説明

重合体粒子、並びに、それを用いた導電性微粒子及び異方性導電材料

【課題】粒子表面に形成された凹みの形状を制御することにより、圧縮荷重に対して特異な変形挙動を示す重合体粒子を提供する。
【解決手段】本発明の重合体粒子は、球に下記(a)〜(d)を満足する凹みが1つ形成された外形を有し、その体積が元の球の半分以上であることを特徴とする。
(a)凹みの外周形状が多角形である;(b)凹みの長径(L1)と粒子径(D)との比(L1/D)が0.3以上1.0未満である;(c)凹みの短径(L2)と粒子径(D)との比(L2/D)が0.05以上1.0未満である;(d)長径(L1)と短径(L2)との比(L2/L1)が1.0未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子表面に所定形状を有する1つの凹みが形成された重合体粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特異な機械的特性、光学的特性を有する粒子として、球形粒子表面に凹凸を形成した粒子、碁石状粒子、凸レンズ状粒子、扁平状粒子等が提案されている。
このような表面に凹凸を有する球形粒子を製造する方法として、例えば、極性溶媒中に、極性溶媒と相溶しない非極性溶剤滴及び高分子微粒子を分散させる第1工程と、分散液を撹拌することにより高分子微粒子表面に窪みを形成する工程とを含む異形高分子微粒子の製造方法(特許文献1参照);架橋剤の不存在下で、重合性ビニルモノマーにこの重合性ビニルモノマーと共重合性を有さず、所定粘度を有する疎水性のフッ素系液状有機化合物を混合溶解し、水系懸濁重合することにより、粒子表面に椀状の窪みを有し、所定形状を有する球状樹脂粒子を得る製造方法(特許文献2参照);架橋剤の不存在下で、重合性ビニルモノマーにこの重合性ビニルモノマーと共重合性を有さず、所定粘度を有する疎水性の液状化合物としてのポリシロキサン又は炭化水素を混合溶解し、水系懸濁重合することにより、粒子表面に椀状の窪みを有し、所定形状を有する球状樹脂粒子を得る製造方法(特許文献3(請求項6)参照);等が提案されている。
【0003】
また、碁石状等の異形粒子を製造する方法として、例えば、重合性単官能ビニルモノマーと重合性多官能ビニルモノマーとを、両ビニルモノマーと共重合しない疎水性の液状媒体とリン酸エステルとの存在下で水系懸濁重合させた後、水及び疎水性の液状媒体を除去して異形状樹脂粒子を得る異形状樹脂粒子の製造方法(特許文献4参照);ビニル系重合体粒子からなる種粒子の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、架橋性ビニル系単量体を含む単量体混合物を、水溶性重合開始剤を用いて、水性媒体中で乳化重合させる偏平状異形微粒子の製造方法(特許文献5参照);無機化合物微粒子を粘度10cps以下のスラリーとし、それを噴霧造粒した後焼成する実質的に尖端を有しない形状からなる異形微粒子の製法(特許文献6参照);等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−217616号公報
【特許文献2】特開2002−088102号公報
【特許文献3】特開2002−003517号公報
【特許文献4】特開2004−027008号公報
【特許文献5】特開平11−181037号公報
【特許文献6】特開昭62−096537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、重合体粒子の外形が、該重合体粒子の機械的特性、光学的特性等に影響を与えることが知られている。しかしながら、特異な表面形状を有する重合体粒子は、提案されている数が少なく、未だ検討の余地があった。そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来にない、新たな外形を有する重合体粒子を提供することを目的とする。
特に、本発明では、粒子表面に形成された凹みの形状を制御することにより、圧縮荷重に対して特異な変形挙動を示し、導電性微粒子の基材粒子として用いた際に、低圧接続においても低い電気抵抗値を達成し得る重合体粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、新たな表面形状を有する重合体粒子を提供すべく、シード重合法によって得られる重合体粒子について詳細に検討した結果、極めて特異な条件で重合を行うことにより、従来にない、新たな外形を有する重合体粒子が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
上記課題を解決することができた本発明の重合体粒子は、球に下記(a)〜(d)を満足する凹みが1つ形成された外形を有し、その体積が元の球の半分以上であることを特徴とする。(a)凹みの外周形状が多角形である。(b)凹みの長径(L1)と粒子径(D)との比(L1/D)が0.3以上1.0未満である。(c)凹みの短径(L2)と粒子径(D)との比(L2/D)が0.05以上1.0未満である。(d)長径(L1)と短径(L2)との比(L2/L1)が1.0未満である。
【0008】
重合体粒子を形成するための全単量体成分中、架橋性単量体の含有量は5質量%以上が好ましい。重合体粒子の個数平均粒子径は0.5μm〜50μmが好ましく、粒子径の変動係数は40%以下が好ましい。前記凹みの深さ(H)と粒子径(D)との比(H/D)は0.5以下であることが好ましい。また、重合体粒子表面における凹みの面積は、重合体微粒子が凹みを有していないと仮定した場合の全表面積の25%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明には、前記重合体粒子表面に導電性金属層を有する導電性微粒子、及び該導電性微粒子を含有する異方性導電材料も含まれる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合体粒子は、粒子表面に所定の形状を有する凹みが形成された外形を有するため、従来の重合体粒子とは異なる機械的特定、光学的特性等を示す。特に、本発明の重合体粒子は、粒子表面に所定の形状を有する凹みが形成されていることにより、圧縮荷重に対して特異な変形挙動、具体的には、低圧でも大きな変形を示し、所謂、低圧変形性に優れる。よって、該重合体粒子を導電性微粒子の基材粒子として用いることで、低圧接続においても低い電気抵抗値を達成しうる導電性微粒子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】重合体粒子の凹みについて説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の矢視A−A線断面図である。
