説明

酸素バリヤー性に優れた多層容器

【課題】本発明の目的は、溶融成形で得られ、酸素吸収性バリヤー樹脂組成物からなる中間層を有する耐熱性に優れた多層容器を提供することである。
【解決手段】本発明は、オレフィン樹脂を含む内外層と、前記内外層間に酸素吸収性バリヤー樹脂組成物からなる中間層を有する多層容器であって、前記多層容器は、溶融成形されたものであり、容器胴部の熱分析において、30℃から100℃/分で130℃に昇温後の等温結晶化による発熱量が0.5J/g以上であり、かつ、200℃から100℃/分で130°に降温後の等温結晶化プロファイルのピークトップまでの時間が、中間層として酸素吸収性バリヤー樹脂を構成する基材樹脂(酸素バリヤー樹脂)のみを用いた多層容器のよりも短い、前記多層容器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融成形され、酸素吸収性バリヤー樹脂組成物からなる中間層を有する耐熱性に優れた多層容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸素バリヤー性樹脂、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂層と積層して多層容器を形成するための樹脂として用いられている(特許文献1参照)。
しかしながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの酸素バリヤー性樹脂を中間層とするボトル、或いはカップ状等の多層容器は、ダイレクトブロー成形、射出成形、インライン成形(Tダイより押し出された溶融樹脂を直接成形する方法)等の溶融成形で得られるが、耐熱性に劣るため熱収縮等を生じる問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−187808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、溶融成形され、酸素吸収性バリヤー樹脂組成物からなる中間層を有する耐熱性に優れた多層容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、オレフィン樹脂を含む内外層と、前記内外層間に酸素吸収性バリヤー樹脂組成物からなる中間層を有する多層容器であって、前記多層容器は、溶融成形されたものであり、容器胴部の熱分析において、30℃から100℃/分で130℃に昇温後の等温結晶化による発熱量が0.5J/g以上であり、かつ、200℃から100℃/分で130°に降温後の等温結晶化プロファイルのピークトップまでの時間が、中間層として酸素吸収性バリヤー樹脂を構成する基材樹脂(酸素バリヤー樹脂)のみを用いた多層容器よりも短い、前記多層容器を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の多層容器によれば、溶融成形され、酸素吸収性バリヤー樹脂組成物からなる中間層を有する耐熱性に優れ、熱収縮性が改善された多層容器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の多層容器は、オレフィン樹脂を含む内外層と、酸素吸収性バリヤー樹脂組成物からなる中間層を有する。
オレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)或いはこれらのブレンド物などが挙げられる。
【0008】
ガスバリア性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明では、酸素や香気成分に対するバリヤー性に特に優れた樹脂として、エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いるのが望ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、それ自体公知の任意のものを用いることができ、例えば、エチレン含有量が20〜60モル%、特に25〜50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が使用できる。
このエチレン−ビニルアルコール共重合体ケン化物は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、フェノール:水の重量比で85:15の混合溶媒中30℃で測定して 0.01dL/g以上、特に0.05dL/g以上の粘度を有することが望ましい。
ポリアミド樹脂としては、(a)ジカルボン酸成分とジアミン成分とから誘導された脂肪族、脂環族或いは半芳香族ポリアミド、(b) アミノカルボン酸或いはそのラクタムから誘導されたポリアミド、或いはこれらのコポリアミド或いはこれらのブレンド物が挙げられる。
【0009】
ジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
また、ジアミン成分としては、 1,6− ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10− ジアミノデカン、1,12− ジアミノドデカン等の炭素数4〜25、特に6〜18の直鎖状又は分岐鎖状アルキレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4, 4′− ジアミノ−3,3′− ジメチルジシクロヘキシルメタン、特にビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジアミン、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミンが挙げられる。
アミノカルボン酸成分として、脂肪族アミノカルボン酸、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノオクタン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸や、パラ−アミノメチル安息香酸、パラ−アミノフェニル酢酸等の芳香脂肪族アミノカルボン酸等を挙げることができる。
