説明

酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子の製造方法および樹脂粒子

【課題】本発明は、様々なモノマーや樹脂などに高い分散性を有する酸化ジルコニウム粒子を構成成分とし、高屈折率など酸化ジルコニウム由来の特性や高い透明性を示す樹脂粒子とその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、当該樹脂粒子を構成成分とする樹脂組成物等を提供することも目的とする。
【解決手段】本発明に係る酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子の製造方法は、水系溶媒中に少なくともモノマーおよび酸化ジルコニウムナノ粒子を含む液滴を分散させた反応液を調製する工程;および、上記液滴中で重合反応を行う工程;を含み、上記酸化ジルコニウムナノ粒子が2種以上の被覆剤により被覆されており、且つ当該被覆剤の少なくとも1種が下記式(I)で表されるものであることを特徴とする。
1−COOH ・・・ (I)
[式中、R1は炭素数6以上の炭化水素基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子の製造方法、当該方法で製造される樹脂粒子、および当該樹脂粒子を含む組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、金属酸化物のナノ粒子は、光学材料、電子部品材料、磁気記録材料、触媒材料、紫外線吸収材料など様々な材料の高機能化や高性能化に寄与するものとして非常に注目されている。例えば酸化ジルコニウム粒子は高い屈折率を示すことから、酸化ジルコニウムナノ粒子を熱可塑性樹脂に分散させることにより屈折率を向上させる技術が知られている(特許文献1)。また、耐溶剤性や寸法安定性を向上するために、特定構造を有する環状オレフィン系グラフト共重合体に金属酸化物を添加する技術もある(特許文献2)。
【0003】
金属酸化物粒子の製造方法としては、Breaking−downプロセスとBuilding−upプロセスが知られている。Breaking−downプロセスとしては機械的粉砕法が一般に使用されるが、粒子径が1μm以下の微粒子を効率良く製造するのは困難であり、また、粉砕の際に不純物が混入する可能性が高い。それに対してBuilding−upプロセスは気相中や液相中の化学反応により粒子を調製する方法であり、反応条件の制御や原料物質の選定などにより微粒子を調製することができる。
【0004】
Building−upプロセスのうち気相法には特殊な装置や反応条件が必要でありコストや安全性などの面で問題が多い。
【0005】
液相法としては、共沈法、アルコキシド法、水熱合成法などが挙げられるが、共沈法には生成した金属酸化物ナノ粒子が加熱工程において成長してしまうという問題がある。アルコキシド法は、金属アルコキシドを加水分解することにより金属酸化物粒子を得る方法であるが(特許文献3)、この方法は一部の金属酸化物にしか適用できず原料が高価である上に、得られる金属酸化物の結晶性が十分でない。水熱合成法は金属酸化物前駆体を高温高圧下で反応させるものであるが、400℃で30MPaといった厳しい条件が必要であるために粒子が粗大化したり、多量のナノ粒子を安価に製造できないという問題がある(特許文献4)。
【0006】
金属酸化物のナノ粒子は上記の通り製造が難しいという問題の他に、溶媒に対する分散性が低いという問題がある。即ち、金属酸化物ナノ粒子は水性溶媒に対する分散性は良好であるが、極性の低い有機溶媒、モノマーやポリマーなどへの分散性は低い。例えば特許文献2の実施例で高分子中に金属酸化物粒子を分散させている例は、ポリシロキサン構造を有するグラフト共重合体中へ、当該共重合体と同様の化学構造を有することから親和性が高いと考えられるコロイダルシリカを分散させているフィルムのみである。
【0007】
よって、金属酸化物粒子を表面処理することにより様々な溶媒に対する分散性を向上させることが行われている。しかし表面処理される前の金属酸化物粒子の分散性は低く凝集や融着していることから効果的に表面処理すること自体が難しく、結果的に分散性を向上させることはできない。そこで表面処理を行う際に金属酸化物粒子を分散させるために、高温高圧処理を行ったり(特許文献5)、ミル処理するなど(特許文献6)、コストや手間のかかる処理を行わざるを得なかった。
【0008】
そこで本願出願人の研究者らは、酢酸亜鉛などのアルコール溶液を加熱することによって、カルボン酸残基を含有する金属酸化物粒子を製造する方法を開発した(特許文献7)。当該方法で得られた金属酸化物は、樹脂溶液などに対する分散性が改善されている。
【0009】
また、有機相であるZr(IV)−第3級カルボン酸溶液と水との異相溶液を200℃付近で水熱処理することにより、第3級カルボン酸により表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子を製造する方法が非特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−73563号公報
【特許文献2】特開2005−162902号公報
【特許文献3】特開平6−287005号公報
【特許文献4】特開2005−255450号公報
【特許文献5】特開2005−193237号公報
【特許文献6】特開2005−220264号公報
【特許文献7】特開2000−185916号公報
【非特許文献1】小西康裕ら,化学工学会第65年会 研究発表講演要旨集,N202(2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した様に、従来、金属酸化物粒子の分散性を改善するための技術が検討されている。特に近年、酸化ジルコニウム粒子の優れた特性を応用すべく、さまざまな樹脂や溶媒等に対する分散性をより一層高めることが求められている。例えば第3級カルボン酸により表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子は非特許文献1で公知である。しかし本発明者らによる知見によれば、当該粒子は極性の低いトルエン等に対しては分散性を示すものの、比較的極性の高い有機溶媒やモノマーに対する分散性は低い。よって、例えば当該粒子をモノマーに分散した後に重合反応を行うことにより高屈折率や高靭性などの優れた特性を有する組成物を製造することはできない。また、特許文献7の通り、本願出願人の研究者らは金属酸化物粒子にカルボン酸残基を結合させて分散性を改善する技術を開発しているが、近年要求されている分散性のレベルは極めて高く、その要求を満足させることはできなかった。
【0011】
そこで本発明が解決すべき課題は、様々なモノマーや樹脂などに高い分散性を有する酸化ジルコニウム粒子を構成成分とし、高屈折率など酸化ジルコニウム由来の特性や高い透明性を示す樹脂粒子とその製造方法を提供することにある。また、本発明は、当該樹脂粒子を構成成分とする樹脂組成物等を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、酸化ジルコニウムナノ粒子の分散性の改善のためには、その表面を被覆する被覆剤が極めて重要であることを見出した。
【0013】
例えば本願出願人の研究者が開発した特許文献7に記載の粒子の製造方法では、比較的長鎖のカルボン酸なども用いられているが、記載されている実施例で単離された粒子の表面に結合しているのはアセトキシ基などの短鎖カルボン酸残基のみであった。よって、当該粒子の分散性は、近年の要求を十分に満たすことができるものではなかった。また、非特許文献1の技術では、酸化ジルコニウム粒子を1種類の比較的長鎖のカルボン酸で被覆しているが、その分散性の向上効果は必ずしも満足できるものではなかった。
【0014】
そこで本発明者らは、2種以上の被覆剤で被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子は樹脂に対する分散性に極めて優れることから、かかるナノ粒子を含む樹脂粒子は透明性等に優れ、特に光学材料として非常に有用であることを見出して、本発明を完成した。
【0015】
本発明に係る酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子の製造方法は、水系溶媒中に少なくともモノマーおよび被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を含む液滴を分散させた反応液を調製する工程;および、上記液滴中で重合反応を行う工程;を含み、上記被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が2種以上の被覆剤により被覆されており、且つ当該被覆剤の少なくとも1種が下記式(I)で表されるものであることを特徴とする。
1−COOH ・・・ (I)
[式中、R1は炭素数6以上の炭化水素基を示す。]
【0016】
本発明方法で用いる被覆酸化ジルコニウムナノ粒子としては、正方晶の酸化ジルコニウム結晶からなるものが好適である。正方晶の酸化ジルコニウム結晶は高屈折率を有することから、酸化ジルコニウムナノ粒子を含む組成物の高屈折率化が可能になる。
【0017】
式(I)の被覆剤としては、R1が炭素数6以上の分枝鎖状炭化水素基であるものが好適である。炭素数6以上の分枝鎖状炭化水素基を有する被覆剤(I)は、比較的極性の低い樹脂に対する本発明に係る酸化ジルコニウムナノ粒子の分散性をより一層向上させることができる。
【0018】
