説明

酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害の予防または低減

水不溶性セルロース誘導体、例えばエチルセルロースは、動物の組織内の酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するために、特に、動物の非脂肪組織内のステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現またはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現のレベルを支配するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、米国農務省との共同研究開発契約(番号58−3K95−5−1072)のもとになされたものである。
【0002】
本発明は、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害の予防または低減、更に薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
酸化的ストレスは、一般的に、組織内での酸化剤の過剰な生成と定義される。医学において、酸化的ストレスは、このような組織における細胞傷害および最終的には細胞死を招来する可能性があることが一般的に認められている。
【0004】
通常の生理学的条件下では、好気性生物の細胞による酸素の使用により潜在的に有害な反応性酸素代謝産物が生成される。酸化的ストレスの慢性状態は細胞において酸化促進剤/酸化剤と抗酸化剤との間の不均衡によって存在する。酸化的ダメージの量は、生物の加齢に従って増大し、そして老化の主要な原因因子となるという仮説がなされている(RS SohalおよびR.Weindruck,Department of Biological Sciences,Southern Methodist University,Dallas,TX 75275,USA.Science,1996 July 5;273(5271):59−63)。
【0005】
過去10年に亘って、多様な生物医学分野における相当数の科学的証拠により、酸化的フリーラジカル傷害、および、特に、反応性酸素種(ROS)の過剰な生成が、多数の臨床的に重要な疾患,例えば悪性腫瘍、中枢神経系変性疾患、代謝系疾患および虚血性循環器疾患,例えば長期の糖尿病の合併症、関節炎、アテローム性動脈硬化および虚血再灌流傷害、更に日光誘導性皮膚ダメージおよびエイジングの物理的な発現における細胞死および組織傷害の原因となる主要な因子に関係があるとされてきた。周知のROSは部分還元O2誘導体、例えば過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、およびスーパーオキシドアニオンラジカルである。
【0006】
Alexander R W,Department of Medicine,Emory University School of Medicine,Atlanta,Georgia,USA,“Transactions of the American Clinical and Climatological Association”(1998),109 129−45は、蓄積された証拠により、アテローム性動脈硬化の発病機序に関与する主要な病態生理学的機構のうちの1つが促進された酸化的ストレスであり、そしてこの変化したレドックス状態の最も重要な表れが、反応性酸素種によって直接的または間接的に制御される炎症性遺伝子の1つまたは複数の組の調節であるという説得力ある事実が証明されることを開示する。著者は、年齢に関係する高コレステロール血症、高血圧、および糖尿病が全て同様のレドックス感受性の炎症性遺伝子を活性化すると理論付けている。
【0007】
薬効を有する抗酸化剤を見出すことについて大きな研究努力がなされてきた。米国特許第6,204,295号明細書に開示されるように、薬効を有する抗酸化剤は、脂質過酸化によって誘発される組織ダメージを予防するために使用できる化合物である(Haliwell,B.,FASEB J.1:358−364,1987)。米国特許第6,204,295号明細書は、脂質過酸化の間、フリーラジカルはポリ不飽和脂肪酸と相互作用して脂質ペルオキシルラジカルを形成し、これは脂質ヒドロペルオキシド、更に脂質ペルオキシルラジカルを生成することを開示する。この過酸化カスケードは、最終的には細胞の膜脂質の必須の部分を消費する場合があり、これにより膜透過性および最終的な細胞死の変化が招来される場合がある。
【0008】
個体、特に人間の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減することが極めて重要であることに鑑み、薬効を有する抗酸化剤の発見についての大きな研究努力のみでなく、酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に対する個体の反応の検討,例えば個体の組織または体液における分子生物学的変化の検討について多くの研究努力がなされている。このような分子生物学的変化は、酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害についてのバイオマーカーとしての役割を果たす可能性がある。
【0009】
高レベルの反応性酸素種(ROS)が抗酸化酵素SOD2の発現を誘発することを示す幾つかの検討が公開されてきた。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、細胞内のスーパーオキシドラジカルの消失に関与する重要な抗酸化剤酵素である。マンガン含有SOD(MnSODまたはSOD2)はミトコンドリア内(ここでスーパーオキシドラジカルが電子伝達により常に生成される)に位置する。30年以上の間SODはスーパーオキシドの消失を触媒することが知られる唯一の酵素系であった(V.Niviereら,Journal of Biological Inorganic Chemistry 9(2):119−123 MAR 2004,“Discovery of superoxide reductase:a historical perspective”)。SODは、酸素存在下で生きる殆ど全ての生物において見出されている。酵母から人間までの生物のミトコンドリア内で見出されるSOD2は、特に重要な抗酸化防御物であることが教示されている(F.Archibald,PNAS 100(18)10141−10143,Sep 2,2003,“Oxygen toxicity and the health and survival of eukaryote cells:A new piece is added to the puzzle”)。
【0010】
T.Harjuら,Eur Respir J 2004;24:765−771,“Manganese oxide superoxide dismutase is increased in the airways of smokers’ lungs”は、酸化的ストレスが喫煙誘発性の慢性閉塞性肺疾患の鍵のメカニズムであることを開示する。T.Harjuらは、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)類が、スーパーオキシドラジカルを消費できる唯一の酵素であることを開示する。該著者らは、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)が、たばこ喫煙者の肺胞上皮において、おそらく喫煙者の肺における酸化剤の負担が増大することによって、増えることを示している。
【0011】
Yumin Huら,Proc Amer Assos Cancer Res,Volume 46,2005,“Expression of manganese superoxide dismutase(MnSOD) in human ovarian carcinoma and its role in cancer cell proliferation”は、彼らが一連のインビトロおよびインビボの検討を行なってMnSOD発現とROSストレスとの機構的な関連を詳細に調べたことを開示する。ミトコンドリア呼吸鎖の薬理的な干渉によるスーパーオキシド生成の増大はMnSOD発現の急速な誘導の原因であった。CA Piantadosiら,Free Radic.Biol.Med.2006 Apr 15;40(8):1332−9,“Carbon monoxide,oxidative stress,and mitochondrial permeability pore transition”は、一酸化炭素がマンガンSOD(SOD2)を誘導することを議論する。
【0012】
マンガンSOD(SOD2)は重要な抗酸化剤であるため、SOD2発現を人工的に抑えることは一般的には望ましくない。しかし、SOD2発現とROSとの間の公知の機構的な関連に鑑み、出願人は、SOD2がROSについてのバイオマーカーであることを確信している。動物の組織内のSOD2のより高レベルの発現または濃度は、より高レベルのROSの指標である。例えば、酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害が、栄養物中の高レベルの脂肪に起因するより高レベルのROSによって誘発される可能性があることが周知である。出願人は、SOD2の発現レベルまたは濃度の増大もまた栄養物中の脂肪によって誘発されると確信している。動物の組織内のROSによって誘発されるSOD2のレベルまたは濃度を支配する方法をもし見出すことができれば、例えば、もし栄養物中の脂肪によって誘発されるSOD2発現のレベルまたは濃度を支配する方法を見出すことができれば、これは、この方法が、動物の組織において例えば栄養物中の脂肪によって誘発されるROSのレベルにも作用または影響することの強い指標となる。
【0013】
生化学において大きな注目を受けた別のタンパクは腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ,カケクチン(cachexinまたはcachectin))である。薬物において、TNF−アルファは全身性炎症および急性期反応に関与する重要なサイトカインである。TNF−アルファは、白血球、内皮細胞および幾つかの他の組織によって、例えば感染による損傷の過程で放出される(Wikipedia オンライン)。TNF−アルファは幾つかの疾患で役割を果たすため、TNF−アルファ治療および抗TNF−アルファ治療に関する相当量の研究が行なわれてきた。TNF−アルファは抗腫瘍活性を示すため、悪性腫瘍の特定形状に対するタンパクの有効性を評価するための研究が行なわれてきた。他の研究は関節リュウマチ、クローン病、AIDS、細菌敗血性ショック(特定のグラム陰性菌が原因)および細菌毒素性ショック(スーパー抗原が原因)等の疾患におけるTNF−アルファの作用の阻害、更に同種反応性および移植片拒絶反応の予防に焦点を合わせてきた。
【0014】