【図2】製造例1で得られた重合体粒子のSEM画像である。
【図3】製造例1で得られた重合体粒子の凹みの長径等の測定に用いたSEM画像である。
【図4】製造例1で得られた重合体粒子の断面のFE−SEM像である。
【図5】製造例1で得られた重合体粒子と製造例2で得られた重合体粒子の圧縮変形挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.重合体粒子
本発明の重合体粒子は、球に所定の要件を満足する凹みが1つ形成された外形を有し、その体積が元の球の半分以上であることを特徴とする。球に所定形状の凹みを有することで、低い圧縮荷重でも、多角形の頂点部分を基点として変形し得る。また、重合体粒子の体積が元の球の半分以上であるため、通常の中実粒子と同様に反発力を残している。よって、本発明の重合体粒子を導電性微粒子の基材粒子として用いれば、加圧接続時において、低い加圧力でも粒子が容易に変形して電極間を電気的に接続することができる。なお、粒子の反発力の観点からは、重合体粒子の半球部分が中実であることが好ましい。すなわち、重合体粒子を元の球の中心を通る平面で分割したとき、一方の半球に所定形状の凹みを1つ有し、他方の半球が所定形状の凹みを有さず且つ中実であることが好ましい。また、本発明の重合体粒子は従来にない外形を有するため、光学部材として用いれば新たな光散乱性能を発揮する。
【0013】
なお、本発明において「凹み」とは、粒子表面が割れることにより形成される亀裂や、粒子表面が欠けることにより形成される欠損箇所のように、重合体が破断することにより形成されるものとは異なるものである。すなわち本発明における「凹み」とは、重合体粒子を製造する工程において、粒子表面が粒子内方へと引っ張られることにより形成される凹部であり、その表面は滑らかなものである。例えば、粒子が破断する時には対向する破断面同士が相補的形状を有しており、向かい合わせると破断面の凹凸曲線が重なるが、本発明の凹みにはこのような相補性の面が存在しない。
【0014】
ここで、図1を参照して、凹みの長径、短径等について説明する。図1は、重合体粒子の凹みについて説明する図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の矢視A−A線断面図である。粒子径Dとは、重合体粒子1の直径である。凹みの長径L1とは、凹み2を正面視した場合において、凹みの最も長い部分の長さである。凹みの短径L2とは、凹み2を正面視した場合において、前記長径L1の方向に対して直交する方向において、凹みの最も長い部分の長さである。凹みの深さHとは、重合体粒子の断面において、凹みの起点S1とS2とを結ぶ直線B上から、凹みの底部へと垂線を下ろしたとき、最も長い垂線の長さである。
【0015】
前記凹みの正面視の外周形状は多角形である。凹みの外周形状が多角形であれば、重合体粒子に圧縮荷重を負荷した際に、多角形の頂点部分が基点となり凹みを折りたたむ様に変形し易くなり、低い圧力でも容易に変形することができる。よって、重合体粒子を基材粒子として用いた導電性微粒子は、低い加圧圧力でも接続が可能となる。前記多角形としては、凸多角形、凹多角形でもよいが、凸多角形が好ましい。なお、多角形を構成する各辺は直線でも、曲線でもよい。
【0016】
前記凹みの長径(L1)と、粒子径(D)との比(L1/D)は0.3以上1.0未満である。前記比(L1/D)が0.3以上であれば、低い圧力で粒子を十分に変形できる。前記比(L1/D)は0.4以上が好ましく、より好ましくは0.5以上であり、0.9以下が好ましく、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下である。前記比(L1/D)が0.9以下であれば、凹みが大きくなりすぎず、重合体粒子が破断しにくくなる。
【0017】
前記凹みの短径(L2)と、粒子径(D)との比(L2/D)は0.05以上1.0未満である。前記比(L2/D)が0.05以上であれば、低い圧力で粒子を十分に変形できる。前記比(L2/D)は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.2以上であり、0.5以下が好ましく、より好ましくは0.4以下である。前記比(L2/D)が0.5以下であれば、凹みが大きくなりすぎず、重合体粒子が破断しにくくなる。
【0018】
前記凹みの長径(L1)と短径(L2)との比(L2/L1)は1.0未満である。前記比(L2/L1)が1.0では、凹みの形状が等方性に近くなり、重合体粒子が低い圧力で変形し難くなる。前記比(L2/L1)は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.2以上であり、0.9以下が好ましく、より好ましくは0.8以下である。前記比(L2/L1)が0.1以上であれば、凹みの面積が大きくなり、低い圧力でも容易により変形することができ、0.9以下であれば、凹みの形状がより非等方性となり、重合体粒子がより低い圧力で変形できるようになる。
【0019】
前記凹みの深さ(H)と粒子径(D)との比(H/D)は0.05以上が好ましく、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.1以上であり、0.5以下が好ましく、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。前記比(H/D)が0.05以上であれば、低い圧力でも容易により変形することができ、0.5以下であれば凹みが大きくなりすぎず、重合体粒子が破断しにくくなる。
【0020】
重合体粒子表面における凹みの面積は、元の球の全表面積の1%以上が好ましく、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上であり、25%以下が好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。凹みの面積が1%以上であれば、凹みの面積が大きくなり、低い圧力でも容易により変形することができ、25%以下であれば、凹みが大きくなりすぎず、重合体粒子が破断しにくくなる。
【0021】
