説明

重合性液晶化合物並びにそれを用いた位相差フィルムおよび液晶表示装置

【課題】有機溶媒(MEK等)に対する溶解性に優れた重合性液晶化合物、並びにそれを用いた位相差フィルムおよび液晶表示装置を提供する。
【解決手段】下記式(1)、
P−Sp1−L1−M1−L2−Sp2−Ox (1)
(式中、Pは重合性基を表し;Sp1およびSp2のうちいずれか一方は、分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレン、もう一方が直鎖アルキレンを表し;L1およびL2は、それぞれ独立に2価の連結基を表し;M1はメソゲン基を表し;オキセタニル基を有する置換基である。)で表される重合性液晶化合物並びにそれを用いた位相差フィルムおよび液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶化合物並びにそれを用いた位相差フィルムおよび液晶表示装置に関し、詳しくは、メチルエチルケトン(MEK)等の有機溶媒に対する溶解性に優れる重合性液晶化合物並びにそれを用いた位相差フィルムおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶性化合物を含む液晶性組成物からなる光学フィルムが、液晶表示装置の光学補償用途や視野角拡大用途などに用いられるようになってきている。液晶性組成物からなる光学フィルムの作製方法としては、例えば、配向膜を有する基板上に液晶性組成物の薄膜を形成した後、加熱して液晶を配向させフィルムを作成する方法が報告されている(特許文献1等参照)。例えば、特許文献2および3には、光学フィルムを形成する際に使用するモノマーが開示されている。
【特許文献1】特開平3−9321号公報
【特許文献2】特開2004−123597号公報
【特許文献3】特開2004−123882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献2および3記載の液晶性モノマーは、スペーサー部(Sp1およびSp2に相当する部分)が両方とも直鎖アルキレンからなるため、該液晶性モノマーをMEK(メチルエチルケトン)のような連続塗布に適した有機溶媒に溶解させようとしても、溶解度が低いため、溶液濃度を上げられず、溶液粘度が低い状態で連続塗布する結果、ムラやスジなどの塗布面状態の悪化につながっていた。また、メソゲン部(M1に相当する部分)のベンゼン環にメチル基を導入して溶解度を上げると、重合後でも充分な配向の固定化が出来ず、加熱により、液晶の配向が乱れるため、位相差フィルムとしての必要な光学特性(レターデーション)を保持出来ないという欠点を有していた。
【0004】
そこで本発明は、有機溶媒(MEK等)に対する溶解性に優れた重合性液晶化合物、並びにそれを用いた位相差フィルムおよび液晶表示装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、重合性液晶化合物(モノマー)を構成する二つのスペーサー基をある特定の構造とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1)下記式(1)で表されることを特徴とする重合性液晶化合物。
P−Sp1−L1−M1−L2−Sp2−Ox (1)
(式中、Pは重合性基を表し;Sp1およびSp2のうちいずれか一方は、分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレン、もう一方が直鎖アルキレンを表し;L1およびL2は、それぞれ独立に2価の連結基を表し;M1は下記式(2−1)〜(2−12)からなる群から選択される2価の基を少なくとも一つ有するメソゲン基を表し;Oxは下記式(3)で表される基を表す。)
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R2は水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、Xは−O−、−S−、−OCO−または−COO−を表し、Xは単結合または炭素数1〜4のアルキレンを表す。なお、*はSp2との結合部位である。)
(2)前記Sp1およびSp2のうちいずれか一方が、−O−または−C≡C−を鎖中に含むアルキレンである(1)に記載の重合性液晶化合物。
(3)前記−O−または−C≡C−を鎖中に含むアルキレンが、−(CH2n1−X−(CH2n2−(n1およびn2はそれぞれ独立に1〜4の整数を表し、−X−は、−O−または−C≡C−を表す。)である(2)に記載の重合性液晶化合物。
(4)前記Sp2が直鎖アルキレンである(1)〜(3)のうちいずれかに記載の重合性液晶化合物。
(5)前記Pが、(メタ)アクリロイルオキシ基または(メタ)アクリロイルである(1)〜(4)のうちいずれかに記載の重合性液晶化合物。
(6)前記L1およびL2が、それぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−OCO−、−COO−、−CO−、−CH2−、−CONH−、または−NHCO−である(1)〜(5)のうちいずれかに記載の重合性液晶化合物。
(7)前記L1およびL2が−O−である(6)に記載の重合性液晶化合物。
(8)前記M1が式(5)で表される基である(1)〜(7)のうちいずれかに記載の重合性液晶化合物。
―Hex1−Sp3−Hex2−Sp4−Hex3− 式(5)
(式中、Hex1〜Hex3はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の1,4−フェニレン基、または、置換もしくは無置換の1,4−シクロへキシレン基を表し、Sp3およびSp4はそれぞれ独立に、単結合、−OCO−、−COO−、またはアセチレン基を表す。)
(9)前記Sp3が−COO−かつ前記Sp4が−OCO−である、または、前記Sp3が−OCO−かつ前記Sp4が−COO−である(VIII)に記載の重合性液晶化合物。
(10)前記Hex1〜Hex3が置換もしくは無置換の1,4−フェニレンである(8)または(9)に記載の重合性液晶化合物。
(11)前記Xが−O−であり、Xがメチレンである(1)〜(10)のうちいずれかに記載の重合性液晶化合物。
(12)(1)〜(11)のうちいずれかに記載の液晶性化合物を含有することを特徴とする組成物。
(13)(12)記載の組成物を用い形成されたことを特徴とする位相差フィルム。
(14)パターン状の位相差を有する(13)に記載の位相差フィルム。
(15)(13)または(14)に記載の位相差フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
重合性液晶化合物は、有機溶媒(MEK等)に対する溶解性が非常に高い。これにより、重合性液晶化合物をモノマーとして用い、位相差フィルムを作成すると面状等の優れる薄膜を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
以下、重合性液晶化合物について、詳述する。重合性液晶化合物は、下記式(1)で表されることを特徴とするものである。
P−Sp1−L1−M1−L2−Sp2−Ox (1)
上記式(1)中において、Pは重合性基を表す。なお、本明細書において、重合性基Pには、重合性の二重結合等に−CO−、−OCO−および−COO−等が結合している場合には、当該−CO−、−OCO−および−COO−等も含めて重合性基とする。本発明に係る重合性基は、重合性の官能基であれば特に制限されるものではないが、好ましくは、ラジカル重合性基である。後に詳述するOxはカチオン重合性基であるため、ラジカル重合性基とすることにより、異なる条件により、重合反応を進めることができ、例えば、後述する位相差のパターニングを容易に行うことができる。ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基または(メタ)アクリロイルが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0013】
上記式(1)中において、Sp1およびSp2のうちいずれか一方は、分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレン、もう一方が直鎖アルキレンを表す。このように、Sp1およびSp2を異なる構造、即ち、非対称な構造とすることにより、有機溶媒、特にMEK等に対する溶解性が向上する。分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレンのうち、好ましくは、−O−または−C≡C−を鎖中に含むアルキレンであり、より好ましくは、−(CH2n1−X−(CH2n2−である。ここで、n1およびn2はそれぞれ独立に1〜4の整数であり、好ましくは1または2である。−X−は、−O−または−C≡C−であり、好ましくは、−O−である。−X−が、−O−である場合、n1およびn2はともに2であることが好ましく、−X−が−C≡C−である場合、n1およびn2はともに1であることが好ましい。分岐アルキレンの炭素数(分岐鎖の炭素数を含む)は、好ましくは4〜12、より好ましくは4〜8、更に好ましくは4〜6である。分岐鎖としては、メチル基またはエチル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。
【0014】
もう一方の直鎖アルキレンの炭素数は、好ましくは2〜12、より好ましくは4〜8、更に好ましくは4〜6である。分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレンと、直鎖アルキレンとを、Sp1およびSp2のどちらにするかの選択は特に制限されるものではなく、使用の用途、方法により適宜、選択することができる。例えば、重合性基Pおよび−Oxを重合反応させる際の順番により、選択することが好ましい。例えば、−Oxを先に重合させる場合には、Sp2が直鎖アルキレンであり、Sp1が分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレンであることが好ましく、逆に、重合性基Pを先に重合させる場合には、Sp1が直鎖アルキレンであり、Sp2が分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレンであることが好ましい。このように、重合を段階的に行う場合、一回目の重合に比べて、二回目の重合の方が流動性は低くなっているため、重合率が低くなる傾向にある。このことから、一回目に重合させる重合性基側のスペーサーが分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレンであると、メソゲン部位が熱的に揺らぎやすくなり、結果として、耐熱性が悪くなる。そこで、一回目に重合させる重合性基側のスペーサーを直鎖アルキレンにすることにより、メソゲン部位の熱的な揺らぎが抑制され、結果として、耐熱性が良くなる。耐熱性は、例えば、後に詳述する加熱工程を含む方法にて、位相差をパターン状にした位相差フィルムを形成する際に重要となる。
【0015】
上記式(1)中において、L1およびL2は、それぞれ独立に2価の連結基を表す。L1およびL2は、それぞれ、Sp1およびM1、SpおよびM1、を連結する基であれば特に制限されるものではないが、好ましくは、単結合、−O−、−S−、−OCO−、−COO−、−CO−、−CH2−、−CONH−、または−NHCO−である。より好ましくは、単結合、−O−、−S−、−OCO−、または−COO−であり、さらに好ましくは、単結合、−O−、−CH2−であり、最も好ましくは−O−である。L1およびL2が同じ2価の連結基であることが好ましく、ともに−O−であることがより好ましい。なお、本明細書において、M1に直接−O−が結合している場合には、当該−O−は、L1またはL2として扱い、Sp1またはSpを構成するものではない。
【0016】
上記式(1)中において、M1は下記式(2−1)〜(2−12)からなる群から選択される2価の基を少なくとも一つ、好ましくは3個以上の基、より好ましくは3個の基を有するメソゲン基を表す。下記式(2−1)〜(2−12)からなる群から選択される2価の基の数を上記範囲とすることにより、液晶性を取り易く、かつ、パターン状の位相差を有するフィルムを作成しやすくなる。
【0017】
【化3】

