5、又は、焼成条件下でNO、NO2、N2O、N2O3、N2O4、又はN2O5を形成することができる物質、又はその組合せが挙げられ、かつ、任意でSO3、SO2又はその組合せを含む。もちろん、分子酸素は有用な実施形態であり、O2とNO又はNO2の組合せが別の有用な実施形態である。有用な実施形態においては、雰囲気は、約10ppmから約1体積%の酸素含有酸化成分からなる。別の有用な実施形態においては、雰囲気は、約50ppmから約500ppmの酸素含有酸化成分からなる。
【0043】
別の実施形態においては、上記のように焼成された含浸支持体は、その後、任意で、オレフィンが略存在しないか、好ましくはオレフィンが全く存在しない雰囲気である、酸素と蒸気の組合せからなる雰囲気と接触させてもよい。通常、雰囲気は、約2%から約15%の体積比の蒸気、好ましくは約2%から約10%の体積比の蒸気、更に好ましくは約2%から約8%の体積比の蒸気からなる。通常、雰囲気は、約0.5%から約30%の体積比の酸素、好ましくは約1%から約21%の体積比の酸素、更に好ましくは約5%から約21%の体積比の酸素からなる。ガス雰囲気の均衡は、不活性ガスを含んでもよい。不活性ガスの非限定的な例として、窒素、アルゴン、クリプトン、ヘリウム及びその組合せが挙げられ、窒素の不活性ガスが好ましい。通常接触は、約200℃からそれ以上の温度で行われる。一実施形態においては、接触は、約200℃から約350℃の温度で行われている。別の実施形態においては、接触は、約230℃から約300℃の温度で行われている。別の実施形態においては、接触は、約250℃から約280℃の温度で行われている。別の実施形態においては、接触は、約260℃から約280℃の温度で行われている。通常接触は、約0.15時間からそれ以上の時間行われる。一実施形態においては、接触は、約0.5時間から約200時間行われている。別の実施形態においては、接触は、約3時間から約24時間行われている。別の実施形態においては、接触は、約5時間から約15時間行われている。
【0044】
酸化オレフィンの生成
【0045】
エポキシ化工程は、本発明により生成される触媒の存在下で、酸素含有ガスとオレフィン、好ましくはエチレンを連続的に接触させることにより行うことができる。酸素は、略純粋な分子形態又は空気などの混合物においての反応のために供給されてもよい。反応体として使用する分子酸素は、慣用の供給源から得ることができる。例としては、反応体供給混合物は、二酸化炭素、水、不活性ガス類、他の炭化水素類、及び有機ハロゲン化合物などの1つ以上の反応減速材などの物質を含む比較的不活性な材料を含んだ均衡で、約0.5%から約45%のエチレンと約3%から約15%の酸素を含んでもよい。不活性ガスの非限定的な例としては、窒素、アルゴン、ヘリウム及びその混合物が挙げられる。他の炭化水素類の非限定的な例として、メタン、エタン、プロパン及びその混合物が挙げられる。二酸化炭素と水は、エポキシ化工程の副生成物であり、かつ、供給ガス中の一般的な汚染物質である。どちらも触媒に悪影響を与えるため、これらの成分の濃度は通常最小限に維持される。反応減速材の非限定的な例としては、C1からC8のハロゲン化炭化水素などの有機ハロゲン化合物が挙げられる。好適には、反応減速材は、塩化メチル、塩化エチル、二塩化エチレン、臭化エチレン、塩化ビニル又はその混合物である。最も好適な反応減速材は、塩化エチルと二塩化エチレンである。通常、このような反応減速材は、供給ガスの全体積の約0.3から約20ppmv、好ましくは約1から約15ppmvの量で使用される。
【0046】
エチレンのエポキシ化工程の通常の方法は、本発明の触媒の存在下で、固定床管型反応器内でエチレンと分子酸素の気相酸化法を含む。従来市販の固定床エチレン酸化反応器は、通常、外径およそ0.7から2.7インチ、内径0.5から2.5インチ、長さ15〜53フィートの、触媒が充填された複数の平行な細長い管(適切な外殻構造内)の形状をなしている。このような反応器は、酸化オレフィン、未使用の反応体及び副生成物を燃焼室から反応室から出すことができる反応器出口を含む。
【0047】
通常のエチレンのエポキシ化工程の処理条件は、約180℃から約330℃、好ましくは約200℃から約325℃、更に好ましくは約225℃から約280℃の範囲の温度を含む。処理圧力は、質量速度と所望の生産性によりおよそ大気圧から約30気圧まで変化してもよい。本発明の範囲内では、高圧が用いられてもよい。商業用反応器内での滞留時間は、通常およそ約0.1から約5秒である。本触媒は、これらの範囲の条件で処理される場合、この工程には有効である。