V.Verhasseltらは、Eur J.Immunol.1998 Nov;28(11):3886−90,“Oxidative streess up−regulates IL−8 and TNF−alpha synthesis by human dendritic [SP] cells”において、反応性酸素中間体、特にH22の、人間の樹状細胞、免疫応答の開始を決定付ける細胞型への作用を議論している。著者らは、H22が用量依存の様態で人間の樹状細胞によるTNF−アルファの生成を刺激したことを観察した。
【0015】
Gordon W.Moeらは、Am J Physiol Heart Circ Physiol 287:H1813−H1820,2004 表題“In vivo TNF−α inhibition ameliorates cardiac mitochondrial dysfunction,oxidative stress,and apoptosis in experimental heart failure”において論文を公表した。
【0016】
TNF−アルファは抗腫瘍活性を示すため、TNF−アルファ発現を人工的に抑えることは望ましくない場合がある。しかし、酸化的ストレスとTNF−アルファとの間の開示された関係に鑑み、出願人らは、TNF−アルファもまた酸化的ストレスについてのバイオマーカーであると確信する。出願人らは、動物の組織内のTNF−アルファのより高レベルの発現または濃度がより高レベルのROSの指標であると確信する。出願人らは、TNF−アルファのより高レベルの発現または濃度もまた栄養物中の脂肪によって誘発されることを確信する。動物の組織内のROSによって誘発されるTNF−アルファ発現のレベルまたは濃度を支配する方法をもし見出すことができれば、例えば、もし栄養物中の脂肪によって誘発されるTNF−アルファ発現のレベルまたは濃度を支配する方法を見出すことができれば、これは、この方法が、動物の組織において例えば栄養物中の脂肪によって誘発されるROSのレベルにも作用または影響することの強い指標となる。
【0017】
生化学において大きな注目を受けた第3の酵素はステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCDl)である。検討は、SCD1が重要な代謝制御点であり、そしてその発現レベルを低減させることは肥満、糖尿病および他の代謝系疾患の処置に有利であったと思われることを示唆してきた。ステアロイル−コエンザイムA(CoA)デサチュラーゼは、飽和酸,主としてパルミチン酸およびステアリン酸のモノ不飽和脂肪酸,主としてパルミトオレエートおよびオレエートの変換を触媒する中心の脂質合成酵素である(JM Ntambi,M.Miyazaki,Department of Biochemistry and Nutritional Sciences,University of Wisconsin,Madison,USA:“Recent insights into Stearoyl−CoA Desaturase−1”,Curr Opin Lipidol.2003 June;14(3):255−61)。JM NtambiおよびM. Miyazakiは、SCD1遺伝子アイソフォームに自然発生突然変異を有するマウス、更にステアロイル−CoAデサチュラーゼ遺伝子−1の目的の破壊を伴うマウスモデル(SCD1−/−)が、デノボ合成オレエートの役割、従ってSCD1発現の生理的な重要性を明らかにしたことを開示する。SCD1遺伝子の破壊を伴うマウス(SCD1−/−)がエネルギー消費を増大させ、体脂肪を低減させ、インスリン感受性を増大させたこと、および食餌性肥満に対する抵抗性を有することが見出された(“The role of Stearoyl−CoA Desaturase in Body Weight Regulation”(Agnieszka DobrzynおよびJames M.Ntambi,TCM Vol.14,No.2,2004)による)。
【0018】
SCD1転写が肝臓、肺、腎臓、脳、胃、筋肉、脂肪組織および皮膚において発現されることが見出されている。蛍光in situハイブリダイゼーションは、皮膚におけるSCD1発現が皮脂腺、より具体的には殆ど未分化のセボサイトを含む領域、皮脂腺の底部に制限されることを示した(Ntambiら,1995;Ntambiら,1988;Zhengら,1999;Zhengら,2001)。
【0019】
SCD1が重要な代謝制御点であることの相当量の証拠に鑑み、動物の組織の脂肪代謝に関する1つ以上の遺伝子の発現、好ましくは、飽和脂肪酸のモノ不飽和脂肪酸への変換を誘導する1つ以上の遺伝子の発現のレベルを支配する手法を見出すことが極めて望ましい。個体の組織、特に非脂肪組織におけるSCD1遺伝子発現のレベルを低減する手法を見出すことが特に望ましい。
【0020】
ATP合成酵素の遺伝子発現,例えばATPAF1(ATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1)遺伝子発現もまた、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害の予防または低減において重要な役割を果たす可能性がある。ATP合成酵素はミトコンドリア内でのATPの合成および加水分解の反応を触媒する酵素である。ATP(アデノシン三リン酸)は、例えば非脂肪組織内のミトコンドリア内の脂肪酸の酸化における生化学反応のためのエネルギーを与えるために用いられる。脂肪酸は主に脂肪組織内の含脂肪細胞内にトリアシルグリセロールの形で貯蔵されている。エネルギー要求に応じて、貯蔵されたトリアシルグリセロールの脂肪酸は、非脂肪組織による使用のために動員することができる。脂肪酸はミトコンドリア内で酸化される前に、細胞質内で活性化されなければならない。活性化は、脂肪アシル−CoAリガーゼ(アシル−CoA合成酵素またはチオキナーゼとも呼ばれる)によって触媒される。この活性化プロセスの正味の結果は2モル当量のATPの消費である。
【0021】
グルコースおよび脂肪酸は動物細胞のエネルギーの本源である。グルコースが乏しい場合、脂肪酸がエネルギーのために動員される。インスリン抵抗性の特徴は、血中のグルコースおよびインスリンが高濃度であるがグルコースの非脂肪組織内,例えば末梢組織内への輸送が低いこと(高レベルのインスリンにも関わらず)である。これらの条件下で、脂肪酸はミトコンドリアによってエネルギーに変換される。理論に拘束されることを望まないが、出願人は、ATPAF1,ATP合成酵素のサブユニット,のより高レベルの遺伝子発現が動物の組織,特に非脂肪組織における脂肪酸のより高い酸化(これはこのような組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を招来する可能性がある)の指標であると確信する。従って、ミトコンドリア酸化経路に係わる1つ以上の遺伝子の発現レベルを支配する手法、そして特には動物の組織,特に非脂肪組織におけるATP合成酵素遺伝子発現レベルを支配する手法を見出すことが望ましい。
【0022】
動物,特に人間の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減することが極めて重要であることに鑑み、酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するために有用な新規な方法を見出すことが特に望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
発明の要約
驚くべきことに、水不溶性セルロース誘導体,例えばエチルセルロースの投与が、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)または両者の発現レベルまたは濃度を動物の組織において支配するのに有用であることを見出した。
【0024】
驚くべきことに、水不溶性セルロース誘導体(例えばエチルセルロース)が、反応性酸素種によって誘発されるスーパーオキシドジスムターゼ(特にマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SCD2))もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)または両者の発現レベルまたは濃度を動物の組織において支配するのに有用であることも見出した。
【0025】
従って、本発明の一側面は、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減する方法であり、該方法は、動物に有効量の水不溶性セルロース誘導体を投与するステップを含む。
【0026】
本発明の別の側面は、動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患を予防または処置する方法であり、該方法は、動物に有効量の水不溶性セルロース誘導体を投与するステップを含む。
【0027】
本発明の更に別の側面は、動物の組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配(influence)する方法であり、該方法は、動物に有効量の水不溶性セルロース誘導体を投与するステップを含む。
【0028】
本発明の更に別の側面は、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCDl)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または処置する方法であり、該方法は、動物に有効量の水不溶性セルロース誘導体を投与するステップを含む。
【0029】
本発明の更に別の側面は、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための有効量の水不溶性セルロース誘導体を含む、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントである。
【0030】
本発明の更に別の側面は、動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患を予防または処置するための有効量の水不溶性セルロース誘導体を含む、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントである。
【0031】
本発明の更に別の側面は、動物の組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための有効量の水不溶性セルロース誘導体を含む、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントである。
【0032】
本発明の更に別の側面は、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または処置するための有効量の水不溶性セルロース誘導体を含む、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントである。
【0033】
本発明の更に別の側面は、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための水不溶性セルロース誘導体の使用である。
【0034】
