説明

酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズ

本発明は、磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズを製造する方法であって、連続水性相及び分散有機相を有する分散液を作り、しかも該有機相は1種又はそれ以上の重合性モノマー、磁性酸化鉄粒子、及び該磁性酸化鉄粒子を該有機相中に分散するための有機リン分散剤を含み、そして該1種又はそれ以上の重合性モノマーを重合して該磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズを形成させることを含む方法;この方法により製造された錯化性及びイオン交換樹脂;該錯化性及びイオン交換樹脂を用いて水溶液から遷移金属イオン及び他のイオンを分離する方法;並びに磁性酸化鉄粒子と有機リン分散剤が実質的に一様に分散されているポリマーマトリックスを含むポリマービーズを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズ及びそれらの製造方法に関する。該ポリマービーズはイオン交換又は錯化性樹脂としての使用のために特に適しており、そして従って以下において本発明をこれらの用途に関して記載することが好都合であろう。しかしながら、該ポリマービーズは、他の用途にたとえば磁気細胞選別に、中性分子用吸収材料として又は磁気的安定化床におけるクロマトグラフ分離媒質として用いられ得る、ということが理解されるべきである。
【0002】
発明の背景
イオン交換/錯化は、水から有機及び無機化学種の両方を除去する技法として広く用いられている。これらの技法は、慣用的に、イオン交換/錯化性樹脂の充填床又はカラムに水を通すことを含む。標的化学種は、樹脂上に吸着又は錯化されることにより除去される。かかる樹脂は、通常、水から汚染物を除去するために用いられる。しかしながら、高容量処理用途における多くの市販樹脂の有効使用は、しばしば実行可能でない。特に、多くの市販樹脂は、短い接触時間にて有効に機能しない。それ故、適切な接触時間にてかなりの流量の水又は液体を処理することは、非常に大形のカラムの使用を必要とし、しかしてこれはしばしばその方法を不経済にする。
【0003】
磁性粒子が組み込まれている樹脂は、連続高流量を伴う用途に特に適していると記載されている。剪断の不存在下で、樹脂中の磁性粒子間の引力が樹脂ビーズを急速に凝集させそして沈降させ、しかしてかかる樹脂を厳しいプロセス条件下で容易に分離され得るようにする。従って、かかる樹脂は、充填床又は大形カラムを必要とすることなく有利に用いられ得る。磁性樹脂が有効に働くために、磁性粒子は、使用中の浸食又は溶解によるそれらの損失を防止する態様で樹脂中に組み込まれるべきである。こういう理由で、磁性粒子はポリマービーズの全体にわたって均一に分散されることが高度に望ましい。改善機械的強度が、均一な粒子分散の更なる利益である。
【0004】
加えて、使用についての取扱いの容易性のために、樹脂は、形態について実質的に回転楕円体又は楕円形であり、サイズについて実質的に一様であり、また非常に小さい粒子を含まないべきである。かかる性質が摩耗を最小にし、そしてまた乾燥樹脂又は水中の樹脂の濃厚懸濁液の流動特性を高め、その結果それは容易に計量供給又はポンプ輸送され得る。
【0005】
磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズの製造方法は、いくつかの先行技術の特許明細書に記載されている。たとえば、米国特許第2,642,514号明細書は、混合イオン交換樹脂を用いるイオン交換方法を開示する。該イオン交換樹脂の一つは、磁性樹脂である。磁性樹脂は、粘稠なシロップが得られるまで反応剤混合物を重合することにより作られる。マグネタイトを粘稠なシロップに添加し、そしてこの混合物を掻き混ぜてマグネタイトを混ぜ込む。この混合物を硬化して硬質樹脂を形成させ、そしてこの硬質樹脂を引き続いて粉砕して磁性樹脂の不規則な粒子を形成させる。
【0006】
欧州特許出願公開第0,552,856号明細書もまた、マグネタイトがポリマーマトリックスの全体にわたって分散されているポリマーを粉砕又は破砕することによる磁性イオン交換樹脂の製造を開示する。米国特許第2,642,514号明細書及び欧州特許出願公開第0,552,856号明細書に開示されたところの磁性イオン交換樹脂を作る方法は粉砕工程を必要とし、しかしてこれは該方法のコスト及び複雑さを増し、また粉砕工程中の所望粒子サイズ範囲外のポリマー粒子の形成に因る損失を増す。更に、粉砕粒子は形状について不規則であり、そして容易に摩滅される。
【0007】
磁性粒子が組み込まれているポリマービーズを作ることに関連した上記に挙げられた難点の多くは、オーストラリア国特許第704376号明細書に開示された方法を用いることにより克服され得る。この特許明細書は、モノマー、磁性粉末及び分散剤を含む分散有機相を重合することを含む水性懸濁重合法を記載する。重合中、分散剤はモノマーと反応して、樹脂内で共有結合されるようになる。この方法により、全体にわたって磁性粉末の均一な分布を有する球状ポリマービーズが作られ得る。
【0008】
しかしながら、オーストラリア国特許第704376号明細書に開示された方法によるポリマービーズ中への磁性酸化鉄粒子のような磁性粒子の組込みは、非効率であり得る。特に、この方法により、磁性酸化鉄粒子の有意な割合たとえば約5%が、重合中にポリマービーズから典型的には排除される。その結果、該方法の収率は低減され、また重合後の洗浄の複雑さが増す。
【0009】
従って、磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズを製造するためのより効率的な方法を開発するべき機会が残っている。
【0010】
発明の要約
一つの側面において、本発明は、磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズを製造する方法であって、連続水性相及び分散有機相を有する分散液を作り、しかも該有機相は1種又はそれ以上の重合性モノマー、磁性酸化鉄粒子、及び該磁性酸化鉄粒子を該有機相中に分散するための有機リン分散剤を含み、そして該1種又はそれ以上の重合性モノマーを重合して該磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズを形成させることを含む方法を提供する。
【0011】
更なる側面において、本発明は、磁性酸化鉄粒子と有機リン分散剤が実質的に一様に分散されているポリマーマトリックスを含むポリマービーズを提供する。
【0012】
本発明によるポリマービーズは、好ましくはマクロ孔質であり、しかして1種又はそれ以上のポロゲン(「多孔質化剤」)を分散有機相中に組み込むことにより製造される。
【0013】
驚くべきことに、有機リン分散剤は本発明の方法により磁性酸化鉄粒子を分散有機相中に有効に分散させるよう機能するのみならず、それらはまた重合中におけるポリマービーズ中への該粒子の組込みを高める、ということが今般見出された。従って、本方法により、典型的に用いられる粒子充填量の範囲にわたって、実質的にすべての磁性酸化鉄粒子が、重合中にポリマービーズ中に組み込まれ得る。それ故、ポリマービーズは優れた収率にて本方法により製造され得、また生じたビーズはより容易に清浄にされる。
【0014】
更に、本発明により製造されたマクロ孔質ポリマービーズは、それらの一様に分布された多孔性の故に高められた密度を示す。それ故、イオン交換/錯化性樹脂として用いられる場合、かかるポリマービーズは、有利なことに、より高い沈降速度及び機能容量を示す。
【0015】
好ましい具体的態様の説明
本明細書において用いられる場合、用語「磁性」は、磁化され得るようにするところの物質の性質を表すよう意図されている。従って、「磁性酸化鉄粒子」又は「磁性イオン交換/錯化性樹脂」への言及は、これらの物質がもしまだ磁化状態にないならば少なくとも磁化されることが可能であることを意味する。
【0016】
本発明の方法によれば、有機相は分散相である。有機相は、重合してポリマービーズのポリマーマトリックスを形成する1種又はそれ以上の重合性モノマーを含む。ポリマーマトリックスは2種(又はそれ以上)のモノマーを基剤としたコポリマーであることが好ましい。一般に、ポリマービーズは、