なお、本発明の重合体粒子は、全ての粒子がそれぞれ一つの前記所定形状の凹みを有するものであるが、本発明の効果を損なわない程度であれば、前述の所定形状の凹みを有さない粒子が存在してもよい。この場合、前述の所定形状の凹みを有さない粒子の個数は、全粒子個数の50%以下であることが好ましく、より好ましくは35%以下、さらに好ましくは10%以下、5%以下(特に、凹みを有さない粒子が存在しないこと)が最も好ましい。また、本発明の重合体粒子は、本発明の効果を損なわない程度であれば、前述の所定形状の凹み以外の凹みを有していてもよく、粒子表面に微細な凹凸が存在していてもよい。
【0022】
重合体粒子の個数平均粒子径は0.5μm以上が好ましく、より好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上、特に好ましくは1.5μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。前記個数平均粒子径が0.6μm以上であれば重合体粒子を作製する際に、所定形状の凹みを有さない粒子の生成をより抑制することができ、50μm以下であれば所定形状の凹みによる効果がより顕著になる。特に、重合体粒子を導電性微粒子の基材粒子として用いる場合には、重合体粒子の個数平均粒子径は、0.5μm以上が好ましく、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.6μm以上、特に好ましくは2.0μm以上であり、4.0μm以下が好ましく、より好ましくは3.5μm以下、さらに好ましくは3.2μm以下である。
【0023】
粒子径の変動係数は40%以下が好ましい。粒子径の変動係数が40%以下であれば、粒子径及び所定形状の凹みサイズのばらつきが抑えられ、光拡散挙動や圧縮変形挙動等の特性もより均一となる。粒子径の変動係数は、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは8%以下である。特に、重合体粒子を導電性微粒子の基材粒子として用いる場合には、圧縮変形挙動のばらつきのない、低圧変形性に優れる導電性微粒子となるため、異方導電材料として優れた性能を発揮する。
【0024】
重合体粒子を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいはスチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリイミド;フェノールホルムアルデヒド樹脂;メラミンホルムアルデヒド樹脂;メラミンベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂;尿素ホルムアルデヒド樹脂;シリコーン樹脂等の有機材料:ポリシロキサン骨格とビニル重合体が複合化されてなる有機無機複合材料;等が挙げられる。これらの基材粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
本発明の重合体粒子は、重合体粒子を形成するための全単量体成分中、架橋性単量体の含有量が5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。前記架橋性単量体の含有量が5質量%以上であれば、重合体粒子の耐溶剤性をより高めることができ、80質量%以下であれば、重合体粒子が硬くなりすぎず、低い圧力でより容易に変形できるようになる。
【0026】
前記架橋性単量体としては、例えば、架橋性ビニル系単量体、架橋性シラン系単量体等が挙げられる。
前記架橋性ビニル系単量体とは、1分子中に2個以上のビニル基を有する架橋性単量体である。具体的には、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及び、これらの誘導体等の架橋性スチレン系単量体;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤;ポリブタジエン、ポリイソプレン不飽和ポリエステル等が挙げられる。これらの架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性単量体が好ましく、より好ましくは1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋性単量体である。
【0027】
前記架橋性シラン系単量体とは、ケイ素原子を有し、架橋構造を形成し得るものである。架橋性シラン系単量体により形成される架橋構造としては、有機重合体骨格(例えば、ビニル系重合体骨格)と有機重合体骨格とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);有機重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0028】
第一の形態を形成し得るものとしては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等が挙げられる。第二の形態を形成し得るものとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。
【0029】
第三の形態を形成し得るものとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するもの;等が挙げられる。
【0030】
これらの中でも、架橋性単量体として架橋性シラン系単量体を含有することが好ましく、より好ましくは、前記第二の形態の架橋構造を形成し得る架橋性シラン系単量体(好ましくは4官能性シラン系単量体、より好ましくはテトラエトキシシラン)、前記第三の形態の架橋構造を形成し得る架橋性シラン系単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を含有することが好ましい。
【0031】
重合体粒子を構成する単量体成分として使用し得る非架橋性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸又はその塩;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(好ましくは炭素数1〜4のアルキル)(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロへプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(好ましくは炭素数3〜5のアルキル)(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(好ましくは炭素数2〜3のアルキル)(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類;等の(メタ)アクリル系単官能モノマー;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類;p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類;p−フェニルスチレン等の芳香環含有スチレン類;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類;p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類;等のスチレン系単官能モノマー;等のように1分子中に1個のビニル基を有するものが挙げられる。
