説明

酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理装置と方法及びそのための湿式排煙脱硫方法と装置

【課題】酸素燃焼システムの酸素製造装置から排気される窒素を排ガスのSO2の除去性能を高めるために積極的に利用する酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理装置又は方法及びそのための湿式排煙脱硫方法又は装置を提供することである。
【解決手段】酸素から分離された窒素を高酸素濃度ガスを燃焼用ガスとして用いる酸素燃焼式ボイラ13から排出される燃焼排ガスを導入して、該燃焼排ガスを脱硫剤含有スラリと気液接触させる脱硫吸収部26と、該脱硫吸収部26の下部に設けられる排ガスと気液接触した脱硫吸収液を一旦貯留して酸化用空気を吹き込み脱硫吸収液中の亜硫酸塩を酸化する吸収液溜め部11と、前記空気から分離された窒素を冷媒として利用する脱硫吸収液の冷却手段31とを設けた湿式排煙脱硫装置3又は湿式脱硫方法と、該装置又は方法を用いる酸素燃焼式ボイラの排ガス処理をする装置又は方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラで酸素燃焼を行ってボイラから排出した排ガス中のCO2を回収する火力発電用ボイラプラント等において、燃焼排ガスに含まれるSO2(硫黄酸化物)を除去する湿式排煙脱硫装置(以下、単に、脱硫装置ということもある)と該排煙脱硫装置を備えた酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラから排出された一部のガスを再循環し、そのガスに酸素(高濃度のO2を含むガス)を供給して石炭を燃焼させる火力発電用ボイラプラントの例を図6に示す。図6に示す火力発電用ボイラプラントは主に石炭25を燃料とするボイラ13、脱硝装置14、熱交換器(以下、A/Hと称すこともある)15、集塵装置16、脱硫装置3、CO2回収装置17、酸素製造装置19及び酸素供給ライン20等から構成され、集塵装置16から排出した排ガスは再循環ライン18を経由してA/H15で熱交換された後、ボイラ13に循環供給される。また、ボイラ13で石炭25を酸素燃焼する際に利用する酸素は酸素製造装置19で製造されて酸素供給ライン20から再循環ライン18を経由してボイラ13に供給される。
【0003】
脱硝装置14ではボイラ13から排出された排ガス中のNOx(窒素酸化物)が分解される。脱硝装置14から排出された排ガスの温度をA/H15で200〜160℃に調整し、集塵装置16で煤塵を除去する。
除塵された排ガスの一部は脱硫装置入口排ガス1(図5参照)として脱硫装置3に導入され、SO2が除去された後にCO2回収装置17に送られ、CO2回収装置17でCO2が回収される。また、集塵装置16で除塵されたガスの他部は脱硫装置3に供給しないで再循環ライン18を通り、A/H15で再加熱された後、ボイラ13に供給される構成となる。このとき、脱硫装置入口排ガス1の量は、空気燃焼時に比べて、酸素燃焼時には1/4になる。
【0004】
酸素製造装置19における酸素を製造する方法として深冷液化分離方式が用いられている。例えば、特開平10−267527号公報に記載されているように、深冷液化分離方式により生成した酸素は石炭燃焼に使用され、酸素以外に排出される−5℃の窒素ガスは一部熱交換に使用されるものの、大気へ放出されている。
【0005】
また、特開平8−155261号公報には燃焼排ガス中の硫黄酸化物を炭酸カルシウムを含む脱硫吸収液と脱硫塔内で気液接触させて排ガス浄化する際に、約90℃の排ガスにより吸収液が約50℃になり、脱硫塔内で吸収液が蒸発してしまうので、吸収液に水分を補給しなくて済むように、排ガスと接触した吸収液をLNGと接触させて冷却するという方法が開示されている。
【0006】
さらに、特開2008−212891号公報には燃焼排ガスを水や空気と熱交換させて排ガス温度を85〜110℃に冷却し、該85〜110℃に冷却した排ガスを水、空気又は海水などで約40〜75℃に冷却した後に炭酸カルシウムを含む吸収液と脱硫塔内で気液接触させて脱硫を行い、前記排ガスを85〜110℃に冷却する際に使用した加温された水や空気で前記脱硫処理後の排ガスを加温して白煙が生じせない排ガスとして大気中に放出するという発明が開示されている。
【0007】