【0010】
これらのポリアミドの内でもキシリレン基含有ポリアミドが好ましく、具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリパラキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド等の単独重合体、及びメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体等の共重合体、或いはこれらの単独重合体または共重合体の成分とヘキサメチレンジアミンの如き脂肪族ジアミン、ピペラジンの如き脂環式ジアミン、パラ−ビス(2アミノエチル)ベンゼンの如き芳香族ジアミン、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクタムの如きラクタム、7−アミノヘプタン酸の如きω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸の如き芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられるが、m−キシリレンジアミン及び/又はp−キシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と、脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸とから得られるポリアミドが特に好適に用いることができる。
【0011】
これらのキシリレン基含有ポリアミドは、他のポリアミド樹脂に比してガスバリア性に優れており、本発明の目的に好ましいものである。
本発明では、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が40eq/106g以上、特に末端アミノ基濃度が50eq/106gを超えるポリアミド樹脂であることが、ポリアミド樹脂の酸化劣化を抑制する点で好ましい。
ポリアミド樹脂の酸化劣化、つまり酸素吸収と、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とは密接な関係がある。即ち、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が上述した比較的高い範囲にある場合には、酸素吸収速度は殆どゼロかゼロに近い値に抑制されるのに対して、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度が上記範囲を下回るようになると、ポリアミド樹脂の酸素吸収速度が増大する傾向がある。
これらのポリアミドもフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、濃硫酸中1.0g/dl の濃度で且つ30℃の温度で測定した相対粘度(ηrel)が1.1 以上、 特に1.5 以上であることが望ましい。
【0012】
ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸やイソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコールのようなジオール類とから誘導された熱可塑性ポリエステル、いわゆるガスバリア性ポリエステルが挙げられる。このガスバリア性ポリエステルは、重合体鎖中に、テレフタル酸成分(T)とイソフタル酸成分(I)とを、
T:I=95: 5乃至 5:95
特に 75:25乃至25:75
のモル比で含有し、且つエチレングリコール成分(E)とビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン成分(BHEB)とを、
E:BHEB=99.999:0.001〜2.0:98.0
特に 99.95:0.05〜40:60
のモル比で含有する。BHEBとしては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが好ましい。
このポリエステルは、少なくともフィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般にフェノールとテトラクロルエタンとの60:40の重量比の混合溶媒中、30℃の温度で測定して、0.3〜2.8dl/g、特に0.4〜1.8dl/gの固有粘度[η]を有することが望ましい。
ポリグリコール酸を主体とするポリエステル樹脂、或いはこのポリエステル樹脂と上記芳香族ジカルボン酸とジオール類とから誘導されたポリエステル樹脂をブレンドしたポリエステル樹脂を用いることもできる。
【0013】
酸素吸収性バリヤー樹脂組成物は、好ましくは酸化性重合体を含む。ここで、酸化性重合体とは、酸化されることにより酸素を吸収する作用を示すものである。
酸化性重合体としては、不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体などが挙げられ、例えばポリエンを単量体として誘導される。ポリエンの適当な例としては、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン等のポリエンの単独重合体、或いは前記ポリエンを2種類以上組合せ、若しくは他の単量体と組み合わせたランダム共重合体、ブロック共重合体等を酸化性重合体として用いることができ、ポリエンから誘導される重合体の中でも、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等が好適であるが、勿論、これらに限定されない。
また、不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体としては、官能基を有することが好ましい。官能基としては、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、カルボニル基などが挙げられるが、カルボン酸基、カルボン酸無水物基が、相溶性等の点で特に好ましい。これらの官能基は樹脂の側鎖に存在していても、末端に存在していてもよい。
これらの官能基を導入するのに用いられる単量体としては、上記の官能基を有するエチレン系不飽和単量体が挙げられる。
