説明

酸化的脱硫方法

開示は、精製輸送機関燃料又は精製輸送機関燃料用ブレンド成分を製造するために、酸化条件にてチタン含有組成物を含む酸化触媒の存在下、 5酸化/吸着ゾーン内で供給原料を酸素含有ガスと接触させて、硫黄種をチタン含有組成物に吸着されるスルホン類及び/又はスルホキシド類に転化することにより、蒸留供給原料の硫黄及び/又は窒素含量を減少させるプロセスである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然石油由来の輸送機関用燃料に関し、特に、周囲条件にて液体である輸送機関燃料の精油所ブレンド用成分の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、石油蒸留分に含まれる窒素及び/又は硫黄含有有機不純物を酸化するために、不均質触媒の存在下、酸化条件にて、石油蒸留分を酸素含有ガスと接触させることによる石油蒸留分の酸化を含む、そのような燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、19世紀の最後の10年間の内燃機関の発明に付随して輸送を改革したことは周知である。中でもBenz及びGottleib Wilhelm Daimlerは、ガソリンなどの燃料の電気式点火を用いるエンジンを発明し開発し、Rudolf C. K. Dieselは、低コスト有機燃料を利用するために燃料の自動点火に圧縮を用いるディーゼルエンジンを発明し組み立てた。輸送機関に用いるための改良されたディーゼルエンジンの開発は、ディーゼル燃料組成物における改良と共に進められている。近代の高性能ディーゼルエンジンは、燃料組成物のより改善された仕様を求めているが、コストが重要な考慮事項のまま残されている。
【0003】
現在、ほとんどの輸送機関用燃料は、天然石油由来のものである。事実、石油は未だに燃料及び石油化学供給原料として用いられる炭化水素の世界中の主要源である。天然石油又は原油の組成は大幅に変動するが、すべての原油は硫黄化合物を含み、ほとんどが窒素化合物を含む。酸素を含むこともあるが、ほとんどの原油の酸素含量は低い。一般に、原油中の硫黄濃度は約8 %未満であるが、ほとんどの原油は約0.5〜約1.5 %の硫黄濃度を有する。窒素濃度は通常0.2 %未満であるが、1.6 %程度に高いこともある。
【0004】
原油は、油井で産出された形態のまま用いられることはほとんどなく、精油所において広範囲の燃料及び石油化学供給原料に転化される。典型的には、特定の最終用途規格に合致するように原油からの蒸留分を処理し、ブレンドすることにより、輸送機関用燃料は製造される。今日、多量に入手可能な原油のほとんどは硫黄分が高いので、性能規格及び/又は環境基準に合致する製品を得るために、蒸留分は脱硫されなければならない。燃料中の硫黄含有有機化合物は、主要な環境汚染源であり続ける。燃焼中、これらは硫黄酸化物に転化し、次いで硫黄酸素酸を発生させ、さらに、粒子状物質放出の原因となる。
【0005】
最近の高性能ディーゼルエンジンにおいてさえ、慣用の燃料の燃焼は排気中に煤煙を発生させる。酸素化された化合物及び炭素−炭素化学結合をわずかに含むか又は含まない化合物、たとえばメタノール及びジメチルエーテルは、煤煙及びエンジン排気放出を減少させることが知られている。しかし、このような化合物のほとんどは、高い蒸気圧を有し、及び/又はディーゼル燃料中にほとんど不溶性であり、これらのセタン価により示されるように点火品質が低い。さらに、化学水素化により硫黄含量及び芳香族化合物含量を減少させるディーゼル燃料を改良する他の方法もまた、燃料潤滑性を減少させる。潤滑性の低いディーゼル燃料は高圧下で燃料と接触するようになる燃料ポンプ、インジェクター及び他の可動パーツの過剰な摩耗を引き起こすかもしれない。
【0006】
圧縮着火内燃機関(ディーゼルエンジン)で用いるための燃料又は燃料のブレンド成分として用いられる蒸留分は、通常約1〜3 wt%の硫黄を含むミドル蒸留分である。過去には、ディーゼル燃料に対する典型的な規格は最大0.5 wt%であった。1993年までに、欧州及び米国における規制は、ディーゼル燃料中硫黄を0.3 wt%に制限した。1996年までに欧州及び米国において、及び1997年までに日本において、ディーゼル燃料中の最大硫黄分は0.05 wt%以下に削減された。この世界的な傾向は、硫黄についてもっと低いレベルにまで継続すると予測される。
【0007】
米国環境保護庁(The US Environmental Protection Agency)は、2006年中に、オンロードディーゼル車について15 ppm未満の硫黄レベルを目標としている。EU(The European Union)規格は、2005年中に50 ppm未満となるであろう。さらに、世界自動車工業界(all global automobile manufacturers)により支持されている世界燃料憲章(the World Wide Fuels Charter)は、先進諸国に対してIV類燃料(Category IV fuels)について 5〜10 ppmのさらにより厳しい硫黄要求を提言する。超低硫黄含量燃料に対するこれらの規格に適合させるために、精製業者は、精製所ゲートにおいてより低レベルの硫黄を有する燃料を製造しなければならないだろう。よって、精製業者は、監督官庁により規定された時間枠内で、燃料中硫黄レベル、特にディーゼル燃料中硫黄レベルを減少させる挑戦に直面している。
【0008】
一側面において、カリフォルニア州及び他の州で導入が審議されている新排出規制は、触媒排ガス処理に大きな関心を引き起こしている。ディーゼルエンジン、特に大型車両用ディーゼルエンジンに対する触媒排ガス制御適用の挑戦は、2つの点でスパーク着火型内燃機関(ガソリンエンジン)とは大きく異なる。第一に、慣用の三元触媒(TWC)は、ディーゼルエンジンからのNOx放出を取り除くために有効ではなく、第二に、粒子状物質制御の必要性がガソリンエンジンに対するよりも非常に高い。
【0009】
