説明

酸化触媒を予備成形する方法

本発明は、酸化触媒を予備成形する方法に関し、この場合、この方法は、触媒前駆物質を、0.05〜4.0Nm/hの供給された空気量を有する空気含有雰囲気中で、少なくとも350℃の温度で加熱し、かつ前記触媒前駆物質を少なくとも350℃で少なくとも9時間に亘って活性化することから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、酸化触媒の予備成形のための方法に関し、この場合、この方法は、触媒前駆物質を、供給空気含量0.05〜4.0Nm/hを有する空気を含有する雰囲気中で、少なくとも350℃の温度で加熱し、かつ触媒前駆物質を、少なくとも9時間に亘って少なくとも350℃で活性化する。
【0002】
酸化触媒として、触媒活性材料が外被状に、不活性担持材料、たとえばステアタイト上に塗布されている、いわゆる被覆触媒が有用であることが見出されている。触媒活性成分として、この被覆触媒の触媒活性材料は、たとえば二酸化チタンに加えて(そのアナターゼ型の形で)、五酸化バナジウムを使用する。さらに、触媒活性材料中で、多くの他の酸化化合物が少量含有されていてもよく、この場合、これらは、促進剤として、触媒活性および選択性に影響する。
【0003】
これらの被覆触媒を製造するために、水性および/または有機性溶剤を含有する活性材料成分の溶液または懸濁液および/またはその前駆化合物を、担持材料上で、高められた温度で噴霧し、触媒全質量に対する好ましい活性材料の割合を達成する。
【0004】
これに関連して被覆の質を改善するために、工業的には、有機結合剤、好ましくはコポリマーの懸濁液、好ましくは、ビニルアクリレート/ビニルラウレート、ビニルアセテート/アクリレート、スチロール/アクリレート、ビニルアセテート/エチレンまたはアクリル酸/マレイン酸を水性分散液の形で添加する。被覆は、一般には、室温から200℃の温度で実施する。結合剤の添加は、活性材料を担体上に良好に付着させ、それにより、触媒の輸送及び詰め込みを容易にするという利点を有する。
【0005】
予備成形は、通常は、200〜500℃の温度で実施する。この熱処理の際に、結合剤は熱分解および/または塗布された層から焼失することによって排除される。たいていの場合、熱処理/予備成形は、酸化反応器中でin situで実施する。
【0006】
DE-A 25 50 686には、気相中での酸化反応のための触媒を製造するための方法が記載されている。被覆剤溶液に添加される結合剤として、尿素化合物、たとえば尿素、チオ尿素、シアンアミド化合物またはジシアンアミドが開示されている。活性化処理時間は厳密なものではないが、その際、5時間の最小限の時間を遵守することが記載されている。たとえば、記載された担体は、均一な空気流量下で、280〜400℃に加熱され、かつこの温度で6時間に亘って放置する。
【0007】
US 4,489,204には、無水フタル酸を、リング形状の担持材料の使用下で製造するための方法が開示されている。例1では、触媒を、0.5Nm/hの空気量の使用下で、300℃に加熱し、かつ引き続いて予備成形をおこなうことが記載されており、その際、触媒は10℃/hの加熱速度で、390℃に加熱し、その際、第2工程は、加熱を9時間に亘って継続する。
【0008】
DE-A 103 35 346は、気相酸化のための触媒を開示しており、この場合、不活性担体およびその上に塗布された遷移金属酸化物を含有する触媒活性材料を含有する。結合剤として、α−オレフィンおよびビニルC〜C−カルボキシレートのコポリマーが開示されており、その際、ビニルC〜C−カルボキシレート含量は少なくとも62モル%に達する。200〜500℃の温度で触媒を熱処理することによって、結合剤を、熱分解させるか、および/または塗布された層から焼失させることによって排除することが記載されている。
【0009】
EP-A 0 744 214およびDE-A 197 17 344には、担持触媒および触媒を製造するための方法が記載されており、その際、酸化物の混合物は、水の存在下で粉砕され、引き続いて、担持体上に塗布される。有機結合剤として、ビニルアセテート/ビニルラウレート、ビニルアセテート/アクリレート、スチレン/アクリレート、ビニルアセテート/マレエートならびにビニルアセテート/エチレンが挙げられる。結合剤は、反応器中に触媒を充填した後、短い時間内に、空気流中で定量的に燃焼除去される。
【0010】
US-A 4,397,768には、無水フタル酸を製造するための触媒が記載されている。活性材料は、有機結合剤、たとえばビニルアセテート/ビニルラウレート、ビニルアセテート/アクリレート、スチレン/アクリレート、ビニルアセテート/マレエートまたはビニルアセテート/エチレンを用いて、不活性担体上に塗布する。結合剤を燃焼除去するために、触媒を反応器中で380℃で、1Nm/hの供給空気量で加熱する。
