説明

重合性基を有する色素を含む2光子吸収光記録媒体

【課題】記録前後での記録部分(光照射部)の屈折率変化量を大きくして屈折率変調を高めた2光子吸収重合性3次元記録材料を提供すること。さらに、それによって記録の精細度と記録感度を向上させた2光子吸収重合性3次元記録材料を提供すること。
【解決手段】重合性基を有する色素を少なくとも1種類含むことを特徴とする同時2光子吸収3次元記録材料。特に、前記重合性基を有する色素のほかに、2光子吸収化合物、重合開始剤、およびバインダーを含むことを特徴とする同時2光子吸収3次元記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同時2光子吸収を利用して記録媒体内部に3次元的にピットを形成させて光情報を記録し、記録されたそれらの記録ピットを読み出す2光子吸収3次元光記録媒体に関する。また媒体用の、記録の前後で記録部分の大きな屈折率変化が得られる同時2光子吸収記録媒体用記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことであり、印加する光電場の2乗に比例する2次の非線形光学効果としては、第二高調波発生(SHG),光整流、フォトリフラクティブ効果、ポッケルス効果、パラメトリック増幅、パラメトリック発振、光和周波混合、光差周波混合などが知られている。また印加する光電場の3乗に比例する3次の非線形光学効果としては第三高調波発生(THG)、光カー効果、自己誘起屈折率変化、2光子吸収などが挙げられる。
【0003】
これらの非線形光学効果を示す非線形光学材料としてはこれまでに多数の無機材料が見い出されてきた。ところが無機物においては、所望の非線形光学特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の非線形光学特性の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な非線形光学材料として注目を集めている。
【0004】
近年、有機化合物の非線形光学特性の中でも3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても「2光子吸収」とは「非共鳴2光子吸収」を指す。また、「同時2光子吸収」の「同時」を略して単に「2光子吸収」と記すこともある。
【0005】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。
したがって、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて重合を起こすことができれば、3次元空間の任意の場所に重合を起こせ、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体や、微細3次元光造形材料等への応用も可能となる。
【0006】
そこで、究極の超高密度記録媒体として、膜厚方向に多層記録を行う3次元光記録媒体が注目されてきている。その有力な方法である2光子3次元記録材料は、3次元光記録媒体として、注目を引いている。
【0007】
そのような、背景から特許文献1では、2光子吸収化合物に非共鳴2光子吸収を行わせてその励起エネルギーを用いて共存する重合性化合物に重合を起こさせ、3次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で重合を起こせるという3次元光記録媒体の提示がなされている。屈折率の増大に関して効果は認められることが判明しているが、一層の改善が要望されている。
【特許文献1】特開2004−346238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1では、3次元空間の任意の場所に高い空間分解能で重合を起こり、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体や、微細3次元光造形材料等への応用も可能となるが、該特許文献1に記載の2光子3次元記録材料を用いた場合、重合反応によって形成された記録ピット部と未記録部との間の屈折率差が十分に大きいとは言えず改善が必要である。
【0009】
本発明の目的は、上記の光重合利用の微細3次元記録に係る問題点を解決した2光子吸収重合性3次元記録材料を提供することである。具体的には、記録前後での記録ピット部(光照射領域)と未記録部(光未照射領域)とのの間で大きな屈折率差が得られる2光子吸収3次元記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らの鋭意検討の結果、2光子吸収によって重合反応を行う重合性化合物に色素を結合した色素モノマーを用いれば、光記録時に形成される記録ピット部の屈折率を大きくできるため、未照射部との屈折率差を大きくすることが可能であるという事実を見出して本発明に至った。
すなわち、本発明の上記目的は、下記の手段により達成された。
(1)重合性基を有する色素を少なくとも1種類含むことを特徴とする同時2光子吸収3次元記録材料。
(2)重合性基を有する色素の吸収スペクトルが、同時2光子吸収による記録光の記録波長に対応する領域には該色素の線形吸収が存在せず、かつ該記録光の波長よりも短波長側に該色素の線形吸収のモル吸光係数が10,000以上となる波長領域を有し、さらに該2光子記録材料から得られる同時2光子吸収3次元記録媒体の再生光の波長領域における該色素の線形吸収のモル吸光係数が100以下であることを特徴とする(1)に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(3)前記重合性基を有する色素のほかに、2光子吸収化合物、重合開始剤、およびバインダーを含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(4)同時2光子吸収3次元記録材料から得られる2光子記録媒体の再生波長における該重合性基を有する色素の屈折率がバインダーの屈折率よりも大きいことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(5)前記(2)に規定した重合性基を有する色素のほかに、さらに前記(2)に規定した吸収特性を有しない、重合性基を有する化合物をも含むことを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(6)前記(2)に規定した吸収特性を有しない、重合性基を有する化合物の再生波長における屈折率が、バインダーの該波長における屈折率よりも大きいことを特徴とする(5)に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(7)前記バインダーがアリール基、芳香族へテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原
子、またはイオウ原子を含まないことを特徴とする(3)〜(6)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(8)前記バインダーがセルロースエステル類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールまたはフッ素を含む高分子化合物の中から選ばれる少なくとも1つの高分子化合物であることを特徴とする(3)〜(7)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(9)前記バインダーが熱硬化性化合物から成る3次元架橋構造を有する高分子化合物であることを特徴とする(3)〜(7)のいずれかに記載の2光子3次元記録材料。
(10)前記バインダーが多官能イソシアネートと多官能アルコールとの熱硬化により得られるポリウレタン化合物の3次元架橋構造を有する高分子化合物であることを特徴とする(3)〜(7)または(9)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(11)光照射部分において記録光の同時2光子吸収によって生成した2光子吸収化合物の励起状態と重合開始剤との間でのエネルギー移動または電子移動により共存する重合性基を有する化合物が重合し、光非照射部分との屈折率差を生じる記録層を有することを特徴とする(3)〜(10)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(12)屈折率差によって形成される屈折率変調量が0.005以上であることを特徴とする(11)に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(13)前記2光子吸収化合物が有機色素であることを特徴とする(3)〜(12)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(14)前記2光子吸収化合物がメチン色素またはフタロシアニン色素であることを特徴とする、(3)〜(13)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(15)前記2光子吸収化合物がシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素または下記一般式(1)にて表される化合物であることを特徴とする、(3)〜(14)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
一般式(1)
【化1】



式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R、R、R、Rのうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、nおよびmが2以上の場合、複数個のR、R、RおよびRは同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n、m同時に0となることはない。XおよびXは独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(2)で表される基を表す。
一般式(2)
【化2】


式中、Rは水素原子または置換基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、Zは5または6員環を形成する原子群を表す。
(16)一般式(1)にて表される化合物のX、Xが一般式(2)にて表されることを特徴とする(15)に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(17)一般式(1)で表される化合物において、R とR が連結して環を形成することを特徴とする(15)又は(16)記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(18)一般式(1)で表される化合物において、R とR が連結して、カルボニル基と共にシクロペンタノン環を形成することを特徴とする(15)〜(17)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(19)一般式(1)で表される化合物において、X 、X が一般式(2)で表され、R はアルキル基であり、Z で形成される環が、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環のいずれかで表されることを特徴とする(15)〜(18)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(20) 一般式(1)で表される化合物において、X、X が一般式(2)で表され、R はアルキル基であり、Z で形成される環が、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環のいずれかで表されることを特徴とする(19)に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(21)前記シアニン色素が下記一般式(3)にて、メロシアニン色素が下記一般式(4)にて、オキソノール色素が一般式(5)にて表されることを特徴とする、前記(15)に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【化3】



一般式(3)〜(5)中、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素
複素環を形成する原子群を表わし、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra、Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
Ma〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na、na及びnaはそれぞれ0または1であり、ka、及びkaはそれぞれ0〜3の整数を表わす。kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよく、kaが2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。kaは0〜8の整数を表わし、kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
(22)前記(21)にて、シアニン色素が下記一般式(3)にて、メロシアニン色素が下記一般式(4)にて、オキソノール色素が一般式(5)にて表されることを特徴とする、(21)記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【0011】
【化4】