また、特開2009−270753号公報には酸素燃焼ボイラシステムで使用する酸素として空気から分離した酸素を使用し、その際得られた窒素を主体とするガスが流れる窒素を排ガスの冷却に利用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−267527号公報
【特許文献2】特開平8−155261号公報
【特許文献3】特開2008−212891号公報
【特許文献4】特開2009−270753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記図6に示す従来技術は、ボイラ排ガス中の水分濃度が空気燃焼時で8%であるのに対し、酸素燃焼時では30%まで増加することから、脱硫装置3の出口の排ガス温度や脱硫吸収液の温度が55℃から70℃に高温化する点について配慮がされておらず、吸収液のSO2除去性能が低下する問題があった。また、ボイラ13での酸素燃焼時には排ガス中の水分濃度が高くなることから、空気燃焼時よりも水の露点が高くなり、飽和水分濃度の高いガスが脱硫装置出口のCO2回収装置17に供給される。CO2回収装置17で凝縮させる水分量は水露点が高い方が多い。この水分中には、排ガス処理装置で処理することができなかったガス中の成分が溶解し、硫酸や硝酸など強酸となってCO2回収装置17の腐食の原因となる。
【0010】
図6に示す酸素製造装置19における酸素を製造する方法として特許文献1には深冷液化分離方式を用いているが、この深冷液化分離方式により生成した酸素以外の−5℃の窒素ガスを主成分とするガスの一部は熱交換に使用されるものの、大気へ放出され、−5℃の窒素ガスを主成分とするガスの有効利用がなされていない。
また、特許文献2記載の方法は、吸収液が約50℃になり、約50℃の排ガス処理後の吸収液の蒸発を防ぐために吸収液をLNGと接触させて冷却して吸収液に補給水を加えなくて済むようにしているが、吸収液の冷却にLNGを使用するため、コスト的に不利となる。
【0011】
さらに、特許文献3記載の方法は、炭酸カルシウムを含む吸収液を水、空気又は海水と熱交換させた後に燃焼排ガスと接触させることで脱硫性能の向上を図ることが開示されているが、酸素燃焼によるボイラ排ガスの脱硫後の吸収液が高温化するという課題がない発明である。
また、特許文献4記載の方法は酸素燃焼ボイラシステムで使用する酸素分離後の窒素を主体とするガスを利用する発明であるが、この窒素を主体とするガスを冷却に利用することしか開示がない。
【0012】
本発明の課題は、酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理システムの酸素製造装置から排気される窒素を排ガスのSO2の除去性能を高めるために積極的に利用する酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理装置と方法及びそのための湿式排煙脱硫方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、酸素から窒素を分離して得られる高酸素濃度ガスを燃焼用ガスとして用いる酸素燃焼式燃焼装置から排出される燃焼排ガスを導入して、該燃焼排ガスを脱硫剤含有スラリと気液接触させる脱硫吸収部と、該脱硫吸収部の下部に設けられる排ガスと気液接触した脱硫吸収液を一旦貯留して酸化用空気を吹き込み、脱硫吸収液中の亜硫酸塩を酸化する吸収液溜め部と、前記空気から酸素分離時に得られる窒素を冷媒として利用する脱硫吸収液の冷却手段とを設けたことを特徴とする湿式排煙脱硫装置である。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記冷却手段は、吸収液溜め部に設けた熱交換器であることを特徴とする請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置である。
【0015】
請求項3記載の発明は、脱硫吸収部の下端が吸収液溜め部の液面下に水封管を形成するように前記脱硫吸収部下端の開口部の水平断面を吸収液溜め部の水平断面よりも小さく構成し、前記冷却手段は、前記脱硫吸収部下端の開口部よりも外側の吸収液溜め部に設けられた窒素ガスの吹込配管と、吸収液溜め部に設けられた酸化用空気の出口部から前記窒素ガスを排出すること排出配管を有することを特徴とする請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置である。
