説明

酸素濃縮装置とその起動制御方法

【課題】低回転領域で起動した場合にも起動直後から安定した原料空気を吸着部に供給することができる酸素濃縮装置を提供すること。
【解決手段】回転体を内蔵して圧縮空気を発生する圧縮空気発生部105と、前記圧縮空気を内部に導入して該内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を分離生成する吸着部とを備える酸素濃縮装置において、前記圧縮空気発生部は、生成する前記酸素流量に応じて前記回転体の回転数が適切な回転数となるように制御する制御部200を有しており、該制御部は、装置起動時に前記回転体の回転数を前記決められた回転数よりも高い回転数で駆動する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中から酸素を分離生成する酸素濃縮装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
肺に疾病を抱える患者が高濃度の酸素を吸引するために使用する酸素濃縮器は種々提案されており、大気の一部を用いてコンプレッサにより圧縮空気を作り、該圧縮された空気を吸着用の筒体内部に送り込み、該吸着筒体内の吸着剤に窒素を吸着させることにより生成した酸素を、鼻カニューラを用いて、患者に摂取させる比較的コンパクトな酸素濃縮装置としては特許文献1のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−137853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、上述のような酸素濃縮装置では、圧縮と減圧の両機能を持つコンプレッサを用いることにより、小型で効率良い装置を実現しているが、他方、比較的振動の発生が大きいという欠点がある。
特許文献1は、本出願による提案によるものであるが、この装置は、このような低酸素流量時の振動を効率良く抑制することを実現したものである。
【0005】
しかしながら、酸素濃縮装置を起動する際には、別の問題として、以下のような問題がある。
すなわち、図10、図11において、これらグラフの横軸に並ぶ各数字は、それぞれ酸素濃縮装置の各製品16台に対応しており、縦軸は、これらの各装置を起動して、酸素を生成し、バッファタンクに貯留されて90kPaに達するのに要するコンプレッサの加圧時間を示している。
【0006】
図10では、通常の室温環境を想定した、例えば、摂氏23度(以下、温度表示は全て「摂氏」)に非動作状態で24時間保管した後、比較的低い設定流量(酸素流量)として、1L(リットル)に設定した場合を示している。
低い設定流量とした場合は、吸着筒に送られる圧縮空気量も少ないので、この場合のコンプレッサ回転数は例えば1000rpmである。
図示されているように、16台全ての装置が約12秒程度で90kPaに達している。
【0007】
図11は、冬場等の比較的低い室温環境を想定した実験の結果を示している。
具体的には、0度で24時間保管して、図10と同様に比較的低い設定流量(酸素流量)として、1L(リットル)に設定して運転したところ、16台全てについて、ばらつきはあるものの、90kPaに達するのに長時間を要し、ひどい場合には60秒近くかかり、所要時間がほぼ5倍に伸びている。
【0008】
このような時間を要した原因を図12、図13を参照して説明する。
図12は、コンプレッサ内のシリンダ内で動く浅いカップ状の形態をしたピストンヘッドを示しており、常温時には、シリンダとピストンがほぼ隙間なく接触していてシール性は良好となるようにされている。
しかしながら、図13に示すように、環境温度が低温になると、ピストンヘッドの外径が収縮して隙間を生じ、隙間からのリークによって圧縮空気を生成する効率が落ちてしまう。
本発明者等の試みによると、コンプレッサ回転数が1300rpm未満で、環境温度が10度以下の場合にこのような傾向があらわれることが確認されている。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、低回転領域で起動した場合にも起動直後から安定した原料空気を吸着部に供給することができる酸素濃縮装置とその起動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、本発明にあっては、ピストンを駆動する回転体を内蔵して圧縮空気を発生する圧縮空気発生部と、前記圧縮空気を内部に導入して該内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を分離生成する吸着部とを備える酸素濃縮装置において、前記圧縮空気発生部は、生成する前記酸素流量に応じて前記回転体の回転数が適切な回転数となるように制御する制御部を有しており、該制御部は、装置起動時に前記回転体の回転数を前記決められた回転数よりも高い回転数で駆動する構成とした酸素濃縮装置により、達成される。
上記構成によれば、起動時に、圧縮空気発生部に内蔵されるピストンのピストンヘッドとシリンダとの間の隙間からリークが生じていたとしても、圧縮空気発生部の回転体の回転数を通常よりも高くすることにより、その分必要圧力を得るための加圧時間が短くなり温度が適切に上昇して、ピストンヘッドが膨張し、リークを減少もしくは止めることができるから、沢山の原料空気を送ることができ、必要な量の酸素を短時間で得ることができる。
【0011】
酸素濃縮装置が前記生成する酸素流量を切り替える手段を備えており、少ない酸素流量に設定されて運転される際に、該設定された酸素流量に対応して前記回転体について予め決められた回転数よりも高い回転数で駆動する構成とすることができる。
