説明

酸化防止剤及びそれを含有する潤滑油組成物

【課題】 ZDTPやMoDTC等の従来の酸化防止剤よりも高い酸化防止性を示し、より高水準のロングドレイン性を潤滑油に付与することが可能な酸化防止剤、並びにその酸化防止剤を用いた潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明の酸化防止剤は、遷移金属化合物と芳香族化合物との反応物であって、遷移金属原子と芳香族環とが、該芳香族環及び/又はその置換基を構成する硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を介して結合した構造を有するものであり、酸化防止性、NOxに対する耐性及び高温清浄性の点で非常に優れている。


[式中、Aは芳香族環、Xは硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を示し、Rは有機基を示し、aは0〜1の整数を示し、bは1〜3または0〜3の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油用酸化防止剤及びそれを含有する潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関、自動変速機などの分野においては、装置を円滑に作動させるために潤滑油が用いられている。このような潤滑油には、その要求性能に応じて各種添加剤が配合される。例えば、内燃機関用潤滑油(エンジン油)に配合される添加剤としては、酸化防止剤、摩耗防止剤、金属系清浄剤、無灰分散剤などがある(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
上記の添加剤のうち、酸化防止剤は、潤滑油の熱・化学的安定性を向上させてロングドレイン化を実現するための重要な役割を担っている。このような酸化防止剤としてはジチオリン酸亜鉛(ZDTP)、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)等があり、これらは内燃機関用潤滑油等の分野で広く使用されている。
【特許文献1】特開2002−294271号公報
【特許文献2】特開2003−277781号公報
【特許文献3】特開2004−83891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ZDTPやMoDTC等の従来の酸化防止剤では、近年の装置の高性能化、高出力化、運転条件の過酷化に十分に対応することができなくなっており、これらに代わる新規な酸化防止剤の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ZDTPやMoDTC等の従来の酸化防止剤よりも高い酸化防止性を示し、より高水準のロングドレイン性を潤滑油に付与することが可能な酸化防止剤、並びにその酸化防止剤を用いた潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の酸化防止剤は、遷移金属化合物と芳香族化合物との反応物であって、遷移金属原子と芳香族環とが、該芳香族環及び/又はその置換基を構成する硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を介して結合した構造を有することを特徴とする。
【0007】
なお、本発明でいう「芳香族環」には、芳香族炭素環及び芳香族複素環の双方が包含される。
【0008】
本発明の酸化防止剤は、上記構成を有するために、ZDTPやMoDTC等の従来の酸化防止剤と比較して、酸化防止性、更にはNOxに対する耐性及び高温清浄性の点で非常に優れている。したがって、本発明の酸化防止剤を潤滑油に含有せしめることによって、高水準のロングドレイン性を潤滑油に付与することが可能となる。
【0009】
なお、本発明の酸化防止剤による酸化防止性の発現機構は必ずしも明確ではないが、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子を介して結合した遷移金属原子と芳香族環との間の電子移動能に起因しているものと本発明者らは推察する。
【0010】
本発明の酸化防止剤においては、より高水準の酸化防止性が得られる点から、遷移金属原子がモリブデン原子、タングステン原子又はクロム原子であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の酸化防止剤は、遷移金属原子の1個に対して芳香族環の1個が、該芳香族環及び/又はその置換基を構成する硫黄原子、酸素原子又は窒素原子の2個以上を介して結合した構造を有することが好ましい。このような構造とすることにより、酸化防止性及び安定性を更に向上させることができる。
【0012】
また、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油と、上記本発明の酸化防止剤とを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の酸化防止剤を含有する本発明の潤滑性組成物により、ZDTPやMoDTC等の従来の酸化防止剤を用いた場合には達成が非常に困難であった高水準のロングドレイン化を達成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ZDTPやMoDTC等の従来の酸化防止剤よりも高い酸化防止性を示し、より高水準のロングドレイン性を潤滑油に付与することが可能な酸化防止剤、並びにその酸化防止剤を用いた潤滑油組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明の酸化防止剤は、遷移金属化合物と芳香族化合物との反応物であって、該芳香族環及び/又はその置換基を構成する酸素原子又は窒素原子(以下、場合によりこれらを「連結原子」という)を介して結合した構造を有する。
【0017】
遷移金属化合物としては、遷移金属原子を有し且つ芳香族環との間に連結原子を介した結合を形成可能なものであれば特に制限されないが、例えば、遷移金属酸化物、あるいは遷移金属酸化物のアミン塩、ハロゲン化物、水酸化物又は炭酸塩などが好適に用いられる。
【0018】
遷移金属原子としては、具体的には、モリブデン原子、タングステン原子、クロム原子、チタン原子、ニッケル原子、銅原子などが挙げられる。これらの中でも、より高い酸化防止性が得られる点から、モリブデン原子、タングステン原子及びクロム原子が好ましく、モリブデン原子及びタングステン原子がより好ましく、モリブデン原子が特に好ましい。
【0019】
本発明の酸化防止剤に含まれる遷移金属原子の数は特に制限されず、1個でも2個以上であってもよい。
【0020】
また、芳香族化合物としては、芳香族環を有し且つ遷移金属原子との間に連結原子を介した結合を形成可能なものであれば特に制限されない。更に、芳香族環は、芳香族性を有するものであれば特に制限されず、芳香族炭素環又は芳香族複素環のいずれであってもよい。芳香族炭素環としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオランテン環、ピレン環、ペリレン環、及びこれらの誘導体などが挙げられる。一方、芳香族複素環としては、具体的には、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、イミダゾリン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピリダジン環、プリン環、キナゾリン環、アクリジン環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、フェナントロリン環、ベンゾトリアゾール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ポルフィリン環、フタロシアニン環、及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、金属錯体の形成が容易である点から、キノリン環、ピリジン環、フェナントロリン環、ピロール環及びインドール環が好ましい。
【0021】
上記の芳香族環のうち、芳香族炭素環は、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子(以下、場合によりこれらを「連結原子」という)を介して遷移金属原子と結合するために、連結原子を含む置換基を有していることが必要である。かかる置換基としては、メルカプト基(−SH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、イミノ基、アゾ基、ジアゾ基、オキシイミノ基、オキシアミノ基、ヒドラゾ基、ヒドラジ基、ジアゾアミノ基、カルバモイル基、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアン基などの硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を少なくとも1つ有する官能基が挙げられる。
【0022】
一方、芳香族複素環は、当該複素環を構成する硫黄原子、酸素原子又は窒素原子が連結原子として機能し得るため、置換又は未置換のいずれであってもよい。芳香族複素環が置換基を有する場合の当該置換基としては、上記芳香族炭素環の置換基と同様のものが例示される。
【0023】
また、本発明の酸化防止剤にかかる芳香族環は、連結原子を含む置換基以外の置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アリール基(上記の芳香族炭素環基を含む)、芳香族複素環基などが挙げられる。置換基としてのアルキル基及びアルケニル基の炭素数は、好ましくは1〜40、より好ましくは6〜24、更に好ましくは8〜20である。また、置換基としてのアリール基及び芳香族複素環基の炭素数は、好ましくは6〜40、より好ましくは8〜20である。これらの置換基の中でも上記アルキル基が好ましい。
【0024】
また、遷移金属原子と芳香族環との連結原子は、上述の通り硫黄原子、酸素原子又は窒素原子であるが、本発明の酸化防止剤を内燃機関用潤滑油に配合する場合、潤滑油の低硫黄化の点から、連結原子は酸素原子又は窒素原子であることが好ましい。
【0025】
本発明において好ましく用いられる芳香族化合物としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【化1】

