説明

酸化チタン化合物の製造方法、活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法および活性金属担持酸化チタン化合物微粒子の製造方法

【課題】可視光照射下で光触媒として用いたときに、殺菌速度と有害ガス分解速度に優れる酸化チタン化合物を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を製造する方法であって、チタン塩をアルカリ化合物と反応させまたはチタン塩を加水分解反応させて原料酸化チタンを作製した後、該原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成することにより、鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を得ることを特徴とする酸化チタン化合物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を製造する方法、活性金属担持酸化チタン化合物を製造する方法および活性金属担持酸化チタン化合物微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは、白色顔料として古くから利用されており、近年は化粧品などの紫外線遮蔽材料、光触媒、コンデンサ、サーミスタの構成材料あるいはチタン酸バリウムの原料等電子材料に用いられる焼結材料に広く利用され、特にここ数年、光触媒としての利用が盛んに試みられ、光触媒反応の用途開発が盛んに行われるようになっている。
【0003】
この酸化チタン光触媒の用途は非常に多岐に亘っており、水の分解による水素の発生、酸化還元反応を利用した有機化合物の合成、排ガス処理、空気清浄、防臭、殺菌、抗菌、水処理、照明機器等の汚れ防止等、数多くの用途開発が行われている。
【0004】
しかしながら、酸化チタンは、可視光付近の波長領域において大きな屈折率を示すため、可視光領域では殆ど光吸収を生じない。屋内での蛍光灯などの下での利用を考えると、蛍光灯の光はスペクトルのほとんどが400nm以上の可視光波であり、光触媒として十分な特性を発現することができないことから、可視光領域での触媒活性を発現させることができる、より利用性の高い光触媒の開発が望まれている。
【0005】
特に、高齢化社会を迎えるにあたって、抵抗力の弱い高齢者を考慮した施設内での抗菌需要、または病院内における院内感染防止のための抗菌需要は大きくなってきている。また、地球環境保全の見地から、低毒性で安全性の高い、環境対応型の抗菌材料が求められるようになっている。
【0006】
加えて、建築物の気密性の向上が進むにつれて、換気性が低下する構造物が増加しているため、室内大気の汚染度上昇が問題になりつつあり、上述の高齢者施設・病院に加えてホテル・トイレなどの公共施設における空気清浄度の向上や悪臭の消去に対する需要も年々増加している。
【0007】
これらの需要に対して、従来の技術においては、殺菌力の強い有機系殺菌剤または無機系殺菌剤を配合した塗料を室内の壁等に塗布したり、あるいは、VOC(揮発性有機化合物)ガスや悪臭ガスの吸着能を持った担体へこれらの殺菌剤を担持したものを配合した塗料が使用される場合があった。
【0008】
しかし、有機系殺菌剤は、毒性が高く安全性に問題があり、また無機系殺菌剤は、殺菌成分に対する耐性菌の発生により効果がなくなるという問題がある。さらにこれらの従来型抗菌剤によって殺菌が行われた場合でも、その細菌の持つ毒素や細菌の死骸が残留する、という問題は解決できない。また、VOCガスに対する担体吸着能は、その効果に限度がある。
【0009】
一方、純粋な酸化チタンは、紫外光照射下における光触媒効果によって、抗菌作用や、空気清浄作用、消臭作用を発現するが、上記高齢者施設、病院、ホテル、トイレ等の高い需要が期待される使用環境は、そのほとんどが紫外光の少ない室内環境であるため、従来の酸化チタンでは期待する効果を発現することができない。
【0010】
そこで、本出願人は、室内の蛍光灯の光でも光触媒としての触媒活性を発現することができる、利用性の高い酸化チタン光触媒の開発を行ってきた。
【0011】
例えば、本出願人は、硫黄原子がチタンサイトに導入された 硫黄原子導入酸化チタンに鉄等の金属種を含有させた酸化チタン化合物を提案している(特許文献1参照)。
【0012】
この酸化チタン化合物を、室内建材や壁に塗布し、またはコーティングした場合には、蛍光灯照射下においても、抗菌作用、空気清浄作用、消臭作用を発現し、また細菌の持つ毒素や細菌の死骸をも分解することができ、かつその効果は物理的な剥離がないかぎり持続することが可能である。
【0013】
しかしながら、上述の抗菌、消臭、空気清浄化の需要においては、可能な限り早く効果が発現することが求められ、従来よりもさらに優れた殺菌速度、有害ガス分解速度を達成し得るものが求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開2008/081957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような状況下、本発明は、可視光照射下で光触媒として用いたときに、殺菌速度と有害ガス分解速度に優れる酸化チタン化合物を簡便に製造する方法を提供するとともに、活性金属担持酸化チタン化合物および活性金属担持酸化チタン化合物微粒子を簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記技術課題を解決すべく、本発明者等が鋭意検討を行ったところ、チタン塩をアルカリ化合物と反応させまたはチタン塩を加水分解反応させて原料酸化チタンを作製した後、該原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成することにより、鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を作製することにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、
(1)鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を製造する方法であって、
チタン塩をアルカリ化合物と反応させまたはチタン塩を加水分解反応させて原料酸化チタンを作製した後、
該原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成することにより、
鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を得る
ことを特徴とする酸化チタン化合物の製造方法、
(2)前記原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成した後、得られた焼成物にさらに硫黄化合物または窒素化合物を混合し、再焼成する上記(1)に記載の酸化チタン化合物の製造方法、
(3)前記鉄化合物が2価の鉄化合物である上記(1)または(2)に記載の酸化チタン化合物の製造方法、
(4)前記原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、前記鉄化合物を、鉄原子換算で0.02〜0.8質量部混合する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酸化チタン化合物の製造方法、
(5)前記原料酸化チタンまたは焼成物に添加する硫黄化合物がチオ尿素類である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の酸化チタン化合物の製造方法、
(6)活性金属担持酸化チタン化合物を製造する方法であって、
上記(3)〜(5)のいずれかに記載の方法により酸化チタン化合物を作製した後、
得られた酸化チタン化合物に対し、さらに、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種の活性金属種を接触させ、担持することにより、
活性金属担持酸化チタン化合物を得る
ことを特徴とする活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法、
(7)前記銅化合物の担持が、酸化チタン化合物と銅化合物とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーにアルカリを添加してスラリーのpHを6〜9に調整することにより行われる上記(6)に記載の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法、
(8)前記銀化合物の担持が、酸化チタン化合物と銀化合物とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーに水素化ホウ素ナトリウムを添加して行われる上記(6)に記載の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法、
(9)前記酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、前記銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種を、銅原子または銀原子換算した総量で0.5〜10質量部接触させ、担持する上記(6)〜(8)のいずれかに記載の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法、
(10)上記(6)〜(9)のいずれかに記載の方法により、酸化チタン化合物に対し、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種の活性金属種を接触させた後、さらに得られた接触物を解砕する活性金属担持酸化チタン化合物微粒子の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可視光照射下で光触媒として用いたときに、殺菌速度と有害ガス分解速度に優れる酸化チタン化合物を簡便に製造する方法を提供するとともに、活性金属担持酸化チタン化合物および活性金属担持酸化チタン化合物微粒子を簡便に製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず、本発明の酸化チタン化合物の製造方法について説明する。
【0020】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法は、鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を製造する方法であって、チタン塩をアルカリ化合物と反応させまたはチタン塩を加水分解反応させて原料酸化チタンを作製した後、該原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成することにより、鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を得ることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法においては、チタン塩をアルカリ化合物と反応させまたはチタン塩を加水分解反応させて原料酸化チタンを作製する。
【0022】
チタン塩としては、例えば、チタンアルコキシド等の有機金属化合物、あるいは、四塩化チタン、三塩化チタン等のチタン塩化物や、硫酸チタニル、硫酸チタン等の硫酸塩のような無機塩が挙げられる。これらのうち、取り扱い性や経済性を考慮すると、チタン塩としては、四塩化チタン、硫酸チタニル、硫酸チタンが好ましい。
【0023】
チタン塩をアルカリ化合物と反応させて原料酸化チタンを作製する場合、チタン塩のアルカリ反応を行う方法としては、チタン塩を水に溶解させた水溶液を調製し、この水溶液を撹拌しながら、アルカリを混合して、上記チタン塩とアルカリとを接触させる方法が挙げられ、更に具体的には、例えば、
(アルカリ反応法1)チタン塩の水溶液に対して、アルカリの水溶液を滴下し、両者を接触させる方法、
(アルカリ反応法2)アルカリの水溶液に対して、チタン塩の水溶液を滴下し、両者を接触させる方法、