上記構成によれば、装置の運転モードとして、少ない酸素流量に設定されている場合には、圧縮空気発生部の回転体の回転数がもともと少なく、加圧時間がかかるので、ピストンヘッドとシリンダ間のリーク防止のためにはより有効である。
【0012】
装置が置かれる環境温度を検出する手段を備えており、該温度検出手段により所定以下の温度が検出されると、設定された酸素流量に対応して前記回転体について予め決められた回転数よりも高い回転数で駆動する構成とすることができる。
上記構成によれば、装置が置かれる環境温度が低い場合には、圧縮空気発生部に内蔵されているピストンヘッドとシリンダ間にリークが発生し易いので、圧縮空気発生部の回転体の回転数を通常よりも高くして、加圧時間を短縮し、温度上昇によりピストンヘッドが膨張するのを抑制して、リークを減少もしくは止めることができる。
また、前記圧縮空気発生部の圧力及び回転数が高まることによる温度上昇を抑制するための冷却ファンを有し、生成する前記酸素流量に応じて適切なファン回転数となるように制御する制御部を有しており、該制御部は、装置起動時には、当該冷却ファンを停止するか、当該決められたファン回転数よりも低い回転数で駆動する構成とすることができる。
上記構成によれば、冷却ファンを停止するか、あるいは前記酸素流量に対応して決められたファン回転数よりも低い回転数で駆動することによって、圧力の上昇に対応した温度上昇を抑制するための冷却機能を停止させるか低減させることになる。これにより、その分高温となって、ピストンヘッドが膨張し、リークを減少もしくは止めることができるから、沢山の原料空気を送ることができ、必要な量の酸素を短時間で得ることができる。
【0013】
本発明は、ピストンを駆動する回転体を内蔵して圧縮空気を発生する圧縮空気発生部と、前記圧縮空気を内部に導入して該内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を分離生成する吸着部とを備える酸素濃縮装置の起動制御方法であって、起動時には、起動に際して設定される酸素流量に応じてあらかじめ決められている前記回転体の回転数よりも高い回転数で起動時の運転を行うことを特徴とする酸素濃縮装置の起動制御方法である。
【0014】
前記起動時に選定された酸素設定流量を判断し、少ない酸素流量に設定されて運転される際に、該設定された酸素流量に対応して前記回転体について予め決められた回転数よりも高い回転数で起動時の運転を行うこととしてもよい。
【0015】
前記起動時に環境温度を検出して、所定以下の温度が検出されると、設定された酸素流量に対応して前記回転体について予め決められた回転数よりも高い回転数で起動時の運転を行うこととしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、低回転領域で起動した場合にも起動直後から安定した原料空気を吸着部に供給することができる酸素濃縮装置とその起動制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態にかかる酸素濃縮装置の外観斜視図。
【図2】図1の装置の操作パネルの概略平面図。
【図3】図1の装置の内部構造を示す分解斜視図。
【図4】図1の装置の系統図。
【図5】本発明の第1の実施形態としてのブロック構成図。
【図6】本発明の第1の実施形態の運転制御の一例を示すフローチャート。
【図7】本発明の第2の実施形態としてのブロック構成図。
【図8】本発明の第2の実施形態の運転例を示す説明図。
【図9】本発明の第2の実施形態の運転制御の一例を示すフローチャート。
【図10】酸素濃縮装置の起動時の加圧時間を示すグラフ。
【図11】酸素濃縮装置の起動時の加圧時間を示すグラフ。
【図12】酸素濃縮装置のコンプレッサ内のピストン部分の概略部分拡大図。
【図13】酸素濃縮装置のコンプレッサ内のピストン部分の概略部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態にかかる酸素濃縮装置の外観斜視図、図2はその操作パネルの概略平面図である。
これらの図において、酸素濃縮装置10は、たとえば、上端に取っ手となるハンドル12を設けた縦長の本体ケース11を備えている。
本体ケース11を除く内部構造は、後述する図3に示されている。
本体ケース11の上端付近において、やや前傾して設けた操作パネル13には、左から順に、ダイヤル式の電源スイッチ14と、酸素出口15と、酸素流量設定スイッチ16と、例えば、LEDまたは液晶表示等にて、セグメント数字で表示を行う酸素流量表示部18が配置されている。また酸素出口15の上方には、該酸素出口15に形成された段差部に対して気密状態に係合されるとともに、着脱自在に設けられるカプラ21が示されている。このカプラ21には鼻カニューラ22等のチューブ23の開口部が連通するようにセットされている。
【0020】
本体ケース11の底蓋26には、4つのゴム足27が四隅に固定されており、床面上に設置して使用するときに横滑りを防止している。
一方、外出時等の移動時に使用するキャリア25が2本の固定ネジで底蓋26に対して固定できるように構成されている。このキャリア25には、上記の各ゴム足27を収容できる孔部が対応位置に穿設されるとともに、図示のように四隅に樹脂製の自在キャスタが配置されている。
【0021】
図2は、上述した操作パネル13を拡大して示している。
電源スイッチ14は図示のオフ位置と約90度分時計周りに回転したオン位置との間で操作される。この電源スイッチ14のオン位置に相当する位置には緑と赤に点灯する例えば発光LED等を内蔵した運転状態ランプが設けられている。また、この運転状態ランプの上にはバッテリ残量モニタが設けられている。
【0022】
また、中央の酸素出口15の上には「点検」の文字またはこれに相当するキャラクター表示等を横に印刷した警報表示部が配置され、この警報表示部の下方には緑と赤と黄色とに点灯する例えば発光LEDを内蔵した酸素ランプが設けられている。