(a)架橋点を提供することができる架橋性モノマー、及び
(b)官能基を提供することができる官能性モノマー
から選択された重合性モノマーから製造される。
【0017】
本発明により用いられる有機相は、好ましくは、架橋性モノマー及び官能性モノマーを含む。特定のモノマーの選定は、一般に、ビーズが用いられることになっている予定用途により決められる。2種又はそれ以上の異なる架橋性モノマー及び/又は異なる官能性モノマーの組合わせもまた用いられ得る。
【0018】
ポリマービーズがイオン交換又は錯化性樹脂として用いられることになっている場合、有機相は、(a)直接的にポリマービーズにイオン交換若しくは錯化能力を与えるところの又は(b)イオン交換若しくは錯化能力をポリマービーズに付与する官能基を提供するべく反応され得るところの必要な官能基を提供する重合性モノマーを含む。
【0019】
ポリマービーズが錯化性樹脂として用いられることになっている場合、ビーズは遷移金属カチオンを錯化することが可能なアミン基を含むあるいはビーズは遷移金属カチオンを錯化することが可能なアミン基を提供するべき1種又はそれ以上の化合物と反応されることが好ましい。従って、ポリマービーズは、必要なアミン基を提供するアミン官能基化重合性モノマーを用いて製造され得る。その代わりに、ポリマービーズは、必要なアミン基を提供するべき1種又はそれ以上の化合物により転換され得る又は反応され得る官能基を提供する官能性モノマーを用いて製造され得る。
【0020】
錯化性アミン基を含む本発明のポリマービーズは、有利なことに、連続高流量条件下で無害のバックグラウンドイオンの存在下の水溶液から遷移金属を選択的に除去する能力を示す。
【0021】
ポリマービーズがイオン交換樹脂として用いられることになっている場合、ビーズはアミン基、第4級アンモニウム基又は酸性基(カルボン酸又はスルホン酸基のような)を含むあるいはビーズはかかる基を提供するべき1種又はそれ以上の化合物と反応されることが好ましい。従って、ポリマービーズは、必要なアミン、第4級アミン又は酸性基を提供するアミン又は酸性官能基化重合性モノマーを用いて製造され得る。その代わりに、ポリマービーズは、必要なアミン、アンモニウム又は酸性基を提供するべき1種又はそれ以上の化合物により転換され得る又は反応され得る官能基を提供する官能性モノマーを用いて製造され得る。
【0022】
当業者は、広範囲の官能性モノマーが本発明の方法に用いられ得ることを認識するであろう。
【0023】
ポリマービーズがイオン交換樹脂として用いられることになっている場合、適当なモノマーは、スチレン、メチルスチレン、メタクリル又はエタクリル酸、グリシジルメタクリレート、ビニルベンジルクロライド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びメタクリルアミド、ビニルピリジン、有機物に可溶なジアリルアミン又はビニルイミダゾール塩及びそれらの四級化誘導体、N−ビニルホルムアミド、並びにメチル及びエチルアクリレートを包含する。このリストは、網羅的でない。
【0024】
ポリマービーズが錯化性樹脂として用いられることになっている場合、適当なモノマーは、グリシジルメタクリレート、ビニルベンジルクロライド、メチル及びエチルアクリレート、N−ビニルホルムアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリルアミド及びメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びメタクリルアミド、ビニルピリジン、並びに有機物に可溶なジアリルアミン又はビニルイミダゾール塩を包含する。このリストは、網羅的でない。
【0025】
用いられる場合、架橋性モノマーは、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート又はポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、エチレングリコールジビニルエーテルのようなジビニルモノマー、及び2個又はそれ以上の二重結合を有するポリビニルエステル化合物(しかしそれらに限定されない)を包含する広範囲のモノマーから選択され得る。
【0026】
ビス(ジアリルアミノ)アルカン又はビス(アクリルアミドエチル)アミンのようないくつかのモノマーは、架橋性モノマー及び官能性モノマーの両方として機能し得る。
【0027】
ビーズのポリマーマトリックスは、コポリマーマトリックスであり得る。従って、架橋性モノマー及び官能性モノマーと共重合させるために、他のモノマーが有機相中に含められ得、しかしてたとえば主鎖モノマーが含められ得る。
【0028】
主鎖モノマーは、フリーラジカル重合により重合され得るいかなるモノマーも包含し、しかしてスチレン、メチルスチレン(すなわち、o−、m−又はp−メチルスチレン)、メチルメタクリレート及び他のアクリレート、メタクリレート、並びにそれらの組合わせを包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0029】
本発明の方法は、酸化鉄磁性粒子を分散相中に分散するための有機リン分散剤を利用する。分散剤は、磁性粒子を分散相の液滴中に分散させて分散相中の磁性粒子の安定な分散液(又は懸濁液)を形成させるように働き、しかして次いで生じるポリマービーズの全体にわたって磁性粒子の実質的に均一な分布を促進する。それ故、磁性粒子がビーズの外面上にのみある場合に起こり得るような、使用中のポリマービーズからの磁性粒子の浸食の問題は、回避されるか又は少なくとも軽減される。
【0030】
本発明の方法による有機リン分散剤の使用はまた、重合中における磁性酸化鉄粒子の組込みを高める。理論により限定されたくないが、分散剤内に含有されているリン基が磁性酸化鉄粒子の表面に結合し、そしてこの結合効果は重合中の分散有機相内の分散剤の保留と相まって、生じるポリマービーズ中の磁性粒子の高められた組込みを奏する、ということが信じられる。
【0031】
それ故、重合中の磁性酸化鉄粒子の組込みを高めるべき特定の有機リン分散剤の能力は、分散剤の磁性酸化鉄粒子との結合容量並びに分散剤、粒子、分散有機相及び連続水性相の極性特性により影響されると信じられる。
【0032】
有機リン分散剤は、好ましくは、磁性酸化鉄粒子の表面に結合する1個又はそれ以上のホスフェート、ホスホン酸又はホスホネート基を含む。有機リン分散剤はまた、かかる基の組合わせを含有し得る。
【0033】
有機リン分散剤は、好ましくは、イオン化されているか又はイオン化されることが可能である。いかなる疑いも避けるために、「イオン化」されている有機リン分散剤により、該剤のリン部分たとえばホスフェート、ホスホン酸又はホスホネート基がイオン化されている(すなわち、塩の形態にある)ことが意味される。「イオン化されることが可能」である又は「イオン化性」である有機リン分散剤により、該剤のリン部分たとえばホスフェート、ホスホン酸又はホスホネート基が水溶液中でイオン化することが可能であることが意味される。当業者は、「イオン化」リン部分は典型的には対カチオンたとえば金属カチオン又は有機カチオンを含むこと、並びに「イオン化性」リン部分は典型的には1個又はそれ以上の酸性プロトンを含むことを認識するであろう。
【0034】
当業者はまた、有機リン分散剤が塩の形態にて提供され得る様々なやり方を認識するであろう。たとえば、ホスホン酸又はイオン化性ホスフェートエステルの酸性プロトンは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化マグネシウム若しくは炭酸水素ナトリウムのような金属の酸化物、水酸化物若しくは炭酸塩で、又はイソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン若しくは水酸化テトラメチルアンモニウムのような有機塩基で中和され得る。イオン化リン部分は、その場合には無論、中和反応剤に由来する対カチオンの電荷と釣り合っているアニオン電荷を担持する。
【0035】