(アルカリ反応法3)反応容器にpHを調整した水を入れておき、その中に、チタン塩の水溶液とアルカリの水溶液とを滴下し、両者を接触させる方法、
を挙げることができる。
【0024】
上記アルカリとしては特に制限されず、例えば、アンモニア、アンモニア水等を挙げることができる。これらのうち、アンモニア又はアンモニア水は、金属成分を含有しないものであることから、得られる酸化チタン化合物の可視光領域における光触媒活性を制御する上で好ましい。
【0025】
上記アルカリ反応法1〜アルカリ反応法3において、反応温度は、5〜80℃が好ましく、10〜60℃がより好ましい。反応温度が5℃未満だと反応が起こり難くなり、また、80℃を超えると、平均粒径が小さく且つ比表面積が大きいアルカリ反応物を得難くなる。
【0026】
次いで、アルカリ反応法1〜アルカリ反応法3でチタン塩とアルカリとを接触させて得られたスラリーから、ろ過、遠心分離等の方法により生成した反応物を分離することにより、あるいは、溶媒を蒸発除去することにより、固形状の反応物を得ることができ、得られた反応物を必要に応じ洗浄、乾燥または加熱処理することにより、原料酸化チタンを得ることができる。
【0027】
上記乾燥または加熱処理の際、処理温度は、通常100〜450℃であり、乾燥雰囲気は、空気、酸素ガスのような酸化性雰囲気や、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガス雰囲気や、真空雰囲気等が挙げられる。また、乾燥または加熱処理時間は、処理温度により適宜調整されるが、1秒〜24時間が好ましい。乾燥または加熱処理温度が上記範囲内にあることにより、比表面積が100〜400m2/g、好ましくは200〜400m2/gであり、且つ原料酸化チタンを構成するアナターゼ型酸化チタン結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.70°〜2.50°、好ましくは2θ=1.0°〜2.50°である乾燥または加熱処理物を得易くなる。
【0028】
原料酸化チタンの製造方法の一例として、例えば、反応容器にpHを3.0〜4.5に調整した水を入れておき、その中に四塩化チタン水溶液とアルカリ水溶液とを、pH3.5〜4.5、温度10℃〜80℃、好ましくはpH3.8〜4.2、温度10℃〜60℃を維持するように1.5〜7.5時間かけて滴下、反応させたのち、得られたスラリーをデカンテーション法等によって導電率が1500mS/m以下、好ましくは300〜1200mS/mになるまで純水で洗浄し、これを乾燥または加熱処理することによって製造することができる。上記乾燥または加熱処理は、通常、空気、酸素ガスのような酸化性ガスの雰囲気下や、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガスの雰囲気下で、100〜450℃の温度下、1〜24時間処理することにより行うことができる。
【0029】
このように、本発明の酸化チタン化合物の製造方法において、チタン塩をアルカリ化合物と反応させて原料酸化チタンを作製する場合、チタン塩の反応条件(pH、温度、アルカリ化合物の添加速度など)や反応物の加熱処理条件(加熱処理温度、加熱処理時間等)を適宜選択することにより、所望の原料酸化チタンを得ることができる。
【0030】
また、チタン塩を加水分解反応させて原料酸化チタンを作製する場合、上記のチタン塩の溶液、例えば、チタンアルコキシド等の有機金属化合物、あるいは、四塩化チタン、三塩化チタン等のチタン塩化物や、硫酸チタニル、硫酸チタン等の硫酸塩のような無機塩の溶液に、水を加え、必要に応じ、加温する方法、例えば、チタンアルコキシド等の有機金属化合物を有機溶媒に分散した溶液に、水を加え、チタン有機金属化合物を加水分解する方法、四塩化チタン、三塩化チタン等のチタン塩化物や、硫酸チタニル、硫酸チタン等の硫酸塩のような無機塩の水溶液を加温または加圧することにより原料酸化チタンを得ることができる。
【0031】
このように、本発明の酸化チタン化合物の製造方法において、チタン塩を加水分解反応させて原料酸化チタンを作製する場合、チタン塩の加水分解条件(pH、加水分解速度、加水分解温度など)、スラリーからの固形物の分離、あるいは、固形物を得るために必要に応じて実施する洗浄、乾燥などの処理条件、反応物の加熱処理条件(加熱処理温度、加熱処理時間等)を適宜選択することにより、所望の原料酸化チタンを得ることができる。
【0032】
得られる原料酸化チタンは、比表面積が100〜400m/g、好ましくは200〜400m2/gであり、X線回折分析による原料酸化チタンを構成するアナターゼ型結晶の(101)面の回折ピークの半値幅が2θ=0.70〜2.50°、好ましくは2θ=1.0°〜2.50°であり、かつ結晶構造がアナターゼ主体である原料酸化チタンが好ましい。
【0033】
本明細書において、結晶構造の主体がアナターゼ型であるとは、ASTM D 3720−84に準拠する方法により、下記の式で定義されるルチル化率を算出した場合に、20質量%以下であることを意味する。
【0034】
ルチル化率(質量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Id)
(ただし、Ir:X線回折パターンにおける原料酸化チタンを構成するルチル型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数110)のピーク面積、Id:X線回折パターンにおける原料酸化チタンを構成するアナターゼ型酸化チタン粉末の最強干渉線(面指数101)のピーク面積である。)
【0035】
原料酸化チタンはブルッカイト型結晶を含んでいても構わない。この場合、原料酸化チタンのX線回折パターンにおける「アナターゼ型結晶酸化チタンの面指数101のピーク面積、ブルッカイト型結晶酸化チタンの面指数120及び面指数111のピーク面積の合計」に対する「ブルッカイト型結晶酸化チタンの面指数121のピーク面積」の比が、10%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法においては、原料酸化チタンを作製した後、該原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成する。
【0037】
上記鉄化合物としては、2価の鉄化合物や3価の鉄化合物を挙げることができ、具体的には、鉄の酸化物、鉄の水酸化物、鉄の塩が挙げられる。上記鉄の塩としては、鉄の塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機金属塩、あるいは有機鉄化合物が挙げられる。
【0038】
鉄化合物として、より具体的には、Fe、Fe、FeO(OH)、FeCl、FeCl、Fe(SO、Fe(NO、FeI、FeI、クエン酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(II)、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸(III)アンモニウム鉄、硫化鉄(II)、硫酸鉄(II)、リン酸鉄(II)、蓚酸アンモニウム鉄(III)、2−エチルヘキサン酸鉄(III)、ナフテン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、鉄メトキシド、鉄エトキシド、鉄i−プロポキシド、ビス(シクロペンタジエニル)鉄、ビス(エチルシクロペンタジエニル)鉄、酢酸鉄(II)、蓚酸鉄(II)、酒石酸鉄(II)、フマル酸鉄(II)、乳酸鉄(II)などの無水物や水和物が挙げられる。
これ等の鉄化合物のうち、2価の鉄化合物、例えば、FeCl、FeI、硫酸アンモニウム鉄(II)、硫化鉄(II)、硫酸鉄(II)、リン酸鉄(II)、酢酸鉄(II)、蓚酸鉄(II)、酒石酸鉄(II)、フマル酸鉄(II)、乳酸鉄(II)等の無水物や水和物が好ましく、特に硫酸鉄(II)七水和物、蓚酸鉄(II)二水和物が、潮解性が無く乾式での混合性が良好で、かつ優れた光触媒特性の向上を発現させる点において好ましい。また、硫酸鉄(II)七水和物は、食品添加物としても広く流通しているため、安全性、安定性および廉価性の面において、他の鉄化合物よりも優れていることから、工業的な有用性が高い。
【0039】
原料酸化チタンと鉄化合物とを混合する方法は、特に制限されず、例えば、
(鉄化合物混合法1)原料酸化チタン粉末に対して、鉄化合物粉末を撹拌混合法などによって乾式で混合する方法、
(鉄化合物混合法2)鉄化合物が溶解した液中に原料酸化チタンを分散させた後、溶媒を除去する方法、
(鉄化合物混合法3)原料酸化チタンを水中に分散させたスラリーに、鉄化合物が溶解した水溶液を添加撹拌した後、アンモニア水などのアルカリで中和し、これをデカンテーション法などによって水で洗浄したのち溶媒除去を行う方法、
(鉄化合物混合法4)原料酸化チタンを水に分散させたスラリーに、鉄化合物が溶解した水溶液を添加し撹拌した後、NaBHなどの還元剤で還元後、溶媒除去を行う方法、
(鉄化合物混合法5)原料酸化チタンの流動層中に鉄化合物が溶解したスラリーを噴霧した後、乾燥および焼成処理を行う方法、
(鉄化合物混合法6)原料酸化チタンの流動層に、鉄化合物を気相蒸着法により担持した後、さらに焼成処理を行う方法、
などが挙げられる。これらの混合方法のうち、原料酸化チタンと鉄化合物とを乾式で混合する方法(鉄化合物混合法1)が、操作性の点から好ましい。
【0040】
鉄化合物の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、鉄原子換算で0.02〜0.8質量部であることが好ましく、0.03〜0.6質量部であることがより好ましく、0.05〜0.5質量部であることがさらに好ましい。鉄化合物の混合量が、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、鉄原子換算で0.02〜0.8質量部であることにより、得られる酸化チタン化合物または後述する活性金属担持酸化チタン化合物の可視光領域における光触媒活性を向上させることができる。
【0041】
原料酸化チタンと混合する硫黄化合物としては、有機硫黄化合物が好ましく、特に環状または非環状のチオ尿素類が好ましい。
【0042】
例えば、1‐アセチル‐2‐チオ尿素(CHCONHCSNH)、アミジノチオ尿素(CS)、チオ尿素(HNCSNH)、1‐(1‐ナフチル)‐2‐チオ尿素(C1110S)、フェニルエチルチオ尿素(C12S)、マロニルチオ尿素(CS)、N‐メチルチオ尿素(CS)、二酸化チオ尿素(HN(NH)CSOH)などを用いることができる。
【0043】
上記硫黄化合物のうち、硫黄原子を酸化チタンのチタンサイトへ導入してなる酸化チタン化合物を作製するためには、原料酸化チタンと反応させる硫黄化合物として、熱により分解し、その分解過程でSOガスやSOガスを生じ得る、分子中に硫黄原子を有する化合物が好ましく、常温で固体または液体である化合物がより好ましく、これらの硫黄化合物として、例えば、含硫黄有機化合物、含硫黄無機化合物、金属硫化物、硫黄などを挙げることができ、具体的には、チオ尿素、チオ尿素の誘導体、硫酸塩などを挙げることができる。これらのうち、特に、環状、非環状のチオ尿素類、中でもチオ尿素が、400〜500℃で完全に分解し、得られる酸化チタン化合物中に残存しないため好ましい。
【0044】
原料酸化チタンと混合する窒素化合物としては、尿素、二酸化尿素、メラミン、グアニジン、シアヌル酸、ビウレット、ウラシルを挙げることができる。
【0045】
原料酸化チタンと硫黄化合物または窒素化合物とを混合する方法としては、特に制限されず、例えば、
(硫黄化合物または窒素化合物の混合法1)原料酸化チタン粉末に対して、硫黄化合物粉末または窒素化合物粉末を撹拌混合法などによって乾式で混合する方法、
(硫黄化合物または窒素化合物の混合法2)硫黄化合物または窒素化合物粉末が溶解した液中に原料酸化チタンを分散させた後、溶媒除去する方法、
(硫黄化合物または窒素化合物の混合法3)原料酸化チタンを水に分散させたスラリーに、硫黄化合物、窒素化合物粉末が溶解した水溶液を添加撹拌し、これをデカンテーション法などによって水で洗浄した後溶媒除去を行う方法、
(硫黄化合物または窒素化合物の混合法4)原料酸化チタンの流動層中に、硫黄化合物または窒素化合物粉末が溶解したスラリーを噴霧した後、乾燥する方法、