【0032】
また、非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等も使用し得る。これらの非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、スチレン系単官能モノマーが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0033】
本発明の重合体微粒子としては、上述した有機質重合体微粒子、有機無機複合体粒子等が挙げられるが、これらの中でも有機無機複合体粒子が好ましい。そして、有機無機複合体粒子の中でも、ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを含む有機無機複合粒子が好ましい。特に、ビニル基等の重合性基を有する架橋性シラン単量体を加水分解、縮合反応を行って重合性ポリシロキサン粒子を調製した後、該重合性ポリシロキサン粒子にシラン系単量体以外の単量体成分を吸収させ重合してなるものが好ましい。
【0034】
1−1.重合体粒子の製造方法
本発明の重合体粒子の製造方法としては、例えば、アルコキシシランの加水分解縮合反応により得られたポリシロキサン粒子の懸濁液に、さらにアルコキシシランを添加した後、単量体成分を吸収させて、所定量の重合禁止剤の存在化で重合を行う方法;等が挙げられる。
【0035】
以下、本発明の重合体粒子の製造方法の一例として、重合性ポリシロキサン粒子を調製した後、さらにシラン系単量体を添加した後、シラン系単量体以外の単量体成分を吸収させ重合するゾルゲルシード重合法について説明する。なお、ゾルゲルシード重合法とは、シード重合の一態様であって、特に、シード粒子がゾルゲル法により合成される場合を意味する。例えば、アルコキシシランの加水分解縮合反応により得られたポリシロキサンをシード粒子とする場合等が挙げられる。
【0036】
ゾルゲルシード重合法は、加水分解縮合工程と、重合工程とを含むことが好ましく、加水分解、縮合工程後、重合工程前に、重合性単量体を吸収させる吸収工程を含めることがより好ましい。吸収工程を含めることにより、重合体粒子中のビニル重合体骨格成分の含有量を容易に調整できる。
【0037】
前記加水分解縮合工程とは、シラン系単量体(重合性基を有する架橋性シラン系単量体を含む)を、水を含む溶媒中で加水分解して縮重合させる反応を行う工程である。加水分解縮合工程により、重合性基とポリシロキサン骨格を有する粒子(重合性ポリシロキサン粒子)を得ることができる。加水分解と縮重合は、一括、分割、連続等、任意の方法を採用できる。加水分解し、縮重合させるにあたっては、触媒としてアンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の塩基性触媒を好ましく用いることができる。
【0038】
前記水を含む溶媒中には、水や触媒以外に有機溶剤を含めることができる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロへキサン等の(シクロ)パラフィン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0039】
加水分解縮合工程ではまた、アニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤や、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤を併用することもできる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
加水分解縮合は、原料となるシラン系単量体と、触媒や水及び有機溶剤を含む溶媒を混合した後、温度0℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上70℃以下で、30分以上100時間以下撹拌することにより行うことができる。これによりポリシロキサン粒子が得られる。
【0041】
続いて、所望の程度まで加水分解縮合反応を行ってポリシロキサン粒子を製造した後、これを種粒子として、反応系にさらにシラン系単量体を添加する。添加されたシラン系単量体はポリシロキサン粒子に吸収又はポリシロキサン粒子表面のシラノール基と反応することによりポリシロキサン粒子に取り込まれると考えられる。次段階において単量体成分が吸収されやすくなる点から、該シラン系単量体はポリシロキサン粒子に吸収されることが好ましい。ここで、さらに添加するシラン系単量体としては、少なくともポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するものを用いる必要がある。このようなシラン系単量体としては、上述した3官能性シラン系単量体、4官能性シラン系単量体が挙げられ、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より架橋度が高い4官能性シラン系単量体(例えば、テトラエトキシシラン)が好ましい。また、ここで使用されるシラン系単量体は、ポリシロキサン粒子内部への浸透性の観点から、分子量が500以下が好ましく、より好ましくは400以下、さらに好ましくは300以下である。分子量の下限は特に限定されないが、通常150である。
【0042】
さらに添加するシラン系単量体の使用量は、種粒子100質量部に対して3質量部以上(より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上)が好ましく、50質量部以下(より好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上)が好ましい。シラン系単量体の使用量が上記範囲内であれば、所望とするサイズの凹みを形成できる。
【0043】