不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体にカルボン酸基又はカルボン酸無水物基を導入するために用いる単量体としては、不飽和カルボン酸またはこれらの誘導体を用いるのが望ましく、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等のα,β不飽和カルボン酸無水物、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物等の不飽和カルボン酸の無水物が挙げられる。
【0014】
不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体の酸変性は、不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーに不飽和カルボン酸またはその誘導体をそれ自体公知の手段でグラフト共重合させることにより製造されるが、前述した不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体と不飽和カルボン酸またはその誘導体とをランダム共重合させることによっても製造することができる。
酸素バリヤー樹脂への分散性の点で、特に好適なカルボン酸又はカルボン酸無水物基を有する不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体は、カルボン酸又はその誘導体を、酸価が5KOHmg/g以上となる量で含有している液状樹脂であることが好ましい。
不飽和カルボン酸又はその誘導体の含有量が上記の範囲にあると、不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体の酸素バリヤー樹脂への分散が良好となると共に、酸素の吸収も円滑に行われる。
不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体を酸素バリヤー樹脂に配合する場合、遷移金属触媒の存在下において、不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体1g当たり常温で2×10-3mol以上、特に4×10-3mol以上の酸素を吸収する能力を有することが好ましい。すなわち、酸素吸収能力が上記値以上である場合、良好な酸素バリヤー性を発現させるために多量の不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体を酸素バリヤー樹脂に配合する必要がなく、従って、配合した樹脂組成物の加工性や成形性の低下を招くこともない。
本発明に用いる不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体における炭素−炭素二重結合は、特に限定されず、ビニレン基の形で主鎖中に存在しても、またビニル基の形で側鎖に存在していてもよく、要は酸化可能なものであればよい。
不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体は、酸素吸収性バリヤー樹脂組成物に対して1〜30重量%、特に3〜20重量%の範囲で含有されるのが好ましい。不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体の配合量が上記範囲内であれば、酸素吸収性層は十分な酸素吸収能を有し、樹脂組成物の成形性も維持することができる。
【0015】
酸素吸収性バリヤー樹脂組成物は、好ましくは酸化触媒を含む。
酸化触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属成分が好ましいが、他に銅、銀等の第I族金属:錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウムの第V族、クロム等VI族、マンガン等のVII族の金属成分を含む遷移金属触媒などが挙げられる。これらの金属成分の内でもコバルト成分は、酸素吸収速度が大きく、本発明の目的に特に適したものである。
遷移金属触媒は、上記遷移金属の低価数の無機酸塩或いは有機酸塩或いは錯塩の形で一般に使用される。
無機酸塩としては、塩化物などのハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ酸塩、硝酸塩などの窒素のオキシ酸塩、リン酸塩などのリンオキシ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。
一方有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩などが挙げられるが、カルボン酸塩が本発明の目的に好適であり、その具体例としては、酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、リンデル酸、ツズ酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ギ酸、シュウ酸、スルファミン酸、ナフテン酸等の遷移金属塩が挙げられる。
【0016】
一方、遷移金属の錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が使用され、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとしては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、1,3−シクロヘキサジオン、メチレンビス−1,3ーシクロヘキサジオン、2−ベンジル−1,3−シクロヘキサジオン、アセチルテトラロン、パルミトイルテトラロン、ステアロイルテトラロン、ベンゾイルテトラロン、2−アセチルシクロヘキサノン、2−ベンゾイルシクロヘキサノン、2−アセチル−1,3−シクロヘキサンジオン、ベンゾイル−p−クロルベンゾイルメタン、ビス(4−メチルベンゾイル)メタン、ビス(2−ヒドロキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセトン、トリベンゾイルメタン、ジアセチルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ラウロイルベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、ビス(4−クロルベンゾイル)メタン、ビス(メチレン−3,4−ジオキシベンゾイル)メタン、ベンゾイルアセチルフェニルメタン、ステアロイル(4−メトキシベンゾイル)メタン、ブタノイルアセトン、ジステアロイルメタン、アセチルアセトン、ステアロイルアセトン、ビス(シクロヘキサノイル)−メタン及びジピバロイルメタン等を用いることができる。