(硫黄化合物または窒素化合物の混合法5)原料酸化チタンの流動層に、硫黄化合物または窒素化合物粉末を気相蒸着法により担持する方法、
などを挙げることができる。
【0046】
鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とは、それぞれ個別に原料酸化チタンに混合してもよいし、同時に混合してもよい。これらの混合方法のうち、原料酸化チタンと硫黄化合物または窒素化合物粉末とを同時に乾式で混合する方法が、操作性の点から好ましい。
【0047】
硫黄化合物の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、硫黄原子換算量で0.5〜120質量部であることが好ましく、2〜80質量部であることがより好ましく、3〜50質量部であることがさらに好ましい。また、窒素化合物の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、窒素原子換算量で0.5〜120質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。
【0048】
硫黄化合物の混合量が、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、硫黄原子換算量で0.5〜120質量部であったり、窒素化合物の混合量が、原料酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の量を100質量部とした場合に、窒素原子換算量で0.5〜120質量部であることにより、可視光領域での光触媒活性が良好な酸化チタン化合物を得易くなる。特に、硫黄化合物の混合量を上記範囲とすることにより、酸化チタンのチタンサイトの一部が、0.03〜0.35質量%の硫黄原子で置換されてなる、可視光領域での光触媒活性が良好な酸化チタン化合物を得易くなる。
【0049】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法においては、原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合した後、得られた混合物を焼成する。
【0050】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法においては、原料酸化チタンを作製した後、得られた原料酸化チタンに鉄化合物と硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、得られた混合物を焼成処理することにより、鉄化合物の一部または全部が酸化物に変化し、得られる酸化チタン化合物の表面に含有されて、得られる酸化チタン化合物に高い触媒活性を付与すると考えられる。また、上記原料酸化チタンを、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物と混合した後、得られた混合物を同時に焼成することで、従来の窒素原子や硫黄原子を導入した酸化チタンと鉄化合物との混合物を焼成する場合に比べて、抗菌性能、抗ウイルス性能が良好な酸化チタン化合物が得やすくなる。
【0051】
上記焼成方法としては、例えば、原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合した後、得られた混合物を焼成用容器に投入し蓋をした状態で加熱する方法が挙げられる。
【0052】
上記焼成処理が、完全開放状態で行われると、硫黄化合物から発生するガスの滞留が起こらなくなる。一方、容器内で必要以上にガス圧が上昇することを抑制するために、焼成容器と蓋との間に若干の隙間を開けることが好ましい。
【0053】
上記混合物が硫黄化合物を含有するものである場合、混合物が焼成され、発生する熱によって硫黄化合物が分解されると、分解過程でSOガスが発生し、SOガス中の硫黄原子が、原料酸化チタン中に取り込まれ、原料酸化チタン中のチタン原子の一部と置換されると考えられる。そのため、硫黄化合物の分解により生じるSOガスを雰囲気に滞留させつつ、混合物を焼成することが好ましい。
【0054】
上記混合物が硫黄化合物を含有するものである場合、その焼成は、空気等の酸素含有ガスの存在下で行うことが好ましい。上記酸素含有ガスの供給流量を適宜調節することによって、硫黄化合物の完全分解を促すとともに、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、原料酸化チタンのチタンサイトの一部が、0.03〜0.35質量部の硫黄原子で置換されてなる、鉄化合物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得ることができる。
【0055】
上記混合物が硫黄化合物を含有するものである場合、その焼成温度は、300〜600℃であることが好ましく、400〜500℃であることがより好ましい。原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成する際の焼成温度が300〜600℃の範囲内にあると、得られる酸化チタン化合物の可視光領域での光触媒活性が向上する。
【0056】
上記混合物が硫黄化合物を含有するものである場合、その焼成時間は、0.5〜10時間であることが好ましく、1〜5時間であることがより好ましい。
【0057】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法において、上記原料酸化チタンや鉄化合物との混合物が窒素化合物を含有するものである場合、混合物が焼成され、発生する熱によって窒素化合物が分解されると、分解過程で窒素酸化物ガスが発生し、窒素酸化物ガス中の窒素原子が、原料酸化チタン中に取り込まれ、原料酸化チタン中の酸素原子の一部と置換されると考えられる。そのため、窒素化合物の分解により生じる窒素酸化物ガスを雰囲気に滞留させつつ、混合物を焼成することが好ましい。
【0058】
上記混合物が窒素化合物を含有するものである場合、その焼成は、アンモニアガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0059】
上記混合物が窒素化合物を含有するものである場合、その焼成温度は、200〜500℃であることが好ましい。原料酸化チタンと窒素化合物との混合物を焼成する際の焼成温度が200〜500℃の範囲内にあると、得られる酸化チタン化合物の可視光領域での光触媒活性が向上する。
【0060】
上記混合物が窒素化合物を含有するものである場合、その焼成時間は、0.5〜10時間であることが好ましい。
【0061】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法においては、上記原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成した後、得られた焼成物にさらに硫黄化合物または窒素化合物を混合し、再焼成してもよい。
【0062】
この場合、得られた焼成物に混合する硫黄化合物または窒素化合物の種類、硫黄化合物または窒素化合物の混合割合、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気等は上記と同様である。
【0063】
上記再焼成を行うことにより、得られる酸化チタン化合物や後述する活性金属担持酸化チタン化合物における、光触媒活性を向上させることができる。
【0064】
上記再焼成処理は複数回行ってもよく、焼成処理の回数は、1〜4回であることが好ましいが、焼成処理を簡便に行うという観点から、再焼成処理回数は1回であることがより好ましい。
【0065】
本発明の方法で得られる酸化チタン化合物は、比表面積が、50〜120m/gであることが好ましく、60〜95m/gであることが好ましく、60〜85m/gであることがさらに好ましい。
【0066】
また、本発明の方法で得られる酸化チタン化合物は、X線回折分析における酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.10°〜0.90°、好ましくは2θ=0.20°〜0.70°であり、かつ結晶構造がアナターゼ主体であることが好ましい。
【0067】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法において、得られる酸化チタン化合物の比表面積およびX線回折分析における酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が上記範囲内にあることにより、得られる酸化チタン化合物において、可視光領域における光触媒活性を高めることができる。
【0068】
本発明の酸化チタン化合物の製造方法においては、上記混合物に焼成処理を施すことにより、得られる酸化チタン化合物は、その表面に鉄化合物を含有すると考えられる。また、本発明の酸化チタン化合物の製造方法においては、上記混合物に焼成処理を施すことにより、酸化チタンのチタンサイトへ硫黄原子が導入されるか、または酸化チタンの酸素サイトへ硫黄原子若しくは窒素原子が導入され、あるいは、酸化チタン結晶の格子の隙間に硫黄原子若しくは窒素原子がドーピングされ、あるいは、酸化チタンの結晶粒界に硫黄原子若しくは窒素原子が導入されてなる酸化チタン化合物を得ることができる。
【0069】
本発明の方法において、得られる酸化チタン化合物が硫黄原子を含むものである場合、酸化チタン化合物は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、原料酸化チタンのチタンサイトの一部が0.03〜0.35質量部の硫黄原子で置換されてなるものであることが好ましく、原料酸化チタンのチタンサイトの一部が0.05〜0.30質量部の硫黄原子で置換されてなるものであることがより好ましい。原料酸化チタンのチタンサイトに対する硫黄原子の導入量が上記範囲内にあることにより、得られる酸化チタン化合物の可視光領域における光触媒活性を高めることができる。
【0070】
原料酸化チタンのチタンサイトの一部が硫黄原子に置換されていることの確認は、X線光電子分光法(XPS)分析により行うこができる。原料酸化チタンのチタンサイトの一部が硫黄原子に置換されている場合、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが確認される。
【0071】
一方、原料酸化チタンのチタンサイトの一部が硫黄原子に置換された構造ではなく、原料酸化チタンの酸素原子の一部が硫黄原子で置換されたものも知られており、原料酸化チタンのチタンサイトの一部が硫黄原子に置換されている場合、上記X線光電子分光法(XPS)分析により、S2−に由来する160eV付近の特性ピークが確認される。また、得られる酸化チタン化合物において、原料酸化チタン中の原子の一部が硫黄原子で交換された化合物ではなく、単なる酸化チタンと硫黄との混合物である場合は、169eV付近及び160eV付近のいずれにも特性ピークが確認されない。
【0072】
本発明において、得られる酸化チタン化合物中における硫黄原子の存在状態は、上記何れの形態であってもよい。
【0073】
本発明の方法において、得られる酸化チタン化合物が窒素原子を含むものである場合、酸化チタン化合物は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、原料酸化チタンの酸素原子の一部が0.03〜10質量部の窒素原子で置換されてなるものであることが好ましい。原料酸化チタンの酸素サイトに対する窒素原子の導入量が上記範囲内にあることにより、得られる酸化チタン化合物の可視光領域における光触媒活性を高めることができる。
【0074】
本発明の方法において、得られる酸化チタン化合物が窒素原子を含むものである場合、X線光電子分光法(XPS)による測定スペクトルにおいて400eV付近にピークが確認できるものが可視光照射下において高い光触媒活性を呈し、特に、396eV〜397eV付近にピークが確認できるものがより高い光触媒活性を呈するため、好適である。このとき、酸化チタンのチタン原子と含有される窒素原子とが化学的な結合を有していると考えられ、例えば、酸化チタンの酸素原子の一部が窒素原子に置換された構造を有していると考えられる。
