説明

重合性液晶組成物及び光学異方体

【課題】 配向欠陥のない光学異方体を提供することにあり、該光学異方体を作製することのできる重合性液晶組成物を提供する。
【解決手段】 重合性基を有する液晶化合物を含有する重合性液晶組成物において、フッ素基を有する側鎖、及び、ナフタレン環、インデン環、ペンタレン環、アズレン環、及びヘプタレン環から選ばれる縮合環(但し、該縮合環を構成する1つ以上の炭素原子はNまたはカルボニル基で置き換えられていてもよく、また、互いに隣接しない1つ以上の炭素原子は、S又はOで置き換えられていてもよく、縮合環の一部あるいは全部が水添されていてもよい。また置換基を有していてもよい。)を1つ有する側鎖を有し、質量平均分子量が10000〜300000である(メタ)アクリル共重合体(H)を含有する重合性液晶組成物、及び、該重合性液晶組成物を、配向機能を有する基板上に塗布し、配向させた状態で重合させて得られる光学異方体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に重合性液晶組成物を塗布することにより作製する、傾斜配向あるいは水平配向を示す光学異方体の、空気界面近傍の配向欠陥を改善する添加剤を含有する重合性液晶組成物、及び該重合性液晶組成物を原料とした光学異方体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、液晶表示装置(LCD)は、液晶セル及びその両側に配置された二枚の偏光板からなる。反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル、及び一枚の偏光板が積層されている。これらの液晶表示装置は、視野角の拡大、着色解消、あるいは表示モードに応じて位相差を調整するために、液晶セルと偏光板との間に光学異方体の一種である光学補償シート(位相差板)を配置する場合が多い。
【0003】
通常、光学補償シートには複屈折を有する高分子フィルムが使用されており、例えば、重合性の液晶材料に配向処理を施した後、紫外線硬化させて配向状態を固定化した光学異方体からなる複屈折を有する高分子フィルムが、LCD用の光学補償シートとして実用化されている。
また、最近では、従来のバッチ製造と比較して大幅な製造効率向上を目的とした、塗工プロセスを導入したロールツウロール(Roll to Roll)法等の液晶表示装置の製造方法の開発が進んでいる。ロールツロール用途の光学補償シートは、塗工法で作製でき、且つ、得られたシートに他の部材が積層されることを前提として設計される。
【0004】
重合性液晶材料を用いて光学異方体を作製する場合、通常では二枚の配向膜に重合性液晶材料を挟持させ、両側からの配向規制力により液晶分子を配向させる方法が一般的である。しかし、光学補償シートの製造にロールツロールのような塗工プロセスを用いた場合や工程の短縮化のために、配向機能を有する基板上に重合性の液晶材料を塗布し、重合性の液晶材料の配向処理は、一方に形成した配向膜の配向規制力のみを利用して行われる。即ち、前者と異なり、配向膜に接していない空気との界面付近では、液晶分子に配向規制力が作用しづらい。従って、気液界面では配向欠陥が発生し、得られる光学異方体の品質低下あるいは歩留まりの低下が起こりやすかった。
【0005】
これを解決する方法として、重合性の液晶材料に混合して空気との界面付近の液晶分子の配向を制御させる添加剤が提案されており、例えば、該添加剤として、一分子中に、フッ素置換脂肪族基やオリゴシロキサン基等の疎水性基と、少なくとも二つの環状構造を含む排除体積効果を有する基とを有する化合物からなる液晶配向促進剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
前記化合物の疎水性基は液晶分子と相溶しにくいので、空気との界面に偏在しようとする。一方、前記化合物の排除体積効果を有する基は液晶分子と相溶するので、液晶層に入り込もうとする。疎水性基と排除体積効果を有する基との組み合わせにより、空気界面側での液晶性分子の傾斜角を、液晶性分子の種類に限定されることなく、任意に制御できる。従ってより配向に優れた光学異方体を得ることができる。
【0006】
しかし前記化合物では、実際には気液界面での配向不良を完全に押さえることができなかった。また、前記化合物は低分子化合物のため、全てが空気界面に偏在することができず、一部が液晶層内部に残存してしまい、これにより液晶材料の相転移点が低下し、得られる光学異方体の安定性の低下やリタデーションの低下がおこるおそれがあった。
【0007】
