説明

酸化ジルコニウム、酸化イットリウムおよび酸化タングステンをベースとする組成物、調製方法および触媒または触媒担体としての使用

本発明の組成物は、酸化ジルコニウムをベースとし、1%から20%の酸化イットリウム、1%から30%の酸化タングステンおよび残部の酸化ジルコニウムを含む。本組成物は、700℃において4時間焼成した後に少なくとも40m/gの比表面積を、およびメチルブチノール試験により計測された少なくとも90%の酸性度を有することができる。組成物は触媒または触媒担体として、特に自動車排気ガスの処理に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムおよび酸化タングステンをベースとする組成物、この調製方法および触媒または触媒担体としてのこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒および前記触媒用の担体としての作用を目的とする組成物は、有効であるために、大きい比表面積を有するべきことが知られている。さらに、ますます高い温度で使用することができる触媒および、このために、比表面積安定性が改善された触媒が常に求められている。特に、自動車のエンジンからの排気ガスの処理に使用される触媒またはこの担体がこの場合に該当する。
【0003】
さらに、よりいっそう具体的な事例、例えば、水性アンモニアまたは尿素を使用する窒素酸化物(NOx)の還元によるディーゼルエンジンからのガスの処理において、ある程度の酸性度およびさらにこの場合もある程度の耐温度性を有する触媒が必要とされている。
【0004】
最後に、ある用途において、ある条件下ではケイ素が触媒において通常使用される貴金属と反応し、こうして触媒の性能を悪化させ得ることが知られているので、いかなるケイ素をも含有しない生成物が要求され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、これらの必要性を満たす触媒の製造において使用することができる材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明による組成物は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムおよび酸化タングステンをベースとする。これらの酸化物は、組成物中で以下の質量比率で存在する:
酸化イットリウム:1%から20%;
酸化タングステン:1%から30%;
残部は酸化ジルコニウムである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の詳細な説明、およびさらに本発明の説明を目的とする具体的ではあるが非限定的な実施例を読むことによりいっそう十分に明らかとなる。
【0008】
詳細な説明の残部について、用語「比表面積」は、雑誌「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に記載のBrunauer−Emmett−Teller法から確立されたASTM D3663−78規格に従って窒素吸着により測定されるB.E.T.比表面積を意味するものとする。
【0009】
終了時にこの表面積値が得られる焼成は、空気中での焼成である。
【0010】
所与の温度および所与の時間について示される比表面積値は、特に記載のない限り、示される時間にわたる固定温度における空気中の焼成に対応する。
【0011】
含有率は、特に記載のない限り、質量に基づき、酸化物として挙げられる。
【0012】
また詳細な説明の残部について、特に記載のない限り、挙げられる値の範囲において、境界値が含まれることも規定される。
【0013】
本発明による組成物は、この成分の性質を第一の特徴とする。上記の通り、この組成物は、酸化ジルコニウムをベースとし、この組成物は酸化イットリウムおよび酸化タングステンをも上記の比率で含む。
【0014】
酸化イットリウム含有率は、さらに特定すると5%から15%の間であってよく、酸化タングステンの含有率は、5%から20%の間であってよい。
【0015】
種々の変形例によれば、本発明の組成物は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムおよび酸化タングステンのみを含有することができるが、さらに、本発明の組成物は、少なくとも1種のセリウム以外の希土類元素の酸化物を含有することもできる。用語「希土類元素」は、本明細書においては、元素周期表の原子番号57から71の間(両端の番号を含む。)の元素からなる群の元素を意味するものとする。この希土類元素は、さらに特定すると、ランタン、プラセオジミウムまたはネオジミウムであってよく、これらの元素は組合せで存在することも可能である。
【0016】
組成物中にセリウム以外の希土類元素が存在する場合、イットリウムおよびタングステンの量は上記の量と同一であり、希土類元素の量は、1%から10%の間、さらに特定すると2%から7%の間であってよく、残部は酸化ジルコニウムである。組成物中の希土類元素の存在は、高温において組成物の比表面積を安定化する効果を有する。
【0017】