一般式(3)〜(5)中、Za、Za及びZaはそれぞれオキサゾール核、インダゾール核、チアゾール核、インドレニン核を表わし、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra、Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のアリール基、炭素数1〜20のヘテロ環基を表す。
Ma〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na、na及びnaはそれぞれ0または1であり
、kaは1〜3及びkaは0〜3の整数を表わす。kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよく、kaが2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。kaは2〜4の整数を表わし、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
(23)前記重合開始剤が1)ケトン系重合開始剤、2)有機過酸化物系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、5)ジアゾニウム塩系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、8)トリフェニルアルキルホウ酸塩系重合開始剤、9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、13)金属アレーン錯体系重合開始剤、14)スルホン酸エステル系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする(1)〜(22)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(24)前記重合開始剤が1)ケトン系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする(23)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な同時2光子吸収3次元記録材料。
(25)前記重合開始剤が少なくとも1種のラジカルを発生する重合開始剤を含み、重合性化合物が少なくとも1種のラジカルにより重合するラジカル重合性化合物を含むことを特徴とする(1)〜(25)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(26)前記(25)において、少なくとも1種のラジカルを発生するラジカル重合開始剤が1)ケトン系重合開始剤、2)有機過酸化物系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、5)ジアゾニウム塩系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、8)トリフェニルアルキルホウ酸塩系重合開始剤、9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、13)金属アレーン錯体系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする、(25)記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(27)前記(26)において、少なくとも1種のラジカルを発生するラジカル重合開始剤が1)ケトン系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする(26)に記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な同時2光子吸収3次元記録材料。
(28)前記(26)において、少なくとも1種のラジカルを発生するラジカル重合開始剤が3)ビスイミダゾール系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする(26)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な同時2光子吸収3次元記録材料。
(29) 該重合開始剤が少なくとも1種の酸を発生する重合開始剤を含み、該重合性化合物が少なくとも1種の酸により重合するカチオン重合性化合物を含むことを特徴とする(1)〜(28)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(30)前記(29)において、少なくとも1種のラジカル及び酸を共に発生するラジカル重合開始剤が、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重
合開始剤のいずれかであることを特徴とする(29)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な同時2光子吸収3次元記録材料。
(31)2光子吸収化合物が少なくとも1個の水素結合性基を有することを特徴とする(1)〜(30)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(32)前記水素結合性基が−COOH基または−CONH基であることを特徴とする(31)記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
(33)(1)〜(32)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料に、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形吸収の存在しない領域の波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収を利用して光重合を起こさせることを特徴とする3次元的屈折率変調を起こさせる変調方法。
(34)(1)〜(32)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料に、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形吸収の存在しない波長のレーザー光焦点部と非焦点部にて重合性化合物及びその重合反応物とバインダーとの組成比の不均一化が起こることにより生じる3次元的屈折率変調を記録に用いることを特徴とする3次元光記録方法。
(35)(1)〜(32)のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料を含むことを特徴とする3次元光記録媒体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の2光子吸収3次元記録材料は、非共鳴2光子吸収を用いた光記録において、記録ピット部と未記録部との間で大きな屈折率差を生じることが可能なため、再生感度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
同時2光子吸収による光重合により3次元的屈折率変調が可能なことを特徴とする本発明の同時2光子吸収3次元記録材料(厳密には「非共鳴同時2光子吸収3次元記録材料」と記述するべきであろうが、本明細書では「非共鳴」を省略して記し、さらに、「同時」も省略することもある)について詳しく説明する。
【0014】
本発明の2光子吸収3次元記録材料は、重合性基を有する色素(色素モノマーともいう)を必須成分とし、さらに2光子吸収化合物、その励起エネルギーを用いてラジカルまたは酸を発生するラジカルまたはカチオン重合開始剤、ラジカルまたはカチオンにより重合する重合性化合物、高分子化合物からなるバインダーを含み、必要に応じて連鎖移動剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を用いる。
2光子吸収3次元記録材料は、重合性基を有する色素すなわち色素モノマーを含み、レーザー光の照射部において2光子吸収化合物が非共鳴2光子吸収をおこなって励起状態が生成し、該励起状態を利用して開始剤からラジカルまたは酸が引き続いて発生することで、色素モノマーの重合が進行して屈折率が変化する。この一連の光反応によって非照射部との間に屈折率の相違を生じ、いわゆるピットが形成される。本明細書でいうピットとは情報記録材料において一般的に用いられている概念のピットであり、情報記録を担持するための単位素子をいう。非共鳴2光子吸収による光重合で生じた記録ピットは安定性に優れており、記録情報が高精細であり、かつ記録の保存性にも優れている。
本発明の2光子吸収3次元記録材料の好ましい態様においては、上記の光重合性色素モノマー、2光子吸収化合物、重合開始剤、重合性化合物、高分子化合物からなるバインダーを含む。特に色素モノマーとバインダーとの再生波長における屈折率が大きく異なることが好ましい。その結果、非共鳴2光子吸収により起こる光重合によって、レーザー焦点部と非焦点部にて色素モノマー及びその重合生成物とバインダーとの組成比の不均一化が起こり、3次元的屈折率変調が強化される。
形成される屈折率変調は0.005より大きいことが好ましく、0.01より大きいことがより好ましく、0.05より大きいことがさらに好ましい。
重合性化合物とバインダーの屈折率の違いは、重合性化合物の方がより屈折率が大きくても、バインダーの方がより屈折率が大きくてもどちらでも構わないが、重合性化合物の方がバインダーよりも屈折率が大きいことがより好ましい。
以下に本発明の2光子吸収3次元記録材料について詳しく説明する。
【0015】
<色素モノマー>
はじめに、色素モノマーについて説明する。
本発明の2光子3次元記録材料は、重合性基を有する色素を少なくとも1種含むことを特徴とする。ここで、本発明の色素モノマーにおける「色素」とは、波長300〜2000nmの紫外光、可視光、赤外光のいずれかを吸収する化合物のことを称し、より好ましくは波長330〜700nmの紫外光または可視光を吸収する化合物のことを称し、さらに好ましくは400〜700nmの可視光を吸収する化合物のことを称す。その際その領域のモル吸光係数としては5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上が最も好ましい。
【0016】
本発明に係る2光子3次元記録材料は、重合性基を有する色素に加えて、少なくとも増感色素、重合開始剤、及びバインダーを有し、色素部分を有さない重合性化合物をさらに有することが好ましい。ここで、色素部分を有さない重合性化合物の少なくとも1個が沸点100℃以上の液体であることがより好ましい。
【0017】
本発明に係る2光子3次元記録方法は、2光子記録光照射により光を吸収して生成した2光子吸収化合物励起状態が、電子移動またはエネルギー移動により重合開始剤を活性化して、重合性基を有する色素及び色素部分を有さない重合性化合物の重合を起こし、その際、光照射部では重合性基を有する色素及び色素部分を有さない重合性化合物が主に移動し、光未照射部にバインダーが主に追いやられることによる屈折率変調により、記録ピットを記録することを特徴とする。
【0018】
したがって、本発明では、再生波長における屈折率が、バインダーよりも重合性基を有する色素の方が大きいことが好ましい。
一般に、色素の屈折率は、吸収極大波長(λmax)付近からそれより長波長な領域で高い値を取り、特にλmaxからλmaxより200nm程長波長な領域において非常に高い値を取り、色素によっては2を超え、さらには2.5を超えるような高い値をとる。
一方で、バインダーポリマー等の色素ではない有機化合物は通常1.4〜1.6程度の屈折率である。
したがって、本発明の2光子3次元記録材料では、屈折率変調に屈折率の大きい色素を用いるため、高感度化の点で有利である。また、高感度化のためには、重合性基を有する色素は、好ましくは吸収スペクトルにおいて、ホログラム再生波長よりも10〜200nm短波長であるλmaxを有し、より好ましくは30〜130nm短波長であるλmaxを有し、εが10000以上であり、より好ましくは20000以上であることが好ましい。
【0019】
さらに本発明の2光子3次元記録材料において、色素部分を有さない重合性化合物を用いる場合も、再生波長における屈折率が、バインダーよりも色素部分を有さない重合性化合物の方が大きいことが好ましい。
その際、色素部分を有さない重合性化合物が、少なくとも1個以上のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、バインダーはそれらを含まないことがより好ましい。
【0020】
本発明における重合反応は、重合反応がラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれかであることが好ましく、ラジカル重合またはカチオン重合であることが好ましい。
【0021】
その際、重合性基を有する色素、色素部分を有さない重合性化合物の重合性基が、重合がラジカル重合の時は、重合性基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基部分を有し、好ましくはアクリロイル基またはメタクリロイル基を有し、重合がカチオン重合またはアニオン重合の時は重合性基としてオキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基、N-ビニルカルバゾール部位のいずれかを有し、好ましくはオキシラン環またはオキセタン環を有することが好ましい。
【0022】
次に、本発明に用いる重合性基を有する色素について詳しく説明する。
本発明に用いる重合性基を有する色素のうち、色素の部分として好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、ピリリウム色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、アズレニウム色素、クマリン色素、ケトクマリン色素、スチリルクマリン色素、ピラン色素、キサンテン色素、チオキサンテン色素、フェノチアジン色素、フェノキサジン色素、フェナジン色素、フタロシアニン色素、アザポルフィリン色素、ポルフィリン色素、縮環芳香族系色素、ペリレン色素、アゾメチン色素、アントラキノン色素、金属錯体色素、アゾ色素等が挙げられ、より好ましくは、シアニン色素、スクワリリウムシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、フェノチアジン色素、縮環芳香族系色素、アゾ色素が挙げられ、さらに好ましくは、シアニン色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、クマリン色素、キサンテン色素、アゾ色素が挙げられる。
【0023】
その他に「色素ハンドブック」(大河原信他編 講談社 1986年)、「機能性色素の化学」(大河原信他編 シーエムシー 1981年)、「特殊機能材料」(池森忠三郎他編
シーエムシー 1986年)に記載される色素および染料も本発明の色素部分として用いることができる。
【0024】
本発明に用いる重合性基を有する色素について、重合性基については前述した通りである。重合性基としては色素のどの部分に置換していても良い。
【0025】
以下に本発明に用いる重合性基を有する色素の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
【化5】