数種の排ガス処理技術がディーゼルエンジンからの放出制御のために出現しており、すべての部門において、燃料中硫黄レベルはその技術の効率に影響する。硫黄は、触媒活性を減少させる触媒毒である。さらに、ディーゼルエンジンからの放出の触媒制御の流れにおいて、高硫黄燃料は、硫黄の接触酸化及び硫酸塩ミストを形成する水との反応ゆえに粒子状物質放出の二次問題も引き起こす。このミストは、粒子状物質放出の一部として集められる。
【0010】
圧縮着火エンジンからの放出は、燃焼を開始させるために用いられる異なる方法ゆえに、スパーク着火エンジンからの放出とは異なる。圧縮着火は、非常に希薄な空気/燃料混合物中での燃料液滴の燃焼を必要とする。燃焼プロセスは、極めて小さな炭素粒子を残し、ガソリンエンジンにおけるよりも大幅に高い粒子状物質の放出を引き起こす。希薄運転故に、CO及び気体状炭化水素放出はガソリンエンジンにおけるよりも大幅に低い。しかし、非常に多量の未燃焼炭化水素がカーボン粒子状物質に吸着される。これらの炭化水素はSOF(可溶性有機留分)と呼ばれる。
【0011】
燃焼温度の上昇は、粒子状物質の放出を削減することができるが、周知のZeldovitch機構によりNOx放出の増加をもたらす。ゆえに、粒子状物質及びNOxの放出を排出規制に合致させる処理が必要となっている。
【0012】
入手可能な証拠は、超低硫黄燃料が放出を制御するためのディーゼル排出ガスの触媒処理のために鍵となる顕著な技術であることを強く示唆する。15 ppm以下の燃料硫黄レベルは、同様に、0.01 g/bhp-hr以下の粒子状物質レベルを達成するために必要である。このようなレベルは、0.5 g/bhp-hr付近のNOx放出を実現する能力を示している現存の排ガス処理用の触媒の組み合わせと非常に適合するであろう。さらに、NOxトラップシステムは燃料中硫黄に極めて感受性が高く、入手可能な証拠は、10 ppm以下の硫黄レベルを活性なまま残すことを必要とするであろうと示唆する。
【0013】
輸送機関燃料におけるより厳しい硫黄規格に直面して、石油供給原料及び製品からの硫黄除去は、来る数年間でますます重要となるであろう。
慣用の水素化脱硫(HDS)触媒は、精製輸送機関燃料ブレンド用の石油蒸留分から硫黄の大部分を除去するために用いることができるが、多環芳香族硫黄化合物中におけるような硫黄原子が立体障害されている化合物から硫黄を除去するためには効果的でない。これは、硫黄ヘテロ原子が二重に障害されている場合(たとえば、4,6-ジメチルジベンゾチオフェン)に特に当てはまる。これらのヒンダードジベンゾチオフェン類は50〜100 ppmなどの低い硫黄レベルで優位であり、脱硫されるべき厳しい処理条件を必要とするであろう。慣用の水素化脱硫触媒を高温で用いると、收率損失、早い触媒コーキング及び製品品質劣化(たとえば、色)を引き起こすであろう。高圧を用いることは、多額の設備投資を必要とする。
【0014】
将来、より厳しい規格に適合させるために、このようなヒンダード硫黄化合物もまた蒸留供給原料及び製品から取り除かれなければならないであろう。蒸留分及び他の炭化水素製品からの硫黄の経済的な除去に対する緊迫した必要性がある。
【0015】
当該分野において、蒸留供給原料及び製品から硫黄を除去するためのプロセスは充実している。公知の一方法は、非常に高沸点の炭化水素材料(約550゜Fよりも高温で沸騰する物質の主要量を少なくとも含む石油留分)よりも高温で沸騰する物質の主要量を少なくとも含む油留分の酸化、その後の昇温した温度で酸化された化合物を含む流出物を処理して硫化水素(500° F〜1350° F)を形成すること、及び/又は水素化処理して炭化水素材料の硫黄含量を減少させることを含む。たとえば、米国特許3,847,798号明細書(Jin Sun Yoo, et al)及び米国特許5,288,390号明細書(Vincent A. Durante)参照。このような方法は、限定された設備でのみ実証されている。むしろ低い程度の脱硫が達成されるに過ぎないからである。加えて、これらの方法の実施中のクラッキング及び/又はコークス形成に起因する有価値製品の実質的損失が生じるかもしれない。したがって、クラッキング又はコークス形成を減少させながら、脱硫の程度を向上させるプロセスを開発することが有益であろう。
【0016】
米国特許6,087,544号明細書(Robert J. Wittenbrink et al.)は、蒸留供給流よりも低いレベルの硫黄を有する留出燃料を製造するための蒸留供給流処理に関する。このような燃料は、蒸留供給流を軽質留分(わずかに約50〜100 ppmの硫黄を含む)及び重質留分に分けることにより製造される。軽質留分は、水素処理されて、軽質留分中の硫黄の実質的に全量が除去される。脱硫された軽質留分は、次いで、重質留分の1/2とブレンドされて、低硫黄留出燃料を製造する。たとえば85 wt%の脱硫された軽質留分と15 wt%の未処理重質留分は、硫黄レベルを663 ppmから310 ppmに削減した。しかし、この低い硫黄レベルを得るために、蒸留供給流のわずかに約85 %が低硫黄留出燃料製品として回収されるだけである。
【0017】
米国特許出願公開2002/0035306 A1公報(Gore et al.)は、窒素含有化合物及び芳香族化合物をも取り除く液体石油燃料を脱硫する多段階プロセスを開示する。この処理工程は、チオフェン抽出;チオフェン酸化;チオフェン−酸化物及び二酸化物抽出;ラフィネート溶媒回収及びポリシング;抽出溶媒回収;及びリサイクル溶媒精製である。
【0018】
Gore et al.のプロセスは、酸化工程の前に、供給流中のチオフェン性物質及び窒素含有化合物の5-65%並びに芳香族の一部を取り除こうとする。ディーゼルエンジン用燃料中芳香族化合物の存在はセタン価を抑える傾向があるが、Gore et al.のプロセスは、抽出された芳香族化合物に対する最終用途を必要とする。さらに、有効量の芳香族化合物の存在は、燃料密度(Btu/gal)を増加させ、ディーゼルエンジン用燃料のコールドフロー特性を増強させる。したがって、過度の量の芳香族化合物を抽出することは賢明ではない。酸化工程に関して、酸化剤は、その場(in situ)で調製されるか又は予め形成されている。運転条件としては、約1:1と2.2:1の間のH2O2:Sのモル比;供給物の約5%と45%の間の酢酸含量;供給物の10%と25%の間の溶媒含量;及び約5,000 ppm未満の硫酸、好ましくは1,000 ppm未満の触媒容積を挙げることができる。Gore et al.は、酸化工程での酸触媒、好ましくは硫酸の使用をさらに開示する。酸化性酸としての硫酸の使用は、水が存在する場合に腐食が懸念され、水がほとんど存在しない場合に炭化水素がスルホン化され得るという点で問題である。