【0011】
DE-A 198 24 532から、被覆触媒を製造するための結合剤が公知であり、この場合、これは、エチレン性不飽和酸無水物のポリマーおよび少なくとも2個のOH基、多くとも2個の窒素原子および多くとも8個の炭素原子を有するアルカノールアミンをベースとする。結合剤添加量を消費させる際に、刺激臭があるか、あるいは、環境的に問題のある物質が放出されるかどうかを試験するために、触媒を空気の導入下で30℃〜610℃で、5℃/分の温度増加を伴って加熱する。
【0012】
本発明の課題は、酸化触媒の予備成形のための改善された方法を提供することである。特に、使用された結合剤の燃焼除去は最適化すべきである。さらに、結合剤の改善された燃焼除去方法によってコークスは最小限にすべきであり、かつ触媒の運転開始挙動を最適化すべきである。運転開始挙動の最適化は、たとえば、反応器の運転開始時に、顕著なホットスポットが第1の触媒帯域において形成されることにより達成される。
【0013】
したがって本発明は、酸化触媒を予備成形する方法を見出し、この場合、この方法は、触媒前駆物質を、供給空気量0.05〜5.0Nm/hを有する空気を含有する雰囲気中で、少なくとも350℃の温度で加熱し、かつ触媒前駆物質を、少なくとも9時間に亘って、少なくとも350℃で活性化することを特徴とする。
【0014】
本発明の範囲内で使用される用語「空気」とは、本質的に窒素、好ましくは75体積%を上廻る窒素含量を有する窒素および酸素、好ましくは15体積%を上廻る酸素含量を有する酸素から構成されるガスまたはガス混合物から成るものであると理解される。空気の由来する源に応じて、その組成は、当業者に一般によく知られる限界の範囲内で変動してもよい。空気源としては、好ましくは室内空気(Raumluft)を使用する。
【0015】
有利には、触媒前駆物質は、少なくとも370℃、好ましくは390〜470℃に加熱する。この温度は、好ましくは500℃の値を超過すべきではない。
【0016】
好ましい温度を達成した後に、触媒前駆物質は、好ましくは少なくとも9時間に亘ってこの温度で活性化し、たとえば少なくとも350℃で、有利には少なくとも370℃で、かつ特に390℃〜470℃である。有利には、少なくとも12時間に亘って、好ましくは少なくとも15時間に亘って、特に少なくとも24時間に亘って、前記温度で触媒前駆物質を活性化することは有利である。
【0017】
有利には、触媒前駆物質を3〜12℃/hの加熱速度で、好ましくは5〜10℃/hの加熱速度で加熱する。加熱工程を引き続いて25〜120時間に亘って、有利には40〜70時間に亘って継続する。
【0018】
使用された空気量は、有利には加熱の際に、0.05〜5.0Nm/hである。空気は同様に、不活性ガスで希釈されていてもよい。たとえば、空気を、空気と不活性ガスとの割合が1:0.1〜1:1、好ましくは1:0.1〜1:0.2の割合であるように希釈する。不活性ガスとして、当業者に公知のすべてのものを使用することができ、たとえば窒素、二酸化炭素、アルゴンおよび/またはヘリウムである。
【0019】
この加熱工程は、場合によっては、複数個の、好ましくは2から10個の下位の工程に区分することができる。
【0020】
たとえば、この加熱工程は、3個の下位の工程に区分する場合には:第一の加熱工程において、触媒前駆物質を約室温から80〜120℃までの低い温度で、好ましくは0.05〜3Nm/h、好ましくは0.1〜1Nm/hの少ない空気量の使用下で加熱し;第2の加熱工程において、触媒前駆物質を、約80〜120℃から250〜290℃までの平均温度で、好ましくは1〜4.5Nm/h、特に2〜4Nm/hの平均空気量の使用下で加熱し;かつ第3の加熱工程において、触媒前駆物質を、約250〜290℃から350〜470℃の高い温度で、好ましくは0.05〜2.5Nm/h、特に0.05〜1.5Nm/hの少ない空気量の使用下で加熱する。
【0021】
場合によっては、それぞれの工程後であるか、あるいは、それぞれの工程内において、停止帯域が存在していてもよく、この場合、この帯域は、触媒前駆物質を好ましい時間、たとえば10〜120分に亘って、達成すべき温度に維持する。
【0022】
工程の制御が80〜120℃から250〜290℃までの温度範囲であることは特に重要であり、それというのも、本質的にこの温度範囲において、結合剤の放熱性の燃焼除去が生じるためである。この工程は、場合によっては少ない加熱速度で、たとえば1時間当たり3〜10℃、好ましくは1時間当たり3〜5℃で加熱することができる。さらに、この工程は、場合によっては一定温度の複数個の帯域を包含する(プラトー温度)。特に、プラトー温度は、使用された結合剤の熱分解の温度範囲であることが有利である。