本発明の更に別の側面は、動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患を予防または処置するための、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための水不溶性セルロース誘導体の使用である。
【0035】
本発明の更に別の側面は、動物の組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための水不溶性セルロース誘導体の使用である。
【0036】
本発明の更に別の側面は、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または処置するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、水不溶性セルロース誘導体の使用である。
【0037】
本発明の更に別の側面は、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための薬剤としての、水不溶性セルロース誘導体である。
【0038】
本発明の更に別の側面は、動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患を予防または処置するための薬剤としての、水不溶性セルロース誘導体である。
【0039】
本発明の更に別の側面は、動物の組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤としての、水不溶性セルロース誘導体である。
【0040】
本発明の更に別の側面は、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または低減するための薬剤としての、水不溶性セルロース誘導体である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
酸化的ストレスは、一般的に、組織内の酸化剤の過剰な生成と定義されるため、本明細書で用いる用語「酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減する方法」は、組織内の酸化剤の過剰な生成,特に反応性酸素種(ROS)の過剰な生成を予防または低減する方法を包含する。
【0042】
本明細書で使用する用語「酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減する方法」は、酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害の時間または重症度における進行を遅らせるか、または進行しているかもしくは進行した酸化的ストレスもしくは酸化的細胞傷害の重症度を低減する任意の処置を包含する。
【0043】
本明細書で用いる用語「水不溶性セルロース誘導体の投与によって遺伝子の発現レベルを支配する」は、体内組織(例えば血液)が、個体による水不溶性セルロース誘導体の摂取後に、非有効物質(例えば非修飾セルロースそのもの)の摂取後の前記の遺伝子の発現と比べて、前記の遺伝子の異なる(一般的にはより低い)発現を有することを意味する。用語「遺伝子の発現レベルを支配する」は遺伝子発現の直接の制御に限定するものではなく、遺伝子発現における間接的な支配(例えば、異なる(一般的にはより低い)遺伝子発現を招来する体内組織内の状態または代謝産物の支配によるもの)も包含する。
【0044】
より具体的には、本明細書で用いる用語「ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCDl)遺伝子発現またはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現のレベルを支配する」は、体内組織(例えば血液)が、個体による水不溶性セルロース誘導体の摂取後に、非修飾セルロースそのものの摂取後のSCD1遺伝子発現またはATPAF1遺伝子発現と比べて異なる(好ましくはより低い)SCD1遺伝子発現またはATPAF1遺伝子発現を有することを意味する。
【0045】
本明細書で用いる用語「スーパーオキシドジスムターゼ,特にマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)の発現レベルもしくは濃度、または腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)の発現レベルもしくは濃度を支配する」は、体内組織(例えば血液)が、個体による水不溶性セルロース誘導体の摂取後に、非有効物質(例えば非修飾セルロースそのもの)の摂取後のスーパーオキシドジスムターゼ(特にSOD2)もしくはTNF−アルファの発現レベルもしくは濃度と比べて、スーパーオキシドジスムターゼ(特にSOD2)またはTNF−アルファの異なる(好ましくはより低い)発現レベルまたは濃度を有することを意味する。
【0046】
本明細書で用いる用語「SCD1遺伝子発現もしくはATPAF1遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または処置する」は、SCD1またはATPAF1の遺伝子発現に関与する動物の器官内の状態が予防または処置されること、特に、予防または処置がない場合よりも高いSCD1またはATPAF1の遺伝子発現を招来する動物の器官内の状態の予防または処置を意味する。SCD1および/またはATPAF1の遺伝子発現は、動物の器官の関係疾患を招来する可能性がある状態についてのバイオマーカーであると考えられる。用語「動物」は、人間を包含する任意の動物を意味する。好ましい動物は哺乳動物である。用語「哺乳動物」は、哺乳動物に分類される任意の動物を意味し、人間、家畜および農場動物(例えば牛)、人間以外の霊長類、動物園の動物、競技動物(例えば馬)、またはペット動物(例えば犬および猫)が挙げられる。
【0047】
用語「組織(tissue)」は、複数の同様な細胞の組織体(organization)であって該細胞の間に種々の量および種類の非生物の細胞間質を有するもの,例えば上皮組織、結合組織(例えば、血液のような流体結合組織)、筋肉組織または神経組織を意味する。
【0048】
用語「器官」は、幾つかの異なる種類の組織の組織体であって該組織が共に特別な機能を果たすことができるように配列されているものを意味する。
【0049】
本発明において有用なセルロース誘導体は水不溶性である。用語「セルロース誘導体」は非修飾セルロースそのもの(これも水不溶性である傾向がある)は包含しない。出願人が行なった実験は、驚くべきことに、水不溶性セルロース誘導体が、動物の組織におけるステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現および/またはATPF1遺伝子発現において、非修飾セルロースと比べて顕著に異なる効果を有することを示した。出願人が行なった実験はまた、水不溶性セルロース誘導体が、動物の組織におけるマンガンスーパーオキシドジスムターゼおよび/または腫瘍壊死因子アルファの発現レベルまたは濃度において、非修飾セルロースと比べて異なる効果を有することを示した。
【0050】
本明細書で用いる用語「水不溶性」は、セルロース誘導体の水中での溶解性が、100グラムの蒸留水中、25℃および1気圧で2グラム未満、好ましくは1グラム未満であることを意味する。
【0051】
本発明において用いるのに好ましいセルロース誘導体は、水不溶性セルロースエーテル、特にエチルセルロース、プロピルセルロースまたはブチルセルロースである。他の有用な水不溶性セルロース誘導体は、化学的(好ましくは疎水的)に修飾されて水不溶性が付与されたセルロース誘導体である。化学的な修飾は、疎水性長鎖の分岐または非分岐のアルキル基、アリールアルキル基またはアルキルアリール基で実現できる。「長鎖」は、典型的には、少なくとも5個、より典型的には少なくとも10個、特に少なくとも12個の炭素原子を意味する。他の型の水不溶性セルロースは、架橋セルロース(種々の架橋剤を用いる場合)である。化学的に修飾された(例えば疎水的に修飾された)水不溶性セルロース誘導体は当該分野で公知である。これらは、100グラムの蒸留水中、25℃および1気圧で2グラム未満、好ましくは1グラム未満の水中の溶解性を有することを条件に有用である。最も好ましいセルロース誘導体はエチルセルロースである。エチルセルロースは好ましくは40〜55パーセント、より好ましくは43〜53パーセント、最も好ましくは44〜51パーセントのエトキシル置換を有する。エトキシル置換パーセントは、置換生成物の質量基準であり、そして、ASTM D4794−94(2003)に記載されるZeiselガスクロマトグラフィー法に従って評価する。エチルセルロースの分子量は、25℃にて80体積パーセントのトルエンと20体積パーセントのエタノールとの混合物中で測定される、エチルセルロースの5質量パーセント溶液の粘度で表される。エチルセルロース濃度は、トルエン、エタノールおよびエチルセルロースの総質量基準である。粘度は、ASTM D914−00にて概説され、そしてASTM D446−04(これはASTM D914−00において引用されている)にて更に詳述されるようにウベローデ管を用いて測定する。エチルセルロースは、一般的に、25℃で80体積パーセントのトルエンと20体積パーセントのエタノールとの混合物中で5質量パーセント溶液として測定される粘度が400mPa・s以下、好ましくは300mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下である。好ましいエチルセルロースは、プレミアムグレードETHOCELエチルセルロース(The Dow Chemical Company,Midland,Michiganから市販で入手可能)である。2種以上の水不溶性セルロース誘導体の組合せもまた有用である。
【0052】
好ましくは、水不溶性セルロース誘導体は平均粒子サイズが0.1ミリメートル未満、より好ましくは0.05ミリメートル未満、最も好ましくは0.02ミリメートル未満である。セルロース誘導体が脂肪または油を吸収するように、好ましくは個体への投与前に水不溶性セルロース誘導体を食用の脂肪または油に暴露する。有利には、水不溶性セルロース誘導体を過剰の脂肪または油に約40〜60℃で暴露する。
【0053】
出願人は、驚くべきことに、水不溶性セルロース誘導体の投与が、動物の組織の脂肪代謝に関する1つ以上の遺伝子の発現レベルを支配するために、特に、飽和脂肪酸をモノ不飽和脂肪酸に変換するための1つ以上の遺伝子の発現レベルを支配するために、および/またはミトコンドリア酸化経路に関する1つ以上の遺伝子の発現レベルを支配するために、そして特に、組織,特に非脂肪組織(例えば肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉)におけるステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現および/またはATPF1遺伝子発現のレベルを支配(特に低減)するために、有用であることを見出した。出願人は、水不溶性セルロース誘導体が、飽和脂肪の不飽和化および/またはミトコンドリア酸化経路に関与する遺伝子の発現レベルを支配することを見出した。理論に拘束されることを望まないが、出願人は、水不溶性セルロース誘導体の疎水性残基が水不溶性セルロース誘導体による脂肪代謝の制御および正常化に寄与することを確信する。