重合中において連続水性相に優先して分散有機相内に保留されるべき有機リン分散剤の能力は、典型的には、分散有機相の特質及び分散剤の有機成分の特質の両方に依存する。当業者は、所与分散剤を特定の分散有機相内に優先的に保留され得るようにする様々な有機成分の特性を容易に認識するであろう。
【0036】
有機リン分散剤の好ましい有機成分又は置換基は、C4からC40好ましくはC8からC18の線状又は分枝状アルキル基、脂肪酸又はアルコール残基及びそれらのエトキシル化誘導体、芳香族又はフェノール基及びそれらのエトキシル化誘導体、アルキル化芳香族又はフェノール基及びそれらのエトキシル化誘導体、並びに有機物に可溶なポリエステル又はポリアミド鎖を包含するが、しかしそれらに限定されない。分散剤の特に好ましい有機置換基は、C8からC18の線状又は分枝状アルキル基及びそれらのエトキシル化誘導体から独立に選択される。
【0037】
好ましい有機リン分散剤は、イオン化性ホスフェートエステル基、ホスホン酸基及びそれらの塩から選択されたリン基を含む。当業者は、ホスホン酸基の塩はホスホネート基と普通称されることを認識するであろう。
【0038】
特に好ましい有機リン分散剤は、イオン化性ホスフェートエステル基、ホスホン酸基及びそれらの塩から選択されたリン基、並びにC8からC18の線状又は分枝状アルキル基及びそれらのエトキシル化誘導体から独立に選択された1個又は2個のどちらかの有機置換基を含む。イオン化性ホスフェートエステル基又はホスホン酸基及び1個の該有機置換基を有する有機リン分散剤は典型的にはそれ故各々2個のイオン化性プロトンを有し、そしてイオン化性ホスフェートエステル基又はホスホネートエステル基及び2個の該有機置換基を有する有機リン分散剤は典型的にはそれ故各々1個のイオン化性プロトンを有する。
【0039】
当業者は、数多くの有機リン分散剤が商業的に販売されていることを認識するであろう。かかる分散剤は、典型的には、処方物の形態で提供され、しかして分散剤それ自体は処方物全体の一部のみを成す。これらの市販処方物は、有利なことに、これらの処方物のその他の成分がポリマービーズを製造する方法又は生じるポリマービーズの性質に悪影響を及ぼさない限り本発明により用いられ得る。
【0040】
好ましい市販有機リン分散剤は、Aveciaにより販売されているSolsperse(登録商標)61.000、Huntsmanにより販売されているTeric(登録商標)305及びAlkanate(登録商標)40PF、Cognisにより販売されているCrafol(登録商標)AP12、AP60及びAP69、Henkelにより販売されているDisponil(登録商標)AEP8100及びAEP5300並びにRhodiaにより販売されているRhodafac(登録商標)PE501を包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0041】
イオン交換又は錯化性樹脂としてのポリマービーズにより処理される水からの汚染物の除去効率を増加させるために、ポリマービーズはマクロ孔質であることが好ましい。これは、接触に利用可能な各ビーズの全表面積を増加させる。本発明によるマクロ孔質ポリマービーズを生成させるために、分散相は、1種又はそれ以上の多孔質化剤を含むべきである。多孔質化剤は分散相を形成する液滴の全体にわたって分散されるようになるが、しかし多孔質化剤は重合反応に参加しない。従って、重合反応が完了された後、多孔質化剤はポリマービーズからたとえば洗浄又は水蒸気ストリッピングにより除去されて、ポリマービーズ中にマクロ多孔性をもたらし得る。
【0042】
驚くべきことに、有機リン分散剤が本発明の方法に1種又はそれ以上の多孔質化剤と一緒に含められる場合、生じるマクロ孔質ポリマービーズは、有機リン分散剤の不存在下で製造されたマクロ孔質ポリマービーズと比較してより高い密度を有する、ということが分かった。これらのマクロ孔質ポリマービーズの増加密度は、それらの微細な且つ実質的に一様な多孔質構造に帰せられ得る。増加密度は、有利なことに、イオン交換/錯化性樹脂としてのより高い機能容量をポリマービーズに付与する。より多くの官能基が所与容積の定着樹脂又は所与サイズの容器内に含有されるので、樹脂のコスト効率は高められる。
【0043】
本発明の方法に用いるための適当な多孔質化剤は、トルエン及びベンゼンのような芳香族化合物、ブタノール、イソオクタノール、シクロヘキサノール、ドデカノール、イソアミルアルコール、第3級アミルアルコール及びメチルイソブチルカルビノールのようなアルコール、エチルアセテート及びブチルアセテートのようなエステル、n−ヘプタン、イソオクタンのような飽和炭化水素、ジクロロエタン及びトリクロロエチレンのようなハロゲン化溶媒、ジオクチルフタレート及びジブチルアジペートのような可塑剤、ポリスチレン及びポリビニルアセテートのようなポリマー、並びにそれらの混合物を包含する。シクロヘキサノールと、ドデカノール又はトルエンのような他の多孔質化剤との混合物は、本発明の方法において多孔質化剤として用いるために特に適していると分かった。多孔質化剤の上記のリストは網羅的でないこと、並びに本発明は他の多孔質化剤及び多孔質化剤の他の組合わせの使用を包含することが認識されるであろう。
【0044】
ポリマービーズ中への酸化鉄磁性粒子の組込みは、該ビーズが磁性になる結果になる。処理される溶液又は液体からビーズを好都合に分離するために、磁気分離技法が用いられ得る。その代わりに、ビーズは、重力下での沈降(磁気凝集により有利に加速される)により分離され得る。適当な磁性酸化鉄粒子は、γ−酸化鉄(γ−Fe23,マグヘマイトとしても知られている)及びマグネタイト(Fe34)を包含するが、しかしそれらに限定されない。Zn、Ba、Mn、等との混合酸化物であるフェライトもまた用いられ得る。磁気的に硬い又は軟らかいフェライトが好ましいかどうかは、用いられるべき磁気分離技法に依存する。酸化鉄は、それらの粒子サイズを制御することにより、フェリ磁性又は超常磁性形態で作られ得る。安価である故、マグヘマイトが特に好ましい。
【0045】
磁性物質は本方法中に粒子の形態で添加され、そしてそれは添加時に磁化されてもされなくてもよい。粒子の粒子サイズは、本発明の方法において形成されるポリマービーズの粒子サイズの10分の1までであるサイズまでの範囲にあり得る。それより大きい粒子は、ポリマービーズ中に均一に分散するのが困難であり得る。磁性物質の粒子は、サイズについて、一層好ましくはサブミクロン(たとえば0.1μm)から50μm最も好ましくは0.1μmから10μmの範囲にある。
【0046】
本発明の方法は、好ましくは、懸濁重合反応により遂行され、そしてかかる反応を制御及び監視するために当業者に知られた技法が本発明に適用される。分散相を連続相中の懸濁液滴の形態に維持する一方、液滴の凝集を避けるために、安定剤が好ましくは用いられる。適当な安定剤は、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース又はナトリウムポリアクリレートを包含し得るが、しかしそれらに限定されない。本発明は、使用のために適当であり得るいかなる安定剤もカバーするようにわたっている、ということが理解されるべきである。安定剤は、典型的には、混合物全体の重量を基準として0.01から5.0重量%そして好ましくは0.05から2.0重量%の量にて存在する。
【0047】
重合反応を開始するために、開始剤を用いることも一般に必要である。用いられるべき開始剤は反応混合物中に存在するモノマーに依存し、そして開始剤の選択及び所要量は当業者に容易に明らかであろう。例としてのみにて、適当な開始剤は、アゾイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド及びt−ブチルヒドロペルオキシドを包含する。用いられる開始剤の量は、一般に、モノマーの総重量を基準として計算して0.01から5.0wt%一層好ましくは0.10から1.0%の範囲にある。
【0048】
本発明の好ましい具体的態様において、モノマー混合物は、全モノマーの重量を基準として10から99重量%、一層好ましくは50から90重量%(同じ基準)の量にて存在する官能性モノマーを含み得る。架橋性モノマーは、全モノマーの重量を基準として1から90重量%、一層好ましくは10から50重量%(同じ基準)の量にて存在し得る。追加的モノマーは、全モノマーの重量を基準として0から60重量%一層好ましくは0から30重量%の量にて存在し得る。全モノマーは、懸濁重合混合物全体の重量により1から50%一層好ましくは5から30%を構成し得る。