【0027】
[式中、Aは芳香族環を示し、Xは少なくとも1つの硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を有する1価の官能基を示し、Rは炭素数1〜40の有機基を示し、aは0〜1の整数を示し、Aが芳香族炭素環のときbは1〜3の整数を示し、Aが芳香族複素環のときbは0〜3の整数を示す。]
Aで示される芳香族環は芳香族炭素環又は芳香族複素環のいずれであってもよく、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオランテン環、ピレン環、ペリレン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、イミダゾリン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピリダジン環、プリン環、キナゾリン環、アクリジン環、カルバゾール環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、フェナントロリン環、ベンゾトリアゾール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ポルフィリン環、フタロシアニン環、及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの中でも、Aで示される芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、キノリン環、ビキノリン環、ピリジン環、ビピリジン環、ターピリジン環、フェナントロリン環、ピロール環及びインドール環が好ましい。
【0028】
また、Xは少なくとも1つの硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を有する1価の官能基を示す。Xで示される官能基としては、メルカプト基(−SH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、イミノ基、アゾ基、ジアゾ基、オキシイミノ基、オキシアミノ基、ヒドラゾ基、ヒドラジ基、ジアゾアミノ基、カルバモイル基、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアン基などが挙げられる。
【0029】
また、Rで示される炭素数1〜40の有機基としては、炭素数1〜40のアルキル基(但し、tert−ブチル基を除く)、並びにこれらのアルキル基の側鎖又は末端にSH基、OH基又はNH基が結合した基が好ましい。炭素数1〜40のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、直鎖状または分枝状のブチル基、直鎖状または分枝状のペンチル基、直鎖状または分枝状のヘキシル基、直鎖状または分枝状のヘプチル基、直鎖状または分枝状のオクチル基、直鎖状または分枝状のノニル基、直鎖状または分枝状のデシル基、直鎖状または分枝状のウンデシル基、直鎖状または分枝状のドデシル基、直鎖状または分枝状のトリデシル基、直鎖状または分枝状のテトラデシル基、直鎖状または分枝状のペンタデシル基、直鎖状または分枝状のヘキサデシル基、直鎖状または分枝状のヘプタデシル基、直鎖状または分枝状のオクタデシル基、直鎖状または分枝状のノナデシル基、直鎖状または分枝状のイコシル基、直鎖状または分枝状のヘンイコシル基、直鎖状または分枝状のドコシル基、直鎖状または分枝状のトリコシル基、直鎖状または分枝状のテトラコシル基、直鎖状または分枝状のペンタコシル基、直鎖状または分枝状のヘキサコシル基、直鎖状または分枝状のヘプタコシル基、直鎖状または分枝状のオクタコシル基、直鎖状または分枝状のノナコシル基、直鎖状または分枝状のトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のヘントリアコンチル基、直鎖状または分枝状のドトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のトリトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のテトラトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のペンタトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のヘキサトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のヘプタトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のオクタトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のノナトリアコンチル基、直鎖状または分枝状のテトラコンチル基など(すべての異性体を含む)が挙げられる。これらの中でも、Rで示される有機基としては、炭素数6〜24のアルキル基が好ましく、炭素数8〜20のアルキル基がより好ましい。
【0030】
一般式(1)中のaは0〜3の整数を示す。また、Aが芳香族炭素環のときbは1〜3の整数を示し、Aが芳香族複素環のときbは0〜3の整数を示す。油溶性に優れる点から、aは、1又は2であることが好ましい。また、金属錯体の形成が容易となる点から、bは、1又は2であることが好ましい。
【0031】
本発明の酸化防止剤において、遷移金属原子と芳香族環との連結原子を介した結合の形態は特に制限されず、例えば、下記一般式(2)〜(5)で表される構造とすることができる。なお、一般式(2)〜(5)は遷移金属原子と芳香族環と連結原子との関係を概念的に示したもので、芳香族環の連結原子を含む置換基以外の置換基、及び連結原子を含む置換基における連結原子以外の原子は省略している。本発明の酸化防止剤は、これらの構造のうちの1種を有するものであってもよく、また、2種以上を有するものであってもよい。
【0032】
【化2】