酸素流量設定スイッチ16は、上下矢印を印刷したフラットスイッチ16a,16bとして設けられている。この酸素流量設定スイッチ16は、90%程度以上に濃縮された酸素を毎分当たり0.25L(リットル)から最大で5Lまで0.25L段階または0.01L段階で押圧操作する度に酸素流量が設定できるように構成されており、上方の酸素流量表示部18で、その時の流量設定を表示することにより、酸素生成能力を変えることが可能である。また、同調ランプ19は、濃縮酸素を呼吸同調により断続供給状態で運転中であることを点灯または点滅表示により患者に知らせるために設けられている。
【0023】
図3は、酸素濃縮装置10の内部構成を示すために背面側から見た立体分解図である。下方より、上記のゴム足27を四隅に固定した図1にて二点鎖線で示した樹脂製の底蓋26が、同じく樹脂製のベース体40の底面に対して複数の固定ネジを用いて固定されている。
このベース体40は、四面から下方に向けて連続形成された壁面を一体成形した箱状に成形されており、図示のように裏面の壁面上には、上記の各コネクタ131、130が固定されている。図1のケース本体11に設けた図示しない裏面カバーの各排気口に対向するとともに内部の電源室に連通する排気口40c、40cが図示のように穿設されており、これらの排気口40cを介して最終的な外部排気が行われる。このベース体40の上面は図示のように平らに形成されるとともに、図示のように形成される二段式防音室34の左右面と裏面の三方側から固定ネジで固定するための孔部を穿設した起立部40fを3方から一体成形している。また、上記の電源室に連通した排気用開口部40bをさらに穿設している。
【0024】
次に、二段式防音室34は、図面の手前側の側方から出し入れ可能な上段部材36上に2個の送風ファン104を固定し、同じく側方から出し入れ可能な下段部材37上に設けた圧縮空気発生部としてのコンプレッサ105を防振状態で配設した密閉箱35として上記のような軽量金属板から構成されている。
この二段式防音室34は、図示のように手前側に示した防音室蓋39と奥側に示した防音室蓋38を、図示のように複数の固定ネジで固定するようにしている。このために二段式防音室34は、図示のように曲げ加工されるとともにインサートナットを植設した取付部が一体的に設けられている。この防音室内部には防音材51が敷設される。また外周面には制振部材であって、合成ゴムと特殊樹脂材料を混合した素材をシート状のものが敷設されており、アルミの薄板製である二段式防音室34自体が共鳴などで振動防止している。
【0025】
この二段式防音室34の上段部材36の上方の左右の側壁面には実線図示の第1開口部35a(破線図示)が穿設されており、外気を内部に導入するように構成されている。この上段部材36には、図4で説明する配管24をラバーブッシュを介して固定するための複数の固定孔36hが穿設されており、配管24を支持するとともに振動防振機能をラバーブッシュと協働して行うように構成されている。
また、各送風ファン104は、例えば、インバータ制御のシロッコファンを用いることができる。各送風ファン104は、それぞれの送風口が下方に向くようにしてブラケットを用いて上段部材36に固定されている。この各送風ファン104の間には上記の三方向切換弁109a,109b等が配置されている。さらに、各送風ファン104には、ファン回転検出部126がもうけられている。ファン回転検出部は、例えば、インタラプタ型フォトセンサ等の回転検出計等を利用することができる。
【0026】
この二段式防音室34の左側の側壁面には筒状の吸着筒体108a、108bが、吸気用バッファタンク101と並べて配置されており側壁面に固定された固定具49kにバンド49を通過後にバンド49を締め上げることで図示のように固定されている。このとき、吸着筒体108はベース体40の上面に載るが、全長の長いバッファタンクは開口部40d中に一部が挿入されて固定される。
【0027】
製品タンク111は真空成形されるポリエチレン樹脂製であって図示のように長手方向に横たえて上方に配置される。上記の遮蔽板32も軽量化のために樹脂製であり、図示のようにスピーカ23と外部コネクタ133を設けており、二段式防音室34の上方の外壁面に対して固定ネジを用いて固定される補強を兼ねた取り付け部を一体成形している。また、二段式防音室34の上方の壁面には放熱部材52、53が固定ネジで固定されるとともに上記の各制御基板200(後述するCPU200を含む基板)、201(モータ制御部を含む基板)他が起立状態で固定されており放熱効果を高めている。なお、この遮蔽板32は上記のように一部が外部に出るので黒色顔料を用いて黒色に着色されている。
この二段式防音室34の右側の側壁面には酸素センサ114と比例開度弁115と圧力調整器112と流量センサ116とデマンド弁117と回路基板202と温度センサ125が固定されている。
【0028】
図4は、酸素濃縮装置10の系統図(配管図)である。
図において、二重線は空気、酸素、窒素ガスの流路であり概ね配管24a〜24gで示されている。また、細い実線は電源供給または電気信号の配線を示している。
ここで、以下の説明ではコンプレッサ105として圧縮手段(圧縮空気発生部)と減圧手段(負圧発生部)を一体化構成したものを用いる場合について述べる。しかしながら、この構成に限定されず圧縮空気発生部と負圧発生部を個別に構成しても良いことは言うまでもない。また、外気を吸気口を介して内部に導入し、排気口を介して外部に排出する表面カバーと裏面カバー(ケース本体11の一部)については密閉容器として図中破線で図示されている。
【0029】