反応系にさらにシラン系単量体を添加した後、再度加水分解縮合を行う。加水分解縮合は、さらなるシラン系単量体を添加した後、温度0℃以上100℃以下、好ましくは0℃以上70℃以下で、5分以上300分以下撹拌することにより行うことができる。
【0044】
吸収工程は、ポリシロキサン粒子の存在下に、シラン系単量体以外の単量体成分を存在させた状態で進行するものであれば特に限定されない。したがって、ポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に単量体成分を加えてもよいし、単量体成分を含む溶媒中にポリシロキサン粒子を加えてもよい。なかでも、前者のように、予めポリシロキサン粒子を分散させた溶媒中に、単量体成分を加えるのが好ましい。特に、加水分解、縮合工程で得られたポリシロキサン粒子を反応液(ポリシロキサン粒子分散液)から取り出すことなく、この反応液に単量体成分を加える方法は、工程が複雑にならず、生産性に優れるため好ましい。
【0045】
前記吸収工程において、単量体成分の添加のタイミングは特に限定されず、一括で加えてもよいし、数回に分けて加えてもよいし、任意の速度でフィードしてもよい。また、単量体成分を加えるにあたっては、単量体成分のみを添加しても単量体成分の溶液を添加してもいずれでもよいが、単量体成分を予め乳化剤で水又は水性媒体に乳化分散させた乳化液をポリシロキサン粒子に混合することが、ポリシロキサン粒子への吸収がより効率よく行われるため好ましい。
【0046】
前記乳化剤は特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン性界面活性剤が、重合性ポリシロキサン粒子、単量体成分を吸収した後の重合性ポリシロキサン粒子の分散状態を安定化させることもできるので好ましい。これら乳化剤は、1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
また、単量体成分を乳化剤で乳化分散させる際には、単量体成分の質量に対して0.3倍以上10倍以下の水や水溶性有機溶剤を使用するのが好ましい。前記水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、t‐ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
【0047】
吸収工程は、0℃以上60℃以下の温度範囲で、5分間以上720分間以下、撹拌しながら行うのが好ましい。これらの条件は、用いるポリシロキサン粒子や単量体の種類等によって、適宜設定すればよく、これらの条件は1種のみ、あるいは2種以上を合わせて採用してもよい。
【0048】
吸収工程において、単量体成分がポリシロキサン粒子に吸収されたかどうかの判断については、例えば、単量体成分を加える前及び吸収段階終了後に、顕微鏡により粒子を観察し、単量体成分の吸収により粒子径が大きくなっていることを確認することで容易に判断できる。
【0049】
重合工程は、単量体成分を重合反応させて、ビニル重合体骨格を有する粒子を得る工程である。具体的には、吸収させた単量体成分、又は吸収させた単量体成分とポリシロキサン骨格が有する重合性基とを重合させて有機重合体骨格(例えば、ビニル(系)重合体骨格)を形成する工程である。
【0050】
重合法は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いる方法、紫外線や放射線を照射する方法、熱を加える方法等、いずれも採用可能である。前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化物系開始剤や、アゾ系開始剤等が使用可能である。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
ラジカル重合を行う際の反応温度は40℃以上が好ましく、より好ましくは50℃以上であり、100℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以下である。反応温度が低すぎる場合には、重合度が十分に上がらず複合粒子の機械的特性が不充分となる傾向があり、一方、反応温度が高すぎる場合には、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる傾向がある。なお、ラジカル重合を行う際の反応時間は、用いる重合開始剤の種類に応じて適宜変更すればよいが、通常、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上であり、600分以下が好ましく、より好ましくは300分以下である。反応時間が短すぎる場合には、重合度が十分に上がらない場合があり、反応時間が長すぎる場合には、粒子間で凝集が起こり易くなる傾向がある。
【0052】
ここで、ラジカル重合を行う際に、重合禁止剤を所定量共存させておくことにより、所定形状の凹みを有する重合体粒子が得られる。重合禁止剤を共存効果は明らかではないが、凹みの形成には、重合速度も関係しており、所定量の重合禁止剤が存在することによって、ラジカル重合速度を制御(抑制)し、その結果、凹みが形成された重合体粒子が得られるものと考えられる。
【0053】
共存させる重合禁止剤の使用量は、重合体粒子を構成する重合体形成成分、すなわち、ポリシロキサン粒子、シラン系単量体成分、シラン系単量体以外の単量体成分の合計量100質量部に対して0.05質量部以上であることが好ましい。0.05質量部未満では、凹みが形成されない虞がある。重合禁止剤の使用量は0.1質量部以上がより好ましく、0.15質量部以上がさらに好ましく、0.2質量部以上が特に好ましい。また、共存させる重合禁止剤の使用量の上限は特に制限されるものではないが、重合体粒子を構成する重合体形成成分100質量部に対して1質量%以下が好ましい。重合禁止剤の使用量が1質量部を越えると、水媒体中で可能な温度条件(通常100℃以下)で重合が進まず、取扱いに必要な強度を有する重合体粒子が得られない虞がある。なお、重合禁止剤の使用量には、重合体粒子を製造するために使用する単量体に予め添加されている重合禁止剤も含まれる。
【0054】