また、重合性の液晶材料と高分子化合物との混合物を硬化させてなる光学異方体としては、垂直配向膜の設けられていない基板上でホメオトロピック配向液晶層を形成しうる、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数1〜22のフルオロアルキル基を有する側鎖型液晶ポリマーと、光重合性液晶化合物を含有してなるホメオトロピック配向液晶性組成物、及び、これを配向させた状態で光照射した、ホメオトロピック配向液晶フィルムが知られている。(例えば、特許文献2参照)前記側鎖型液晶ポリマーはホメオトロピック配向を示し、これを10%以上混合することで、耐久性に優れるホメオトロピック配向液晶フィルムが得られる。しかしこの方法では、傾斜配向あるいは水平配向を示す光学異方体を得ることができなかった。
【0008】
また、重合性の液晶材料に、空気との界面における該液晶材料のディレクタの固有の傾斜配向を減じる界面活性材料を添加して、液晶整列層の空気界面における該液晶材料の整列が実質的に平行又は実質的に斜めとなるような薄膜を得る方法も知られている(例えば、特許文献3参照)。該界面活性材料として、具体的には、ポリアクリル酸エステル、ポリシリコン、反応性ポリシリコン、オルガノシラン、ワックス、および離型剤等が好ましいとあり、ポリシクロヘキシルメタクリル酸エステルやポリメチルメタクリル酸エステルを使用することで、厚さ方向の傾斜角度を変化させることができる。
しかし、該公報に記載された界面活性材料では、表面付近の配向欠陥を完全に改善することができなかった。
【0009】
【特許文献1】特開2000−345164号公報
【特許文献2】特開2003−227935号公報
【特許文献3】特開2000−105315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明が解決しようとする課題は、配向欠陥のない光学異方体を提供することにあり、該光学異方体を作製することのできる重合性液晶組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、空気界面に偏在する能力の高いフッ素基を含有する側鎖、及び、液晶分子と親和性があるが排除体積効果を殆ど有さず液晶を配向させる能力が小さい基を有する(メタ)アクリル共重合体が、配向欠陥を改善する性能が高いことを見出し、該共重合体を特定量添加することで、配向欠陥のない光学異方体が得られることを見いだした。
【0012】
本発明者らは、配向欠陥は、基板からの配向規制力と空気界面付近での空気による配向規制力が異なるため、液晶の配向の向きが部分的にずれるために生じていると考え、空気界面付近の液晶の配向性を緩和するような基を、空気界面付近に存在させることで、上記課題を解決した。
具体的には、液晶分子と親和性があるが排除体積効果を殆ど有さず液晶を配向させる能力が小さい基を(メタ)アクリル共重合体にペンダントさせ、空気界面付近に存在させることで、ディスクリネーション即ち配向欠陥が発生しにくく、基板側の配向規制力が界面付近まできちんと伝播した光学異方体を得ることができる。
【0013】
(メタ)アクリル共重合体等の高分子量体は液晶に対する溶解性が低分子量体と比べて劣るため,液晶層から相分離しやすい性質がある。本発明においては更に相分離効果を高めるため、フッ化アルキル基等のフッ素基を含有する基を(メタ)アクリル共重合体に懸垂させた。該共重合体は、相分離する力が強く、且つ空気界面に偏在する力が強いので、ごく少量添加で効果があり、水に浮かべた油膜のように重合性液晶層の表面に広がり、空気界面近傍の配向欠陥のない光学異方体を得ることができる。少量添加のため、本来の重合性液晶が形成する光学異方体の光学的作用を損なうことがない。
【0014】
即ち本発明は、重合性基を有する液晶化合物を含有する重合性液晶組成物において、
1)フッ素基を有する側鎖と、ナフタレン環、インデン環、ペンタレン環、アズレン環、及びヘプタレン環から選ばれる縮合環(但し、該縮合環を構成する1つ以上の炭素原子はNまたはカルボニル基で置き換えられていてもよく、また、互いに隣接しない1つ以上の炭素原子は、S又はOで置き換えられていてもよく、縮合環の一部あるいは全部が水添されていてもよい。また置換基を有していてもよい。)を1つ有する側鎖を有し、
2)フッ素基含有率が3〜40質量%であり
3)前記縮合環を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%であり、
4)質量平均分子量が10000〜100000である
(メタ)アクリル共重合体(H)を