【0049】
磁性酸化鉄粒子は、好ましくは全モノマーの重量を基準として10から300wt%、一層好ましくは20から100重量%(同じ基準)の量にて添加される。有機リン分散剤は、磁性粒子の重量を基準として好ましくは0.10から30重量%一層好ましくは1から10重量%の量にて添加される。
【0050】
連続相中の分散相(モノマーを含む)の分散は、通常、有機相と水性相を混合しそして生じた混合物を剪断することにより達成される。分散相の液滴のサイズを制御するために、分散液に適用される剪断は調節され得る。分散相の液滴が重合されてポリマービーズを生成するので、分散液に適用される剪断は、ポリマービーズの粒子サイズを大いに制御する。一般に、ポリマービーズは、10から5000μmの範囲内好ましくは30から1000μmの範囲内の粒子サイズを有するように制御される。
【0051】
連続相中の分散相の安定な分散液が確立されると、この分散液を所望反応温度に加熱することにより、重合反応が開始される。重合反応が実質的に完了するまで、分散液は所望反応温度に保たれ得る。
【0052】
重合反応を行う際に、特定の用途に適合するポリマービーズをもたらすように、モノマーが選択される。たとえば、用いられるモノマーに依存して、生じるポリマービーズは、ポリマービーズをイオン交換又は錯化性樹脂として働き得るようにする酸又はアミン基を含み得、しかしてこれらの官能基は1種又はそれ以上の官能性モノマーの重合残基により直接的に提供される。
【0053】
直接的にアミン官能性をビーズに導入することが可能な官能性モノマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリルアミド及びメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド及びメタクリルアミド、ビニルピリジン、並びに有機物に可溶なジアリルアミン又はビニルイミダゾール塩を包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0054】
直接的に酸官能性をビーズに導入することが可能な官能性モノマーは、メタクリル及びエタクリル酸を包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0055】
その代わりに、重合が完了すると、生じたポリマービーズは、ポリマービーズをイオン交換又は錯化性樹脂として働き得るようにする官能基をもたらすべき後続処理を必要とし得る。用いられる特定の処理方法は、処理されるべきポリマービーズの組成に依存する。処理方法は、ポリマービーズと該ビーズ上に存在する官能基をイオン交換若しくは錯化性基に転換する1種若しくはそれ以上の化合物とを反応させる又は該ビーズ上の官能基と該ビーズにイオン交換若しくは錯化性基を導入する1種若しくはそれ以上の化合物とを反応させることを含み得る。
【0056】
ビーズ上の官能基がイオン交換又は錯化性基に転換される処理方法において、官能基は、好ましくは、アミン若しくは酸基又はそれらの塩又は第4級アンモニウム基に転換される。特質が当業者に知られている適当な官能基と反応体の様々な組合わせが、この目的のために用いられ得る。この場合において、ビーズ上の官能基はアミド又はエステル基であることが好ましく、そしてこれらのアミド又はエステル基はアミド又はエステル官能性モノマーによってポリマービーズに導入されることが一層好ましい。
【0057】
例示的アミド官能性モノマーは、N−ビニルホルムアミド又はN−メチル−N−ビニルアセトアミドを包含するが、しかしそれらに限定されない。アミド基は、加水分解、ホフマン分解又はボロヒドリド還元により、アミン基に容易に転換され得る。加水分解が好ましい技法である。たとえば、N−ビニルホルムアミド又はN−メチル−N−ビニルアセトアミドモノマー単位中のアミド基は、加水分解によりアミン基に転換され得る。アミン基は、塩又は第4級アンモニウム基に容易に転換され得る。
【0058】
例示的エステル官能性モノマーは、メチル、エチル又はブチルアクリレートを包含するが、しかしそれらに限定されない。エステル基は、加水分解により弱酸基に容易に転換され得る。たとえば、メチル、エチル又はブチルアクリレートモノマー単位中のエステル基は、加水分解により弱酸基に転換され得る。
【0059】
イオン交換又は錯化性基をビーズに導入する官能基を含有する1種又はそれ以上の化合物とビーズ上の官能基が反応される処理方法において、該1種又はそれ以上の化合物は、好ましくは、アミン又は第4級アンモニウム基を導入する。特質が当業者に知られている適当な官能基と反応用化合物の様々な組合わせが、この目的のために用いられ得る。この場合において、ビーズ上の官能基がハロゲン、エポキシド、エステル及びアミド(しかしそれらに限定されない)を含むことが好ましい。かかる官能基は適切な官能性モノマーによってポリマービーズに導入されることが好ましい。この目的のための例示的官能性モノマーは、ビニルベンジルクロライド、グリシジルメタクリレート、アクリレート若しくはメタクリレートエステル、又はアミド(上記に定められたとおり)を包含するが、しかしそれらに限定されない。かかる官能基は、アミン又は第4級アンモニウム基を導入する化合物と反応され得る。適当な反応体化合物は、アミン、ジアミン及びポリアミン化合物並びにそれらのそれぞれの塩を包含するが、しかしそれらに限定されない。アミン又は第4級アンモニウム基を導入するための好ましい化合物は、ビペリジン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン及びそれらのそれぞれの塩を包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0060】
アミン基を含むポリマービーズの錯化特性は、主として、それらの中に存在するアミン基の特質により決められる。かかるアミン基は、遷移金属カチオンとの錯化を受けるために容易に接近可能であるべきである。直接的重合又は後続処理のどちらかによりポリマービーズ中に含められるべきアミン基は、一般に、アルカリ及びアルカリ土類金属カチオンと錯化するべき親和力をほとんど又は全く有さないが、しかし遷移金属カチオンと容易に錯化し得る、ということが当業者により認識されるであろう。当業者はまた、ポリマービーズ中に含められるべきアミン基の選定が分離されるべき化学種の特質及び溶液中に存在するバックグラウンドイオンの特質の両方に依存することを認識するであろう。選択性は、窒素原子の立体的群集状態、窒素原子上の電子密度及びキレート錯体を形成するべき多窒素原子の利用可能性のような因子により影響され得る。
【0061】
ポリマービーズがイオン交換樹脂として用いられることになっている場合、重合反応が実質的に完了すると、ビーズは、随意に、イオン交換のための部位をポリマー中に導入するために処理され得、そしてこれらのビーズは回収され得る。ポリマービーズが処理される態様は、ビーズを製造するために用いられた官能性モノマーのタイプ及び溶液から分離されるべき化学種の特質に依存する。たとえば、ポリ(エチルアクリレート)ビーズの加水分解は、溶液からカドミウム及び亜鉛のような遷移金属イオンを分離するために適した弱酸カチオンイオン交換樹脂をもたらす。ポリマービーズのアミノ化又は四級化は、溶液からの酸性有機物質の除去のために適したイオン交換樹脂をもたらすために用いられ得る。当業者は、特定のポリマービーズにイオン交換特性を導入するために用いられ得る様々な反応剤及び条件を認識するであろう。
【0062】
ビーズは、使用前に清浄化を必要とし得る。これは、一連の洗浄工程により又はビーズを水蒸気ストリッピングすることにより達成され得る。
【0063】
ポリマービーズを清浄にする一つの方法は、次の工程を含む。すなわち、
(a)反応生成物を大過剰の水に添加し、撹拌し、そして沈降させ、
(b)ビーズを上澄み液から分離し、
(c)分離ビーズを大過剰の水に添加し、撹拌し、そして沈降させた後にビーズを上澄み液から分離し、
(d)工程(c)を数回繰り返し、
(e)随意に、水洗ビーズをアルコール(エタノール)中に分散し、
