説明

酸素消費電極およびその製造方法

【課題】先行技術の欠点を解消し、従って触媒のより良好な活用を確実にする、特に塩素アルカリ電解において使用するための酸素消費電極を提供する。
【解決手段】集電体、および触媒活性成分を有するガス拡散層を含んでなる酸素消費電極であって、ガス拡散層が、0.05μm〜5μmの範囲の平均径および10μm〜700μmの範囲の平均長さを有する触媒金属の触媒微粒子が触媒活性成分として導入されて集電体に電気伝導を伴って接続しているフッ素化ポリマー多孔質膜である酸素消費電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に塩素アルカリ電解において使用するための、触媒金属の針状結晶に基づく新規な触媒被膜を含んでなる酸素消費電極、および電気分解装置に関する。本発明は更に、酸素消費電極の製造方法、および塩素アルカリ電解または燃料電池技術における酸素消費電極の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ガス拡散電極の形態をとり、典型的には、導電性キャリヤー、および触媒活性成分を含んでなるガス拡散層を含んでなる、自体既知の酸素消費電極から出発している。
【0003】
工業規模で電解セルにおいて酸素消費電極を作動させるための様々な試みは、先行技術から基本的に知られている。基本的な考え方は、電気分解(例えば塩素アルカリ電解)における水素発生陰極を酸素消費電極(陰極)に置き換えることである。可能な電解セルの設計および方法の概説は、Moussallemらの文献 "Chlor-Alkali Electrolysis with Oxygen Depolarized Cathodes: History, Present Status and Future Prospects", J. Appl. Electrochem. 38 (2008) 1177-1194に見られる。
【0004】
酸素消費電極(以下、略してOCEとも称する)は、工業的電解セルに用いられるために一連の要件を満たさなければならない。例えば、使用する触媒および全ての他の材料は、典型的には80〜90℃の温度で、約32重量%の水酸化ナトリウム溶液および純酸素に対して化学的に安定でなければならない。それと同時に、電極は通常、2mを越える面積(工業規模)を有する電解セルに組み込んで作動させるので、高度の力学的安定性が要求される。更なる特性は、以下である:高い電気伝導性、小さい層厚さ、大きい内部表面積、および電解触媒の高い電気化学活性。気体空間および液体空間が互いに分離したままとなる程度に非透質であるように、気体および電解液が導通するのに適した疎水性および親水性細孔並びに相応の細孔構造が必要とされる。長期安定性および低い製造コストは、工業的に使用可能な酸素消費電極の更なる特定要件である。
【0005】
塩素アルカリ電解においてOCE技術を使用するための別の開発動向は、水酸化ナトリウム溶液を含むギャップを伴わない、電解セルにおいて陰極空間から陽極空間を分離するイオン交換膜のOCEへの直接適用の使用である。この装置は、先行技術においてゼロギャップ装置とも称されている。この装置は典型的には、燃料電池技術においても使用される。その際の欠点は、生成する水酸化ナトリウム溶液がOCEを通って気体側へ通過し、次いでOCEで下向きに流れなければならないことである。この過程において、OCEの細孔は水酸化ナトリウム溶液によって閉塞されてはならないし、水酸化ナトリウムは細孔内で結晶化してはならない。極めて高い水酸化ナトリウム溶液濃度がここで生じることもあるが、イオン交換膜がこれらの高い濃度に対して長期安定性を有さないことが見出されている(Lippら、J. Appl. Electrochem. 35 (2005)1015 - Los Alamos National Laboratory "Peroxide formation during chlor-alkali electrolysis with carbon-based ODC")。
【0006】
先行技術によれば、OCEは、通常PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、例えばTeflon(登録商標))に基づく微細分布疎水性細孔系を使用することによりOCE内の全部位が陰極側で使用される気体にとって利用可能となった細孔構造を有する。一方で、電解液膜によって覆われた親水性触媒は、最大表面積が電気化学反応に利用可能となる(これは、低いセル電圧をもたらす)ように、十分に細かく分布していなければならない。常套の製造方法である乾燥製造法または湿潤製造法では、PTFE粒子および触媒粒子を、OCEの製造に使用する。製造方法の過程において、これらの粒子を混合し、更に加工すると、電解液が溢れてガス細孔を含まない比較的大きい触媒粒子凝集物が存在する領域が常に生じる。十分な量の気体分子が触媒へ拡散できないので、そのような凝集物の内部にある触媒は実質的に不活性である。従って、多量の触媒物質が利用されないままである。