0.1〜6.0質量%含有する重合性液晶組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記記載の重合性液晶組成物を、配向機能を有する基板上に塗布し、配向させた状態で重合させて得られる光学異方体を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記記載の重合性液晶組成物を、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する基板に塗布し、配向させた状態で重合させて得られる位相差膜を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液晶組成物を使用することで、配向欠陥が改善された光学異方体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
((メタ)アクリル共重合体(H) フッ素基を有する側鎖)
本発明で使用する(メタ)アクリル共重合体(H)(以下、アクリル共重合体Hと略す)において、フッ素基を有する側鎖とは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基(但し、該基中に存在するメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、−SONZ−又は−CONZ−で置き換えられていても良い。Zはアルキル基を表す。またフッ化アルキル基は、ヒドロキシ基、等の置換基を有していても良い)を有する側鎖を表す。フッ化アルキル基が有するフッ素原子の数は、5〜35が好ましく、13〜25が特に好ましい。具体的には、−(CH−(C2q-s+1)、−(CH−NG−SO−(CF−CF、−(CH−NG−CO−(CF−CF(式中、p、qはそれぞれ独立して1〜17(但し、p+qは2以上17以下を満たす。)の整数を表す。sは0〜9の整数を表す。Gは炭素原子数1〜8のアルキル基又は水素を表す。また各々のメチレン基に結合する水素は、水酸基で置換されていてもよい)等のフッ化アルキル基が好ましい。中でも、pは1〜4でqは2〜16であることが好ましく、pは2〜3でqは5〜16であることがさらに好ましい。qが6〜11であると最も好ましい。
該フッ素を有する側鎖は、エステル結合等を介してアクリル共重合体主鎖に連結している。
【0019】
((メタ)アクリル共重合体(H))
本発明で使用するアクリル共重合体Hにおいて、ナフタレン環、インデン環、ペンタレン環、アズレン環、及びヘプタレン環から選ばれる縮合環(但し、該縮合環を構成する、1つ以上の炭素原子はNまたはカルボニル基で置き換えられていてもよく、また、互いに隣接しない1つ以上の炭素原子は、S又はOで置き換えられていてもよく、縮合環の一部あるいは全部が水添されていてもよい)は、エステル結合等を介してアクリル共重合体主鎖に連結している。
本発明においては、アクリル共重合体主鎖に連結したエステル結合等の結合部位からペンダントされた前記縮合環を含む基を、「ナフタレン環、インデン環、ペンタレン環、アズレン環、及びヘプタレン環から選ばれる縮合環(但し、該縮合環を構成する、1つ以上の炭素原子はNまたはカルボニル基で置き換えられていてもよく、また、互いに隣接しない1つ以上の炭素原子は、S又はOで置き換えられていてもよく、縮合環の一部あるいは全部が水添されていてもよい)を1つ有する側鎖」と称する。いずれの環でも本発明の効果は得られるが、1つの側鎖が有する縮合環の数は1つである。
以下、前記縮合環を、縮合環Aと略す。
縮合環Aとしては、具体的に以下の構造が挙げられる。
【0020】
【化1】

【0021】
縮合環Aは、本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも1つの置換基を有していてもよい。置換基は立体効果が小さいもの程排除体積効果が生じにくいので好ましい。具体的には、フッ素基、シアノ基、トリフルオロアルキル基、分岐あるいは直鎖アルキル基、分岐あるいは直鎖アルキルオキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、又はアルキルオキシカルボニル基等の置換基が挙げられる。直鎖アルキル基、直鎖アルキルオキシ基等の直鎖基は、炭素原子数が12以下であることが好ましく、5以下がなお好ましく、3以下が最も好ましい。また分岐アルキル基、分岐アルキルオキシ基等、分岐を有するものは、主鎖(但し、置換基を構成する鎖のうち最も長い鎖を主鎖とする)を構成する原子の数が12以下であることが好ましく、5以下がなお好ましく、3以下が最も好ましい。