【0054】
SCD1は飽和脂肪酸(特にパルミチン酸およびステアリン酸)のモノ不飽和脂肪酸(特にパルミトオレエートおよびオレエート)への変換を触媒するため、出願人は、組織内(特に非脂肪組織内)のSCD1発現がより高いこと(本明細書においてSCD1遺伝子の過剰発現と規定する)は、これらの組織内の飽和脂肪酸がより高濃度であることの指標であると結論付けた。本明細書で用いる用語「遺伝子の過剰発現」は、健常な動物における遺伝子の通常の発現レベルよりも高い遺伝子の発現レベルを意味する。例えば、肥満は、典型的にはSCD1遺伝子の過剰発現に付随して、すなわちSCD1遺伝子の発現レベルが通常体重の動物よりも高いことによって起こる。
【0055】
更に、出願人は、非脂肪組織におけるより高いSCD1遺伝子発現が細胞内の酸化的ストレスまたは更にこれらの組織内の酸化的細胞傷害の指標であると結論付けた。脂肪組織内の含脂肪細胞は過剰の脂肪酸をトリグリセリドの形で脂肪滴内に貯蔵する特異な容量を有するが、非脂肪組織(例えば末梢組織)では脂質の貯蔵のための容量が制限されている。Laura L.Listenbergerら,PNAS,March 18,2003,vol.100,no.6,3077−3082,“Triglyceride accumulation protects against fatty acid−induced lipo toxicity”は、過剰の脂肪の非脂肪組織内の蓄積は、細胞機能不全および/または細胞死(脂肪毒性として知られる現象)を招来することを示唆する。これらの著者は、長鎖脂肪酸の蓄積による脂肪毒性が飽和脂肪酸に特異的であること、および飽和脂肪酸に対するこの選択性が不飽和脂肪酸ではなく飽和脂肪酸に応答する分子のシグナル伝達(例えば反応性酸素種生成(ROS))に寄与したことを示唆する。
【0056】
出願人は、a)微結晶セルロースを含む高脂肪餌を対照動物に、そしてb)微結晶セルロースを水不溶性セルロース誘導体で置き換えた他は同じ高脂肪餌を他の動物に、投与した後の複数組の動物の組織内のSCD1遺伝子発現を比較した。出願人は、餌に水不溶性セルロース誘導体を補った場合に、対照動物と同じ脂肪およびカロリーの餌を与えられた動物が、顕著により低い組織内(特に非脂肪組織内)のSCD1遺伝子発現を示すことを見出した。SCD1発現がより低いことは、水不溶性セルロース誘導体を投与することが組織内(特に非脂肪組織内)の酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害の予防または低減のために有用であることの指標である。理論に拘束されることを望まないが、出願人は、SCD1発現がより低いことから、動物は対照動物と同じ量の脂肪を消化するが、飽和脂肪の濃度はSCD1発現を増大させるのに十分には高くないことを結論付ける。出願人は、動物(その餌には水不溶性セルロース誘導体が補われている)のこのような組織におけるより低いSCD1発現は、飽和脂肪を非不飽和脂肪およびトリグリセリド貯蔵物に変換するのに十分であると結論付ける。動物(その餌には水不溶性セルロース誘導体が補われているが対照動物と同じ量の脂肪を消化する)の非脂肪組織において観察されるより低いSCD1発現は、水不溶性セルロース誘導体が非脂肪組織内の過剰の飽和脂肪の蓄積を予防または低減するためこのような組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害(これは最終的には細胞機能不全および/または細胞死を招来する可能性がある)を予防または低減するのに有用であると出願人が結論付けることを導く。
【0057】
出願人は、驚くべきことに、水不溶性セルロース誘導体の投与が、動物の組織内(特に非脂肪組織内)のATPF1遺伝子発現のレベルを支配(特に低減)することにも有用であることを見出した。
【0058】
上記でより詳細に記載した知見に基づき、出願人は、SCD1発現および/またはATPF1遺伝子発現のレベルを支配することが動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害の予防または低減、およびこれにより動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患の予防または処置に寄与すると結論付ける。本発明は、酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害およびこれに関連する、栄養物中の脂肪によって(特に高脂肪量のバランスを欠いた栄養物によって)誘発される疾患の予防または低減に特に有用である。
【0059】
以上で議論した知見は、水不溶性セルロース誘導体の投与が、動物の組織内のスーパーオキシドジスムターゼ(SCD)(特にマンガン含有SOD(MnSODもしくはSOD2))および/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)の遺伝子発現のレベルの支配にも有用であるという出願人の知見によって確認される。出願人は、a)微結晶セルロースを含む高脂肪餌を対照動物に、そしてb)微結晶セルロースを水不溶性セルロース誘導体で置き換えた他は同じ高脂肪餌を他の動物に、投与した後の複数組の動物の組織内のSOD2およびTNF−アルファ遺伝子発現を比較した。出願人は、餌に水不溶性セルロース誘導体を補った場合に、対照動物と同じ脂肪およびカロリーの餌を与えられた動物が、顕著により低い組織内(特に非脂肪組織内)のSCD2およびTNF−アルファの遺伝子発現を示すことを見出した。理論に拘束されることを望まないが、出願人は、SCD2およびTNF−アルファの遺伝子発現がより低いことは、栄養物中の脂肪によって組織内で誘導される反応性酸素種(ROS)がより低いことの指標であり、従って餌に水不溶性セルロース誘導体が補われた場合にはROSに応答して誘導されるSOD2およびTNF−アルファがより少ないと確信する。動物(その餌には水不溶性セルロース誘導体が補われているが対照動物と同じ量の脂肪を消化する)の非脂肪組織において観察されるより低いSCD2およびTNF−アルファの遺伝子発現は、水不溶性セルロース誘導体がこのような組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害(これは最終的には細胞機能不全および/または細胞死を招来する可能性がある)を予防または低減するのに有用であることも出願人が結論付けることを導く。
【0060】
本発明は、酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害およびこれに関連する、栄養物中の脂肪によって(特に高脂肪量のバランスを欠いた栄養物によって)誘発される疾患の予防または低減のために特に有用である。
【0061】
水不溶性セルロース誘導体は、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントにおいてまたはこれらとして投与または摂取できる。薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントは固体または液体であることができる。水不溶性セルロース誘導体を投与する所望の時間は、摂取される水不溶性セルロース誘導体の量、動物の一般的な健康状態、動物の活性レベルおよび関連因子に応じて変えることができる。高脂肪量の栄養が摂取される限り水不溶性セルロース誘導体を投与または摂取することが賢明である。一般的には少なくとも1〜12週、好ましくは3〜8週の投与が推奨される。
【0062】
本明細書で開示する投与の継続期間および1日当たりの用量は、一般的な範囲であって、種々の要素(例えば具体的なセルロース誘導体、個体の体重、年齢および健康状態等)に応じて変動させてもよいことを理解すべきである。水不溶性セルロース誘導体を摂取する際には医師または栄養学の専門家の処方および助言に従うことが賢明である。
【0063】
本発明に従い、水不溶性セルロース誘導体は、好ましくは食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントであって0.5〜20質量パーセント、より好ましくは2〜15質量パーセント、最も好ましくは4〜12質量パーセントの1種以上の水不溶性セルロース誘導体を含むものを製造するために用いる。与えられる質量パーセントは水不溶性セルロース誘導体の総量に関する。投与量は、乾燥質量基準で、個体の1日当たりの食事の総質量の好ましくは1〜10パーセントの範囲である。好ましくは、水不溶性セルロース誘導体は、単一の用量または量ではなく1日を通じて十分な量で投与または摂取される。水不溶性セルロース誘導体を水と組合せて投与または摂取する場合、水不溶性セルロース誘導体は、一般的には「口の感触」の適応の問題(これは水溶性セルロース誘導体によって、これらが水とともにスライム状の粘稠溶液を形成する傾向を有するために生じる場合がある)を被らない。
【0064】
水不溶性セルロース誘導体は、好ましくは食品と組合せ、または食材として投与されるが、これに代えて、これらを水性懸濁液としてまたは粉末形状でまたは医薬組成物もしくは栄養組成物として投与できる。水不溶性セルロース誘導体を含む医薬組成物または栄養組成物は、許容可能な担体とともに医薬または栄養物の単位用量形状で投与できる。医薬上許容可能な担体としては、錠剤化賦形剤、ゼラチンカプセル、または担体,例えばポリエチレングリコールもしくは天然ゲルが挙げられる。医薬または栄養物の単位用量形状としては、錠剤、カプセル、ゼラチンカプセル、予計量粉末および予計量溶液が挙げられる。従って、水不溶性セルロース誘導体は、錠剤、顆粒、カプセルおよび懸濁液として処方できる。
【0065】
水不溶性セルロース誘導体を水性懸濁液としてもしくは粉末形状で、薬剤、医薬組成物もしくは栄養組成物として、または他の食品含有成分と組合せて投与するのかに関わらず、投与される水不溶性セルロース誘導体の量は、一般的に、哺乳動物の体重1ポンド当たり、1日当たり水不溶性セルロース誘導体10〜300ミリグラムの範囲である。約2g〜約30g、好ましくは約3g〜約15gの水不溶性セルロース誘導体が毎日大型哺乳動物(人間等)によって摂取される。
【0066】
投与または摂取の方法は変えることができるが、水不溶性セルロース誘導体は、好ましくは人間によって彼または彼女の毎日の食事の食品含有成分として摂取される。水不溶性セルロース誘導体は、液体ビヒクル,例えば水、ミルク、植物油、ジュース等、または摂取可能な固体もしくは半固体の食材,例えば「ベジー」バーガー、スプレッドもしくはパン製品と組合せることができる。
【0067】