【0023】
場合によっては、触媒前駆物質の加熱の際に、空気供給を短い時間中断することができる。
【0024】
使用された空気量は、活性の際に、好ましくは0.05〜5.0Nm/h、さらに好ましくは0.05〜3Nm/hおよび特に好ましくは0.05〜1Nm/hである。加熱に関して前記に示したように、さらに活性化の際に、空気を不活性ガスで希釈することができる。少なくとも9時間の活性化中において、空気量は一定に維持されるか、増加または減少してもよい。有利には空気量は、活性化中において増加するかまたは一定に維持される。たとえば、空気量は2〜4時間後に、有利には0.05〜0.2から0.7〜1Nm/hまで増加してもよい。空気量の増加は、場合によっては、不活性ガスを用いての希釈によって達成することができる。
【0025】
予備成形は、好ましくは空気雰囲気中で、エダクトを装填することなく実施する。
【0026】
通常、予備成形は、0〜0.45bar(g)の入口の圧力の範囲内で実施する。
【0027】
予備成形は、好ましくは塩浴中で加熱/冷却された固床反応器中で実施する。固床反応器は、有利には、主反応器、この場合、これは多帯域の触媒系からなり、かつ場合によっては後続のフィニッシング反応器を備えている。主反応器の後方に、好ましくはガス冷却器および形成された生成物を分離するための装置が配置されているか、あるいは、ガス冷却器の後方に、最終反応器、場合によってはさらなるガス冷却器および形成された生成物を分離するための装置が配置されている。形成された生成物は、たとえば脱昇華または適したガス洗浄によって得ることが可能である。予備成形の際に、空気流は、有利には主反応器の直後で、すなわちガス冷却器の直前で分離する。分離は、すべての当業者に公知の方法にしたがって実施することができる。
【0028】
結合剤として、すべての当業者に公知の結合剤を使用することができる。たとえば、コポリマーは、有利には水性分散液の形で、ビニルアセテート/ビニルラウレート、ビニルアセテート/アクリレート、スチレン/アクリレート、ビニルアセテート/エチレンならびにアクリル酸/マレイン酸から成るか、あるいは、α−オレフィンおよびビニルC〜C−カルボキシレートのコポリマーであり、その際、ビニルC〜C−カルボキシレート含量は少なくとも62モル%である、を使用する。好ましくは、α−オレフィンおよびビニル−C〜C−カルボキシレートからなるコポリマー、その際、ビニル−C〜C−カルボキシレート含量は少なくとも62モル%である、を使用し、この場合、これは、DE-A 103 35 346に記載されている。
【0029】
結合剤は、水性分散液として市販されているたとえば35〜65質量%の固体含量を有するものである。このような結合剤分散液の使用量は、使用された懸濁液量に対して、好ましくは1〜30質量%である。好ましくは1〜20質量%、好ましくは3〜12質量%を使用する。
【0030】
約1〜5質量%のわずかな結合剤量の使用下で、空気量を、第2の工程中で、80〜120℃から250〜290℃までの温度範囲で、0.01〜2Nm/hに減少させることができる。さらに空気量は、第3の工程中で、250〜290℃から350℃〜470℃の温度範囲で、0.05〜1Nm/hに減少させることができる。場合によっては、250〜290℃から350℃〜470℃の温度範囲で、空気供給を省略することができる。
【0031】
約15〜30質量%の高い結合剤量の使用下で、80〜120℃から250〜290℃までの温度範囲で、1時間当たり1〜5℃のゆっくりとした加熱速度を選択することができる。さらに空気量は、場合によっては不活性ガスで希釈する。
【0032】
触媒前駆物質の製造は当業者に公知であり、たとえばWO 2005 30380に記載されている。触媒材料として、当業者に公知のすべての組成物を使用することができ、これらは、たとえばWO 2004 103944に記載されている。
【0033】
触媒活性材料で触媒担体を被覆する場合には、通常、被覆温度を75〜120℃を適用し、その際、被覆は、大気圧下または減少した圧力下で実施することができる。
【0034】
触媒活性材料の層厚は、一般には0.02〜0.25mm、好ましくは0.05〜0.20mmである。触媒に対する活性材料の量は、通常は5〜25質量%であり、多くとも7〜15質量%である。
【0035】
さらに本発明は、本発明による方法にしたがって製造された酸化触媒に関する。たとえば本発明は、芳香族炭化水素、たとえばベンゼン、キシレン、ナフタレン、トルエン、ジューロールまたはβ−ピコリンの接触気相酸化によって、カルボン酸および/またはカルボン酸無水物を製造するための酸化触媒に関する。この方法において、たとえば、安息香酸、マレイン酸無水物、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸無水物またはナイアシンを得ることができる。