【0075】
次に、本発明の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法について説明する。
【0076】
本発明の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法は、本発明の方法により酸化チタン化合物を作製した後、得られた酸化チタン化合物に対し、さらに、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種の活性金属種を接触させ、担持することにより、活性金属担持酸化チタン化合物を得ることを特徴とするものである。
【0077】
本発明の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法において、酸化チタン化合物を作製する好ましい態様は、上述したとおりである。
【0078】
上記酸化チタン化合物と接触させる銅化合物としては、溶媒に均一に溶解するものであれば特に制限されず、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機金属塩およびこれらの水和物、あるいは有機金属化合物等を挙げることができる。具体的には、CuCl、CuCl、CuSO、CuI、硝酸銅、シュウ酸銅、硫化銅、リン酸銅、塩化アンモニウム銅などが挙げられる。
【0079】
酸化チタン化合物と銅化合物とを接触させ、担持する方法は、特に制限されず、例えば、
(銅化合物担持法1)酸化チタン化合物と銅化合物とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーにアルカリを添加してスラリーのpHを調整する方法、
(銅化合物担持法2)酸化チタン化合物と銅化合物とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーに水素化ホウ素ナトリウムを添加する方法、
(銅化合物担持法3)酸化チタン化合物を液中に分散させた後、銅化合物が溶解した液を添加し、溶媒除去し、乾燥する方法、
(銅化合物担持法4)酸化チタン化合物の流動層中に銅化合物を溶解した液を噴霧し、乾燥する方法、
(銅化合物担持法5)酸化チタン化合物の流動層に、銅化合物を気相蒸着法により担持する方法、
などを挙げることができる。
【0080】
銅化合物担持法1〜銅化合物担持法5のうち、銅化合物担持法1が、銅化合物を安定かつ均一に担持することができるので好ましい。
【0081】
以下、銅化合物担持法1の方法について詳説する。
【0082】
酸化チタン化合物と銅化合物とを混合する水性媒体としては、水または水を主成分とし水溶性有機溶媒を含んでなるものを挙げることができ、水であることが好ましい。
【0083】
酸化チタン化合物と銅化合物とを水性媒体中で混合してなるスラリーのpHは、通常、1.5〜3.5の範囲にあるが、このスラリーにアンモニア水溶液等を添加して、pHを6〜9に調整することが好ましい。
【0084】
上記pH調整によって、銅化合物は、その一部が、水酸化物、塩基性塩、酸化物または銅原子と酸素原子、水素原子、窒素原子、硫黄原子、塩素原子から選ばれる一種以上の原子とを含む固形分に変化すると共に、生成した水酸化物、塩基性塩(例えばCuCl・3Cu(OH))、酸化物または銅原子と酸素原子、水素原子、窒素原子、硫黄原子、塩素原子から選ばれる一種以上の原子とを含む固形分が、担体である酸化チタン化合物の表面に析出して付着する。
【0085】
その後、デカンテーション法などの方法によって、スラリーの導電率が50mS/m以下になるまで純水で洗浄した後、乾燥することによって、目的とする銅化合物が担持された酸化チタン化合物を得ることができる。
【0086】
以上のように、銅化合物の水溶液を添加した後に、アンモニア水溶液を添加してスラリーのpHが6〜9になるように調整することによって銅化合物は所望の水酸化物、塩基性塩または酸化物等となって担持されるとともに、導電率が50mS/m以下になるまで純水で洗浄することによって、担体である酸化チタン化合物の表面に存在する不要成分が充分に除去されるため、その後、加熱処理工程等の特段の処理工程を必要としない。
【0087】
また、本発明の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法において、上記酸化チタン化合物と接触させる銀化合物としては、溶媒に均一に溶解するものであれば特に制限されず、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機金属塩、あるいは有機銀化合物等が挙げられる。
【0088】
具体的には、AgCl、AgI、酢酸銀、硝酸銀などが挙げられる。
【0089】
酸化チタン化合物と銀化合物とを接触させ、担持する方法としては、銅化合物に代えて銀化合物を用いることを除けば、上記銅化合物担持法2〜銅化合物担持法5と同様の方法を挙げることができ、このうち、銅化合物担持法2と同様の方法であることが好ましい。
【0090】
銅化合物担持法2と同様の方法で、酸化チタン化合物と銀化合物とを接触させ、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤で還元処理した場合、その後、上記銅化合物担持法1と同様にして、デカンテーション法などによって洗浄し、次いで乾燥処理することが好ましい。
【0091】
酸化チタン化合物と金属銀とを接触させ、担持する方法としては、銀化合物を溶解した液中に酸化チタン化合物を分散させた後、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)などの還元剤で還元し、溶媒を除去、乾燥する方法が挙げられる。
【0092】
本発明の活性金属担持酸化チタン化合物においては、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種を、担体である酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子または銀原子換算した総量で0.5〜10質量部接触させ、担持することが好ましく、0.5〜7質量部接触させ、担持することがより好ましい。
【0093】
銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種を酸化チタン化合物に接触、担持する量が、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子または銀原子換算した総量で0.5〜10質量部であることにより、得られる活性金属担持酸化チタン化合物において、可視光照射下における抗菌性、殺菌速度および有害ガス分解速度を向上することができる。
【0094】
本発明の活性金属担持酸化チタン化合物微粒子の製造方法においては、酸化チタン化合物に対し、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種の活性金属種を接触させた後、さらに得られた接触物を解砕することが好ましい。
【0095】
上記解砕は、衝撃作用、せん断作用や摩砕作用を利用した解砕装置を用いて行うことが好ましい。
【0096】
衝撃作用、せん断作用や摩砕作用を利用した解砕装置としては、具体的には、高速回転粉砕機、ジェットミル、ビーズミル、ハンマーミル、振動ミル、流星型ボールミルや、ホモジナイザー等の乳化・分散機等からなる解砕装置を挙げることができる。
【0097】
高速回転粉砕機は、ピン、ブレードなどを高速回転させ、衝撃又はせん断作用により、粉体の粉砕を行う装置である。高速回転粉砕機としては、例えば、ピンミルなどが挙げられる。
【0098】
解砕機として高速回転粉砕機を用いる場合、ピンやブレードの回転時における周速は100〜200m/秒であることが好ましく、150〜200m/秒であることが好ましい。また、高速回転粉砕機に対する被処理物(酸化チタン化合物と、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種との接触物)の供給量は、200kg/h以下であることが好ましく、30〜200kg/hであることがより好ましく、30〜100kg/hであることがさらに好ましい。高速回転粉砕機に対する活性金属担持酸化チタン化合物の供給量が200kg/hを超えると、十分な解砕処理が困難となる。また、同供給量が30kg/h未満であると、効率的な粉砕処理を行い難くなる。なお、被処理物が高速回転粉砕機内を循環するタイプの粉砕機では、解砕機内で処理される時間(粉砕時間)は1分以上であることが好ましい。
【0099】
また、ジェットミルは、高圧でノズルから噴射する空気などの気体に粉体を巻き込み、粒子相互又は粒子と衝撃板との衝突により、粉体の粉砕を行う装置である。
【0100】
解砕機としてジェットミルを用いる場合、処理圧力(ノズルから噴射するガス圧力)は、0.5〜1.0MPaであることが好ましい。ジェットミルに対する被処理物の供給量は、300kg/h以下であることが好ましく、10〜300kg/hであることがより好ましく、10〜100kg/hであることがさらに好ましい。ジェットミルに対するに被処理物の供給量が300kg/hを超えると、十分な解砕処理が困難となる。また、同供給量が10kg/h未満であると、効率的な粉砕処理を行い難くなる。
【0101】
解砕機としてビーズミルを用いる場合、回転部の周速度は4〜10m/秒であることが好ましく、4〜8m/秒であることがより好ましく、4〜6m/秒であることがさらに好ましい。また、解砕機内で処理される時間(粉砕時間)は30〜300分であることが好ましい。解砕機としてホモジナイザー等の乳化・分散機等を用いる場合、回転部の回転数は3000〜10000min−1であることが好ましく、5000〜8000min−1であることがより好ましい。また、解砕機内で処理される時間(粉砕時間)は5〜60分であることが好ましく、15〜30分であることがより好ましい。
【0102】
上記解砕処理は、複数の解砕機を順次用いて行ってもよい。
【0103】
上記解砕処理は、被処理物を水や有機溶媒等の溶媒に分散した状態で行ってもよいし、被処理物を乾式(粉末状)のまま行ってもよい。被処理物を溶媒に分散した状態で解砕した場合、解砕後に、適宜溶媒を分離することが好ましい。
【0104】
上記解砕処理により、抗菌性や殺菌速度に優れた活性金属担持酸化チタン化合物の微粒子状物を得ることができる。
【0105】
本発明の方法で得られる微粒子状の活性金属担持酸化チタン化合物は、レーザー光散乱回折法粒度測定機を用いて測定したときの、平均粒子径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径)が500nm以下であるものが好ましく、300nm以下であるものがより好ましい。
【0106】
本発明の方法で得られる活性金属担持酸化チタン化合物または活性金属担持酸化チタン化合物微粒子は、比表面積が、50〜120m/gであることが好ましく、60〜95m/gであることが好ましく、60〜85m/gであることがさらに好ましい。
【0107】
また、本発明の方法で得られる活性金属担持酸化チタン化合物または活性金属担持酸化チタン化合物微粒子は、X線回折分析における酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.10°〜0.90°、好ましくは2θ=0.20°〜0.70°であり、かつ結晶構造がアナターゼ主体であることが好ましい。
【実施例】
【0108】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の例により何ら制限されるものではない。
【0109】
なお、以下の実施例および比較例において、半値幅の測定、結晶型の特定、比表面積の測定、硫黄含有量の測定、抗菌性能試験は、以下の方法により行った。
【0110】
<半値幅の測定方法および結晶型の特定方法>
下記の装置を用い、以下の条件にて、半値幅の測定を行うとともに、結晶型を特定した。
【0111】
X線回折装置 RINT/Ultima+(株式会社リガク製)
X線管球 Cu
管電圧・管電流 40kV、20mA
スリット DS-SS:1度、RS:0.3mm
スキャンスピード 5°/min.