【0019】
Gore et al.によれば、チオフェン−酸化物及び二酸化物抽出工程の目的は、種々の置換ベンゾチオフェン酸化物及びジベンゾチオフェン酸化物並びにN-酸化物化合物の90%超過に加えて、1種以上の共溶媒を有する水性酢酸である抽出溶媒での芳香族化合物の留分を取り除くことにある。
【0020】
米国特許6,368,495 B1(Kocal et al.)は、石油留分からのチオフェン類及びチオフェン誘導体の除去のための多工程プロセスをさらに開示する。このプロセスは、炭化水素供給流を酸化剤と接触させる工程、その後の酸化された硫黄含有化合物を分解させて、加熱された液体流及び揮発性硫黄化合物を得るための酸化工程流出物の固体分解触媒との接触工程を含む。この特許は、アルキルヒドロペルオキシド、過酸化物、過カルボン酸及び酸素などの酸化剤の使用を開示する。
【0021】
国際特許出願パンフレットWO 02/18518 A1(Rappas et al)は、水素処理装置の下流で利用される2ステージ脱硫プロセスを開示する。このプロセスは、チオフェン性硫黄を対応するスルホン類に転化する蒸留分の水性蟻酸系過酸化水素二相性酸化を含む。酸化プロセス中、幾分かのスルホン類は酸化溶液中に抽出される。これらのスルホン類は、続く相分離工程によって炭化水素相から取り除かれる。残りのスルホン類を含む炭化水素相は次いで、液体−液体抽出又は固体吸着工程に供される。
【0022】
酸化工程での蟻酸の使用は、望ましくない。蟻酸は、酢酸よりも比較的高い。さらに、蟻酸は「還元」溶媒であると考えられ、ある種の金属類を水素化してこれらを弱体化する。したがって、蟻酸を取り扱うための特殊合金が必要である。これらの高価な合金は、溶媒回収区域及び貯蔵容器内で用いられるべきであろう。蟻酸の使用は、第3の沈降固体相の出現を防止するために、さらに、水性酸化剤相からの炭化水素相の分離のために高温の使用を必要とする。この望ましくない相は、蟻酸の乏しい親油性ゆえに形成され得ると考えられる。したがって、より低い温度で、蟻酸は、抽出されたスルホン類の幾分かを溶液中に維持することができない。
【0023】
米国特許6,171,478 B1(Cabrera et al.)は、また別の複雑な多工程脱硫プロセスを開示する。特に、このプロセスは、水素化脱硫工程、酸化工程、分解工程及び分離工程を含み、硫黄−酸化化合物の一部が分解工程の流出物流から分離される。酸化工程で用いられる水性酸化溶液は、好ましくは酢酸及び過酸化水素を含む。酸化工程流出物中の任意の残留過酸化水素は、流出物を分解触媒と接触させることによって分解される。
【0024】
分離工程は、選択溶媒で行われ、硫黄−酸化化合物を抽出する。Cabrera et al.の教示によれば、好ましい選択溶媒は、アセトニトリル、ジメチルフォルムアミド及びスルホランである。
【0025】
酸化された硫黄化合物を取り除くために、多数の溶媒が提案されている。たとえば、米国特許6,160,193(Gore)は、スルホン類の抽出に用いるのに適切な広範囲の溶媒の使用を教示する。好ましい溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0026】
硫黄化合物の抽出に用いられる溶媒の同じようなリストの研究は、Otsuki, S.; Nonaka, T.; Takashima, N.; Qian, W.; Ishihara, A.; Imai, T.; Kabe, T. "Oxidative Desulfurization of Light Gas Oil and Vacuum Gas Oil by Oxidation and Solvent Extract" Energy & Fuels 2000, 14, 1232.にて公開されている。そのリストを以下に示す。
N,N-ジメチルフォルムアミド(DMF)
メタノール
アセトニトリル
スルホラン
Goreは、溶媒の極性と溶媒の抽出効率との間に関係があると述べている。その特許及び論文に掲載されている溶媒の全ては、望ましくはディーゼル燃料と不混和性である。これらはすべて、極性プロトン性又は非プロトン性の溶媒のいずれかとして特徴づけられる。
【0027】
国際特許出願パンフレットWO 01/32809は、留出燃料又はミドル蒸留分を選択酸化するプロセスを開示する。この参考文献は、ヒドロキシル基及び/又はカルボニル基が燃料中パラフィン性分子に化学的に結合するような酸化された留出燃料が結果的に、未酸化の燃料に対して、燃料の燃焼時に発生する粒子状物質の減少をもたらすことを開示する。この参考文献は、ヒドロキシル基又はカルボニル基が形成されるように、種々のチタン含有ケイ素系ゼオライトの存在下で、過酸化物、オゾン又は過酸化水素で燃料中の飽和脂肪族化合物又は環式化合物を選択酸化するプロセスを開示する。
【0028】
米国特許6,402,939 B1(Yen et al.)は、超音波を用いる化石燃料の酸化的脱硫プロセスを開示する。簡単には、液体化石燃料は、水及びヒドロペルオキシドを含む酸性水溶液と組み合わせられて多相反応混合物を製造し、続いて、スルフィド類のスルホン類への酸化を引き起こすに十分な時間にわたり超音波を多相反応媒体に付与する。スルホン類は続いて抽出される。
【0029】
米国特許出願公開2001/0015339 A1(Sherman)は、酸化ガスをサブミクロンサイズの気泡に形成し、これらの気泡を流れているディーゼル燃料に分散させて、硫黄化合物をスルホキシド類及び/又はスルホン類に酸化させることを含む、ディーゼル燃料から硫黄化合物を取り除く方法を開示する。
【0030】