本発明の樹脂粒子は、樹脂マトリクス中に被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が分散しているものであって、当該被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が2種以上の被覆剤により被覆されており、且つ当該被覆剤の少なくとも1種が上記式(I)で表されるものであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る樹脂組成物、光拡散フィルム、防眩フィルムおよび光拡散板は、少なくとも上記樹脂粒子を含むことを特徴とする。なお、本発明における光拡散フィルムと光拡散板の主な相違点は厚さにある。一般的に光拡散フィルムは薄く、基材上に形成したり或いは基材に貼り付けて用いられる。一方、光拡散板は0.2mmから数mm程度の厚さを有し、独立した部材として用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹脂粒子に含まれる酸化ジルコニウムナノ粒子は、比較的極性の低いモノマーや樹脂に対する分散性を改善できる被覆剤と共に、それ以外の被覆剤によっても被覆されている。その結果、様々な樹脂等に対する分散性が顕著に改善されている。よって、本発明の樹脂粒子は酸化ジルコニウムナノ粒子が均一に分散していることから透明性が極めて高い。また、酸化ジルコニウムナノ粒子により屈折率も高いものとなっている。よって、本発明の樹脂粒子は特に光学材料として有用性が高く、また、本発明方法はかかる樹脂粒子を製造できるものとして、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子の製造方法は、水系溶媒中に少なくともモノマーおよび被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を含む液滴を分散させた反応液を調製する工程;および、上記液滴中で重合反応を行う工程;を含み、上記被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が2種以上の被覆剤により被覆されており、且つ当該被覆剤の少なくとも1種が上記式(I)で表されるものであることを特徴とする。即ち、本発明の製造方法では、水系溶媒中に重合性モノマーからなる液滴を分散させて当該液滴中でモノマーを重合させるいわゆる懸濁重合を行うに当たり、液滴中に分散性に優れる特定の酸化ジルコニウムナノ粒子を分散させる。
【0022】
本発明方法で用いるモノマーは、懸濁重合させることができるものであれば特に制限されない。例えば、(メタ)アクリル酸系モノマーやビニル系モノマーを用いることができる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、分子中に複数の重合性二重結合基を有する架橋性モノマーを使用してもよい。かかる単量体成分を用いることで、分子間に架橋構造を有する有機重合体微粒子が得られる。(メタ)アクリル酸系の架橋性(メタ)アクリル系モノマーとしては、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコール等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
【0025】
ビニル系モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系モノマー;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、および、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物などを挙げることができる。また、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤;ポリブタジエンおよび特公昭57−56507号公報、特開昭59−221304号公報、特開昭59−221305号公報、特開昭59−221306号公報、特開昭59−221307号公報等に記載される反応性重合体などを使用してもよい。
【0026】
本発明で用いるモノマーは、1種を単独で使用してもよく、また、複数を組合せて用いてもよい。本発明で用いるモノマーは、上記スチレン系モノマーおよび/または芳香族ジビニル化合物を主成分とするものであるのが好ましく、具体的には上記スチレン系モノマーおよび/または芳香族ジビニル化合物を50〜100質量%含むものが好ましく、より好ましくは60〜100質量%を上記スチレン系モノマーおよび/または芳香族ジビニル化合物とすることが推奨される。
【0027】
本発明で用いる酸化ジルコニウムには、様々な作用が知られている。例えば、触媒、セラミック材料、高屈折材料等として利用されており、非常に利用価値が高い。特に酸化ジルコニウムはナノ粒子化することにより透明性を示すことから、例えばポリマー中に分散させることにより光拡散板などとして利用することができる。
【0028】
本発明で用いる酸化ジルコニウムとしては、結晶性のより高いものが好ましい。非晶質のものよりも結晶質のものの方が安定であり一般的には活性が高く、また、光学材料等としての価値が高い。
【0029】
本発明で用いる酸化ジルコニウムの結晶性は、X線結晶回折の結果を用い、下記式(1)で算出されるC値により評価することができる。
C=100×(S1−S2)/S1 ・・・ (1)
[式中、S1はX線回折測定により得られたX線回折チャートのトータル面積値を示し、S2はX線回折測定により得られたX線回折チャートのベース部分の面積値を示す。]
【0030】
なお、被覆剤により酸化ジルコニウムの結晶性は変化しないので、X線回折は被覆剤(I)のみに被覆された状態で測定しても、さらにその他の被覆剤に被覆された状態で測定してもよい。X線回折の測定範囲は特に問わないが、酸化ジルコニウムの結晶構造である正方晶、立方晶および単斜晶の最大回折ピークがいずれも2θ:26〜38°の範囲で検出されるため、少なくともこの範囲を測定することが好ましい。また、S1とS2の値は、得られたX線回折チャートからXRayCrystalなどの解析ソフトから得られる。
【0031】
本発明方法で用いる酸化ジルコニウムの結晶性は高いほどよいので、そのC値は15以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。
【0032】
酸化ジルコニウムの既知の結晶形としては立方晶、正方晶および単斜晶の3種類が知られている。本発明の酸化ジルコニウムとしては高い屈折率を有するものが好ましいので、正方晶が結晶構造全体の70%以上であるものが好ましく、75%以上のものがより好ましく、85%以上であるものがさらに好ましい。なお、正方晶の割合は、X線回折チャートから正方晶、立方晶および単斜晶に帰属される回折ピークを同定し、これらの含有比率をXRayCrystalなどの解析ソフトで計算することにより求めることができる。また、酸化ジルコニウムの正方晶は、X線構造回折解析データにおいて、格子面(101)、(112)、(200)、(211)、(110)の回折ピークの存在により確認することができる。
【0033】
本発明の被覆酸化ジルコニウムナノ粒子は2種以上の被覆剤により被覆されており、そのうちの少なくとも1種は式(I)で表される被覆剤である。
1−COOH ・・・ (I)
[式中、R1は炭素数6以上の炭化水素基を示す。]
【0034】
酸化ジルコニウムナノ粒子の表面は一般的に親水性であり且つ正に帯電している。よって、式(I)中のカルボキシル基は酸化ジルコニウムナノ粒子に対して親和性を示し、ナノ粒子を被覆することができる。なお、式(I)の被覆剤中のカルボキシル基は、−COO-の形でナノ粒子に結合している可能性もある。炭素数6以上の炭化水素基は、特に比較的極性の高いモノマーや樹脂などに対する酸化ジルコニウムナノ粒子の分散性を高める作用を有する。
【0035】
式(I)の被覆剤としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸などの直鎖状カルボン酸;2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、4−メチルオクサン酸、ネオデカン酸などの分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの環状カルボン酸などを使用することができる。これらのうちネオデカン酸や2−エチルヘキサン酸などの分枝鎖状カルボン酸が好適である。必ずしもその理由は明らかではないが、直鎖状の炭化水素鎖よりも分枝鎖状の炭化水素鎖を有する疎水性被覆剤の方が、比較的極性の低いモノマーなどに対する粒子の分散効果を一層高めることができる。
【0036】
式(I)の被覆剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0037】
本発明の被覆酸化ジルコニウムナノ粒子は、式(I)の被覆剤に加え、その他の被覆剤で被覆されている。その結果、様々なモノマーや樹脂に優れた分散性を示す。その他の被覆剤としては、例えば、比較的極性の高いモノマー等に対するナノ粒子の分散性を高める被覆剤や、モノマー等の側鎖と同様の側鎖を有するなどモノマー等と親和性を有する被覆剤が挙げられる。
【0038】
比較的極性の高いモノマー等に対するナノ粒子の分散性を高める被覆剤は、親水性の酸化ジルコニウムナノ粒子の表面に結合できると共に、親水性基を有することから比較的極性の高いモノマー等に対する粒子の分散性を改善することができる。例えば、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、エポキシ基、およびアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を複数有する被覆剤を挙げることができる。勿論、これら官能基に加えて他の官能基を有していてもよい。