本発明の組成物の別の追加的特徴は、これらの比表面積である。比表面積は、700℃において4時間焼成した後に少なくとも40m/g、さらに特定すると少なくとも60m/g、さらにいっそう特定すると少なくとも70m/gであり得る。最大少なくとも約90から120m/gの範囲の表面積はこれらの焼成条件で得ることができ、一般に表面積が大きいほど、組成物のタングステン含有率が低い。
【0018】
さらに、900℃において4時間焼成した後、この表面積は少なくとも10m/g、さらに特定すると少なくとも20m/g、さらにいっそう特定すると少なくとも26m/gまたは少なくとも29m/gであり得る。
【0019】
本発明の組成物の別の有利な特徴は、これらの酸性度である。この酸性度は後述するメチルブチノール試験により計測され、少なくとも90%であり、さらに特定すると少なくとも95%であり得る。この酸性度は、同じくメチルブチノール試験を使用して計測され、この表面積とは独立した生成物の酸性度を特性決定する酸性活性度(acidic activity)によっても評価することができる。
【0020】
この酸性活性度は、少なくとも0.03mmol/h/m、さらに特定すると少なくとも0.075mmol/h/mである。酸性活性度は、さらにいっそう特定すると少なくとも0.1mmol/h/m、特に少なくとも0.15mmol/h/mであり得、これらの値は700℃における4時間の焼成を受けた組成物について挙げられる。
【0021】
本発明の組成物は、主相が正方晶系または立方晶系で結晶化した酸化ジルコニウムの相である結晶相の混合物の形態であってよい。
【0022】
特定の実施形態によれば、本発明の組成物は、酸化ジルコニウム中のイットリウムおよびタングステン元素の固溶体の形態であってよい。
【0023】
この場合、これらの組成物のXR回折図は、正方晶系または立方晶系で結晶化した酸化ジルコニウムの相に対応する単相の存在を明らかにし、従って、酸化ジルコニウムの結晶ネットワーク中のイットリウムおよびタングステン元素の取り込みを反映し、こうして真の固溶体の入手を反映する。イットリウムの高い含有率は、一般に、立方晶相の出現を促進する。この固溶体の実施形態は、700℃における4時間の焼成を受けた組成物に当てはまる。このことは、これらの条件下で焼成した後、分離、即ち、他の相の出現が観察されないことを意味する。
【0024】
本発明の組成物は、極めて低くなり得るスルファート含有率を有することもできる。この含有率は、多くとも800ppm、さらに特定すると多くとも500ppm、さらにいっそう特定すると多くとも100ppmであり得、この含有率は、組成物全体に対するSOの質量に基づき表現され、LecoまたはEltra装置により、即ち誘導炉の生成物の触媒酸化を実施する技術および形成されたSOのIR分析により計測される。
【0025】
さらに、本発明の組成物は、極めて低くなり得る塩素含有率を有することもできる。この含有率は、多くとも500ppm、特に多くとも200ppm、より具体的には多くとも100ppm、さらに特定すると多くとも50ppm、さらにいっそう特定すると多くとも10ppmであり得る。この含有率は、組成物全体に対するClの質量に基づき表現される。
【0026】
最後に、本発明の組成物は、多くとも500ppm、特に多くとも200ppm、さらに特定すると多くとも100ppm、さらにいっそう特定すると多くとも50ppmのアルカリ金属元素の含有率、特にナトリウムの含有率を有することもできる。この含有率は、組成物全体に対する元素の質量、例えばNaの質量に基づき表現される。
【0027】
これらの塩素およびアルカリ金属元素の含有率は、イオンクロマトグラフィー技術により計測される。
【0028】
本発明の組成物を調製する方法を以下に説明する。
【0029】
本方法は、以下の段階:
(a)ジルコニウム化合物、イットリウム化合物、任意選択によりセリウム以外の希土類元素の化合物および塩基性化合物を液体媒体中で合わせ、これにより沈殿物を得る段階;
(b)前記沈殿物を任意選択により分離、洗浄および再懸濁する段階;
(c)タングステン化合物を段階(a)または段階(b)に由来する媒体に添加し、酸をも添加して形成された媒体のpHを2から7の間の値にする段階;
(d)前段階に由来する沈殿物を沈澱媒体から分離した後に任意選択により洗浄する段階;
(e)段階(c)または(d)に由来する沈殿物を焼成する段階
を含むことを特徴とする。
【0030】
上記の種々の段階をより詳細に説明する。
【0031】
本方法の第一の段階は、液体媒体中で、ジルコニウム化合物およびイットリウム化合物を合わせることである。これらの化合物は、所望の最終組成を得るために必要な化学量論的比率で存在する。上記変形例による希土類元素を含む組成物の調製の場合、この希土類元素の化合物もこの第一の段階において使用する。
【0032】
液体媒体は、塩基性化合物をも含む。
【0033】
液体媒体は、一般に水である。
【0034】
化合物は、好ましくは可溶性化合物である。ジルコニウム化合物は、例えば、水酸化ジルコニウムの硝酸作用により得ることができる硝酸塩であってよい。ジルコニウム化合物は、塩化物または硫酸塩であってもよい。特定の変形例によれば、オキシ塩化ジルコニウムを使用する。
【0035】