前記重合禁止剤は、ラジカル重合を抑制するものであれば特に限定されず従来公知の重合禁止剤を用いることができる。前記重合禁止剤としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−N−オキシル、4−アセチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−N−オキシルピペリジル)スクシネート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)ピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−グリシジルオキシピペリジン等のN−オキシル化合物系;4−ターシャリーブチルカテコール、4−オクチルフェノール、4−ターシャリーブチルフェノール等のアルキルフェノール系:などが挙げられる。これらの中でも、本発明の所定形状の凹みを有する重合体粒子を水性媒体中で得ることができ、凹みの形状等が比較的揃った重合体粒子が得られる点から、N−オキシル化合物系(好ましくは4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)が好適である。
【0055】
前記重合禁止剤を添加するタイミングは特に制限されない。ポリシロキサン粒子を製造する段階;シラン系単量体成分を添加する段階;シラン系単量体以外の単量体成分を添加、吸収させる段階;シラン系単量体以外の単量体成分を添加、吸収させた後の段階;のいずれのタイミングで添加してもよい。これらの中でも、重合禁止剤は、シラン系単量体以外の単量体成分を添加、吸収させた後の段階で添加することが好ましい。前記重合禁止剤の添加方法は特に限定されない。本発明の重合体粒子を製造するための単量体成分に溶解させた状態で添加してもよいし、重合禁止剤を単独で添加してもよい。
【0056】
上述した製法によれば、前記所定形状の凹みを有する重合体粒子が得られる。本発明の重合体粒子は、特異な機械的特性を有しているため、導電性微粒子の基材粒子として有用である。また、本発明の重合体粒子は、架橋構造を有しており耐溶剤性に優れ、且つ、凹みにより優れた光散乱性を有しているので、光学部材用材料として有用である。
【0057】
2.導電性微粒子
重合体粒子の用途の一例として導電性微粒子について説明する。
本発明の導電性微粒子は、上記重合体粒子の表面を被覆する導電性金属層を有するものである。したがって、本発明の導電性微粒子は、上述の重合体粒子の特性を備えたものである。上記導電性金属層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム及びニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、ニッケル、パラジウム、銀が導電性に優れており好ましい。また、安価な点で、ニッケル、ニッケル合金(Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag)等が好ましい。また、導電性金属層は、単層でもよいし複層であってもよく、複層の場合には、例えば、ニッケル−金、ニッケル−パラジウム、ニッケル−パラジウム−金、ニッケル−銀等の組合せが好ましく挙げられる。
【0058】
上記導電性金属層の厚さは、0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.03μmであり、0.20μm以下が好ましく、より好ましくは0.15μm以下である。導電性金属層の厚さが上記範囲内であれは、導電性微粒子を異方性導電材料として用いる際に、安定した電気的接続が維持でき、且つ、凹みを有する重合体粒子の機械的特性を十分に生かすことができる。
【0059】
本発明の導電性微粒子は、導電性金属層の表面に、さらに絶縁性樹脂層を有するものであってもよい。上記絶縁性樹脂層としては、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁性樹脂層が崩壊あるいは剥離するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン類;ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート重合体及び共重合体;ポリスチレン;等の熱可塑性樹脂や特にその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0060】
但し、基材となる重合体粒子に比べて絶縁性樹脂層が硬過ぎる場合には、絶縁性樹脂層の破壊よりも先に重合体粒子自体が破壊してしまう虞がある。したがって、絶縁性樹脂層には、未架橋又は比較的架橋度の低い樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
上記絶縁性樹脂層は、単層であっても、複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層;絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状その他の形状の粒子を導電性微粒子の表面に付着した層;さらに、導電性微粒子の表面を化学修飾することにより形成された層;であってもよい。上記樹脂絶縁層の厚さは0.01μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜0.5μmである。樹脂絶縁層の厚さが前記範囲内であれば、導電性粒子による導通特性を良好に維持しつつ、粒子間の電気絶縁性が良好となる。
【0062】
2−1.導電性微粒子の製造方法
本発明の導電性微粒子は、上記重合体粒子の表面に導電性金属層を形成することにより得られる。重合体粒子表面に導電性金属層を被覆する方法は特に限定されず、例えば、無電解めっき、置換めっき等めっきによる方法;金属微粉を単独、又は、バインダーに混ぜ合わせて得られるペーストを重合体微粒子にコーティングする方法;真空蒸着、イオンプレーティング、イオンスパッタリング等の物理的蒸着方法が挙げられる。これらの中でも、無電解めっき法は、大掛かりな装置を必要とせず、容易に導電性金属層を形成できるため好ましい。
【0063】
本発明の導電性微粒子が絶縁性樹脂層を有するものである場合、上記無電解めっき工程の後に、導電性金属層の表面に樹脂等による絶縁処理を行う。絶縁性樹脂層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、無電解めっき処理後の導電性微粒子の存在下で、絶縁性樹脂層の原料の界面重合、懸濁重合、乳化重合を行い、絶縁性樹脂により導電性微粒子をマイクロカプセル化する方法;絶縁性樹脂を有機溶媒に溶解した絶縁性樹脂溶液中に導電性微粒子を分散させた後、乾燥させるディッピング法;スプレードライ法、ハイブリダイゼーションによる方法等、従来公知の方法はいずれも用いることができる。
【0064】