【0039】
かかる被覆剤としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−t−ブトキシドなどのアルミニウムアルコキシド;ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、アルミニウムステアレートオキサイドトリマー、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテートモノ(ジオクチルホスフェイト)などのアルミニウム系カップリング剤;チタニウム−n−ブトキシド、チタニウムテトラ−t−ブトキシド、チタニウムテトラ−sec−ブトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラ(メトキシプロポキシド)、チタニウムテトラ(メトキシフェノキシド)などのチタニウムアルコキシド;イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスフェイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェイト)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェイト)エチレンチタネートなどのチタン系カップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤;ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド、ジルコニウムテトラ(2−エチルヘキソキシド)、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトラ(2−メチル−2−ブトキシド)などのジルコニウムアルコキシド;ジルコニウムジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムトリn−ブトキシドペンタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシドなどのジルコニウム化合物;ヒドロキシステアリン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸;2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸などのエーテルカルボン酸;カルボキシル化ポリブタジエン、カルボキシル化ポリイソプレンなどのカルボン酸系カップリング剤;マレイン酸変性ポリプロピレンなどのカルボン酸ポリマー;などを挙げることができる。例えばシランカップリング剤は、シロキサン構造を有するポリマーとなり粒子を被覆すると共に、比較的極性の高いモノマー等に対する粒子の分散性を向上することができるので、上記例のポリマーなども本発明の被覆剤に含まれるものとする。また、シランカップリング剤は、側鎖にモノマー等への親和性の高い置換基を導入することができるので、特に利便性が高い。好ましくはシランカップリング剤、ヒドロキシカルボン酸、またはエーテルカルボン酸を用いる。
【0040】
比較的極性の高いモノマー等に対する分散性を高める被覆剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0041】
モノマーや樹脂に対するナノ粒子の分散性を高める被覆剤は、酸化ジルコニウムに対する親和性を示す基と共に、モノマー等に対する親和性を示す基を有することから、モノマーや当該モノマーの重合物である樹脂に対する粒子の分散性を改善することができる。例えば、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルなどビニル基を有する被覆剤で粒子を被覆すれば、同じくビニル基を有する(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマーに対する粒子の分散性を向上することができる。また、フェニル基を有する被覆剤で粒子を被覆すれば、スチレンなどのモノマーや、スチレン樹脂やフェノール樹脂などのポリマーなど、フェニル基を有するモノマーやポリマーに対する粒子の分散性を向上することができる。
【0042】
かかる被覆剤としては、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレートなどのアルミニウム系カップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤などを挙げることができる。
【0043】
式(I)で表される被覆剤が炭素数6以上の分枝鎖状炭化水素基を有する場合には、当該被覆剤(I)以外の少なくとも1種の被覆剤としては、式(II)で表される被覆剤を挙げることができる。
2−COOH ・・・ (II)
[式中、R2は炭素数6以上の直鎖状炭化水素基を示す。]
【0044】
炭素数6以上の分枝鎖状炭化水素基を有する被覆剤(I)は、特に比較的極性の低いモノマー等に対する分散性を向上させることができるが、式(II)の被覆剤を併用することにより、かかる分散性をより一層改善し得る。式(II)の被覆剤としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸などの直鎖状カルボン酸を挙げることができる。
【0045】
被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆する被覆剤は、式(I)の被覆剤とその他の被覆剤などの合計2種でもよいが、合計3種以上を用いてもよい。また、例えば式(I)の被覆剤などをそれぞれ2種以上用いてもよい。
【0046】
上述したように、本発明で用いる被覆ナノ粒子は被覆剤(I)と共に所望のモノマーなどに対する分散性を高めるためにその他の被覆剤にも被覆されている。これら被覆剤の割合は、樹脂粒子を構成する樹脂成分や当該樹脂成分の原料となるモノマーに対する分散性を高めるべく適宜調整すればよい。一般的には、2種類の被覆剤を用いる場合における被覆剤(I)に対する他方の被覆剤のモル比としては、例えば0.1以上、30以下が好ましく、0.2以上、25以下がより好ましく、0.3以上、15以下がさらに好ましい。上記モル比がこの範囲内にあれば、双方の被覆剤に応じた溶媒等への分散性の向上効果が好適に発揮される。なお、粒子の表面に結合している被覆剤の割合は、例えばNMRスペクトルや、CHNコーダ、元素分析装置、蛍光X線分析装置を用いた分析結果から決定することができる。
【0047】
本発明で用いる被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の粒子径は、ナノレベルといえるものであれば特に制限されないが、通常は20nm以下である。20nmを超えると、例えば分散液としたときに透明性が低くなり得るため好ましくない。より好ましくは1nm以上、19nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上、18nm以下である。
【0048】
粒子径の測定方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)などで拡大観察し、無作為に100個の粒子を選択してその長軸方向の長さを測定し、その平均値を粒子径とする。粒子の形状としては球状、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状、薄片状などが考えられるが、粒子径を測定する場合はそれぞれの長軸方向長さを測定するものとする。
【0049】
本発明で用いる被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の粒度分布は、σ/x×100[式中、σは粒子の粒度分布の標準偏差を示し、xは粒子の50%累積径(nm)を示す]で表される変動係数として30%以下が好ましい。当該変動係数が30%を超えると粒子サイズにバラツキが生じ、結果として光透過性や屈折率などの物性にバラツキが生じるおそれがある。当該変動係数は25%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
【0050】
本発明で用いる被覆酸化ジルコニウムナノ粒子における酸化ジルコニウムに対する被覆剤の割合としては、空気雰囲気中で加熱して有機成分を除去したときの減量率で40質量%以下が好適である。当該減量率が40質量%を超えると被覆剤の量が多過ぎ、酸化ジルコニウム本来の作用効果が十分に発揮されない場合があり得る。一方、当該減量率が5質量%未満では被覆剤の量が少な過ぎて粒子の分散性が十分に改善されない場合があり得るので、当該減量率は5質量%以上が好ましい。より好ましくは、10質量%以上、30質量%以下とする。
【0051】
上記減量率は、例えばマックサイエンス社製のTG−DTA分析装置を用い、空気雰囲気下で10℃/分の速度で粒子を800℃まで昇温し、減少質量/加熱前質量×100により算出する。また、本発明粒子としては、熱安定性の観点から、TG−DTA分析装置で測定した時の発熱ピークが150℃以上であるものが好ましく、190℃以上であるものがより好ましい。
【0052】