【0017】
前述した不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体の含有量は、一般的には酸素吸収性バリヤー樹脂組成物の合計重量に対して、1〜30重量%であり、好ましくは3〜20重量%である。
また、酸化触媒の含有量は、一般的には酸素吸収性バリヤー樹脂組成物の合計重量に対して、金属量として100〜1000ppmであり、好ましくは200〜500ppmである。
本発明の多層容器では、中間層に酸素吸収性バリヤー樹脂組成物を用いることで、内外層のオレフィン層の結晶化が促進するため、多層容器の耐熱性を高めることができる。中間層に用いる酸素吸収性バリヤー樹脂組成物は、基材樹脂と不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体のブレンド物でも良いが、結合していても良い。また結晶化を促進するような核剤等の第三成分を配合しても良い。
【0018】
本発明の多層容器は、溶融成形で得られ、容器胴部の熱分析において、30℃から100℃/分で130℃に昇温後の等温結晶化による発熱量が0.5J/g以上である。前記発熱量をこのような範囲とすることにより、成形時の歪みが緩和されるため、耐熱性に優れ、耐熱収縮性が改善された多層容器を得ることができる。前記発熱量は、好ましくは0.5〜2.0J/gであり、より好ましくは0.5〜1.6J/gである。
本発明の多層容器は、容器胴部の熱分析において、200℃から100℃/分で130°に降温後の等温結晶化プロファイルのピークトップまでの時間が、中間層として酸素吸収性バリヤー樹脂を構成する基材樹脂(酸素バリヤー樹脂)のみを用いた多層容器のよりも短い。前記時間を基材樹脂のみを用いた多層容器のよりも短くすることにより、短時間で高い結晶化度を得ることができるため、耐熱性に優れ、耐熱収縮性が改善された多層容器を得ることができる。前記時間は、好ましくは0.0〜3.0分であり、より好ましくは0.0〜1.0分である。
【0019】
本発明の多層容器は、各樹脂層間に必要により接着剤樹脂を介在させることもできる。このような接着剤樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸を主鎖又は側鎖に、1〜700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、好ましくは、10〜500meq/100g樹脂、の濃度で含有する重合体が挙げられる。
接着剤樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、共重合ポリエステル、共重合ポリアミド等があり、これらを2種以上の組み合わせたものでもよい。
これらの接着剤樹脂は、同時押出又はサンドイッチラミネーション等による積層に有用である。また、イソシアネート系又はエポキシ系等の熱硬化型接着剤樹脂も使用できる。
【0020】
本発明の酸素吸収性バリヤー樹脂組成物を用いる積層構造は、使用態様、要求される機能により適宜選択できる。特に、酸素バリヤー層を少なくとも一層有している構造が、酸素吸収層の寿命を向上することができるので好ましい。
本発明の酸素吸収性バリヤー樹脂組成物を用いる積層体においては、酸素吸収時に発生する副生成物を捕捉するために、酸素吸収層或いはそれ以外の層のいずれか、特に、酸素吸収層より内層側に脱臭剤或いは酸化副生成物の吸着剤を配合することが好ましい。
これらの脱臭剤或いは吸着剤としては、それ自体公知のもの、例えば、天然ゼオライト、合成ゼオライト、シリカゲル、活性炭、添着活性炭、活性白土、活性酸化アルミニウム、クレー、珪藻土、カオリン、タル区、ベントナイト、セピオライト、アタバルジャイト、酸化マグネシウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、合成ハイドロタルサイト、アミン担時多孔質シリカが使用できる。中でも、アミン担時多孔質シリカは、酸化副生成物であるアルデヒドとの反応性の点で好ましく、また、種々の酸化副生成物に対して優れた吸着性を示し、しかも透明である点でシリカ/アルミナ比が大きい所謂ハイシリカゼオライトが好ましい。ハイシリカゼオライトとしては、シリカ/アルミナ比(モル比)が80以上であることが好ましく、より好ましくは90以上であり、さらに好ましくは、100〜700である。このようなシリカ/アルミナ比のゼオライトは、シリカ/アルミナ比が低いゼオライトが吸着性を低下させてしまうような高湿度条件において逆に酸化副生成物の包装性能が向上するという性質を有しており、水分を含む内容品を包装する包装体に使用した場合、特に有効である。ハイシリカゼオライトの交換カチオンは、ナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の一種又は2種以上の混合物であることが必要である。この場合、交換カチオンとして少なくともナトリウムイオンを含有するのが好ましく、特に、実質的に全ての交換カチオンがナトリウムであるのが好ましいものとしてあげられる。
【0021】
本発明の多層構造体を用いた包装容器は、酸素による内容物の香味低下を防止できる容器として有用である。
充填できる内容物としては、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク、ウーロン茶、緑茶等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品等、その他では医薬品、化粧品、ガソリン等、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品などが挙げられるが、これらの例に限定されない。
