説明

酸化染毛剤組成物

【課題】 染毛効果に優れ、毛髪への損傷も少ない酸化染毛剤組成物を提供する。
【解決手段】 酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤からなり、使用前に混合される2剤型の酸化染毛剤組成物であって、第1剤及び/又は第2剤がアセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を含有することを特徴とする酸化染毛剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化染毛剤組成物に関し、特に染毛効果に優れ、毛髪への損傷も少ない酸化染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化染毛剤は、永久染毛剤の中で現在最も広く使用されており、染毛剤中の酸化染料が毛髪に浸透して酸化重合し、発色することによって毛髪を化学的に染色し、その染毛効果が長時間持続するものである。酸化染毛剤の剤型としては、酸化染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とを用時混合して用いる2剤型が一般的である。
この酸化染毛剤の染色性を向上させるために、鶏冠由来のヒアルロン酸等のムコ多糖類(特許文献1)や微生物由来のヒアルロン酸及びその塩類(特許文献2)の配合が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−56611号公報
【特許文献2】特開2007−153874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記のヒアルロン酸を配合しても、充分な染毛効果を得るためにはある程度高いpHで提供する必要があり、毛髪への損傷の軽減という観点では、必ずしも満足のいくものではなかった。
本発明は前記従来技術の課題に鑑み行われたものであり、その目的は優れた染毛効果を有すると共に、毛髪への損傷が少ない酸化染毛剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが前述の問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を含有することにより染毛効果に優れ、毛髪への損傷も少ない酸化染毛剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明にかかる酸化染毛剤組成物は、酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤からなり、使用前に混合される2剤型の酸化染毛剤組成物であって、第1剤及び/又は第2剤がアセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を含有することを特徴とする。
前記染毛剤組成物において、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類が、下記一般式(I)で示される繰り返し構造単位を有することが好適である。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に水素原子、又はエステル結合されたアセチル基を示す(ただし、平均して各繰り返し構造単位においてR1、R2、R3、R4の少なくとも2個以上がアセチル基を示す)。R5は水素原子又はアルカリ金属を示す。kは2以上の数を示す。)
前記染毛剤組成物において、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を0.00001〜10重量%含有することが好適である。
前記染毛剤組成物において、第1剤のpHが8〜11でかつ、第1剤と第2剤を等重量で混合したときのpHが8〜10であることが好適である。
前記染毛剤組成物において、下記一般式(II)で示される高級アルコールの1種又は2種以上を含有することが好適である。
【化2】

(式中、RはCnH2n+1で表されるアルキル基であり、nは0〜20の整数を示す。RはCmH2m+1で表されるアルキル基であり、mは0〜20の整数を示す。RはCkH2k+1で表されるアルキル基であり、kは0〜20の整数を示す。RはCjH2jで表されるアルケン基であり、jは0〜19の整数を示す。ここでn+m+k+j=16〜22であり、n、m、kのいずれか2つ以上が同時に0になることはない。)
前記染毛剤組成物において、常温で液体の脂肪酸エステルを含有することが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる酸化染毛剤組成物は、酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とからなり、アセチル化ヒアルロン酸あるいはその塩類を含有するものであり、染毛効果に非常に優れた酸化染毛剤組成物を提供することができる。また、染毛効果に影響のない範囲でpHを従来よりも1程度下げることが可能になり、染毛剤処理に起因する毛髪の損傷を少なくすることができるため、毛髪への負担を軽減した酸化染毛剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】表1及び表2に示す各試料の色差計測定結果(試験例2−1に対する相対結果)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にかかる酸化染毛剤組成物は、酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤からなり、使用前に混合される2剤型の酸化染毛剤組成物であって、第1剤及び/又は第2剤がアセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を含有する染毛剤組成物である。以下、本発明について詳述する。
