説明

酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法

【課題】インパルス耐量特性に優れ、且つ特性のバラツキを低減することができる酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛と、酸化ビスマスと、酸化アンチモンと、酸化コバルトまたは酸化マンガンと、酸化クロムと、ホウ酸と、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムと、を含むバリスタ原料を準備し、バリスタ原料に分散剤を加えてスラリーを作成し、スラリーを用いてグリーンシートを作成し、グリーンシートを積層してグリーンチップを作成し、グリーンチップを、所定温度まで加熱して焼成する酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法であって、焼成は、400℃/hr以上の昇温速度で、所定温度まで昇温させる。分散剤として、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電気・電子機器において、ロードダンプサージ、イグニッションサージ、雷サージ、静電気放電サージ(ESD)、スイッチングサージなどから、上記機器に搭載した半導体素子などを保護するためのバリスタ素子に係り、特に表面実装が可能なチップ型の酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの電気・電子機器においては、近年の急激な高周波化、大容量化に伴い、各種サージやパルス性ノイズ、静電気放電(ESD)等から回路を保護して動作の安定性を確保し、また、ノイズ規制への対応をする為に、より高性能な過電圧保護素子であるバリスタへのニーズが高まっている。また、機器の小型化から、リード付きディスクバリスタよりも小型であり表面実装が可能な酸化亜鉛積層チップバリスタが用いられることが多い。特に、自動車の分野では急速に電子化が進み、車載電子機器においては、半導体素子が搭載されているが、ロードダンプサージ、スイッチングオフサージ、イグニッションサージなどから、サージに対して脆弱な半導体素子を保護する必要がある。
【0003】
一般に酸化亜鉛バリスタは、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、酸化亜鉛の粒成長を促進する酸化ビスマス(Bi2O3)や粒成長を抑制する酸化アンチモン(Sb2O3)が添加され、また、焼結助剤として各種ガラス等が添加される。特許文献1には、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、酸化ビスマス(Bi2O3)と、酸化アンチモン(Sb2O3)と、酸化錫(SnO2)等を副成分として含むバリスタが開示されている。
【特許文献1】特開平3−211705号公報
【0004】
しかしながら、特許文献1はディスクタイプの大型のバリスタを前提としており、本発明の対象である積層チップタイプバリスタの場合、寸法が例えば5.7mm×5.0mm(5750型)と小さく、且つ薄いセラミックスシートを複数層積層した構造であることから、グレインの粒子の状態が特性に大きく影響し、例えば上記車載電子機器などに搭載された半導体素子保護用のバリスタとして、十分な特性が得られるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した事情に基づいてなされたもので、車載電子機器などに搭載されるバリスタとして要求されるインパルス耐量特性に優れ、且つ特性のバラツキを低減することができる酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法は、酸化亜鉛と、酸化ビスマスと、酸化アンチモンと、酸化コバルトまたは酸化マンガンと、酸化クロムと、ホウ酸と、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムと、を含むバリスタ原料を準備し、バリスタ原料に分散剤を加えてスラリーを作成し、スラリーを用いてグリーンシートを作成し、グリーンシートを積層してグリーンチップを作成し、グリーンチップを、所定温度まで加熱して焼成する酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法であって、焼成は、400℃/hr以上の昇温速度で、所定温度まで昇温させることを特徴とするものである。
【0007】
また、上記製造方法において、分散剤として、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体を用いることが好ましい。
【0008】