3.異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料の構成材料としても好適であり、本発明の導電性微粒子を用いてなる異方性導電材料もまた、本発明の好ましい実施態様の1つである。上記異方性導電材料は、本発明の導電性微粒子を用いてなるものであればその形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等、様々な形態が挙げられる。すなわち、これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることで、電気的に接続することができる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサー及びその組成物)も含まれる。
【0065】
上記異方性導電材料は、絶縁性のバインダー樹脂中に、本発明の導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで製造されるが、もちろん、絶縁性のバインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用して、基材間あるいは電極端子間を接続してもかまわない。上記バインダー樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;グリシジル基を有するモノマーやオリゴマー及びイソシアネート等の硬化剤との反応により硬化する硬化性樹脂組成物や、光や熱により硬化する硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0067】
1.評価方法
1−1.平均粒子径、粒子径の変動係数
精密粒度分布測定装置(商品名「コールターマルチサイザーIII」、ベックマンコールター株式会社製)を用いて、重合体粒子の30000個の粒子の粒子径を測定し、個数基準での平均粒子径、標準偏差を測定した。また、得られた測定結果から、下記式を用いて重合体粒子の粒子径の変動係数を算出した。
変動係数(%)=100×(標準偏差/平均粒子径)
【0068】
1−2.凹み
走査型電子顕微鏡(SEM、日立社製:「S−3500N」)を用いて、重合体粒子20個を観察して、凹みの有無及び凹みの外周形状を確認した。また、凹みが存在するものについては、凹みの長径(L1)、短径(L2)を測定し、粒子20個の平均値を求めた。
凹みの深さは、重合体粒子をエポキシ樹脂に包埋し、ミクロトームで薄切片(厚さ10nm)を作製した後、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、日立ハイテクノロジーズ社製)で断面の透過像を観察することにより測定した。具体的には、凹みの基点となる2点を結んだ直線から、凹みの底部へ下ろした垂線の長さが最も長い部分の深さを、凹み深さ(H)とした。
また、凹みを有する粒子について、比(L1/D)、比(L2/D)、比(L2/L1)及び比(H/D)を測定し、それぞれ粒子20個の平均値を求めた。
【0069】
1−3.機械的特性
微小圧縮試験機(島津製作所社製、「MCT−W500」)を用いて、室温(25℃)において、試料台(材質:SKS材平板)上に散布した粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子(材質:ダイヤモンド)を用いて、粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.2295mN/秒)で荷重をかけた。
【0070】
1−4.耐溶剤試験
重合体粒子1.0部をトルエン10部に加え10分間撹拌した後、メンブランフィルターで濾過し、得られた粒子を120℃で2時間乾燥させ、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、日立ハイテクノロジーズ社製、倍率5万倍)で粒子表面を観察した。粒子表面状態がトルエンに浸漬する前と同じであれば「○」、変形や空洞化が生じていれば「×」と評価した。
【0071】
1−5.異方性導電材料評価
導電性接着ペースト0.1mgを、アルミニウム電極が形成された2枚のガラス基板で挟み、180℃で熱圧着を行い、試験片(導電性接着剤硬化物からなる異方導電シートが電極間に挟まれた構造の接続構造体)を得た。得られた試験片について接続抵抗値(Ω)を四端子法により測定した。
【0072】
2.重合体粒子の製造
2−1.製造例1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水804部と、25%アンモニア水1.2部、メタノール336.6部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)50部及びメタノール59.4部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。反応開始から2時間後、得られたポリシロキサン粒子の乳濁液をサンプリングし、粒子径を測定したところ、個数平均粒子径は2.20μmであった。
【0073】
続いて、一次ポリシロキサン粒子の乳濁液に、テトラエトキシシラン(信越化学工業社製、「LS−2430」)10.0部を添加し、25℃で30分撹拌し、二次ポリシロキサン粒子の乳濁液を調整した。
【0074】
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製:「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液0.9部をイオン交換水35.0部で溶解した溶液に、単量体としてのスチレン(4−ターシャリーブチルカテコール 30ppm含有)35.0部、重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製:「V−65」)0.9部を溶解した溶液を加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。
【0075】
得られた乳化液を、二次ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、二次ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0076】
最後に、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル10質量%水溶液(伯東社製「ポリストップ7010」)2.1質量部、及びイオン交換水27.9質量部を加え、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し単量体組成物のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の反応液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、120℃で2時間乾燥させて重合体粒子No.1を得た。