多くの食材が一般的に水不溶性セルロース誘導体と親和性である。例えば、水不溶性セルロース誘導体を食品中(例えばミルクシェーク、ミルクシェークミックス、朝食ドリンク、ジュース、フレーバー飲料、フレーバー飲料ミックス、ヨーグルト、プリン、アイスクリーム、アイスミルク、フロスティング、フローズンヨーグルト、チーズケーキフィリング、キャンディーバー、例えば「ヘルスバー」,例えばグラノールバーおよびフルーツバー、ガム、ハードキャンディ、マヨネーズ、ペストリーフィリング,例えばフルーツフィリングもしくはクリームフィリング、シリアル、パン、詰め物、ドレッシングおよびインスタントポテトミックス)に混合できる。有効量の水不溶性セルロース誘導体は、サラダドレッシング、フロスティング、マーガリン、スープ、ソース、グレイビー、マヨネーズ、マスタードおよび他のスプレッドにおける人工脂肪または脂肪サプリメントとしても使用できる。従って、本明細書で用いる用語としての「食品含有成分」は、上記食材のためのレシピにおいて一般的に採用される含有成分を包含し、例えば、粉、オートミール、フルーツ、ミルク、卵、スターチ、大豆タンパク、シュガー、シュガーシロップ、植物油、バターまたは乳化剤,例えばレシチンが挙げられる。食材に魅力を付加するために適切と考えられる着色剤および香料もまた添加できる。
【0068】
水不溶性セルロース誘導体は家畜および農場動物(牛等)、人間以外の霊長類、動物園の動物、競技動物(馬等)、またはペット動物(犬および猫等)に、公知の様式で、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントにおいてまたはこれらとしても投与できる。投与の好ましい手法は、特に猫または犬の、動物の組織における酸化的ストレスもしくは酸化的細胞傷害を予防または低減するため、ならびに/または動物の器官(例えばミトコンドリア)における酸化的ストレスもしくは酸化的細胞傷害に起因するかもしくは促進される該器官の疾患、および/もしくは代謝系疾患(例えばインスリン抵抗性、糖尿病もしくは高コレステロール血症および/もしくは糖尿病に関連する高血圧を予防または処置するための、水不溶性セルロース誘導体のペット餌中または他の動物餌中への導入である。
【0069】
本発明は、酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害(特に、栄養物中の脂肪によって誘発される酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害)を予防または低減するためにも有用であるため、本発明は、前記の器官の酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される疾患を予防または処置するためにも有用である。このような疾患は多数である。例えば、本発明は、肝臓疾患,例えば肝炎;悪性腫瘍;中枢神経系変性疾患;ミトコンドリア病および/または代謝系疾患,例えばインスリン抵抗性、II型糖尿病、もしくは高コレステロール血症および/または糖尿病に関係する高血圧;アテローム性動脈硬化;虚血傷害,例えば循環器虚血傷害;炎症性疾患および自己免疫疾患,例えば炎症性腸疾患、関節リュウマチ、もしくはクローン病;循環器疾患,例えば環状動脈性心疾患もしくは虚血後不整脈;神経系疾患,例えばアルツハイマー発作、牛海綿状脳症(BSE;狂牛病);クロイツフェルトヤコブ病(CJD;BSEのヒト変異型);筋損傷;日光誘導性皮膚ダメージ、エイジングの物理的発現を予防または処置するために、またはAIDSを処置するために有用である。
【0070】
本発明は、発現(特に動物の組織におけるステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1の過剰発現)に当業者によって関連付けられる疾患,例えばミトコンドリア病および/または代謝系疾患,例えばインスリン抵抗性、II型糖尿病もしくは高コレステロール血症および/もしくは糖尿病に関連する高血圧を予防または処置するために特に有用である。
【0071】
水不溶性セルロース誘導体は、任意に、水溶性または水不溶性の天然由来ポリマーまたはその誘導体,例えばアラビアガム、キサンタンガムまたはその誘導体、カラヤゴム、トラガカントゴム、ガティゴム、グアーガムまたはその誘導体、滲出ゴム、海藻ゴム、種子ゴム、微生物ゴム、カラギーナン、デキストラン、ゼラチン、アルギネート、ペクチン、スターチまたはその誘導体、キトサンまたは他のポリサッカライド、好ましくはベータ−グルカン、ガラクトマンナン、ヘミセルロース、オオバコ、グアー、キサンタン、微結晶セルロース、非晶セルロースまたはキトサンと組合せて用いる。
【0072】
本発明の幾つかの態様において、水不溶性セルロース誘導体を水溶性セルロース誘導体と組合せて使用または投与することが特に有益である。1種以上の水不溶性セルロース誘導体と1種以上の水溶性セルロース誘導体との組合せの有用な量およびこのような組合せの薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントにおける投与、摂取または内包のための有用な手法は、一般的に水不溶性セルロース誘導体単独について上記したのと同じである。
【0073】
水溶性セルロース誘導体は、水中で、100グラムの蒸留水に25℃および1気圧で少なくとも2グラム、好ましくは少なくとも3グラム、より好ましくは少なくとも5グラムの溶解性を有する。好ましい水溶性セルロース誘導体は、水溶性のセルロースエステルおよびセルロースエーテルである。好ましいセルロースエーテルは水溶性カルボキシC1−C3アルキルセルロース,例えばカルボキシメチルセルロース;水溶性カルボキシC1−C3アルキルヒドロキシC1−C3アルキルセルロース,例えばカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース;、水溶性C1−C3アルキルセルロース,例えばメチルセルロース;水溶性C1−C3アルキルヒドロキシC1−C3アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルヒドロキシエチルセルロース;水溶性ヒドロキシC1−C3アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;水溶性混合ヒドロキシC1−C3アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、水溶性混合C1−C3アルキルセルロース,例えばメチルエチルセルロース;または水溶性アルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースであり、アルコキシ基は直鎖または分岐鎖で2〜8個の炭素原子を有する。より好ましいセルロースエーテルは、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースであり、これらは当業者により水溶性セルロースエーテルに分類される。最も好ましい水溶性セルロースエーテルは、メチルモル置換DSメトキシルが0.5〜3.0、好ましくは1〜2.5のメチルセルロース、および、DSメトキシルが0.9〜2.2、好ましくは1.1〜2.0、およびMSヒドロキシプロポキシルが0.02〜2.0、好ましくは0.1〜1.2のヒドロキシプロピルメチルセルロースである。メチルセルロースのメトキシル量は、ASTM法D1347−72(再承認1995)に従って評価できる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシルおよびヒドロキシプロポキシルの量は、ASTM法D−2363−79(再承認1989)によって評価できる。メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばK100M,K4M,KlM,F220M,F4MおよびJ4Mのヒドロキシプロピルメチルセルロースは、The Dow Chemical Companyから市販で入手可能である)。水溶性セルロース誘導体は、一般的に、2質量パーセント水溶液として摂氏20度で測定される粘度5cps〜2,000,000cps(=mPa・s)、好ましくは50cps〜200,000cps、より好ましくは75cps〜100,000cps、特に1,000cps〜50,000cpsを有する。粘度は回転式粘度計で測定できる。
【0074】
本発明を以下の例によって更に説明するが、これは本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。特記がない限り、全ての部およびパーセントは質量基準である。
【0075】
例1
開始時体重70〜90グラムのオスのゴールデンSyrianハムスター(Sasco strain,Charles River,Wilmington,MA)で、以下に示す2種の餌の各々で動物実験を行なった。動物実験は、Animal Care and Use Committee,Western Regional Research Center,USDA,Albany,CAによって承認された。
【0076】
95%レベルでの有意性を例におけるデータとして以下に列挙する(p<0.05)。データは生物学的に生物系で得た結果であるため動物の同じ群の中のばらつきは予測すべきものである。
【0077】
エチルセルロースをハムスターに投与することの効果を試験した。例1で用いたエチルセルロースは、The Dow Chemical Companyから商標ETHOCEL Standard Premium 10 FPで市販にて入手可能である。FPは「微細粒子(fine particles)」グレードのエチルセルロースを表す。これはエトキシル量48.0〜49.5パーセント、および5質量パーセント溶液として25℃にて80体積パーセントのトルエンと20体積パーセントのエタノールとの混合物中でブルックフィールド粘度計を用いて測定される粘度約10mPa・sを有する。
【0078】
オスのSyrianゴールデンハムスターを2つの群に分けた。一方の群を「処置群」とよび、高脂肪処置餌および水を不断給餌し、一方、他方の群を「対照群」とよび、高脂肪対照餌および水を不断給餌した。両群で各10匹のハムスターをカウントした。これらの群に8連続週の期間給餌した。
【0079】
水不溶性セルロースエーテルは5質量パーセントのレベルで処置餌中に存在した。この処置餌の場合、水不溶性セルロースエーテルを、餌の粉末化された画分と混合する前にまず餌の液体化された脂肪画分中に懸濁させた。この処置餌について、1000gの完成した高脂肪処置餌はいずれも、150gのバター脂肪、50gのコーン油、200gのカゼイン、499gのコーンスターチ、3gのDLメチオニン、3gの酒石酸水素コリン、35gのミネラル混合物、10gのビタミン混合物、および50gのETHOCEL Standard Premium 10 FP「微細」グレードエチルセルロースを含んでいた。
【0080】
対照餌は、水不溶性セルロース誘導体を同じ量の微結晶セルロース(MCC)(対照餌を調製する間に餌の粉末化された成分中に混合した)で置き換えたことのみを除いて処置餌と全く同じ組成を有した。
【0081】
ハムスターに餌を8連続週給餌した後、ランダムな基準で処置群の4匹以上の動物および対照群の4匹以上の動物から肝臓を取出した。処置群の犠牲にしたハムスターを以下の表5にHF−EC−1,HF−EC−2,HF−EC−3およびHF−EC−4として規定する。対照群の犠牲にしたハムスターを以下の表5にHF−対照−1およびHF−対照−2,HF−対照−3およびHF−対照−4として規定する。