【0018】
なお、例えば式(2−1)で表される2価の基は無置換の1,4−シクロへキシレン基、式(2−2)で表される2価の基は無置換の1,4−フェニレン基を表すものである。 M1で表されるメソゲン基が前記の基の2個以上から構成されている場合は、前記の基は、それぞれ、単結合、アセチレン基(−C≡C−)、−N=N−、−N=CH−、−C(CN)=CH−、−CONHCONHCO−、−O−、−S−、−OCO−、−COO−、−OCOO−、−CO−、−CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CONH−、−NHCO−、−NHCOO−、および−OCONH−からなる群から選択される連結基によって結合していればよく、好ましくは単結合、アセチレン基(−C≡C−)、−OCO−、−COO−、−OCH2−、−CH2O−、−N=N−、−N=CH−、−C(CN)=CH−、−CONH−、−NHCO−、および−CONHCONHCO−からなる群から選択される連結基によって結合していればよく、さらに好ましくは、単結合、アセチレン基(−C≡C−)、−OCO−、−COO−、−CONH−、および−NHCO−からなる群から選択される連結基によって結合していればよい。
【0019】
また、上記式(2−1)〜式(2−14)で表される2価の基は、それぞれ置換基を有していてもよい。当該置換基は、式(1)で表される重合性液晶化合物が液晶性を示す範囲であることが好ましい。置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)を挙げることができる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。
【0020】
上記の置換基として好ましくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のハロゲン置換アルキル基、またはカルボキシル基が置換した炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子、カルボキシル基、メチル基、またはフッ素置換メチル基が挙げられ、さらに好ましくはフッ素原子が挙げられる。なお、置換基を有するものと、置換基有さないものとでは、置換基を有さないものが好ましく、M1が複数の式(2−1)〜式(2−14)にて、構成されている場合には、そのすべてが、置換基を有していないものが好ましい。
【0021】
メソゲン部位を未置換基とすることにより、メソゲン同士のパッキングが強くなるため、同じ重合率で比較すると、より、耐熱性は高くなる傾向にある。このため、耐熱性の観点からすると、メソゲン部位には置換基が無い方が好ましい。また、同様の理由により、耐熱性の観点からすると、1,4−シクロへキシレン基などのような動きやすい基よりもフェニル基のような動きにくい基の方が好ましい。このような構造にすることにより、後述するパターン状の位相差を有するフィルムを作成しやすくなる。
【0022】
なお、M1が下記式(5)で表される基であることが好ましい。
―Hex1−Sp3−Hex2−Sp4−Hex3− 式(5)
上記式中、Hex1〜Hex3はそれぞれ独立に置換または無置換の1,4−フェニレン基(2−2)または置換または無置換の1,4−シクロへキシレン基(2−1)を表し、Sp3およびSp4はそれぞれ独立に単結合、−OCO−、−COO−、またはアセチレン基である。なお、Sp3が−COO−かつSp4が−OCO−である、または、Sp3が−OCO−かつSp4が−COO−であることが好ましく、Sp3が−COO−かつSp4が−OCO−であることがより好ましい。また、Hex1〜Hex3は、置換または無置換の1,4−フェニレンであることが好ましく、無置換の1,4−フェニレンであることがより好ましい。
【0023】
1で表されるメソゲン基として好ましい例としては下記の基を挙げることができる。
【0024】
【化4】