測定範囲 20°〜40°
モノクロメータ グラファイト
測定間隔 0.02度
計数方法 定時計数法
【0112】
得られた原料酸化チタン、酸化チタン化合物または活性金属担持酸化チタン化合物において、これ等の各化合物を構成するアナターゼ型酸化チタンの(101)面のX線回折ピークより、その半値幅(°)を求めた。
【0113】
また、得られた原料酸化チタン、酸化チタン化合物または活性金属担持酸化チタン化合物において、これ等の各化合物を構成する、ルチル型結晶酸化チタンのX線回折パターンにおける最強干渉線(面指数110)のピーク面積(Ir)と、上記酸化チタン化合物を構成する、アナターゼ型酸化チタン粉末のX線回折パターンにおける最強干渉線(面指数101)のピーク面積(Id)とを求め、以下の式でルチル化率を算出し、ルチル化率が20質量%以下であるものをアナターゼ型とした。
ルチル化率(質量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Id)
【0114】
<比表面積の測定>
BET法により測定した。前処理の脱気条件は110℃、30分とした。
【0115】
<硫黄含有量の測定>
硫黄分の含有量は、ICP発光分光法(測定装置:エスアイアイ・ナノテクノロジ−株式会社製 SPS−3100)で測定した。
【0116】
<窒素含有量の測定>
窒素分の含有量は、アンモニア蒸留分離アミド硫酸滴定法により測定した。
【0117】
<抗菌性能(試験菌(黄色ぶどう球菌)に対する抗菌力)試験方法>
試験菌(黄色ぶどう球菌)を普通寒天培地に接種し、35℃、24時間培養した後、生理食塩水を用いて、菌数が107個/mLとなるように作製したものを試験菌液とした。また、精製水を用いて、各活性金属担持酸化チタン化合物の濃度が10mg/mLになるように作製したものを試験試料液とした。
【0118】
上記試験試料液10mLをL字試験管にそれぞれ入れた後、上記試験菌液1mLを接種し、25℃、照度1700〜1800Lxの光照射下と遮光下で、振とう培養し、所定の培養時間の生菌数を、希釈培養法を用いて測定した。また、生理食塩水をブランク(コントロール)試料として、同様に試験を行った。
【0119】
(実施例1)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
以下の方法により、原料酸化チタン粉末を製造した。
【0120】
攪拌機を備えた貯槽中に、出発液として、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:5.7質量%)を用いて、pH3.8±0.5に調整した容量6750mL、液温60℃の酸性水溶液を用意した。
【0121】
上記貯槽中に、撹拌機により撹拌しながら、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:5.75質量%)とアンモニア水溶液(アンモニア濃度:5.75質量%)とを、それぞれ、添加流量が 約32g/分および 約29g/分となるように、連続して5時間をかけて添加し、反応させることにより、原料酸化チタン含有スラリーを生成した。このとき、四塩化チタン水溶液およびアンモニア水溶液を添加した反応液の温度が60℃を維持するようにヒーターを使って調整した。また5時間の添加中は、反応液のpHが4.2±0.2の範囲になるように、各液の流量を適宜調節した。
【0122】
添加終了後、1時間撹拌を続けたのち、アンモニア濃度5.8%のアンモニア水溶液を添加して、スラリーのpHが5になるように調整した。このスラリーを濾過して得られた濾過ケ−キを、原料酸化チタン量に対して8倍量の純水中に投入して分散し、これを濾過するという洗浄操作を、濾液の電導率が30mS/m以下になるまで繰り返した。上記洗浄後の原料酸化チタンケーキをテフロン(登録商標)製バットに入れ、卓上乾燥機にて110℃で24時間乾燥したのち、200℃で3.5時間加熱処理を行うことにより、原料酸化チタン粉末を得た。
【0123】
得られた原料酸化チタン粉末の比表面積は、205m/g、原料酸化チタン粉末を構成する、アナターゼ型酸化チタンの(101)のピークの半値幅2θが1.20°であり、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。
【0124】
(2)鉄化合物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物の調製
上記原料酸化チタン粉末に、硫酸鉄(II)七水和物(特級)(関東化学(株)製)とチオ尿素(特級)(関東化学(株)製)とを添加、混合することにより、原料酸化チタンと硫酸鉄(II)七水和物とチオ尿素との混合物を得た。このとき、硫酸鉄(II)七水和物の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、鉄原子換算で、0.1質量部となるように、また、チオ尿素の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子換算で、6.8質量部となるように調整した。
【0125】
具体的には、上記原料酸化チタン粉末50gと硫酸鉄(II)七水和物粉末0.149gとチオ尿素粉末4.92gとを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合した。
【0126】
上記乾式粉砕混合物のうち55gをチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、300℃で2.5時間焼成した。焼成中は、電気炉内へ大気が300〜350mL/minの流量で流入するように炉の吸気流量を調整した。得られた焼成物を取出し、これを49g分取したものに対して、さらにチオ尿素19.8gを乾式混合することにより、上記焼成物とチオ尿素の混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子換算で、27.8質量部となるように調整した。この混合物をチタン製の容器に装入した後、電気炉に装填し、該炉内へ590〜830mL/minの流量で大気が流入するように炉の吸気流量を調整しながら430℃で2.2時間焼成して、鉄酸化物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
【0127】
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得られた酸化チタン化合物の粉末を45g分取し、これを1130gの純水に投入して撹拌し分散して、pH2.6の分散スラリーを得た。
【0128】
一方、塩化銅(II)・二水和物(特級)(関東化学(株)製)を2.03g秤量し、これを20gの純水に溶解して、塩化銅水溶液を調製した。
【0129】
上記塩化銅水溶液を上記分散スラリーへ投入し、30分間撹拌した(上記塩化銅(II)・二水和物量は、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で3.0質量部に相当する量である)。この時得られた分散スラリーのpHは2.4であった。
【0130】
その後撹拌を継続しながら、撹拌液中に、アンモニア濃度5.8%のアンモニア水溶液をpH7になるまで添加して、担体である酸化チタン化合物粒子の表面に銅化合物を析出させ、担持した。
【0131】
その後 撹拌を止めて静置し、固形分を沈降させてその上澄み液を排出したのち、排出した上澄み液と同量の純水を加えて撹拌するというデカンテ−ション洗浄を、上澄み液の導電率が50mS/m以下になるまで繰り返した。次いで、このスラリ−をろ過し、ろ過ケ−キを卓上乾燥機で110℃で10時間乾燥することにより、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物からなる担体上に銅化合物を担持した活性金属担持酸化チタン化合物を得た。
【0132】
得られた活性金属担持酸化チタン化合物中の硫黄分含有量は0.09質量%であった。
【0133】
また、得られた活性金属担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0134】
また、得られた活性金属担持酸化チタン化合物の比表面積は75m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率19%)、得られた活性金属担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.37°であった。
【0135】
(実施例2)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
実施例1(3)において、塩化銅(II)・二水和物の添加量を、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で4.8質量部に相当する量とした以外は、実施例1と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物からなる担体上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0136】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0137】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0138】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は72m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率19%)、得られた銅化合物酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.37°であった。
【0139】
(実施例3)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
実施例1(3)において、塩化銅(II)・二水和物の添加量を、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で6.8質量部に相当する量とした以外は、実施例1と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線回折法によって分析した結果、銅化合物として塩基性塩化銅(CuCl・3Cu(OH))のピークがあることを確認した。
【0140】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分含有量は0.09質量%であった。
【0141】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0142】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は70m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率19%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅は2θ=0.37°であった。
【0143】
(実施例4)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
実施例1(3)において、塩化銅(II)・二水和物の添加量を、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で9.8質量部に相当する量とした以外は、実施例1と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0144】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0145】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0146】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は68m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率19%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.37°であった。
【0147】
(実施例5)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
実施例1(1)において、200℃の熱処理を行わなかったこと、および実施例1(2)において、焼成条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物および銅化合物担持酸化チタン化合物を作製した。
【0148】
(1)原料酸化チタン粉末
実施例1(1)と同様にして合成した洗浄後の原料酸化チタンケーキをテフロン(登録商標)製バットに入れ、卓上乾燥機にて110℃で24時間乾燥し、原料酸化チタン粉末を得た。
【0149】
得られた原料酸化チタン粉末の比表面積は、245m/g、原料酸化チタン粉末を構成する、アナターゼ型酸化チタンの(101)のピークの半値幅2θが1.30°であり、アナターゼ主体の結晶(ルチル化率:0%)であった。
【0150】
(2)鉄化合物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物の調製
上記(1)で得られた原料酸化チタン粉末に、硫酸鉄(II)七水和物(特級)(関東化学(株)製)とチオ尿素(特級)(関東化学(株)製)とを添加、混合することにより、原料酸化チタンと硫酸鉄(II)七水和物とチオ尿素との混合物を得た。このとき、硫酸鉄(II)七水和物の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、鉄原子換算で、0.1質量部となるように、また、チオ尿素の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子換算で、6.8質量部となるように調整した。
【0151】
具体的には、上記原料酸化チタン粉末50gと硫酸鉄(II)七水和物粉末0.149gとチオ尿素粉末4.92gとを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合した。
【0152】
上記乾式粉砕混合物のうち55gをチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、300℃で1時間保持した後、さらに昇温して450℃で1時間保持して焼成した。300℃保持までの焼成中は、電気炉内へ大気が300〜350mL/minの流量で流入するように炉の吸気流量を調整し、それ以降は該炉内へ590〜830mL/minの流量で大気が流入するように炉の吸気流量を調整しながら焼成して、鉄酸化物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
【0153】
(3)活性金属担持処理
得られた鉄酸化物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物に対して、実施例1(3)と同様の方法で、塩化銅(II)・二水和物の添加量を、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で2.8質量部に相当する量となるように、銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0154】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.08質量%であった。
【0155】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0156】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は90m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率14%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.41°であった。
【0157】
(実施例6)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例1(2)と同様にして鉄酸化物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物を得た。(3)活性金属担持処理
(2)で得られた鉄酸化物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物から11.76gを採取し、これと実施例3で得られた銅化合物担持酸化チタン化合物8.24gを合わせて乳鉢で乾式混合した。
【0158】
この混合粉末は、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で2.8質量部に相当する量の銅化合物を含み、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物である。
【0159】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.10質量%であった。
【0160】
また、得られた酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0161】
また、得られた活性金属担持酸化チタン化合物の比表面積は75m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率18%)、得られた活性金属担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.37°であった。
【0162】
(実施例7)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末
実施例5(1)と同様にして原料酸化チタン化合物を得た。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