【0082】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)およびマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)の遺伝子発現を、mRNA抽出および分析によって評価した。全mRNA(伝令リボ核酸)を、BartleyおよびIshida(2002)に従って抽出、精製および逆転写した。Bartley,G.E.およびIshida,B.K.(2002)Digital Fruit Ripening:Data Mining in the TIGR Tomato Gene Index.Plant MoI.Biol.Rep.20:115−130の教示は参照により本明細書に包含される。
【0083】
上記の全mRNAからの逆転写によって得たcDNAを10倍に希釈して、製造者のプロトコルに従って、以下のSYBR Green Supermix (BIO−RAD)で更に記載されるように、長さ20〜24塩基の遺伝子に対する特定プライマーとのリアルタイムPCR反応に1マイクロリットル分割単位を用いた。以下の変更を行なった:1.反応は25マイクロリットル全体積で3重の反応で行ない、2.MX3000P(Stratagene)装置を用いてPCRを行なった。PCR条件は5分、95℃、続いて40サイクルの94℃×15秒、55〜60℃×1分および72℃×30秒のインキュベーションである。以下のプライマーを用いた:
【0084】
SCD1:GCCACCTGGCTGGTGAACAGTG(フォワード),
GGTGGTAGTTGTGGAAGCCCTCG(リバース);
SOD2:TAAGGAGCAAGGTCGCTTACAGA(フォワード),
CTCCCAGTTGATTACATTCCAAAT(リバース);
TNF−アルファ:GCCGCATTGCTGTGTCCTACG(フォワード),
GGCACTGAGTCGGTCACCTTTCT(リバース);
アクチン:ACGTCGACATCCGCAAAGACCTC(フォワード),
TGATCTCCTTCTGCATCCGGTCA(リバース)
【0085】
プライマー効率は、cDNAの希釈カーブを用いて評価した。相対定量は、Livak,KJ.and Schmittgen,T.D.(2001)にあるようにアクチン転写への規格化によって行なった。Livak, KJ.and Schmittgen,T.D.(2001),Analysis of relative gene expression data using real−time quantitative PCR and the 2-ΔΔCTT Method.Methods.25:402−408の教示は、参照により本明細書に組み入れる。DNAコンタミネーションの量を評価するための陰性対照は、同一濃度の全mRNAで逆転写なしで行なった。陰性対照は、プライマー組の幾つかについて行なった。各々の場合において、非逆転写対照シグナルは逆転写したサンプルよりも5以上のサイクル後で実現された。
【0086】
ハムスターHF−EC−1のSCD1、TNF−アルファおよびSOD2の遺伝子発現を、ハムスターHF−対照−1およびHF−対照−2のSCD1、TNF−アルファおよびSOD2の遺伝子発現と比較した。遺伝子発現の比 HF−EC−1/HF−対照−1およびHF−EC−1/HF−対照−2を以下の表1に列挙する。他の組のハムスターのSCD1、TNF−アルファおよびSOD2の遺伝子発現についての比を以下の表1に列挙するように評価した。
【0087】
比較の目的で、水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のSCD1、TNF−アルファおよびSOD2の遺伝子発現における効果も検討した。高脂肪餌中でエチルセルロースに代えてHPMCを用いた(HF−HPMC)ことを除いて上記と同じ実験を行なった。対照餌において、HPMCを微結晶セルロースに置き換えた。HPMCのメトキシル量は19〜24パーセント、ヒドロキシプロポキシル量は7〜12パーセント、2質量%水溶液として20℃で測定した粘度は約100,000mPa・sであり、そしてThe Dow Chemical Companyから商標METHOCEL K100Mヒプロメロースで市販で入手可能である。
【0088】
結果を以下の表1に列挙する。各々の動物の対および各遺伝子についての表1中の値は、3重の測定の平均である。ミーン値およびミーン値の標準誤差(SEM)を示す。表1中に表す数値は、対照に対する相対値であることが理解される。すなわち、数値が1未満の場合には、特定遺伝子の発現が処置群のハムスターにおいて対照群のハムスターよりも低く、逆もあてはまる。
【0089】
【表1】

【0090】
* 本発明の範囲内ではないが先行技術ではない。
* “Standard Practice for Dealing With Outlying Observations”ASTM E178−80に基づいたミーン値およびSEMの計算のために見積もった。Grubbの分析[Grubbs,Frank(February 1969),Procedures for Detecting Outlying Observations in Samples,Technometrics,Vol.11,No.1,pp.1−21およびhttp://www.itl.nist.gov/div898/handbook/eda/section3/eda35h.htm]を用いて統計的異常値分析を行なった。
【0091】
データは、動物の同じ群内で幾らかばらつきを示すが、結果は生物学的に生物系で得るものであるためこれは予測すべきものである。それでも、データは明確な傾向を示す。エチルセルロース等の水不溶性セルロース誘導体の投与は、ステアロイルCo-Aデサチュラーゼ1(SCD1)に最も著しい効果を有する。同一の高脂肪餌を給餌されたが、追加でエチルセルロースを(微結晶セルロースに代えて)給餌されたハムスターは、顕著により低いSCD1遺伝子発現を有していた。TNF−アルファおよびSOD2の遺伝子発現もまた、エチルセルロースを含む餌を給餌された動物において、水不溶性セルロース誘導体を含まない餌を給餌された対照動物よりも低かった。低減されたSCD1、TNF−アルファおよびSOD2の遺伝子発現は、水不溶性セルロース誘導体(例えばエチルセルロース)の、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害の予防または低減の有用性を明確に示すものである。エチルセルロースの効果は、比較の目的で評価したHPMCの効果と少なくとも同程度に良好で、さらにこれよりも良好である場合もある。
【0092】
例2
評価のために動物について異なるグループ分けをし、ATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現を評価したことを除いて例1の手順を繰り返した。ATPAF1用の以下の特定のプライマーを用いた:ACTCCTGGCCAGACTCTAATACA(フォワード);CACAGGCAGAGTTCAGGGAGTAG(リバース)。
【0093】
結果を以下の表2に列挙する。ミーン値およびミーン値の標準誤差(SEM)の値を示す。
【0094】
【表2】

【0095】
HF−EC餌およびHF−HPMC餌を給餌された動物におけるよりも高レベルの、HF−対照餌を給餌された動物における合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)は、HF餌を給餌された動物におけるエネルギー生成のためのより高レベルの脂肪酸化の証拠である。
【0096】
例3
開始時体重50〜60グラムのオスのゴールデンSyrianハムスター(LVG strain,Charles River,Wilmington,MA)で、以下に述べる各々の餌において動物実験を行なった。動物実験は、Animal Care and Use Committee,Western Regional Research Center,USDA,Albany,CAによって承認された。エチルセルロースをハムスターに投与することによる効果を例1において上記したように試験した。例3において用いたエチルセルロースはETHOCEL Standard Premium 10 「微細」グレードのエチルセルロースであった。これはThe Dow Chemical Companyから市販で入手可能であり、そしてエトキシル量48.0〜49.5パーセント、および5質量パーセント溶液として25℃にて80体積パーセントのトルエンと20体積パーセントのエタノールとの混合物中でブルックフィールド粘度計を用いて測定される粘度約10mPa・sを有する。
【0097】
オスのSyrianゴールデンハムスターを3つの群に分けた。2つの群は「処置群」とよび、「乾燥EC」および「脂肪EC」を含む餌を給餌した。1つの群は「対照群」とよび、微結晶セルロース(MCC)を含む餌を給餌した。各群は各々約10匹のハムスターからなる。これらの群に3連続週の期間給餌した。
【0098】
処置群1:乾燥EC
この処置群にはEC処置餌を給餌した。1000gの乾燥EC処置餌は、80gのバター脂肪、100gのコーン油、20gの魚油および1gのコレステロール、200gのカゼイン、498gのコーンスターチ、3gのDLメチオニン、3gの酒石酸水素コリン、35gのミネラル混合物、10gのビタミン混合物、および50gのETHOCEL Standard Premium 10「微細」グレードエチルセルロースを含んでいた。
【0099】
処置群2:脂肪EC
処置群2用の脂肪EC餌は、餌を調製する間に50gのETHOCEL Standard Premium 10エチルセルロースを餌脂肪部分中に50℃で分散させたことを除いて処置群1用の餌と同じであった。
【0100】
対照群:MCC
対照餌は、エチルセルロースを同量の微結晶セルロース(MCC)(対照餌を調製する間に餌の粉末化成分中に混合した)で置き換えたことのみを除いて処置餌と全く同じ組成であった。
【0101】
餌を3連続週ハムスターに給餌した後、処置群および対照群の両者から、血漿を得て、そして肝臓を取出した。
【0102】
定量RT−PCR分析 SCD−1およびSOD2 ハムスター肝臓中
マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)およびステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD−1)についての遺伝子発現を、例1で記載するmRNA抽出および分析によって評価した。
【0103】
「乾燥EC」群および「脂肪EC」群のハムスターのSCD1およびSOD2の遺伝子発現を、対照MCC群のハムスターのSCD1およびSOD2の遺伝子発現と比較した。遺伝子発現の比を以下の表3に列挙する。ミーン値およびミーン値の標準誤差(SEM)の値を示す。表3中に表す数値は、対照に対する相対値であることが理解される。すなわち、数値が1未満の場合には、特定遺伝子の発現が処置群のハムスターにおいて対照群のハムスターよりも低く、逆もあてはまる。
【0104】
【表3】

【0105】
