説明

酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法及び放圧試験装置

【課題】酸化亜鉛形避雷器を送変電系統に使用しているときと模擬した状態の放圧試験が行え、装置全体も経済的に製作できる酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法及び放圧試験装置を提供する。
【解決手段】第1の電源回路10で発生させた雷電流を印加して酸化亜鉛形避雷器1を構成する酸化亜鉛形素子を破壊し、その破壊された酸化亜鉛形素子に対して第2の電源回路20から放圧電流を印加して酸化亜鉛形避雷器の放圧試験を実施する。第1の電源回路10は、雷電流発生させる共振回路11と、これに直列接続して酸化亜鉛形素子を破壊する雷電流を流す投入手段12を備えており、第2の電源回路20は、短絡発電機を用いた交流電源AC2と、これに直列接続する限流リアクトルL2と遮断器CB2を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法及び放圧試験装置に係り、特に複数個の酸化亜鉛素子を樹脂モールド成形した樹脂製碍管内に配置した酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法及び放圧試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の送変電系統に使用する避雷器は、円盤状の酸化亜鉛素子(ZnO)の複数個を積層し、これをシリコーン樹脂やポリマー樹脂でモールド成形した樹脂製碍管内に配置し、放圧装置を設けて構成した酸化亜鉛形避雷器が多用されてきている。
【0003】
通常、商用周波電源を用いた上記酸化亜鉛形避雷器の放圧装置の放圧試験は、複数個の酸化亜鉛素子側面が絶縁破壊した時のアークを模擬するため、酸化亜鉛素子の全側面にヒューズを張り渡し、ヒューズに電流を流して溶損させてアークを発生させて行う方法がある。また、商用周波数の電源から酸化亜鉛素子に破壊電流を印加して破壊し短絡させ、その後に酸化亜鉛素子に所定の放圧電流を流して放圧装置の放圧試験を行う方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
上記した酸酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法に使用する装置としては、例えば図3に示すような放圧試験装置を用いている。この放圧試験装置は、供試用の酸化亜鉛形避雷器1に対して、破壊電流を印加して酸化亜鉛形素子を破壊させる商用周波数の第1の電源回路10と、破壊して短絡させた酸化亜鉛形素子に放圧電流を流す商用周波数の第2の電源回路20との二つを、並列に接続して使用している。
【0005】
第1の電源回路10は、商用周波数の交流電源AC1と限流リアクトルL1と遮断器CB1を直列接続した回路構成である。また、第2の電源回路20は、商用周波数の交流電源AC2と限流リアクトルL2と遮断器CB2の直列接続した同様な回路構成となっている。第1の電源回路10及び第2の電源回路20の交流電源AC1、AC2には、通常発電機が使用されている。
【0006】
そして、放圧試験を行うときは、図4に示すようにOFFされていた第1の電源回路10の遮断器CB1を時刻T1でONし、供試用の酸化亜鉛形避雷器1に商用周波数の破壊電流を時刻T2まで流してからOFFし、このときの破壊電流で酸化亜鉛形素子を破壊させる。
【0007】
その後、一定時間経過した時刻T3で第2の電源回路20の遮断器CB2がONし、酸化亜鉛形素子が破壊された酸化亜鉛形避雷器1に放圧電流を流し、放圧装置の放圧試験を実施している。
【0008】
【非特許文献1】JEC−TR−23002−2008 電気学会 電気規格調査会テクニカルレポート 「ポリマー形避雷器」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図3に示す装置を用いた従来の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法では、第1及び第2の電源回路10、20に、それぞれ商用周波数の交流電源AC1、AC2を使用していることから、特に酸化亜鉛形素子を破壊する破壊電流は、実際に酸化亜鉛形避雷器を送変電系統に使用しているときとは異なってしまうため、酸化亜鉛形避雷器の使用状態を模擬した放圧試験とはいえない欠点があった。
【0010】
また、上記した従来の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置のように、酸化亜鉛形避雷器に破壊電流を流す第1の電源回路10と放圧電流を流す第2の電源回路20の双方を使用できる試験場が少ないし、また略同一構造の商用周波数の交流電源AC1、AC2を準備したり或いは代替用の別電源を用意するとなると、装置全体を経済的に製作できない欠点があった。
【0011】
本発明の目的は、酸化亜鉛形避雷器を送変電系統に使用状態を模擬した放圧装置の放圧試験が行える酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、試験装置全体を経済的に製作できる酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法は、酸化亜鉛形避雷器に対して第1の電源回路で発生させた雷電流を印加して酸化亜鉛形素子を破壊し、酸化亜鉛形素子の破壊後に第2の電源回路から前記酸化亜鉛形避雷器に対して放圧電流を印加して行うことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、酸化亜鉛形素子から構成される供試酸化亜鉛形避雷器に対して、前記酸化亜鉛形素子を破壊する破壊電流を流す第1の電源回路と、酸化亜鉛形素子の破壊後に放圧電流を流す第2の電源回路とを、それぞれ並列に接続した酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置を構成する際、前記第1の電源回路は、充電手段により蓄電するコンデンサとリアクトルにて雷電流を発生させるRC共振回路と、前記共振回路に直列接続して前記酸化亜鉛形素子の酸化亜鉛形素子を破壊する雷電流を流す投入手段とを備え、前記第2の電源回路は、短絡発電機を用いた交流電源と、前記交流電源に直列接続する限流リアクトルと遮断器を備えて構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法によれば、酸化亜鉛形避雷器には実際に送変電系統に使用しているときを模擬した雷電流を印加して酸化亜鉛形素子を破壊し、その後酸化亜鉛形避雷器に放圧電流を印加するようにしたので、従来に比べてより過酷な雷電流で使用状態に近似した放圧装置の放圧試験を行うことができるから、模擬試験として極めて好適である。
【0016】