【0048】
反応器出口を通って反応器を出る生成された酸化エチレンは、従来の方法を用いて反応生成物から分離され、再生される。本発明の目的においては、エチレンのエポキシ化工程はガスのリサイクルを含んでもよく、酸化エチレン生成物と二酸化酸素を含む副生成物を十分に又は部分的に除去した後、略全ての反応器排水が反応器入口から再び入る。リサイクルの形態においては、反応器へ吸気されるガス内の二酸化炭素濃度は、例えば、約0.3から約5体積%であってもよい。
【0049】
本発明の触媒が、特にエチレンと酸素の高変換率での、エチレンと分子酸素から酸化エチレンへの酸化に特に選択的であることが示されてきた。本発明の触媒の存在下でそのような酸化反応を行う条件は、先行技術に記載されたものを広く含む。これは、適切な温度、圧力、滞留時間、希釈材、緩和剤、リサイクル操作、又は、酸化エチレンの収率を増大させるべく異なる反応器にて順次に行う変換に適用される。エチレン酸化反応での本発明の触媒の使用は、効果的であることが知られるもののうち特定の条件の使用に限定するものではない。
【0050】
例示の目的で、以下に、現行で市販されている酸化エチレン反応器ユニットで頻繁に用いられる条件を示す。気体空間速度(GHSV)―1500〜10,000h-1、反応器入口圧力―150〜400psig、冷却温度―180〜315℃、酸素変換レベル―10〜60%、酸化エチレン生産率(作業速度)―7〜20lbs. 酸化エチレン/立方フート、触媒/時間。反応器入口での供給物組成は、通常、エチレンを1〜40%、O2を3〜12%、CO2を0.3〜40%、エタンを0〜3%、有機塩素化合物減速材の全濃度が0.3〜20ppmvを含み、供給物の残りはアルゴン、メタン、窒素またはその混合物を含んでもよい。
【0051】
以下の非限定的な実施例で、本発明を説明する。
【0052】
実施例
【0053】
酸化アルミニウム
【0054】
表IにおいてA及びBで表された以下のアルミナは、触媒の生成に使用された。異なる種類のアルミナ支持体が市販されている。
【0055】
【表1】

【0056】
触媒の生成
【0057】
銀溶液
【0058】
酸化銀(Sigma Aldrich社)834gが、約2,800gの脱イオン水中の脱水シュウ酸(アメリカ化学協会認定試薬、フィッシャー)442gの撹拌溶液に加えられた。水和銀シュウ酸塩の沈殿物が、混合物上に形成された。撹拌は0.5時間続けられた。そして、沈殿物は、フィルタで集められ、脱イオン水で洗浄された。沈殿物が50.5重量%の銀を含有していたことを、分析が示している。次に、213.9gのシュウ酸銀沈殿物が、77.2gのエチレンジアミン(99+%、Aldrich社)と60.3gの脱イオン水との混合物に溶解された。溶液の温度は、試薬をゆっくりと混合し、溶液を冷却することにより、40℃以下に保たれた。濾過の後の溶液は、およそ30重量%の銀を含んでおり、1.52g/mLの特定の重力を有していた。
【0059】
実施例1:触媒A
【0060】
150gのアルミナ支持体A がフラスコ内に設置され、含浸前におよそ0.1torrまで真空排気された。米国特許第4,766,105号の実施例3〜10から7〜20による触媒組成を生成するため、上記銀溶液に、水酸化セシウム、過レニウム酸及び硫酸アンモニウムの水溶液が加えられた。十分に混合した後、圧力を概ね0.1torrに保ちながら、担体を覆うため、促進された銀溶液を真空排気したフラスコ内に吸引した。細孔内への溶液の完全な浸透を加速しながら、環境気圧に回復させるため、真空は約5分後に開放された。その後、余分な含浸溶液が、含浸担体から排出された。湿式触媒の焼成は、移動ベルトか焼炉で行われた。このユニット内には、湿式触媒が多段加熱炉を通るステンレス鋼ベルト状に乗って運ばれる。加熱炉の全ての区間は予熱した超高純度の窒素で連続的に浄化され、触媒が1つの区間から次へと進むにつれ、徐々に温度を上げられる。熱は加熱炉の壁から、及び、予熱した窒素から放出される。
【0061】
本実施例においては、湿式触媒は周囲温度で加熱炉内に入った。その後温度を、触媒が加熱区間を通過した際の約450℃の最大限まで徐々に上昇させた。最後の(冷却)区間では、目下活性化されている温度が、周囲雰囲気に至る前に、100℃未満まで直ちに下げられた。加熱炉内での総滞留時間は、およそ45分であった。
【0062】
実施例2:触媒B(比較例)