【0022】
縮合環Aは、液晶分子と親和性を有し、且つ排除体積効果を殆ど有さないので液晶を配向させる能力は小さい。これらの性質は、ナフタレン環、インデン環、あるいはナフタレン環及びインデン環の1つ以上の炭素原子がNまたはカルボニル基で置き換えられた環、ナフタレン環及びインデン環の互いに隣接しない1つ以上の炭素原子がS又はOで置き換えられた環、ナフタレン環及びインデン環の一部あるいは全部が水添されている環、が最も強く現れ、好ましい。この場合置換基は有さないことが好ましい。
【0023】
縮合環Aは、エステル結合等で直接アクリル共重合体(H)主鎖と結合していてもよいし、縮合環Aとエステル結合等の間にスペーサーと呼ばれる連結基を有していても良い。また、縮合環Aの結合部位に特に限定はない。
スペーサーの有無、あるいは長さは、縮合環Aのパッキング特性、結晶性、液晶との親和性等を考慮しながら選択するのが好ましい。例えば、スペーサーが長くなるほど、重合性基と縮合環Aの運動性が比較的独立したものとなり、結晶性は下がると考えられる。また、フッ素部分から縮合環Aが離れて存在することができるようになるので、縮合環Aと液晶分子との親和性を高くすることも可能である。
【0024】
スペーサーはアルキレン基やアルケニレン基のようなほぼ直鎖状の化学構造を有していれば良く、途中に分岐鎖を有していても良く、エステル結合、アミド結合、エーテル結合のような結合基を介していても良い。中でもアルキレン基の構造を持つものが好ましい。
【0025】
本発明で使用するアクリル共重合体(H)は、具体的には、主に、フッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートと、縮合環Aを有するモノ(メタ)アクリレートとを原料として得られる。
【0026】
(フッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート)
前記フッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートは、中でも、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基(但し、該基中に存在するメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、−SONZ−又は−CONZ−で置き換えられていても良い。Zはアルキル基を表す。またフッ化アルキル基は、ヒドロキシ基、等の置換基を有していても良い)を有するモノ(メタ)アクリレートが好ましい。フッ化アルキル基が有するフッ素原子の数は、5〜35が好ましく、13〜25が特に好ましい。具体的には、−(CH−(C2q-s+1)、−(CH−NG−SO−(CF−CF、−(CH−NG−CO−(CF−CF(式中、p、qはそれぞれ独立して1〜17(但し、p+qは2以上17以下を満たす。)の整数を表す。sは0〜9の整数を表す。Gは炭素原子数1〜8のアルキル基又は水素を表す。また各々のメチレン基に結合する水素は、水酸基で置換されていてもよい)等のフッ化アルキル基が好ましい。中でも、pは1〜4でqは2〜16であることが好ましく、pは2〜3でqは5〜16であることがさらに好ましい。qが6〜11であると最も好ましい。
フッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートは、具体的には、一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化2】

(2)
【0028】
式(2)において、Xは水素原子又はメチル基を表す。Zは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基(但し、該基中に存在するメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、−SONZ−又は−CONZ−で置き換えられていても良い。Zはアルキル基を表す。またフッ化アルキル基は、ヒドロキシ基、等の置換基を有していても良い)を表す。
以下に、本発明で使用するフッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートの具体例を挙げる。
【0029】
CF3(CF2)nCH2CH2OCOCH=CH2
(n=5-11, nの平均=9)