上記の点から、費用のかかる多量の水素使用を含む水素処理技術を用いないか又は高価な化学酸化剤を用いる酸化技術を用いず、付随する複雑な取り扱い及び腐食問題を避け、あまり複雑でなく、経済的な蒸留又はディーゼル燃料の脱硫プロセスに対する必要性があることが明らかである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、チタン含有組成物を含む不均質触媒の存在下、酸化条件にて、蒸留供給原料を酸素含有ガスと接触させて、蒸留供給原料中の硫黄含有化合物を対応するスルホン類又はスルホキシド類に転化させ、次いで、スルホン類又はスルホキシド類の一部をチタン含有組成物に吸着させる、比較的単純な選択脱硫プロセスを提供する。
【0032】
本発明のプロセスは、酸化/吸着ゾーン内、酸化条件にてチタン含有組成物を含む不均質酸化触媒の存在下、供給原料を酸素含有ガスと接触させ、硫黄含有化合物をスルホン類及び/又はスルホキシド類へ転化させ、続いてスルホン類及び/又はスルホキシド類の一部をチタン含有組成物に吸着させることによって、硫黄含有有機不純物を含む蒸留供給原料の硫黄含量を減少させ、精製輸送機関燃料又は精製輸送機関燃料用ブレンド成分を製造することを含む。硫黄含量が減少した燃料又はブレンド用成分は、次いで、酸化ゾーンから回収される。スルホン類及び/又はスルホキシドをさらなる処理のために触媒からさらに取り除き、触媒をプロセスで再使用するために再生してもよい。
【0033】
適切な供給原料は、一般に、最良の結果のために、大気圧で約50℃〜約650℃の範囲、好ましくは150℃〜約400℃の範囲、より好ましくは約175℃と約375℃の間の温度で沸騰する精油所流を含む。これらの流としては、バージンライトミドル蒸留分、バージンヘビーミドル蒸留分、流体接触クラッキングプロセスライト接触サイクルオイル、コーカー蒸留室蒸留分、水素添加分解装置蒸留分、ジェット燃料、真空蒸留分及びこれらの流の集合的又は個々の水素処理実施形態を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい流は、流体接触クラッキングプロセスライト接触サイクルオイル、コーカー蒸留室蒸留分及び水素添加分解装置蒸留分の集合的又は個々の水素処理実施形態である。
【0034】
本発明のプロセスに対する供給原料として使用するために、上記蒸留分流の1種以上を組み合わせてもよいことも理解される。多くの場合、種々の別の供給原料から得られる精製輸送機関燃料又は精製輸送機関燃料用ブレンド成分の性能は、同等である。これらの場合、流の容積有効性、最も近い接続位置及び短期経済性などの物流管理が、どの流れを利用するかを決定するかもしれない。
【0035】
一側面において、本発明は、水素処理された石油蒸留分から精製輸送機関燃料又は精製輸送機関燃料用ブレンド成分の製造を提供する。このような水素処理された蒸留分は、水素化触媒の存在下、水素化条件で石油蒸留分を水素源と反応させて、水素処理された石油蒸留分から硫黄及び/又は窒素の水素化除去を補助すること;場合によっては、貧硫黄・富モノ芳香族画分からなる少なくとも1の低沸点ブレンド成分と、富硫黄・貧モノ芳香族画分からなる高沸点供給原料とに、水素処理された石油蒸留分を分留することを含むプロセスによって、約50℃と約650℃の間で沸騰する石油蒸留分を水素処理することにより調製される。本発明のプロセスの一実施形態によれば、水素処理された蒸留分又は低沸点成分を本発明のプロセスの適切な供給原料として使用することができる。
【0036】
一般に、有用な水素化触媒は、総触媒の約0.1 %〜約30 wt%の量で不活性担体上に担持されている周期表中d-遷移元素からなる群より選択される少なくとも1の活性金属を含む。適切な活性金属としては、周期表元素中原子番号21〜30、39〜48及び72〜78のd-遷移元素を挙げることができる。
【0037】
接触水素化プロセスは、触媒の固定床、移動流動床又は沸騰床内で比較的緩やかな条件で行うことができる。再生が必要になるまでに比較的長時間が経過するような条件下、たとえば約200℃〜約45O℃、好ましくは約250℃〜約400℃、最良の結果のために最も好ましくは約275℃〜約350℃の平均反応ゾーン温度及び約6〜約160気圧の範囲内の圧力で、好ましくは1又は複数の触媒の固体床が用いられる。
【0038】
水素化脱硫工程に必要な圧力及び水素の量を最小化しながら、水素化が極めて良好な硫黄除去を行う特に好ましい圧力範囲は、20〜60気圧の範囲内、より好ましくは約25〜40気圧の範囲内の圧力である。
【0039】
水素循環速度は、一般に、約500 SCF/Bbl〜約20,000 SCF/Bbl、好ましくは約2,000 SCF/Bbl〜約15,000 SCF/Bbl、最良の結果のために最も好ましくは約3,000〜約13,000 SCF/Bblの範囲である。これらの範囲よりも低い反応圧力及び水素循環速度は、あまり効果的でない脱硫、脱窒及び脱芳香族を生じさせるより早い触媒失活速度をもたらし得る。過剰に高い反応圧力は、エネルギー及び設備費用を上昇させ、限界利益を減少させる。
【0040】
水素化プロセスは、典型的には約0.2 hr-1〜約10.0 hr-1、好ましくは約0.5 hr-1〜約3.0 hr-1、最良の結果のために最も好ましくは約1.0 hr-1〜約2.0 hr-1の液体時間あたり空間速度で運転する。過剰に高い空間速度は、全体の水素化を減少させるであろう。
【0041】
このような蒸留石油留分からのヘテロ芳香族硫化物の水素処理によるさらなる減少は、これらの化合物を炭化水素類及び硫化水素(H2S)に転化するために、流を非常に厳しい接触水素化に供することを必要とするであろう。典型的には、任意の炭化水素部位が大きいほど、硫化物を水素化することはより困難になる。したがって、水素処理の後に残る残留有機硫黄化合物は、より大きく且つ最も構造的に妨害されたヘテロ芳香族化合物である。
【0042】
供給原料が精油所流の水素化から誘導される高沸点蒸留分である場合、精油所流は、約200℃〜約425℃の間で沸騰する物質であってもよい。好ましくは、精油所流は、約250℃〜約400℃の間、より好ましくは約275℃〜約375℃の間で沸騰する物質であってもよい。
【0043】