【0036】
さらに安息香酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸無水物またはナイアシンを製造する方法は、一般に公知である。
【0037】
本発明による予備成形の方法は、適切に定義された予備成形工程を遵守することで技術水準の方法とは異なる。本発明による予備成形方法によって、結合剤の改善された分離およびそれによる最適化された運転開始挙動を達成することができる。
【0038】
フタル酸無水物−触媒の場合において、実施例において、本発明による触媒が比較例の触媒に対して、以下の利点(第2表参照)を有することを示す:
−低い塩浴温度の場合のフタリド濃縮に関係する改善された生成物の質、
−改善されたフタル酸無水物(PSA)−収量および
−短縮したランニングアップ(Hochfahr)時間(相対的に高いo−キシレン−装填量g/Nmを達成するまでの時間)。
【0039】
実施例
A 触媒の製造
A1 触媒1の製造
第1の触媒−帯域:帯域1.1
29.3gのアナターゼ(BET−OF 7m/g)、69.8gのアナターゼ(BET−OF 20m/g)、7.8gのV、1.9gのSb、0.49gのCsCOを550mlの脱イオン水中に懸濁し、かつ18時間に亘って撹拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートおよびビニルラウレートからなるコポリマー(質量比75:25)から成る50gの有機結合剤を、50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続いて得られた懸濁液を、外径7mm、長さ7mmおよび壁厚1.5mmを有するリング形状の1200gのステアタイト(珪酸マグネシウム)上に噴霧し、かつ乾燥させた。分析試料は、この方法で塗布された触媒活性材料が、450℃で1時間に亘ってのか焼後に、7.1質量%のバナジウム(Vとして算定されたもの)、1.8質量%のアンチモン(Sbとして算定されたもの)および0.36質量%のセシウム(Csとして算定されたもの)を含有することを示した。TiO混合物のBET表面積は15.8m/gであった。塗布された被覆の質量は、完成した触媒の全質量の8%であった。
【0040】
第2の触媒−帯域:帯域2.1
24.6gのアナターゼ(BET−OF 7m/g)、74.5gのアナターゼ(BET−OF 20m/g)、7.8gのV、2.6gのSb、0.35gのCsCOを550mlの脱イオン水中に懸濁し、かつ18時間に亘って撹拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートおよびビニルラウレートからなるコポリマー(質量比75:25)から成る50gの有機結合剤を、50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続いて得られた懸濁液を、外径7mm、長さ7mmおよび壁厚1.5mmを有するリング形状の1200gのステアタイト(珪酸マグネシウム)上に噴霧し、かつ乾燥させた。
【0041】
分析試料は、この方法で塗布された触媒活性材料が、450℃で1時間に亘ってのか焼後に、7.1質量%のバナジウム(Vとして算定されたもの)、2.4質量%のアンチモン(Sbとして算定されたもの)および0.26質量%のセシウム(Csとして算定されたもの)を含有することを示した。TiO混合物のBET表面積は16.4m/gであった。塗布された被覆の質量は、完成した触媒の全質量の8%であった。
【0042】
第3の触媒−帯域:帯域3.1
24.8gのアナターゼ(BET−OF 7m/g)、74.5gのアナターゼ(BET−OF 20m/g)、7.8gのV、2.6gのSb、0.13gのCsCOを、550mlの脱イオン水中に懸濁し、かつ18時間に亘って撹拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートおよびビニルラウレートからなるコポリマー(質量比75:25)から成る50gの有機結合剤を、50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続いて得られた懸濁液を、外径7mm、長さ7mmおよび壁厚1.5mmを有するリング形状の1200gのステアタイト(珪酸マグネシウム)上に噴霧し、かつ乾燥させた。
【0043】