【0016】
請求項4記載の発明は、空気から窒素を分離して高酸素濃度ガスを得る酸素製造装置と、該酸素製造装置で得られた高酸素濃度ガスと燃焼排ガスとを燃焼用ガスに用いる酸素燃焼式燃焼装置と、該酸素燃焼式燃焼装置から排出される燃焼排ガスの一部を該酸素燃焼装置へ戻す再循環ラインと、請求項1〜3のいずれかに記載の湿式排煙脱硫装置とを備えた酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理装置である。
【0017】
請求項5記載の発明は、空気から窒素を分離して得た高酸素濃度ガスを酸素燃焼式燃焼装置の燃焼用ガスとして利用し、酸素燃焼式燃焼装置から排出される燃焼排ガスを湿式排煙脱硫装置に導入して脱硫剤含有スラリと気液接触させて脱硫処理し、得られる脱硫吸収液に前記空気から分離された窒素を供給して冷媒として利用する湿式排煙脱硫方法である。
【0018】
請求項6記載の発明は、酸素燃焼式燃焼装置から排煙脱硫装置に導入する排ガスとは混ざらないように、前記脱硫剤含有スラリで脱硫処理して得られる脱硫吸収液に前記空気から分離された窒素を供給して冷媒として利用することを特徴とする請求項5に記載の湿式排煙脱硫方法である。
【0019】
請求項7記載の発明は、空気から窒素を分離して高酸素濃度ガスを得て、該高酸素濃度ガスを酸素燃焼式燃焼装置の燃焼用ガスとして用い、酸素燃焼式燃焼装置から排出される燃焼排ガスを湿式排煙脱硫装置に導入して請求項5又は6に記載の発明の湿式排煙脱硫方法により脱硫剤含有スラリと気液接触させて脱硫処理し、得られる脱硫吸収液に前記空気から分離された窒素を冷媒として利用することを特徴とする酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理方法である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、2、5記載の発明によれば、酸素製造装置から排出された室温より低い窒素ガス(−5℃)と脱硫装置の吸収液とを熱交換させることにより、脱硫吸収液温度を低下させ、脱硫装置のSO2除去性能を向上させることができる。また、湿式排煙脱硫装置出口の排ガス中に該窒素ガスを混入させることがないため、排ガス中のCO2純度が低下することなく、CO2回収装置の回収効率を低下させることがない。また、脱硫装置入口の排ガスを脱硫装置の吸収液により冷却するため、吸収液は蒸発するが、吸収液の温度を水露点よりも低くすることにより、排ガス中の水分を凝縮することができるため、吸収液の補給水として利用できる。さらに、酸素製造設備から排出される窒素ガスは、湿式排煙脱硫装置の吸収液温度を低下させる作用がある。吸収液温度が低下すると、脱硫性能が向上するため、循環液量を低減することができ、湿式排煙脱硫装置の吸収液循環用動力を増加させることがない。
【0021】
また、請求項3、6記載の発明によれば、請求項1、5記載の発明の効果に加えて、吸収液溜め部の脱硫吸収液が水封された構造であるので、水封された構造の外側の脱硫吸収液にのみ窒素ガスを供給することで、脱硫吸収液の温度と湿式脱硫装置出口の排ガス温度を低下できるので、吸収液温度の上昇によるSO2除去性能の低下を防止できる。
【0022】
請求項4、7記載の発明によれば、上記請求項1〜3、5、6記載の発明の効果に加えて、酸素製造時に得られる低温の窒素を利用することで、酸素燃焼式燃焼装置からの排ガス処理におけるSO2除去性能を従来より高めることができるので、経済的な酸素燃焼システムとして活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明になる脱硫装置の吸収液溜め部内に多管式の熱交換器を設けた構成の脱硫装置の概略図である。
【図2】図1の脱硫装置を用いて脱硫装置入口で排ガスをボイラへ再循環させる酸素燃焼システムの構成を示す図である。
【図3】本発明になる脱硫装置を適用し脱硫装置出口で排ガスをボイラへ再循環させる酸素燃焼システムの構成を示す図である。
【図4】吸収液溜め部内を水封構造として、酸素製造設備から排出された窒素ガスを供給する構成とした脱硫装置の概略図である。
【図5】従来技術の空気燃焼時の脱硫装置の概略構成図である。
【図6】従来技術の酸素燃焼システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例を図面と共に説明する。