【0025】
これらの中でも、より好ましいのは、次のような構造のものである。
【0026】
【化5】

【0027】
さらにより好ましいのは、次のような構造のものである。
【0028】
【化6】

【0029】
上記式(1)において、Oxは下記式(3)で表される基を表す。
【0030】
【化7】

【0031】
上記式(3)中、R2は水素原子、メチル基、またはエチル基であり、好ましくはメチル基またはエチル基であり、より好ましくは、メチル基である。Xは−O−、−S−、−OCO−または−COO−であり、好ましくは−O−または−OCO−(Ox側がOでSp側がCO)であり、より好ましくは−O−である。Xは単結合または炭素数1〜4のアルキレンであり、好ましくは炭素数1〜2のアルキレン、より好ましくは炭素数1のアルキレン(メチレン)である。なお、*はSp2との結合部位である。
【0032】
式(1)で表されるオキセタニル基を有する重合性液晶化合物として、下記の化合物を好適に挙げることができる。
【0033】
【化8】

【0034】
オキセタニル基を有する重合性液晶化合物の合成法は特に制限されるものではなく、通常の有機化学合成法で用いられる方法を適用することによって合成することができる。例えば、ウィリアムソンのエーテル合成や、縮合剤を用いたエステル合成などの手段でオキセタニル基を持つ部位と(メタ)アクリル基を持つ部位をつなげることで、オキセタニル基と(メタ)アクリル基の2つの反応性官能基を持つオキセタニル基を有する(メタ)アクリロイル化合物を合成することができる。例えば、特開2004−123597号公報、および特開2004−123882号公報に記載の方法を参照し、合成することができる。
合成法の一例を下記に示す。
【0035】
【化9】