イットリウム化合物または希土類元素化合物については、これらの元素の無機または有機塩を使用することができる。塩化物または酢酸塩、さらに特定すると硝酸塩を挙げることができる。
【0036】
塩基性化合物として、水酸化物またはカルボナート型の生成物を使用することができる。アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物および水性アンモニアを挙げることができる。第二級、第三級または第四級のアミンを使用することもできる。尿素を挙げることもできる。
【0037】
本方法のこの段階(a)は、この実施の促進を目的とする添加剤、特に沈殿物の後続の処理を促進する添加剤の存在下で実施することが可能である。これらの添加剤は、スルファート型の化合物、ホスファートまたはポリカルボキシラートから選択することができる。
【0038】
用語「スルファート型の化合物」は、SO2−アニオンを含むかまたはこのアニオンを生成することができる任意の化合物を意味するものとする。この化合物は、硫酸、硫酸アンモニウム、アルカリ金属硫酸塩、特に硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムであってよい。
【0039】
種々の化合物を合わせることは、任意の手段において実施することができる。従って、イットリウム化合物をジルコニウム化合物とともに、タンク出発物質として塩基性化合物およびスルファート化合物を含有する反応器中に導入することができる。
【0040】
この第一の段階は、一般に、周囲温度(15から35℃)において実施する。
【0041】
段階(a)の終盤において、固体沈殿物を得る。
【0042】
本方法は、沈殿物を任意の慣用的な固液分離技術、例えば、濾過、沈降、スピンフィルタリングまたは遠心分離などによりこの媒体から分離することができる任意選択の段階(b)を続いて含む。生成物を水によるかまたは酸性もしくは塩基性水溶液による1回以上の洗浄に供する。この洗浄の終盤において、沈殿物を水中で再懸濁し、本方法の後続の段階(c)を実施する。
【0043】
この段階(c)は、前段階(段階(a)または(b)(実施していれば))に由来する媒体にタングステン化合物を添加することである。この化合物は、無機塩、例えば、特にメタタングステン酸アンモニウム(NH1241またはメタタングステン酸ナトリウムNaWOであってよい。さらに、酸も添加して形成された媒体のpHを2から7の間、さらに特定すると4から6の間の値にする。この酸は無機酸、例えば硝酸であってよい。
【0044】
本方法は、任意選択の段階(d)を続いて含む。この段階は、段階(b)について上記の手法と同一の手法において、前段階において得られた沈殿物をこの沈澱媒体から分離し、次いで、こうして得られた沈殿物を1回以上洗浄することである。
【0045】
好ましい実施形態によれば、本方法は、特に低いスルファート、塩素またはアルカリ金属含有率を有する組成物を得ることが求められる場合、少なくとも1つの洗浄段階(b)または(d)を含み、よりいっそう好ましくはこれら2つの段階を含むことが留意される。
【0046】
本方法の最終段階は、段階(c)または(d)に由来する沈殿物の焼成であり、この焼成の前に任意選択により乾燥を行う。この焼成により、形成された生成物の結晶化度を発達させることが可能になり、この焼成は、使用される焼成温度が高いほど、生成物の比表面積が小さくなるという事実を考慮して、組成物のための後続の作業温度に応じて調整することもでき、このような焼成は一般に空気中で実施する。
【0047】
実際上、焼成温度は一般に、500℃から900℃の間、さらに特定すると700℃から900℃の間の値の範囲に制限される。
【0048】
この焼成の持続時間は、広範囲内で変動し得;原則として、持続時間が長いほど温度が低くなる。例にすぎないが、この持続時間は2時間から10時間の間の範囲であってよい。
【0049】
上記の本発明の組成物または上記方法により得られる本発明の組成物は粉末の形態であるが、これらの組成物は、顆粒、ビーズ、円筒、モノリスまたは変動可能な寸法のハニカム形態のフィルターの形態となるように任意選択により成形することができる。これらの組成物は、触媒作用の分野において一般に使用される任意の担体、即ち特に熱不活性担体に適用することができる。この担体は、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、シリカート、結晶性リン酸ケイ素アルミニウムまたは結晶性リン酸アルミニウムから選択することができる。
【0050】
本組成物は、触媒系において使用することもできる。従って、本発明はまた、本発明の組成物を含有する触媒系に関する。これらの触媒系は、例えば金属モノリスまたはセラミックのモノリス型の基材上に、触媒特性を有し、本発明の組成物をベースとするコーティング(ウォッシュコート)を含むことができる。コーティング自体が、上記の型の担体を含むこともできる。このコーティングは、組成物を担体と混合して懸濁液を形成することにより得られ、この懸濁液を続いて基材上に堆積させることができる。
【0051】