図4において、導入空気の流れに沿って順次述べると、上記のフィルタ交換用蓋体に内蔵された外気導入用フィルタ20を通過して酸素濃縮装置100内部に空気(外気)が矢印F方向に導入される。この空気は、一対の送風ファン104、104による送風により二段式防音室34内に入る。上述したように、二段式防音室34では上段部材上に送風ファン104、104を配設し、下段部材にコンプレッサ105を防振状態で配設した二段式防音室34(破線図示の)側面に穿設された開口部を介して二段式防音室34内に空気が入る。この空気の一部をコンプレッサ105の圧縮手段105aに対して原料空気として供給するために、配管24aの開口部が二段式防音室34内に開口して設けられており、配管24aの途中に二次濾過を行う吸気フィルタ101と大容量の吸気マフラ102とが設けられている。このように構成することで原料空気の吸気音が二段式防音室34内に留まるようにして吸気音を低減している。
【0030】
一方、この二段式防音室34は軽量化のために厚さ約0.5mm〜2.0mmの強化軽合金、アルミ合金、チタン合金板または他の好適な材料から構成される。このように薄板から構成するとネジ孔部の強度が確保されない。そこでネジ孔部としてインサートナットを適所に固定している。この二段式防音室34の内部には原料空気を圧縮して圧縮空気を発生する圧縮手段105aと、減圧手段105bとを好ましくは一体構成したコンプレッサ105が防振状態で固定されている。このコンプレッサ105に近接して、温度的環境がほぼ同一の箇所に温度センサ125が配置されている(あわせて図3参照)。
【0031】
次に、濾過された原料空気は、コンプレッサ105の圧縮手段105aで加圧されて圧縮空気となるがこのとき温度上昇した状態で配管24cに送り出されるので、この配管24cを放熱効果に優れた軽量の金属パイプとし、送風ファン104からの送風で冷却すると良い。このように圧縮空気を冷却することで高温では機能低下する吸着剤であるゼオライトが窒素の吸着により酸素を生成するための吸着剤として、十分に酸素を90%程度以上に濃縮できることとなる。
【0032】
圧縮空気は配管24cを介して吸着部としての第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bに対して交互に供給される。このため切換弁(三方向切換弁)109a、109bが図示のように接続されている。これらの切換弁109a、109bと、さらに第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bの不要ガスを脱離させるため(パージ(浄化)を行うため)に減圧手段105bに連通する配管24fに負圧破壊第1弁120と負圧破壊第2弁(圧調整弁)121が直列に複数(少なくとも2つ)配置されている。これらを開くことで後述するように、配管24f内の圧力を均圧工程時には大気圧付近まで、所定流量以下では圧力コントロールすることでコンプレッサの振動抑制と低電量化を図っている。
【0033】
第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b内に夫々貯蔵されている触媒吸着剤の一例としては、ゼオライトが用いられている。
一方、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108bの上方の出口側には逆止弁と、絞り弁と開閉弁とからなる均等圧弁107が分岐接続されている。また、均等圧弁107の下流側は合流するように配管24dが成されており、分離生成された90%程度以上の濃度の酸素を貯蔵するための容器となる製品タンク111が図示のように配管されている。また、各吸着筒体内の圧力を検出する圧力センサ208が図示のように配管される。
【0034】
製品タンク111の下流側には、出口側の酸素の圧力を一定に自動調整する圧力調整器112が配管されている。この圧力調整器112の下流側には、ジルコニア式あるいは超音波式の酸素(濃度)センサ114が接続されており、酸素濃度の検出を間欠(10〜30分毎)または連続で行うようにしている。この下流側には上記の酸素流量設定スイッチ16に連動して開閉する比例開度弁115が接続されており、その下流側には酸素流量センサ116が接続されている。またこのセンサ116の下流には呼吸同調制御のための負圧回路基板を介してデマンド弁117が接続されており、滅菌フィルタ119を経て、酸素濃縮装置10の酸素出口15に対して接続されている。以上の構成により、鼻カニューレ22等を経て患者に対する最大流量5L/分で約90%程度以上に濃縮された酸素の吸入が可能になることとなる。
【0035】
次に、図4において電源系統は、AC(商用交流)電源を所定直流電圧に整流するスイッチングレギュレータ式のACアダプタ19に接続されたAC電源のコネクタ130を中継して接続されるACアダプタ19と、装置本体に内蔵される内蔵バッテリ228と、上記のコネクタ131を介して着脱自在可能に設けられる外部バッテリ227と電源制御回路226から構成されている。内蔵バッテリ228および外部バッテリ227は繰り返し充電可能な2次電池であり、内蔵バッテリ228は電源制御回路226からの電力供給を受けて充電される。なお、少なくとも内蔵バッテリ228は、少なくとも500回(数100回程度)程度の繰り返し充放電が可能で、バッテリ残量、使用充放電サイクル数、劣化程度、出力電圧等のマネジメント機能を有するものが使用され、バッテリ残量、残充電容量、充放電回数を外部の携帯端末などで確認可能なマネジメント機能を有するものが好ましい。
【0036】
また、外部バッテリ227については、コネクタ131を介する接続状態において、電源制御回路226からの電力供給を受けて充電することもできるが、通常は別途準備されるバッテリチャージャーを用いて繰り返し充電される。または、専用設計されたバッテリチャージャーを一体化した外部バッテリ227として準備しても良い。