また、本発明の如く酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置を構成すれば、雷電流源としての共振回路と投入手段を備えた第1の電源回路は、一般的な大電力試験所において遮断器の遮断試験に使用する構成を活用できる構成であるため、使用状態に近似した放圧装置の放圧試験が行える試験装置全体を、経済的に製作できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の方法では、第1の電源回路で発生させた雷電流を印加して酸化亜鉛形素子を破壊し、その後酸化亜鉛形避雷器の破壊された酸化亜鉛形素子に対して第2の電源回路から放圧電流を印加して酸化亜鉛形避雷器の放圧試験を実施する。第1の電源回路は、雷電流発生させるRC共振回路と、この共振回路に直列接続して酸化亜鉛形素子を破壊する雷電流を流す投入手段を備え、第2の電源回路は、交流電源となる短絡発電機と、前記短絡発電機に直列接続する限流リアクトルと遮断器を備えている。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法及び試験装置について、従来と同一部分を同符号で示す図1及び図2を使用して説明する。本発明の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法では、図1の回路図に示すように雷電流を印加する第1の電源回路10と、放圧電流を印加する第2の電源回路とを、供試用の酸化亜鉛形避雷器に対して並列に接続して放圧装置の放圧試験を実施する。
【0019】
第1の電源回路10は、コンデンサCとリアクトルL0にて構成して雷電流を発生させる共振回路11を有し、コンデンサCにはスイッチSWを切り換えて充電手段11Aから蓄電する。この共振回路11には、雷電流をON、OFFする投入手段12を直列接続しており、所定時刻に投入手段12を閉じて酸化亜鉛形避雷器1に対して雷電流を流し、酸化亜鉛形素子を破壊する。
【0020】
本発明に使用する第1の電源回路10は、遮断器の遮断試験に用いる試験回路と略同様な構成を雷電流源に用いている。この第1の電源回路10からの過酷な雷電流で、酸化亜鉛形避雷器の酸化亜鉛形素子を破壊するため、放圧装置の放圧試験としては実際の使用状態に近似した試験が行える。なお、投入手段12としては、定められた時刻に回路を閉じて雷電流が流せるスイッチやギャップ等を使用する。
【0021】
また第2の電源回路20は、短絡発電機を用いた交流電源AC2と、この交流電源AC2に直列接続する限流リアクトルL2及び遮断器CB2を備えており、酸化亜鉛形素子の破壊後に放圧電流を流すようにしている。
【0022】
図1の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置を使用して放圧試験を行うには、まずスイッチSWを閉じてコンデンサCに充電手段11Aから蓄電する。そして、スイッチSWを切り換えてコンデンサCとリアクトルL0の共振回路11で所望値の雷電流を発生させる。
【0023】
次に図2に示すように、OFFされていた投入手段12を、時刻T1にONし、供試用の酸化亜鉛形避雷器1に対して、第1の電源回路10の共振回路11で発生した雷電流を印加し、酸化亜鉛形素子を破壊して短絡させる。
【0024】
その後(規格で定められた2秒以内)に、OFFしていた第2の電源回路20の遮断器CB2を、時刻T3にONし、酸化亜鉛形素子が破壊された酸化亜鉛形避雷器1に、例えば12.5kVから63kVの放圧電流を流し、放圧装置の放圧試験を実施する。
【0025】
本発明の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法では、酸化亜鉛形避雷器1に対して、第1の電源回路10の共振回路11で発生した雷電流を印加し、酸化亜鉛形素子を破壊するだけで、その後の放圧電流の印加手順を大きく変えるものでないため、実際の使用状態を模擬した放圧試験を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例である酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置を示す回路図である。
【図2】本発明の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法において酸化亜鉛形避雷器に流れる電流とシーケンスの関係図である。
【図3】従来の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置を示す回路図である。
【図4】従来の酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法において酸化亜鉛形避雷器に流れる電流とシーケンスの関係図である。
【符号の説明】
【0027】
1…酸化亜鉛形避雷器、10…第1の電源回路、20…第2の電源回路、11…共振回路、12…投入手段、11A…充電手段、C…コンデンサ、L0…リアクトル、AC1、AC2…交流電源、L1、L2…限流リアクトル、CB1、CB2…遮断器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛形素子から構成する酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法であって、前記酸化亜鉛形避雷器に対して、第1の電源回路で発生させた雷電流を印加して酸化亜鉛形素子を破壊し、酸化亜鉛形素子の破壊後に第2の電源回路から前記酸化亜鉛形避雷器に対して放圧電流を印加することを特徴とする酸化亜鉛形避雷器の放圧試験方法。
【請求項2】
酸化亜鉛形素子から構成される供試酸化亜鉛形避雷器に対して、前記酸化亜鉛形素子を破壊する破壊電流を流す第1の電源回路と、酸化亜鉛形素子の破壊後に放圧電流を流す第2の電源回路とを、それぞれ並列に接続した酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置において、前記第1の電源回路は、充電手段により蓄電するコンデンサとリアクトルにて雷電流発生させる共振回路と、前記共振回路に直列接続して前記酸化亜鉛形素子の酸化亜鉛形素子を破壊する雷電流を流す投入手段とを備え、前記第2の電源回路は、短絡発電機を用いた交流電源と、前記交流電源に直列接続する限流リアクトルと遮断器を備えて構成したことを特徴とする酸化亜鉛形避雷器の放圧試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−133812(P2010−133812A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309550(P2008−309550)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】