説明

酸化安定性に優れたモリンガオイルとその製造方法

【課題】 酸化安定性に優れ、しかも搾油性に優れたモリンガオイルを提供すること、並びに酸化安定性に優れたモリンガオイルを搾油性よく製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎して得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後に圧搾法により搾油して得られる酸化安定性に優れたモリンガオイルと、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子から搾油によりモリンガオイルを製造するにあたり、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎し、次いで得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後、圧搾法により搾油することを特徴とする酸化安定性に優れたモリンガオイルの製造方法とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化安定性に優れたモリンガオイルとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モリンガ(Moringa)属(ワサビノキ)に属する植物は、インドシナからインド・マダガスカル及び熱帯アフリカに広く分布している。
このモリンガ(Moringa)属(ワサビノキ)に属する植物は、現在、約14種が知られており、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)は、その中でも最も良く知られている。
モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)は、高さ8〜15mの落葉樹であり、長さ30〜50cmの円筒状の鞘のある果実をつける。この果実は、通常は未熟のまま野菜として食用にされるが、成熟した種子は炒ってナッツとして食用にしているところもある。
【0003】
このようにモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)の種子の殆どは、未成熟時に野菜として、より具体的にはカレーの具材や漬物等に加工され食用として消費されてしまい、また成熟した種子も炒ってナッツとして食用とされている。このため、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)の種子は、現在、油糧原料としては殆ど使用されていない。
【0004】
最近、このモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)の未変性種子蛋白中に水汚濁物の凝集機能を持つものがあることが発見されて実用化の検討がなされている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、搾油により蛋白質の汚濁物凝集能が失われることや、搾油して得られる粕にはサポニンやアルカロイドが含まれるため、飼料に供することができないなど、搾油の総合的採算が悪いため、これまで積極的な搾油の検討は行われてこなかった。
【0005】
ところでモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)の成熟した種子は、30%前後の油脂(モリンガオイル)を含んでおり、この油脂(モリンガオイル)の脂肪酸組成は、オレイン酸含量が71〜75%と非常に高く、またベヘニン酸含量が4〜7%程度であり、酸化安定性の高い油脂であることが分かっている。
【0006】
本発明者は、このようなモリンガオイルの酸化安定性に注目し、モリンガオイルに関して、酸化安定性と搾油性のさらなる向上を図るべく、鋭意検討を重ねた。
これまでモリンガオイルを製造する場合、搾油を圧搾法で行うときには予め100〜110℃の温度帯で、また搾油を抽出法で行うときには予め60〜80℃の温度帯で、それぞれ前処理した種子から油を取り出していた。
鋭意検討の結果、驚くべきことに本発明者は、この前処理の段階で、種子をより高温の120〜140℃で焙煎することにより、油脂の酸化安定性が飛躍的に高まることを見出した。
【0007】
しかしながら、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)の成熟した種子を120〜140℃で高温焙煎すると、種子が乾燥して比重が低下するため、圧搾機への原料フィードが不完全になり、搾油ができなくなるという現象が見られた。また、微粉化して火災が発生する危険性があった。
従来、油糧種子からの採油には、粗砕や脱皮によって圧搾の適合性を高めてきたが、高温焙煎を行うと、過乾燥による比重の低下や表皮の角質化や微粉による油脂吸着など複合した影響によって、圧搾機への原料フィードの悪化や採油量の低下が惹起した。即ち、圧搾の不適合性が起きて、上記のような高温焙煎は採用できなかった。
【0008】
そこで本発明者はさらに検討を重ねた。
その結果、鞘を分離した後の種子について、微粉化を避けるため、通常行われている粗砕を行わず、全粒の種子(ホールシード)を焙煎することにした。
そして、蒸気又は水をクッカーに投入して種子表面を軟化させ、必要に応じて植物種子粕(例えば、トウモロコシ搾油粕)を2〜3重量%投入し圧搾抵抗を増大させることにより、搾油を良好に行うことができた。
これは見方を変えると、圧搾機へフィードするときの原料種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整することであることが分かった。
即ち、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)の成熟した種子を120〜140℃で焙煎し、次いで圧搾機へフィードするときの原料種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整し、その後搾油することにより、酸化安定性に優れ、しかも搾油性に優れたモリンガオイルが得られることが分かった。
【0009】
搾油に際して、圧搾機への原料のフィーダビリティー(feedability)は、圧搾機の機械的な特性、即ち原料と、圧搾後の粕の量比から算出される圧縮比による他、原料の特性としては、嵩比重や弾力や抵抗応力などの物性に支配されるが、本発明者は、これらの要因を総合化して、搾油の適否が、圧搾機への投入原料の嵩密度によって表すことができることを見出した。