以上の電源系統の構成において、酸素濃縮装置はACアダプタ19からの電力供給を受けて作動する第1電力供給状態と、内蔵バッテリ228からの電力供給を受けて作動する第2電力供給状態と、外部バッテリからの電力供給を受けて作動する第3電力供給状態との3系統の電力供給状態の内の一つに自動切換えされて使用される。
【0037】
この自動切換えのための優先順位は上記の第1電力供給状態、第3電力供給状態、第2電力供給状態の順序で自動決定するように中央制御部200により電源制御回路226が制御される。
また、電源制御回路226と、内蔵バッテリ228については酸素濃縮装置100の低重心化を図るために後述するように底面に配設される。一方、外部バッテリ227は上記のようにキャリア25の収容部に内蔵されることで外出時などで使用可能になる。この外部バッテリ227には上記の充電残量表示部他が設けられているので残り使用時間を音声ガイドとともに知ることができる。
【0038】
ACアダプタ19は周波数の違いの影響および電圧の変動を受けずに所定直流電圧を発生することが可能であり、かつまた小型軽量に構成できるスイッチングレギュレータ式が良いが、通常のトランス式でも良い。また、内蔵バッテリ228および外部バッテリ227は充電時のメモリ効果が少なく再充電時にも満杯充電できるリチウムイオン、リチウム水素イオン2次電池が良いが、従来からのニッカド電池でも良い。
さらに、緊急時に備えて、どこでも入手可能な単2乾電池のボックスとして外部バッテリを構成しても良い。
【0039】
また、酸素濃縮装置100の中央制御部200は、生成する酸素量に応じた、最適な動作モードに切り替える機能を備えており、自動的にコンプレッサ105、送風ファン104を、多くの酸素生成をする場合は高速に、少ない酸素生成時において低速に回転駆動する制御を行うことで特に、内蔵バッテリ228を温存させるようにしている。この結果、外部バッテリ227を充電し忘れた場合であっても突然の外出時や停電時等の対応が可能になるように配慮されている。
【0040】
また、中央制御部200にはコンプレッサ105の回転体である直流モータおよび送風ファン104のモータの駆動制御を夫々行うモータ制御部201および上記のスピーカ23に接続されることで音声内容を発生する音声制御部203が接続されている。
【0041】
この中央制御部200には所定動作プログラムを記憶したROMが内蔵されるとともに、記憶装置210と揮発メモリ205と一時記憶装置206とリアルタイムクロック207とがさらに接続されており、外部コネクタ133を介して通信回線などと接続することで記憶内容へのアクセスが可能となるように構成されている。
【0042】
また、上記の三方向切換弁109a、109bと均等圧弁107と、第1吸着筒体108aと第2吸着筒体108b内の不要ガスを脱離させるための負圧発生部105bと配管24f内の圧力を制御するための負圧破壊第1弁120と負圧破壊第2弁121と酸素濃度センサ114と比例開度弁115と、流量センサ116とデマンド弁117を駆動制御する弁及び流量制御部202が中央制御部200に接続されている。
【0043】
ところで、総重量が約1kgのコンプレッサ105はモータ制御部201に内蔵される可変速度制御器であって正弦波駆動波形によりモータの駆動制御が行われることで運転音を低くしている。このコンプレッサ105は、各速度で運転可能であって、必要な真空(負圧)/正圧の圧力レベルと流量を発生でき、僅かな騒音と振動しか出さず、僅かな熱しか発生せず、小型軽量であって僅かな電力消費で運転できることが好ましい。
【0044】
可変速度制御手段である可変速度制御器をモータ制御部201に備えることにより、患者の活動レベル、環境条件に基づいてコンプレッサ105の速度を自在に変化させることができる。この結果、患者が座ったり、寝たりしている等、患者の酸素要求が比較的低いことがデマンド弁117によって呼吸同調により判断されると、コンプレッサ105の駆動回転速度を自動的に落とすことができる。また、患者が立ったり、活動的であったり、酸素濃度の低い高地にいるときなど、患者の酸素要求が比較的高く、酸素要求量が高まったと判断されると速度を自動的に高めることができるように構成されている。
【0045】
以上のモータ制御によって酸素濃縮装置10全体の消費電力が低減され、充電式バッテリでの駆動時の寿命を延ばすことが可能になるとともに、充電式バッテリの重量と大きさを軽減し、コンプレッサ105の摩耗度を低めて寿命を延ばすことで信頼性を向上できる。
【0046】
このコンプレッサ105は、上記のように圧縮空気発生と負圧発生の両方の機能を備えるものであり、取り出される酸素流量に応じて回転数が自動制御される。具体的には、回転速度が500rpmから3000rpmの間で制御され、通常の速度である1700rpm程度で回転するときの操作寿命を15000時間と長くできるようにしている。また、このコンプレッサ105は、空気を100kPa、好ましくは75kPa程度に圧縮する性能を備えている。また、上記の操作寿命が経過すると音声ガイドにて知らせる機能を備えている。
【0047】
ここで、冷却ファンである送風ファン104を駆動するファンモータは、例えば、例えば、三層交流モータを利用することが、VVVF制御することができる。これにより、例えば、商用交流電源から得た交流電流を所定のインバータ回路を介して、該ファンモータに供給する。
すなわち、交直(AC−DC)変換後に、電圧を可変し、直交変換して三層交流電流を作り出し、その周波数を可変(PWM−パルス幅変調)して所望の回転数制御を行う。これにより、ファンモータの回転数制御を容易に行うことができるようにされている。
【0048】
図5は、酸素濃縮装置10の起動制御装置70の構成を示す図である。