水素化に有用な蒸留留分は、大気圧下で約50℃〜約650℃の範囲、好ましくは150℃〜約400℃の範囲、より好ましくは約175℃〜約375℃の間で沸騰する任意の1種、数種又は全精油所流でよい。蒸留生成物中のより軽質の炭化水素成分は、一般に、ガソリンにより有利に回収され、留出燃料中でのこれらのより低沸点の物質の存在は留出燃料引火点規格によってしばしば制約される。400℃を超えて沸騰するより重質の炭化水素成分は、一般に、流体接触クラッカー供給物としてより有利に処理され、ガソリンに転化されるが、本発明のプロセスでの使用には従順である。留出燃料中でのより重質の炭化水素成分の存在は、留出燃料終点規格によってさらに制約される。
【0044】
水素化用の蒸留留分は、高及び低硫黄原油から誘導された高及び低硫黄バージン蒸留分、コークス炉蒸留分、接触クラッカーライト及びヘビー接触サイクルオイル、水素添加分解装置及び残油水素処理装置からの蒸留沸点範囲生成物を含んでいてもよい。一般に、コークス炉蒸留分、ライト及びヘビー接触サイクルオイルが、80 wt%と高い範囲の最も高含量の芳香族供給原料成分である。コークス炉蒸留分及びサイクルオイル芳香族化合物の主要部分はモノ芳香族化合物及びジ芳香族化合物として存在し、トリ芳香族化合物が少量存在する。高及び低硫黄バージン蒸留分などのバージンストックは、20 wt%芳香族化合物程度の範囲と芳香族化合物含量がより少ない。一般に、組み合わせられた水素化設備供給原料の芳香族化合物含量は、約5 wt%〜約80wt%の範囲、より典型的には約10 wt%〜約70 wt%の範囲、最も典型的には約20 wt%〜約60 wt%の範囲であろう。
【0045】
本発明において有用な蒸留留分中の硫黄濃度は、一般に、高及び低硫黄原油混合物、精油所の原油容量1バレルあたり水素化容量及び蒸留水素化供給原料成分の別の性質の関数である。より高濃度の硫黄蒸留供給原料成分は、一般に、高硫黄原油から誘導されたバージン蒸留分、コークス炉蒸留分及び比較的高濃度の硫黄供給原料を処理する流体接触クラッキングユニットからの接触サイクルオイルである。これらの蒸留供給原料成分は、2 wt%元素状硫黄程度に高い範囲であってもよいが、一般に約0.1 wt%〜約0.9 wt%元素状硫黄の範囲である。
【0046】
本発明に有用な蒸留留分の窒素含量もまた、一般に、原油の窒素含量、精油所の原油容量1バレル当たり水素化容量及び蒸留水素化供給原料成分の別の性質の関数である。より高濃度の窒素蒸留供給原料は、一般に、コークス炉蒸留分及び接触サイクルオイルである。これらの蒸留供給原料成分は、2000 ppm程度に高い総窒素濃度を有していてもよいが、一般に約5 ppm〜約900 ppmの範囲である。
【0047】
典型的には、石油留分中の硫黄化合物は、置換ベンゾチオフェン類及びジベンゾチオフェン類などの比較的非極性のヘテロ芳香族硫化物である。最初のブラッシュにて(At first blush)、ヘテロ芳香族硫黄化合物は、これらのヘテロ芳香族化合物だけに起因する幾つかの特性に基づいて、選択的に抽出されるように見えるかもしれない。これらの化合物中の硫黄原子がルイス塩基(Lewis base)として分類される2個の非結合電子対(non-bonding pairs of electrons)を有するとしても、この特性はルイス酸(Lewis acid)により抽出されるにはまだ不十分である。換言すれば、より低レベルの硫黄を達成するためのヘテロ芳香族硫黄化合物の選択抽出には、硫化物類と炭化水素類との間の極性が大きく異なっていることを要する。
【0048】
本発明による不均質接触酸化により、これらの硫化物を直接、スルホキシド類やスルホン類などのより極性の高いルイス塩基性(Lewis basic)酸素化硫黄化合物に選択的に転化することが可能である。この酸素化硫黄化合物は、次いで、チタニア−シリカ上に吸着される。続いて、脱硫黄供給原料は、酸化/吸着ゾーンから回収される。本発明のプロセスもまた、硫黄含有種と同時に分離され得る任意の窒素含有種の酸化及び吸着を生じさせると考えられる。
【0049】
非結合電子対を有する他の化合物としては、アミン類を挙げることができる。ヘテロ芳香族アミンもまた、上記硫化物が見られる同じ流中に見出される。アミン類は、硫化物よりも塩基性である。孤立電子対は、ブロンステッド−ローリ(Bronsted−Lowry)塩基(プロトン受容体)並びにルイス塩基(Lewis base)(電子供与体)として機能する。原子上のこの電子対は、硫化物と同様の態様で原子を酸化されやすくする。
【0050】
一側面において、本発明は、精製輸送機関燃料又は精製輸送機関燃料用ブレンド成分の製造方法を提供する。本方法は、炭化水素類及び硫黄含有有機不純物の混合物を含む蒸留供給原料を準備する工程と;酸化ゾーン内で、吸着剤として作用するチタニア−シリカを含む酸化触媒の存在下で、当該供給原料を酸素枯渇空気などの酸素含有ガスと接触させる工程とを含む。酸素枯渇空気を本発明において用いることができるので、酸素濃度は約21 vol%未満であってもよい。酸素含有流は、好ましくは少なくとも0.01 vol%の酸素含量を有するべきである。有効濃度は、0.5〜10 vol%である。ガスは、必要に応じて、空気及び窒素などの不活性希釈剤から供給されてもよい。ある種の組成物は爆発性であり、酸素含有流の組成は爆発領域を避けるように選択されるべきであることを当業者は容易に認識する。酸素含有ガスは、1バレル当たり200〜20,000 標準立方フィートの範囲の量で循環されてもよい。
【0051】
酸化/吸着ゾーン内の圧力は、大気圧〜3000 psig、好ましくは約100 psig〜約400 psig、より好ましくは約100 psig〜約300 psigの範囲でよい。
酸化/吸着ゾーン内の温度は、約100゜F〜約600゜、好ましくは約200゜F〜約500゜F、最も好ましくは約300゜F〜約400゜Fの範囲でよい。
【0052】
本発明の酸化/吸着プロセスは、約0.1 hr-1〜約100 hr-1、好ましくは約0.2 hr-1〜約50 hr-1、最良の結果のために最も好ましくは約0.5 hr-1〜約10 hr-1の液体時間あたり空間速度で運転する。過剰に高い空間速度は、全体の酸化及び吸着を減少させるであろう。
【0053】