【0007】
Bidaultら(2010, Journal of Power Sources, "A novel cathode for alkaline fuel cells based on a porous silver membrane", 195, 第2549〜2556頁)は、銀多孔質膜に基づくガス拡散陰極を開発した。同文献の目的は、細孔を有する銀を用いることによって、触媒の高表面積を達成することであった。同文献では、銀の細孔をPTFEで被覆することが、細孔が電解液で完全に溢れることを防ぐために必要であることが見出されている。なぜなら、被覆しなければ、細孔は反応気体にとってもはや利用可能でなくなるからである。このタイプのガス拡散陰極の欠点は、PTFE被覆剤が細孔に浸透できなくなるので銀膜の非常に小さい細孔寸法を選択できず、従って表面積を有意に大きくできないことである。更に、細孔の過剰な被覆は、電極触媒反応に利用可能な銀表面積を低減する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Moussallemら、"Chlor-Alkali Electrolysis with Oxygen Depolarized Cathodes: History, Present Status and Future Prospects", J. Appl. Electrochem. 38 (2008) 1177-1194
【非特許文献2】Lippら、J. Appl. Electrochem. 35 (2005)1015 - Los Alamos National Laboratory "Peroxide formation during chlor-alkali electrolysis with carbon-based ODC"
【非特許文献3】Bidaultら、2010, Journal of Power Sources, "A novel cathode for alkaline fuel cells based on a porous silver membrane", 195, 第2549〜2556頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、先に記載した欠点を解消し、従って触媒のより良好な活用を確実にする、特に塩素アルカリ電解において使用するための酸素消費電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、集電体、および触媒活性成分を有するガス拡散層を含んでなる酸素消費電極であって、ガス拡散層が、0.05μm〜5μmの範囲の平均径および10μm〜700μmの範囲の平均長さを有する触媒金属の触媒微粒子が触媒活性成分として導入されて集電体に電気伝導を伴って接続しているフッ素化ポリマー多孔質膜である酸素消費電極である。
【0011】
本発明の別の態様は、触媒が触媒活性成分として銀を含んでなる前記酸素消費電極である。
【0012】
本発明の別の態様は、触媒粒子が0.1μm〜5μmの範囲の平均径および10μm〜700μmの範囲の平均長さを有する前記酸素消費電極である。
【0013】
本発明の別の態様は、集電体が透質導電性平板構造物である前記酸素消費電極である。
【0014】
本発明の別の態様は、集電体が可撓性布地構造物である前記酸素消費電極である。
【0015】
本発明の別の態様は、集電体に使用する材料がニッケルまたは銀被覆ニッケルである前記酸素消費電極である。
【0016】
本発明の別の態様は、フッ素化ポリマー膜の多孔率が40%〜90%である前記酸素消費電極である。
【0017】
本発明の別の態様は、フッ素化ポリマー膜の細孔が0.1μm〜10μmの平均径を有する前記酸素消費電極である。
【0018】
本発明の別の態様は、フッ素化ポリマー膜の密度が0.3〜1.8g/cmである前記酸素消費電極である。
【0019】
本発明の別の態様は、触媒粒子が銀からなる前記酸素消費電極である。
【0020】
本発明の別の態様は、触媒粒子が集電体上および膜細孔内に電解析出されたものである前記酸素消費電極である。