分析試料は、この方法で塗布された触媒活性材料が、450℃で1時間に亘ってのか焼後に、7.1質量%のバナジウム(Vとして算定されたもの)、2.4質量%のアンチモン(Sbとして算定されたもの)および0.10質量%のセシウム(Csとして算定されたもの)を含有することを示した。TiO混合物のBET表面積は16.4m/gであった。塗布された被覆の質量は、完成した触媒の全質量の8%であった。
【0044】
第4の触媒−帯域:帯域4.1
17.2gのアナターゼ(BET−OF 7m/g)、69.1gのアナターゼ(BET−OF 20m/g)、21.9gのV、1.5gのNHPOを550mlの脱イオン水中に懸濁し、かつ18時間に亘って撹拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートおよびビニルラウレートからなるコポリマー(質量比75:25)から成る50gの有機結合剤を、50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続いて得られた懸濁液を、外径7mm、長さ7mmおよび壁厚1.5mmを有するリング形状の1200gのステアタイト(珪酸マグネシウム)上に噴霧し、かつ乾燥させた。
【0045】
分析試料は、この方法で塗布された触媒活性材料が、450℃で1時間に亘ってのか焼後に、20.00質量%のバナジウム(Vとして算定されたもの)および0.38質量%のリン(Pとして算定されたもの)を含有することを示した。TiO混合物のBET表面積は20.9m/gであった。塗布された被覆の質量は、完成した触媒の全質量の8%であった。
【0046】
A2 触媒2および3の製造
第1の触媒−帯域:帯域1.2
懸濁液1:
150kgのステアタイトを、8mm×6mm×5mm(外径×高さ×内径)の寸法を有するリング形状で、流動床装置中で加熱し、かつBET表面積21m/gを有する155.948kgのアナターゼ、13.193kgの五酸化バナジウム、35.088kgのシュウ酸、5.715kgの三酸化アンチモン、0.933kgのリン酸水素アンモニウム、0.991gの硫酸セシウム、240.160kgの水および49.903kgのホルムアミドを含有する懸濁液24kgと一緒に、48質量%濃度の水性分散液の形の37.5kgの有機結合剤、この場合、これは、アクリル酸/マレイン酸(質量比75:25)のコポリマーを含有するもの、を噴霧した(すなわち、7.5質量%の結合剤分散液)。
【0047】
懸濁液2:
150kgの得られた被覆触媒を、流動床装置中で加熱し、かつBET表面積21m/gを有する168.35kgのアナターゼ、7.043kgの五酸化バナジウム、19.080kgのシュウ酸、0.990gの硫酸セシウム、238.920kgの水および66.386kgのホルムアミドを含有する懸濁液24kgと一緒に、48質量%の水性分散液の形の37.5kgの有機結合剤、この場合、これは、アクリル酸/マレイン酸(質量比75:25)のコポリマーを含有するもの、を噴霧した(すなわち、7.5質量%の結合剤分散液)。
【0048】
1時間に亘っての450℃での熱処理後に、分析試験体は、これらの方法で塗布された触媒活性材料が、0.08質量%のリン(Pとして算定されたもの)、5.75質量%のバナジウム(Vとして算定されたもの)、1.6質量%のアンチモン(Sbとして算定されたもの)、0.4質量%のセシウム(Csとして算定されたもの)および92.17質量%の二酸化チタンを含有することを示した。塗布された被覆の質量は、完成した触媒の全質量の9.3%であった。
【0049】
第2の触媒−領域:領域2.2
150kgのステアタイトを、8mm×6mm×5mm(外径×高さ×内径)の寸法を有するリング形状で、流動床装置中で加熱し、かつBET表面積21m/gを有する140.02kgのアナターゼ、11.776kgの五酸化バナジウム、31.505kgのシュウ酸、5.153kgの三酸化アンチモン、0.868kgのリン酸水素アンモニウム、0.238gの硫酸セシウム、215.637kgの水および44.808kgのホルムアミドを含有する懸濁液57kgと一緒に、アクリル酸およびマレイン酸のコポリマー(質量比75:25)を含有する33.75kgの有機結合剤(すなわち7.5質量%の結合剤分散液)を、塗布された被覆の質量が、完成した触媒の全質量の10.5%に達するまで噴霧した。この方法で塗布された触媒活性材料は、すなわち触媒被覆は、平均的に0.15質量%のリン(Pとして算定されたもの)、7.5質量%のバナジウム(Vとして算定されたもの)、3.2質量%のアンチモン(Sbとして算定されたもの)、0.1質量%のセシウム(Csとして算定されたもの)および89.05質量%の二酸化チタンを含有していた。
【0050】
B 触媒床
B1 触媒1
塔底から上方に、内径25mmを有する3.5mの長さの鉄管中に、それぞれ0.7mの触媒領域4.1、0.70mの触媒領域3.1、0.50mの触媒領域2.1および1.30mの触媒領域1.1を導入した。