【0027】
【化6】


【0028】
【化7】


【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
<バインダー>
次に本発明の2光子吸収3次元記録材料に用いるバインダーについて説明する。
バインダーは重合前の組成物の成膜性、膜厚の均一性、保存時安定性を向上させる等の目的で通常使用される。バインダーとしては、重合性化合物、重合開始剤、2光子吸収化合物と相溶性の良いものが好ましい。
バインダーとしては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、単独又は互いに組合せて使用することができる。
【0032】
前記したように本発明に用いるバインダーは重合性化合物と屈折率が違うことが好ましく、重合性化合物の方がより屈折率が大きくても、バインダーの方がより屈折率が大きくてもどちらでも構わないが、重合性化合物の方がバインダーよりも屈折率が大きいことがより好ましい。
そのためには、重合性化合物またはバインダーのいずれか一方が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、残りの一方はそれらを含まないことが好ましく、より好ましくは、重合性化合物が少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、バインダーはそれらを含まないことが好ましい。
【0033】
以下に、重合性化合物の屈折率の方がバインダーの屈折率よりも大きい場合の好ましいバインダーの例を説明する。
【0034】
好ましい低屈折率バインダーの具体例としては、アクリレート及びアルファ−アルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体及びほぼ4,000〜1,000,000の重量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、米国特許3,458,311中及び米国特許4,273,857中に開示されている酸含有重合体及び共重合体、並びに米国特許4,293,635中開示されている両性重合体バインダーなどが挙げられ、より好ましくはセルロースアセテートブチレート重合体、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸及びメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体及びインターポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸又はメタクリル酸C2〜C4アルキル/アクリル酸又はメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、並びにそれらの混合物などが挙げられる。
【0035】
また、フッ素原子含有高分子も低屈折率バインダーとして好ましい。好ましいものとしては、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その重量平均分子量が5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5ないし70質量%であることが望ましい。
【0036】
フッ素原子含有高分子におけるフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが使用される。また、他の共重合成分であるアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アリサイクリックビニルエーテルとしてはシクロヘキシルビニルエーテルおよびその誘導体、ヒドロキシビニルエーテルとしてはヒドロキシブチルビニルエーテルなど、オレフィンおよびハロオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど、カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなど、また不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸のC1からC18のアルキルエステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2からC8のヒドロキシアルキルエステル類、およびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性単量体はそれぞれ単独でも、また2種以上組み合わせて使用しても良く、更に必要に応じて該単量体の一部を他のラジカル重合性単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル化合物と代替しても良い。また、その他の単量体誘導体として、カルボン酸基含有のフルオロオレフィン、グリシジル基含有ビニルエーテルなども使用可能である。
【0037】
前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。
【0038】
これらのバインダーは、非3次元架橋構造を形成するものが多い。次に、3次元架橋構造を形成する構造のバインダーについて述べる。
【0039】
3次元架橋構造を形成するバインダー
光記録媒体の記録層には、3次元架橋構造を形成するバインダーも用いられる。この種のバインダーは、一般にマトリックスと呼ばれる記録や保存に関わるモノマーや光重合開始剤を保持するためのポリマーが含まれる。マトリックスは、塗膜性、膜強度、およびホログラム記録特性向上の効果を高める目的で使用されるものである。本発明の光記録用組成物は、マトリックス形成成分である硬化性化合物を含むことができる。前記硬化性化合物としては、熱硬化性化合物、触媒などを使用して光照射により硬化する光硬化性化合物を用いることができ、熱硬化性化合物が好ましい。
記録層に含まれる熱硬化性マトリックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、イソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるウレタン樹脂やオキシラン化合物から形成されるエポキシ化合物、メラミン化合物、フォルマリン化合物、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等の不飽和酸のエステル化合物やアミド化合物を重合して得られる重合体などが挙げられる。中でもイソシアネート化合物とアルコール化合物から形成されるポリウレタンマトリックスが好ましく、記録の保持性から考えて、多官能イソシアネートと多官能アルコールから形成される3次元ポリウレタンマトリックスが最も好ましい。
以下に、ポリウレタンマトリックスを形成することができる、多官能イソシアネートおよび多官能アルコールについて具体例を述べる。
前記多官能イソシアネートとしては、具体的には、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1−メトキシフェニレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルフェニレン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、シクロブチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロペンチレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキシレン−2,6−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン、シクロヘキサン−1,3−ビス(メチルイソシアネート)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ドデカメチレン−1,12−ジイソシアネート、フェニル−1,3,5−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−2,4’,4”−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,2’,4’−テトライソシアネート、ジフェニルメタン−2,5,2’,5’−テトライソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリイソシアネート、シクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、3,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、1,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3,5−トリス(メチルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタン−2,4,2’−トリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4,4’−トリイソシアネートリジンジイソシアネートメチルエステル、またはこれらの有機イソシアネート化合物の化学量論的過剰量と多官能性活性水素含有化合物との反応により得られる両末端イソシアネートプレポリマー、などが挙げられる。これらの中でも、ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多官能アルコールとは、多官能アルコール単独であってもよく、他の多官能アルコールと混合状態であってもよい。多官能アルコールとしては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、テトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノール類、またはこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、デカントリオール等のトリオール類などのこれらの多官能アルコールをポリエチレンオキシ鎖やポリプロピレンオキシ鎖で修飾した化合物、などが挙げられる。
本発明に用いる光記録用組成物における前記マトリックス形成成分の含有量は、10〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましい。前記含有量が10質量%以下であれば、安定な干渉像を容易に得ることができ、95質量%以下であれば、回折効率の点で望ましい性能を得ることができる。
【0040】
<2光子吸収化合物>
次に本発明に用いる2光子吸収重合性組成物における2光子吸収化合物について説明する。
本発明に用いる2光子吸収化合物は、非共鳴2光子吸収(化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2つの光子を同時に吸収して励起される現象)を行う化合物である。
【0041】
本発明に用いる2光子吸収化合物は好ましくは有機化合物である。
なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でも良い。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でも良く、置換されていても置換されていなくても良い。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でも良く、置換フェニル基でも良い。
【0042】
本発明に用いる2光子吸収化合物はメチン色素である。なおここで色素とは可視光領域
(400〜700nm)または近赤外領域(700〜2000nm)に吸収の一部を有する化合物に対する総称である。
本発明におけるメチン色素としてはいかなるものでも良いが、例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、ポリエン色素等が挙げられる。
【0043】
メチン色素としてより好ましくは、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、が挙げられ、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、またはオキソノール色素である。
【0044】
これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(HeterocyclicCompounds−Cyanine Dyes andRelated Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JohnWiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(HeterocyclicCompounds−Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JohnWiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(ElsevierScience Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載されている。
【0045】
シアニン色素、メロシアニン色素またはオキソノール色素の具体例としては、F.M.Harmer著、HeterocyclicCompounds−Cyanine Dyes andRelated Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊に記載のものが挙げられる。
【0046】
シアニン色素、メロシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21及び22頁の(XI)、(XII)に示されているもの(ただしn12、n15の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは0〜4の整数)とする)が好ましい。
【0047】
本発明に用いる2光子吸収化合物がシアニン色素の時、好ましくは一般式(3)にて表わされる。
【0048】
一般式(3)中、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わす。形成される5員または6員の含窒素複素環として好ましくは炭素原子数(以下炭素数という)3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−メチルオキサゾリル、2−3−エチルオキサゾリル、2−3,4−ジエチルオキサゾリル、2−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−メチルチオエチルベンゾオキサゾリル、2−3−メトキシエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホブチ
ルベンゾオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−(3−ナフトキシエチル)ベンゾオキサゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾオキサゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾオキサゾリル)、炭素数3〜25のチアゾール核(例えば、2−3−メチルチアゾリル、2−3−エチルチアゾリル、2−3−スルホプロピルチアゾリル、2−3−スルホブチルチアゾリル、2−3,4−ジメチルチアゾリル、2−3,4,4−トリメチルチアゾリル、2−3−カルボキシエチルチアゾリル、2−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチルベンゾチアゾリル、2−3−ブチルベンゾチアゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−メチル−β−ナフトチアゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトチアゾリル、2−3−(1−ナフトキシエチル)ベンゾチアゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾチアゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−6−ヨード−3−エチルベンゾチアゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾチアゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾチアゾリルなどが挙げられる)、炭素数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−1,3−ジメチルイミダゾリル、2−1−メチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,4−トリエチルイミダゾリル、2−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,5−トリメチルベンゾイミダゾリル、2−6−クロロ−1,3−ジメチルベンゾイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3−ジスルホプロピル−5−シアノ−6−クロロベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、炭素数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチルインドレニン)、炭素数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−メチルキノリル、2−1−エチルキノリル、2−1−メチル6−クロロキノリル、2−1,3−ジエチルキノリル、2−1−メチル−6−メチルチオキノリル、2−1−スルホプロピルキノリル、4−1−メチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、4−1,8−ジエチルキノリル、4−1−メチル−6−メチルチオキノリル、4−1−スルホプロピルキノリルなどが挙げられる)、炭素数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、炭素数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にチアゾリン核、オキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核を挙げることができる。
【0049】
これら複素環は置換されても良く、置換基として好ましくは例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例え
ば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20、例えば、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、アニリノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくは炭素数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、カルバモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、例えばカルバモイルアミノ、N−メチルカルバモイルアミノ、N−フェニルカルバモイルアミノ)、であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0050】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0051】
Za及びZaにより形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、イミダゾール核、インドレニン環であり、最も好ましくはオキサゾール核である。
【0052】
Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)であり、より好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0053】
Ma〜Maはそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma〜Maは無置換メチン基またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma〜Maは互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0054】
na及びnaは0または1であり、好ましくは共に0である。
【0055】
kaは0〜3の整数を表わし、より好ましくはkaは1〜3を表し、さらに好ましくはkaは1または2を表す。
kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよい。
【0056】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0057】
本発明の2光子吸収化合物がメロシアニン色素の時、好ましくは一般式(4)で表わされる。
【0058】
一般式(1)中、Zaは5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZa、Zaと同じ)、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa1、Za上の置換基の例と同じ))、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
【0059】
Zaにより形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、インドレニン環である。
【0060】
Zaは5員または6員環を形成する原子群を表わす。Zaから形成される環は一般に酸性核と呼ばれる部分であり、James編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、第198頁により定義される。Zaとして好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2−a〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5−b〕キナゾロン、ピラゾロピリドンなどの核が挙げられる。
Zaから形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくは、ピラゾリジン−3,5−ジオン、インダン−1,3−ジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはピラゾリジン−3,5−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。
【0061】
Zaから形成される環は置換されても良く、(好ましい置換基の例はZa上の置換
基の例と同じ)置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0062】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0063】
Raはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基であり(以上好ましい例はRa1、Raと同じ)、より好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0064】
Ma〜Ma11はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma〜Ma11は無置換メチン基またはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma〜Ma11は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0065】
naは0または1であり、好ましくは0である。
【0066】
kaは0〜8の整数を表わし、好ましくは0〜4の整数を表し、より好ましくは2〜4の整数を表す。
kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
【0067】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0068】
本発明の2光子吸収化合物がオキソノール色素の時、好ましくは一般式(5)で表わされる。
【0069】
一般式(5)中、Za及びZaは各々5員または6員環を形成する原子群を表わし(好ましい例はZaと同じ)、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa上の置換基の例と同じ)、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
Za及びZaから形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくはバルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはバルビツール酸である。
【0070】
Ma12〜Ma14は各々メチン基を表わし、置換基を有していても良く、(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、ア
リールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、より好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、カルボキシ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
Ma12〜Ma14は無置換メチン基であることが好ましい。
Ma12〜Ma14は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0071】
kaは0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2までの整数を表し、より好ましくは1または2を表し、最も好ましくは2を表す。
kaが2以上の時、Ma12、Ma13は同じでも異なってもよい。
【0072】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0073】
また、本発明の化合物は一般式(1)にて表されることも好ましい。
【0074】
一般式(1)において、R 、R 、R 、R はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)である。
、R、R 、R として好ましくは水素原子またはアルキル基である。R 、R、R 、R のうちのいくつか(好ましくは2つ)が互いに結合して環を形成してもよい。特に、R とR が結合して環を形成することが好ましく、その際カルボニル炭素原子と共に形成する環が6員環または5員環または4員環であることが好ましく、5員環または4員環であることがより好ましく、5員環であることが最も好ましい。
【0075】
一般式(1)において、nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、n、m同時に0となることはない。
nおよびmが2以上の場合、複数個のR 、R 、R およびR は同一でもそれぞれ異なってもよい。
【0076】
およびXは独立に、アリール基[好ましくは炭素数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基、置換基の例として好ましくはMa〜Maの置換基と同じ)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成しても良く、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。]、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル
、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していても良く、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)、または一般式(2)で表される基を表す。
【0077】
一般式(2)中、R は水素原子または置換基(好ましい例はR 〜Rと同じ)を表し、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基(これらの置換基の好ましい例はR〜R と同じ)を表し、好ましくはアルキル基(好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)である。
【0078】
は5または6員環を形成する原子群を表す。
形成されるヘテロ環として好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、ピリジン環であり、より好ましくはインドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環であり、最も好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環である。
により形成されるヘテロ環は置換基を有しても良く(好ましい置換基の例はZa、Za上の置換基の例と同じ)、置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0079】
およびXとして好ましくはアリール基または一般式(2)で表される基で表され、より好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したアリール基または一般式(2)で表される基で表される。
【0080】
本発明の2光子吸収化合物は水素結合性基を分子内に有することも好ましい。ここで水素結合性基とは、水素結合における水素を供与する基または水素を受容する基を表し、そのどちらの性質も有している基がより好ましい。
また本発明の水素結合性基を有する化合物は溶液または固体状態にて水素結合性基同士の相互作用により会合的相互作用することが好ましく、分子内相互作用でも分子間相互作用でも良いが、分子間相互作用である方がより好ましい。
【0081】
本発明の水素結合性基としては、好ましくは、−COOH、−CONHR11,−SOH,−SONHR12,−P(O)(OH)OR13,−OH,−SH,−NHR14、−NHCOR15,−NR16C(O)NHR17のいずれかで表される。ここで、R11,R12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数(以下C数という)1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、−COR18または−SO19を表し、R13〜R19はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す(以上好ましい例はR11、R12と同じ)。
【0082】
11として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、−COR18基−SO19基を表し。その際R18、R19としてはアルキル基またはアリール基が好ましい