【0063】
触媒Aの手順に続き、アルミナ支持体Bを用いて触媒Bを生成した。
【0064】
触媒の試験
【0065】
試験用に、触媒は、加熱された銅ブロックにはめ込まれた固定床ステンレス鋼管型反応器(内径およそ1/4インチ)内に充填された。触媒装入物は12gの粉砕触媒(粒径1.0〜1.4mm)からなり、注入ガス流は0.75Nl/分に調節された。供給ガス組成は重量%で、エチレンが25%、酸素が7%、二酸化酸素が2%、塩化エチルが0.5〜5ppmv、及び窒素バラストであった。反応圧力は300psigに保たれた。反応器排水は、およそ1時間の間隔で、質量分析法により分析された。
【0066】
供給ガスは200℃で導入され、反応器出口での酸化エチレン濃度が3.8体積%に至るまで、1時間に1℃ずつ上昇させた。注入ガスの塩化エチル濃度は、最大選択性が達成されるまで調節された。その後、出口での酸化エチレン濃度を3体積%まで低下させ、塩化エチル濃度は、選択性にピークが見られるまで再調節された。最後に、この手順は2.2体積%の酸化エチレン出口濃度で繰り返された。
【0067】
【表2】

【0068】
触媒は同様の本質的選択性、即ち、エチレンと酸素の変換率が0%での選択性を有しているが、本発明に係る触媒の選択性の低下は、反応器出口での酸化エチレン濃度で表される変換率が高くなるにつれ、著しく低くなっていることを、唯一の図が明らかに示している。
【0069】
細孔率は、水銀ポロシメーター法により測定される。Drake and Ritter, "Ind. Eng. Chem. anal. Ed.," 17, 787 (1945)参照。細孔径分布は、微分細孔容積(mlHg/g/細孔径)に対して細孔径(μm又はオングストローム)でプロットすることにより測定される。
【0070】
特定の表面積は、BET法によって測定される。J. Am. Chem. Soc. 60, 3098-16 (1938)参照。
【0071】
本発明を、好適な実施形態を参照して明らかにし、説明してきたが、本発明の精神と範囲とから逸脱することなしに種々の変化及び改良がなされてもよいことは、当業者に容易に理解されるであろう。従って、請求項は、開示された実施形態、検討してきたそれらの代替案、及び、ありとあらゆる均等物をカバーするように解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内での、少なくとも酸素とオレフィンを含む供給物と、平均径が約0.01μmから約5μmの範囲である第1の細孔の形態と平均径が約5μmから約30μmの範囲である第2の細孔の形態との二峰性細孔径分布を有する支持体、触媒作用に効果的な量の銀又は銀含有化合物、促進量のレニウム又はレニウム含有化合物、及び、促進量の1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ金属含有化合物を含む触媒との接触を含み、前記反応器は少なくとも反応器出口を含み、前記接触で生成された前記酸化オレフィンの濃度は前記反応器出口にて約2.2体積%より大きい、オレフィンから酸化オレフィンにエポキシ化する工程。
【請求項2】
前記第1の細孔の形態は、平均径が約0.1μmから約4μmの範囲であり、前記第2の細孔の形態は、平均径が約5μmから約20μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項3】
前記第1の細孔の形態は、多くても全細孔容積の50%からなり、前記第2の細孔の形態は、少なくとも全細孔容積の50%からなることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項4】
前記第1の細孔の形態は、多くても全細孔容積の40%からなり、前記第2の細孔の形態は、少なくとも全細孔容積の60%からなることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項5】
前記支持体は、アルミナ、炭、軽石、マグネシア、ジルコニア、チタニア、珪藻土、酸性白土、炭化ケイ素、シリカ、二酸化ケイ素、マグネシア、粘土類、人口ゼオライト、天然ゼオライト、セラミック又はその組み合わせからなることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項6】
前記支持体がアルミナからなることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項7】