(f)ビーズをアルコールから分離し、そして乾燥する。
【0064】
別の清浄化手順は、多孔質化剤を水蒸気ストリッピングし、そして次いでポリマービーズを洗浄して遊離の固体粒状物質を除去することである。
【0065】
有利なことに、本発明の方法は、他の方法により製造されたビーズよりも清浄にすることが一般的に容易であるポリマービーズをもたらす。
【0066】
本発明の好ましい具体的態様において、ポリマービーズは、グリシジルメタクリレートとジビニルベンゼンのコポリマーとして形成される。モノマーは有機相中にあり、しかして該有機相はまた、多孔質化剤としてシクロヘキサノールとトルエン又はドデカノールとの混合物を含む。ポリビニルアルコールが、安定剤として用いられる。「ヴァゾ(VAZO)」67又はアゾイソブチロニトリル(AIBN)のようなフリーラジカル開始剤が重合開始剤として有機相に添加され、そしてγ−酸化鉄が磁性物質である。この系に用いるために好ましい有機リン分散剤は、商品名Crafol(登録商標)AP12下で販売されている。Crafol(登録商標)AP12は、疎水性アルキル鎖とエチレンオキシド単位及びホスフェートエステル基を含有する親水性末端基とで構成されたホスフェートエステル分散剤である。有機相の諸成分のすべては、好ましくは、別個のタンク中で予備混合されそして反応タンク中の水中に分散される。重合反応が実質的に完了すると、生じたポリマービーズは、錯化性又はイオン交換樹脂をもたらすために、引き続いてエポキシ基を通じてアミン又はその塩のような化合物と反応され得る。アミン化合物との反応は、加熱により促進又は加速され得る。
【0067】
本発明の別の好ましい具体的態様において、ポリマービーズはまた、強化剤が組み込まれる。強化剤は、ポリマーの耐衝撃性を増加するように選択される。増加耐久性を備えたポリマービーズをもたらすために、ポリマー材料の靱性を増加するための一般的技法が本発明の方法において容易に用いられ得る。たとえば、グリシジルメタクリレートを基剤としたポリマービーズの強度及び耐久性を改善するために、ゴム強化剤が用いられ得る。これらのゴム強化剤の使用は、ポリマービーズの改善耐久性及び増加実用寿命をもたらすことになると信じられる。ゴム強化剤は、低分子量ゴム(分散相中に組み込まれ得る)を包含する。特に好ましいゴム強化剤は商品名Kraton(登録商標)D1102下で販売されているけれども、他の商業的に入手できるゴム強化剤も用いられ得る。
【0068】
別の側面において、本発明は、水溶液から遷移金属イオンを分離する方法であって、該溶液を本発明により製造された錯化性樹脂のポリマービーズと接触させることを含む方法を提供する。錯化遷移金属イオンを含むポリマービーズは、次いで、ビーズの磁気特性を利用して溶液から分離され得る。たとえば、剪断の不存在下で、ビーズは、磁気引力によって凝集しそして処理溶液から沈降し得る。その代わりに、それらは、湿式強力磁気分離機若しくは磁気ドラム分離機又は同様な装置で分離され得る。
【0069】
更なる側面において、本発明は、水溶液からイオンを分離する方法であって、該溶液を本発明により製造されたイオン交換樹脂のポリマービーズと接触させることを含む方法を提供する。ポリマービーズは吸着イオンと一緒に、次いで、ビーズの磁気特性を利用して溶液から分離され得る。たとえば、剪断の不存在下で、ビーズは、磁気引力によって凝集しそして処理溶液から沈降し得る。その代わりに、それらは、湿式強力磁気分離機若しくは磁気ドラム分離機又は同様な装置で分離され得る。水溶液から分離され得るアニオンの例は、フミン酸塩及びフルボ酸塩、クロム酸塩、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、セレン酸塩、亜セレン酸塩、リン酸塩及び過塩素酸塩のような溶存有機物を包含するが、しかしそれらに限定されない。水溶液から分離され得るカチオンの例は、上記に挙げられた遷移金属以外に、カルシウム及びマグネシウムを包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0070】
磁性酸化鉄粒子は本発明のポリマービーズの全体にわたって分散されているので、これらの磁性粒子はビーズから容易には除去されず、そしてこれによりビーズはビーズからの固体粒子の実質的浸食なしに、運搬、ポンプ輸送及び混合のような多数の取扱い操作に付されることが可能にされる。
【0071】
本発明は、本発明により製造されたポリマービーズを含むイオン交換又は錯化性樹脂を更に提供する。
【0072】
本発明は、次の非限定的実施例に関して更に記載される。
【0073】
一般的実験手順1
10.23gのマグヘマイトを11.52gのシクロヘキサノールに添加し、そして次いで激しく撹拌しながら候補分散剤を増分的に添加することにより、有機媒質中に磁性酸化鉄を分散する際の種々の有機リン化合物の有効性を査定した。対照として、シクロヘキサノール及びDisperbyk(登録商標)163を用いた。2.6gまでの量のシクロヘキサノールの添加はマグヘマイトを分散させることができなかった(マグヘマイトは凝集したままであった)のに対して、0.8gのDisperbyk(登録商標)163(Byk Chemieから入手できる)は好都合なほど低い粘度の均質な分散液をもたらした。トリブチルホスフェート及びトリオクチルホスフェートにより代表されたトリアルキルホスフェートは、トリオクチルホスフィンオキシドである別の非イオン化性有機リン化合物がマグヘマイトを分散させたような7gまでの量にて添加された場合、マグヘマイトを分散させることができなかった。
【0074】
対照的に、イオン化性オルガノホスフェートエステルであるリン酸水素ジブチル及びリン酸水素ビス(2−エチルヘキシル)は、約2.5から2.8gにて添加された場合、シクロヘキサノール中のマグヘマイトの中くらいに粘稠な分散液をもたらした。Teric(登録商標)305(Huntsmanから入手できる)及びCrafol(登録商標)AP12(Cognisから入手できる)のような、有機成分がエトキシル化アルキル鎖であるイオン化性オルガノホスフェートエステルは、活性成分に基づいて約0.7gにて添加された場合、同様な粘度の均質な分散液をもたらした。
Teric(登録商標)305、Crafol(登録商標)AP15及びDisperbyk(登録商標)163の特質に関しての更なる詳細は、下記に与えられている。
【0075】
一般的実験手順2
次の原料を用いてグリシジルメタクリレートを基剤としたポリマービーズを製造及び官能基化することにより、イオン交換ポリマービーズ中に磁性酸化鉄を分散及び保留する際の種々の分散剤の有効性を査定した。
1. 水: これは、有機相が分散されそして次いで反応されるところの連続媒質である。
2. Gohsenol(登録商標)GH17又はGH20(日本合成から入手できる): これは、有機相を水中に液滴として分散させるところの、ポリビニルアルコールである高分子量ポリマー界面活性剤である。
3. シクロヘキサノール: これは、主要な多孔質化剤である。それはモノマーに対して溶媒であるが、しかしポリマーに対して非溶媒であり、そしてそれは樹脂ビーズにおけるボイド及び内部多孔性の形成を促進する。
4. トルエン: これは、副次的多孔質化剤である。
5. 酸化鉄粒子を分散するための選定分散剤。
6. Pferrox(登録商標)2228HC,γ−Fe23(Pfizerから入手できる): ガンマ酸化鉄(マグヘマイト)。これは、樹脂ビーズを磁性にする磁性酸化物である。
【0076】
7. Kraton(登録商標)D1102(Shell Chemical Companyから入手できる): これは、ポリマービーズを強化すために有機相中に組み込まれる低分子量ゴムである。
8. DVB−55(ジビニルベンゼン): これは、ビーズを架橋するモノマーである。
9. GMA(グリシジルメタクリレート): このモノマーは、重合されてポリマーマトリックスの一部を形成する。このモノマーの重合残基はマトリックス内のエポキシ基を提供し、しかしてこれらのエポキシ基は次のように引き続いて反応されてイオン交換樹脂を生成し得る。
【化1】