【0077】
2−2.製造例2
製造例1において、テトラエトキシシランを、テトラエトキシシランの4量体(多摩化学工業株式会社社製、シリケート40)10部に変更したこと以外は製造例1と同様にして重合体粒子No.2を得た。
【0078】
2−3.製造例3
製造例1において、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル10質量%溶液(伯東社製「ポリストップ7010」)を添加しなかったこと以外は製造例1と同様にして重合体粒子No.3を得た。
【0079】
2−4.製造例4
製造例1において、テトラエトキシシラン添加しなかった以外は、製造例1と同様にして重合体粒子No.4を得た。
【0080】
3.導電性粒子の製造
重合体粒子に水酸化ナトリウムによるエッチング処理を行った後、二塩化スズ溶液によるセンシタイジングを行った。さらに二塩化パラジウム溶液によるアクチベーティングを行い、パラジウム核を形成させた。次いで、パラジウム核を形成させた重合体粒子を無電解ニッケルメッキ浴に浸漬し、膜厚が0.1μmになるまでニッケルメッキ層を形成させた後、金置換メッキを行い0.02μmの金層を形成させた。その後、イオン交換水で洗浄後、アルコール置換を行って真空乾燥を行い、導電性微粒子を得た。
【0081】
4.異方性導電材料の製造
上記で得た導電性微粒子2gをエポキシ樹脂(三井化学製:「ストラクトボンド(登録商標)XN−5A」)100gに混ぜて分散させ、導電性接着ペーストを作製した。
【0082】
製造例1〜4で得られた重合体粒子についての評価結果を表1に示し、製造例1で得られた重合体粒子No.1のSEM画像を図2に、該重合体粒子No.1の凹みの測定に用いたSEM画像の一例を図3に、該重合体粒子No.1の断面のFE−SEM像を図4に示した。製造例1で得られた重合体粒子と製造例2で得られた重合体粒子の圧縮変形挙動を図5に示した。また、製造例1〜4で得られた重合体粒子を基材粒子として用いた導電性微粒子についての評価を表1に合わせて示した。
【0083】
【表1】

【0084】
製造例1〜4で得られた重合体粒子を観察したところ、重合体粒子No.1は所定形状の凹みを有していたが、重合体粒子No.2〜4は所定形状の凹みを有していなかった。これは製造例2ではエトキシシランの4量体を用いたため、一次ポリシロキサン粒子内部に充分に浸透できないため、粒子表面に所定形状の凹みが形成されなかったと考えられる。また、製造例3では重合禁止剤を添加しておらず、シラン系単量体以外の単量体成分が急速に重合し、単量体吸収工程での形状を維持したため粒子表面に所定形状の凹みが形成されなかったと考えられる。また、重合体粒子No.1における所定形状の凹みを有する粒子の個数は、全粒子の71%以上であった。
【0085】
また、図5に示すように製造例1で得られた重合体粒子No.1は、粒子表面に所定形状の凹みを有しているため、低い圧縮荷重(試験力)で変形することがわかる。これに対して製造例2で得られた重合体粒子No.2は粒子表面に所定形状の凹みを有さないため、粒子を変形するために高い圧縮荷重が必要であることがわかる。そして、これらの重合体粒子No.1〜4を基材粒子として用いた導電性微粒子では、基材粒子表面に凹みを有さない場合(製造例2〜4)よりも、基材粒子表面に凹みを有する場合(製造例1)の方が、接続抵抗値が大きく低下していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の重合体粒子は、導電性微粒子の基材粒子、光拡散用途に利用できる。また、本発明の導電性微粒子は、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等の異方性導電材料に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0087】
1:重合体粒子、2:凹み、D:粒子径、L1:長径、L2:短径、H:深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球に下記(a)〜(d)を満足する凹みが1つ形成された外形を有し、その体積が元の球の半分以上であることを特徴とする重合体粒子。
(a)凹みの外周形状が多角形である。
(b)凹みの長径(L1)と粒子径(D)との比(L1/D)が0.3以上1.0未満である。
(c)凹みの短径(L2)と粒子径(D)との比(L2/D)が0.05以上1.0未満である。
(d)長径(L1)と短径(L2)との比(L2/L1)が1.0未満である。
【請求項2】
重合体粒子を形成するための全単量体成分中、架橋性単量体の含有量が5質量%以上である請求項1に記載の重合体粒子。
【請求項3】
個数平均粒子径が0.5μm〜50μmである請求項1又は2に記載の重合体粒子。
【請求項4】
粒子径の変動係数が40%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合体粒子。
【請求項5】
前記凹みの深さ(H)と、粒子径(D)との比(H/D)が0.5以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体粒子。
【請求項6】
重合体粒子表面における凹みの面積が、重合体微粒子が凹みを有していないと仮定した場合の全表面積の25%以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の重合体粒子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の重合体粒子表面に導電性金属層を有することを特徴とする導電性微粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の導電性微粒子を含有することを特徴とする異方性導電材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−111908(P2012−111908A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264253(P2010−264253)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】