【0036】
上記式中、略号はそれぞれ下記を表す。
MsCl:メタンスルホニルクロリド
iPr2NEt:ジイソプロピルエチルアミン
DMAP:4,−ジメチルアミノピリジン
TEA:トリエチルアミン
【0037】
組成物は、上記重合性液晶化合物を含有することを特徴とするものである。組成物を用い、位相差フィルムを作成することができ、パターン状の位相差を有する位相差フィルムを好適に作成することができる。パターン状の位相差フィルムは、半透過型液晶表示装置(半透過型LCD)に好適に用いることができる。
【0038】
重合性液晶化合物の片末端はオキセタニル基であるが、他方の片末端をラジカル重合性基、例えば、(メタ)アクリロイル基にした場合、カチオン重合性基であるオキセタニル基と、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する2官能性のモノマーとなる。従って、このようなモノマーを含む液晶性組成物において、ラジカル重合で(メタ)アクリロイル基のみを重合させ、さらに、カチオン重合でオキセタニル基のみを重合させることが可能となる。すなわち、配向固定化後に配向の乱れが少なく、熱安定性の高い液晶フィルムを作製することが可能である。
【0039】
また、このようなモノマーに光酸発生剤を加えた液晶性組成物を用いて、配向膜付きの基板上に塗布した後、大気下で光照射すると、カチオン重合が進行してオキセタニル基が重合するのに加えて、一部の(メタ)アクリロイル基もラジカル重合が進行するため、一部架橋化が進行し、配向を固定化することが出来る。但し、大気下ではラジカル重合の重合率が低いため、耐熱性が低く、加熱すると配向が乱れて等方相となる。このことを利用し、位相差フィルムのパターニングが可能である。
【0040】
また、異なる重合を別々に進行させることにより、パターニングされた配向固定化液晶フィルムを作製することが可能である。具体的なパターニング方法の例としては次のような方法を挙げることができるが、これらの方法に限定されない。
1)重合性液晶化合物、光ラジカル発生剤、および光酸発生剤から成る、液晶性組成物を配向膜上に塗布する。液晶性を示す温度範囲まで昇温した後、光ラジカル発生剤のみに吸収がある波長で照射し、ラジカル重合のみ進行させて、光学異方性ポリマーを得る。次いで、マスクを介して、光酸発生剤が吸収する波長でパターン露光を行い、カチオン重合を進行させる。ラジカル重合のみ進行させて得られたポリマーを溶解する現像液に浸漬することにより、ネガ型のパターンが得られる。
2)重合性液晶化合物、および光ラジカル発生剤から成る、液晶性組成物を配向膜上に塗布する。液晶性を示す温度範囲まで昇温した後、光照射し、ラジカル重合のみ進行させて、光学異方性ポリマーを得る。次いで、光酸発生剤を含む有機溶剤溶液を塗布することにより、光酸発生剤を該光学異方性ポリマーに含浸させる。マスクを介して露光を行い、カチオン重合を進行させる。ラジカル重合のみ進行させて得られたポリマーを溶解する現像液に浸漬することにより、ネガ型のパターンが得られる。
3)重合性液晶化合物、および光カチオン発生剤から成る、液晶性組成物を配向膜上に塗布する。液晶性を示す温度範囲まで昇温した後、光照射し、主にはカチオン重合を進行させて(多くの場合、一部ラジカル重合が進行する)、(一部架橋した)光学異方性ポリマーを得る。次いで、光ラジカル発生剤を含む有機溶剤溶液を塗布することにより、光ラジカル発生剤を該光学異方性ポリマーに含浸させる。マスクを介して露光を行い、ラジカル重合を進行させる。得られた光学異方性ポリマーフィルムを200℃前後に加熱することにより、ネガ型のパターンが得られる。
3)のパターニング方法により、現像液による浸漬工程を行わずに、機能性基板(レターデーションがパターニングされた基板)を作成することができる。以下、3)の方法につき、詳述する。
【0041】
以下の記述において、Reは面内のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0042】
以下の記述において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、Reが実質的に0でないとは、Reが5nm以上であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、以下の記述において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0043】
[機能性基板]
機能性基板とは、パターン状のレターデーションを有する機能性基板であり、基板と、少なくとも一層のパターン状のレターデーションを有する光学異方性層とを有する。「パターン状のレターデーションを有する光学異方性層」とは「レターデーションが異なる領域をパターン状に有する光学異方性層」を意味し、通常「面内レターデーションRe1の領域と面内レターデーションRe2の領域(ただしRe1>Re2)とをパターン状に有する光学異方性層」を意味する。なお、以下の記述において特に言及しない場合は、「機能性基板」と「基板」は通常区別して用いられる。
【0044】
図1は機能性基板のいくつかの例の概略断面図である。図1(a)に示す機能性基板は、基板11上に、パターン状のレターデーションを有する光学異方性層12が形成されたものである。基板11としては透明であれば特に限定はないが、複屈折が小さい支持体が望ましく、ガラスや低複屈折性ポリマー等が用いられる。パターン状のレターデーションを有する光学異方性層12は、前記した3)の方法により形成される。これによって液晶セル内の異なる表示モード、特に半透過型LCDの透過部と反射部で異なる光学補償を達成することができる。さらに、従来のように温湿度で寸度変化しやすいプラスティック支持体に光学異方性層が設けられている場合と異なり、セル内に光学異方性層を設けると、光学異方性層がガラス基板に強固に保持されているため、温湿度による寸度変化を起こしにくく、LCDのコーナームラを改良することができる。
【0045】
図1(b)に示す機能性基板は、基板11と光学異方性層12の間に配向層13が形成されている。液晶性化合物を含む溶液がラビングされた配向層13上に直接塗布された後、液晶相形成温度で熟成・配向され、その状態のまま熱または電離放射線照射して固化することによって光学異方性層12となる。レターデーションの異なる領域の形成は上記と同様に行うことができる。図1(c)に示す機能性基板は、基板11とパターン状のレターデーションを有する光学異方性層12の間に転写用接着層14が形成されている。本態様は、図2(a)に示すような転写材料を用いて作製することができる。図1(d)および(e)に示す機能性基板は、光学異方性層12の上に感光性樹脂層15を有する態様である。図1(d)はネガ型、(e)はポジ型の感光性樹脂を用いたもので、いずれの場合においても位相差のパターニングのための露光と同時に凹凸パターンが形成できる。本態様は、例えば図1(c)の上に直接感光性樹脂層15を塗布するか、もしくは図2(c)に示すような転写材料を用いて作製することができる。
【0046】
[転写材料]
図2(a)は転写材料の一例で、仮支持体21上に配向層22を介して光学異方性層12が形成されている。光学異方性層12上には転写用接着層14が形成されており、転写材料を転写用接着層14を介して基板にラミネート転写することで機能性基板を作製できる。転写用接着層としては、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、感光性樹脂層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層などが挙げられるが、機能性基板に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。良好な転写性を持たせるために、光学異方性層12と配向層22の間の剥離性が高いことが望ましい。図2(b)は、転写工程における気泡混入防止や機能性基板上の凹凸吸収のための力学特性制御層23を有する態様である。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましい。図2(c)は、図1(d)または(e)を作製することができる転写材料である。光学異方性層12の下に凹凸を形成するための感光性樹脂層15を有している。本態様を作製するためには、感光性樹脂層15の上に液晶性化合物を配向させることが必要となるが、通常感光性樹脂層上に有機溶媒を用いて液晶性化合物を含む塗布液を塗布すると、有機溶媒で感光性樹脂層が溶解してしまうため液晶性化合物を配向させることができない。そこで、別の仮支持体24上に図2(d)に示すような転写材料を形成し、感光性樹脂層15が仮支持体21に対する転写接着層を兼ねて、光学異方性層12の上に転写用接着層14を形成することで作製することができる。
【0047】
[基板]
機能性基板の製造に用いられる基板は、透明であれば特に限定はなく、表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板でも、ポリマーからなる透明基板でもよい。液晶表示装置用の場合、機能性基板作製工程においてカラーフィルタや配向膜のベークのために180℃以上の高温プロセスを要するため、耐熱性を有することが好ましい。そのような耐熱性基板としては、ガラス板もしくはポリイミド、ポリエーテルスルホン、耐熱性ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、特に価格、透明性、耐熱性の観点からガラス板が好ましい。また、基板は、予めカップリング処理を施しておくことにより、転写接着層との密着を良好にすることができる。該カップリング処理としては、特開2000−39033号公報記載の方法が好適に用いられる。尚、特に限定されるわけではないが、基板の膜厚としては、100〜1200μmが一般的に好ましく、300〜1000μmが特に好ましい。
また、機能性基板の製造に用いられる基板は上記のガラス基板上にカラーフィルタ層を有するカラーフィルタ基板であってもよい。
【0048】
[仮支持体]
転写材料に用いられる仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0049】
[光学異方性層]
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層は、露光部において位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有していれば特に限定はない。
【0050】
光学異方性層は、本発明の重合性液晶化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する所定の配向層の上に塗布することで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0051】
組成物中、本発明の重合性液晶化合物の濃度は、液晶性組成物の総質量に対して好ましくは30質量%〜99.9質量%、より好ましくは50質量%〜99.9質量%、さらに好ましくは70質量%〜99.9質量%であればよい。
【0052】
光酸発生剤としては、光照射により酸を発生し、オキセタニル基のカチオン重合を開始させる作用を有するものであれば何でもよいが、オニウム塩が好ましい。この場合、対アニオンは有機アニオンおよび無機アニオンのいずれでもよい。オニウム塩としては、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩などが挙げられるが、スルホニウム塩およびヨードニウム塩が好ましく、熱安定性を考慮するとスルホニウム塩がより好ましい。光酸発生剤として代表的なものとして下記の例が挙げられる。なお、前記1)の方法においても、光酸発生剤は、重合性液晶化合物を含む液晶性組成物に添加され、同様のものを挙げることができる。また、前記2)の方法においては、光酸発生剤は、重合性液晶化合物を含む液晶性組成物に添加されるのではなく、光酸発生剤を含む有機溶剤として使用するが、同様のものを挙げることができる。
【0053】
【化10】