【0010】
本発明の酸化染毛剤組成物の必須成分であるアセチル化ヒアルロン酸又はその塩類は、ヒアルロン酸の水酸基を部分的にアセチル化した高分子化合物である。このアセチル化ヒアルロン酸は保湿効果を有する水溶性高分子で、長期的に塗布することでフケ・カユミ防止効果を有することが知られている。
本発明にかかる酸化染毛剤組成物は、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を配合することにより、染毛効果に非常に優れている。また、毛髪への損傷の軽減も実現できるため、染色後の毛髪の水分保持率も高い。アセチル化ヒアルロン酸は、第1剤、第2剤のどちらに配合することもできるが、第1剤に配合することが好適である。
【0011】
本発明において、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類の水酸基に対するアセチル化率は特に限定されるものでないが、下記一般式(I)で示される繰り返し構造単位を有するものを好適に用いることができる。
【0012】
【化3】

(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に水素原子、又はエステル結合されたアセチル基を示す(ただし、平均して各繰り返し構造単位においてR1、R2、R3、R4の少なくとも2個以上がアセチル基を示す)。R5は水素原子又はアルカリ金属を示す。kは2以上の数を示す。)
【0013】
上記一般式(I)において、R1〜R4のうちの1つがアセチル基である場合をアセチル化度1とすると、本発明ではアセチル化度が2〜4のアセチル化ヒアルロン酸が好ましく用いられる。
また、本発明に用いられるアセチル化ヒアルロン酸の分子量は、ヒアルロン酸換算で1万〜100万程度のものが好適である。
【0014】
本発明に用いられるアセチル化ヒアルロン酸又はその塩類は、例えば、粉末状のヒアルロン酸を酢酸に分散し、触媒として無水トリフルオロ酢酸を加えて反応させる方法、ヒアルロン酸を酢酸に分散し、p−トルエンスルホン酸を加えてさらに無水酢酸を加えて反応させる方法、ヒアルロン酸を無水酢酸溶媒に懸濁させた後、濃硫酸を加えて反応させる方法等が知られており(特開平6−9707号公報、特開平8−53501号公報等)、これらの方法により製造することができるが、上記例示の方法に限定されるものでない。
【0015】
本発明にかかる酸化染毛剤組成物において、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類の配合量の上限は、染毛剤の粘性等の点から10重量%が好ましく、より好ましくは1重量%である。一方、配合量の下限は、染毛効果等の点から0.00001重量%が好ましく、より好ましくは0.0001重量%である。
【0016】
アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を含有する本発明の酸化染毛剤組成物は、染毛効果に優れており、その効果は低pH領域でも発揮できる。一般に、染毛剤において毛髪の損傷を起こす一因であるとされているpHを、低くすることで、毛髪への損傷を抑えることが可能となる。
すなわち、本発明の酸化染毛剤組成物において、第1剤のpHを8〜11でかつ、第1剤と第2剤を等重量で混合したときのpHを8〜10と調整することが好適である。また、毛髪への損傷のさらなる軽減を考慮すると、第1剤と第2剤を等重量で混合したときのpHを8〜9程度にすることが好ましく、染毛効果を考慮するとpHを9程度とすることがさらに好ましい。
【0017】
pH調整剤としてはリン酸、硫酸、塩酸、炭酸などの無機酸あるいはクエン酸、グリコール酸、酒石酸などの有機酸のナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩類、アンモニアあるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどの有機アルカリ塩類等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることによりpHの調整をすることができる。
【0018】
本発明の酸化染毛剤組成物において、第1剤に酸化染料を含有することが必要である。
酸化染料としては、例えば、パラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、N−メチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジメチル−2−メチルパラフェニレンジアミン、N−エチル−N−ヒドロキシエチル−パラフェニレンジアミン、クロルパラフェニレンジアミン、N,N−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)パラフェニレンジアミン、メトキシパラフェニレンジアミン、2,6−ジクロルパラフェニレンジアミン、2−クロル−6−ブロムパラフェニレンジアミン、2−クロル−6−メチルパラフェニレンジアミン、6−メトキシ−3−メチルパラフェニレンジアミン、2,5−ジアミノアニソール、N−(2−ヒドロキシプロピル)パラフェニレンジアミン、N−(2−メトキシエチル)パラフェニレンジアミン等のパラジアミン類、2,5−ジアミノピリジン類、パラアミノフェノール、2−メチル−4−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、3−クロロ−4−アミノフェノール、2,6−ジメチル−4−アミノフェノール、3,5−ジメチル−4−アミノフェノール、2,3−ジメチル−4−アミノフェノール、2,5−ジメチル−4−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、5−アミノサリチル酸等のパラアミノフェノール類、オルソアミノフェノール類、オルソフェニレンジアミン類、α−ナフトール、オルソクレゾール、メタクレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、ベンズカテキン、ピロガロール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノ−2−メチルフェノール、ハイドロキノン、2,4−ジアミノアニソール、メタトルイレンジアミン、4−アミノフェノール、レゾルシン、レゾルシンモノメチルエーテル、メタフェニレンジアミン、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−フェニル−3−アミノ−5−ピラゾロン、1−フェニル−3,5−ジメチルピラゾリジン、1−メチル−7−ジメチルアミノ−4−ヒドロキシ−2−キノロン、メタアミノフェノール、4−クロロレゾルシン、2−メチルレゾルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、3,5−ジアミノトリフロロメチルベンゼン、2,4−ジアミノフロロベンゼン、3,5−ジアミノフロロベンゼン、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、2,4,6−トリアミノピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、4−アミノ−2,6−ジヒドロキシピリミジン、4,6−ジアミノ−2−ヒドロキシピリミジン、2,6−ジアミノピリミジン等及びこれらの塩等が挙げられる。これらの酸化染料の配合量は通常酸化染毛剤に用いられる範囲であれば特に限定されるものではない。
【0019】
本発明の酸化染毛剤組成物において、第2剤に酸化剤を含有することが必要である。
本発明で用いられる酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、過酸化尿素等が挙げられる。これらの酸化剤の配合量は通常酸化染毛剤に用いられる範囲であれば特に限定されるものではない。
【0020】
また、本発明にかかる酸化染毛剤において、第1剤、第2剤のうち少なくともいずれかに油分を含有することが好ましい。
本発明の酸化染毛剤組成物に配合される油分としては、下記一般式(II)で示される油分の1種又は2種以上を用いることが好適である。
【化4】

(式中、RはCnH2n+1で表されるアルキル基であり、nは0〜20の整数を示す。RはCmH2m+1で表されるアルキル基であり、mは0〜20の整数を示す。RはCkH2k+1で表されるアルキル基であり、kは0〜20の整数を示す。RはCjH2jで表されるアルケン基であり、jは0〜19の整数を示す。ここでn+m+k+j=16〜22であり、n、m、kのいずれか2つ以上が同時に0になることはない。)
【0021】
一般式(II)で示される油分のうち、炭素数が16〜22である分岐アルコールを配合することが好ましい。さらに好ましくは、2−デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等の分岐鎖アルコールであり、最も好ましくはイソステアリルアルコールである。
【0022】
本発明にかかる酸化染毛剤組成物中、一般式(II)で示される油分の配合量は本発明の効果が得られる範囲であれば限定されず、適宜調整して用いることができるが、0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%配合することが好ましい。
【0023】
また、本発明の酸化染毛剤組成物において、常温で液体の脂肪酸エステルを1種又は2種以上配合することが好ましい。常温で液体の脂肪酸エステルとしては、エルカ酸イソステアリル、エルカ酸オクチルドデシル、エルカ酸オレイル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸ベヘニル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸デシル、イソステアリン酸ブチル、イソステアリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ミリスチル、イソステアリン酸ラウリル、イソデカン酸イソセチル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、イソパルミチン酸オクチル、イソペラルゴン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、オレイン酸ブチル、オレイン酸メチル等が挙げられる。
常温で液体の脂肪酸エステルのうち、不飽和脂肪酸エステルを配合することが好ましい。さらに好ましくは、エルカ酸オレイル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシルであり、最も好ましくはオレイン酸デシルである。