【0033】
(式中、Aは置換又は未置換の芳香族環を示し、Xは硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を示し、Mは遷移金属原子を示す。)
【0034】
【化3】

【0035】
(式中、Aは置換又は未置換の芳香族環を示し、Xは硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を示し、Mは遷移金属原子を示し、nは1以上の整数を示す。)
【0036】
【化4】

【0037】
(式中、Aは置換又は未置換の芳香族環を示し、Xは硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を示し、Mは遷移金属原子を示す。)
【0038】
【化5】

【0039】
(式中、BはYと共に芳香族複素環を構成する原子群を示し、Yは硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を示し、Mは遷移金属原子を示す。)
【0040】
【化6】

【0041】
(式中、BはYと共に芳香族複素環を構成する原子群を示し、Yは各々独立に硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を示し、Mは遷移金属原子を示す。)
【0042】
【化7】

【0043】
(式中、BはYと共に芳香族複素環を構成する原子群を示し、X及びYは各々独立に硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を示し、Mは遷移金属原子を示す。)
本発明の酸化防止剤が一般式(3)で表される構造を有する場合、(n+1)個のMとしてエネルギー準位の異なる遷移金属原子の2種以上で構成することにより、多段階励起機構が期待され、特異的な酸化防止性を示すものと考えられる。
【0044】
また、本発明の酸化防止剤においては、酸化防止性及び安定性の点から、上記一般式(4)、(6)、(7)に示すように、遷移金属原子の1個に対して芳香族環の1個が、該芳香族環及び/又はその置換基を構成する硫黄原子、酸素原子又は窒素原子の2個以上を介して結合した構造(いわゆるキレート構造)を有することが好ましい。したがって、1個の芳香族環が有する連結原子を含む置換基の数は、芳香族炭素環の場合は2個以上であることが好ましく、芳香族複素環の場合は1個以上であることが好ましい。なお、この場合、置換基の置換位置は、遷移金属原子との間にキレート環を形成可能であれば特に制限されない。
【0045】
本発明の酸化防止剤における芳香族炭素環を有する化合物としては、硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を少なくとも1つ有する置換基を芳香族炭素環に有する化合物が好ましく、具体的には、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、フェナシル基、ベンジルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−トルオイル基、アニリノ基、フェニルイミノ基、フェニルアゾ基、ベンズアミド基、ベンゼンスルフィニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゼンスルホンアミド基、スルファニル基、ナフチルオキシ基、ナフトイル基、ナフトイルオキシ基等を有する芳香族炭素環化合物及びこれらのアルキル化物が挙げられる。より具体的には、トリアジン、サリチルアルデヒド、2−オキシアゾ化合物、2−ヒドロキシナフタルデヒド−1,2−ヒドロキシハフタルデヒド−3,C−メチルベンゾイルアセトン、シス又はトランス−α−ベンゾインオキシム、サリチルアルドキシム、ビスサリチルアルドキシム、ビスサリチルアルデヒドエチレンジイミン、ビスベンゾイルアセトナト、エリオクロムブラックT、アリザリン、o−アミノフェノール、イソフタルサンジヒドラジド及びそのイソフタル酸時クロリドとの重合体、グリオキザールビスヒドロキシアニル及びそのチオ誘導体、並びにこれらのアルキル化物等が挙げられる。
【0046】
また、本発明の酸化防止剤における芳香族複素環を有する化合物の好ましい例としては、具体的には、インドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、メチルベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、アクリジン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、オキシン、キナルジン酸、ピコリン酸、2,2’−ビピリジン、3,3’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、6,6’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、ターピリジン、ビキノリン、フタロシアニン、8−オキシキノリン、8−メルカプトキノリン、2−メチルオキシン、8,8’−ジオキシ−5,5’−ビキノリル、及びこれらのアルキル化物等が挙げられる。
【0047】
本発明の酸化防止剤を製造するに際し、遷移金属化合物と芳香族化合物との反応は常法により行うことができる。例えば、本発明の酸化防止剤として好ましいビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデートは、原料化合物としてモリブデン酸アンモニウム及び7−イソウンデシル−8−キノリノールを用い、下記反応式(8)に従って合成することができる。
【0048】
【化8】