前記支持体は、表面積が約1m/g未満のアルミナからなることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項8】
前記触媒は、更に、促進量の1つ以上のIIA族金属含有化合物、1つ以上の遷移金属含有化合物、1つ以上の硫黄含有化合物、1つ以上のフッ素含有化合物、1つ以上のリン含有化合物、1つ以上のホウ素含有化合物又はその組合せからなることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項9】
前記IIA族金属含有化合物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム又はその組合せからなることを特徴とする請求項8記載の工程。
【請求項10】
前記遷移金属含有化合物は、元素周期表のIVA、VA、VIA、VIIA、及びVIIIA族、又はその組合せから選ばれる元素からなることを特徴とする請求項8記載の工程。
【請求項11】
前記遷移金属含有化合物は、モリブデン、タングステン、クロム、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、トリウム、タンタル、ニオブ又はその組合せからなることを特徴とする請求項8記載の工程。
【請求項12】
前記遷移金属含有化合物は、モリブデン又はタングステン又はその組合せからなることを特徴とする請求項8記載の工程。
【請求項13】
前記アルカリ金属含有化合物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム又はその組合せからなることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項14】
前記アルカリ金属含有化合物は、セシウムからなることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項15】
前記オレフィンはエチレンであり、前記酸化オレフィンは酸化エチレンであることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項16】
前記酸化オレフィン濃度は、前記オレフィンと酸素の変換率を調整することにより得られることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項17】
前記調整は、前記エポキシ化の反応温度を上げることにより行われることを特徴とする請求項16記載の工程。
【請求項18】
前記反応器は、固定床管型反応器であることを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項19】
前記接触は気相内で行われ、前記酸素は分子酸素を含むことを特徴とする請求項1記載の工程。
【請求項20】
反応器内での、少なくとも酸素とオレフィンを含む供給物と、平均径が約0.01μmから約5μmの範囲である第1の細孔の形態と平均径が約5μmから約30μmの範囲である第2の細孔の形態との二峰性細孔径分布を有する支持体、触媒作用に効果的な量の銀又は銀含有化合物及び促進量のレニウム又はレニウム含有化合物、セシウム、リチウム、タングステン及び硫黄を含む触媒との接触を含み、前記反応器は少なくとも反応器出口を含み、前記接触で生成された前記酸化オレフィンの濃度は前記反応器出口にて約2.2体積%より大きい、オレフィンから酸化オレフィンにエポキシ化する工程。

【図1】
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【公表番号】特表2010−537993(P2010−537993A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523027(P2010−523027)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/073095
【国際公開番号】WO2009/029419
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(507273035)エスデー リ−ツェンスフェルヴェールトゥングスゲゼルシャフト エムベーハー ウント コー. カーゲー (13)
【氏名又は名称原語表記】SD LIZENZVERWERTUNGSGESELLSCHAFT MBH & CO.KG
【Fターム(参考)】