鎖線で示す範囲、すなわち、符号200で示す範囲は、図4の中央制御部200の構成の一部を利用することにより実現することができる。
すなわち、中央制御部200は、全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)でなる制御部を含む制御回路(IC)でなり、この中央制御部200には、計時部207としてのリアルタイムクロック、温度センサー125、記憶装置210が接続されている。記憶装置210は、中央制御部200内部にもその一部を配置することができ、通常、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、もしくはフラッシュメモリ等を有し、これらは他のデバイスとともにバスを介して接続されている。上記したCPUは所定のプログラムの処理を行う他、バスに接続されたROM等を制御している。ROMは、各種プログラムや各種情報等を格納している。RAMは、プログラム処理中のメモリの内容を対比したり、プログラムを実行するためのエリアとしての機能を有する。
また中央制御部200には駆動制御部本体201を介してコンプレッサ105が接続されている。
【0049】
また、中央制御部200は、酸素流量設定スイッチ16が接続されることにより、ユーザが設定した、設定流量を把握するための流量設定判断部71と、温度センサー125からの測定信号が入力されることによりコンプレッサ105にきわめて近接した箇所の温度を把握することで、コンプレッサの動作環境としての環境温度を判断する環境温度判断部72とを有している。
また、該環境温度判断部72と、記憶装置210とは、中央制御部200に含まれる回転数・時間決定指示部73に接続されている。記憶装置210には、コンプレッサ105の環境温度と、該コンプレッサ105の駆動手段であるモータの回転数との関係が予め決められたテーブルデータ等の形式で格納されている。回転数・時間決定指示部は、駆動制御部本体201としての例えばモータ駆動回路(モータ制御部201)に接続されており、該モータ駆動回路はコンプレッサ105に接続されている。
【0050】
環境温度判断部72は、流量設定判断部71からの設定流量情報を得て、当該設定流量が低流量である場合には、記憶装置210のデータを参照して、当該流量と環境温度の関係を見る。
記憶装置210のデータにおいて、当該低流量では、コンプレッサ105が加温される温度上昇が緩慢であり、環境温度との関係でコンプレッサ105においてリークが発生する(コンプレッサ105のピストンヘッドの外径が環境温度と温度膨張係数との関係から、縮径しており、シリンダとの間に隙間が生じることで、空気の漏れが生じること)が生じるもととして、予め記録されている場合には、当該データに基づく指令を出す。
【0051】
すなわち、環境温度判断部72は、回転数・時間決定指示部73に指令して、コンプレッサ105のモータ回転数を上げて、空気の圧力を高くすることで温度を上げ、縮径したピストンヘッドの外径を元の大きさにすることができる回転数と当該回転数における運転時間を伝えるようになっている。
回転数・時間決定指示部73は、当該回転数と運転時間を駆動制御部本体(モータ制御部)201に伝えるように構成されている。
駆動制御部本体201は、コンプレッサ105を制御し、そのモータの回転数を上げ、高い回転数で所定時間運転する指示を出すように構成されている。
【0052】
図6は、本実施例の酸素濃縮装置10の第1の運転制御の例を示し、特にその起動時の制御を示すフローチャートである。
図において、使用者が図1および図2で説明した酸素濃縮装置10の操作パネル13の電源スイッチ14を回して電源を入れ、酸素流量設定スイッチ16を操作して流量設定することにより運転が開始される(ST10)。
これにより、図5で説明した流量設定判断部71が、生成する酸素の流量が低流量による運転とされたのかどうかを判断する(ST11)。
流量設定判断部71が、予め定めた所定流量以上の設定流量とされていると判断される場合には、ステップ12に進み、設定どおりの高い流量での運転を継続する(ST12)。
【0053】
すなわち、酸素流量設定スイッチ16を介して設定された酸素流量が、例えば、1L(毎分当たり酸素流量1リットル)を超えているようであれば、コンプレッサ105による圧縮空気の圧力の高まりが、比較的迅速であるから、ピストンヘッドの外径は比較的早く通常の大きさとなるから、ピストンのリーク対策をせずにそのまま運転を継続する。
これに対して、設定された酸素流量が1Lを下回るようであれば、コンプレッサ105のモータ回転数は例えば1000rpmであり、ステップ13に進む。
ステップ13では、酸素濃縮装置10の置かれた環境温度が低温か否かを判断する。例えば、10度以下である場合を「低温」と定義づけて記憶装置210に格納しておくと、ここで図5の、環境温度判断部72は、運転環境が「低温」ではないと判断した場合には、ステップ14に進み低回転数での運転を継続する。
すなわち、コンプレッサ105のモータが低回転であっても、周囲環境が低温でなければ、ピストンヘッドの外径があまり縮径していないと判断でき、リークはほとんどないと考えられるからである。
【0054】
これに対して、酸素濃縮装置10の運転環境が低温であると判断した場合(ST13)、環境温度判断部72は、回転数・時間決定指示部に指令して、記憶装置210のデータから、当該回転数と具体的温度とにより該当するテーブルデータ等から、ここで行う運転において必要とされる回転数と、その継続時間のデータを取得する。
そして、回転数・時間決定指示部73は、駆動制御部本体201であるモータ制御部に、何回転でどの程度の時間継続して1000rpmのモータ回転数よりも高い回転数、例えば1300rpmでの運転を指示する(ST15)。