触媒系に本発明の組成物を使用する場合、本発明の組成物は、遷移金属と組み合わせて使用することができ;従って、本発明の組成物はこれらの金属の担体として作用する。用語「遷移金属」は、元素周期表のIIIA族からIIB族の元素を意味するものとする。遷移金属としては、さらに特定するとバナジウムおよび銅を挙げることができ、さらに貴金属、例えば、白金、ロジウム、パラジウム、銀またはイリジウムを挙げることができる。これらの金属の性質および担体組成物中にこれらの金属を取り込ませる技術は、当業者には周知である。例えば、金属を含浸により組成物中に取り込ませることができる。
【0052】
本発明の触媒系は、ガスの処理において使用することができる。この場合、本発明の触媒系は、これらのガス中に存在するCOおよび炭化水素の酸化用触媒として作用することができ、または窒素酸化物(NOx)の還元用触媒として、水性アンモニアまたは尿素によるこれらのNOxの還元反応において、およびこの場合、尿素の水性アンモニアへの加水分解または分解反応(SCR法)用の触媒として作用することができる。
【0053】
本発明の範囲内で処理することができるガスは、例えば、固定設備、例えば、ガスタービンおよび発電所のボイラーにより放出されるガスである。ガスは、内燃機関から生じるガス、さらに特定するとディーゼルエンジンからの排気ガスであってもよい。
【0054】
本発明の組成物は、水性アンモニアまたは尿素によるNOxの還元反応の触媒作用において使用される場合、セリウムと、または遷移金属型の金属、例えば、バナジウムまたは銅と組み合わせて使用することができる。
【0055】
以下に例を挙げる。
【0056】
最初に、本発明による組成物の酸性度を特性決定するために使用するメチルブチノール試験を以下に説明する。
【0057】
この触媒試験は、Pernot et al.によりApplied Catalysis,1991,Vol.78,p213に記載されており、調製した組成物の表面酸性度/塩基性度のプローブ分子として2−メチル−3−ブチン−2−オール(メチルブチノールまたはMBOH)を使用する。メチルブチノールは、組成物の表面部位の酸性度/塩基性度に応じて、3種の反応により変換され得る。
【0058】
【表1】

実験的に、組成物約400mgの量(m)を石英反応器中に装入する。組成物を最初に、流量4l/hのNガス流下で400℃において2時間前処理に供する。
【0059】
続いて、組成物の温度を180℃にする。次いで、組成物をMBOH所与量と周期的に接触させる。この周期的な接触操作は、流量4l/hのN中でMBOH4体積%の合成混合物を4分間注入する間循環させることであり、7.1mmol/hのメチルブチノールの毎時モル流量(Q)に対応する。10回の注入を実施する。各注入の終盤において、反応器出口におけるガス流をガスクロマトグラフィーにより分析して反応生成物(表1を参照のこと)の性質およびこれらの量を測定する。
【0060】
メチルブチノール変換反応の生成物iの選択率(S)は、形成された全ての生成物に対するこの生成物の比率により定義する(S=C/Σ(式中、Cは、生成物iの量であり、Σは、反応の間に形成された生成物の合計を表す。))。次いで、酸性、両性および塩基性の反応のそれぞれにおいて形成された生成物の選択率の合計に等しい酸性、両性または塩基性の選択率を定義する。例えば酸性選択率(S[acidic])は、2−メチル−1−ブテン−3−インおよび3−メチル−2−ブテナールの選択率の合計に等しい。従って、酸性選択率が高いほど、形成される酸性反応生成物の量が多くなり、試験組成物上の酸性部位の数が多くなる。
【0061】
試験の間のメチルブチノールの変換度(DC)は、試験の最後の5回の注入にわたるメチルブチノールの変換度の平均をとることにより計算する。
【0062】
mmol/h/mで表現される組成物の酸性活性度(A[acidic])は、メチルブチノールの変換度(DC、%で表現される。)、メチルブチノールの毎時モル流量(Q、mmol/hで表現される。)、酸性選択率(S[acidic]、%で表現される。)、分析組成物の量(m、gで表現される。)および組成物の比表面積(SBET、m/gで表現される。)から以下の関係式により定義することもできる:
A[acidic]=10−4.DC.Q.S[acidic]/(SBET.m)
【実施例】
【0063】
実施例
本実施例は、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムおよび酸化タングステンをベースとし、それぞれの酸化物の質量比率は70%、10%および20%である組成物の調製に関する。
【0064】
塩化ジルコニル219g(20重量%、ZrO)、硫酸18g(97重量%)および硝酸イットリウム27g(391g/lのY)を脱イオン水93gとともにビーカー中で撹拌しながら混合することにより溶液Aを調製する。
【0065】
水酸化ナトリウム溶液657g(10重量%のNaOH)および脱イオン水50gを撹拌させた反応器中に導入する。次いで、溶液Aを撹拌しながら徐々に添加する。続いて水酸化ナトリウムの溶液を添加することにより媒体のpHは少なくとも12.5の値に達する。得られた沈殿物を濾別し、脱イオン水3lにより60℃において洗浄する。固体を再懸濁し、懸濁液を脱イオン水714gにより構成させる。