本発明によれば、400℃/hr以上の昇温速度で高速焼成を行うことで、グリーンチップに高速に熱を入れると熱を伝える速度が速くなり、つまり焼結が進む時の構造の格子運動が活発化するため、熱の伝わりがスムーズになり、その結果、均質な燒結体が得られる。そして、分散剤として、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体を用いることで、スラリーの段階で、材料の各成分が均一に分散し、材料の粒径を揃えることができ、この状態からグリーンチップを作成し、焼成することで、均質性の高い燒結体が得られる。これにより、インパルス耐量特性に優れ、特性のバラツキが低減した酸化亜鉛積層チップバリスタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、酸化亜鉛積層チップバリスタの素子構造例を示す。この酸化亜鉛積層チップバリスタ10は、バリスタ素材となる酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、酸化ビスマス(Bi2O3)や酸化アンチモン(Sb2O3)等を副成分としたグリーンシートに白金(Pt)またはパラジウム(Pd)などの導電材ペーストパターン(内部電極パターン)を配置したものを積層し、焼成して作製された積層型の焼結体素子である。そして、積層したグリーンシートが焼成して形成されたバリスタ焼結体11の内部に、平行平板状に交互に導電材の内部電極12a,12bが積層配置され、積層コンデンサと同様の電極配置となっている。
【0011】
複数の内部電極12a,12bは、それぞれ左右の外部電極13a,13bに接続されている。外部電極13a,13bは、銀などの電極にニッケルメッキ、ハンダまたはスズメッキが施され、面実装に適合した構造となっている。従って、左右の外部電極13a,13b間に印加された電圧は、バリスタ焼結体11の内部に平行平板状に配置された電極12a,12b間のバリスタ焼結体部分に印加される。この図示の例では、4層のバリスタ焼結体層によって、バリスタ素子が構成されているが、層数および各層の層厚は、所要バリスタ電圧および耐量等に応じて決められる。なお、酸化亜鉛積層チップバリスタ10は、例えば、5.7mm×5.0mm(5750型)、3.2mm×1.6mm(3216型)、2.0mm×1.2mm(2012型)、1.0mm×0.5mm(1005型)、0.6mm×0.3mm(0603型)などの標準的なチップ部品としてのサイズを有する面実装型の部品である。
【0012】
本発明の製造工程の試験のために、試作した酸化亜鉛積層チップバリスタは、5.7mm×5.0mm(5750型)であり、内部電極層数は16層であり、内部電極には白金(Pt)を用いている。バリスタ原料は、酸化亜鉛(ZnO)100mol%と、これに対する外掛け量で、酸化ビスマス(Bi2O3)を0.5mol%と、酸化アンチモン(Sb2O3)を1.0mol%と、酸化コバルト(CoO)と酸化マンガン(MnO2)とをそれぞれ1.0mol%と、酸化クロム(Cr2O3)を0.5mol%と、酸化チタン(TiO2)を0.1mol%と、ホウ酸(H3BO3)を0.5mol%と、二酸化ケイ素(SiO2)を0.50mol%と、酸化アルミニウム(Al2O3)を0.0001mol%(100ppm)とを含み、バリスタ電圧は22V品(電流1mA印加時のバリスタ両端電圧が19.8〜24.2V)である。
【0013】
一般的な製造工程に従って製作された上記バリスタの電気的特性は、バリスタ電圧(電流1mA印加時のバリスタ両端電圧)の平均が22.6V(σ=1.6)であり、バリスタ電圧の0.8垳の電圧印加時の漏洩電流の平均が4.2μA(σ=1.2)であり、α値(0.01〜1mA間の非直線性)が35(σ=1.2)であり、制限電圧(電流2A印加時のバリスタ両端電圧)が34V(σ=2.1)であり、サージ耐量(耐最大負荷電流)が2200Aであり、エネルギー耐量(ロードダンプ耐量、耐最大負荷エネルギー)が25Jである。
【0014】
上記酸化亜鉛積層チップバリスタは、酸化亜鉛を主原料とし、これに酸化ビスマスと、酸化アンチモンと、酸化コバルトまたは酸化マンガンの少なくとも何れかと、酸化クロムと、ホウ酸と、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムと、を含むバリスタ原料を準備し、このバリスタ原料に分散剤を加えてスラリーを作成し、スラリーを用いてグリーンシートを作成し、グリーンシートを積層してグリーンチップを作成し、グリーンチップを所定温度まで加熱して焼成することで、内部に平行平板状に配置された電極を備えた積層バリスタ燒結体を形成する。
【0015】
従来からの製造工程では、分散剤として、一般的なポリカルボン酸系分散剤を用いていた。また、焼成時の昇温速度も一般的な酸化亜鉛バリスタの昇温速度である200℃/hrを用いていた。