【0021】
本発明の更に別の態様は、前記酸素消費電極を含んでなるアルカリ型燃料電池または金属/空気電池である。
【0022】
本発明の更に別の態様は、前記酸素消費電極を酸素消費陰極として含んでなる電気分解装置である。
【0023】
本発明の更に別の態様は、
A)PTFE膜と、この膜内に多孔質膜厚さの少なくとも半分および最大2/3の深さまで達している透質導電性平板構造物状集電体とを供給し、場合によりプレスすることによって膜を集電体に結合させる工程、
B)フッ素化ポリマー膜を揮発性有機溶媒で含浸し、次いで、場合により添加剤の存在下、溶媒を水または金属塩水溶液に少なくとも部分的に置き換える工程、
C)次いで場合により、集電体を工程A)の膜に、多孔質膜厚さの少なくとも半分および最大2/3の深さまでプレスする工程、
D)集電体が陰極(3)として機能し、電気分解操作の過程で触媒金属の触媒粒子が集電体に向かって成長する電気分解操作によって、金属塩水溶液の存在下で触媒粒子を電解析出させる工程、
E)工程D)において形成された酸素消費電極を水およびアルコールで濯ぎ、次いで、酸素消費電極を乾燥する工程
を少なくとも含む、前記酸素消費電極の製造方法である。
【0024】
本発明の別の態様は、集電体が電解析出工程D)において直接的な接点接続を有するか、または集電体が載っているグラファイトシート(1)およびグラファイトシート(1)に適用されたグラファイト噴霧中間層(2)を通して電流を供給して電解析出工程D)の後にグラファイトシート(1)およびグラファイト噴霧中間層(2)を再び除去する、前記方法である。
【0025】
本発明の更に別の態様は、前記方法から得られた酸素消費電極である。
【0026】
本発明の別の態様は、フッ素化ポリマー多孔質膜がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜である前記酸素消費電極である。
【0027】
本発明の別の態様は、透質導電性平板構造物が金網、不織布、フォーム、織布、ブレード、編物、エキスパンデッドメタルである前記酸素消費電極である。
【0028】
本発明の別の態様は、可撓性布地構造物が金属フィラメントで形成されている前記酸素消費電極である。
【0029】
本発明の別の態様は、フッ素化ポリマー膜の細孔が0.2〜2μmの平均径を有する前記酸素消費電極である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の酸素消費電極の製造方法についての、電解セルを通る概略断面図(ノンスケール)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
先に記載した目的は、本発明によれば、集電体、および触媒活性成分を有するガス拡散層を少なくとも含んでなる酸素消費電極であって、ガス拡散層が、0.05μm〜5μmの範囲の平均径および10μm〜700μmの範囲の平均長さを有する触媒金属の触媒微粒子が触媒活性成分として導入されて集電体に電気伝導を伴って接続しているフッ素化ポリマー多孔質膜(特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜)であることを特徴とする酸素消費電極によって達成される。
【0032】
触媒粒子の長さと直径の比は、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも3:1である。触媒粒子は好ましくは、0.1μm〜5μmの範囲の平均径および10μm〜700μmの範囲の平均長さを有する。
【0033】
意外なことに、特にそのような微細な触媒粒子を有するPTFE多孔質膜を使用することにより、気体がPTFE膜に存在するガス細孔を介して、および反応に含まれる水、従ってイオンが触媒粒子周辺の電解液膜を介して良好に利用できる大きい触媒表面積が得られることが見出された。
【0034】
好ましい酸素消費電極は、触媒が触媒活性成分として銀を含んでなることを特徴とする。
【0035】
集電体は特に、メッシュ、不織布、フォーム、織布、ブレード、編物、エキスパンデッドメタルまたは他の透質平板構造物であってよい。集電体は好ましくは、特に金属フィラメントで形成された、可撓性布地構造物である。集電体に特に適した材料は、ニッケルおよび銀被覆ニッケルである。
【0036】
酸素消費電極の更に好ましい態様では、フッ素化ポリマー膜の密度は0.3〜1.8g/cmである。
【0037】
酸素消費電極の更に好ましい態様では、フッ素化ポリマー膜の細孔径は0.1〜10μmであり、平均細孔径は好ましくは0.2〜2μmである。