【実施例1】
【0025】
本実施例の脱硫装置の構成を図1に示す。本実施例1の図6に示す従来技術と共通する構成、作用については説明を省略する。
脱硫装置3は主に、吸収液6を噴霧するスプレノズル4、吸収液循環ポンプ5、吸収液6、ミストエリミネータ8、酸化用ガス供給部9、攪拌機10、吸収液溜め部11、多管式の熱交換器31等から構成される。脱硫装置3はスプレノズル4が配置される気液接触部である脱硫吸収部26と該脱硫吸収部26の下方にある吸収液6を溜める吸収液溜め部11から構成される。
脱硫装置3には、ボイラ排ガスが脱硫装置入口排ガス1として導入され、脱硫装置3内で脱硫処理された後に脱硫装置出口排ガス2として脱硫装置3から排出される。また、図2には、図1に示す実施例の脱硫装置3を適用した火力発電用ボイラの酸素燃焼システムである。
【0026】
図2に示す火力発電用ボイラプラントの酸素燃焼システムでは、図6に示す酸素燃焼システムと同様に、主に石炭25を燃料とするボイラ13、脱硝装置14、熱交換器(A/H)15、集塵装置16、脱硫装置3、CO2回収装置17、酸素製造装置19及び酸素供給ライン20等から構成され、集塵装置16から排出した排ガスは再循環ライン18を経由してA/H15で熱交換した後でボイラ13に循環供給される。また、ボイラ13で石炭25を酸素燃焼する際に利用する酸素は酸素製造装置19で製造されて酸素供給ライン20から再循環ライン18を経由してボイラ13に供給される。
【0027】
脱硝装置14では、ボイラ13からの排出ガスに含まれるNOxを分解し、該脱硝装置14から排出されたガスの温度をA/H15で200〜160℃に調整し、集塵装置16で煤塵を除去する。除塵されたガスの一部は脱硫装置3に供給された後、SO2が除去され、CO2回収装置17でCO2を回収する。CO2回収装置17を出た浄化排ガスは煙突29から大気中へ放出される。また、脱硫装置3に供給しない一部のガスは、前述の通り、再循環ライン18を通り、A/H15で再加熱された後、ボイラ13に供給される構成となる。このとき、脱硫装置入口排ガス1の量は、空気燃焼時に比べて、酸素燃焼時には1/4になる。
【0028】
図2に示す酸素燃焼システムにおいて石炭の供給量が7,200t/dayの場合、必要な酸素量は450,000m3N/hとなり、脱硫装置3の入口排ガス1の量は750,000m3N/hとなる。前記酸素を酸素製造装置19から生成させると1,700,000m3N/hの窒素ガスを生成することになる。このときの排ガス組成はCO2濃度55〜65%wet、O2濃度3〜4%wet、SO2濃度1,500ppmdry、N2濃度はほぼ0%、水分濃度は30%となった。
【0029】
また、脱硫装置3の吸収液溜め部11中に多管式の熱交換器31を設け、該多管式の熱交換器31中に酸素製造装置19からの−5℃の窒素ガス30を供給する。スプレノズル4から落下してきた吸収液6は吸収液溜め部11を上部から下部に流れ、吸収液溜め部11の下部から吸収液循環ポンプ5により、気液接触部にあるスプレノズル4へ吸い上げられる。効率よく吸収液6を冷却するためには、図1のように多管式熱交換器31の下側から窒素ガス30を供給して、上側から窒素ガス30を抜き出すようにする。吸収液溜め部11の上側の吸収液6は温度が高く、下側の多管式熱交換器31内を通過する窒素ガス30の温度は低いことから、互いの熱は向流接触となり、効率よく吸収液6の温度を低下させることができる。
【0030】
また、多管式熱交換器31を吸収液溜め部11に設置すると、吸収液6が熱交換器31と干渉して吸収液6中に含まれる石膏スラリを攪拌機10により効率よく攪拌することができず、石膏スラリが吸収液溜め部11の下部に沈降するおそれがある。そこで図1に示すように多管式熱交換器31を攪拌機10より上側の吸収液溜め部11に配置することにより、効率よく吸収液6を攪拌することができ、吸収液6中の石膏スラリを沈降させることがない。
また、多管式熱交換器31を吸収液溜め部11内に設けることで、脱硫装置3の入口排ガス1を冷却することもできるが、脱硫装置3の入口排ガス1の流路を塞ぐことになるため、図示していない脱硫装置3の出口のファンの動力を増加することになる。しかし、本実施例では、吸収液溜め部11内に多管式熱交換器31を設けて吸収液6を冷却しているため、脱硫装置3の出口のファン(図示せず)の動力を増加することがない。
【0031】