本発明者は、このような知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
【特許文献1】特表2003−529606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、酸化安定性(抗酸化性)に優れ、しかも搾油性に優れたモリンガオイルを提供することを目的とするものである。
さらに、本発明は、酸化安定性に優れたモリンガオイルを搾油性よく製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る本発明は、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎して得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後に圧搾法により搾油して得られる酸化安定性に優れたモリンガオイルを提供するものである。
請求項2に係る本発明は、モリンガ(Moringa)属に属する植物が、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)である請求項1記載のモリンガオイルを提供するものである。
請求項3に係る本発明は、請求項1又は2記載のモリンガオイルを含有する食用油脂を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、請求項1又は2記載のモリンガオイルを含有する化粧品を提供するものである。
請求項5に係る本発明は、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子から搾油によりモリンガオイルを製造するにあたり、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎し、次いで得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後、圧搾法により搾油することを特徴とする酸化安定性に優れたモリンガオイルの製造方法を提供するものである。
請求項6に係る本発明は、モリンガ(Moringa)属に属する植物が、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)である請求項5記載のモリンガオイルの製造方法を提供するものである。
【0013】
本発明の特徴とするところは、モリンガオイルを搾油する前に行われる前処理工程で、特定の温度範囲で焙煎することにより、より抗酸化性の高い油脂を製造することにある。
また、120〜140℃という高温で焙煎することによる種子の過乾燥及び比重低下からくる圧搾の不適合性を蒸気又は水の投入や植物油種子粕投入等の手段で嵩比重を高めて、圧搾機へのフィード量と採油量を確保しつつ圧搾することにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明によれば、酸化安定性に優れ、しかも搾油性に優れたモリンガオイルが提供される。
さらに、請求項5に係る本発明によれば、酸化安定性に優れ、しかも搾油性に優れたモリンガオイルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎して得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後に圧搾法により搾油して得られるものである。
ここでモリンガ(Moringa)属(ワサビノキ)に属する植物としては、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)を初めとして、モリンガ・コンカネンシス(Moringa concanensis)、モリンガ・プテリゴスペルマ(Moringa pterygosperma)などが挙げられるが、その中でも請求項2に記載したように、特にモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)が好ましい。
【0016】
モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子としては、未熟な種子ではなく、成熟した種子が用いられるが、一部未熟な種子が混ざっていても差し支えない。
【0017】
請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、上記した如きモリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎して得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後に圧搾法により搾油して得られる。
ここで種子を120〜140℃で焙煎したとしても、嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整したものでなければ不適当である。その反対に、種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整したものであったとしても、120〜140℃で焙煎したものでなければ、やはり不適当である。
【0018】
焙煎温度が120℃未満では、酸化安定性の向上効果が充分でない。一方、焙煎温度が140℃を超えると、種子が過乾燥となり、蒸気又は水の投入などでいかに種子の嵩比重を調整したとしても圧搾機へのフィードが不完全になり、搾油ができなくなるおそれがあるため好ましくない。
なお、焙煎時間は、焙煎温度等により異なり一義的に決定することは困難であるが、一般に10〜15分程度でよい。
また、種子の嵩比重が0.45g/cm未満であると、圧搾機が空回りしたりしてしまうなど、採油量が低下するおそれがあり、好ましくない。一方、種子の嵩比重が0.50g/cm超える場合には、加水量が過剰となっていて原料が軟化してしまっていたり、或いは細かく粉砕され過ぎたりしていて、いずれも搾油適性が不充分となるおそれがあり、好ましくない。
【0019】
このような請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、請求項5に記載したように、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子から搾油によりモリンガオイルを製造するにあたり、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎し、次いで得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後、圧搾法によって搾油することにより製造することができる。