【0024】
本発明にかかる酸化染毛剤組成物中、常温で液体の脂肪酸エステルの配合量は、本発明の効果が得られる範囲であれば限定されず、適宜調整して用いることができるが、0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%配合することが好ましい。
【0025】
本発明の酸化染毛剤組成物において、油分の配合量は、本発明の効果が得られる範囲であれば限定されず、適宜調整して用いることができるが、0.1〜80重量%、特に1〜50重量%配合することが好ましい。
【0026】
本発明の酸化染毛剤組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、通常染毛剤に用いられる他の成分を配合することも可能である。
【0027】
例えば、第1剤に配合される成分としては、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、コンドロイチン硫酸塩、ヒアルロン酸塩、ジグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ピロリドンカルボン酸塩、ソルビトール、マルチトール、ラクトース、オリゴ糖等の保湿剤、シア脂、スクワラン、レシチン、流動パラフィン、ワセリン、高級脂肪酸、トリグリセライド、エステル油等の油性成分が挙げられる。
さらに、高級アルコール類としては、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等の低級アルコール類、2−エチルヘキシルアルコール、セトステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール等が挙げられる。
【0028】
また、チオグリコール酸塩、L−アスコルビン酸塩、亜硫酸水素塩、ハイドロサルファイト塩、硫酸水素塩等の酸化防止剤及び安定化剤、コラーゲン加水分解物、ケラチン加水分解物、シルクプロテイン加水分解物、エラスチン加水分解物、大豆蛋白加水分解物等の蛋白質加水分解物及びこれらの四級化物、アンモニア水、アルカノールアミン、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤を配合することもできる。
【0029】
また、乳化剤として、両親媒性物質や、界面活性剤を用いることもできる。
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体等のポリオキシエチレン系界面活性剤、オクチルポリグリコシド等のアルキルポリグリコシド類、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル等のポリグリセリン系界面活性剤、マルチトールヒドロキシアルキルエーテル等の糖アルコールヒドロキシアルキルエーテル類、脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
また、高級脂肪酸塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、リン酸エステル類、アルキル硫酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類等のアニオン性界面活性剤、アミノ酸類、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアミンオキサイド等のカチオン性界面活性剤、その他の界面活性剤を配合することもできる。
【0030】
また、金属イオン封鎖剤及び防腐剤としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸塩類、フェナセチン、EDTA及びその塩、パラベン類、スズ酸塩類等が挙げられる。
高分子化合物としては、ポリ(ジメチルアリルアンモニウムハライド)型カチオン性高分子、ポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、プロピレンアミン及び牛脂脂肪酸より得られるタロイルアミンの縮合生成物型であるカチオン性高分子、ポリエチレングリコール、エピクロルヒドリン、ビニルピロリドン、ジメチルアミノメタアクリレート共重合体型カチオン性高分子、第4級窒素含有セルロースエーテル型カチオン性高分子類等が挙げられる。
【0031】
また、ラウリン酸ジエタノールアミド、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸塩、ペクチン、フェーセラン、アラビアガム、ガツチガム、カラヤガム、トラガントガム、カンテン末、ベントナイト、架橋性ポリアクリル酸塩等の増粘剤を本発明の効果が損なわれない範囲で配合することもできる。
その他、香料、薬剤、着色剤、紫外線防止剤、水等を配合することもできる。これらは、必要に応じ適宜選択されて配合され、特に限定されるものではない。
【0032】
第2剤に配合される成分としては、例えば、EDTA及びその塩、スズ酸塩類等の金属イオン封鎖剤、フェナセチン、パラベン類等の防腐剤、流動パラフィン、ワセリン等の油分、2−エチルヘキシルアルコール、セトステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール等の高級アルコール類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、アルキル硫酸エステル塩類、アシルメチルタウリン類等の界面活性剤、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、ギ酸、レブリン酸等の有機酸や、リン酸、塩酸等の無機酸等の酸、香料、薬剤、着色剤、水等が挙げられる。これらは、必要に応じて適宜選択されるが、特に限定されるものではない。