【0051】
この鉄管を、温度調節のために塩溶融液で取り囲み;組み込み型の制御要素を備えた4mmの外径を有する熱電対さや(最大長さ上から2.2m)を、触媒温度測定に使用した。
【0052】
B2 触媒2および3
塔底から上方に、内径25mmを有する3.5mの長さの鉄管中に、それぞれ1.30mの触媒領域2.2および1.50mの触媒領域1.2を導入した。この鉄管を、温度調節のために塩溶融液で取り囲み;組み込み型の制御要素を備えた4mmの外径を有する熱電対さや(最大長さ上から1.9m)を、触媒温度測定に使用した。
【0053】
C 触媒の予備成形
第1表は、触媒1および2の本発明による予備成形および比較触媒3の予備成形を示す。触媒は、連続的に管状反応器中で加熱し、その際、使用された空気量を、段階的に変更した。本発明による予備成形の際に、触媒1を400℃で、24時間に亘って、0.5Nm/hの供給空気量下でか焼した。触媒2を、390℃で、24時間に亘って、0.1Nm/hの供給空気量下でか焼した。比較触媒3を、390℃で、6時間に亘って、0.1Nm/hの供給空気量下でか焼した。
【0054】
【表1】

【0055】
D o−キシレンのPSAへの酸化
D1 触媒のモデル管試験
99.2質量%濃度のo−キシレン0〜100g/Nmの装填量を有する、毎時4.0Nm−空気を、塔底から上方に、反応器−管を通した。これに関して、45〜70gのo−キシレン/Nmの場合に、第2表中にまとめられた結果が得られた(「PSA収率」は、100%濃度のo−キシレンに対して得られる無水フタル酸の質量%を意味する)。
【0056】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化触媒を予備成形する方法において、触媒前駆物質を、供給された空気量0.05〜4.0Nm/hを含む空気を含有する雰囲気中で、少なくとも350℃の温度に加熱し、かつ触媒前駆物質を、少なくとも350℃で少なくとも9時間に亘って活性化することを特徴とする、酸化触媒を予備成形する方法。
【請求項2】
触媒前駆物質を、少なくとも350℃で少なくとも12時間に亘って活性化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒前駆物質を、少なくとも370℃で加熱し、かつ少なくとも370℃で活性化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
触媒前駆物質を、3〜12℃/hの加熱速度で加熱する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
活性化の際に供給される空気量が0.05〜3Nm/hに達する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
予備成形を、塩浴で加熱された固床反応器中で実施する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
触媒前駆物質の加熱が、3個の加熱工程を含み、その際、触媒前駆物質の第1の加熱工程において、室温から80〜120℃の温度に、0.05〜3Nm/hの空気量の使用下で加熱し、第2の加熱工程において、80〜120℃から250〜290℃に、1〜4.5Nm/hの空気量の使用下で加熱し、かつ、第3の加熱工程において、250〜290℃から350〜470℃に、0.05〜2.5Nm/hの空気量の使用下で加熱する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
固相反応器が、多領域主反応器および場合によりフィニッシング反応器を含み、その際、空気流を、予備成形の際に主反応器の直後で分離する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により得られる酸化触媒。
【請求項10】
安息香酸、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸無水物またはナイアシンを製造するための、酸化触媒の使用。

【公表番号】特表2008−542023(P2008−542023A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515195(P2008−515195)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062787
【国際公開番号】WO2006/131480
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】