一般に、本発明の酸化/吸着プロセスは、蒸留供給原料予熱工程で始まる。蒸留供給原料は、最終予熱用炉に入る前に、目標反応ゾーン温度まで、供給物/流出物熱交換器内で予熱される。蒸留供給原料は、予熱前、予熱中及び/又は予熱後に、酸素含有流と接触してもよい。
【0054】
酸化反応は一般に発熱であるから、固定床反応器の間又は同じ反応器シェル内の触媒床の間の熱移動デバイスからなるステージ間冷却を用いることができる。酸化プロセスから発生した熱の少なくとも一部は、酸化プロセスでの使用のために、しばしば有利に回収され得る。この熱回収ができない場合には、冷却は、冷却水又は空気などの冷却ユーティリティを通して、又は反応器に直接注入されるクエンチ流を使用して行われてもよい。2ステージプロセスは、反応器シェルあたりの発熱温度を低下させ、より良好な酸化反応器温度制御を提供することができる。
【0055】
酸化/吸着ゾーン流出物は一般に冷却され、流出物流は分離器デバイスに送られて、酸素含有ガスが除去される。酸素含有ガスはプロセスに戻してもよい。酸素含有ガスパージ速度は、反応ゾーンに通過したガス中の酸素含量の最小値又は最高値を維持するために、しばしば制御される。再循環された酸素含有ガスは、一般に圧縮され、必要に応じて「メークアップ」酸素又は酸素含有ガス(好ましくは空気)が補充され、さらなる酸化のための処理に注入される。
【0056】
本発明のプロセスは、当業者に公知の何らかの気体−液体−固体反応ゾーンで行うことができる。例えば、反応ゾーンは、1以上の固定床反応器からなるものでもよい。固定床反応器は、複数の触媒床を具備するものでもよい。さらに、反応ゾーンは、流動床反応器、スラリー又はトリクルベッド反応器でもよい。不均質触媒の使用により与えられる簡略化は、本発明のプロセスに対する従来とは異なる適用範囲を促進する。例えば、本発明のプロセスは、ターミナル又はパイプラインガレージフォアコート(terminals or pipelines garage fore courts)にて、及び硫黄感受性炭化水素改質器及び燃料電池が用いられる燃料電池搭載型車両にて、スキッドマウント設計ユニットで行うことができることを意図している。
【0057】
本発明による不均質接触酸化は、硫黄含有有機不純物の一部を対応するスルホン類及び/又はスルホキシド類へと直接酸化させると考えられる。これらのスルホン類及び/又はスルホキシド類は、次いで、触媒上に吸着される。
【0058】
本開示の目的のために、用語「酸化触媒」とは、以下のようなチタン含有材料をいう。
1. アモルファスチタニア−シリカ材料。これらの材料は、Catalysis Today, 51, 1999, 233-254内のGao及びWachsによるレビュー(review)記事に記載されている。Ti濃度: 0.001 %〜50%原子。任意の表面積、任意の細孔容積
2. チタノシリケートゼオライト材料。これらの材料の数種は文献にて公知である;TS-1, Ti-β、Ti-ZSM-12、Ti-MCM-41、Ti-HMS、Ti-ZSM-48、TS-2、Ti-MCM-48、Ti-MSU、Ti-SBA-15、Ti-MMM、Ti-MWW、Ti-TUD-1及びTi-HSMはこれらの数種である。これらの材料は、"Active sites and reactive intermediates in titaniumu silicate molecular sieves", Ratnasamy and Srinivas, Advances in Catalysis 48 (2004) 1-169に記載されていた。
3. 50%以下のチタニアを含むチタニア−シリカ混合酸化物。
4. Schoebrechtsらの国際特許出願公開パンフレットWO 02/090468に記載されているようにシリル化処理に供された上述の触媒材料のすべて。
【0059】
好ましい効果的なチタン含有材料は、チタンケイ酸塩、Ti-MCM及びTi-HMSからなる群より選択することができる。.
本発明のプロセスは、約10 ppmw以下のレベルまで脱硫を達成することができ、約10 ppmw以下のレベルまで脱窒を達成することができる。
【0060】
一般に、酸化/吸着ゾーン流出物が所定硫黄含量に到達するか又は触媒が硫黄種、たとえばスルホン類又はスルホキシド類の所望容量又は負荷量に到達したことを示す破過に至るまで、酸素含有ガスは、酸化/吸着ゾーン内で酸化触媒の存在下で、供給原料と接触する。
【0061】
酸化/吸着ゾーンは、次いで、運転を中止して再生される。酸化触媒は、次いで、多数の手順によって再生され得る。これらの方法としては、酸素含有ガスの存在下での約500〜約1000℃の温度及び約0〜約100 psiaの圧力を含む条件での高温酸化;約500〜約1000℃の温度及び約0〜約100 psiaの圧力を含む条件での高温熱分解;水素含有ガスの存在下での約500〜約700℃の温度及び約25〜約40気圧の圧力を含む条件での高温水素処理;及び溶媒再生を挙げることができる。
【0062】
効果的な溶媒はメタノールである。アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、酢酸などの他の極性溶媒は、酸化触媒を本質的に初期活性まで復元する同様の効果を有し得ると考えられる。溶媒再生は、再生が本質的に完了したことを示す流出物抽出流中の硫黄濃度が一定になるまで溶媒の液体時間あたり空間速度が維持されるように、約50〜約400゜Fの温度及び約0〜約300 psigの圧力、及び触媒との接触時間を含む条件で一般に行われる。
【0063】
さらに、圧力スイング運転は、約100〜約500゜Fの温度及び0〜約50 psiaの圧力を含む条件で触媒を再生するために行うことができる。理想的には、1の酸化/吸着ゾーンは供給原料を脱硫するために用いられ、別の酸化/吸着ゾーンは脱硫作用後に再生される。
【0064】
本発明をよりよく理解するために、本発明の別の好ましい側面を図1に概略図示する。図1に示した概略フローダイアグラムを参照すれば、供給物タンク10からの液体供給原料は導管15を通過する。導管15で、液体供給原料は予熱され、希釈された空気流16と混合する。この空気流は、約7 mol%酸素、好ましくは3 mol%酸素を含む。