データは、動物の同じ群内で幾らかばらつきを示すが、結果は生物学的に生物系で得るものであるためこれは予測すべきものである。それでも、データは明確な傾向を示す。エチルセルロース等の水不溶性セルロース誘導体の投与は、ステアロイルCo-Aデサチュラーゼ1(SCD1)に最も著しい効果を有する。餌は3週のみであったが、微結晶セルロースに代えてエチルセルロース餌を給餌されたハムスターは顕著により低いSCD1遺伝子発現を有していた。興味深いことに、SOD2遺伝子発現は、対照動物と比べて、エチルセルロースを含む餌を3週間給餌された動物においてより高かった。これは例1において見られたSOD2遺伝子発現の結果と異なる。他の動物実験では、この検討における3週間に比べ餌を8週間投与した。とはいうものの、SCD1遺伝子発現の低減は、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための、エチルセルロース等の水不溶性セルロース誘導体の有用性を明確に示すものである。
【0106】
ハムスター血漿中のSOD活性の分析
ハムスターEDTA血漿サンプルを、テトラゾリウム塩と、キサンチンオキシダーゼおよびヒポキサンチンによって生成されるスーパーオキシドラジカルとの反応に基づきSOD活性についてアッセイした。血漿中SOD活性の主な部分は細胞外SOD(SOD3)が占めるという事実から、全SOD活性を全3型のSODのために測定した。
【0107】
測定前に、Superoxide Dismutaseアッセイキット(Cayman Chemical(Ann Arbor,MI))で与えられるサンプルバッファーで血漿サンプルを10倍に希釈した。希釈係数を予め決定して酵素活性が標準カーブ範囲内になるようにした。SOD活性分析は、キットで与えられる手順に基づいて行なったが試薬を添加する順序で若干変更した。概要としては、10μlの標準または希釈した血漿を指定ウエルに添加し、続いて20μlの希釈キサンチンオキシダーゼを全ウエルに添加した。200μlの希釈ラジカル検出剤を添加することによって反応を開始させた。このアッセイは反応速度をアッセイするため、最後の試薬は可能な限り迅速に(好ましくはマルチチャンネルピペットを用いて)添加するのがよい。プレートを簡単に振って混合させたあと、450nmでの速度および終点の両者の測定を20分間室温で行なった。各サンプルの速度測定は、反応速度レジームの線形性の情報を与える。終点測定を用いて、線形速度に基づく標準カーブ(LR;StdBについてのLR=Abs450nmStdA/Abs45onmStdB)および標準のSOD活性を得た。未知サンプルのSOD活性は、標準カーブの線形回帰および以下の等式に基づいて算出した:
【0108】
【数1】

【0109】
この動物実験のハムスター血漿サンプル中の全スーパーオキシドジスムターゼ(SOD,SOD1、SOD2およびSOD3を含む)レベルを表7に纏める。次いで、更なるデータ分析の前に、同じサンプルのアルブミン濃度で各サンプルのSODレベルを規格化した。多変量解析を用いてマハラノビス診断で異常値検出を行なった。異常値を除いた後、種々の餌群におけるハムスターの規格化SODレベルを分析した。規格化後、種々の餌群におけるSODレベルは、MCC対照群と統計的な相違を示さなかった。この検討における全動物のミーンSODレベルはMCC群のミーンSODレベルと一致する。SOD活性はSOD2遺伝子発現データと同様である。
【0110】
【表4】

【0111】
纏めると、例3における結果は、エチルセルロース等の水不溶性セルロース誘導体が、動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するために有用であることを示すものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減する方法であって、動物に有効量の水不溶性セルロース誘導体を投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
栄養物中の脂肪によって誘発される酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
哺乳動物の肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
栄養物中の脂肪によって誘発されるマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)または両者の発現レベルまたは濃度を動物の組織において支配する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCDl)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを支配する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患を予防または処置する方法であって、動物に有効量の水不溶性セルロース誘導体を投与するステップを含む、方法。
【請求項7】
悪性腫瘍、肝臓病、中枢神経系変性疾患、自己免疫疾患、代謝系疾患、ミトコンドリア病、虚血傷害、炎症性疾患、循環器疾患、神経系疾患、筋損傷、日光誘導性皮膚ダメージ、エイジングの物理的発現を予防もしくは処置するか、またはAIDSを処置するための、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
動物の組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配する方法であって、動物に有効量の水不溶性セルロース誘導体を投与するステップを含む、方法。
【請求項9】
非脂肪組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
飽和脂肪酸からモノ不飽和脂肪酸への変換のための遺伝子の発現レベルを支配する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
ミトコンドリア酸化経路に係わる遺伝子の発現レベルを支配する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCDl)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを支配する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物の肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉における、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを支配する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または処置する方法であって、動物に有効量の水不溶性セルロース誘導体を投与するステップを含む、方法。
【請求項15】
ミトコンドリア病または代謝系疾患を予防または処置する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水不溶性セルロース誘導体がエチルセルロースである、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
1日に動物体重1ポンド当たり10〜300ミリグラムの水不溶性セルロース誘導体を、薬剤、医薬組成物、食品もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの形状で投与する、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための有効量の水不溶性セルロース誘導体を含む、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項19】
栄養物中の脂肪によって誘発される酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための、請求項18に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項20】
哺乳動物の肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための、請求項18または19に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項21】
栄養物中の脂肪によって誘発される、動物の組織におけるマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)または両者の発現レベルまたは濃度を支配するための、請求項18〜20のいずれかに記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項22】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現またはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現のレベルを支配するための、請求項18〜20のいずれかに記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項23】
動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患を予防または処置するための、有効量の水不溶性セルロース誘導体を含む、請求項18〜20のいずれかに記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項24】
悪性腫瘍、肝臓病、中枢神経系変性疾患、自己免疫疾患、代謝系疾患、ミトコンドリア病、虚血傷害、炎症性疾患、循環器疾患、神経系疾患、筋損傷、日光誘導性皮膚ダメージ、エイジングの物理的発現を予防もしくは処置するか、またはAIDSを処置するための、請求項23に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項25】
動物の組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための有効量の水不溶性セルロース誘導体を含む、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項26】
非脂肪組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための、請求項25に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項27】
飽和脂肪酸からモノ不飽和脂肪酸への変換のための遺伝子の発現レベルを支配するための、請求項25または26に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項28】
ミトコンドリア酸化経路に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための、請求項25または26に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項29】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCDl)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを支配するための、請求項25または26に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項30】