【0016】
ところで、特に車載用の酸化亜鉛積層チップバリスタにおいては、インパルス耐量特性に優れ、且つ特性のバラツキが低減することが望まれる。バリスタ焼結体として望ましい姿は、グレイン(ZnOの粒)が均一であること、グレイン(ZnO)間の空隙が少ないこと、粒界準位(ダブルショットキー障壁)が形成されバラツキが少ないこと、グレイン(ZnO)の比抵抗が小さいことにある。このためには、スラリーの段階或いはグリーンチップの段階で材料の組成が均一に分散していること、材料の粒径が揃っていることが必要であり、そのまま、焼結体の焼結性が均質であり、グレイン(ZnOの粒)が均一に形成されるように燒結することが必要である。
【0017】
そこで本発明では、まず、燒成時の昇温速度に着目している。グリーンチップを焼成する際に、徐々に熱を加えた場合、外側から熱が内側に伝わっていくが、そうすると、外側から内側に含まれる成分が理論通りに化学反応して順次徐々に結晶構造を形成していく。しかしながら、この過程の反応は無い方が仕上りのグレインが均一になることを本発明者等は見いだした。つまり、昇温速度を高め、急速に全体が熱処理されると、結晶構造を形成していく反応は起こるものの、ごく僅かな時間で次の反応にシフトするため、外側から内側に順次徐々に結晶構造を形成していく悪影響を低減できると考えられる。
【0018】
すなわち、バリスタの機能を大きく阻害する要因の一つに、最適な組成配合とプロセスで製作されたグリーンチップで有っても、グリーンチップに構成される揮発性のある添加物が高温に長く曝される事でチップ表面から大気中に拡散してしまいグレインの均質性を損ねるという問題がある。徐々に焼成すると組成に準じた化学反応が外側から内側に順次行われ焼結が進むが、外側と内側の焼けの速度に開きがあり、セラミックス素体全体の焼けの状態は外側と内側で差が生まれるが、これを高速に熱を入れると熱を伝える速度が速くなり、つまり焼結が進む時の構造の格子運動が活発化するため、熱の伝わりがスムーズになり、その結果、全体として均一な燒結が行え、グレインの均質性が向上すると考えられる。
【0019】
このような観点から、高速焼成を検証したデータを表1に示す。即ち、高速に焼成することで粒成長において問題となる核粒子の出現を抑え、且つ高温に曝す時間を減らすことで添加物の揮発による特性劣化を抑えることが可能となると考えられる。表1のデータは、昇温速度を変更し、インパルス耐量2ms波形で限界値を測定・評価したものである。
【表1】

【0020】
この結果、400℃/hr以上の昇温速度で、インパルス耐量の向上が認められ、特に、500℃/hr以上の昇温速度で焼結した場合に、従来の200℃/hrの昇温速度に対して20%強のインパルス耐量の向上が認められる。なお、昇温速度400℃/hrにおける2Jの向上は、例えば3.2mm×2.5mmサイズのチップバリスタ1つを追加することに相当する特性の向上である。
【0021】
次に重要なのは、分散剤の選択である。分散剤として、従来は一般的なポリカルボン酸系分散剤を用いていたが、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体を用いることで、スラリーの段階で、材料の各成分が均一に分散し、材料の粒径を揃えることができ、これからグリーンチップを形成し、焼成することで、均質性の高い燒結体が得られる。
【0022】
高速焼成と分散剤との組合せによる効果を検証したデータを表2に示す。
【表2】

【0023】
比較例1は、従来の昇温速度で、且つ分散剤をまったく添加しなかった場合である。出来上がった製品は、材料混合および粒径のバラツキによりバリスタ電圧等の特性バラツキが大きく、回路保護能力は低いものであった。比較例2は、従来の昇温速度で、且つ分散剤も従来のカルボキシル酸系のものを用いた場合である。出来上がった製品は、材料分散が加速されバリスタ電圧等の基本性能は得られるが、サージ耐量等の性能は不十分なものであった。比較例3は、従来の昇温速度で、且つ分散剤は本発明のα−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体を用いた場合である。出来上がった製品は、材料分散性が十分に進み基本性能に加えサージ耐量等の回路保護機能が得られるが、従来品に比べて著しい特性向上は得られない。
【0024】
比較例4は、本発明の昇温速度である500℃/hrを用いて焼成したもので、且つ分散剤をまったく添加しなかった場合である。出来上がった製品は、材料混合および粒径のバラツキによりバリスタ電圧等の特性バラツキが大きく、回路保護能力は低いものであった。なお、セラミックス焼結均質性が上がるが、材料混合および粒径不均一性の影響が強く、インパルス耐量の向上等の効果は見られない。
【0025】