【0049】
より具体的には、先ず、7−イソウンデシル−8−キノリノールに等モルの塩酸(好ましくは希塩酸としたもの)を滴下し、所定時間撹拌する。この滴下は溶媒中で行うことが好ましく、溶媒としてはトルエン、ベンゼン、キシレンなどが好適である。また、滴下後に混合溶液を撹拌する際の温度及び撹拌時間はそれぞれ20〜40℃、0.1〜1時間とすることが好ましい。
【0050】
次いで、この混合溶液にモリブデン酸アンモニウム水溶液を滴下し、更に撹拌を継続する。その後、混合溶液を加熱して所定時間保持する。加熱温度及び加熱時間としては、それぞれ40〜90℃(より好ましくは50〜80℃)、0.5〜2時間とすることが好ましい。
【0051】
このようにして得られる反応液を分液ロートに移し、必要に応じて溶媒を追加した後、水層を分離除去し、更にビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデートを含む有機層を水洗する。そして、有機層について無水硫酸ナトリウム等による脱水を施した後、有機層から溶媒を留去し、必要に応じてストリッピング等を行うことにより、目的のビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデートを高純度で得ることができる。
【0052】
上記構成を有する本発明の酸化防止剤は、ZDTPやMoDTC等の従来の酸化防止剤と比較して、酸化防止性、更にはNOxに対する耐性及び高温清浄性の点で非常に優れている。したがって、本発明の酸化防止剤を潤滑油に含有せしめることによって、高水準のロングドレイン性を潤滑油に付与することが可能となる。
【0053】
次に、本発明の潤滑油組成物について詳述する。
【0054】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油と、上記本発明の酸化防止剤とを含有する。ここで、本発明の潤滑油組成物に含まれる本発明の酸化防止剤は1種類でも2種以上でもよい。また、本発明の酸化防止剤の含有量は特に制限されないが、組成物全量を基準として、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。なお、本発明の酸化防止剤の含有量が前記下限値未満であると、酸化防止性が不十分となるおそれがある。また、本発明の酸化防止剤の含有量が前記上限値を超えても含有量に見合う酸化防止性の向上効果が得られない傾向にあり、製造コストが増大するおそれがある。
【0055】
また、潤滑油基油としては特に制限されず、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油又は合成系基油が使用可能である。
【0056】
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が例示できる。
【0057】
また、鉱油系基油中の硫黄分は、特に制限はないが、0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましく、0.005質量%以下であることが特に好ましい。このように鉱油系基油の硫黄分を低減することで、よりロングドレイン性に優れ、内燃機関用潤滑油として使用した場合には、排ガス後処理装置への悪影響を極力回避可能な低硫黄の潤滑油組成物を得ることができる。
【0058】
なお、本発明でいう「硫黄分」とは、JIS K 2541−4「放射線式励起法」(通常、0.01〜5質量%の範囲)又はJIS K 2541−5「ボンベ式質量法、附属書(規定)、誘導結合プラズマ発光法」(通常、0.05質量%以上)に準拠して測定された値を意味する(以下、同様である)。
【0059】
合成系基油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、及びジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、及びペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
【0060】
本発明では、上記鉱油系基油又は上記合成系基油のうちの1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の潤滑油基油を組み合わせた混合基油には、2種以上の鉱油系基油の混合基油、2種以上の合成系基油の混合基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合基油が包含される。
【0061】
潤滑油基油の動粘度は特に制限はないが、その100℃での動粘度は、20mm/s以下であることが好ましく、より好ましくは10mm/s以下である。一方、その動粘度は、1mm/s以上であることが好ましく、より好ましくは2mm/s以上である。潤滑油基油の100℃での動粘度が20mm/sを越える場合は、低温粘度特性が悪化し、一方、その動粘度が1mm/s未満の場合は、潤滑箇所での油膜形成が不十分であるため潤滑性に劣り、また潤滑油基油の蒸発損失が大きくなるため、それぞれ好ましくない。
【0062】
また、潤滑油基油の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で、20質量%以下であることが好ましく、16質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。潤滑油基油のNOACK蒸発量が20質量%を超える場合、潤滑油の蒸発損失が大きいだけでなく、内燃機関用潤滑油として使用した場合、組成物中の硫黄化合物やリン化合物、あるいは金属分が潤滑油基油とともに排ガス浄化装置へ堆積する恐れがあり、排ガス浄化性能への悪影響が懸念されるため好ましくない。なお、ここでいうNOACK蒸発量とは、ASTM D5800に準拠して測定されたものである。
【0063】
また、潤滑油基油の粘度指数は特に制限されず、通常200以下であるが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるように、その値は、80以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、120以上であることが更に好ましい。潤滑油基油の粘度指数が80未満である場合、低温粘度特性が悪化する傾向にある。また、潤滑油基油の粘度指数は160以下であることが好ましい。
【0064】
また、本発明の潤滑油組成物は、その用途に応じて各種添加剤を更に含有することができる。例えば、本発明の潤滑油組成物を内燃機関用潤滑油として用いる場合、以下に示す添加剤を更に含有することが好ましい。
【0065】
本発明の潤滑油組成物は、一般式(9)で表されるリン化合物、一般式(9)で表されるリン化合物、及びそれらの金属塩又はアミン塩から選ばれる少なくとも1種のリン系添加剤(リン含有摩耗防止剤)を更に含有することが好ましい。
【0066】
【化9】

【0067】
[式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Zは酸素原子又は硫黄原子を示し、pは0又は1を示し、pが0のとき2個のZのうちの少なくとも1個は酸素原子であり、pが1のとき3個のZのうちの少なくとも1個は酸素原子である。]
【0068】
【化10】

【0069】
[式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、Zは酸素原子又は硫黄原子を示し、pは0又は1を示し、pが0のとき3個のZのうちの少なくとも2個は酸素原子であり、pが1のとき4個のZのうちの少なくとも3個は酸素原子である。]
上記一般式(9)、(10)中、R〜Rで表される炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0070】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
【0071】
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基としては、例えば、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
【0072】
上記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である)を挙げることができる。
【0073】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を挙げることができる。また上記アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18のアルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である)を挙げることができる。
【0074】
上記アリールアルキル基としては、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12のアリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を挙げることができる。
【0075】
上記R〜Rで表される炭素数1〜30の炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは炭素数4〜12のアルキル基である。
【0076】
一般式(9)で表されるリン化合物としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有する亜リン酸モノエステル、モノチオ亜リン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸、(ヒドロカルビル)モノチオ亜ホスホン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有する亜リン酸ジエステル、モノチオ亜リン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)モノチオ亜ホスホン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有する亜リン酸トリエステル、モノチオ亜リン酸トリエステル、(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)モノチオ亜ホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0077】
本発明において、一般式(9)で表される化合物は、Zの全てが酸素原子である化合物、すなわち下記一般式(11)で表される化合物であることが好ましい。
【0078】
【化11】