即ち、請求項5に記載した方法により、請求項1に係る本発明のモリンガオイルを製造することができる。なお、請求項1と5において、同じ文言のものは同じ意味を持っている。
【0020】
請求項5に係る本発明において搾油は、エキスペラーなどで機械的に圧搾する、圧搾法により行われる。なお、石油系の溶剤で抽出する方法(抽出法)で搾油したのでは、酸化安定性に優れたモリンガオイルは得られない。
【0021】
本発明においては、前処理としてモリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を120〜140℃で焙煎することが必要であるが、このとき低比重の鞘は除去するものの、粗砕、圧扁、粉砕などの処理は行わず、全粒のまま使用する。
本発明においては、焙煎時の過乾燥を防ぐため、従来行われている粗砕、圧扁、粉砕などの処理を行わず、全粒種子(ホールシード)のまま焙煎し、さらに蒸気をクッカーに投入して種子表面を軟化させたり、或いは植物種子粕(例えば、トウモロコシ搾油粕、菜種粕、大豆粕等)を2〜3重量%投入し原料の空隙率を低下させて、圧搾抵抗を増大させたりして、得られる種子の微粉化を防止し、原料表面の角質化を防止し、さらに得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整し、次いで圧搾する。
なお、粗砕、圧扁、粉砕などの処理を行わず、全粒種子を用いることにより、劣化生成物の生成や基質の油脂そのものの酸化劣化を防ぐことができる。
【0022】
一般に植物種子から搾油するに際しては、前処理工程として、通常、粗砕、圧扁、熱処理(焙煎或いはクッキングと称することもある。)が行われる。
この前処理工程の目的は、種子成分中のたんぱく質を熱変性によって凝固させて脂質を集合させて採油しやすくすると同時に、種子の水分を乾燥させて採油を容易にするためである。
従って、この熱処理(焙煎)を効率よく達成するために種子を粗砕や圧扁によって砕いたのち熱処理(焙煎)を行うことが通常採られている。
しかしながら、前記したように、本発明においては、敢えてこのような粗砕や圧扁を行わない。
【0023】
なお、搾油工程以降は、常法と同様にして精製工程を行うことができる。
油脂の精製工程は、一般に油脂に溶解して含まれてくるリン脂質や採油の前処理などで劣化生成した遊離脂肪酸等の不純物の除去を目的としている。
そのため、油脂の精製工程としては、脱ガム、脱酸、脱色、脱ロウ、脱臭などの工程があり、これら工程を経て精製油となる。これらの精製工程は常法と同様にして行うことができる。
【0024】
このようにして得られた請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、AOM値が200〜700時間と著しく酸化安定性に優れたものである。
即ち、従来の方法で得られた油脂の酸化安定性は、AOM値を指標とすると、80〜100時間程度であったが、請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、従来と同様の精製工程を経ても、AOM値が200〜700時間と著しく酸化安定性に優れている。
これは、請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、120〜140℃と高温で焙煎されていることから、種子の中でメイラード反応が起こり、メラノイジンが生成することで、酸化安定性が飛躍的に高まったものと推定される。
従って、請求項1に係る本発明のモリンガオイルは、請求項3に記載したように食用油脂として利用できるのみならず、請求項4に記載したように化粧品などへも利用することができる。これらの場合には、食用油脂或いは化粧品として通常配合されている成分を含有させることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0026】
試験例1(原料の前処理の検討)
原料の搾油適性を把握するため、原料の前処理を検討した。
モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子について、鞘を残した鞘有りと、鞘を除去した鞘無しの2種類のものを用意し、100〜110℃に加温して焙煎し、小型のエキスペラーでそれぞれの搾油適性を検討した。ここで搾油適性は、原料1kgあたりの採油量により、○:優、△:可、×:不可の3段階で判断した。条件と結果を表1に示す。
鞘有りでは搾油適性が不適当であったため、鞘無しの原料をさらに粗砕、圧扁又は粉砕したものを100〜110℃に加温して焙煎し、小型のエキスペラーでそれぞれの搾油適性を検討した。この条件と結果を表1に併せて示す。
なお、原料の粗砕は、フレーキングロールのロールクリアランスを広げて、常温のままで行い、種子が3〜5個程度に粗砕されるころを目安として行った。また、圧扁は、フレーキングロールのロールクリアランスを0.45mmに調整し、常温で行った。さらに、粉砕は、ホールの種子をそのまま粉砕機に通し、粒度は10〜20メッシュを目安に常温で行った。
【0027】
【表1】

【0028】
表1の結果によれば、鞘無しで、しかも粗砕、圧扁、粉砕という処理を行わないもの(全粒種子)が搾油適性に優れていることが分かる。
そこで、この結果から、鞘無しで、しかも粗砕、圧扁、粉砕という処理を行わないものについて、以下の試験例2に示すように焙煎温度の検討を行った。
【0029】
試験例2(焙煎温度の検討)
モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子として、鞘無しで、しかも粗砕、圧扁、粉砕という処理を行わないものを用い、110℃から140℃の各焙煎温度で焙煎し、小型のエキスペラーでそれぞれの搾油適性を検討した。条件と結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2の結果によれば、焙煎温度が高くなるにつれて、水分の蒸散量が増すため、嵩比重が小さくなり、採油量が少なくなって、搾油適性が低下する傾向がみられた。
そこで、以下の試験例3に示すように、原料に対し5重量%分又は10重量%分の水を加えたり、或いはコーンの圧搾粕を原料に対し3重量%分加えたりして嵩比重を調整し、搾油した。