11としてより好ましくは水素原子、アルキル基、−SO19基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
12として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、−COR18基−SO19基を表し。その際R18、R19としてはアルキル基またはアリール基が好ましい。
12としてより好ましくは水素原子、アルキル基、−COR18基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
13として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基を表し、より好ましくは水素原子を表す。
14として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
15として好ましくはアルキル基、アリール基を表す。
16として好ましくは水素原子を表し、R17として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
【0083】
水素結合性基としてより好ましくは、−COOH、−CONHR11,−SONHR12、−NHCOR15,−NR16C(O)NHR17のいずれかであり、さらに好ましくは−COOH、−CONHR11,−SONHR12のいずれかであり、最も好ましく−COOH、−CONHのいずれかである。
【0084】
本発明の2光子吸収化合物はモノマー状態で用いても良いが、会合状態で用いても良い。
ここで、色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合又は配位結合、あるいは種々の分子間力(水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)などの結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。
本発明の2光子吸収化合物は、分子間会合状態で用いても、2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて2光子吸収を行う状態で用いても良い。
【0085】
参考のため、以下に会合体の説明を行う。会合体については、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(TheTheory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章、第218〜222頁、及び小林孝嘉著「J会合体(J−Aggregates)」ワールド・サイエンティフィック・パブリッシング社(WorldScientific Publishing Co. Pte. Ltd.)、1996年刊)などに詳細な説明がなされている。
モノマーとは単量体を意味する。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
【0086】
会合体の構造の観点では、レンガ積み会合体において、会合体のずれ角が小さい場合はJ会合体と呼ばれるが、ずれ角が大きい場合はH会合体と呼ばれる。レンガ積み会合体については、ケミカル・フィジックス・レター(ChemicalPhysicsLetters),第6巻、第183頁(1970年)に詳細な説明がある。また、レンガ積み会合体と同様な構造を持つ会合体として梯子または階段構造の会合体がある。梯子または階段構造の会合体については、Zeitschriftfur Physikalische Chemie,第49巻、第324頁、(1941年)に詳細な説明がある。
【0087】
また、レンガ積み会合体以外を形成するものとして、矢はず(Herringbone)構造をとる会合体(矢はず会合体と呼ぶことができる)などが知られている。
矢はず(Herringbone)会合体については、チャールズ・ライヒ(CharlesReich)著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)第18巻、第3号、第335頁(1974年)に記載されている。矢はず会合体は、会合体に由来する2つの吸収極大を持つ。
【0088】
会合状態を取っているかどうかは、前記の通りモノマー状態からの吸収(吸収λmax、ε、吸収形)の変化により確認することができる。
本発明の化合物は会合により短波長化(H会合)しても長波長化(J会合)してもその両方でもいずれでも良いが、J会合体を形成することがより好ましい。
【0089】
化合物の分子間会合状態は様々な方法に形成することができる。
例えば溶液系では、ゼラチンのようなマトリックスを添加した水溶液(例えばゼラチン0.5wt%・化合物10−4M水溶液)、KClのような塩を添加した水溶液(例えばKCl5%・化合物2×10−3M水溶液)に化合物を溶かす方法、良溶媒に化合物を溶かしておいて後から貧溶媒を加える方法(例えばDMF−水系、クロロホルム−トルエン系等)等が挙げられる。
また膜系では、ポリマー分散系、アモルファス系、結晶系、LB膜系等の方法が挙げられる。
さらに、バルクまたは微粒子(μm〜nmサイズ)半導体(例えばハロゲン化銀、酸化チタン等)、バルクまたは微粒子金属(例えば金、銀、白金等)に吸着、化学結合、または自己組織化させることにより分子間会合状態を形成させることもできる。カラー銀塩写真における、ハロゲン化銀結晶上のシアニン色素J会合吸着による分光増感はこの技術を利用したものである。
分子間会合に関与する化合物数は2個であっても、非常に多くの化合物数であっても良い。
【0090】
以下に、本発明で用いられる2光子吸収化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
【化10】