本発明で用いる被覆酸化ジルコニウムナノ粒子は、2種以上の被覆剤で被覆されていることから様々なモノマー等に対する分散性が高い。また、モノマー等への分散性は、これら被覆剤の割合により調節することができる。例えば非極性のモノマー等に対する分散性を高める被覆剤(I)と極性のモノマー等に対する分散性を高める被覆剤によりナノ粒子を被覆する場合には、非極性のモノマー等への分散性を高めるために被覆剤(I)の量を増やしたり、逆に極性の高いモノマー等への分散性を高めるために他方の被覆剤の量を増やすといったように調節すればよい。
【0053】
反応液には、重合反応をより円滑に進行せしめるために重合開始剤を添加してもよい。
重合反応には、重合開始剤を用いてもよく、重合開始剤としては、通常、ラジカル重合に用いられるものはいずれも使用可能であり、例えば過酸化物系開始剤やアゾ系開始剤等が使用可能である。
【0054】
過酸化物系開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3‐ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0055】
さらに反応液には、重合反応を安定に進めるため分散安定剤を使用してもよい。分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、トラガント、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子;アニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両性イオン性界面活性剤;ノニオン性界面活性剤、その他アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等が用いられる。
【0056】
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等がある。
【0057】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等がある。
【0058】
カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等がある。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等がある。
【0059】
その他、各種の添加剤を必要に応じて使用してもよい。具体的には、酸化防止剤、顔料、可塑剤、重合安定剤、蛍光増白剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などが挙げられる。
【0060】
また、本発明方法では、先ず水系溶媒中に少なくともモノマーおよび被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を含む液滴を分散させた反応液を調製するが、使用する溶媒としては、水に加えて、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類等の有機溶媒を用いてもよい。なお、使用する水の種類も特に制限されず、純水、蒸留水、脱イオン水、水道水などから適宜選択して用いることができる。
【0061】
モノマーと被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の割合は適宜調節すればよいが、ナノ粒子の割合が多過ぎると重合反応が進み難くなる場合が考えられ、また、ナノ粒子の割合が少な過ぎると屈折率の向上効果など酸化ジルコニウム由来の効果が発揮され難くなるおそれがあり得る。よって一般的には、モノマー100質量部に対して5質量部以上、300質量部以下とし、より好適には10質量部以上、200質量部以下とし、さらに好適には50質量部以上、150質量部以下程度とする。
【0062】
重合開始剤を用いる場合には、その使用量も適宜調節すればよいが、一般的にはモノマー100質量部に対して0.5質量部以上、5質量部以下程度とすればよい。また、分散安定剤の使用量は、所望する樹脂粒子のサイズに応じて適宜調整すればよい。例えば、粒子径1〜20μmの有機重合体微粒子を得たい場合であれば、モノマー100質量部に対して0.01質量部以上、10質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上、5質量部以下、さらに好ましくは0.2質量部以上、2質量部以下とすることが推奨される。
【0063】
水系溶媒の使用量も適宜調節すればよいが、通常、モノマーと被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の合計100質量部に対して20質量部以上、1000質量部以下程度とすることができ、より好適には50質量部以上、200質量部以下程度とする。
【0064】
本発明方法では、先ず水中に少なくともモノマーおよび被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を含む液滴を分散させた反応液を調製する。一般的には、モノマーと被覆酸化ジルコニウムナノ粒子、また、重合開始剤などその他の添加成分を分散または溶解してなるモノマー組成物を、水系溶媒に分散安定剤などを分散または溶解した媒体に添加し、激しく攪拌することによりモノマー等を含む液滴を水系溶媒中に分散させる。かかる反応液を用いて液滴中でモノマーを重合させる方法は一般的に懸濁重合法といわれる。
【0065】
懸濁重合のための反応液を調製する際には、モノマー組成物を水系溶媒中に懸濁させる手段として従来公知の乳化分散や懸濁のための方法や装置を採用することができる。例えば、T.K.ホモミキサー、ラインミキサー(例えばエバラマイルダー(登録商標))などの高速攪拌機が使用できる。
【0066】
次に、上記反応液を用いて、液滴中で重合反応を行う。より具体的には、上記反応液を加熱することにより反応を開始する。重合温度は適宜調節すればよいが、通常は60〜100℃が好ましく、より好ましくは65〜95℃、さらに好ましくは70〜90℃である。その他、放射線を照射することにより重合反応を開始してもよい。
【0067】
重合反応は、撹拌下で行うことが好ましい。撹拌は、パドル翼、タービン翼、ブルーマージン翼、プロペラ翼など従来公知の撹拌翼を用いた撹拌を採用し得る。
【0068】
反応時間は特に制限されず、予備実験や或いは反応の進行状況をモニターしつつ決定すればよい。通常は2〜7時間とするのが好ましく、より好ましくは2.5〜5時間であり、さらに好ましくは3〜4.5時間である。また、重合反応は、pH4〜10の範囲で行うのが好ましい。
【0069】
重合反応後は、得られた樹脂粒子を分離して乾燥する。さらに必要により分級などの工程に供してもよい。なお、乾燥は180℃以下で行うのが好ましく、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。乾燥機としては、箱型乾燥機などが使用できる。また、乾燥時の酸素濃度は、10容量%以下とするのが好ましい。より好ましくは5容量%以下であり、さらに好ましくは2容量%以下である。
【0070】
本発明方法で用いる被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の製法は特に限定されないが、好ましくは、少なくとも酸化ジルコニウム前駆体と式(I)の被覆剤から被覆剤(I)−ジルコニウム複合体を調製する工程;上記被覆剤(I)−ジルコニウム複合体に水を混合し、1MPaG未満で水熱反応することにより被覆剤(I)で被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子を得る工程;および、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子に上記被覆剤(I)以外の被覆剤を作用させることによって、酸化ジルコニウムナノ粒子を2種以上の被覆剤で被覆する工程;を含む方法で製造することができる。以下、当該方法を実施の順番に従って説明する。
【0071】
(1) 被覆剤(I)−ジルコニウム複合体の調製工程
上記方法では、先ず、少なくとも酸化ジルコニウム前駆体と式(I)の被覆剤を混合して被覆剤(I)−ジルコニウム複合体を調製する。
【0072】
従来、水熱反応により金属酸化物粒子を製造する技術は知られていたが、単なる金属塩の水溶液を用いるものであったことから400℃で30MPaといった高温高圧条件が必要であった。一方、本発明では予め調製した被覆剤(I)−ジルコニウム複合体を水熱反応に付すことから1MPaG未満という比較的穏和な条件で微細な粒子を製造することができる。なお、被覆剤(I)−ジルコニウム複合体における金属の形態は必ずしも明らかではないが、例えば金属イオンであり、カルボキシ基を有する被覆剤(I)と塩を形成している可能性がある。
【0073】
本発明方法の原料である酸化ジルコニウム前駆体は、被覆剤(I)と共に被覆剤(I)−ジルコニウム複合体を形成することが可能であり、且つ水熱反応により被覆剤(I)−ジルコニウム複合体から酸化ジルコニウムナノ粒子となる前駆体であれば特に制限されない。例えば、ジルコニウムの水酸化物、塩化物、オキシ塩化物、オキシ硝酸塩、硫化物、カルボン酸塩、アミノ化合物塩、および金属アルコキシドなどを用いることができる。これらのうち、オキシ塩化物とオキシ硝酸塩は安価であり且つ微細な粒子が得られることから好ましい。
【0074】