(1)で得た原料酸化チタン化合物を用い、実施例1(2)において、硫酸鉄(II)七水和物(特級)(関東化学(株)製)に代えて蓚酸鉄(II)二水和物(関東化学(株)製)を用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、鉄酸化物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
このとき、蓚酸鉄(II)二水和物の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、鉄原子換算で、0.3質量部となるように調整した。具体的には、上記原料酸化チタン粉末50gと蓚酸鉄(II)二水和物粉末0.29gとチオ尿素粉末4.92gとを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合したものを用いて、鉄酸化物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
(3)活性金属担持処理
(2)で得られた鉄酸化物と硫黄原子とを含む酸化チタン化合物に対して、実施例5(3)と同様の方法で、塩化銅(II)・二水和物の添加量を、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で2.8質量部に相当する量となるように、銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
また、得られた酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
また、得られた活性金属担持酸化チタン化合物の比表面積は71m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率0%)、得られた活性金属担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.35°であった。
【0163】
(比較例1)(鉄化合物を含有しない酸化チタン化合物を用いた銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
実施例1(2)において、硫酸鉄(II)七水和物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、銅化合物担持酸化チタン化合物を製造するために、下記(1)〜(3)の処理を施した。
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
上記(1)で得られた原料酸化チタン粉末にチオ尿素(特級)(関東化学(株)製)を添加、混合することにより、原料酸化チタンとチオ尿素の混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子換算で、6.8質量部となるように調整した。
具体的には、上記原料酸化チタン粉末50gとチオ尿素粉末4.92gとを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合した。
上記乾式粉砕混合物のうち54gをチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、300℃で2.5時間焼成した。焼成中は、電気炉内へ大気が300〜350mL/minの流量で流入するように炉内の吸気流量を調整した。得られた焼成物を取出し、これを49g分取したものに対して、さらにチオ尿素19.8gを乾式混合することにより、上記焼成物とチオ尿素との混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、硫黄原子換算で、27.8質量部となるように調整した。この混合物をチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、炉内へ大気が590〜830mL/minの流量で流入するように炉の吸気流量を調整しながら430℃で2.2時間焼成し、硫黄原子を含む酸化チタン化合物を得た。
【0164】
(3)活性金属担持処理
得られた酸化チタン化合物に対して、実施例1(3)の処理と同様の処理を施して、硫黄原子を含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は84m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率16%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.35°であった。
【0165】
(比較例2)(硫黄原子含有酸化チタン化合物へ、銅化合物および鉄化合物を担持してなる、銅化合物および鉄化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
実施例1(2)において、硫酸鉄(II)七水和物を焼成工程前に添加せず、実施例1(3)において、焼成工程後に塩化鉄(II)・六水和物と塩化銅(II)・二水和物とを共に添加したこと以外は、実施例1と同様にして、酸化チタン系化合物を製造するために、下記(1)〜(3)の処理を施した。
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
比較例1(2)と同様にして、硫黄原子を含む酸化チタン化合物を得た。
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得られた酸化チタン化合物の粉末を45g分取し、これを1130gの純水に投入して撹拌し分散して、pHが2.6の分散スラリーを得た。
【0166】
一方、塩化鉄(II)・六水和物(特級)(和光純薬工業(株)製)0.13gおよび塩化銅(II)・二水和物(特級)(関東化学(株)製)2.03gを秤量し、これらを20gの純水に一緒に溶解して、活性金属含有水溶液を調製した。
【0167】
この活性金属含有水溶液を上記分散スラリーへ投入し、30分間撹拌した。酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、上記塩化鉄(II)・六水和物量は、鉄原子換算で0.1質量部に相当する量であり、また上記塩化銅(II)・二水和物量は、銅原子換算で2.8質量部に相当する量である。この時、スラリーのpHは2.3であった。
【0168】
その後撹拌を継続しながら、撹拌液中に、アンモニア濃度5.8%のアンモニア水溶液をpH7になるまで添加して中和処理を行い、硫黄原子を含む酸化チタン化合物の表面に鉄化合物と銅化合物とを担持した。
【0169】
その後撹拌を止めて静置し、固形分を沈降させてその上澄み液を排出したのち、排除した上澄み液と同量の純水を加えて撹拌するというデカンテ−ション洗浄を、上澄み液の導電率が50mS/m以下になるまで繰り返した。
【0170】
次いで、得られたスラリ−をろ過した後、ろ過ケ−キを卓上乾燥機で110℃、10時間乾燥することにより、硫黄原子を含む酸化チタン化合物上に鉄化合物および銅化合物を担持した銅化合物および鉄化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0171】
得られた銅化合物および鉄化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0172】
また、得られた銅化合物および鉄化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0173】
また、得られた銅化合物および鉄化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は82m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率19%)、得られた銅化合物および鉄化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.35°であった。
【0174】
(比較例3)(実施例1において、鉄化合物を原料酸化チタンの調製工程で加えた銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
攪拌機を備えた貯槽中に、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:4質量%)900gを加えるとともに、塩化鉄(II)・六水和物(特級)(和光純薬工業(株)製)の水溶液を、四塩化チタン水溶液中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、鉄原子換算で0.1質量部となるように加え、60℃に加熱した。次いで、得られた混合液のpHが7.4に維持されるように、アンモニア水を一気に添加して、60℃で1時間中和した。このスラリーを110℃で48時間加熱して水分を蒸発除去して、固形物を得た。得られた固形物の純水洗浄およびろ過を2回繰り返し、ろ過後の粉末を110℃で24時間乾燥して、鉄含有チタン塩アルカリ中和物を得た。
【0175】
この鉄含有チタン塩アルカリ中和物を250℃で、3時間加熱処理し、原料酸化チタン粉末を得た。この原料酸化チタンの比表面積は、290m/g、原料酸化チタン粉末を構成する、アナタ−ゼ型結晶の(101)ピ−クの半値幅が2θ=1.46°であった。
【0176】
(2)硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
上記(1)で得た原料酸化チタン粉末に、チオ尿素(特級)(関東化学(株)製)を添加し、混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子の量が、6.8質量部となるように調整した。
【0177】
具体的には、上記原料酸化チタン粉末50gとチオ尿素粉末4.92gとを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合した。上記乾式粉砕混合物のうち55gをチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、300℃で2.5時間焼成した。焼成中は、電気炉内へ大気が300〜350mL/minの流量で流入するように炉内の吸気流量を調整した。得られた焼成物を取出し、これを49g分取したものに対して、さらにチオ尿素19.8gを乾式混合することにより、上記焼成物とチオ尿素の混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部としたときに、チオ尿素を構成する硫黄原子の量が、27.8質量部となるように調整した。この混合物をチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、炉内へ大気が590〜830mL/minの流量で流入するように炉内の吸気流量を調整しながら430℃で2.2時間焼成して、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
【0178】
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得られた酸化チタン化合物に対し、実施例1(3)と同様にして、活性金属担持処理を施して、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0179】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の硫黄分含有量は0.21質量%であった。
【0180】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0181】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は79m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率15%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.62°であった。
【0182】
実施例1〜7および比較例1〜3によって得られた各化合物を検体として、試験菌(黄色ぶどう球菌)に対する抗菌性能試験を行った。また、上記各化合物を加えない検体をブランクとして同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0183】
【表1】

【0184】
表1より、比較例1のように鉄酸化物を含有しない銅化合物担持酸化チタン化合物、または比較例2のように硫黄原子を含有する酸化チタン化合物に対して、鉄化合物と銅化合物とを同時に担持した銅化合物および鉄化合物担持酸化チタン化合物は、充分な殺菌速度が得られないことが分かる。また、比較例3のように、原料酸化チタン調製時に鉄化合物を添加して作製した銅化合物担持酸化チタン化合物も、必ずしも充分な殺菌速度が得られないことが分かる。
【0185】
これに対し、実施例1〜実施例7で得られた銅化合物担持酸化チタン化合物のように、その表面に鉄酸化物を含有させると同時にチタンサイトへ硫黄原子を導入した酸化チタン化合物からなる担体に、特定活性金属種として銅化合物を担持した酸化チタンは、相互作用力を生じて、光触媒として優れた殺菌速度を発現することが分かる。
【0186】
実施例1〜実施例7で得られた銅化合物担持酸化チタン化合物は、光触媒機能を発揮しない遮光下においても一定の抗菌性能が認められることから、可視光(蛍光灯)の照射下において、活性金属種による抗菌効果と可視光下での光触媒効果との相乗効果により、著しく殺菌速度を向上させるものであることが分かる。
【0187】
(実施例8)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例3(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
硫酸鉄(II)七水和物を、原料酸化チタンを構成する全チタン原子100質量部に対して、鉄原子換算で、0.01質量部となるように加えた以外は、実施例3(2)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得た酸化チタン光触媒担体を用いて、実施例3(3)と同様に処理することにより、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0188】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0189】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0190】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は76m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率15%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.36°であった。
【0191】
(実施例9)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例3(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
硫酸鉄(II)七水和物を、原料酸化チタンを構成する全チタン原子100質量部に対して、鉄原子換算で、0.03質量部となるように加えた以外は、実施例3(2)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得た酸化チタン化合物を用いて、実施例3(3)と同様に処理することにより、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0192】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分含有量は0.09質量%であった。
【0193】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0194】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は67m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率14%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.36°であった。
【0195】
(実施例10)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例3(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン光触媒担体の調製
硫酸鉄(II)七水和物を、原料酸化チタンを構成する全チタン原子100質量部に対して、鉄原子換算で、0.6質量部となるように加えた以外は、実施例3(2)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得た酸化チタン光触媒担体を用いて、実施例3(3)と同様に処理することにより、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0196】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.10質量%であった。
【0197】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0198】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は67m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率16%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.40°であった。
【0199】
(実施例11)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例3(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