本発明1は、高速燒結の昇温速度500℃/hrを用いて焼成したもので、且つ分散剤は従来のカルボキシル酸系のものを用いた場合である。従来の分散剤による効果と高速燒結による効果とが相乗効果を発揮し、基本性能は若干バラツキがあるがサージ耐量等の特性は著しく向上する。但し、無水マレイン酸-αオレフィン系分散剤を使用した場合よりは特性の向上という点で劣る。本発明2は、高速燒結の昇温速度500℃/hrを用いて焼成したもので、且つ分散剤も本発明のα−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体を用いた場合である。出来上がった製品は、分散剤および高速昇温による焼結性の効果が最大限に発揮され、基本性能のバラツキが小さいことに加え、サージ耐量、エネルギー耐量といった回路保護機能は格段に向上する。
【0026】
次に、Bi2O3-Sb2O3-ZnO系の混合物の添加による低制限電圧化について検討した。ZnOの粒成長とZnO-Bi2O3-Sb2O3系で起こるパイロクロア、スピネル形成の反応を独立させることでZnOグレインの均一性が得られ低制限電圧化が図れると考えられる。そこで、Bi2O3-Sb2O3混合物にZnOを添加し、仮焼後主原料に添加することで、制限電圧がどう変化するのか確認した。この試験データを表3に示す。なお、添加量はZnO
100mol%に対する外掛けの添加量であり、Bi/Sb比はバリスタ電圧を低くしたい時には大きく、高くしたい時には小さくすれば良く、Bi/Sb比を1とし、各0.5mol%添加した混合物にZnO添加量を変化させてデータを取得した。
【0027】
【表3】

この結果、ZnO0.1〜1mol%の範囲でBi2O3-Sb2O3混合物と一緒にZnOを加え仮焼きし、主原料に添加することで大幅に制限電圧特性が改善されることが確認出来た。
【0028】
次に、ドナー元素の添加による高インパルス耐量化について検討した。高インパルス耐量化には2つの手段があり、1つが粒界の二重ショットキー障壁の厚みを厚くし、大電流が印加された時にトンネル効果による雪崩式に電子が粒界を飛び越える現象を抑えることであり、もう1つがZnOの比抵抗を下げ熱拡散効率を上げることで、発生したジュール熱を素子全体に素早く拡散させ1粒界の破壊を防ぐことである。しかし、実際は幾ら二重ショットキー障壁の厚みを厚くし大きな電流に耐えられる粒界を形成しても、発生するジュール熱が大きく、1粒界に集中すると十分な耐量を得ることは難しい。従って、インパルス耐量を向上させる為には、後者であるZnOの比抵抗を下げ熱拡散効率を向上させることが重要であると考えられる。
【0029】
そこで、ZnOに対しドナー元素となるAl2O3の添加量を変化させ、データを取得した結果を表4に示す。このデータは、上記条件に基づきチップバリスタを作製し、8/20μsサージ波形で2000(A)印加し、バリスタ電圧変化率を測定したものである。なお、Al2O3の添加量はZnOに対するppmで表示している。
【0030】
【表4】

【0031】
この結果、10〜1000ppmの範囲でAl2O3を添加することで、ZnOの比抵抗を下げ熱拡散効率を向上させ、高インパルス耐量化が図れることが分かる。
【0032】
次に、本発明のバリスタの製造工程について、図2を参照して説明する。まず、メジアン平均粒径3μm程度の酸化亜鉛(ZnO)100mol%と、これに対する外掛け量で、酸化ビスマス(Bi2O3)を0.1〜1.5mol%と、酸化アンチモン(Sb2O3)を0.01〜2.0mol%と、酸化コバルト(CoO)または酸化マンガン(MnO2)の少なくとも何れかを0.1〜1.5mol%と、酸化クロム(Cr2O3)を0.01〜2mol%と、ホウ酸(H3BO3)を0.1〜1.0mol%と、二酸化ケイ素(SiO2)を0.1〜1.0mol%と、酸化アルミニウム(Al2O3)を10〜1000ppmを含む原料を準備する。この原料のうち、酸化ビスマス(Bi2O3)および酸化アンチモン(Sb2O3)の全量と酸化亜鉛(ZnO)0.1〜1.0mol%を調合して(ステップ100)仮焼原料とし、これをボールミル等で粉砕・整粒し(ステップ101)、700〜1000℃の温度範囲の酸化雰囲気で仮焼を行い(ステップ102)、ボールミル等で粉砕・整粒する(ステップ103)。
【0033】
そして、この仮焼原料と、その他の原料を加えて原料調合する(ステップ104)。そして、ボールミル等で粉砕し粒を揃え(ステップ105)、PVB、可塑剤、離型材、希釈溶剤を加えスラリーを作製する(ステップ106)。この際、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体からなる分散剤(例えば、共栄社化学(株)のフローレンG700)を0.5〜3wt%添加する。α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体からなる分散剤を用いることで、特に分散の効率が上がり、スラリーにおいて、材料の組成が均一に分散し、材料の粒径が揃っている状態を形成できる。