酸化ジルコニウム前駆体と式(I)の被覆剤から形成される被覆剤(I)−ジルコニウム複合体へは、さらに有機溶媒を添加してもよい。酸化ジルコニウム前駆体と被覆剤(I)のみでは粘調な複合体となる場合があり、次工程の水熱反応が効率的に進行しないおそれがあるが、適切な有機溶媒によりかかる複合体を溶解することで、水熱反応を効率的に進行させることができる。当該有機溶媒としては被覆剤(I)−ジルコニウム複合体に対して良好な溶解性を有するものであればよい。また、次の工程で水を加えた場合に水と二相を形成するものを用い、二相のまま水熱反応を行ってもよい。かかる有機溶媒としては、例えば、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコール、アミン、カルボン酸などを一般的に用いることができる。また、次工程における水熱反応を考慮すれば、沸点が120℃以上のものが好適である。沸点が120℃未満の有機溶媒では水熱反応時における蒸気圧が高くなるため反応圧を高くせざるを得ず、結果的に粒子の凝集や融着が生じ易くなるおそれがある。よって、沸点が180℃以上の有機溶媒がより好ましく、沸点が210℃以上の有機溶媒がより好ましい。より具体的にはデカン、ドデカン、テトラデカン、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸などが使用できる。
【0075】
被覆剤(I)−ジルコニウム複合体および有機溶媒の混合物における被覆剤(I)−ジルコニウム複合体の量は、通常、2質量%以上、95質量%以下程度とすることができる。2質量%未満であると1回の反応における酸化ジルコニウムナノ粒子の生成量が少なくなる問題が生じ得、95質量%を超えると反応液中の被覆剤(I)−金属複合体の濃度が高過ぎて反応が円滑に進行し得ない場合があり得る。より好ましくは5質量%以上、90質量%以下程度とする。
【0076】
被覆剤(I)−ジルコニウム複合体および有機溶媒の混合物は、好適には加熱しつつ攪拌する。その条件は特に制限されないが、酸化ジルコニウム前駆体が完全に溶解し、均一な被覆剤(I)−ジルコニウム複合体が形成されるまで加熱攪拌する。例えば30〜80℃程度で30分間〜5時間程度攪拌すればよい。
【0077】
(2) 水熱反応工程
次に、被覆剤(I)−ジルコニウム複合体に水を混合し、1MPaG未満で水熱反応することにより被覆剤(I)で被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子を得る。
【0078】
水の種類は特に制限されないが、好ましくは純水を用いる。また、当該水のpHは4以上、9以下にすることが好ましいので、酸やアルカリなどを適宜加えてpHを調整してもよい。
【0079】
水の量は、(水のモル数)/(金属のモル数)が4以上、100以下となるようにすることが好ましい。当該比が4未満の場合には分散性に劣る酸化ジルコニウムナノ粒子が生成するおそれがあり得る。一方、当該比が100を超えると水の量が多くなるため、1回の反応における酸化ジルコニウムナノ粒子の生成量が少なくなる問題が生じ得る。当該比は8以上、50以下がより好ましい。
【0080】
被覆剤(I)−ジルコニウム複合体と水との混合液へは、さらに分散剤を添加してもよい。この分散剤は、有機相または水相のいずれか一方または両方で分散性を発揮できるものであればよい。かかる分散剤としては、カルボン酸、アミン化合物、アルコキシド、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤などを挙げることができる。当該分散剤の好適な使用量は、酸化ジルコニウム前駆体に対して0.01モル倍以上、2モル倍以下程度とすることができる。
【0081】
被覆剤(I)−ジルコニウム複合体と水の混合液が静置状態で二層になる場合には、続く水熱反応直前に激しく攪拌することにより懸濁状態にしてもよい。
【0082】
当該二層反応混合液は1MPaG未満で水熱反応させる。圧力が1MPaG以上であると粒子が凝集し易くなることがあり、また、装置コストが高くなることがある。一方、常圧で反応させると結晶形成に高温を要し熱による凝集が促進されるおそれがあるため、好適には0.1MPaG以上、より好ましくは0.2MPaG以上で反応させる。
【0083】
反応温度は、使用する溶媒などの沸点を考慮し、反応容器内の圧力が1MPaG未満となるように設定すればよい。水の飽和水蒸気圧を考慮すれば180℃以下の温度で反応させることが好ましい。
【0084】
反応時間は特に制限されないが、通常は0.1時間以上、10時間以下程度であり、0.5時間以上、6時間以下が好ましい。
【0085】
反応系雰囲気は特に制限されず、空気、酸素、水素、窒素、アルゴン、二酸化炭素などとすることができる。凝集の抑制や安全を考慮すれば、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で反応させることが好ましい。
【0086】
上記水熱反応の結果、(I)の被覆剤で被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子が生成し、反応容器の下部に沈殿する。当該酸化ジルコニウムナノ粒子は、粒子の凝集体や析出したカーボンを除去するために精製することが好ましい。例えば、沈殿した酸化ジルコニウムナノ粒子を濾別した上で凝集粒子やカーボンを除去するためにナノ粒子をトルエンなどに溶解して濾過する。次いで、得られた濾液を減圧濃縮してトルエンなどを除去することにより酸化ジルコニウムナノ粒子を精製することができる。
【0087】
酸化ジルコニウムナノ粒子を製造するために用いた有機溶媒は、水相から分離して再利用することもできる。かかる再利用は廃液量や製造コストを抑制できることから好ましい。
【0088】
(3) その他の被覆剤による被覆工程
次に、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子に被覆剤(I)以外の被覆剤を作用させて、ナノ粒子の表面を2種以上の被覆剤で被覆する。
【0089】
先ず、得られた酸化ジルコニウムナノ粒子を溶媒に分散させる。使用する溶媒は酸化ジルコニウムナノ粒子に適度な分散性を有するものであれば特に制限されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどを用いることができる。被覆剤(I)に被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子は、これら溶媒への分散性が高い。なお、水や炭素数4以下のアルコールなどを用いるとナノ粒子の2次凝集が起こるおそれがある。よって本発明は、親水性の高い酸化ジルコニウムを水等に分散させて溶解させる従来方法とは全く異なるものである。酸化ジルコニウムの濃度は適宜調整すればよいが、0.1質量%以上、50質量%以下程度にすることが好ましい。
【0090】
他の被覆剤の使用量は適宜調整すればよいが、通常は被覆剤(I)が結合した酸化ジルコニウムナノ粒子に対して1質量%以上、60質量%以下とする。1質量%未満の場合には他の被覆剤の量が不足してトルエンなど非極性有機溶媒以外の溶媒に対する分散性が向上しないおそれがある。一方、60質量%を超えるとナノ粒子に対する被覆剤の量が過剰になる場合があり得る。より好ましくは3質量%以上、50質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上、40質量%以下である。
【0091】
被覆剤(I)が結合した酸化ジルコニウムナノ粒子の分散液中へ他の被覆剤を加えた後、加熱処理する。加熱温度は適宜調整すればよいが、通常は30℃以上、180℃未満程度とし、より好ましくは40℃以上、150℃未満、さらに好ましくは50℃以上、130℃未満とする。反応時間も適宜調整すればよいが、通常は0.1時間以上、10時間未満、より好ましくは0.3時間以上、3時間未満程度とする。
【0092】
反応終了後は溶媒を減圧留去することにより2種以上の被覆剤が結合した酸化ジルコニウムナノ粒子を回収してもよい。或いは、2種以上の被覆剤が結合した酸化ジルコニウムナノ粒子を含む反応後溶液へ、当該ナノ粒子との親和性が低い溶媒を添加することによって、当該酸化ジルコニウムナノ粒子を凝集または析出させてから濾別して回収してもよい。
【0093】
得られた酸化ジルコニウムナノ粒子は、その表面が2種以上の被覆剤により被覆されており、様々なモノマーや樹脂に対して高い分散性を示すことから利便性が高い。表面に結合している被覆剤の割合は、例えばNMRスペクトルや、CHNコーダ、元素分析装置、蛍光X線分析装置を用いた分析結果から決定することができる。
【0094】
本発明方法で製造される樹脂粒子中には、分散性に極めて優れる酸化ジルコニウムナノ粒子が凝集することなく均一分散している。よって、透明性に優れるのみならず、樹脂粒子の高屈折率化など酸化ジルコニウム由来の特性が有効に発揮される。よって、本発明に係る樹脂粒子がバインダー樹脂に分散している樹脂組成物は様々な用途が考えられるが、特に光学材料や光半導体封止材として有用である。
【0095】
本発明の樹脂粒子は、樹脂中に被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が分散しているものであって、当該被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が2種以上の被覆剤により被覆されており、且つ当該被覆剤の少なくとも1種が上記式(I)で表されるものであることを特徴とする。
【0096】
上記樹脂は、上述した本発明方法で原料として用いられたモノマーが重合したものである。樹脂粒子に含まれる被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の量としては、好適には5質量%以上、75質量%以下とする。ナノ粒子の量が5質量%未満であると、酸化ジルコニウム由来の特性が発揮され難い場合があり得る。一方、ナノ粒子の量が75質量%を超えると樹脂粒子の強度が低下するおそれがあり得る。当該量としては、10質量%以上、65質量%以下がより好ましく、30質量%以上、60質量%以下がさらに好ましい。