【0065】
希釈空気及び供給物の予熱された混合物は、次いで、酸化/吸着ゾーン20に通過する。酸化/吸着ゾーン20は、325゜F、200 psig圧力及び液体時間あたり空間速度0.7 hr-1又は好ましくは1.0hr-1で運転され得る。ゾーンは、固定床下降流反応器であってもよく、固定床はチタニア−シリカを含む。反応器において、供給原料中の硫黄含有有機種は、対応するスルホン類及び/又はスルホキシド類まで酸化される。これらのスルホン類及び/又はスルホキシド類は次いで、酸化/吸着ゾーン内のチタニア−シリカに吸着される。反応は発熱であり、酸化/吸着ゾーンは、酸化/吸着ゾーンを横断しての温度上昇が好ましくは25゜Fを超えないような態様で運転される。酸化/吸着ゾーンは、500 ppmw以下の硫黄を含む供給原料及び10 ppmwを超えない生成物硫黄種で24時間サイクル運転を行うような寸法でよい。24時間サイクル運転の後、酸化/吸着ゾーン20は、酸化触媒を再生するために、オフラインに切り替えられる。酸化/吸着ゾーン20からの流出物流21は、次いで、反応器流出物分離器30に通過し、ここで低硫黄生成物又はブレンド成分が流31内に回収される。リサイクルガス流32は、ノックアウトドラム(Knockout Drum)50に通過し、ここで追加の低硫黄生成物が流53内に回収され、ガスリサイクル流52は乾燥器60内で乾燥され、再圧縮され(圧縮器70)、メークアップ酸素の適切な添加後に酸化/吸着ゾーンに再循環される。
【0066】
図2は、再生モードでの酸化/吸着ゾーン40を示す。この場合、吸着されたスルホン類及び/又はスルホキシド類を脱着するために、メタノールは、新鮮なメタノールタンク70からの流71を通して再生用酸化反応器40に通過する。この再生プロセスは、吸着されたスルホン類及び/又はスルホキシド類の99%を超える量を除去することができ、触媒の酸化活性及び吸着容量を本質的に復元することができる。次いで、メタノール含有及びスルホン類含有及び/又はスルホキシド類含有流41は、カラム90に通過する前に、使用済みメタノールタンクに通過する。カラム90で、メタノールは、廃棄スルホン及び/又はスルホキシド・メタノール流91から流92中に回収される。この廃棄流は、比較的低容積であり、水素添加分解装置、コークス炉又は蒸留水素処理装置又はさらなる処理のためにオフサイトに送られてもよい。脱着再生は、酸化/吸着と同じ圧力で行われてもよい。好ましくは、脱着再生は、蒸留工程における圧力と等しい低圧で行われる。メタノール供給速度は、炭化水素供給原料が酸化/吸着ゾーンに送られる速度と同じ供給速度でよい。脱着/再生プロセスを行うために、溶媒中の触媒容積の少なくとも10倍の容積が必要となると考えられる。脱着工程に引き続き、酸化/吸着ゾーンを乾燥させて、残存する遊離メタノールを除去してもよい。乾燥工程の後、酸化/吸着ゾーン内の触媒は、3%酸素流を用いて800゜Fで焼成され、最終的に戻されて運転を開始してもよい。
【0067】
本発明をより完全に理解するために、以下の実施例に詳細に示す実施形態を参照されたい。
【実施例1】
【0068】
本発明で酸化触媒及びスルホン/スルホキシド吸着剤として用いられるチタンケイ酸塩を以下のように調製した。350 gのテトラエチルオルソシリケートを500 gの水に添加した。テトラエチルオルソシリケートは水と混合せず、上層がテトラエチルオルソシリケートである2層を形成する。水層に溶解可能である10% HCI 139 gを添加した。2層を撹拌しながら約70℃まで加熱した。テトラエチルオルソシリケートとの初期反応は、単層を形成し、これを更に加熱すると透明な紫色のゲルを形成した。ゲルを室温で乾燥させて、固体とした。固体を3リットルの水で洗浄して、Cl量を減少させた。次いで、触媒を一晩、100℃で乾燥させた。場合によっては、固体を500℃で4時間、焼成してもよい。触媒の収率は82 gであった。
【0069】
上述のように調製した3種のチタニア−シリカ触媒を分析したところ、ほとんどがアモルファスであったが、Table 1に示すように、触媒A及び触媒Cは、少量のTiO2 のアナターゼ多形体を含んでいた。
【0070】
【表1】

【0071】
3種の触媒を乳鉢と乳棒ですりつぶした。標準構成を用いるRigaku 回折計でX線粉末パターンを測定した。Spex 8000 mixer/mill内で触媒Aを既知濃度の石英内部標準とブレンドし、パターンを再測定した。GSASを用いるRietveld 方法により定量相分析を行った。
【実施例2】
【0072】
[実験設備]
パイロットスケールユニットを用いて、350 ppm-硫黄含有ディーゼルオイル供給物で触媒の性能を評価した。パイロットスケール反応器は、10.5インチ長さ、0.75 O. D. ×0.438インチI. D. ×0.065インチ壁316 ステンレススチール管からなる。反応器 温度は、断熱炉ボックス内部反応器壁の3個の電気加熱区域によって維持した。これらの区域の温度は、反応器壁区域のそれぞれに一点熱電対を用いて、プログラム可能なコンピュータによって制御した。さらに、上部から反応器の中点を通って延びる0.125インチO. D.ステンレススチールサーモウェル(thermowell)に、内部反応温度を監視するために多点熱電対(3個の多点熱電対を2インチ間隔で)を収容した。
【0073】
パイロットプラント反応器は、Tyler 篩目寸法 -20 +40(USA Standard Testing Sieve by W.S. Tyler)で篩いにかけたアルミナチップを充填した予熱ゾーンからなる。第2及び第3の加熱されたゾーンに、Tyler篩目寸法 -20 +40(USA Standard Testing Sieve by W.S. Tyler)に砕いた10 cc 触媒を装填した。反応器の残部(温度ゾーン4)にTyler篩目寸法 -20 +40(USA Standard Testing Sieve by W.S. Tyler)で篩いにかけたアルミナチップを充填し、クールダウンゾーンとして用い、触媒を担持させた。反応器を主に下降流モードで運転したが、上昇流構造においても運転した。.