10. トリメチルアミン(TMA)塩酸塩: これは、グリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応して第4級アンモニウムイオン交換部位を形成する酸性化アミンである。その代わりに、錯化性樹脂が製造されることになっている場合、アミノ化はTMAの代わりにピペリジンを用いて行われ得る。
11. VAZO(登録商標)67(Dupontから入手できる): これは、混合物が60℃より高く加熱される時に活性化する重合開始剤である。
【0077】
方法
1. 水(168.9g)及びポリビニルアルコール(Gohsenol(登録商標)GH20,0.21g)を量り取り、そして250mL反応器に添加した。
2. 窒素下で80°〜85℃において1.5時間400rpmにて撹拌することにより、PVAを溶解した。
3. γ−酸化鉄(Pferrox(登録商標)2228HC,19.5g)をトルエン(3.75g)、シクロヘキサノール(28.85g)、ジビニルベンゼン(55%活性物,7.8g)及びGMA中の選定分散剤(1.73g活性物)の溶液に添加することにより、有機相を作製した。
4. スラリーを高速分散機で7分間分散した。
5. 随意に、ゴム溶液(Kraton(登録商標)D−1102,7.59g)を添加し、そして分散を更に2分間続行した。
6. トルエン(0.36g)中のヴァゾ(VAZO)67(0.15g)の溶液を更なるGMAと混合して、GMAの総量を31.2gにした。この混合物を有機相に添加した。
7. 次いで、有機物を水相に添加する一方、系を600rpmにて30秒間撹拌した。次いで、撹拌を350rpmに低減し、そして重合を2.5時間行った。
8. 重合後、窒素流を止めた。
9. トリメチルアミン塩酸塩(57%水溶液,29.43g)及び水(20mL)を反応器に添加しそして撹拌を更に3時間続行して、強塩基イオン交換官能性を導入した。
【0078】
実施例1: 分散剤=Teric(登録商標)305
分散剤としてTeric(登録商標)305を用いて、一般的実験手順2を遂行した。Teric(登録商標)305(Huntsmanから入手できる)は、エトキシル化アルキル鎖及びホスフェートエステル末端基を含有する。酸化鉄の実質的にすべてが樹脂ビーズ中に組み込まれ、しかして上澄み液を酸化鉄不含にすると分かった。酸化鉄はまた、ビーズの全体にわたって一様に分布されると分かった。0.2gのこの樹脂を0.5リットルの10mg/Lタンニン酸溶液(天然有機色素を含有する水をシミュレートする)に添加した場合、タンニン酸の24%が30分で樹脂により吸着され、そして65%が120分で吸着された。
【0079】
実施例2: 分散剤=Alkanate(登録商標)40PF
分散剤としてAlkanate(登録商標)40PFを用いて、一般的実験手順2を遂行した。Alkanate(登録商標)40PF(Huntsman)は、組成についてTeric(登録商標)305と同様なホスフェート含有分散剤である。酸化鉄はビーズ中に一様に分布されると分かり、また上澄み液中の酸化鉄の量は非常に低い(全酸化鉄の1%未満)と分かった。
【0080】
実施例3: 分散剤=アルキルエトキシレートホスフェートエステル
異なる長さの疎水性アルキル鎖と、ホスフェートエステル基により終端されたエチレンオキシドブロックから成る親水性末端基とを有する分散剤を用いて、一般的実験手順2を遂行した。かかる分散剤は、CognisからCrafol商標下で入手できる。Crafol(登録商標)AP12、AP60及びAP69はすべて、一般的実験手順2における分散剤として用いられた場合、優秀な酸化鉄保留及び一様な分布を示した。上澄み液は、実質的に全く遊離酸化物を含有していなかった。
【0081】
比較例1: 分散剤=Teric(登録商標)17A10及び17A25
分散剤としてTeric(登録商標)17A10又は17A25を用いて、一般的実験手順2を遂行した。Teric(登録商標)17A10及び17A25(Huntsman)は、それぞれアルコールのモル当たり10及び25モルのエチレンオキシドを有するC16~18アルコールエトキシレートである。それ故、それらがリンを含有しないこと以外は、それらは実施例1〜3において用いられた分散剤と同様である。生じた樹脂ビーズのいくらかは、表面にゆるく付着された酸化鉄を有していたが、しかしたいていのビーズは酸化物を含有していなかった。
【0082】
比較例2: 分散剤=Dusperse(登録商標)IC100
分散剤としてDusperse(登録商標)IC100を用いて、一般的実験手順2を遂行した。Dusperse(登録商標)IC100(Huntsman)は、Teric(登録商標)17A10と同様であり、しかしてアルコールのモル当たり10.5モルのエチレンオキシドを有する不飽和C18アルコールエトキシレートである。生じた樹脂ビーズもまた、酸化鉄不含であったか又はせいぜい表面にゆるく付着されたいくらかの酸化物粒子を有していた。
【0083】
実施例4: 分散剤=Solsperse(登録商標)61000
分散剤としてSolsperse(登録商標)61000を用いて、一般的実験手順2を遂行した。Solsperse(登録商標)61000(Aveciaから入手できる)は、米国特許第6,562,897号明細書に記載されているようなホスフェートアンカー基を有するポリマー分散剤である。この分散剤の使用は、優秀な酸化鉄保留を有する高密度の球状磁性樹脂ビーズをもたらすことになると分かった。非常に少量の遊離酸化鉄は、2回のデカント洗浄により容易に除去された。
【0084】
比較例3: 分散剤=Solsperse(登録商標)24000SC
分散剤としてSolsperse(登録商標)24000SCを用いて、一般的実験手順2を遂行した。Solsperse(登録商標)24000SCは、Solsperse(登録商標)61000に匹敵し得るがしかしリン基の代わりにポリアミンアンカーブロックを有するポリマー分散剤である。この分散剤の使用は、満足なモルホロジーの磁性樹脂ビーズをもたらすことになると分かった。酸化鉄保留はちょうど受容可能であったが、しかし用いられた酸化物の約4%がビーズ中に組み込まれず、そして大いなる洗浄が必要であった。
【0085】
比較例4: 分散剤=Disperbyk(登録商標)163
分散剤としてDisperbyk(登録商標)163を用いて、一般的実験手順2を遂行した。Disperbyk(登録商標)163(Byk Chemieから入手できる)は、構造についてSolsperse(登録商標)24000SCと同様である。酸化鉄の約4%が、磁性樹脂ビーズ中に組み込まれないと分かった。
【0086】
実施例5: 分散剤=Disponil(登録商標)AEP5300及びRhodafac(登録商標)PE510
分散剤としてDisponil(登録商標)AEP5300又はRhodafac(登録商標)PE510を用いて、一般的実験手順2を遂行した。Disponil(登録商標)AEP5300(Henkel)及びRhodafac(登録商標)PE510(Rhodia)は、酸性ホスフェートエステル基を含有するアルキルフェノールエトキシレートである。一般的実験手順2にて用いられたが、しかし10倍の規模で遂行された場合、これらのエトキシレートは、酸化鉄に対する優秀な分散剤(樹脂ビーズ中に組み込まれなかった酸化物はほとんどない)であると判明した。
【0087】
ホスフェート基を含有する分散剤は、樹脂ビーズ中における酸化物の実質的に完全な(99%より多い)組込みを促進すると分かった。アルキルエトキシレートホスフェート分散剤はまたビーズの密度を増加し(60%まで)、しかして改善沈降速度をもたらすことになり、またビーズモルホロジーを改善し、しかして良好な球形度及び耐摩耗性のビーズをもたらす。たとえば、実施例1においてのようにTeric(登録商標)305でもって作られた磁性ビーズは7.3メートル毎時の水中沈降速度を有したのに対して、比較例4においてのようにDisperbyk(登録商標)163でもって作られた磁性ビーズは6.1メートル毎時の沈降速度を有した。標準的摩耗試験において、実施例1からの洗浄ビーズの平均直径は1.6%減少しそして樹脂断片又は遊離酸化鉄と同定された微細粒子の含有率は容積により0.06%から0.09%にしか増加しなかったのに対して、比較例4からの洗浄ビーズに関しての同一試験において、平均直径は5.9%減少しそして微粉の容積分率は0.02%から4.1%に増加し、しかしてビーズ表面に弱く付着された酸化鉄の損失を指摘した。