【0097】
上記樹脂としては、(メタ)アクリル酸系モノマーおよび/またはビニル系モノマーに加え、架橋性モノマーが共重合したものが好適である。特に、樹脂粒子を光学材料の構成成分として用いる場合にはスチレン系モノマーおよび/またはスチレン系架橋性モノマーの重合物を含むものが好適であり、当該樹脂が樹脂全体の50モル%以上を占めることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、特に当該樹脂のみからなるものであることが好ましい。また、本発明の樹脂粒子を塗料用組成物などとして利用するために溶媒へ分散させる必要がある場合には、溶媒による膨潤を抑制するために、樹脂は架橋されているものであることが好ましい。かかる場合には、当該樹脂に占める架橋性モノマーの割合が10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0098】
樹脂粒子に含まれる被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を構成する酸化ジルコニウムとしては結晶構造からなるものが好適であり、さらに正方晶が全体の70%以上のものが好ましい。正方晶の酸化ジルコニウムは屈折率が高いことから、かかる酸化ジルコニウムは光学材料の構成成分として極めて優れるからである。正方晶の割合としては、さらに75%以上が好ましく、特に80%以上が好ましい。
【0099】
被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆している被覆剤のうち被覆剤(I)以外のものとしては、側鎖に重合性基を有するシランカップリング剤が好適である。上述した製法において、重合反応時に当該被覆剤とモノマーが重合することによって、樹脂粒子におけるナノ粒子の分散性が安定に保持されるからである。また、被覆剤(I)としては、分枝鎖状炭化水素基を有するものが好適である。かかる被覆剤(I)は、比較的極性の低い樹脂等に対する親和性が高いことから、かかる樹脂等に対するナノ粒子の分散性をより一層高め得る。
【0100】
本発明の樹脂粒子の粒度分布もできる限りバラツキが少ないことが好ましいので、樹脂粒子の変動係数は30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
【0101】
本発明の樹脂粒子の平均粒径は特に制限されないが、光拡散剤や防眩剤などの光学材料の構成成分としては、通常、50%累積径として0.1μm以上、100μm以下程度とし、1μm以上、20μm以下程度がより好ましい。また、形状としては球状または略球状が好ましい。
【0102】
本発明の樹脂粒子は、高い屈折率を有する酸化ジルコニウムのナノ粒子を含むことから、樹脂のみからなる粒子に比べて高屈折率を示す。当該屈折率としては1.60以上が好ましく、1.62以上がより好ましく、1.65以上がさらに好ましい。
【0103】
本発明の樹脂組成物は、上記本発明樹脂粒子とバインダー樹脂を含むものである。当該樹脂組成物は独立した部材として用いられるほか、成形加工原料や塗料として利用することができる。
【0104】
本発明に係る樹脂組成物のマトリックスを構成するバインダー樹脂は特に制限されないが、例えば(メタ)アクリル酸エステルを構成単位とするホモポリマーや2以上のモノマーからなるコポリマー、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ラジカル重合性樹脂などの熱硬化性樹脂を使用できる。
【0105】
より具体的には、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどのポリアミド;ポリイミド;ポリウレタン;ポリエチレン、ポロプロピレンなどのポリオレフィン;PET、PBT、PENなどのポリエステル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;ポリスチレン;(メタ)アクリル樹脂;ABS樹脂;シリコーン樹脂;フッ素樹脂;フェノール・ホルマリン樹脂、クレノール・ホルマリン樹脂などのフェノール樹脂;エポキシ樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂などを挙げることができる。また、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体系樹脂などの軟質樹脂や硬質樹脂、無機バインダーなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0106】
本発明の樹脂組成物には、樹脂粒子とバインダー樹脂の他の添加成分を配合してもよい。かかる添加成分としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、着色剤、離型剤、カップリング剤、シリコーン化合物、反応性希釈剤、可塑剤、安定化剤、難燃助剤、架橋剤などを挙げることができる。
【0107】
硬化剤は熱硬化性樹脂を用いる際に必要となる場合がある。例えば、エポキシ樹脂を用いる場合は、ポリアミド類、脂肪族ポリアミン類、環状脂肪族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類あるいはこれらの一部を変性したアミン類、酸無水物類、ジシアンジアミド類、イミダゾール類、アミンイミド類、ヒドラジド類、フェノールノボラックやクレノールノボラックなどのノボラック系硬化剤等を好適に用いる。また、フェノール樹脂を用いる場合は、ウロトロピンやホルマールなどを好適に用いる。これら硬化剤の量は、樹脂の量に応じて適宜調整すればよい。
【0108】
可塑剤は樹脂組成物の加工性をさらに向上させるために添加し、その種類は樹脂に応じて選択することができる。例えばエポキシ樹脂を用いる場合にはポリグリコール類可塑剤を用いることが好ましい。
【0109】
本発明の樹脂組成物は透明性が高い。具体的には、本発明の樹脂組成物の可視光透過率と、本発明の樹脂粒子を含有しない以外は同様にして製造された組成物の可視光透過率との差が±30%以下となることが好ましく、±20%以下がより好ましく、さらに±10%が好ましい。また、両組成物のヘイズの差としては±10%以下が好ましく、±3%以下がより好ましく、±1%以下がさらに好ましい。また、樹脂組成物としては、可視光透過率が80%以上、ヘイズが10%以下、さらに可視透過率が85%以上、ヘイズ5%以下を満足するものが透明性に優れ有用であるが、かかる樹脂組成物は本発明の樹脂粒子を用いて容易に製造できる。
【0110】
バインダー樹脂中に本発明の樹脂粒子が分散している組成物は、本発明の樹脂粒子が分散しているモノマー分散体を重合反応させて製造してもよいが、溶融したバインダー樹脂に本発明の樹脂粒子を加え混合して製造してもよい。或いは、バインダー樹脂の溶液と本発明の樹脂粒子の分散体を均一に混合したり、溶融したバインダー樹脂に本発明の樹脂粒子の分散体を均一に混合した後に溶媒を除去してもよい。
【0111】
本発明の樹脂組成物に占める樹脂粒子の割合は適宜調整すればよいが、例えば、分組成物全体に対して0.1質量%以上、99質量%以下とすることができる。
【0112】
本発明の樹脂組成物の形状は特に制限されない。例えば、板、シート、フィルム、繊維などへ成形してもよい。
【0113】
本発明の樹脂組成物は、溶媒を含む塗料として利用することも可能である。より具体的には、本発明の樹脂粒子を溶媒に分散させ、また、バインダー樹脂を溶媒中に分散または溶解させることにより、塗料とすることができる。かかる溶媒としては、従来公知の有機溶媒であってもよい。或いは、樹脂粒子を溶解または膨潤させないように、水や、水とその他の有機溶媒を含む水系のものも好適に使用できる。
【0114】
本発明の樹脂組成物は、上述したように光学材料等として非常に有用である。特に正方晶の酸化ジルコニウムは高い屈折率を示すので、正方晶酸化ジルコニウムからなるナノ粒子を構成成分とする樹脂組成物は光学材料として有用である。例えばかかる光学材料は、特に、光拡散フィルム、光拡散板、防眩フィルムなどの材料として有用である。
【0115】
本発明の樹脂組成物を光拡散板として利用する場合におけるバインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−スチレン樹脂などが好適である。
【0116】
本発明の樹脂組成物を光拡散板とする場合には、樹脂組成物を溶融加工などにより板状やシート状に成形すればよい。かかる光拡散板は、液晶ディスプレイ装置のバックライトユニットなどで用いられる。
【0117】
本発明の樹脂組成物を光拡散板とする場合、樹脂粒子とバインダー樹脂の合計における樹脂粒子の割合は0.1質量%以上、50質量%以下程度とすることが好ましく、0.5質量%以上、10質量%以下とすることがより好ましい。
【0118】
本発明の樹脂組成物を光拡散フィルムとして利用する場合におけるバインダー樹脂としては、樹脂粒子との親和性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂や(メタ)アクリル−スチレン樹脂などが好適である。
【0119】
本発明に係る光拡散フィルムは、樹脂組成物を溶媒に分散させて上で基材上に塗布し、次いで乾燥し、必要に応じて樹脂を硬化することにより製造することができる。基材としては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを用いることができる。
【0120】