【0066】
メタタングステン酸ナトリウム二水和物17.8gおよび脱イオン水45gを混合することにより、溶液Bを調製する。次いで、溶液Bを懸濁液に撹拌しながら徐々に添加する。続いて、pHを硝酸(68体積%)の溶液の添加により5.5に調整する。沈殿物を再度濾別し、脱イオン水3lにより45℃において洗浄する。
【0067】
固体を炉中で120℃において一晩乾燥させ、次いで、得られた生成物を固定条件下で700℃において4時間空気中で焼成する。この生成物は、68m/gの比表面積および純粋な正方晶相を特徴とする。固定条件下で900℃において4時間空気中で焼成した後、比表面積は29m/gに等しい。
【0068】
生成物は、ナトリウム50ppm、塩化物10ppm未満およびスルファート120ppm未満を含有する。
【0069】
メチルブチノール試験において、700℃/4hにおいて焼成した生成物は、97%の酸性選択率および0.171mmol/m/hの酸性活性度を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の質量比率:
酸化イットリウム:1%から20%;
酸化タングステン:1%から30%;
残部は酸化ジルコニウム
にある、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムおよび酸化タングステンをベースとする組成物。
【請求項2】
5%から15%の間の酸化イットリウム含有率を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
5%から20%の間の酸化タングステン含有率を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
700℃において4時間焼成した後に少なくとも40m/g、さらに特定すると少なくとも70m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の組成物。
【請求項5】
900℃において4時間焼成した後に少なくとも10m/g、さらに特定すると少なくとも20m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の組成物。
【請求項6】
メチルブチノール試験により計測された少なくとも90%の酸性度を有することを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
セリウム以外の希土類元素の酸化物を1%から10%の間、さらに特定すると2%から7%の間の比率でさらに含むことを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7の一項に記載の組成物を調製する方法であって、以下の段階:
(a)ジルコニウム化合物、イットリウム化合物、任意選択によりセリウム以外の希土類元素の化合物および塩基性化合物を液体媒体中で合わせ、これにより沈殿物を得る段階;
(b)前記沈殿物を任意選択により分離、洗浄および再懸濁する段階;
(c)タングステン化合物を段階(a)または段階(b)に由来する媒体に添加し、酸をも添加して形成された媒体のpHを2から7の間の値にする段階;
(d)前段階に由来する沈殿物を沈澱媒体から分離した後に任意選択により洗浄する段階;
(e)段階(c)または(d)に由来する沈殿物を焼成する段階
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
ジルコニウム化合物がオキシ塩化ジルコニウムであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階(a)を、スルファート型の化合物、ホスファートまたはポリカルボキシラートから選択される添加剤の存在下で実施することを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から7の一項に記載の組成物を含むことを特徴とする触媒系。
【請求項12】
請求項1から7の一項に記載の組成物または請求項11に記載の触媒系を、ガス中に存在するCOおよび炭化水素の酸化用触媒として使用することを特徴とする、ガス、さらに特定するとディーゼルエンジンからの排気ガスを処理する方法。
【請求項13】
請求項1から7の一項に記載の組成物または請求項11に記載の触媒系を、窒素酸化物(NOx)の還元用触媒として水性アンモニアまたは尿素によるこれらのNOxの還元反応において使用することを特徴とする、ディーゼルエンジンからの排気ガスを処理する方法。

【公表番号】特表2011−509234(P2011−509234A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541770(P2010−541770)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050074
【国際公開番号】WO2009/087144
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【出願人】(510189835)マグネシウム・エレクトロン・リミテツド (1)
【Fターム(参考)】