【0054】
重合性液晶化合物を重合する際には、他のモノマー類と共重合することもできる。他のモノマー類はラジカル重合性またはカチオン重合性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、モノマー組成物として液晶性を示せば何でもよいが、配向性を上げるために、メソゲン基を有するモノマー類が好ましい。また必要によっては各種の増感剤を併用してもよい。
【0055】
上記の光酸発生剤の添加量は、重合性液晶化合物におけるメソゲン基やスペーサーの構造や、オキセタニル基当量、液晶の配向条件などにより異なるが、通常、液晶性組成物におけるモノマー総質量に対し、通常100質量ppm〜20質量%、好ましくは1000質量ppm〜10質量%、より好ましくは0.2質量%〜7質量%、最も好ましくは0.5質量%〜5質量%の範囲である。
【0056】
前記光学異方性層の形成用組成物中に、下記一般式(1)〜(3)で表される化合物および一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。尚、以下の記述において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と透明支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
以下、下記一般式(1)〜(4)について、順に説明する。
【0057】
【化11】

【0058】
式中、R、RおよびRは各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X、XおよびXは単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基またはフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2およびX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−およびSO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0059】
【化12】

【0060】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、およびR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同じである。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0061】
【化13】

【0062】
式中、R、R、R、R、RおよびRは各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8およびR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(1)におけるR1、R2およびR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものである。本発明に用いられる水平配向剤については、特開2005−99248号公報の段落番号[0092]〜[0096]に記載の化合物を用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0063】
【化14】