【0034】
次に、ドクターブレードにて成膜し、厚さが10〜100μm程度のグリーンシートを作製する(ステップ107)。該グリーンシートに、白金(Pt)もしくはパラジウム(Pd)ペーストパターンを印刷して内部電極パターンを形成し、ホットプレス等で積層する(ステップ108)。そして、製品サイズ(5750サイズ等)に合わせて切断してグリーンチップを形成し(ステップ109)、500℃10時間で脱バインダーを行い(ステップ110)、950〜1300℃で焼成を行う(ステップ111)。焼成に際して、400℃/hr〜1000℃/hrの昇温速度で、上記所定温度まで昇温させる。そして、2〜10時間所定温度でキープし、その後常温に放置して冷却する。
【0035】
さらに、700℃でアニールを行い(ステップ112)、端子電極(外部電極)を銀(Ag)もしくは銀/パラジウム(Ag/Pd)ペーストを塗布し、焼成することで形成する(ステップ113)。そして、端子電極にニッケル(Ni)層、スズ(Sn)層の順にメッキを施し(ステップ114)、バリスタ電圧、漏れ電流等の電気的特性を検測し(ステップ115)、完成品となる。
【0036】
上記製造工程で製作されたバリスタは、Bi2O3-Sb2O3混合物にZnOを添加し、仮焼後主原料に添加することで、低制限電圧化を達成でき、10〜1000ppmの範囲でAl2O3を添加することで、ZnOの比抵抗を下げ熱拡散効率を向上させ、高インパルス耐量化が図れ、400℃/hr以上の高速燒結とα−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体からなる分散剤を用いることで、分散剤および高速昇温による焼結性の効果が最大限に発揮され、基本性能のバラツキが小さいことに加え、サージ耐量、エネルギー耐量といった回路保護機能が格段に向上した酸化亜鉛積層チップバリスタが得られる。
【0037】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】酸化亜鉛積層チップバリスタの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法のフロー図である。
【符号の説明】
【0039】
10 酸化亜鉛積層チップバリスタ
11 バリスタ焼結体
12a,12b 内部電極
13a,13b 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛と、酸化ビスマスと、酸化アンチモンと、酸化コバルトまたは酸化マンガンの少なくとも何れかと、酸化クロムと、ホウ酸と、二酸化ケイ素と、酸化アルミニウムと、を含むバリスタ原料を準備し、
上記バリスタ原料に分散剤を加えてスラリーを作成し、
上記スラリーを用いてグリーンシートを作成し、
上記グリーンシートを積層してグリーンチップを作成し、
上記グリーンチップを、所定温度まで加熱して焼成する酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法であって、
上記焼成は、400℃/hr以上の昇温速度で、上記所定温度まで昇温させることを特徴とする酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法。
【請求項2】
上記分散剤は、α−オレフィンと無水マレイン酸の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法。
【請求項3】
上記バリスタ原料のうち、酸化ビスマスおよび酸化アンチモンの全量と、酸化亜鉛の少なくとも一部を予め仮焼きすることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法。
【請求項4】
上記バリスタ原料は、酸化亜鉛100mol%と、これに対する外掛け量で、酸化ビスマス0.1〜1.5mol%と、酸化アンチモン0.01〜2.0mol%と、酸化コバルトまたは酸化マンガンの少なくとも何れか0.1〜1.5mol%と、酸化クロム0.01〜2.0mol%と、ホウ酸0.1〜1.0mol%と、二酸化ケイ素0.1〜1.0mol%と、酸化アルミニウム10〜1000ppmと、を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化亜鉛積層チップバリスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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