【0088】
実施例6: 分散剤=リン酸水素ビス(2−エチルヘキシル)
分散剤としてリン酸水素ビス(2−エチルヘキシル)を用いて、一般的実験手順2を遂行した。分散液はエトキシル化有機リン分散剤でもって得られたものより粘稠であり、また生じた磁性樹脂粒子はサイズ及び形状について変動したが、しかし酸化鉄の実質的にすべてが樹脂粒子中に組み込まれ、しかして上澄み液をおおむね酸化鉄不含にすると分かった。酸化鉄はまた、粒子の全体にわたって一様に分布されると分かった。
【0089】
一般的実験手順3
次の原料を用いて、スチレン系を基剤としたポリマービーズを下記に概略されているように製造した。
1. 水。
2. Gohsenol(登録商標)GH17。
3. シクロヘキサノール。
4. トルエン。
5. 酸化鉄粒子を分散するための選定分散剤。
6. Pferrox(登録商標)2228HC,γ−Fe23
7. DVB−55(ジビニルベンゼン)。
8. VAZO(登録商標)−67。
9. 4−メチルスチレン: これは、ビーズを形成させるために重合される主要なモノマーである。
【化2】

生じたビーズは引き続いて塩素化(たとえば、相間移動触媒(PTC)の存在下で次亜塩素酸塩(OCl-)でもって)されて反応性塩素基がビーズ上に置かれ得、しかして次いでアミノ化(たとえば、トリメチルアミンでもって)されてイオン交換部位が生成される(更なる詳細については下記参照)。
【化3】

【0090】
方法
水(168.9g)を250mL反応器に装填し、そして撹拌機及び窒素パージ装置を始動した。次に、Gohsenol(登録商標)GH−17(3.38g)を添加し、そしてこの水相を82℃に加熱して界面活性剤を溶解した。水が加熱されている間に、有機相を別個に作製した。トルエン(3.00g)、選定分散剤及びDVB(6.24g)を、Pferrox(登録商標)(15.6g)を含有するビーカーに添加した。次いで、メチルスチレン(18.20g)及びシクロヘキサノール(23.09g)を添加した。高剪断分散機を用いて、このスラリーを5分間分散した。ラウロイルペルオキシド(0.60g)を最小限度のトルエン(約1g)に溶解し、そして次いで混合しながら有機相に添加した。有機相が完全に混合されると、それを上記の加熱水相に添加した。生じた分散液を65℃(+/−2℃)に20時間保ち、しかしてこの時間中に重合が起こり、そして固体樹脂ビーズが形成した。
【0091】
実施例7: 分散剤=Crafol(登録商標)AP12
分散剤としてCrafol(登録商標)AP12(1.73g活性物)を用いて、一般的実験手順3を遂行した。Crafol(登録商標)AP12は、Cognisから入手できる。酸化鉄は実質的に全く水性相中に存在せず、そのすべてがポリマービーズ内に保留される。ビーズを割って開くと、酸化鉄はポリマービーズ内に均一に分布されていると分かった。
【0092】
比較例5: 分散剤=Disperbyk(登録商標)163
Disperbyk(登録商標)163(1.73g活性物)を用いて、一般的実験手順3を遂行した。重合段階の終わりに、反応に装填された全酸化鉄の4%がビーズから排除され、しかして水性相をくすんだ橙色にした。ビーズを割って開くと、酸化鉄はポリマービーズ内に均一に分布されていると分かった。
【0093】
実施例7及び比較例5において製造されたビーズを、引き続いて次のスキームにより官能基化した。
1. 磁性ポリメチルスチレンビーズを洗浄し、そして乾燥する。
2. 官能基化前及び官能基化中において、ジクロロメタンを用いてビーズを膨潤させる。
3. 次亜塩素酸ナトリウム(11%w/w溶液)を用いて、メチルスチレン基を塩素化する。
4. 塩酸(濃厚)を用いて、次亜塩素酸ナトリウム溶液のpHを8.5にまで調整する。
5. ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(水中50%溶液)を相間移動触媒として用い、しかして塩素化反応を援助する。
6. トリメチルアミン(エタノール中33%)を用いて、強塩基官能性を塩素化ビーズに付与する。
【0094】
実施例8: 実施例7により製造されたポリマービーズの官能基化
5.0gの実施例7において製造された清浄な乾燥磁性ポリメチルスチレンビーズを、撹拌フラスコ中においてジクロロメタン(40mL)中で1時間膨潤させた。濃HClを用いて11%w/w次亜塩素酸ナトリウム溶液(200mL)をpH8.5に調整し、そして次いで該フラスコに添加した。次いで、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(1.0g)を添加した。この混合物を室温にて16時間撹拌した。ビーズを水、エタノール、ジクロロメタン、エタノールそして水で洗浄し、次いで水(70mL)中に再懸濁した。この反応混合物を75℃に加熱した。トリメチルアミン(エタノール中33%)(9.1g,51mmol)を添加し、そして反応を6時間行った。
【0095】
この樹脂に関しての灰分分析により、酸化鉄含有率が反応により低減されていたこと並びに磁気特性が維持されたことが指摘された。1.4ミリ当量毎グラムの強塩基容量の結果になった。
【0096】
実施例9:
メチルスチレンをスチレンにより置き換えたこと以外は実施例7の態様で、スチレン系ポリマービーズを製造した。生じたビーズはそれらの全体にわたって均一に分布された酸化鉄を有しており、また酸化鉄は水性相中に全く存在していなかった。
【0097】
一般的実験手順4
次の原料を用いてメチルアクリレートを基剤としたポリマービーズを製造及び官能基化することにより、イオン交換ポリマービーズ中に磁性酸化鉄を分散及び保留する際の種々の分散剤の有効性を更に査定した。
1. 水。
2. Gohsenol(登録商標)GH17。
3. 塩化ナトリウム: これは、モノマーを「塩析」しそして廃ポリマーの形成を最小にするために用いられる。
4. シクロヘキサノール。
5. トルエン。
6. 酸化鉄粒子を分散するための選定分散剤。
7. Pferrox(登録商標)2228HC。
8. DVB−55(ジビニルベンゼン)。
9. メチルアクリレート: これは、最初に重合されてそれがビーズ中に組み込まれるモノマーであり、そして次いでそれは誘導体化されて官能基がビーズ中に置かれる。
10. ラウロイルペルオキシド: これは、混合物が50度Cより高く加熱される時に重合を開始させる触媒である。
【0098】
方法
水(170g)を250mL反応器に装填し、そして撹拌機及び窒素パージ装置を始動した。次に、Gohsenol(登録商標)GH−17(0.21g)及び塩化ナトリウム(5.5g)を添加し、そしてこの水相を65度C(+/−2度C)に加熱して界面活性剤を溶解した。水が加熱されている間に、有機相を別個に作製した。トルエン(3.00g)、選定分散剤(1.73g活性物)及びDVB(6.24g)を、Pferrox(登録商標)(15.6g)を含有するビーカーに添加した。次いで、メチルアクリレート(18.20g)及びシクロヘキサノール(23.09g)を添加した。高剪断分散機を用いて、このスラリーを5分間分散した。ラウロイルペルオキシド(0.60g)を最小限度のトルエン(約1g)に溶解し、そして次いで混合しながら有機相に添加した。有機相が完全に混合されると、それを上記の加熱水相に添加した。生じた分散液を65度C(+/−2度C)に20時間保ち、しかしてこの時間中に重合が起こり、そして固体樹脂ビーズが形成した。
【0099】
実施例10: 分散剤=Crafol(登録商標)AP−12
分散剤としてCrafol(登録商標)AP−12を用いて、一般的実験手順4を遂行した。酸化鉄は実質的に全く水性相中に存在せず、そのすべてがポリマービーズ内に保留された。ビーズを割って開くと、酸化鉄はポリマービーズ内に均一に分布されていると分かる。これらのポリ(メチルアクリレート)/DVB/酸化鉄樹脂ビーズを、撹拌下で24時間NaOH(1M)で処理した。次いで、これらのビーズを濾別し、そして樹脂をH+形態に転換し、次いで恒量まで乾燥した。弱塩基容量は、Harland,C.E.,イオン交換:理論及び実施,Royal Society of Chemistry Paperbacks,1994から採用された方法により、1.4meq/gであると決定された。
【0100】