Brooksフローコントローラを用いて、250 ml min-1 で窒素供給ガス中で希釈された7% 酸素を反応器に送った。反応器の下流に組み込んだ酸素分析器で、大気圧でのオフガスの酸素含量を測定した。
【0074】
正確なシリンジ計量ポンプ(ISCO)は、液体供給物を反応器に送った。供給物を反応器予熱ゾーン内で反応温度まで予熱し、種々の位置での熱電対によって中心線に沿って温度を測定した。反応器からの液体生成物は、冷却された高圧分離器/受け器に流入し、ここで、反応器の出口圧力を運転圧力に維持するために窒素中7%酸素を用いた。分離器/受け器からのオフガス上のGO背圧調節器によって、反応器圧力を200 psigに維持した。液体試料を高圧受け器/分離器から抜き出し、Spectra XEPOS XRF 分析器Model XEP01によって硫黄含量を分析した。窒素は、化学発光によって決定した。硫黄スペシエーションは、硫黄特異検出器を有するキャピラリGCによって決定した。
【0075】
これらの実験のために、触媒10 ccを反応器に仕込んだ。供給物流量は、液体水力空間速度(触媒の仕込んみ容積ccで除した供給物標準容積cc/hour)が1.0と2.0 hr-1の間の範囲となるように運転した。反応ゾーン温度を320゜F +/- 5゜Fに維持した。
[実験手順]
反応器に触媒を仕込んだ後、窒素ガス中希釈された7% 酸素で200 psigに加圧し、250 ml min-1のガスフローを確立した。触媒床を約50 mlの供給物で飽和させた。次いで、10〜50 ml hour-1の供給速度で始めた。確立された気体及び液体供給物を有する反応器を300〜400゜Fの運転温度までゆっくりと加熱した。所望の運転温度が達成された後、試験を始め、液体生成物を1時間毎の間隔で集めた。次いで、液体生成物をSpectro XEPOS モデルXEP01 XRF分析器により硫黄含量について分析した。触媒の失活又は破過が生じるまで、反応を続けた。
[使用済み触媒評価手順]
使用済み触媒のメタノール抽出物1〜2マイクロリットルをスプリットインジェクションポートを介して、300Cでポリジメチルシリコーン(DB1)の0.1ミクロン膜を有する30 m× 0.32mm i.d. 溶融石英カラムに注入した。カラム温度を40℃に2分間保持し、次いで、300℃まで10℃/分の間隔で上昇するようにプログラムした。カラムの端部からマススペクトルメータイオン源までの移動ラインは、300℃に保持した。マススペクトルは、3000 mass 解像度又は1000 mass 解像度のいずれかで0.7 秒/mass decadeの走査速度で得た。
[結果及び考察]
下記Table 2に示す特性を有する供給物としてディーゼル燃料を用いて、チタンケイ酸塩触媒で実験を行った。ディーゼル燃料供給物は触媒床を流れていたが、実験の初期に、純粋な窒素ガスだけが反応器に供給された。下記Table 4の結果は、系に酸素が存在しないと、反応器流出物中硫黄濃度は12.92 %に減少することを示す。数時間後、流において、ガスフローを窒素中7vol%以下の酸素からなるガスフローに切り替えた。結果から明らかなように、気体状分子状酸素は、触媒により効果的に利用され、反応器流出物中硫黄含量を74.72 %減少させた。これらの実験結果は、気体状酸素が供給ガス中に存在する場合に供給流からの硫黄除去にチタンケイ酸塩触媒が効果的であることを明らかに示す。図3は、実験結果をグラフに示したものである。
【0076】
さらに、下記Table 3は、供給物中に存在していると同じ硫黄化合物がより低濃度で存在することを示す。しかし、使用済み触媒からのメタノール抽出炭化水素類のGC-MS分析は、未反応C1-C4 ジベンゾチオフェン類に加えて、スルホキシド類及びスルホン類の存在を明らかにした。酸洗浄はスルホン類及びスルホキシド類を生成物から選択的に除去すると予測されるところ、本質的に何も除去されていなかったから、スルホキシド類又はスルホン類が生成物中に存在しておらず、触媒に吸着されたと結論づけることができる。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【実施例3】
【0080】
失活したTi-シリケート触媒を再生するために2種の異なる方法を試みた。第1の再生 (A)は、使用済み触媒を窒素流下(572゜F)で熱処理し、続いて空気(950゜F)で少なくとも数時間処理したことを示す;下記Table 5参照。第2の再生(B)方法は、密封反応器内、310゜Fで少なくとも数時間、メタノール中に触媒を浸し、続いて窒素中7% 酸素を流しながら800゜Fで少なくとも数時間かけて焼成した。次いで、これらの再生触媒を用いて本発明のプロセスを行った。結果を図4にグラフとして示し、下記Table 6にも示す。
【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
結果は、酸化/吸着ゾーン内で失活した後、触媒を再生することが可能であることを示す。このとき、触媒表面に強く吸着された酸化された硫黄化合物は、触媒失活に対応すると考えられる。供給オイル中に存在する窒素化合物及び酸化された窒素化合物(触媒補助酸化反応にて)もまた触媒失活における役割を果たし得ると考えられる。
【実施例4】
【0084】
この実施例において、3種の別個の失活実験を行った。
Table 7は、硫黄の本質的に全量が触媒上に堆積したか又は液体生成物中に回収されたことを示す。
【0085】
【表7】

【実施例5】
【0086】
アモルファスチタンケイ酸塩及びTi/MCMとTi/HMSモレキュラーシーブとの混合物を用いて追加の実験を行った。下記Table 8及び図5は、これらの実験の結果を示す。
【0087】
【表8】

【実施例6】
【0088】
図6は、本発明にしたがって行った酸素レベルを変え、温度を変えた種々の実験の結果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の実施形態の概略フローシートを示す。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態の概略フローシートを示す。
【図3】図3は、本発明によるプロセスに対する酸素含有ガスの添加の効果を含む、流における時間に対する脱硫%のプロットを示す。
【図4】図4は、蒸気における時間の関数として、再生チタンケイ酸塩の性能に対する新鮮なチタンケイ酸塩触媒の脱硫活性を示す。
【図5】図5は、本発明により再生された2種の酸化触媒の脱硫活性を示す。
【図6】図6は、本発明により実施される脱硫に対する酸素含量の効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製輸送機関燃料又は精製輸送機関燃料用ブレンド成分を製造するための蒸留供給原料を脱硫する方法であって、当該供給原料は硫黄含有有機不純物を含み、
(a)酸化/吸着ゾーン内、酸化条件で、硫黄含有有機不純物の少なくとも一部をスルホン類及び/又はスルホキシド類へと転化するチタン含有組成物を含む酸化触媒の存在下で、当該供給原料を酸素含有ガスと接触させる工程;
(b)スルホン類及び/又はスルホキシド類を当該酸化触媒に吸着させる工程;及び
(c)硫黄含有不純物の量が減少した酸化/吸着ゾーン流出物を回収する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記酸化触媒は再生されて、少量の吸着されたスルホン類及び/又はスルホキシド類を含む酸化触媒を製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再生は、吸着されたスルホン類及び/又はスルホキシド類を脱着する条件下で、触媒をメタノールと接触させることによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記チタン含有組成物は、チタンケイ酸塩、Ti-MCM及びTi-HMSからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−525624(P2008−525624A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549514(P2007−549514)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046849
【国際公開番号】WO2006/071793
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】