本発明に係る光拡散フィルムは、液晶ディスプレイ装置に適用することができる。
【0121】
本発明の樹脂組成物を光拡散フィルムとする場合、樹脂粒子とバインダー樹脂の合計における樹脂粒子の割合は1質量%以上、80質量%以下程度とすることが好ましく、5質量%以上、50質量%以下とすることがより好ましい。
【実施例】
【0122】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0123】
なお、各酸化ジルコニウムナノ粒子の物性の測定方法は、以下の通りである。
【0124】
粉末X線回折
酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造は、全自動多目的X線回折装置(スペクトリス社製、XPert Pro)を用いて測定した。測定条件は以下の通りである。
X線源: CuKα(0.154nm)
X線出力設定: 45kV、40mA
ステップサイズ: 0.017°
スキャンステップ時間: 5.08秒
測定範囲: 5〜90°
測定温度: 25℃
【0125】
また、得られたX線回折チャートを解析ソフト(XRayCrystal)で解析し、式(1)から結晶性を示すC値を算出した。
【0126】
平均粒子径
酸化ジルコニウムナノ粒子を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)で観察した。拡大観察された粒子を任意に100個選択し、各粒子の長軸方向の長さを測定してその平均値を平均粒子径とした。
【0127】
実施例1
(1) ネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(1)の製造
40℃の純水(640g)に水酸化ナトリウム(80g、キシダ化学社製、特級)を攪拌下添加し、溶解した。次いで、ネオデカン酸(396.9g、ジャパンエポキシレジン社製)を攪拌下添加し、ネオデカン酸ナトリウム水溶液を調製した。次に、当該溶液を80℃まで加熱し、攪拌下、オキシ塩化ジルコニウム(585.99g、ZrOCl2・8H2O、第一希元素化学工業社製、ジルコゾール ZC−20)を20分間かけて投入した。その後80℃で1.5時間攪拌を続けたところ、白色で粘調なネオデカン酸ジルコニウムが生成した。水相を除去した後、当該ネオデカン酸ジルコニウムを純水で十分に水洗した。次いで、当該ネオデカン酸ジルコニウムにテトラデカン(92g)を加えて攪拌した。
【0128】
得られたネオデカン酸ジルコニウム−テトラデカン溶液に純水(400g)を混合した。当該混合物を撹伴機付きオートクレーブ内に仕込み、反応容器中の雰囲気を窒素ガスにより置換した。その後、反応混合液を180℃まで加熱し、3時間反応させることにより酸化ジルコニウム粒子を合成した。180℃で反応した際の容器中圧力は0.9MPaであった。反応後の溶液を取出し、底部にたまった沈殿物を濾別してアセトンで洗浄した後に乾燥した。乾燥後の当該沈殿物(80g)をトルエン(800mL)に分散させたところ、白濁溶液となった。次に、精製工程として定量濾紙(アドバンテック東洋社製、No.5C)にて再度濾過し、沈殿物中の粗大粒子などを除去した。次に、濾液を減圧濃縮したトルエンを除去することで白色の酸化ジルコニウムナノ粒子を回収した。
【0129】
得られた酸化ジルコニウムナノ粒子(10g)をトルエン(90g)に分散させて透明溶液を調製した。当該溶液に表面処理剤として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(1.5g、信越化学工業社製、KBM−503)を添加し、90℃で1時間加熱還流した。次いで、還流処理後の溶液にn−へキサンを添加することで分散粒子を凝集させて溶液を白濁させた。白濁液から凝集粒子を濾紙により分離後、室温で真空乾燥し、ネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理された酸化ジルコニウムナノ粒子を調製した。
【0130】
得られた被覆酸化ジルコニウムナノ粒子の結晶構造をX線回折装置にて確認したところ、正方晶と単斜晶の結晶構造に帰属される回折線が検出された。回折線の強度から、結晶構造は主として正方晶からなり、わずかに単斜晶を含むものであることが確認された。また、当該酸化ジルコニウムナノ粒子の粒子径をFE−SEMで測定したところ、平均粒子径は5nmであった。さらに赤外吸収スペクトルにより分析したところ、C−H由来の吸収とCOOH由来の吸収に加えてSi−O−C由来の吸収が認められた。これら吸収は、酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆しているネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに由来するものと考えられる。また、TG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下10℃/分の速度で800℃まで昇温した時の酸化ジルコニウムナノ粒子の質量減少率を測定したところ、18質量%の減少率となった。よって、酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆していたネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランは、粒子全体の18質量%であることが確認された。
【0131】
また、CHNコーダ分析装置によりナノ粒子中の全C含量を測定し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン由来のC量を差し引くことでネオデカン酸由来のC量を算出し、被覆層におけるネオデカン酸量を求めた。その結果、被覆層におけるネオデカン酸に対する3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの存在比率は、モル比で1.5であった。
【0132】
また、粒度分布を測定し、式:σ/x×100[式中、σは粒子の粒度分布の標準偏差を示し、xは粒子の50%累積径(nm)を示す]から変動係数を求めたところ、20%であった。よって、上記ナノ粒子の粒子サイズのバラツキは少ないことが分かった。
【0133】
(2) 酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子の製造
撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業社製、ハイテノールNF−08)4質量部を溶解した脱イオン水600質量部を仕込んだ。別途、スチレン280質量部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学社製、DVB960)120質量部、ジラウロイルパーオキサイド(日本油脂社製、パーロイルL)8質量部、上記ナノ粒子(1)270質量部をビーカーに仕込んで30分間電磁撹拌を行い、均一で透明なモノマー組成物を調製した。得られたモノマー組成物を、先に乳化剤水溶液を加えたフラスコへ投入し、TKホモミキサー(特殊機化工業社製)により6000rpmで5分間撹拌し、均一な懸濁液を得た。
【0134】
上記懸濁液へ窒素ガスを吹き込みながら75℃に加温し、1.5時間撹拌して懸濁重合反応を行った。さらに85℃に昇温して2.5時間熟成した結果、樹脂粒子を含む懸濁液を得た。当該懸濁液に含まれる樹脂粒子の50%累積径と標準偏差をコールターマルチサイザー(ベックマンコールター社製)により測定した。
【0135】
得られた樹脂懸濁液を吸引濾過器により濾別し、樹脂粒子からなるケーキを得た。当該ケーキを80℃で12時間減圧乾燥することによって、樹脂粒子からなるブロック状物を得た。このブロック状物をラボジェットミル(日本ニューマチック工業社製)を用いて解砕し、樹脂粒子を得た。
【0136】
実施例2
上記実施例1において、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの代わりにp−スチリルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−1403、4g)と水(4g)を用いた以外は同様にして、ネオデカン酸とp−スチリルトリメトキシシランで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子(2)を製造した。
【0137】
得られた酸化ジルコニウムナノ粒子(2)をX線構造回折で分析したところ、正方晶と単斜晶に帰属される回折ピークが検出された。回折ピークの強度から、当該ナノ粒子の結晶構造は主に正方晶からなり、わずかに単斜晶を含むものであることが確認された。
【0138】
当該ナノ粒子をトルエンに分散させ、その粒子径をFE−SEMで測定したところ、平均粒子径は5nmであった。
【0139】
当該ナノ粒子(2)を赤外吸収スペクトルにより分析したところ、C−H由来の吸収とCOOH由来の吸収に加えて、Si−O−C由来の吸収が認められた。よって、当該ナノ粒子はネオデカン酸とシランカップリング剤の2種の被覆剤で被覆されていることが確認された。
【0140】
また、当該ナノ粒子(2)をTG−DTA(熱重量−示差熱分析)により、空気雰囲気下10℃/分の速度で800℃まで昇温した時の酸化ジルコニウムナノ粒子の質量減少率を測定したところ、17質量%の減少率となった。よって、酸化ジルコニウムナノ粒子を被覆していた被覆剤の量は、粒子全体の17質量%であることが確認された。また、粒度分布から求めた変動係数は、上記実施例1と同様に20%であった。
【0141】