【0092】
【化11】


【0093】
【化12】


【0094】
【化13】


【0095】
【化14】


【0096】
【化15】


【0097】
【化16】


【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
【化19】

【0101】
【化20】


【0102】
<重合開始剤>
次に本発明の2光子吸収3次元記録材料における重合開始剤について説明する。
本発明に用いる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動(電子を与えるまたは電子を受ける)を行うことによりラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生し、重合性化合物の重合を開始することができる化合物のことである。
本発明に用いる重合開始剤は好ましくは、ラジカルを発生して重合性化合物のラジカル重合を開始することができるラジカル重合開始剤と、ラジカルを発生することなく酸のみ発生して重合性化合物のカチオン重合のみを開始することができるカチオン重合開始剤と、ラジカル及び酸を両方発生して、ラジカル及びカチオン重合両方を開始することができる重合開始剤のいずれかである。
【0103】
本発明に用いる重合開始剤としては好ましくは、以下の14個の系が挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
【0104】
1)ケトン系重合開始剤
2)有機過酸化物系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
8)ホウ酸塩系重合開始剤
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
14)スルホン酸エステル系重合開始剤
【0105】
以下に好ましい上記の系について具体的に説明していく。
【0106】
1)ケトン系重合開始剤
ケトン系重合開始剤としては、好ましくは芳香族ケトン、芳香族ジケトン等が挙げられる。
好ましい例としては例えば、ベンゾフェノン誘導体(例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン)、ベンゾイン誘導体(例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン)、アセトイン誘導体(アセトイン、ピバロイン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、アシロインエーテル誘導体(例えばジエトキシアセトフェノン)、α−ジケトン誘導体(ジアセチル、ベンジル、4,4´−ジメトキシベンジル、ベンジルジメチルケタール、2,3−ボルナンジオン(カンファーキノン)、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロ−3,4−フラン酸(イミダゾールトリオン))、キサトン誘導体(例えばキサントン)、チオキサントン誘導体(例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン)、ケトクマリン誘導体等が挙げられる。
【0107】
市販品としては例えば、チバガイギー社より上市されている下記式で表されるイルガキュアー184、651、907等が挙げられる。
【0108】
【化21】

【0109】
また、好ましい例としてキノン系重合開始剤(例えば、9,10−アンスラキノン、1−クロロアンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、2−エチルアンスラキノン、2−t−ブチルアンスラキノン、オクタメチルアンスラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンスレンキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、2,3−ベンズアンスラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ジメチルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、2−フェニルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、アンスラキノンアルファ−スルホン酸のナトリウム塩、3−クロロ−2−メチルアンスラキノン、レテネキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセンキノン、並びに1,2,3,4−テトラヒドロベンズ(a)アンスラセン−7,12−ジオン)も挙げられる。
【0110】
2)有機過酸化物系重合開始剤
好ましい例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、特開昭59−189340号公報および特開昭60−76503号公報記載の3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0111】
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
ビスイミダゾール系重合開始剤にて好ましいのは、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール誘導体であり、例えばビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー(CDM−HABI)、1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′5,5′−テトラフェニル(o−Cl−HABI)、1H−イミダゾール、2,5−ビス(o−クロロフェニル)−4−〔3,4−ジメトキシフェニル〕−ダイマー(TCTM−HABI)などが挙げられる。
【0112】
ビスイミダゾール系重合開始剤は水素供与体と共に用いられることが好ましい。水素供与体として好ましくは、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、などが挙げられる。
【0113】
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(11)にて表される。
【0114】
【化22】

【0115】
一般式(11)中、R21、R22、R23はそれぞれ独立にハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子を表す。R24、R25はそれぞれ独立に水素原子、−CR212223、置換基を表す(好ましい例はZa上の置換基と同じ)。R24は好ましくは−CR212223を、より好ましくは−CCl基を表し、R25は好ましくは、−CR212223、アルキル基、アルケニル基、アリール基である。
【0116】
トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−メトキシ−1’−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが例示される。好ましい例として、英国特許1388492号および特開昭53−133428号公報記載の化合物も挙げられる。
【0117】
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
ジアゾニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(12)にて表される。
【0118】
【化23】

【0119】
26はアリール基またはヘテロ環基を表し(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
27は置換基を表し(好ましい例はZa上の置換基と同じ)、a21は0〜5の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。a21が2以上の時、複数のR27は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。
21は、HX21がpKa4以下(水中、25℃)、好ましくは3以下、より好ましくは2以下の酸となる陰イオンで、好ましくは例えば、クロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどである。
【0120】
ジアゾニウム系重合開始剤の具体例としては例えば、ベンゼンジアゾニウム、4−メトキシジアゾニウム、4−メチルジアゾニウムの上記X21塩などが挙げられる。
【0121】
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(13)にて表される。
【0122】
【化24】

【0123】
一般式(13)中、X21は一般式(12)と同義である。R28、R29はそれぞれ独立に置換基を表し(好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。a22、a23はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、好ましくは0〜1の整数を表す。a22、a23が各々、2以上の時、複数のR28、R29は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。
【0124】
ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4’−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4’−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウム、4,4’ −t−ブチルジフェニルヨードニウム、3,3’−ジニトロジフェニルヨードニウム、フェニル(p−メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p−シアノフェニル)ヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
また、「マクロモレキュールス(Macromolecules)」、第10巻、p1307(1977年)に記載の化合物、特開昭58−29803号公報、特開平1−287105号公報、特願平3−5569号に記載されているようなジアリールヨードニウム塩類も挙げられる。
【0125】
7)スルホニウム塩系重合開始剤
スルホニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(14)にて表される。
【0126】
【化25】

【0127】
一般式(14)中、X21は一般式(12)と同義である。R30、R31、R32はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロ環基(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)を表し、好ましくは、アルキル基、フェナシル基、アリール基を表す。
【0128】
スルホニウム塩系重合開始剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジメチルフェナシルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−フェニルチオトリフェニルスルホニウム、ビス−1−(4−(ジフェニルスルホニウム)フェニル)スルフィドなどのスルホニウム塩のクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが例示される。
【0129】
8)ホウ酸塩系重合開始剤
ホウ酸塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(15)にて表される。
【0130】
【化26】

【0131】
一般式(15)中、R33、R34、R35、R36はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基を表し(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくはアルキル基またはアリール基である。ただし、R33、R34、R35、R36の全てが同時にアリール基となることはない。X22は陽イオンを表す。
より好ましくはR33、R34、R35はアリール基であり、R36がアルキル基であり、最も好ましくはR33、R34、R35はフェニル基であり、R36はn−ブチル基である。
【0132】
ホウ酸塩系重合開始剤の具体例としては、テトラブチルアンモニウムn−ブチルトリフ
ェニルボレート、テトラメチルアンモニウムsec−ブチルトリフェニルボレートなどが挙げられる。
【0133】
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
【0134】
ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(16)にて表される。
【0135】
【化27】

【0136】
一般式(16)中、R28、R29、a22、a23は一般式(13)と同義であり、R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。
【0137】
ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤の具体例としては以下に示すI−1〜I−3が挙げられる。
【0138】
【化28】


【0139】
さらに、特開平3−704号公報記載のジフェニルヨードニウム(n−ブチル)トリフェニルボレートなどのヨードニウム有機ホウ素錯体も好ましい例として挙げられる。
【0140】
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
【0141】
スルホニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(17)にて表される。
【0142】
【化29】


【0143】
一般式(17)中、R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。R37、R38、R39はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基であり(以上好ましい例はZa上の置換基に同じ)、より好ましくはアルキル基、フェナシル基、アリール基、アルケニル基である。R37、R38、R39は互いに連結して環を形成しても良い。R40は酸素原子もしくは孤立電子対を表す。
【0144】
スルホニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤の具体例としては以下に示すI−4〜I−10が挙げられる。
【0145】
【化30】


【0146】
さらに、特開平5−255347号、特開平5−213861号記載のスルホニウム有機ホウ素錯体も好ましい例として挙げられる。
【0147】
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
本発明に用いるの重合開始剤がカチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤の場合は、そのカチオン性2光子吸収化合物が本発明の2光子吸収化合物の役割を行っても良い。
カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤は好ましくは一般式(18)にて表される。
【0148】
【化31】

【0149】
一般式(18)中、(Dye−1)は非共鳴2光子吸収を行いかつカチオン性の化合物であり、好ましい例としては先述した通りである。R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。
【0150】
カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤の具体例としては例えば、以
下に示すI−11、I−12、I−13、I−14等が挙げられる。
【0151】
【化32】

【0152】
また、特開昭62−143044号、62−150242号公報に記載の陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体も具体例として挙げられる。
【0153】
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
本発明に用いる重合開始剤がアニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤の場合は、そのアニオン性2光子吸収化合物が本発明の2光子吸収化合物の役割を行っても良い。
アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩系重合開始剤は好ましくは一般式(19)にて表される。
【0154】
【化33】

【0155】
一般式(19)中、(Dye−2)―は非共鳴2光子吸収を行いかつアニオン性の化合物であり、好ましい例としては先述した通りである。X23は一般式(12)のジアゾニウム塩のカチオン部分、一般式(13)のジアリールヨードニウム塩のカチオン部分、一般式(14)のスルホニウム塩のカチオン部分を表し(いずれも好ましい例は先述した通り)、好ましくは一般式(13)のジアリールヨードニウム塩のカチオン部分または一般式(14)のスルホニウム塩のカチオン部分である。
【0156】
アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩系重合開始剤の具体例としては例えば、以下に示すI−15〜I−32等が挙げられる。
【0157】
【化34】