【0079】
[式中、Rは炭素数1〜30の炭化水素基を示し、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、pは0又は1を示す。]
一般式(10)で表されるリン化合物としては、例えば、上記炭素数1〜30の炭化水素基を1つ有するリン酸モノエステル、モノチオリン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸、(ヒドロカルビル)モノチオホスホン酸;上記炭素数1〜30の炭化水素基を2つ有するリン酸ジエステル、モノチオリン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸モノエステル、(ヒドロカルビル)モノチオホスホン酸モノエステル;上記炭素数1〜30の炭化水素基を3つ有するリン酸トリエステル、モノチオリン酸トリエステル、(ヒドロカルビル)ホスホン酸ジエステル、(ヒドロカルビル)モノチオホスホン酸ジエステル;及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0080】
本発明において、一般式(10)で表される化合物は、Zの全てが酸素原子である化合物、すなわち下記一般式(12)で表される化合物であることが好ましい。
【0081】
【化12】

【0082】
[式中、R、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示し、pは0又は1を示す。]
また、一般式(9)又は(10)で表されるリン化合物の金属塩又はアミン塩は、一般式(9)又は(10)で表されるリン化合物に、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属塩化物等の金属塩基、アンモニア、炭素数1〜30の炭化水素基又はヒドロキシル基含有炭化水素基のみを分子中に有するアミン化合物等の窒素化合物などを作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和することにより得ることができる。
【0083】
上記金属塩基における金属としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン、モリブデン等の重金属などが挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛及びモリブデンが好ましく、亜鉛及びモリブデンが特に好ましい。
【0084】
なお、上記リン化合物の金属塩は、金属の価数あるいはリン化合物のOH基又はSH基の数に応じてその構造が異なり、したがって、リン化合物の金属塩の構造については何ら限定されない。例えば、酸化亜鉛1molとリン酸ジエステル(OH基が1つの化合物)2molを反応させた場合、下記式(13)で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0085】
【化13】

【0086】
[式中、Rは各々独立に水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。]
また、例えば、酸化亜鉛1molとリン酸モノエステル(OH基が2つの化合物)1molとを反応させた場合、下記式(14)で表わされる構造の化合物が主成分として得られると考えられるが、ポリマー化した分子も存在していると考えられる。
【0087】
【化14】