哺乳動物の肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉における、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを低減するための、請求項29に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項31】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または処置するための有効量の水不溶性セルロース誘導体を含む、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項32】
ミトコンドリア病または代謝系疾患を予防または処置するための、請求項31に記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項33】
水不溶性セルロース誘導体がエチルセルロースである、請求項18〜32のいずれかに記載の薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメント。
【請求項34】
動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、水不溶性セルロース誘導体の使用。
【請求項35】
栄養物中の脂肪によって誘発される酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
哺乳動物の肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項34または35に記載の使用。
【請求項37】
栄養物中の脂肪によって誘発される、動物の組織におけるマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)または両者の発現レベルまたは濃度を支配するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項34〜36のいずれかに記載の使用。
【請求項38】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現またはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現のレベルを支配するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項34〜36のいずれかに記載の使用。
【請求項39】
動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患を予防または処置するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、水不溶性セルロース誘導体の使用。
【請求項40】
悪性腫瘍、肝臓病、中枢神経系変性疾患、自己免疫疾患、代謝系疾患、ミトコンドリア病、虚血傷害、炎症性疾患、循環器疾患、神経系疾患、筋損傷、日光誘導性皮膚ダメージ、エイジングの物理的発現を予防もしくは処置するか、またはAIDSを処置するための、薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
動物の組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、水不溶性セルロース誘導体の使用。
【請求項42】
非脂肪組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
飽和脂肪酸からモノ不飽和脂肪酸への変換のための遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項41または42に記載の使用。
【請求項44】
ミトコンドリア酸化経路に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項41または42に記載の使用。
【請求項45】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCDl)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを支配するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項41または42に記載の使用。
【請求項46】
哺乳動物の肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉における、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを低減するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、請求項45に記載の使用。
【請求項47】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または処置するための薬剤、医薬組成物、食品、食品含有成分もしくは食品サプリメント、または栄養含有成分もしくは栄養サプリメントの製造のための、水不溶性セルロース誘導体の使用。
【請求項48】
ミトコンドリア病または代謝系疾患を予防または処置するための、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
水不溶性セルロース誘導体がエチルセルロースである、請求項34〜48のいずれかに記載の使用。
【請求項50】
動物の組織における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための薬剤としての、水不溶性セルロース誘導体。
【請求項51】
栄養物中の脂肪によって誘発される酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための薬剤としての、請求項50に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項52】
哺乳動物の肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害を予防または低減するための薬剤としての、請求項50または51に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項53】
栄養物中の脂肪によって誘発されるマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(SOD2)もしくは腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)または両者の発現レベルまたは濃度を支配するための薬剤としての、請求項50〜52のいずれかに記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項54】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを支配するための薬剤としての、請求項50〜52のいずれかに記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項55】
動物の器官における酸化的ストレスまたは酸化的細胞傷害に起因するかまたは促進される該器官の疾患を予防または処置するための薬剤としての、水不溶性セルロース誘導体。
【請求項56】
悪性腫瘍、肝臓病、中枢神経系変性疾患、自己免疫疾患、代謝系疾患、ミトコンドリア病、虚血傷害、炎症性疾患、循環器疾患、神経系疾患、筋損傷、日光誘導性皮膚ダメージ、エイジングの物理的発現を予防もしくは低減するか、またはAIDSを処置するための薬剤としての、請求項55に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項57】
動物の組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤としての、水不溶性セルロース誘導体。
【請求項58】
非脂肪組織の脂肪代謝に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤としての、請求項57に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項59】
飽和脂肪酸からモノ不飽和脂肪酸への変換のための遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤としての、請求項57または58に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項60】
ミトコンドリア酸化経路に係わる遺伝子の発現レベルを支配するための薬剤としての、請求項57または58に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項61】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCDl)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを予防または低減するための薬剤としての、請求項57または58に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項62】
哺乳動物の肝臓、膵臓、肺、腎臓、脳、胃または筋肉における、ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者のレベルを支配するための薬剤としての、請求項61に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項63】
ステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SCD1)遺伝子発現もしくはATP合成酵素ミトコンドリアF1複合体アセンブリ因子1(ATPAF1)遺伝子発現または両者に起因するかまたは促進される動物の器官の疾患を予防または低減するための薬剤としての、水不溶性セルロース誘導体。
【請求項64】
ミトコンドリア病または代謝系疾患を予防または低減するための薬剤としての、請求項63に記載の水不溶性セルロース誘導体。
【請求項65】
エチルセルロースである、請求項50〜64のいずれかに記載の水不溶性セルロース誘導体。

【公表番号】特表2010−506958(P2010−506958A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533525(P2009−533525)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/081788
【国際公開番号】WO2008/051795
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【出願人】(509110769)
【Fターム(参考)】