硫酸鉄(II)七水和物を、原料酸化チタンを構成する全チタン原子100質量部に対して、鉄原子換算で、1.0質量部となるように加えた以外は、実施例3(2)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得た酸化チタン化合物を用いて、実施例3(3)と同様に処理することにより、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0200】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.10質量%であった。
【0201】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0202】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は62m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率18%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.43°であった。
【0203】
実施例8〜実施例11によって得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を検体として、試験菌(黄色ぶどう球菌)に対する抗菌性能試験を実施例1と同様にして行った。また、銅化合物担持酸化チタン化合物を加えない検体をブランクとして同様の試験を行った。得られた抗菌性能試験結果を、触媒中の金属量の含有割合との関係を明確にするために、実施例3の結果とともに、表2に示す。
【0204】
【表2】

【0205】
表2の結果より、酸化チタン光触媒担体中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、酸化チタン光触媒担体が鉄化合物を鉄原子換算で0.03〜0.6質量部含む場合に、特に殺菌速度が向上することが分かる。
【0206】
(実施例12)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物(微粒子状物分散体)の製造例)
(1)〜(3)銅化合物担持酸化チタン化合物の作製
実施例1(1)〜(3)と同様にして、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の質量を100質量部としたときの混合量が、鉄原子換算で0.1質量部となるように鉄化合物を混合した鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物に、該酸化チタン化合物中に含まれる全チタン原子の質量を100質量部としたときの混合量が、銅原子換算で2.8質量部となるように銅化合物を接触させて、銅化合物担持酸化チタン化合物を作製した。
【0207】
(4)分散処理
上記酸化チタン光触媒30gとエタノール270gを混合し、乳化・分散機(商品名;T.K.ホモミクサ−(特殊機化工業(株)製))で、回転数7,000min−1で20分処理することによりさらに分散させた。
【0208】
上記分散処理により得られたスラリーを、ジスコニアビース(径;φ50μm)((株)ニッカトー製)を備えたビーズミル(商品名:MINICER,NETZSH社製)に投入し、周速8m/hにて2時間分散処理を行うことにより、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物の微粒子状物エタノール分散液を得た。
【0209】
(実施例13)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物(微粒子状物分散体)の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例1(2)と同様にして鉄酸化物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物を得た。(3)活性金属担持処理
上記(2)で得た酸化チタン化合物を担体として用い、実施例1(3)において、塩化銅(II)・二水和物の添加量を、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で1.0質量%に相当する量とした以外は、実施例1と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0210】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0211】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0212】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は76m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率19%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.37°であった。
【0213】
(4)分散処理
上記銅化合物担持酸化チタン化合物を用い、実施例12(4)と同様にして、銅化合物担持酸化チタン化合物の微粒子状物エタノール分散液を作製した。
【0214】
(実施例14)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物(微粒子状物分散体)の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例1(2)と同様にして鉄酸化物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物を得た。(3)活性金属担持処理
上記(2)で得た酸化チタン化合物を用いて、実施例1(3)において、塩化銅(II)・二水和物の添加量を、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で0.5質量%に相当する量とした以外は、実施例1と同様にして、鉄化合物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0215】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0216】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0217】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は76m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率19%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.37°であった。
【0218】
(4)分散処理
上記(3)で得た銅化合物担持酸化チタン化合物を用い、実施例12(4)と同様にして、銅化合物担持酸化チタン化合物の微粒子状物エタノール分散液を作製した。
【0219】
(実施例15)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銀化合物担持酸化チタン化合物(微粒子状物分散体)の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例1(2)と同様にして鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物を得た。(3)活性金属担持処理
上記(2)で得られた鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の粉末を45g分取し、これを1130gの純水に投入して撹拌し分散して、pH2.6の水分散スラリーを得た。また、硝酸銀(特級、関東化学(株)製)0.212gを秤量し、これを5gの純水に溶解して、硝酸銀水溶液を調製した。この硝酸銀水溶液を、上記水分散スラリーへ投入し、30分間撹拌した(上記硝酸銀量は、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銀原子換算で0.5質量%に相当する量である)。この時の分散スラリ−のpHは2.4であった。次いで、水素化ホウ素ナトリウム0.47g(銀の添加モル量の10倍相当量)を添加し、さらに30分撹拌した。
【0220】
その後 撹拌を止めて静置し、固形分を沈降させてその上澄み液を排出したのち、同量の純水を加えて撹拌するというデカンテ−ション洗浄を、上澄み液の導電率が50mS/m以下になるまで繰り返した。
次いで、このスラリ−をろ過した後、ろ過ケ−キを卓上乾燥機で110℃で10時間乾燥することにより、鉄化合物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銀化合物を担持した銀化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0221】
得られた銀化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0222】
また、得られた銀化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0223】
また、得られた銀化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は75m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率19%)、得られた銀化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.37°であった。
【0224】
(4)分散処理
上記(3)で得た銀化合物担持酸化チタン化合物を用い、実施例12(4)と同様にして、銀化合物担持酸化チタン化合物の微粒子状物エタノール分散液を作製した。
【0225】
実施例12〜実施例15によって得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の分散液または銀化合物担持酸化チタン化合物の分散液を検体として、試験菌(黄色ぶどう球菌)に対する抗菌性能試験を実施例1と同様の方法で行った。また、銅化合物担持酸化チタン化合物の分散液または銀化合物担持酸化チタン化合物の分散液を加えない検体をブランクとして同様の試験を行った。
【0226】
なお、抗菌性能試験においては、検体濃度を調整は、各エタノール分散液を乾燥し、粉末状とした上で、所望濃度に調整することにより行った。
【0227】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の分散液または銀化合物担持酸化チタン化合物の分散液中の酸化チタン化合物微粒子の粒度分布(平均粒径D50(体積積算粒度分布における積算粒度で50%の粒径(nm)))を以下の条件により測定した。
結果を表3に示す。
<粒度分布測定条件>
粒度分布測定装置 FPAR−1000(大塚電子(株)製)
超音波分散 トミー工業株式会社製UD−200で出力80Wにて30秒間分散。
【0228】
【表3】

【0229】
表3の結果より、銅化合物担持酸化チタン化合物の分散体または銀化合物担持酸化チタン化合物の分散体が、抗菌性および殺菌速度に優れることが分かる。また、表3の実施例12の結果と、表1の実施例1の結果とを対比することにより、銅化合物担持酸化チタン化合物よりも銅化合物担持酸化チタン化合物の微粒子状物の方が、抗菌性および殺菌速度に優れることが分かる。
【0230】
(実施例16)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物(微粒子状物分散体)の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
四塩化チタン水溶液とアンモニア水溶液を反応させた後、pH調整、濾過洗浄および加熱乾燥処理を行わなかった以外は、実施例1(1)と同様にして原料酸化チタンスラリーを調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
硝酸鉄(III)九水和物(特級)(関東化学(株)製)0.260gを秤量し、これを5gの純水に溶解して、硝酸鉄水溶液を調製した。
一方、上記(1)で得られた原料酸化チタンスラリーから、その固形分が60gになる量を分取して、このスラリーに上記硝酸鉄(III)水溶液を添加して30分間撹拌した(上記硝酸鉄(III)九水和物量は、原料酸化チタンを構成する全チタン原子100質量部に対して、鉄原子換算で、0.1質量部に相当する)。
【0231】
その後撹拌を継続しながら、撹拌液中に、アンモニア濃度5.8%のアンモニア水溶液をpH7になるまで添加して中和処理を行い、酸化チタン粒子の表面に鉄化合物を担持した。
【0232】
得られた混合スラリーを濾過して得られた濾過ケ−キを、原料酸化チタン量に対して8倍量の純水中に投入して分散し、これを濾過するという洗浄操作を、濾液の電導率が30mS/m以下になるまで繰り返した。上記洗浄後の原料酸化チタンケーキをテフロン(登録商標)製バットに入れ、卓上乾燥機にて110℃で24時間乾燥したのち、200℃で3.5時間加熱処理を行うことにより、鉄化合物担持酸化チタン粉末を得た。
【0233】
上記鉄化合物担持酸化チタン粉末を51g分取し、これにチオ尿素(特級)(関東化学(株)製)5.02gを添加し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合した。このとき、チオ尿素の混合量は、得られる酸化チタン光触媒担体を構成する全チタン原子を100質量部とした場合に、チオ尿素を構成する硫黄原子の質量が、6.8質量部となるように調整した。
【0234】
以上の操作により得られた鉄化合物担持酸化チタン粉末とチオ尿素との混合物のうち55gをチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、300℃で2.5時間焼成した。焼成中は、電気炉内へ大気が300〜350mL/minの流量で流入するように炉内の吸気流量を調整した。
【0235】
得られた焼成物を取出し、これを 49g分取したものに対して、さらにチオ尿素19.8gを乾式混合することにより、上記焼成物とチオ尿素の混合物を得た。このとき、チオ尿素の混合量は、原料酸化チタンを構成する全チタン原子を100質量部とした場合に、チオ尿素を構成する硫黄原子の質量が、27.8質量部となるように調整した。この混合物をチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、炉内へ大気が590〜830mL/minの流量で流入するように炉内の吸気流量を調整しながら、430℃で2.2時間焼成して、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
【0236】
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得た酸化チタン化合物に対して、塩化銅(II)・二水和物の添加量を、酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、銅原子換算で0.5質量%に相当する量とした以外は、実施例1(3)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
【0237】
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.11質量%であった。
【0238】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0239】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は78m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率16%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.43°であった。
【0240】
(4)上記(3)で得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を用い、実施例12(4)と同様にして、銅化合物担持酸化チタン化合物の微粒子状物エタノール分散液を作製した。
【0241】
(実施例17)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物と銅化合物担持酸化チタン化合物(微粒子状物分散体)の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
四塩化チタン水溶液とアンモニア水溶液を反応させた後、pH調整、濾過洗浄および加熱乾燥処理を行わなかった以外は、実施例1(1)と同様にして原料酸化チタンスラリーを調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例16(2)において、鉄化合物を硝酸鉄(III)九水和物に代えて、塩化鉄(II)・六水和物(特級)(和光純薬工業(株)製)0.174g(原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子を100質量部とした場合に、鉄原子換算で、0.1質量部に相当量)を用いた以外は、実施例16(2)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
(3)活性金属担持処理
上記(2)で得た酸化チタン化合物を用いて、実施例16(3)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物上に銅化合物を担持した銅化合物担持酸化チタン化合物を得た。
得られた銅化合物担持酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.11質量%であった。
【0242】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0243】