従来技術の窒素ガス30を吸収液6と熱交換させない方法では、吸収液6の温度が70℃となり、SO2の除去率は90%であった。これに対して本実施例のように、吸収液溜め部11内に多管式熱交換器31を設け、該多管式熱交換器31に窒素ガス30を供給すると、吸収液6の温度と脱硫装置出口排ガス2の温度が60℃となる。吸収液6の温度が従来の70℃から60℃に低下することにより脱硫率は95%と向上し、従来技術よりも5ポイント、SO2除去率が向上した。
【0032】
また、従来方法では脱硫装置3の入口排ガス1とスプレノズル4から噴霧された吸収液6が気液接触部で接触することにより、該吸収液6は蒸発するが、本実施例のように水露点よりも低い温度まで吸収液6を冷却することで水分が凝縮するため、吸収液6の補給水としても利用することができる。窒素ガス30の温度が−5℃より低い場合は、さらに脱硫装置3の出口排ガス2や吸収液6の温度を低下させることができ、高効率なSO2除去や水分除去ができる。
【0033】
図1に示す実施例では吸収液溜め部11内に多管式熱交換器31を設けているが、吸収液溜め部11を別のタンクとして設け、当該別のタンク中に多管式熱交換器31を設けて吸収液6を冷却してもよい。また、吸収液溜め部11から取り出してスプレノズル4に供給するまでの間の吸収液6を多管式熱交換器31を用いて冷却してもよい。
【実施例2】
【0034】
図3に示す構成は、図1に示す実施例の脱硫装置3を適用した酸素燃焼システムの他の実施例である。本実施例は脱硫装置3の出口側の排ガス流路からCO2回収装置17に供給される排ガスの一部を分岐させてボイラ13に向けて排ガスを再循環させる再循環ライン18を設けた構成である。
【0035】
脱硫装置3の入口ガスはボイラ出口のガス量の全量が供給されるが、空気燃焼時の3,000,000m3N/hより少しガス量が減少し、脱硫装置3の入口排ガスの量は2,240,000m3N/hとなる。このときに実施例1と同様に、本実施例2でもガス量1,700,000m3/h、温度−5℃の窒素ガス30を脱硫装置3の吸収液溜め部11内に設けた多管式熱交換器31に供給すると、脱硫装置3の出口排ガス2及び吸収液6の温度を70℃から63℃まで低下させることができる。
【0036】
吸収液6の温度が70℃から63℃に低下することにより、脱硫率は93%となり、従来技術よりも3ポイント、SO2除去率が向上した。また、ボイラ排ガス1の温度が低下することにより、水分が凝縮するため、酸素燃焼時のガス中水分濃度の高濃度化を防止できる。
【実施例3】
【0037】
本実施例の脱硫装置3を図4に示す。図4に示す脱硫装置3は図2又は図3に示す酸素燃料燃焼ボイラの排ガス処理に用いられる。
また、本実施例の脱硫装置3は図1に示す脱硫装置3に比較して脱硫吸収液部26の下端を脱硫吸収液溜め部11の水面111より下側に設け、いわゆる水封管7を形成する。脱硫吸収液部26の下端の開口部107の水平断面積を吸収液溜め部11の水平断面積以下とし、脱硫吸収液部26の下端を吸収液溜め部11の吸収液水面下に設けて水封管7とした。
【0038】
前記脱硫吸収液部26の下端開口部107は、吸収液溜め部11の運転時における脱硫吸収液6の液面111よりも低い位置に設けられている。また、水封管7の開口部107の断面積は、開口部107を流下する吸収液6の速度が、酸化用ガス27の気泡が上昇する速度よりも速くなるような大きさに設計する。また、吸収液溜め部11の吸収液内に供給される酸化用ガス27は、吸収液溜め部11の上部の空間に設けた酸化用ガス出口配管12から排出される。酸化用ガス出口配管12が配置される吸収液溜め部11の上部空間は、吸収液溜め部11の吸収液6の液面111より上方に位置するので密閉空間となる。前記密閉空間に滞留する亜硫酸の酸化に利用されなかった酸化用ガス27は脱硫装置3の出口排ガス2や再循環ライン18中の排ガスに混入することなく、酸化用ガス出口配管12から系外に排出させることができる。
【0039】
また、吸収液溜め部11内に多管式熱交換器31を設けないで、酸素製造装置19から排出された窒素ガス30は吸収液溜め部11内の吸収液6中に吹き出す構成とする。吸収液溜め部11から排出する窒素ガス30は亜硫酸の酸化用ガス27と共に酸化用ガス出口配管12から排出される。窒素ガス30は吸収液溜め部11内の吸収液6を直接冷却するので、脱硫性能を従来より向上させることができる。