【0088】
[式中、Rは水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を示す。]
また、上記窒素化合物としては、具体的には、上記モリブデン−アミン錯体の説明において例示されたモノアミン、ジアミン、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。また、N−ヒドロキシエチルオレイルイミダゾリン等の複素環化合物、アミン化合物へのアミンアルキレンオキシド付加物等を用いることもできる。
【0089】
より具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、及びプロピルブチルアミン等の炭素数1〜30のアルキル基(これらのアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルキルアミン;エテニルアミン、プロペニルアミン、ブテニルアミン、オクテニルアミン、及びオレイルアミン等の炭素数2〜30のアルケニル基(これらのアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルケニルアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、ヘプタノールアミン、オクタノールアミン、ノナノールアミン、メタノールエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、エタノールブタノールアミン、及びプロパノールブタノールアミン等の炭素数1〜30のアルカノール基(これらのアルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい)を有するアルカノールアミン;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等の炭素数1〜30のアルキレン基を有するアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;ウンデシルジエチルアミン、ウンデシルジエタノールアミン、ドデシルジプロパノールアミン、オレイルジエタノールアミン、オレイルプロピレンジアミン、ステアリルテトラエチレンペンタミン等の上記モノアミン、ジアミン、ポリアミンに炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物やイミダゾリン等の複素環化合物;これらの化合物のアルキレンオキシド付加物;及びこれらの混合物等が例示できる。これらのアミン化合物の中でも、第1級アミン、第2級アミン及びアルカノールアミンが好ましい。
【0090】
これら窒素化合物の中でもデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン及びステアリルアミン等の炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アミン(これらは直鎖状でも分枝状でもよい)が好ましい例として挙げることができる。
【0091】
本発明において、上記リン系添加剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
リン系添加剤としては、上記一般式(9)又は(10)で表されるリン化合物又はその金属塩が好ましく、中でも、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する亜リン酸ジエステルと亜鉛、モリブデン又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有する亜リン酸トリエステル、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を1個有するリン酸のモノエステルと亜鉛、モリブデン又はカルシウムとの塩、炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基を2個有するリン酸のジエステルと亜鉛、モリブデン又はカルシウムとの塩、あるいは炭素数3〜18のアルキル基又はアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアルキル基を3個有するリン酸トリエステル、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を1個有する(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸と亜鉛、モリブデン又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸モノエステルと亜鉛又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を3個有する(ヒドロカルビル)亜ホスホン酸ジエステル、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を1個有する(ヒドロカルビル)ホスホン酸と亜鉛、モリブデン又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を2個有する(ヒドロカルビル)ホスホン酸モノエステルと亜鉛、モリブデン又はカルシウムとの塩、炭素数1〜18のアルキル基又はアリール基を3つ有する(ヒドロカルビル)ホスホン酸ジエステルが好ましい。
【0093】
上記の(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸、その金属塩、(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸モノエステル、その金属塩、並びに(ヒドロカルビル)(亜)ホスホン酸ジエステルとしては、油溶性及び極圧性の点から、炭化水素基の合計炭素数が12〜30であることが好ましく、14〜24であることがより好ましく、16〜20であることが更に好ましい。
【0094】
本発明の潤滑油組成物において、リン系添加剤の含有量は、組成物全量を基準として、リン元素換算で、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上であり、また、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.08質量%以下である。リン系添加剤の含有量が、リン元素換算で0.005質量%未満の場合は、摩耗防止性が不十分となり、ロングドレイン化が達成されにくくなる傾向にある。他方、リン系添加剤の含有量がリン元素換算で0.5質量%を超えても含有量の増加に見合う上記の向上効果が得られない傾向にあり、また、本発明の潤滑油組成物を内燃機関用潤滑油として使用する場合に、リンによる排ガス後処理装置への悪影響が懸念される。排ガス後処理装置への影響も顕著に低減することができる点からは、リン系添加剤の含有量が、リン元素換算で、0.08質量%以下、特に0.05質量%以下であることが好ましい。
【0095】
なお、本発明における上記リン系添加剤のうち硫黄を含有する化合物についても、上記リン元素量の範囲内で含有させることができるが、当該化合物の含有量は、硫黄元素換算量で、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以下である。そして、本発明の潤滑油組成物は、リン系添加剤として硫黄を含有する化合物を含有しないこと、すなわちリン系添加剤が一般式(11)又は(12)で表されるリン化合物又はその金属塩(但し、モリブデン塩を除く)又はアミン塩のみで構成されることが最も好ましい。
【0096】
また、本発明の潤滑油組成物は、その酸中和特性、高温清浄性及び摩耗防止性を更に向上させるために、金属系清浄剤を更に含有することが好ましい。
【0097】
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属スルホネート又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネート又はアルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属サリシレート又はアルカリ土類金属サリシレート、アルカリ金属ホスホネート又はアルカリ土類金属ホスホネート、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0098】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネートとしては、より具体的には、例えば分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられ、アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。
【0099】
石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルホン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては特に制限はないが、通常発煙硫酸や硫酸が用いられる。
【0100】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと元素硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
【0101】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
【0102】
また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属フェネート及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートには、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等の金属塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩やアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で中性塩(正塩)をアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。
【0103】
また、金属系清浄剤は通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また、入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いるのが望ましい。また金属系清浄剤の全塩基価は、通常0〜500mgKOH/g、好ましくは20〜450mgKOH/gである。なお、ここでいう全塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味する。
【0104】
本発明においては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレート等から選ばれる1種を単独で又は2種以上併用して使用することができる。本発明においては、金属系清浄剤として、低灰化による摩擦低減効果及び/又は摩耗防止効果が大きい点、ロングドレイン性により優れる点でアルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートが特に好ましい。また、粘度増加をより抑制できる点からは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネートを使用することが特に好ましい。
【0105】
金属系清浄剤の金属比は特に制限されず、通常20以下のものが使用できるが、摩擦低減効果及びロングドレイン性をより向上させることができる点から、好ましくは金属比が1〜10の金属系清浄剤から選ばれる1種又は2種以上からなることが好ましい。なお、ここでいう金属比とは、金属系清浄剤における金属元素の価数×金属元素含有量(mol%)/せっけん基含有量(mol%)で表され、金属元素とは、カルシウム、マグネシウム等、せっけん基とはスルホン酸基、サリチル酸基等を意味する。
【0106】
金属系清浄剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属サリシレートが低灰化による摩擦低減効果が大きい点、ロングドレイン性により優れる点で特に好ましい。
【0107】
本発明の潤滑油組成物における金属系清浄剤の含有量の上限値は特に制限はなく、通常、組成物全量を基準として0.5質量%以下であるが、組成物全量を基準として、組成物の硫酸灰分が1.0質量%以下となるようにその他の添加剤とあわせて調整することが好ましい。そのような観点から、金属系清浄剤の含有量は、組成物全量を基準として、金属元素換算量で、好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.23質量%以下である。また、金属系清浄剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上である。金属系清浄剤の含有量が0.01質量%未満の場合、高温清浄性や酸化安定性、塩基価維持性などのロングドレイン性能が得られにくくなるため好ましくない。
【0108】
また、金属系清浄剤に含まれる金属(M)と、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物に含まれるモリブデン(Mo)との質量比(M/Mo)は、0.1〜500が好ましく、2〜100がより好ましく、3〜60が更に好ましく、5〜50が一層好ましく、10〜40が特に好ましい。
【0109】
また、本発明の潤滑油組成物は、無灰分散剤を更に含有することが好ましい。
【0110】
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0111】
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。このアルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0112】
無灰分散剤の具体的としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。これらの中から選ばれる1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
(I)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、あるいはその誘導体
(II)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、あるいはその誘導体
(III)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、あるいはその誘導体。
【0113】
上記(I)コハク酸イミドとしては、より具体的には、下記一般式(15)又は(16)で示される化合物等が例示できる。
【0114】
【化15】

【0115】
[式中、Rは炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、qは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。]
【0116】
【化16】

【0117】
[式中、R及びRは、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくはポリブテニル基を示し、rは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。]
なお、コハク酸イミドには、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した一般式(15)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した一般式(16)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが包含されるが、本発明の潤滑油組成物においては、それらの一方のみを含んでもよく、あるいはこれらの混合物が含まれていてもよい。
【0118】
上記コハク酸イミドの製法は特に制限はないが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキル又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得ることができる。ポリアミンとしては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等が例示できる。
【0119】
上記(II)ベンジルアミンとしては、より具体的には、下記の一般式(17)で表される化合物等が例示できる。
【0120】
【化17】

【0121】
[式中、R10は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、pは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。]
上記ベンジルアミンの製造方法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンをフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンをマンニッヒ反応により反応させることにより得ることができる。
【0122】
上記(III)ポリアミンとしては、より具体的には、下記一般式(18)で表される化合物等が例示できる。
【0123】
【化18】