【0032】
試験例3
モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子として、鞘無しで、しかも粗砕、圧扁、粉砕という処理を行わないものを用い、130℃又は140℃の各焙煎温度で焙煎した後、原料に対し5重量%分又は10重量%分の水を加えたり、或いはコーンの圧搾粕を原料に対し3重量%分加えたりして嵩比重を調整し、搾油した。条件と結果を表3に示す。なお、加水について、原料に対し5重量%分の水を加えた場合には「有」と表示し、10重量%分の水を加えた場合には「有(過多)」と表示した。
【0033】
【表3】

【0034】
表3の結果から明らかなように、原料に対し5重量%分の水を加えたり、或いはコーンの圧搾粕を原料に対し3重量%分加えたりして、嵩比重を調整した場合には、充分な搾油適性を得ることができることが分かった。
しかしながら、原料に対し10重量%分の水を加えた場合(加水過多の場合)には、嵩比重が増大し、充分な搾油適性を得ることができなかった。
以上の結果から、原料を前処理する際に、嵩比重を指標に0.45〜0.50g/cmの範囲に調整することにより、搾油適性が飛躍的に増大することが分かった。
【0035】
実施例1
(1)モリンガオイルAの製造
鞘を取り除いたモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子6kgを120℃達温で焙煎し、次いで前記原料に対し5重量%分の水を加えて嵩比重を0.48g/cmに調整した後、小型のエキスペラーにて搾油し、約2kgの粗原油を得た。
得られた粗原油に、リン酸を対油0.1重量%加え、水酸化ナトリウム水溶液にて遊離脂肪酸を中和し、遠心分離機にて油を分離し、約1.3kgの脱酸油を得た。
次に、これに、活性白土1重量%を加え、90℃で45分間攪拌したものをろ紙でろ過して、約1.2kgの脱色油を得た。
さらに、これを250℃の真空下(5mmHg以下)で60分間水蒸気蒸留を行って得られた約1.2kgの脱臭油を精製モリンガオイルAとした。
【0036】
(2)酸化安定性の評価
上記(1)にて得られた精製モリンガオイルAに関して、酸化安定性の指標となるAOM値の測定を基準油脂分析試験法に従って行った。結果を表4に示す。なお、AOM値は、油に空気を吹き込み所定の過酸化物価に達するまでの時間を示し、数値が大きいほど酸化安定性がよい。
【0037】
実施例2
(1)モリンガオイルBの製造
鞘を取り除いたモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子5kgを140℃達温で焙煎し、次いで前記原料に対し5重量%分の水を加えて嵩比重を0.46g/cmに調整した後、小型のエキスペラーにて搾油したこと以外は、実施例1(1)と同様にして行い、得られた脱臭油を精製モリンガオイルBとした。
【0038】
(2)酸化安定性の評価
上記(1)にて得られた精製モリンガオイルBに関して、実施例1(2)と同様にして酸化安定性の指標となるAOM値の測定を行った。結果を表4に示す。
【0039】
比較例1
(1)モリンガオイルCの製造
鞘を取り除いたモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子5kgを100℃達温で焙煎し、次いで前記原料に対し5重量%分の水を加えて嵩比重を0.50g/cmに調整した後、小型のエキスペラーにて搾油したこと以外は、実施例1(1)と同様にして行い、得られた脱臭油を精製モリンガオイルCとした。
【0040】
(2)酸化安定性の評価
上記(1)にて得られた精製モリンガオイルCに関して、実施例1(2)と同様にして酸化安定性の指標となるAOM値の測定を行った。結果を表4に示す。
【0041】
比較例2
(1)モリンガオイルDの製造
鞘を取り除いたモリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)種子5kgを60〜80℃に加温後、N−ヘキサンで油を抽出し、以下、実施例1(1)と同様に精製を行い、得られた脱臭油を精製モリンガオイルDとした。
【0042】
(2)酸化安定性の評価
上記(1)にて得られた精製モリンガオイルDに関して、実施例1(2)と同様にして酸化安定性の指標となるAOM値の測定を行った。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のモリンガオイルは、液体油であるにもかかわらず、非常に高い酸化安定性を有し、しかも搾油性に優れたものであり、食用油脂として利用できる他、高い酸化安定性を要求される化粧品などへ利用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎して得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後に圧搾法により搾油して得られる酸化安定性に優れたモリンガオイル。
【請求項2】
モリンガ(Moringa)属に属する植物が、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)である請求項1記載のモリンガオイル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のモリンガオイルを含有する食用油脂。
【請求項4】
請求項1又は2記載のモリンガオイルを含有する化粧品。
【請求項5】
モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子から搾油によりモリンガオイルを製造するにあたり、モリンガ(Moringa)属に属する植物の種子を全粒のまま120〜140℃で焙煎し、次いで得られる種子の嵩比重を0.45〜0.50g/cmの範囲に調整した後、圧搾法により搾油することを特徴とする酸化安定性に優れたモリンガオイルの製造方法。
【請求項6】
モリンガ(Moringa)属に属する植物が、モリンガ・オレイフェラ・ラム(Moringa oleifera Lam)である請求項5記載のモリンガオイルの製造方法。

【公開番号】特開2006−57034(P2006−57034A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241994(P2004−241994)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(591188170)太田油脂株式会社 (4)
【Fターム(参考)】