また、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物の比表面積は76m2/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率18%)、得られた銅化合物担持酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.43°であった。
【0244】
(4)上記銅化合物担持酸化チタン化合物を用い、実施例12(4)と同様にして、銅化合物担持酸化チタン化合物の微粒子状物エタノール分散液を作製した。
【0245】
(実施例18)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例1(2)と同様にして鉄酸化物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物を得た。
【0246】
得られた酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0247】
また、得られた酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0248】
また、得られた酸化チタン化合物の比表面積は79m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率16%)、得られた酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.37°であった。
【0249】
(実施例19)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例1(2)において、鉄化合物を硫酸鉄(II)七水和物に代えて、酸化鉄(III)
を用い、酸化鉄(III)の混合量を、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子を100質量部とした場合に、鉄原子換算で、0.1質量部に相当する量とした以外は、実施例1(2)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
得られた酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.09質量%であった。
【0250】
また、得られた酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0251】
また、得られた酸化チタン化合物の比表面積は75m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率15%)、得られた酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.36°であった。
【0252】
(実施例20)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例1(2)において、鉄化合物を硫酸鉄(II)七水和物に代えて、蓚酸鉄(II)二水和物(Fe・2HO)を用い、該蓚酸鉄(II)二水和物の混合量を、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子を100質量部とした場合に、鉄原子換算で、0.1質量部に相当する量とした以外は、実施例1(2)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
得られた酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.07質量%であった。
また、得られた酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
また、得られた酸化チタン化合物の比表面積は71m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率11%)、得られた酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.33°であった。
【0253】
(実施例21)(鉄酸化物および硫黄原子含有酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および硫黄原子を含む酸化チタン化合物の調製
実施例1(2)において、鉄化合物を硫酸鉄(II)七水和物に代えて、蓚酸鉄(II)二水和物を用い、該蓚酸鉄(II)二水和物の混合量を、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子を100質量部とした場合に、鉄原子換算で、0.3質量部に相当する量とした以外は、実施例1(2)と同様にして、鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
得られた酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.08質量%であった。
また、得られた酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
また、得られた酸化チタン化合物の比表面積は68m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率12%)、得られた酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.34°であった。
【0254】
(実施例22)(鉄酸化物および窒素原子含有酸化チタン化合物の製造例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
実施例1(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物および窒素原子を含む酸化チタン化合物の調製
上記(1)で得られた原料酸化チタン粉末と、硫酸鉄(II)七水和物(特級)(関東化学(株)製)と尿素(特級)(関東化学(株)製)とを添加、混合することにより、原料酸化チタンと硫酸鉄(II)七水和物と尿素との混合物を得た。このとき、原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、硫酸鉄(II)七水和物の混合量を、鉄原子換算で、0.1質量部となるように調製するとともに、尿素の混合量を、尿素を構成する窒素原子の質量が、27.8質量部となるように調製した。
【0255】
具体的には、(1)で得た原料酸化チタン粉末50gと硫酸鉄(II)七水和物粉末0.149gと尿素粉末17.9g とを秤量し、これらを乳鉢で乾式粉砕混合することにより、乾式粉砕混合物を得た。
【0256】
上記乾式粉砕混合物のうち65gをチタン製の容器に装入し、これを電気炉に装填して、400℃で2時間焼成した。焼成中は、電気炉内へ窒素ガスが300〜350mL/minの流量で流入するように炉内の吸気流量を調整した。
【0257】
このようにして、鉄酸化物と、窒素原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
【0258】
得られた酸化チタン化合物中の窒素分の含有量は0.3質量%であった。
【0259】
また、得られた酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、Ti−Nに由来する396eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成する酸素サイトの一部に窒素原子が導入されていることが確認できた。
【0260】
また、得られた酸化チタン化合物の比表面積は92m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率13%)、得られた酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.45°であった。
【0261】
(比較例4)(実施例1において(鉄化合物を原料酸化チタンの調製工程で加えて酸化チタン化合物を調製し)、銅化合物を担持しなかった例)
(1)原料酸化チタン粉末の調製
比較例3(1)と同様にして原料酸化チタン粉末を調製した。
(2)鉄化合物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物の調製
比較例3(2)と同様にして鉄酸化物と、硫黄原子とを含む酸化チタン化合物を得た。
【0262】
得られた酸化チタン化合物中の硫黄分の含有量は0.21質量%であった。
【0263】
また、得られた酸化チタン化合物をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが観察されたことから、酸化チタンを構成するチタンサイトの一部に硫黄原子が導入されていることが確認できた。
【0264】
また、得られた酸化チタン化合物の比表面積は75m/g、結晶構造はアナターゼ型(ルチル化率15%)、得られた酸化チタン化合物を構成するアナターゼ型結晶の(101)ピークの半値幅が2θ=0.62°であった。
【0265】
実施例16〜22および比較例4で得られた各化合物を用い、室内照明照射下におけるVOCガス分解性能を比較評価する目的で、蛍光灯照射下におけるアセトアルデヒドガスを分解したときの二酸化炭素の発生速度を測定した。また、アセトアルデヒドガスの分解性を対比するために、実施例3、実施例12〜14、および比較例1で得られた各化合物を用いて、同様の方法でアルデヒドガスを分解したときの二酸化炭素の発生速度を測定した。結果を表4に示す。
【0266】
<アルデヒドガスの分解性評価方法>
各測定試料0.10gを直径100mmのシャ−レ内に入れて分散し、これを容量約1Lのテドラ−バッグに入れたのち、紫外線ライトを16時間照射して、粉末表面の初期付着有機物を分解する。このテドラ−バッグ内のガスを排気した後、アセトアルデヒドガス濃度100ppmのガス1Lをテドラ−バッグに封入する。これを暗所に0.5時間静置し、粉末に対するガスの暗所吸着をさせたのち、テドラ−バッグ内のアセトアルデヒド濃度と二酸化炭素濃度を測定し、初期濃度とする。その後テドラ−バッグの外側から蛍光灯の照射を開始し、3時間後のアセトアルデヒド濃度と二酸化炭素濃度を測定した。
【0267】
蛍光灯の照射条件として、光源は18W蛍光管(パナソニック電工株式会社製、FL20SS・ENW/18X)を用い、シャ−レ上面における照度が4000Lxになるように蛍光管からの距離を調節した。また、アセトアルデヒドガス濃度および二酸化炭素ガス濃度の測定は、ガスモニタ装置(INNOVA社製、光音響ガスモニタ)を使用して行った。
【0268】
アセトアルデヒドを完全に分解すると二酸化炭素を発生するが、実際に光照射を3時間したのちに発生した二酸化炭素量を算出し、これを1時間あたりの発生量に換算した値(二酸化炭素の生成速度)をVOCガス分解性能の指標とした。
【0269】
【表4】

【0270】
表4の結果から、実施例3、実施例12〜実施例14、実施例16〜実施例22で得られた各化合物においては、3時間の光照射でアセトアルデヒドガスを迅速に分解して二酸化炭素ガスとすることができた(二酸化炭素発生速度が比較例に対して1.5倍以上であった)が、比較例1および比較例4で得られた化合物においては、3時間の光照射でアセトアルデヒドガスを全て分解することができなかったか、分解速度が遅いものであった。
【0271】
さらに、実施例1および実施例18で得られた各化合物を検体として、試験ウイルス(インフルエンザウイルスA型(H1N1型))に対する不活化試験を行った。また、上記各化合物を加えない検体をブランクとして同様の試験を行った。結果を表5に示す。
【0272】
<抗ウイルス性能(試験ウイルス(インフルエンザウイルスA型(H1N1))に対する不活化能力)試験方法>
(1)ウイルス浮遊液の調製
使用細胞(MDCK細胞 ATCC CCL−34株)を、細胞増殖培地を用いて単層培養した。この培養物から細胞増殖培地を除き、インフルエンザウイルスを接種した後、細胞維持培地を加えて37℃±1℃で1〜5日間培養した。培養後、使用細胞に形態変化が起こっていることを確認し、この培養液を遠心分離して得られた上澄み液をウイルス浮遊液とした。
(2)試験液の調製
各活性金属担持酸化チタン化合物の濃度が10mg/mlになるように精製水を用いて調製した検体懸濁液2mlに、ウイルス浮遊液0.2mlを接種し、試験液とした。
また、酸化チタン化合物を添加しない精製水2mlに、ウイルス浮遊液0.2mlを接種したものを、ブランク(コントロ−ル)試験液として同様に試験を行った。
(3)試験操作
試験液を85〜95r/minで振とうしながら、白色蛍光灯照射下(試験液面の照度:2000Lx)及び遮光下で室温保存し、3時間後および6時間後に細胞維持培地を用いて1000倍に希釈した(これを試験液の希釈液とした)。
(4)ウイルス感染価の測定
細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用プレ−ト(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に、試験液の希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37℃±1℃の炭酸ガスインキュベーター内で4〜7日間培養した。培養後、細胞の形態変化の有無を観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TCID50)を算出して試験液1ml当たりのウイルス感染価に換算した。
【0273】
【表5】

【0274】
表5より、実施例18で得られた酸化チタン化合物は、光触媒として優れたウイルス不活化性能を発現することが分かる。また、実施例1で得られた銅化合物担持酸化チタン化合物は、相互作用力を生じて、光触媒としてより短時間で優れたウイルス不活化性能を発現することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0275】
本発明によれば、可視光照射下で光触媒として用いたときに、殺菌速度と有害ガス分解速度に優れる酸化チタン化合物を簡便に製造する方法を提供するとともに、活性金属担持酸化チタン化合物および活性金属担持酸化チタン化合物微粒子を簡便に製造する方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を製造する方法であって、
チタン塩をアルカリ化合物と反応させまたはチタン塩を加水分解反応させて原料酸化チタンを作製した後、
該原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成することにより、
鉄酸化物と、硫黄原子または窒素原子とを含む酸化チタン化合物を得る
ことを特徴とする酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記原料酸化チタンと、鉄化合物と、硫黄化合物または窒素化合物とを混合し、焼成した後、得られた焼成物にさらに硫黄化合物または窒素化合物を混合し、再焼成する請求項1に記載の酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記鉄化合物が2価の鉄化合物である請求項1または請求項2に記載の酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記原料酸化チタン中に含まれる全チタン原子の量を100質量部とした場合に、前記鉄化合物を、鉄原子換算で0.02〜0.8質量部混合する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記原料酸化チタンまたは焼成物に添加する硫黄化合物がチオ尿素類である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項6】
活性金属担持酸化チタン化合物を製造する方法であって、
請求項3〜請求項5のいずれかに記載の方法により酸化チタン化合物を作製した後、
得られた酸化チタン化合物に対し、さらに、銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種の活性金属種を接触させ、担持することにより、
活性金属担持酸化チタン化合物を得る
ことを特徴とする活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項7】
前記銅化合物の担持が、酸化チタン化合物と銅化合物とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーにアルカリを添加してスラリーのpHを6〜9に調整することにより行われる請求項6に記載の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項8】
前記銀化合物の担持が、酸化チタン化合物と銀化合物とを水性媒体中で混合してスラリー化し、得られたスラリーに水素化ホウ素ナトリウムを添加して行われる請求項6に記載の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項9】
前記酸化チタン化合物を構成する全チタン原子の質量を100質量部とした場合に、前記銅化合物、銀化合物および金属銀から選ばれる少なくとも1種を、銅原子または銀原子換算した総量で0.5〜10質量部接触させ、担持する請求項6〜請求項8のいずれかに記載の活性金属担持酸化チタン化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜請求項9のいずれかに記載の方法により、活性金属担持酸化チタン化合物を作製した後、
さらに得られた活性金属担持酸化チタン化合物を解砕することにより、活性金属担持酸化チタン化合物微粒子を得る
ことを特徴とする活性金属担持酸化チタン化合物微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2011−84462(P2011−84462A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201660(P2010−201660)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】