【0064】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
【0065】
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、上記光学異方性層の説明は、3)の方法(加熱工程を含むパターン状の位相差有するフェイルの製造方法)以外の方法にも、当てはまる。
【0066】
[配向層]
上記した様に、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に透明仮支持体上又は該透明仮支持体に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0067】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0068】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いることがより好ましく、かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0069】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0070】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0071】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiOを代表とし、TiO、ZnO等の金属酸化物、あるいやMgF等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0072】
[転写用接着層]
転写材料は、転写用接着層を有することが好ましい。転写用接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、粘着剤による粘着層、中でも感光性樹脂層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層などが挙げられるが、機能性基板に必要な耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0073】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フイルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0074】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0075】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。感光性樹脂層としては、光照射によって接着性を発現すれば特に限定はない。
【0076】
[その他の層]
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0077】
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0078】
樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い保護フィルムを設けることが好ましい。保護フィルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、樹脂層から容易に分離されねばならない。保護フィルム材料としては例えばシリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0079】
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層および中間層の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
【0080】
[光学異方性層を基板上に形成する方法]
機能性基板の製造方法において、光学異方性層は、基板上に光学異方性層作製用組成物を塗布して形成することができるが、転写材料を用いて形成することによって、特に段差形成用感光性樹脂層を有する機能性基板の製造の際に、製造工程数を減らすことが可能である。
【0081】
[転写材料を基板上に転写する方法]
転写材料を基板上に転写する方法については特に制限されず、基板上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を基板表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。その後、支持体は剥離してもよく、剥離によって露出した光学異方性層表面に、他の層、例えば電極層等を形成してもよい。
【0082】
光ラジカル発生剤を含む有機溶剤に使用する光ラジカル発生剤としては、光照射によりラジカルを発生するものであれば、何でもよいが、代表的なものとして下記の化合物が挙げられる。好ましくは、2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)1,3,4−オキサジアゾールまたは2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチル)−3−ブロモフェニル]−s−トリアジンである。なお、前記1)および2)の方法においては、光ラジカル発生剤は、重合性液晶化合物を含む液晶性組成物に添加され、同様のものを挙げることができる。なお、液晶組成物における光ラジカル発生剤の添加量は、重合性液晶化合物におけるメソゲン基やスペーサーの構造や、オキセタニル基当量、液晶の配向条件などにより異なるが、通常、液晶性組成物におけるモノマー総質量に対し、通常100質量ppm〜20質量%、好ましくは1000質量ppm〜10質量%、より好ましくは0.2質量%〜7質量%、最も好ましくは0.5質量%〜5質量%の範囲である。
【0083】
【化15】

【実施例】
【0084】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
下記のスキーム1に従って、オキセタニル基を持つアクリロイル化合物である化合物11を合成した。
【0085】
【化16】

【0086】
(1−1)2Lの三口フラスコに化合物2(100g)、トリエチルアミン(TEA) 86g、テトラヒドロフラン 1000mLを仕込み、0℃に冷却した。そこに、化合物1 76gを滴下し、室温に戻して30分間反応させた。反応溶液を酢酸エチル300mLで希釈した後、水洗した。カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物3を70g得た。
(1−2)1000mLの三口フラスコに化合物3(25g)、4−ヒドロキシベンズアルデヒド 16g、N,N−ジメチルアセトアミド 225mL、炭酸カリウム55g、ヨウ化ナトリウム0.5g、ニトロベンゼン 0.1mLを仕込み、窒素雰囲気下、オイルバス温度100℃で4時間反応させた。反応溶液を酢酸エチル200mLで希釈した後、希塩酸で洗い、さらに水洗した。カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物4を25g得た。
【0087】
(1−3)500mLの三口フラスコに化合物4(25g)、アセトニトリル 195mL、17wt%リン酸二水素ナトリウム水溶液20g、31wt%過酸化水素水23gを仕込み、室温で撹拌した。そこに、14wt%亜塩素酸ナトリウム水溶液110gを滴下した。50℃で4時間反応させた後、反応溶液を蒸留水1000mL中に加えて、沈殿物を得た。沈殿物をアセトニトリル50mLで洗浄し、化合物5を23g得た。
(1−4)500mLの三口フラスコに化合物5(13g)、テトラヒドロフラン 200mL、メタンスルホニルクロライド 5.8gを仕込み、0℃に冷却した。そこに、ジイソプロピルエチルアミン 6.6gを滴下し、室温に戻して30分間反応させた。その後、ヒドロキノンを20.4g加え、再度0℃に冷却した。ジイソプロピルエチルアミン 6.6g、N,N−ジメチルアミノピリジン 0.6gを加え、室温に戻して30分間反応させた。反応溶液を酢酸エチル100mLで希釈した後、水洗した。カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物6を8.6g得た。
(1−5)2Lの三口フラスコに化合物7(50g)、テトラブチルアンモニウムブロマイド 8.2g、ヘキサン 490mL、50wt%水酸化ナトリウム水溶液 640g、1,4−ジブロモブタン 317gを仕込み、室温で30分間、還流させながら4時間反応させた。反応溶液を水洗した後、溶媒を除去した。蒸留により精製し、化合物8を87g得た。
【0088】
(1−6)500mLの三口フラスコに化合物8(20g)、N,N−ジメチルアセトアミド 200mL、4−ヒドロキシ安息香酸メチル 12.8g、炭酸カリウム 35gを仕込み、150℃で8時間反応させた。反応溶液を酢酸エチル200mLで希釈した後、水洗し、化合物9を25g得た。
(1−7)500mLの三口フラスコに化合物8(25g)、イソプロピルアルコール(100mL)、蒸留水 100mL、水酸化ナトリウム 8gを仕込み、オイルバス温度110℃で4時間反応させた。反応溶液を酢酸エチル200mLで希釈した後、希塩酸で洗い、さらに水洗し、化合物10を18g得た。
(1−8)100mLの三口フラスコに化合物10(3.4g)、テトラヒドロフラン 18mL、メタンスルホニルクロライド 1.4gを仕込み、0℃に冷却した。そこに、ジイソプロピルエチルアミン 1.6gを滴下し、室温に戻して30分間反応させた。その後、化合物6を4.7g加え、再度0℃に冷却した。ジイソプロピルエチルアミン 1.6g、N,N−ジメチルアミノピリジン 0.3gを加え、室温に戻して30分間反応させた。反応溶液を酢酸エチル100mLで希釈した後、水洗した。カラムクロマトグラフィーで精製し、さらにメタノールで再結晶し、化合物11を4.7g得た。
化合物11の1H−NMR(CDCl3,ppm):1.35 1.7-2.1 3.4-4.6 5.8-6.6 6.9-7.1 7.2-7.3 8.1-8.2
得られた化合物のネマチック温度範囲は66〜112℃であった。
【0089】
[実施例2]
下記のスキーム2に従って、オキセタニル基を持つアクリロイル化合物である化合物17を合成した。
【0090】
【化17】