【0158】
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
金属アレーン錯体系重合開始剤としては、金属は鉄またはチタンが好ましい。具体的には、特開平1−54440号、ヨーロッパ特許第109851号、ヨーロッパ特許第126712号および「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の鉄アレーン錯体、「オルガノメタリックス(Organometallics)」、第8巻、第2737頁(1989年)記載の鉄アレーン有機ホウ素錯体、「Prog.Polym.Sci、第21巻、7〜8頁(1996年)記載の鉄アレーン錯体塩、特開昭61−151197号公報に記載されるチタセノン類、などが好ましい例として挙げられる。
【0159】
14」スルホン酸エステル系重合開始剤
スルホン酸エステル系重合開始剤としては、好ましくはスルホン酸エステル類、スルホン酸ニトロベンジルエステル類、イミドスルホネート類、等を挙げることができる。
【0160】
スルホン酸エステル類の具体例としては好ましくは、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、スルホン酸ニトロベンジルエステル類の具体例としては好ましくは、o−ニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、2’,6’−ジニトロベンジル−4−ニトロベンゼンスルホネート、p−ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、2−ニトロベンジルトリフルオロメチルスルホネート、イミドスルホネート類の具体例として好ましくはN−トシルフタル酸イミド、9−フルオレニリデンアミノトシレート、α−シアノベンジリデントシルアミン、等が挙げられる。
【0161】
15)その他の重合開始剤
前記1)〜14)以外の重合開始剤としては、4,4’−ジアジドカルコンのような有機アジド化合物、N−フェニルグリシンなどの芳香族カルボン酸、ポリハロゲン化合物(
CI、CHI、CBrCI)、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム塩ヘキサフルオロアンチモネートのようなピリジニウム塩、フェニルイソオキサゾロン、シラノールアルミニウム錯体、特開平3−209477号公報に記載されるアルミナート錯体などが挙げられる。
【0162】
ここで、本発明の重合開始剤は、
a)ラジカル重合を活性化できる重合開始剤
b)カチオン重合のみ活性化できる重合開始剤
c)ラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤
分類することができる。
【0163】
a)ラジカル重合を活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動(2光子吸収化合物に電子を与えるまたは2光子吸収化合物から電子を受ける)を行うことによりラジカルを発生し、重合性化合物のラジカル重合を開始することができる重合開始剤のことである。
前記の中では、以下の系がラジカル重合を活性化することができる重合開始剤系である。
1)ケトン系重合開始剤
2)有機過酸化物系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
8)ホウ酸塩系重合開始剤
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
【0164】
ラジカル重合を活性化できる重合開始剤としてより好ましくは、
1)ケトン系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
が挙げられ、さらに好ましくは、
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
が挙げられる。
【0165】
カチオン重合のみ活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことによりラジカルを発生することなく酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生し、酸により重合性化合物
のカチオン重合を開始することができる重合開始剤のことである。
【0166】
前記の系の中では、以下の系がカチオン重合のみを活性化することができる重合開始剤系である。
14」スルホン酸エステル系重合開始剤
なお、カチオン重合開始剤としては、例えば「UV硬化;科学と技術(UV
CURING;SCIENCE ANDTECHNOLOGY)」[23〜76頁、S.ピーター・パーパス(S.PETER PAPPAS)編集、ア・テクノロジー・マーケッティング・パブリケーション(ATECHNOLOGY MARKETING PUBLICATION)]及び「コメンツ・インオーグ.ケム.(CommentsInorg.Chem.)」[B.クリンゲルト、M.リーディーカー及びA.ロロフ(B.KLINGERT、M.RIEDIKER and A.ROLOFF)、第7巻、3号、109−138頁(1988)]などに記載されているものを用いることもできる。
【0167】
ラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことによりラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を同時発生し、発生するラジカルにより重合性化合物のラジカル重合を、また発生する酸により重合性化合物のカチオン重合を開始することができる重合開始剤のことである。
【0168】
前記の系の中では、以下の系がラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤系である。
4トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5ジアゾニウム塩系重合開始剤
6ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7スルホニウム塩系重合開始剤
13金属アレーン錯体系重合開始剤
【0169】
ラジカル重合とカチオン重合を活性化できる重合開始剤として好ましくは、
6ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7スルホニウム塩系重合開始剤
を挙げることができる。
【0170】
<重合性化合物>
前記バインダーには、前記の重合性基を有する色素には該当しない重合性化合物が含まれていることが好ましい。以下に本発明の2光子吸収3次元記録媒体が好ましく含む前記重合性基を有する色素には該当しない重合性化合物について説明する。
本発明で用いる重合性化合物とは、2光子吸収化合物と重合開始剤に光を照射することにより発生したラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)により、付加重合を起こしてオリゴマーまたはポリマー化が可能な化合物のことである。
本発明に用いる重合性化合物としては、単官能性でも多官能性でも良く、一成分でも多成分でも良く、モノマー、プレポリマー(例えばダイマー、オリゴマー)でもこれらの混合物でもいずれでも良い。
また、その形態は、液状であっても固体状であっても良い。
【0171】
本発明に用いる重合性化合物は、ラジカル重合可能な重合性化合物とカチオン重合可能な重合性化合物に大別される。
【0172】
本発明に用いるラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有する化合物が好ましく、具体的には以下の重合性モノマー及びそれら
から成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0173】
まず、非ハロゲン系脂肪族系化合物を例示する。具体的には、単官能型として、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和酸化合物、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、などのアルキル(メタ)アクリレート型、メトキシジエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチ(プロピ)レングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート型、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ピナニル(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレート型、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアミン型(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの官能基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0174】
次に、多官能型として、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビス(メタクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドR−167、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドHXシリーズなどのアルキル型(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−811、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−851、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロレングリコールジ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−911などのアルキレングリコール型(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート:日本化薬製カヤラッドR−604、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:サートマーSR−454、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:日本化薬製TPA−310、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート:長瀬産業DA(M)−321などのトリメチロールプロパン型(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート:東亜合成アロニックスM−233、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート類:日本化薬製カヤラッドD−310,320,330など、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート類:日本化薬製カヤラッドDPCA−20,30,60,120などのペンタエリスリトール型(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート:長瀬産業デナコールDA(M)−314、トリグリセロールジ(メタ)アクリレートなどのグリセロール型(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート:山陽国策パルプCAM−200などの脂環式(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート:東亜合成アロニックスM−315、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート型(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0175】
また、脂肪族基からのみ構成される重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物の内、硫黄原子をさらに分子内に含有する化合物を例示する。例えば、単官能型として、メトキシジエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、エトキシジエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、エトキシトリエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチ(プロピ)レングリコールチオ(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールチオ(メタ)アクリレート型、シクロヘキシルチオ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリルチオ(メタ)アクリレート、イソボルニルチオ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルチオ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルチオ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルチオ(メタ)アクリレート、ピナニルチオ(メタ)アクリレートなどの脂環式チオ(メタ)アクリレート型などが挙げられる。
【0176】
次に、多官能型として、1,3−プロパンジオールジチオ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジチオ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジチオ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレート、ビス(チオアクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビス(チオメタクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジチオ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジチオ(メタ)アクリレートなどのアルキル型チオ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロレングリコールジチオ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコール型チオ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジチオ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリチオ(メタ)アクリレートなどのトリメチロールプロパン型チオ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリチオ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラチオ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジチオ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサチオ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタチオ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールポリチオ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールポリチオ(メタ)アクリレート類などペンタエリスリトール型チオ(メタ)アクリレート、グリセロールジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリチオ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジチオ(メタ)アクリレートなどのグリセロール型チオ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジチオ(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニルジチオ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジチオ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジチオ(メタ)アクリレートなどの脂環式チオ(メタ)アクリレート、トリス(チオアクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(チオメタクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(チオアクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(チオメタクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート型チオ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独あるいは複数混合して用いても良い。
【0177】
エチレン性不飽和基を有する化合物の内、分子内に芳香族環または(および)ハロゲン原子を有する化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、4−メ(エ)トキシスチレンなどのスチレン類、フェニル(メタ)アクリレート、4−フェニルエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシカルボニルフェニル(メタ)アクリレート、4−エトキシカルボニルフェニル(メタ)アクリレート、4−ブトキシカルボニルフェニル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェノキシジエチレングルコール(メタ)アクリレート、4−フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、4−フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、4−ビフェニリル(メタ)アクリレート、芳香族ポリヒドロキシ化合物、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール等のジあるいはポリ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレートなどの芳香族基を有する(メタ)アクリレート化合物、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、p−クロロフェノキシエチル(メタ)アクレート、p−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクレート、トリクロロフェノールエチ(プロピ)レンオキシド変性(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールエチ(プロピ)レンオキシド変性(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールAエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジ(メタ)アクリレートなどの塩素以上の原子量を持つハロゲン原子で置換された芳香族基を有するスチレン類および(メタ)アクリレート化合物、N−ビニルカルバゾール、3−メ(エ)チル−N−ビニルカルバゾールなどのヘテロ芳香族基を有するビニル化合物、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジクロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン原子で置換された(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0178】
また、分子内に芳香族環または(および)ハロゲン原子と、さらに硫黄原子を分子内に有する化合物として、フェニルチオ(メタ)アクリレート、4−フェニルエチルチオ(メタ)アクリレート、4−メトキシカルボニルフェニルチオ(メタ)アクリレート、4−エトキシカルボニルフェニルチオ(メタ)アクリレート、4−ブトキシカルボニルフェニルチオ(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルフェニルチオ(メタ)アクリレート、ベンジルチオ(メタ)アクリレート、4−フェノキシジエチレングルコールチオ(メタ)アクリレート、4−フェノキシテトラエチレングリコールチオ(メタ)アクリレート、4−フェノキシヘキサエチレングリコールチオ(メタ)アクリレート、4−ビフェニリルチオ(メタ)アクリレート、芳香族ポリヒドロキシ化合物、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、ピロガロール等のジチオあるいはポリチオ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールAジチオ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールAジチオ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジチオ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールFジチオ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジチオ(メタ)アクリレート、エチ(プロピ)レンオキサイド変性ビスフェノールSジチオ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジチオ(メタ)アクリレートなどの芳香族基を有するチオ(メタ)アクリレート化合物、トリクロロフェノールエチ(プロピ)レンオキシド変性チオ(メタ)アクリレート、トリブロモフェノールエチ(プロピ)レンオキシド変性チオ(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールAエチ(プロピ)レンオキシド変性ジチオ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAエチ(プロピ)レンオキシド変性ジチオ(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジチオ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールSエチ(プロピ)レンオキシド変性ジチオ(メタ)アクリレートなどの塩素以上の原子量を持つハロゲン原子で置換された芳香族基を有するチオ(メタ)アクリレート化合物、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルチオ(メタ)アクリレート、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルチオ(メタ)アクリレート、2,3−ジクロロプロピルチオ(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピルチオ(メタ)アクリレートなどのハロゲン原子で置換されたチオ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0179】
また、エチレン性不飽和結合を有する化合物として、開環シグマ結合開裂を経て重合する付加重合可能な化合物も挙げられる。このような化合物は、K.J.IvinおよびT.サエグサ編、Elsevier,New York、1984年中の、第1章“General Thermodynamics andMechanistic Aspects ofRing−Opening Polymerization”第1頁〜第82頁、および第2章“Ring Opening Polymerization via Carbon−Carbon Sigmabond Cleavage”第83頁〜第119頁、W.J.BaileyらのJ.Macromol.Sci.−Chem.,A21巻、第1611頁〜第1639頁、1984年、およびI.ChoおよびK.−D.AhnのJ.Polym.Sci.,Polym.Lett.Ed.第15巻、第751頁〜第753頁、1977年に記載されている。具体例としては、ビニルシクロプロパン、例えば1,1−ジシアノ−2−ビニルシクロプロパン、1,1−ジクロロ−2−ビニルシクロプロパン、ジエチルー2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレート(EVCD)、エチル−1−アセチル−2−ビニル−1−シクロプロパンカルボキシレート(EAVC)、エチル−1−ベンゾイル−2−ビニル−1−シクロプロパンカルボキシレート(EBVC)などが挙げられる。これらは単独あるいは複数混合して用いても良いし、前記(メタ)アクリル化合物あるいはビニル化合物と混合して用いても良い。
【0180】
また、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドのモノマーの具体例としてはメチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0181】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報に記載された1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、一般式CH2 =C(R)COOCH2CH(R′)OH (式中R、R′は水素或いはメチル基を表す。)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0182】
また、特開昭51−37193号公報に記載されたウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報にそれぞれ記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
【0183】
さらに、日本接着協会誌第20巻、第7号、300〜308頁に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0184】
その他、燐を含むモノマーとしてはモノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドフォスフェート(商品名:ライトエステルPA、共栄社油脂化学工業(株)製)、モノ(2−メタクリロイキエチル)アシッドフォスフェート(商品名:ライトエステルPM、共栄社油脂化学工業(株)製)が挙げられ、またエポキシアクリレート系である商品名:リポキシVR−60(昭和高分子(株)製)、商品名:リポキシVR−90(昭和高分子(株)製)等が挙げられる。
【0185】
また、商品名:NKエステルM−230G(新中村化学工業(株)製)、商品名:NKエステル23G(新中村化学工業(株)製)も挙げられる。
トリアクリレート類、東亜合成化学工業(株)製、商品名、アロニックス M−315、東亜合成化学工業 (株)製、商品名、アロニックス M−325、また、2,2′−ビス(4−アクリロキシ・ジエトキシフェニル) プロパン(新中村化学 (株)製、商品名、NKエステル A−BPE−4 )、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(新中村化学 (株)製、商品名、NKエステル A−TMMT)等が挙げられる。
【0186】
また、重合可能なウレタンアクリレート樹脂としてTSR−1920B、TSR−1938(帝人(株)製)、SCR−500(日本合成ゴム(株)製)も熱特性、機械特性の点で好ましい。
【0187】
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、2光子吸収化合物とカチオン重合開始剤により発生した酸により重合が開始される化合物で、例えば「ケムテク・オクト・(Chemtech.Oct.)」[J.V.クリベロ(J.V.Crivello)、第624頁、(1980)]、特開昭62−149784号公報、日本接着学会誌[第26巻、No.5,第179−187頁(1990)]などに記載されているような化合物が挙げられる。
【0188】
本発明に用いられるカチオン重合性化合物として好ましくは、オキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基部位を分子中に少なくとも1個以上有する化合物であり、より好ましくはオキシラン環部位を有する化合物である。
具体的には以下のカチオン重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(例えばダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0189】
オキシラン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例としては、グリセロールジグリシジルエーテル、グルセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールモノグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、1,2,5,6−ジエポキシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3, 4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、p−ブロモスチレンオキサイド、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−F−ジグリシジルエーテルなどの化合物が挙げられる。
【0190】
また、HS−681(旭電化工業(株)製)、SOMOS8100(DMS−SOMOS社製)、SCR−8100シリーズ(日本合成ゴム(株)製)、SL−7540(Vantico製)SCR−701(ディーメック社製、日本合成ゴム(株)製)も重合可能なエポキシ系樹脂として挙げられる。
【0191】
オキセタン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例としては、前記のオキシラン環を有するカチオン重合性モノマーの具体例のオキシラン環をオキセタン環に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0192】
ビニルエーテル基部位を有するカチオン重合性モノマーの具体例としては例えば、ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、エチレングリゴールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルグリコール、ネオペンチルグリコールモノビニルグリコール、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジグリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、アリルビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)プロパンジビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)トリフルオロプロパンジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、4−ビニルエーテルスチレン、ハイドロキノンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、フェノキシエチレンビニルエーテル、p−ブロモフェノキシエチレンビニルエーテルなどの化合物が挙げられる。
【0193】
本発明の2光子吸収3次元記録材料中の各成分の割合は、一般的に組成物の全質量を基準に以下の質量比(%)の範囲内であることが好ましい。
・バインダー:好ましくは0〜90質量%、より好ましくは45〜75質量%、
・重合性化合物:好ましくは5〜60%、より好ましくは15〜50質量%、
2光子吸収化合物:好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜7質量%、
・重合開始剤:好ましくは0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜7質量%
【0194】
<そのほかの記録層中の構成成分>
本発明に用いる2光子吸収3次元記録材料は、必要により連鎖移動剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を適宜用いることができる。
ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その重量平均分子量が5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5ないし70質量%であることが望ましい。
【0195】
フッ素原子含有高分子におけるフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが使用される。また、他の共重合成分であるアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アリサイクリックビニルエーテルとしてはシクロヘキシルビニルエーテルおよびその誘導体、ヒドロキシビニルエーテルとしてはヒドロキシブチルビニルエーテルなど、オレフィンおよびハロオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど、カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなど、また不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸のC1からC18のアルキルエステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2からC8のヒドロキシアルキルエステル類、およびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性単量体はそれぞれ単独でも、また2種以上組み合わせて使用しても良く、更に必要に応じて該単量体の一部を他のラジカル重合性単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル化合物と代替しても良い。また、その他の単量体誘導体として、カルボン酸基含有のフルオロオレフィン、グリシジル基含有ビニルエーテルなども使用可能である。
【0196】
前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。
【0197】
本発明に用いる2光子吸収重合性組成物は連鎖移動剤を用いる方が好ましい場合がある。好ましい連鎖移動剤としてはチオール類であり、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、4,4−チオビスベンゼンチオール、p−ブロモベンゼンチオール、チオシアヌル酸、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、p−トルエンチオールなど、また、USP第4414312号や特開昭64−13144号記載のチオール類、特開平2−291561号記載のジスルフィド類、USP第3558322号や特開昭64−17048号記載のチオン類、特開平2−291560号記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類なども挙げられる。
特に重合開始剤が2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーの場合は連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤の使用量は、組成物全体に対して1.0〜30質量%が好ましい。
【0198】
本発明に用いる2光子吸収重合性組成物には、保存時の重合を防止し、保存安定性を保つ目的で熱安定剤(熱重合禁止剤)を添加することができる。
有用な熱安定剤にはハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが含まれる。Pazos氏の米国特許第4,168,982号中に述べられた、ジニトロソダイマ類もまた有用である。
熱安定剤は不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.001から5質量部の範囲で添加されるのが好ましい。
【0199】
可塑剤は2光子重合性記録層の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を変えるために用いられる。可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0200】
本発明では2光子吸収重合性組成物は通常の方法で調製されてよい。例えば上述の必須成分および任意成分をそのままもしくは必要に応じて溶媒を加えて調製することができる。
溶媒としては例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエ
ーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒が挙げられる。
2光子吸収重合性組成物は基体上に直接塗布することも、スピンコートすることもできるし、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基体にラミネートすることもできる。使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。
【実施例】
【0201】
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0202】
[2光子吸収記録媒体用重合組成物の調製]
〔比較例1〕
特開2004−346238の実施例中に記載された試料101を該特許記載の方法で作成し、比較例1とした。但し、該特許中で用いられているPETフィルムの替わりに本比較例ではプレパラートガラスを用いた。
[2光子吸収記録媒体用重合組成物101、102、103]
比較例1に示された重合性化合物M-1の重量比を23%に減じ、替わりに重合性基を有する色素DM-2、DM-15、DM‐51を20%添加して2光子吸収記録媒体用重合組成物101、102、103を調製した。
【0203】
〔2光子吸収記録材料の作製〕
プレパラートガラス上に2光子吸収記録媒体用重合組成物101、102、103をそれぞれバーコート塗布し、乾燥後、プレパラートガラスを載せて2光子吸収記録材料の実施例1、2、3を作製した。
【0204】
〔2光子吸収記録媒体への記録と再生〕
本発明の2光子吸収記録材料への情報記録には、Ti:Sappireレーザー(パルス幅:100fs、繰返し80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、該レーザー光をNA=0.6のレンズで集光して該2光子吸収記録材料に照射し情報記録を行った。2光子記録に際しては、予めそれぞれの2光子吸収記録材料に低いパワーから高いパワーまで段階的に記録パワーを変化させて記録ピットを形成し、形成された記録ピットの中で平面内での直径が1μmとなる記録パワーをそれぞれの記録材料における記録パワーとした。記録プロセスでは、該記録光の照射によって光照射部分で重合性化合物の重合反応が誘起されポリマー物質が生成するため、光未照射部分との間で屈折率差が発生する。情報の再生プロセスでは、記録により発生した記録部と未記録部との屈折率差を再生光の反射光強度の差として読み出した。
【0205】
〔2光子記録材料の評価〕
実施例1〜3および比較例1の2光子吸収記録材料に、上記記載の方法でレーザー光照射により情報を記録し、記録終了直後に記録部分を反射光強度の変化により再生した。
比較例1で観測された記録ピットから得られる反射光強度を1として、実施例1〜3の2光子記録材料における記録ピットからの反射光強度を表1に示した。
【0206】
【表1】