【0033】
なお、酸化染毛剤組成物において、第1剤と第2剤との混合比は、通常重量比で第1剤:第2剤=1:1であることが多いが、染毛効果や垂れ落ち、使用性、均染性等において不都合がない限り特に限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する重量%で示す。
【0035】
下記表1に示す配合組成なる酸化染毛剤組成物(第1剤及び第2剤)を、下記製造方法により製造した。なお、第1剤のpHは、示されているpHになるように、pH調整剤を適宜配合することにより調整された。
そして、評価項目(1)について、下記採点基準にて評価すると共に、第1剤と第2剤との混合時にpHを測定した。結果を表1に示す。
【0036】
・酸化染毛剤組成物製造方法
(第1剤)
全成分を攪拌下80℃に加温して溶解、乳化した後、冷却することにより、第1剤を得た。
(第2剤)
過酸化水素以外の成分を攪拌下80℃に加温して溶解、乳化した後40℃まで冷却した時点で過酸化水素を加え、均一になるまで攪拌することにより、第2剤を得た。
【0037】
評価(1):染色試験
第1剤10gと第2剤10gとをよく混合し、1g白髪毛束を混合液中に含浸させた。室温下で30分放置した後、毛束をぬるま湯でよく洗浄し、乾燥させた。
基準試験の毛束の染まりを基準(5)として、試験例の毛束の染まりを目視にて5段階の官能評価により判定した。
5・・・基準試験の毛束と同等。
4・・・基準試験の毛束よりわずかに薄い。
3・・・基準試験の毛束よりやや薄い。
2・・・基準試験の毛束より薄い。
1・・・基準試験の毛束よりかなり薄い。
【0038】
【表1】

【0039】
微生物由来ヒアルロン酸ナトリウムを配合した従来の酸化染毛剤を基準試験として試験を行ったところ、基準試験の試料は染毛効果に優れていた。
しかし、基準試験と同じ組成の試験例1−1〜1−3によれば、第1剤のpHを下げていき、組成物のpHが低下すると共に、染毛効果が低くなった。
【0040】
このように、酸化染毛剤組成物に染毛効果を期待した場合、高いpH、すなわち強いアルカリ性であることが一般的に必要とされてきた。しかし、強いアルカリ性の組成物を毛髪に塗布した際、毛髪に悪影響を及ぼすことが懸念される。
また、従来、染毛効果を高める成分と知られている微生物由来ヒアルロン酸を配合しても、その効果は高いpH領域でのみ有効であり、低いpH領域では染毛効果に劣ってしまうことが明らかとなった。
【0041】
そこで、本発明者らは、低いpH領域でも優れた染毛効果を発揮できる成分について検討を行った。
下記表2に示す配合組成なる酸化染毛剤組成物(第1剤及び第2剤)を、上記製造方法により製造した。なお、第1剤のpHは、示されているpHになるように、pH調整剤を適宜配合することにより調整された。
そして、評価項目(1)について、上記採点基準にて評価すると共に、第1剤と第2剤との混合時にpHを測定した。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを配合した試験例2−1〜2−4によれば、pHを下げていっても、染毛効果はそれほど低下せず、第1剤のpHが9〜11、組成物のpHが9〜10の場合に基準試験と同等の染毛効果を有する酸化染毛剤が得られた。
したがって、本発明にかかる酸化染毛剤組成物において、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを含有させることが必要である。
【0044】
また、本発明のアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを配合した酸化染毛剤組成物は、高いpH領域では従来の微生物由来ヒアルロン酸を配合した組成物との染毛効果に大差はないが、低いpH領域において顕著な差が発揮されることが明らかとなった。
このため、本発明の酸化染毛剤組成物は、毛髪への損傷の軽減を考慮すると、第1剤のpHが8〜11でかつ、第1剤と第2剤を等重量で混合したときのpHが8〜10に調整されることが好適である。
【0045】
次に、表1及び表2で示されている基準試験および各試験例の酸化染毛剤組成物を、色差計CM−3600(ミノルタ社製)を用いて測定を行った。試験例2−1の測定値(図中試験例2(実施例)・pH11で示す)を100%として、各測定値から算出した値(%)を図1に示す。
【0046】
図1によれば、色差計による測定値からも、目視における評価結果と同様、試験例2の試料における優れた染毛効果が認められ、全てのpH領域においてアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを配合した本発明の酸化染毛剤組成物は、基準試験及び試験例1の試料と比べて染毛効果に優れていた。
また、本発明の酸化染毛剤組成物は、pHを1程度低くしても、従来のpHが1高い酸化染毛剤と同等もしくはそれ以上の染毛効果が期待できることも明らかとなった。
【0047】
次に、従来の酸化染毛剤より低いpH領域(第1剤のpH10・組成物のpH9)における従来のヒアルロン酸及び本発明のアセチル化ヒアルロン酸による染毛効果の相違について確認すると共に、配合量及び他成分の検討を行った。