比較例6: 分散剤=Disperbyk(登録商標)163
分散剤としてDisperbyk(登録商標)163(1.73g活性物)を用いて、一般的実験手順3を遂行した。重合段階の終わりに、反応に装填された全酸化鉄のおおよそ6%がビーズから排除されており、しかして水性相をくすんだ橙色にした。反応器の底に、酸化鉄のいくつかの大きい塊もあった。ビーズを割って開くと、ビーズの大多数について酸化鉄はポリマー内に均一に分布されていると分かったが、しかしビーズのいくつかは酸化鉄の組込み密度について一方の側から他方の側への漸増を有していた。
【0101】
マグネタイト含有樹脂
実施例11:
ガンマ酸化鉄をマグネタイトにより置き換えたこと以外は実質的に実施例3に記載されたように、ポリグリシジルメタクリレート樹脂を分散剤としてのCrafol(登録商標)AP−12でもって製造した。上澄み液は、無視できる量の遊離酸化鉄を含有していた。
【0102】
弱塩基錯化性樹脂
実施例12:
トリメチルアミンの代わりにピペリジンで磁性ビーズを官能基化して遷移金属カチオンを錯化することが可能な弱塩基樹脂を作ったこと以外は実質的に実施例3に記載されたように、ポリグリシジルメタクリレート樹脂を分散剤としてのCrafol(登録商標)AP−12でもって製造した。
【0103】
本明細書及び添付の請求項の全体にわたって、文脈が別段要求しない限り、語「含む」、及び「含み」のような変形は、記載された整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の包含を意味するよう、しかしいかなる他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の排除も意味しないよう理解される。
【0104】
本明細書におけるいかなる先行技術への言及も、その先行技術がオーストラリア国において又は他の所で一般常識の一部を成すという認諾又は何らかの示唆形態ではなく、そしてそのように取られるべきでない。
【0105】
本明細書に記載された本発明は、特定的に記載されたもの以外の変型及び改変が可能である、ということを当業者は認識するであろう。本発明はその精神及び範囲内に入るすべてのかかる変型及び改変を包含する、ということが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書において言及された又は指摘された工程、特徴、組成物及び化合物のすべてを個々に又は集合的に、並びにかかる工程又は特徴のいずれか二つ又はそれ以上のいかなる及びすべての組合わせも包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズを製造する方法であって、連続水性相及び分散有機相を有する分散液を作り、しかも該有機相は1種又はそれ以上の重合性モノマー、磁性酸化鉄粒子、及び該磁性酸化鉄粒子を該有機相中に分散するための有機リン分散剤を含み、そして該1種又はそれ以上の重合性モノマーを重合して該磁性酸化鉄粒子が組み込まれているポリマービーズを形成させることを含む方法。
【請求項2】
有機リン分散剤が、ホスホン酸、ホスホネート及びイオン化性ホスフェートエステル又はその塩から独立に選択された1個又はそれ以上のリン基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機リン分散剤が、C8からC18の線状又は分枝状アルキル基及びそれらのエトキシル化誘導体から独立に選択された1個又はそれ以上の有機置換基を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1種又はそれ以上の重合性モノマーが、
a)架橋点を提供することができる架橋性モノマー、及び
b)官能基を提供することができる官能性モノマー
から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
官能性モノマーが、(a)直接的にポリマービーズにイオン交換若しくは錯化能力を与えるところの、又は(b)イオン交換若しくは錯化能力をポリマービーズにもたらす官能基を提供するべき1種若しくはそれ以上の化合物と反応され得るところの官能基を提供する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
官能性モノマーが、直接的にイオン交換又は錯化能力をポリマービーズに与える官能基を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
官能性モノマーが、酸又はアミン基を含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
官能性モノマーが、1種又はそれ以上の化合物と反応すると、イオン交換又は錯化能力をポリマービーズにもたらす官能基に転換され得る官能基を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
官能性モノマーが、アミド又はエステル基を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリマービーズ中に存在するアミド又はエステル基をアミン基又はそれらの塩に転換する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ポリマービーズ中のエステル基を酸基又はそれらの塩に転換する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
官能性モノマーが、イオン交換又は錯化能力をポリマービーズにもたらす官能基を含有する1種又はそれ以上の化合物と反応され得る官能基を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
官能性モノマーが、ハロゲン、エポキシ、エステル又はアミド基を含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1種又はそれ以上の化合物が官能性モノマーの官能基と反応して、アミン基又はそれらの塩をポリマービーズに導入する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
有機相が、2種又はそれ以上の重合性モノマーを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1種又はそれ以上の重合性モノマーが、更に1種又はそれ以上の主鎖モノマーを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
有機相が、更に多孔質化剤を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
磁性酸化鉄が、マグヘマイト及びマグネタイトから選択される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法により製造された錯化性又はイオン交換樹脂。
【請求項20】
水溶液から遷移金属イオンを分離する方法であって、該溶液を請求項19に記載の錯化性樹脂と接触させることを含む方法。
【請求項21】
水溶液からイオンを分離する方法であって、該溶液を請求項19に記載のイオン交換樹脂と接触させることを含む方法。
【請求項22】
磁性酸化鉄粒子と有機リン分散剤が実質的に一様に分散されているポリマーマトリックスを含むポリマービーズ。

【公表番号】特表2007−530717(P2007−530717A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504213(P2007−504213)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000419
【国際公開番号】WO2005/090458
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(505345646)コモンウエルス サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼーション (4)
【出願人】(504248768)オリカ オーストラリア プロプライアタリー リミティド (4)
【Fターム(参考)】