【0038】
酸素消費電極の別の好ましい態様では、フッ素化ポリマー膜の多孔率は40%〜90%である。新規な酸素消費電極の特に好ましい態様は、触媒粒子が銀からなることを特徴とする。
【0039】
新規な酸素消費電極の別の特に好ましい態様では、触媒粒子は、まず集電体上に、次いで膜細孔内に電解析出する。
【0040】
本発明は更に、
A)PTFE膜と、この膜内に多孔質膜厚さの少なくとも半分および最大2/3の深さまで達している(特に、金網、不織布、フォーム、織布、ブレード、編物またはエキスパンデッドメタルの)透質導電性平板構造物状集電体とを供給し、場合によりプレスすることによって膜を集電体に結合させる工程、
B)フッ素化ポリマー膜(特にPTFE多孔質膜)を揮発性有機溶媒(好ましくはC〜Cアルコール、より好ましくはイソプロピルアルコール)で含浸し、次いで、場合により添加剤(例えば光沢剤、特に、チオ尿素、サッカリン)の存在下、溶媒を水または(特に、銀塩、好ましくは硝酸銀、メタンスルホン酸銀、銀シアン化カリウム、銀チオ硫酸カリウム、乳酸銀、または白金塩、特にPt(NOまたはHPtCl、または特に電解セル中のニッケル塩および銅塩からなる群からの少なくとも1種の金属塩に基づく)金属塩水溶液に少なくとも部分的に置き換える工程、
C)次いで場合により、集電体を工程A)の膜に、多孔質膜厚さの少なくとも半分および最大2/3の深さまでプレスする工程、
D)集電体が陰極(3)として機能し、電気分解操作の過程で触媒金属の触媒粒子が集電体に向かって成長する電気分解操作によって、場合により添加剤(例えば光沢剤、特に、チオ尿素、サッカリン)の存在下、(特に、銀塩、好ましくは硝酸銀、メタンスルホン酸銀、銀シアン化カリウム、銀チオ硫酸カリウム、乳酸銀、または白金塩、特にPt(NOまたはHPtCl、またはニッケル塩および銅塩からなる群からの少なくとも1種の金属塩に基づく)金属塩水溶液の存在下で触媒粒子を電解析出させる工程、
E)工程D)において形成された酸素消費電極を水およびアルコールで濯ぎ、次いで、酸素消費電極を乾燥する工程
を少なくとも含む、酸素消費電極の製造方法も提供する。
【0041】
集電体が電解析出工程D)において外部電源との直接的な電気接点接続を有するか、或いは集電体上に載っているかまたは集電体に適用されていて電解析出工程D)の後に再び除去されるグラファイトシート(1)およびグラファイト噴霧中間層(2)を通して電流を供給することを特徴とする新規な方法が好ましい。
【0042】
新規な酸素消費電極は好ましくは、特にアルカリ金属塩化物(好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、より好ましくは塩化ナトリウム)を電気分解するための電解セルにおいて、陰極として接続する。
【0043】
別の態様では、酸素消費電極(OCE)は好ましくは、燃料電池における陽極として接続してよい。そのような燃料電池の好ましい例は、アルカリ型燃料電池である。
【0044】
従って、本発明は更に、特にアルカリ型燃料電池においてアルカリ性条件下で酸素を還元するための新規な酸素消費電極の使用、例えば次亜塩素酸ナトリウムを調製するための飲用水処理における新規な酸素消費電極の使用、または特にLiCl、KClまたはNaClを電気分解するための塩素アルカリ電解における新規な酸素消費電極の使用を提供する。
【0045】
新規なOCEは、より好ましくは塩素アルカリ電解において、本発明では特に塩化ナトリウム(NaCl)の電気分解において使用する。
【0046】
本発明の方法は例えば以下のように実施される:
電気分解操作において触媒粒子を電解析出させる工程である工程C)では、集電体メッシュが陰極(3)として機能し(図1参照)、触媒金属の触媒粒子が集電体メッシュに向かって成長し、はんだ付けワイヤを経て集電体メッシュへ直接的に陰極電流が供給される。別の態様として、陰極電流の供給は、集電体上に載っているかまたは集電体に適用されているグラファイトシート(1)およびグラファイト噴霧中間層(2)を介しても可能である。
【0047】
グラファイト噴霧中間層は例えば、製造後に洗い落としてよい。電解析出に使用する電気防食用陽極は特に、電流供給回路の陽極として接続されている触媒金属シート(7)である。
【0048】
弾性多孔質材料(6)(例えば、ポリウレタンフォーム、ゴム、ビスコースまたはセルロース、好ましくは電気メッキ浴を用いて含浸したセルロース)を用い、例えば、装置の全部材を電解析出のために一緒にプレスする。電界の故に、電流が装置を流れるとすぐ、触媒粒子がOCE表面に対して直角に成長する傾向がある。