【0091】
(2−1)(1−1)と同様の操作で化合物13を得た。
(2−2)(1−2)と同様の操作で化合物14を得た。
(2−3)(1−3)と同様の操作で化合物15を得た。
(2−4)(1−4)と同様の操作で化合物16を得た。
(2−5)(1−8)と同様の操作で化合物17を得た。
化合物17のH−NMR(CDCl3,ppm):1.35、1.6−2.1、2.25、3.4−3.7、4.0−5.0、5.7−6.6、6.8−7.5、8.0−8.3
得られた化合物のネマチック温度範囲は88〜115℃であった。
【0092】
[実施例3]
下記のスキーム3に従って、オキセタニル基を持つアクリロイル化合物である化合物23を合成した。
【0093】
【化18】

【0094】
(3−1)(1−1)と同様の操作で化合物19を得た。
(3−2)(1−2)と同様の操作で化合物20を得た。
(3−3)(1−3)と同様の操作で化合物21を得た。
(3−4)(1−4)と同様の操作で化合物22を得た。
(3−5)(1−8)と同様の操作で化合物23を得た。
化合物23のH−NMR(CDCl3,ppm):1.0−1.4、1.7−2.1、2.3−2.6、3.4−3.7、3.8−4.6、5.7−6.6、6.8−7.5、8.0−8.3
得られた化合物のネマチック温度範囲は87〜106℃であった。
【0095】
[実施例4]
下記のスキーム4に従って、オキセタニル基を持つアクリロイル化合物である化合物29を合成した。
【0096】
【化19】

【0097】
(4−1)(1−1)と同様の操作で化合物25を得た。
(4−2)(1−2)と同様の操作で化合物26を得た。
(4−3)(1−3)と同様の操作で化合物27を得た。
(4−4)(1−4)と同様の操作で化合物28を得た。
(4−5)(1−8)と同様の操作で化合物29を得た。
化合物29のH−NMR(CDCl3,ppm):1.35 1.7-2.1 3.4-4.6 5.8-6.6 6.9-7.1 7.2-7.3 8.1-8.2
得られた化合物のネマチック温度範囲は57〜108℃であった。
【0098】
[実施例5]
下記のスキーム5に従って、オキセタニル基を持つアクリロイル化合物である化合物34を合成した。
【0099】
【化20】

【0100】
(5−1)(1−5)と同様の操作で化合物31を得た。
(5−2)(1−6)と同様の操作で化合物32を得た。
(5−3)(1−7)と同様の操作で化合物33を得た。
(5−4)(1−8)と同様の操作で化合物34を得た。
化合物34のH−NMR(CDCl3,ppm):0.8−1.0、1.6−2.1、3.4−3.6、3.7−4.6、5.7−6.6、6.8−7.4、8.0−8.3
得られた化合物のネマチック温度範囲は67〜107℃であった。
【0101】
[実施例6]
下記のスキーム6に従って、オキセタニル基を持つアクリロイル化合物である化合物35を合成した。

【0102】
【化21】

【0103】
(6−1)(1−8)と同様の操作で化合物35を得た。
化合物35のH−NMR(CDCl3,ppm):0.7−1.2、1.5−2.2、3.3−4.7、5.5−5.6、6.1−6.2、6.8−7.4、8.0−8.3
【0104】
[比較例1]
下記のスキーム7に従って、オキセタニル基を持つアクリロイル化合物である化合物37を合成した。
【0105】
【化22】

【0106】
(7−1)(1−4)と同様の操作で化合物36を得た。
(7−2)(1−8)と同様の操作で化合物37を得た。
化合物37のH−NMR(CDCl3,ppm):1.30、1.70-2.00、3.4-3.65、5.75-6.50、6.85-7.35、8.05-8.25
得られた化合物のネマチック温度範囲は89〜141℃であった。
【0107】
[比較例2]
下記のスキーム8に従って、オキセタニル基を持つアクリロイル化合物である化合物を合成した。
【0108】
【化23】

【0109】
(8−1)(1−4)と同様の操作で化合物38を得た。
(8−2)(1−8)と同様の操作で化合物39を得た。
化合物39のH−NMR(CDCl3,ppm):1.35、1.6−2.1、2.25、3.4−3.7、4.0−4.7、5.7−6.6、6.8−7.3、8.0−8.3
得られた化合物のネマチック温度範囲は70〜87℃であった。
【0110】
実施例1〜6、比較例1および2にて合成した化合物を用い、以下の操作によりパターン状の位相差を有する位相差フィルムを作成した。
本発明の重合性液晶化合物106部、重合禁止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製Irganox1076)0.11部、光カチオン開始剤(Triarylsulfonium hexafluoroantimonate salts)2.2部、水平配向剤(LC-1-1)0.2部、MEK 105部から成る液晶性組成物を、予めラビング処理を施したポリビニルアルコール付きガラス基板に塗布した(2000rpmで20秒間)。各重合性液晶化合物が液晶温度をとる温度範囲まで加熱して、二分間その温度を維持し、その後、大気下で80mJの光を照射し、オキセタニル基をカチオン重合させた(一部ラジカル重合も進行することをIRにより確認)。その後、光ラジカル発生剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルメチル)1,3,4−オキサジアゾール)の5wt%MEK溶液を、得られたフィルムの上から塗布した(2000rpmで20秒間)。マスクを介して大気下で80mJパターン露光した後、基板を230℃に3分間加熱したところ、パターン状に位相差を有する基板が得られた。
【0111】
【化24】