【0124】
[式中、R11は、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、pは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。]
上記ポリアミンの製造法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させることにより得ることができる。
【0125】
また、無灰分散剤の一例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、具体的には例えば、前述の含窒素化合物に炭素数1〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述の含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述の含窒素化合物に酸変性、ホウ素変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物;等が挙げられる。これらの誘導体の中でもアルケニルコハク酸イミドのホウ素変性化合物は耐熱性、酸化防止性に優れ、本発明の潤滑油組成物においても塩基価維持性及び高温清浄性をより高めるために有効である。
【0126】
本発明の潤滑油組成物に無灰分散剤を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%である。無灰分散剤の含有量が0.01質量%未満の場合は、高温下における塩基価維持性に対する効果が少なく、一方、20質量%を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0127】
また、本発明の潤滑油組成物は、連鎖停止型酸化防止剤を更に含有することが好ましい。これにより、潤滑油組成物の酸化防止性がより高められるため、本発明における塩基価維持性及び高温清浄性をより高めることができる。
【0128】
連鎖停止型酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤、金属系酸化防止剤等の潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。
【0129】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル置換脂肪酸エステル類等を好ましい例として挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0130】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、及びジアルキルジフェニルアミンを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0131】
更に、上記フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤は組み合せて使用してもよい。
【0132】
本発明の潤滑油組成物において連鎖停止型酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、通常潤滑油組成物全量基準で5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.5質量%以下である。その含有量が5.0質量%を超える場合は、含有量に見合った十分な酸化防止性が得られないため好ましくない。一方、その含有量は、潤滑油劣化過程における塩基価維持性及び高温清浄性をより高めるためには、潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以上である。
【0133】
なお、上述のリン系添加剤には潤滑油基油に溶解しない化合物又は溶解性が低い化合物(例えば常温で固体であるジアルキルリン酸亜鉛等)が包含されるが、リン系添加剤としてこのような化合物を使用する場合、リン系添加剤の潤滑油基油への溶解性改善や潤滑油組成物の製造時間の短縮の点から、窒素含有化合物(例えば無灰分散剤としてのアミン化合物や連鎖停止型酸化防止剤としてのアミン系酸化防止剤又はそれらの混合物)とリン系添加剤とを混合し、溶解又は反応させて得られた溶解物又は反応生成物を油溶性添加剤として潤滑油組成物に配合することが特に好ましい。このような油溶性添加剤の製造例としては、例えば、リン系添加剤と上記窒素含有化合物とを、好ましくはヘキサン、トルエン、デカリン等の有機溶媒中で15〜150℃、好ましくは30〜120℃、特に好ましくは40〜90℃で10分〜5時間、好ましくは20分〜3時間、特に好ましくは30分〜1時間混合して溶解又は反応させ、減圧蒸留等で溶媒を留去して得られる。
【0134】
本発明の潤滑油組成物は、その性能をさらに向上させるために、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、摩耗防止剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び着色剤等の添加剤等を挙げることができる。
【0135】
摩耗防止剤としては、例えば、ジスルフィド、硫化オレフィン、硫化油脂、ジチオリン酸金属塩(亜鉛塩、モリブデン塩等)、ジチオカルバミン酸金属塩(亜鉛塩、モリブデン塩等)、ジチオリン酸エステル及びその誘導体(オレフィンシクロペンタジエン、(メチル)メタクリル酸、プロピオン酸等との反応物;プロピオン酸の場合はβ位に付加したものが好ましい。)、トリチオリン酸エステル、ジチオカルバミン酸エステル等の硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは通常、0.005〜5質量%の範囲において本発明の組成物の性能を大幅に損なわない限り含有させることが可能であるが、低硫黄化及びロングドレイン性の点から、その含有量は、硫黄換算値で、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。
【0136】
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、二硫化モリブデン、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等のモリブデン系摩擦調整剤、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ヒドラジド(オレイルヒドラジド等)、セミカルバジド、ウレア、ウレイド、ビウレット等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。これら摩擦調整剤の含有量は、通常0.1〜5質量%である。
【0137】
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0138】
これらの粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
【0139】
またこれらの粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。粘度指数向上剤の含有量は、通常潤滑油組成物基準で0.1〜20質量%である。
【0140】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0141】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0142】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0143】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0144】
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0145】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は潤滑油組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
【0146】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油及び各種添加剤の選択によって、組成物中の硫黄含有量が、硫黄元素換算で、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下のロングドレイン性に優れた低硫黄潤滑油組成物とすることも可能である。
【0147】