駆動制御部本体201は高い回転数での運転開始から計時部207で時間計測を開始し、決められた時間、すなわち、ピストンヘッドの外径が圧力の向上により加温されて通常の大きさに戻ったと考えられる時間だけ高い回転数での運転を継続し(ST16)、その後通常回転数である設定流量に対応した回転数で運転を継続する(ST17)。
【0055】
図7は、酸素濃縮装置10の起動制御装置の別の構成例を示している。
図7において、起動制御装置80の鎖線で示す範囲、すなわち、符号200で示す範囲は、図4の中央制御部200の構成の一部を利用することにより実現することができる。
なお、図7において、図5と同じ符号を付した箇所は同一の構成であるから、共通する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
図7の起動制御装置80は、図5のものと異なり、送風ファン104も起動時に特別の制御を行うようにされている。すなわち、起動時において、コンプレッサ105と送風ファン104を共に回転制御するように構成されており、記憶装置210には、そのためのデータが格納されている。環境温度を判断した後では、コンプレッサ・ファン回転数・時間決定指示部73−1によりコンプレッサ105と送風ファン104が駆動されるようになっている。
【0056】
図8の表を参照して、この起動制御装置80による起動制御の特徴を説明する。
酸素濃縮装置10における送風ファン104は、コンプレッサ105の駆動により圧力が高くなって高温となるのを冷却するための冷却ファンである。
そのため、従来はコンプレッサの回転数が毎分1000回転である時、すなわち、コンプレッサ内蔵のモータ回転数が1000rmpという低回転である場合にも送風ファンを駆動して冷却を行っていた。これが冷却「あり」という意味である。
この場合の3分経過後の圧縮空気積算流量15L、5分後の積算流量26Lという状態であった。
ところが、図9の起動時にコンプレッサ回転数を1000回転としても、送風ファン104を駆動せずに冷却を停止すると、3分経過後の圧縮空気積算流量14L、5分後の積算流量28Lとなり、図9の起動時制御を行うと、3分経過後の圧縮空気積算流量25L、5分後の積算流量39Lと、大幅に積算流量を改善できるのである。
【0057】
図9は、本実施例の酸素濃縮装置10の第2の運転制御の例を示し、特にその起動時の制御を示すフローチャートである。
図において、使用者が図1および図2で説明した酸素濃縮装置10の操作パネル13の電源スイッチ14を回して電源を入れ、酸素流量設定スイッチ16を操作して流量設定することにより運転が開始される(ST20)。
これにより、図7で説明した流量設定判断部71が、生成する酸素の流量が低流量による運転とされたのかどうかを判断する(ST21)。
【0058】
流量設定判断部71が、予め定めた所定流量以上の設定流量とされていると判断される場合には、ステップ22に進み、設定どおりの高い流量での運転を継続する(ST22)。例えば、酸素流量が2Lの運転モードであれば、例えば、コンプレッサ回転数を1700rpmで、送風ファンの回転数を2500rpmとする。
あるいは、酸素流量が3Lの運転モードが選択されている場合には、例えば、コンプレッサ回転数を2700rpmで、送風ファンの回転数を3700rpmとする。
すなわち、酸素流量設定スイッチ16を介して設定された酸素流量が、例えば、1L(毎分当たり酸素流量1リットル)を超えているようであれば、コンプレッサ105による圧縮空気の圧力の高まりが、比較的迅速であるから、ピストンヘッドの外径は比較的早く通常の大きさとなるから、ピストンのリーク対策をせずにそのまま運転を継続する。
【0059】
これに対して、設定された酸素流量が1Lを下回るようであれば、コンプレッサ105のモータ回転数は例えば1000rpmであり、ステップ23に進む。
ステップ23では、酸素濃縮装置10の置かれた環境温度が低温か否かを判断する(ST23)。例えば、10度以下である場合を「低温」と定義づけて記憶装置210に格納しておくと、ここで図7の、環境温度判断部72は、運転環境が「低温」ではないと判断した場合には、ステップ24に進み、デフォルト値での運転、すなわち低回転数での運転を継続し、送風ファン104も駆動して冷却を行う。コンプレッサ105の加熱を防ぐためである(ST24)。例えば、1Lの運転モードが選択されていれば、例えば、コンプレッサ回転数を1000rpmで、送風ファンの回転数を1600rpmとする。
すなわち、コンプレッサ105のモータが低回転であっても、周囲環境が低温でなければ、ピストンヘッドの外径があまり縮径していないと判断でき、リークはほとんどないと考えられるからである。
【0060】
これに対して、酸素濃縮装置10の運転環境が低温であると判断した場合(ST23)、環境温度判断部72は、コンプレッサ・ファン回転数・時間決定指示部73−1に指令して、記憶装置210のデータから、コンプレッサおよびファンの各回転数と環境温度とが相互に対応するテーブルデータ等から、ここで行う運転において必要とされるモータ回転数および送風ファン104の回転数と、その運転継続時間に関するデータを取得する。環境温度が低温であるか否かの閾値は、酸素濃縮装置のコンプレッサ105内のピストンヘッドの外径の縮径が、どの程度の環境温度で生じるかを予め計測して決定し、記憶装置210に格納しておくことができる。その閾値は、例えば10度である。
そして、コンプレッサ・ファン回転数・時間決定指示部73−1は、駆動制御部本体201であるモータ制御部に、何回転でどの程度の時間継続して1000rpmのモータ回転数よりも高い回転数、例えば1300rpmでの運転を指示するとともに、送風ファン104の回転は行わない。
【0061】