【0049】
本発明を、以下の実施例によって図1を参照して詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0050】
先に記載した引用文献の全てを、有用な目的の全てのために、それらの全内容を引用してここに組み込む。
【0051】
本発明を具体的に表す特定の構造物を示し、記載したが、当業者には、本発明の概念の意図および範囲から逸脱することなく、その一部を様々に変更および再構成できること、および本発明がここに示し、記載した特定の態様に限定されないことが明らかであろう。
【0052】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の酸素消費電極の製造方法についての、電解セルを通る概略断面図(ノンスケール)を示す。
【0053】
図面の参照番号は、下記意味を有する。
1:グラファイトシート(陰極)
2:グラファイト噴霧中間層
3:集電体
4:触媒粒子
5:多孔質PTFE
6:弾性多孔質材料
7:金属シート(陽極)
【実施例】
【0054】
実施例1
厚さ1.0mmを有するGore-Tex(登録商標) DB 10-0-100ガスケットテープ1枚を、まずイソプロピルアルコールで含浸し、次いで脱気水で含浸した。直径41mmを有する円を打ち抜いた。ニッケル微細メッシュ上に水平に置き、活性領域約10cmを有する電解セルにしっかりと組み込んだ。2モルの脱気硝酸銀溶液を電解セルに導入し、硝酸銀溶液をPTFE膜の細孔に浸透させるためにセルを一日間放置した。硝酸銀溶液で含浸した厚さ約2mmを有するセルロース中間層と一緒に、直径36mmの銀シート陽極を荷重2.3kgでプレスした。陰極としてのニッケルメッシュおよび陽極としての銀シートの上に直接はんだ付けしたワイヤで、電流を供給した。
【0055】
電気分解操作は、まず電流2Aで15秒間実施した。次いで、100mAの電流を、2V未満のセル電圧で3.5時間流した。電解セルを開けて濯いだ後、触媒粒子がPTFE多孔質膜を通ってセルロース内へと成長したことを確認した。触媒粒子は、PTFE膜表面まで移動した。次いで、製造したOCEを、水酸化ナトリウム溶液中の酸素消費陰極として、活性領域3cmを有し、先行技術に相当するハーフセル試験装置において使用した。純酸素を用いた操作では、標準水素電極に対する−400mVの電位での酸素還元について、50A/mの電流密度に達した。これにより、電極触媒活性銀触媒粒子が形成され、この粒子が気体酸素と水酸化ナトリウム溶液の両方にとって利用可能であることがわかる。
【0056】
実施例2(比較例)
比較のため、同じ条件下、同じハーフセル試験装置に非多孔質銀シートを組み込み、電解液だけを酸素で飽和させた。この実験では、電流密度は僅か1A/mであった。
【0057】
実施例3
Gore-Tex DB 10-0-100PTFEガスケットテープに代えて、Gore-Tex GR平形ガスケットおよび圧延ニッケル微細メッシュを用いた以外は、実施例1のように実験を行った。脱気硝酸銀溶液は、60重量%(約7モル)の濃度を有していた。触媒粒子は、電流20A、セル電圧約10Vで30秒以内に析出した。酸素消費陰極として使用すると、製造した電極は、標準水素電極に対する−600mVの電位で1400A/mの電流密度に達した。電極電位に含まれる(定電流スイッチオフ測定によって測定した)約17mV/kAm−2の電圧における小さな抵抗降下は、触媒粒子が電流供給回路と水酸化ナトリウム溶液電解液の両方に完全に接触していることを示している。
【符号の説明】
【0058】
1:グラファイトシート(陰極)
2:グラファイト噴霧中間層
3:集電体
4:触媒粒子
5:多孔質PTFE
6:弾性多孔質材料
7:金属シート(陽極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体、および触媒活性成分を有するガス拡散層を含んでなる酸素消費電極であって、ガス拡散層が、0.05μm〜5μmの範囲の平均径および10μm〜700μmの範囲の平均長さを有する触媒金属の触媒微粒子が触媒活性成分として導入されて集電体に電気伝導を伴って接続しているフッ素化ポリマー多孔質膜である酸素消費電極。
【請求項2】
触媒が触媒活性成分として銀を含んでなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項3】
触媒粒子が0.1μm〜5μmの範囲の平均径および10μm〜700μmの範囲の平均長さを有する、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項4】