【0112】
各実施例で合成した化合物のMEK(メチルエチルケトン)への溶解性、位相差フィルムの未露光部と露光部のレタデーション(Re)、ヘイズ、スジ・ムラの有無を下記表1に示す。なお、各特性は以下の手順により評価した。
(MEK溶解性)
各濃度に調液したMEK溶液を20℃で1時間攪拌し、溶解したか否かを確認した。
表1で33wt%以上は33wt%まで溶解することを確認。表1で20wt%未満は20wt%で溶解しないことを確認。また、54wt%に関しては、以下の手順で測定を行った。
(1):予め濃度が既知の溶液3種類を用いて、HPLCを用いて検量線を引く。
(2):60wt%の飽和MEK溶液を調液し、20℃で一晩放置する。
(3):上澄み液を採取し、HPLCにて測定する。
(4):(1)で作成した検量線から飽和濃度を算出する。
(レタデーション(Re)の測定)
レターデーション測定器(王子計測社製、KOBRA21DH)を用いて、Re値を計測した。
(ヘイズ)
本実施例の露光サンプルを熱現像処理を行い、そのサンプルの露光部を日本電色工業(株)製NDH300Aを用いてヘイズ測定を行った。
(スジ・ムラ)
目視により、スジ、ムラの有無を確認した。
【0113】
【表1】

【0114】
表1から、本発明の化合物である、実施例1〜6に記載の化合物はスペーサー部が非対称であるため、MEK溶解性に優れていることが確認できる。また、本発明の位相差フィルムは、パターン露光部の耐熱性に優れるため、パターン露光部のレターデーションが大きく、さらに、スペーサー部が非対称だと、適度な運動性を有するため、パターン未露光部の残留レターデーションが小さいことが確認できた。更に、配向性にも優れるため、ヘイズが小さい。これに対して、比較例1および2に記載の化合物はスペーサー部が置換されたアルキレンでは無いため、MEK溶解性が低く、それを用い得られた位相差フィルムは、パターン露光部のレターデーションとパターン未露光部の残留レターデーションの差が小さく、ヘイズが大きい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の液晶表示装置用基板の一例の概略断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置用基板の製造方法に用いられる転写材料の一例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0116】
11 基板
12 光学異方性層
12A 光学異方性層の露光部
12B 光学異方性層の未露光部
13 配向層(基板上)
14 転写用接着層
15 感光性樹脂層
21 仮支持体
22 配向層(仮支持体上)
23 力学特性制御層
24 仮支持体21に転写するための転写材料用仮支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されることを特徴とする重合性液晶化合物。
P−Sp1−L1−M1−L2−Sp2−Ox (1)
(式中、Pは重合性基を表し;Sp1およびSp2のうちいずれか一方は、分岐アルキレン、または−O−、−C≡C−および−S−からなる群から選択される2価の連結基を少なくとも一つ鎖中に含むアルキレン、もう一方が直鎖アルキレンを表し;L1およびL2は、それぞれ独立に2価の連結基を表し;M1は下記式(2−1)〜(2−12)からなる群から選択される2価の基を少なくとも一つ有するメソゲン基を表し;Oxは下記式(3)で表される基を表す。)
【化1】

【化2】

(式中、R2は水素原子、メチル基、またはエチル基を表し、Xは−O−、−S−、−OCO−または−COO−を表し、Xは単結合または炭素数1〜4のアルキレンを表す。なお、*はSp2との結合部位である。)
【請求項2】
前記Sp1およびSp2のうちいずれか一方が、−O−または−C≡C−を鎖中に含むアルキレンである請求項1に記載の重合性液晶化合物。
【請求項3】
前記−O−または−C≡C−を鎖中に含むアルキレンが、−(CH2n1−X−(CH2n2−(n1およびn2はそれぞれ独立に1〜4の整数を表し、−X−は、−O−または−C≡C−を表す。)である請求項2に記載の重合性液晶化合物。
【請求項4】
前記Sp2が直鎖アルキレンである請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の重合性液晶化合物。
【請求項5】
前記Pが、(メタ)アクリロイルオキシ基または(メタ)アクリロイルである請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の重合性液晶化合物。
【請求項6】
前記L1およびL2が、それぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−OCO−、−COO−、−CO−、−CH2−、−CONH−、または−NHCO−である請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の重合性液晶化合物。
【請求項7】
前記L1およびL2が−O−である請求項6に記載の重合性液晶化合物。
【請求項8】
前記M1が式(5)で表される基である請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の重合性液晶化合物。
―Hex1−Sp3−Hex2−Sp4−Hex3− 式(5)
(式中、Hex1〜Hex3はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の1,4−フェニレン基、または、置換もしくは無置換の1,4−シクロへキシレン基を表し、Sp3およびSp4はそれぞれ独立に、単結合、−OCO−、−COO−、またはアセチレン基を表す。)
【請求項9】
前記Sp3が−COO−かつ前記Sp4が−OCO−である、または、前記Sp3が−OCO−かつ前記Sp4が−COO−である請求項8に記載の重合性液晶化合物。
【請求項10】
前記Hex1〜Hex3が置換もしくは無置換の1,4−フェニレンである請求項8または9に記載の重合性液晶化合物。
【請求項11】
前記Xが−O−であり、Xがメチレンである請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の重合性液晶化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか一項に記載の重合性液晶化合物を含有することを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項12記載の組成物を用い形成されたことを特徴とする位相差フィルム。
【請求項14】
パターン状の位相差を有する請求項13に記載の位相差フィルム。
【請求項15】
請求項13または14に記載の位相差フィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−127336(P2008−127336A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314799(P2006−314799)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】