【実施例】
【0022】
本発明を以下の実施例により更に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
1.測定方法
(1)昇温後の等温結晶化による発熱量
作製した多層容器の胴部を切り取り、DSC測定示差走査熱量計(DSC6220:SII社製)を用いて、30℃から100℃/分の速度で130℃まで昇温し、30分間保持したときの等温結晶化による発熱量を求めた。
【0023】
(2)降温後の等温結晶化プロファイルのピークトップまでの時間
中間層に基材樹脂のみを用いて作成した多層容器の胴部を切り取り、DSC測定示差走査熱量計(DSC6220:SII社製)を用いて、30℃から100℃/分の速度で230℃まで昇温し、5分間保持後、100℃/分の速度で130℃まで降温させ、30分間保持し等温結晶化を行なった。
得られたプロファイルにおいて、130℃で等温結晶化を開始した時点から発熱量が最大となるピークトップまでの時間を求めた結果4.43分であり(比較例1)、この値を基準値とした。
【0024】
2.評価[耐熱性]
作製した多層容器に、25℃の蒸留水を満注充填した時の重量(cc)(V1)を量り排出した後、100℃に沸騰した蒸留水を満注充填し、次いで、前記多層容器の収縮が完了した後の重量(cc)(V2)を量り、前記熱収縮による充填量の変化(V1−V2)/V1を重量変化率として算出した。
【0025】
(実施例1)
エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(32mol%のエチレンを共重合)(EP−F171B:(株)クラレ)から成る基材樹脂(酸素バリヤー樹脂)ペレットと、ネオデカン酸コバルト(コバルト含有率14wt%)(DICANATE5000:大日本インキ化学工業(株))から成る遷移金属触媒をタンブラーで混合し、コバルト量で350ppmのネオデカン酸コバルトを、前記基材樹脂ペレット表面に均一に付着させた。
次いで、出口部分にストランドダイを装着した二軸押出機(TEM−35B:東芝機械(株))を用い、スクリュー回転数100rpmで低真空ベントを引き、液体フィーダーにより、酸価40gKOH/gの無水マレイン酸変性ポリブタジエン(M−2000−20:日本石油化学(株))を、コバルトを付着させた基材樹脂950重量部に対して50重量部滴下し、成形温度200℃でストランドを引き、酸素吸収性バリヤー樹脂組成物のペレットを作製した。
そして、ポリプロピレン(EC9J:日本ポリプロ(株))、接着樹脂(アドマーQF551:三井化学(株))、上記作製した酸素吸収性バリヤー樹脂組成物のペレットを、Tダイ押出機に投入して3種5層のシートを作製した。
層構成及び厚みは、ポリプロピレン層(557μm)/接着樹脂層(24μm)/酸素吸収性バリヤー樹脂組成物層(38μm)/接着樹脂層(24μm)/ポリプロピレン層(557μm)であり、全シート厚みは1200μmである。
この多層シートを30cm角に切断後、遠赤外線ヒーターでシートの内外層を構成するポリプロピレンの融点(160℃)以上の180℃に加熱し、プラグアシスト真空圧空成形機を用いて溶融成形し、絞り比H/D=0.8、満注充填時の内容積が180mlの多層容器を作成した。
作成した多層容器の昇温後の等温結晶化による発熱量、降温後の等温結晶化プロファイルのピークトップまでの時間の測定、及び耐熱性の評価を行なった。
【0026】
(比較例1)
中間層を基材樹脂のみとした以外は、実施例1と同様に多層容器を作製し、前記測定及び評価を行った。
【0027】
(比較例2)
実施例1で得られた多層シートを、内外層を構成するポリプロピレンの融点(160℃)より低い温度の148℃に加熱し、プラグアシスト真空圧空成形機を用いて固相成形し、絞り比H/D=1.6、満注充填時の内容積が200mlの多層容器を作成し、前記測定及び評価を行なった。
【0028】
(比較例3)
中間層を基材樹脂のみとし、加熱温度を138℃とした以外は、比較例2と同様に固相成形して多層容器を作成し、前記測定及び評価を行った。
【0029】
表1に前記測定及び評価結果を示すが、表1から明らかなように、本発明の多層容器は溶融成形されていても熱収縮が少なく耐熱性に優れており、特に溶融成形された多層容器は、一般的に殺菌等の熱処理を行う用途に用いられることから、このような用途に好適であることが判る。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン樹脂を含む内外層と、前記内外層間に酸素吸収性バリヤー樹脂組成物からなる中間層を有する多層容器であって、
前記多層容器は、溶融成形されたものであり、
容器胴部の熱分析において、30℃から100℃/分で130℃に昇温後の等温結晶化による発熱量が0.5J/g以上であり、かつ、200℃から100℃/分で130°に降温後の等温結晶化プロファイルのピークトップまでの時間が、中間層として酸素吸収性バリヤー樹脂を構成する基材樹脂(酸素バリヤー樹脂)のみを用いた多層容器のよりも短い、前記多層容器。
【請求項2】
酸素吸収性バリヤー樹脂組成物が、基材樹脂に不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体及び酸化触媒を配合した樹脂を含む、請求項1記載の多層容器。
【請求項3】
酸素吸収性バリヤー樹脂組成物において、基材樹脂と不飽和エチレン結合を有する酸化性重合体とが結合している、請求項2記載の多層容器。
【請求項4】
基材樹脂が、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項記載の多層容器。

【公開番号】特開2008−162085(P2008−162085A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352792(P2006−352792)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】