【0207】
重合性基を有する色素を用いた場合には、いずれのサンプルにおいても記録前後での屈折率変化量が大きくなったために反射が起こり易くなり、反射光強度の増大が観測された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基を有する色素を少なくとも1種類含むことを特徴とする同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項2】
重合性基を有する色素の吸収スペクトルが、同時2光子吸収による記録光の記録波長に対応する波長領域には該色素の線形吸収が存在せず、かつ該記録光の波長よりも短波長側に該色素の線形吸収のモル吸光係数が10,000以上の波長領域を有し、さらに該2光子記録材料から得られる同時2光子吸収3次元記録媒体の再生光の波長領域における該色素の線形吸収のモル吸光係数が100以下であることを特徴とする請求項1に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項3】
前記重合性基を有する色素のほかに、2光子吸収化合物、重合開始剤、およびバインダーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項4】
同時2光子吸収3次元記録材料から得られる2光子記録媒体の再生波長における該重合性基を有する色素の屈折率が、バインダーの屈折率よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項5】
請求項2に規定した重合性基を有する色素のほかに、さらに請求項2に規定した吸収特性を有しない、重合性基を有する化合物をも含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項6】
前記請求項2に規定した吸収特性を有しない、重合性基を有する化合物の再生波長における屈折率が、バインダーの該波長における屈折率よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項7】
前記バインダーがアリール基、芳香族へテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、またはイオウ原子を含まないことを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の2光子3次元記録材料。
【請求項8】
前記バインダーがセルロースエステル類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールまたはフッ素を含む高分子化合物の中から選ばれる少なくとも1つの高分子化合物であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項9】
前記バインダーが熱硬化性化合物から成る3次元架橋構造を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項3〜8に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項10】
前記バインダーが多官能イソシアネートと多官能アルコールとの熱硬化により得られるポリウレタン化合物の3次元架橋構造を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項11】
光照射部分において記録光の同時2光子吸収によって生成した2光子吸収化合物の励起状態と重合開始剤との間でのエネルギー移動または電子移動により共存する重合性基を有する化合物が重合し、光非照射部分との屈折率差を生じる記録層を有することを特徴とする請求項3〜10のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項12】
前記2光子吸収化合物が有機色素であることを特徴とする、請求項3〜11のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項13】
前記2光子吸収化合物がメチン色素またはフタロシアニン色素であることを特徴とする、請求項3〜12のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項14】
前記2光子吸収化合物がシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素または下記一般式(1)にて表される化合物であることを特徴とする、請求項3〜13のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
一般式(1)
【化1】



式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R、R、R、Rのうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、nおよびmが2以上の場合、複数個のR、R、RおよびRは同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n、mが同時に0となることはない。XおよびXは独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(2)で表される基を表す。
一般式(2)
【化2】


式中、Rは水素原子または置換基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、Zは5または6員環を形成する原子群を表す。
【請求項15】
前記シアニン色素が下記一般式(3)にて、メロシアニン色素が下記一般式(4)にて、オキソノール色素が一般式(5)にて表されることを特徴とする、請求項14に記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【化3】



一般式(3)〜(5)中、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra、Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
Ma〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na、na及びnaはそれぞれ0または1であり、ka、及びkaはそれぞれ0〜3の整数を表わす。kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよく、kaが2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。kaは0〜8の整数を表わし、kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【請求項16】
前記重合開始剤が少なくとも1種のラジカルを発生する重合開始剤を含み、重合性化合物が少なくとも1種のラジカルにより重合するラジカル重合性化合物を含むことを特徴とする請求項3〜15のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項17】
前記重合開始剤が少なくとも1種の酸を発生する重合開始剤を含み、重合性化合物が少なくとも1種の酸により重合するカチオン重合性化合物を含むことを特徴とする請求項3〜16のいずれかに記載の同時2光子吸収3次元記録材料。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物に、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形吸収の存在しない波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収により光重合を起こさせて生じた3次元的屈折率変調を利用することを特徴とする3次元記録方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物に、2光子吸収化合物の有する線形吸収帯よりも長波長でかつ線形吸収の存在しない波長のレーザー光を照射して誘起された2光子吸収により光重合を起こし、レーザー焦点部と非焦点部にて重合性化合物及びその重合反応物とバインダーとの組成比の不均一化が起こることにより生じる3次元的屈折率変調を利用することを特徴とする請求項18に記載の3次元記録方法。

【公開番号】特開2009−86299(P2009−86299A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256178(P2007−256178)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】