集電体が透質導電性平板構造物である、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項5】
集電体が可撓性布地構造物である、請求項4に記載の酸素消費電極。
【請求項6】
集電体に使用する材料がニッケルまたは銀被覆ニッケルである、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項7】
フッ素化ポリマー膜の多孔率が40%〜90%である、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項8】
フッ素化ポリマー膜の細孔が0.1μm〜10μmの平均径を有する、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項9】
フッ素化ポリマー膜の密度が0.3〜1.8g/cmである、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項10】
触媒粒子が銀からなる、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項11】
触媒粒子が集電体上および膜細孔内に電解析出されたものである、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項12】
請求項1に記載の酸素消費電極を含んでなるアルカリ型燃料電池または金属/空気電池。
【請求項13】
請求項1に記載の酸素消費電極を酸素消費陰極として含んでなる電気分解装置。
【請求項14】
A)PTFE膜と、この膜内に多孔質膜厚さの少なくとも半分および最大2/3の深さまで達している透質導電性平板構造物状集電体とを供給し、場合によりプレスすることによって膜を集電体に結合させる工程、
B)フッ素化ポリマー膜を揮発性有機溶媒で含浸し、次いで、場合により添加剤の存在下、溶媒を水または金属塩水溶液に少なくとも部分的に置き換える工程、
C)次いで場合により、集電体を工程A)の膜に、多孔質膜厚さの少なくとも半分および最大2/3の深さまでプレスする工程、
D)集電体が陰極(3)として機能し、電気分解操作の過程で触媒金属の触媒粒子が集電体に向かって成長する電気分解操作によって、金属塩水溶液の存在下で触媒粒子を電解析出させる工程、
E)工程D)において形成された酸素消費電極を水およびアルコールで濯ぎ、次いで、酸素消費電極を乾燥する工程
を少なくとも含む、請求項1に記載の酸素消費電極の製造方法。
【請求項15】
集電体が電解析出工程D)において直接的な接点接続を有するか、または集電体が載っているグラファイトシート(1)およびグラファイトシート(1)に適用されたグラファイト噴霧中間層(2)を通して電流を供給して電解析出工程D)の後にグラファイトシート(1)およびグラファイト噴霧中間層(2)を再び除去する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法から得られた酸素消費電極。
【請求項17】
フッ素化ポリマー多孔質膜がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜である、請求項1に記載の酸素消費電極。
【請求項18】
透質導電性平板構造物が金網、不織布、フォーム、織布、ブレード、編物、エキスパンデッドメタルである、請求項4に記載の酸素消費電極。
【請求項19】
可撓性布地構造物が金属フィラメントで形成されている、請求項5に記載の酸素消費電極。
【請求項20】
フッ素化ポリマー膜の細孔が0.2〜2μmの平均径を有する、請求項8に記載の酸素消費電極。

【図1】
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【公開番号】特開2013−67858(P2013−67858A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−208581(P2012−208581)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(512137348)バイエル・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (91)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Intellectual Property GmbH
【Fターム(参考)】