なお、構成元素として硫黄を含有する添加剤の硫黄元素換算での含有量は、[潤滑油組成物全体の硫黄分]及び[潤滑油基油及び希釈剤に由来する硫黄分]をそれぞれ測定し、前者の測定値から後者の測定値を減じることにより求められる。また、構成元素として硫黄を含有する添加剤の硫黄含有量を直接求める方法としては、添加剤の有効成分と潤滑油及び希釈油とを分離し、有効成分について、上記の方法に準拠して硫黄分を測定する方法がある。潤滑油組成物又は添加剤中の有効成分と潤滑油基油及び希釈油との分離は、ゴム膜透析やクロマトグラフィー等の常法により行うことができる(例えば、八木下ら、日石三菱レビュー 第41卷 第4号 第25〜34頁(1999年10月発行)を参照)。また、硫黄分が上記方法の通常の測定限界以下である場合は、標準物質の濃度を適宜変更した測定により得られる検量線から容易に求めることができる。
【0148】
また、本発明の潤滑油組成物のロングドレイン性を高め、排ガス後処理装置への悪影響を極力軽減するためには、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物及びその他金属を含有する添加剤やその含有量の最適化によって、組成物の硫酸灰分を1.0質量%以下とすることが好ましく、0.8質量%以下とすることがより好ましく、0.6質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以下とすることが特に好ましい。ここで、硫酸灰分とは、JIS K 2272の5.「硫酸灰分の試験方法」に規定される方法により測定される値を示し、主として金属含有添加剤に起因するものである。
【0149】
本発明の潤滑油組成物は、ロングドレイン性(酸化安定性、塩基価維持性、高温清浄性、及びNOxに対する耐性)に優れるものである。そのため、二輪車、四輪車、発電用、舶用等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として好ましく使用することができ、低硫黄、低灰分のため、特に排ガス後処理装置を装着した内燃機関に好適である。また、低硫黄燃料、例えば、硫黄分が50質量ppm以下、さらに好ましくは30質量ppm以下、特に好ましくは10質量ppm以下のガソリンや軽油や灯油、あるいは硫黄分が1質量ppm以下の燃料(LPG、天然ガス、硫黄分を実質的に含有しない水素、ジメチルエーテル、アルコール、GTL(ガストゥリキッド)燃料等)を用いる内燃機関用潤滑油として特に好ましく使用することができる。
【0150】
また、本発明の潤滑性組成物は、酸化安定性が要求されるような潤滑油、例えば、自動又は手動変速機等の駆動系用潤滑油、グリース、湿式ブレーキ油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、軸受け油、冷凍機油等の潤滑油としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0151】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[合成例1;ビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデートの合成]
500mlの4口フラスコに7−イソウンデシル−8−キノリノール29.95g(0.10mol)を採取し、これにトルエン200mlを加えて室温で30分撹拌した。次いで、塩酸水溶液(36%濃塩酸10.13gに純水を加えて50mlとしたもの)を12分かけて滴下し、滴下開始から1時間撹拌を継続した。更に、モリブデン酸アンモニウム水溶液(濃度99.99%以上のモリブデン酸アンモニウム((NHMoO)9.80gに純水を加えて100mlとしたもの)を30分かけて滴下し、滴下開始から30分間撹拌を継続した。その後、マントルヒータを用いて反応液を70℃に加熱し、加熱開始から1時間で反応を終了させた。
【0152】
得られた反応液をトルエン300mlで分液ロートに洗い入れ、これを静置して有機層/水層に分離させた後、水層を分離除去した。次いで、有機層に純水300mlを加えて静置し、有機層/水層に分離させた後で水層を分離除去することによる水洗操作を5回繰り返した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、エバポレータでトルエンを留去した。更に、120℃、1mmHg未満の条件でストリッピングを1時間行い、目的のビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデート(Mo含有量:13.2質量%、分子量724.8)29.5gを得た。
【0153】
得られたビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデートの赤外吸収スペクトルを図1に示す(図1中のC)。なお、図1中には、比較のため、7−イソウンデシル−8−キノリノール(図1中のA)及び(NHMoO(図1中のB)の赤外吸収スペクトルを併せて示した。
[実施例1〜2、比較例1〜2]
以下に示す潤滑油基油及び添加剤(上記で得られたビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデートを含む)を用いて、表1に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。
(潤滑油基油)
基油1:水素化分解鉱油(100℃における動粘度:4.3mm/s、粘度指数:123、多環芳香族分:0.001質量%未満、全芳香族分:0.1質量%未満、硫黄分:0.01質量%未満)
基油2:ポリα−オレフィン(100℃における動粘度:4.0mm/s、多環芳香族分:0.001質量%未満、全芳香族分:0.1質量%未満、硫黄分:0.01質量%未満)
(モリブデン化合物)
A1:ビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデート
A2:ジ(2−エチルヘキシル)モリブデンジチオカーバメート(モリブデン含有量:4.5質量%、硫黄含有量:5.0質量%)
(リン化合物)
B1:ジn−ブチルリン酸亜鉛(リン含有量:13.2質量%、硫黄含有量:0質量%、亜鉛含有量:13質量%)
(金属系清浄剤)
C1:カルシウムスルホネート(塩基価:300mgKOH/g、カルシウム含有量:11.9質量%、硫黄含有量:1.7質量%、金属比:10)
(無灰分散剤)
D1:ポリブテニルコハク酸イミド(ポリブテニル基の数平均分子量:1300、窒素分:1.8質量%)とそのホウ素化物(ホウ素分0.77質量%)との混合物(質量比1:4)
(粘度指数向上剤)
E1:エチレン−プロピレン共重合体系粘度指数向上剤(重量平均分子量:15万)。
【0154】
次に、実施例1〜2及び比較例1〜2の各潤滑油組成物を用いて以下の試験を行った。
[NOx吸収試験]
日本トライボロジー会議予稿集1992、10、465に準拠した方法にて試験油にNOx含有ガスを吹き込み、強制劣化させたときの酸価の経時変化を測定した。本試験における試験温度は140℃、NOx含有ガス中のNOx濃度は1185ppmとした。NOxガスの吹き込み開始から16時間後の酸価を表1に示す。表中、酸価の増加が小さいものほど、内燃機関で使用されるようなNOx存在下においても塩基価維持性能が高く、より長時間使用できるロングドレイン油であることを示している。
【0155】
表1に示したように、本発明の酸化防止剤にかかるビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデート(A1)は、従来のMoDTC(A2)に比べて、酸価増加抑制効果がより高いことがわかる。
【0156】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】実施例で得られた化合物の赤外吸収スペクトルを示す図であり、Aは7−イソウンデシル−8−キノリノール、Bは(NHMoO、Cはビス[7−(4−エチル−2−メチルオクチル)−8−キノリノラート]モリブデートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属化合物と芳香族化合物との反応物であって、
遷移金属原子と芳香族環とが、該芳香族環及び/又はその置換基を構成する硫黄原子、酸素原子又は窒素原子を介して結合した構造を有することを特徴とする酸化防止剤。
【請求項2】
前記遷移金属原子がモリブデン原子、タングステン原子又はクロム原子であることを特徴とする、請求項1に記載の酸化防止剤。
【請求項3】
前記遷移金属原子の1個に対して前記芳香族環の1個が、該芳香族環及び/又はその置換基を構成する硫黄原子、酸素原子又は窒素原子の2個以上を介して結合した構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸化防止剤。
【請求項4】
潤滑油基油と、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の酸化防止剤とを含有することを特徴とする潤滑油組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−117734(P2006−117734A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304710(P2004−304710)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】