下記表3に示す配合組成なる酸化染毛剤組成物(第1剤及び第2剤)を、上記製造方法により製造した。そして、評価項目(2)及び(3)について下記採点基準にて評価した。結果を表3に示す。
【0048】
評価(2):染色試験
第1剤10gと第2剤10gとをよく混合し、1g白髪毛束を混合液中に含浸させた。室温下で30分放置した後、毛束をぬるま湯でよく洗浄し、乾燥させた。
コントロールの毛束を基準(0)として、試験例の毛束の染まりを目視にて5段階の官能評価により判定した。
4・・・コントロールの毛束よりかなりよく染まっている。
3・・・コントロールの毛束よりよく染まっている。
2・・・コントロールの毛束より染まっている。
1・・・コントロールの毛束よりわずかに染まっている。
0・・・コントロールの毛束と同等。
【0049】
評価(3):水分保持率
評価項目(2)で染色した毛束を80%RH下で12時間放置した後、重量(W1)を測定した。そして、同じ毛束を2時間減圧乾燥した後、重量(W2)を測定した。これらの測定値により、下記に示す水分保持率を算出した。
水分保持率(%)=(W1−W2)×100/W1
【0050】
【表3】

【0051】
表3によれば、コントロールの酸化染毛剤に鶏冠由来もしくは微生物由来のヒアルロン酸ナトリウムを配合した試験例3−1、3−2において、コントロールよりも染色されていたが、その染毛効果に改善の余地のあるものであった。
これに対して、コントロールの酸化染毛剤に試験例3−1、3−2と同量のアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを配合した試験例3−3の試料は、上記の結果と同様、染毛効果に優れていた。
アセチル化ヒアルロン酸の配合量が少ない試験例3−4においても、試験例3−1、3−2より染毛効果に優れていた。
また、試験例3−5、3−6によれば、アセチル化ヒアルロン酸の配合量を増加させることにより、染毛効果を向上できることがわかった。
また、試験例3−7〜3−9によれば、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを配合した酸化染毛剤に、さらにイソステアリルアルコール及び/又はオレイン酸デシルを配合した試料は、染毛効果に非常に優れていた。
また、試験例3−2及び試験例3−3における水分保持試験によれば、本発明にかかるアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを配合した酸化染毛剤組成物を用いて染毛した毛髪の染毛後の水分保持率が高いことも明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤からなり、使用前に混合される2剤型の酸化染毛剤組成物であって、第1剤及び/又は第2剤がアセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を含有することを特徴とする酸化染毛剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の染毛剤組成物において、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類が、下記一般式(I)で示される繰り返し構造単位を有することを特徴とする酸化染毛剤組成物。
【化1】

(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に水素原子、又はエステル結合されたアセチル基を示す(ただし、平均して各繰り返し構造単位においてR1、R2、R3、R4の少なくとも2個以上がアセチル基を示す)。R5は水素原子又はアルカリ金属を示す。kは2以上の数を示す。)
【請求項3】
請求項1又は2記載の染毛剤組成物において、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩類を0.00001〜10重量%含有することを特徴とする酸化染毛剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の染毛剤組成物において、第1剤のpHが8〜11でかつ、第1剤と第2剤を等重量で混合したときのpHが8〜10であることを特徴とする酸化染毛剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の染毛剤組成物において、下記一般式(II)で示される高級アルコールの1種又は2種以上を含有することを特徴とする酸化染毛剤組成物。
【化2】

(式中、RはCnH2n+1で表されるアルキル基であり、nは0〜20の整数を示す。RはCmH2m+1で表されるアルキル基であり、mは0〜20の整数を示す。RはCkH2k+1で表されるアルキル基であり、kは0〜20の整数を示す。RはCjH2jで表されるアルケン基であり、jは0〜19の整数を示す。ここでn+m+k+j=16〜22であり、n、m、kのいずれか2つ以上が同時に0になることはない。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の染毛剤組成物において、常温で液体の脂肪酸エステルを含有することを特徴とする酸化染毛剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−25743(P2012−25743A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139693(P2011−139693)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】