駆動制御部本体201は高い回転数での運転開始から計時部207で時間計測を開始し、決められた時間、すなわち、ピストンヘッドの外径が圧力の向上により加温されて通常の大きさに戻ったと考えられる時間だけ、例えば、3分間、高い回転数(例えば、1300rpm)での運転を継続し、かつその間、送風ファン104を停止しておく(ST25)。
その運転を継続しながら、所定時間の経過、例えば3分間の経過をおいて、圧力の上昇によるコンプレッサ105の加温時間をとる(ST26)。
次いで、送風ファン104を停止したまま、コンプレッサ回転数を低くする。例えばコンプレッサ105を1000rpmとして、所定時間、例えば7分間継続運転する(ST27、ST28)。送風ファンを停止して、コンプレッサ回転数を低くするのは、設定流量を実現しながら、不必要にコンプレッサ温度を下げないようにするためである。
その後送風ファン104を駆動し、低流量のデフォルト値、例えば、コンプレッサ回転数を1000rpmで、送風ファンの回転数を1600rpmとして運転を継続する(ST29)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、低回転領域で起動した場合にも起動直後から安定した原料空気を吸着部に供給することができる酸素濃縮装置を提供することができる。
【0063】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。
上述の実施形態では、酸素濃縮装置の大きさや容量によりコンプレッサの回転数や送風ファンの回転数は適宜定めることができる。
上記実施形態に記載された事項は、その一部を省略してもよいし、上記で説明しない他の構成と組み合わせることによっても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【符号の説明】
【0064】
10・・・酸素濃縮装置、70,80・・・起動制御装置、71・・・流量設定判断部、72・・・環境温度判断部、73・・・回転数・時間決定指示部、104・・・送風ファン、105・・・コンプレッサ、125・・・温度センサー、200・・・中央制御部、201・・・駆動制御部本体、207・・・計時部、210・・・記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを駆動する回転体を内蔵して圧縮空気を発生する圧縮空気発生部と、前記圧縮空気を内部に導入して該内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を分離生成する吸着部とを備える酸素濃縮装置において、
前記圧縮空気発生部は、
生成する前記酸素流量に応じて前記回転体の回転数が適切な回転数となるように制御する制御部を有しており、
該制御部は、装置起動時に前記回転体の回転数を前記決められた回転数よりも高い回転数で駆動する構成とした
ことを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
前記生成する酸素流量を切り替える手段を備えており、少ない酸素流量に設定されて運転される際に、該設定された酸素流量に対応して前記回転体について予め決められた回転数よりも高い回転数で駆動する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
装置が置かれる環境温度を検出する手段を備えており、該温度検出手段により所定以下の温度が検出されると、設定された酸素流量に対応して前記回転体について予め決められた回転数よりも高い回転数で駆動する構成としたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
前記圧縮空気発生部の圧力及び回転数が高まることによる温度上昇を抑制するための冷却ファンを有し、生成する前記酸素流量に応じて適切なファン回転数となるように制御する制御部を有しており、該制御部は、装置起動時には、当該冷却ファンを停止するか、当該決められたファン回転数よりも低い回転数で駆動する構成としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の酸素濃縮装置。
【請求項5】
ピストンを駆動する回転体を内蔵して圧縮空気を発生する圧縮空気発生部と、前記圧縮空気を内部に導入して該内部に充填された吸着剤により窒素を吸着して酸素を分離生成する吸着部とを備える酸素濃縮装置の起動制御方法であって、
起動時には、起動に際して設定される酸素流量に応じてあらかじめ決められている前記回転体の回転数よりも高い回転数で起動時の運転を行うことを特徴とする酸素濃縮装置の起動制御方法。
【請求項6】
前記起動時に選定された酸素設定流量を判断し、少ない酸素流量に設定されて運転される際に、該設定された酸素流量に対応して前記回転体について予め決められた回転数よりも高い回転数で起動時の運転を行うことを特徴とする請求項5に記載の酸素濃縮装置の起動制御方法。
【請求項7】
前記起動時に環境温度を検出して、所定以下の温度が検出されると、設定された酸素流量に対応して前記回転体について予め決められた回転数よりも高い回転数で起動時の運転を行うことを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の酸素濃縮装置の起動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−274(P2011−274A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145483(P2009−145483)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(396007694)株式会社医器研 (57)
【Fターム(参考)】