また、吸収液溜め部11は水封管7による水封構造となっているため、吸収液溜め部11に供給した30が脱硫装置3の出口排ガス2に混入することがなく、CO2回収装置17のCO2回収率を低減させることがない。
また、吸収液溜め部11を別のタンクとして設け、該別のタンク中の吸収液6を冷却してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 脱硫装置入口排ガス 2 脱硫装置出口排ガス
3 湿式排煙脱硫装置 4 スプレノズル
5 吸収液循環ポンプ 6 吸収液
7 水封管 8 ミストエリミネータ
9 酸化用ガス供給部 10 攪拌機
11 吸収液溜め部 12 酸化用ガス出口配管
13 ボイラ 14 脱硝装置
15 熱交換器(A/H) 16 集塵装置
17 CO2回収装置 18 再循環ライン
19 酸素製造装置 20 酸素供給ライン
25 石炭 26 脱硫吸収部
27 酸化用ガス 29 煙突
30 窒素ガス 31 多管式熱交換器
107 開口部 111 液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素から窒素を分離して得られる高酸素濃度ガスを燃焼用ガスとして用いる酸素燃焼式燃焼装置から排出される燃焼排ガスを導入して、該燃焼排ガスを脱硫剤含有スラリと気液接触させる脱硫吸収部と、該脱硫吸収部の下部に設けられる排ガスと気液接触した脱硫吸収液を一旦貯留して酸化用空気を吹き込み、脱硫吸収液中の亜硫酸塩を酸化する吸収液溜め部と、前記空気から酸素分離時に得られる窒素を冷媒として利用する脱硫吸収液の冷却手段とを設けたことを特徴とする湿式排煙脱硫装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、吸収液溜め部に設けた熱交換器であることを特徴とする請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置。
【請求項3】
脱硫吸収部の下端が吸収液溜め部の液面下に水封管を形成するように前記脱硫吸収部下端の開口部の水平断面を吸収液溜め部の水平断面よりも小さく構成し、前記冷却手段は、前記脱硫吸収部下端の開口部よりも外側の吸収液溜め部に設けられた窒素ガスの吹込配管と、吸収液溜め部に設けられた酸化用空気の出口部から前記窒素ガスを排出すること排出配管を有することを特徴とする請求項1に記載の湿式排煙脱硫装置。
【請求項4】
空気から窒素を分離して高酸素濃度ガスを得る酸素製造装置と、該酸素製造装置で得られた高酸素濃度ガスと燃焼排ガスとを燃焼用ガスに用いる酸素燃焼式燃焼装置と、該酸素燃焼式燃焼装置から排出される燃焼排ガスの一部を該酸素燃焼ボイラへ戻す再循環ラインと、請求項1から3のいずれかに記載の湿式排煙脱硫装置とを備えた酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理装置。
【請求項5】
空気から窒素を分離して得た高酸素濃度ガスを酸素燃焼式燃焼装置の燃焼用ガスとして利用し、酸素燃焼式燃焼装置から排出される燃焼排ガスを湿式排煙脱硫装置に導入して脱硫剤含有スラリと気液接触させて脱硫処理し、得られる脱硫吸収液に前記空気から分離された窒素を供給して冷媒として利用する湿式排煙脱硫方法。
【請求項6】
酸素燃焼式燃焼装置から排煙脱硫装置に導入する排ガスとは混ざらないように、前記脱硫剤含有スラリで脱硫処理して得られる脱硫吸収液に前記空気から分離された窒素を供給して冷媒として利用することを特徴とする請求項5に記載の湿式排煙脱硫方法。
【請求項7】
空気から窒素を分離して高酸素濃度ガスを得て、該高酸素濃度ガスを酸素燃焼式燃焼装置の燃焼用ガスとして用い、酸素燃焼式燃焼装置から排出される燃焼排ガスを湿式排煙脱硫装置に導入して請求項5又は6に記載の発明の湿式排煙脱硫方法により脱硫剤含有スラリと気液接触させて脱硫処理し、得られる脱硫吸収液に前記空気から分離された窒素を冷媒として利用することを特徴とする酸素燃焼式燃焼装置の排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−81451(P2012−81451A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231731(P2010−231731)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】