上記実施例1(2)において、被覆酸化ジルコニウムナノ粒子(1)の代わりに上記被覆酸化ジルコニウムナノ粒子(2)を用いた以外は同様にして、樹脂粒子を製造した。
【0142】
比較例1
比較のために、上記実施例1(2)において、ネオデカン酸と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子の代わりにネオデカン酸のみで被覆された酸化ジルコニウムナノ粒子を用いて樹脂粒子を製造した。
【0143】
比較例2
比較のために、上記実施例1(2)において、酸化ジルコニウムナノ粒子を用いないで樹脂粒子を製造した。
【0144】
試験例1 分散性の観察
実施例1、2および比較例1、2で得た樹脂粒子の透明性を目視で観察した。また、樹脂粒子の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。結果を表1に示す。
【0145】
試験例2 屈折率の測定
実施例1、2および比較例1、2で得た樹脂基板について、アッベ屈折計(アタゴ社製、DR−M2)により屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
上記結果の通り、ネオデカン酸のみに被覆されている酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子(比較例1)は、酸化ジルコニウムナノ粒子が均一分散しておらず凝集していることから透明性を有さず、屈折率の測定さえできなかった。
【0148】
一方、本発明に係る被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子(実施例1と2)では、被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が均一に分散していることから透明性が高い。その上、酸化ジルコニウムナノ粒子を含まない樹脂粒子(比較例2)よりも屈折率が高いことから、光学材料として極めて有用性が高い。
【0149】
実施例3 光拡散フィルムの製造
ポリエステルポリオール100質量部、多官能イソシアネート(住化バイエルウレタン社製、スミジュールN3200)20質量部、および帯電防止剤2質量部を含むバインダー樹脂組成物中に、実施例1、実施例2または比較例1の樹脂粒子50質量部を混合して塗布用組成物を調製した。当該塗布用組成物を厚さ100μmの透明二軸延伸ポリエステルフィルムの表面にロールコート法により塗布した。当該塗布膜を室温で1時間放置した後に80℃で2時間乾燥し、ポリエステルフィルム上に膜厚15μmの膜が形成された光拡散フィルムを製造した。
【0150】
得られた各光拡散フィルムについて、濁度計(日本電色工業社製、NDH−1001DP)を用いて全光線透過率とヘイズ値を測定した。また、各光拡散フィルムを導光板方式のバックライト装置の上面に置き、輝度計(TOPCON社製、BM−7)を用いて輝度を測定した。結果を表2に示す。
【0151】
【表2】

【0152】
上記結果の通り、ネオデカン酸のみに被覆されている酸化ジルコニウムナノ粒子を構成成分とする光拡散フィルムに比べ、本発明に係る樹脂粒子を含む光拡散フィルムは光線透過率と輝度が高いことが実証された。
【0153】
実施例4 光拡散板の製造
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアプラスチック社製、ユーピロンE2000FN)100質量部、実施例1、実施例2または比較例1の樹脂粒子0.5質量部、酸化防止剤(チバスペシャリティケミカル社製、イルガノックス2215、フェノール・リン酸・ラクトンの3種混合)0.05質量部、および蛍光増白剤(チバスペシャリティケミカル社製、ユビテックスOB、オキサゾール系)0.003質量部を、ベント・ギアポンプ付き・3本ロール・2本ロール圧着ラミネート装置付きのシート押出成形機に供給した。次いで、成形温度280℃でシート成形を行い、厚さ2mmの光拡散板を製造した。
【0154】
得られた光拡散板を縦231mm、横321mmの直方形に切断した。15インチ液晶ディスプレイ装置用の直下型バックライトユニットにこの光拡散板を組み込んだ。当該バックライトユニットの冷陰極管ランプの強度が10,000cd/m2となるように調整し、測定試料の中心点における輝度を輝度計(TOPCON社製、BM−7)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0155】
【表3】

【0156】
上記結果の通り、ネオデカン酸のみに被覆されている酸化ジルコニウムナノ粒子を構成成分とする光拡散板に比べ、本発明に係る樹脂粒子を含む光拡散板は輝度が高いことが実証された。
【0157】
実施例5 防眩フィルムの製造
実施例1、実施例2または比較例1で得た各樹脂粒子3質量部とトルエン20質量部を十分に撹拌混合した。当該混合液に、アクリル系電離放射線硬化樹脂40質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティケミカル社製、イルガキュア907)2質量部、メチルエチルケトン23質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル2質量部、およびレベリング剤(ビックケミー社製、BYK320)を加え、十分に撹拌して塗工液を調製した。厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製、フジタック)の片面に当該塗工液をバーコーターにより塗布した。当該塗布膜を80℃のトライヤーで乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて300mJ/cm2の紫外線を照射して樹脂成分を硬化させることにより防眩フィルムを製造した。
【0158】
各防眩フィルムの裏面に黒フィルムを貼り合わせ、2mの距離より10000cd/m2の蛍光灯を映し、その反射像のボケの程度を下記の基準により評価した。
○:蛍光灯の輪郭が判別できない
×:蛍光灯の輪郭が明確に判別できる
【0159】
また、各防眩フィルムについて、写像測定器(スガ試験機社製、ICB−1DD)と0.5mm幅の光学櫛を用いて、JIS K7150に従って透過鮮明度を測定した。
【0160】
さらに各防眩フィルムを、パーソナルコンピュタに接続した液晶モニタ(15インチXGA、TFT−TN方式、正面輝度:350cd/m2、正面コントラスト:300対1、表面AG:なし)の表面に貼り合わせ、文字のボケ具合いを下記の基準により評価した。結果を表4に示す。
○:文字の輪郭は全くボケていない
×:文字の輪郭がボケており、強い違和感が感じられる
【0161】
【表4】

【0162】
上記結果の通り、ネオデカン酸のみに被覆されている酸化ジルコニウムナノ粒子を構成成分とする防眩フィルムは、防眩性には優れているものの、ナノ粒子の分散性が悪いために透明性が低く文字ボケを起こすものであった。一方、本発明に係る樹脂粒子を含む光拡散フィルムは防眩性と共に透明性にも優れており、文字ボケも起こさなかった。よって、本発明に係る防眩フィルムは非常に実用性の高いものであることが実証された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ジルコニウムナノ粒子を含む樹脂粒子を製造する方法であって、
水系溶媒中に少なくともモノマーおよび被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を含む液滴を分散させた反応液を調製する工程;および、
上記液滴中で重合反応を行う工程;を含み、
上記被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が2種以上の被覆剤により被覆されており、且つ当該被覆剤の少なくとも1種が下記式(I)で表されるものであることを特徴とする製造方法。
1−COOH ・・・ (I)
[式中、R1は炭素数6以上の炭化水素基を示す。]
【請求項2】
酸化ジルコニウムとして正方晶の酸化ジルコニウムを含む被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を用いる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
1が炭素数6以上の分枝鎖状炭化水素基を示す被覆酸化ジルコニウムナノ粒子を用いる請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
樹脂マトリクス中に被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が分散している樹脂粒子であって、
当該被覆酸化ジルコニウムナノ粒子が2種以上の被覆剤により被覆されており、且つ当該被覆剤の少なくとも1種が下記式(I)で表されるものであることを特徴とする樹脂粒子。
1−COOH ・・・ (I)
[式中、R1は炭素数6以上の炭化水素基を示す。]
【請求項5】
少なくとも請求項4の樹脂粒子とバインダー樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5の樹脂組成物からなる光拡散フィルム。
【請求項7】
請求項5の樹脂組成物からなる防眩フィルム。
【請求項8】
請求項5の樹脂組成物からなる光拡散板。

【公開番号】特開2009−24068(P2009−24068A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187668(P2007−187668)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】