CF3(CF2)7CH2CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7CH2CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)5CH2CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)3OCOCH=CH2
(CF3)2CF(CF2)10(CH2)3OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C3H7)CH2CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)CH2CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7(CH2)4OCOCH=CH2
CF3(CF2)6COOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C4H9)(CH2)4OCOCH=CH2
CF3(CF2)7CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
CF3(CF2)5CON(C3H7)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7CON(C2H5)CH2CH2OCOCH=CH2
【0030】
縮合環Aを有する(メタ)アクリレート)
縮合環Aを有する(メタ)アクリレートは、一般式(1)で表される(メタ)アクリレートであることが望ましい。
【0031】
【化3】

(1)
【0032】
(式中、Xは水素原子又はメチル基を表わし、Rは、単結合又は、前記スペーサー部分を表し、具体的には、炭素原子数1〜18のアルキレン基(但し、該基中に存在し、−COO−と直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)を表す。Rの具体例としては、−(単結合)、−(CHt−O−、−(CHt’−、−(CHCHO)t”−(但し、t、t’、t”はそれぞれ1〜18の整数を表す)等の基があげられる。中でも、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基、又は炭素原子数1〜12のアルキレンオキシ基が好ましく、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は炭素原子数1〜8のアルキレンオキシ基がなお好ましい。Aは、縮合環Aを表す。Aはフッ素基、シアノ基、トリフルオロアルキル基、炭素原子数1〜12の分岐又は直鎖アルキル基、炭素原子数1〜12の分岐あるいは直鎖アルキルオキシ基、炭素原子数1〜12のアルカノイル基、炭素原子数1〜12のアルカノイルオキシ基、又は炭素原子数1〜12のアルキルオキシカルボニル基を置換基として有していても良い。
(以下、一般式(1)における「−R−A」を総称して基(h)と略す)
【0033】
重合性液晶組成物中の(メタ)アクリル共重合体(H)は、特に空気界面近傍での配向欠陥を生じさせない効果を有する。これは基(h)が、液晶を配向させる力は小さいが液晶性化合物と親和性があることに起因すると考えられる。
基(h)は縮合環Aを有するが、環Aは2環式縮合環であるので、縮合環A自体の排除体積効果は極めて弱いと考えられる(即ち、液晶を立体的効果によって配向させる力は小さい)。しかし縮合環Aは液晶性を有する化合物のコアと呼ばれる部分の構造の一部として使用されるので、液晶性化合物そのものとの親和性は高いと考えられる。
基(h)と液晶とが混和する空気界面付近では、基(h)と液晶とが混和したことにより液晶性が低下していると考えられる。従って、空気界面では重合性液晶組成物の液体−液晶相転移温度が、基板界面側の重合性液晶組成物の液体−液晶相転移温度よりも低くなっていると考えられる。そのため、液体状態より液晶を配向させる過程で、基板側の配向規制力が優先して働き、しかも空気界面では、基(h)と液晶との親和性は高いので、相分離は生じず、液晶の配列を乱さずに、基板側の配向規制力が空気界面側まで伝播すると考えられ、従って配向欠陥が生じないものと考えられる。
本発明の効果は、従来知られている形状の異方性による効果、いわゆる排除体積効果とは別種のものである。
【0034】
基(h)を有するアクリル共重合体(H)と組み合わせる重合性液晶組成物b(ここで、本発明の重合性液晶組成物からアクリル共重合体(H)を除いた組成物を、「重合性液晶組成物b」とする。)は、重合性液晶組成物bに該アクリル共重合体(H)を過度に添加して(20質量%)得られる液晶の液体−液晶相転移温度(T)、及び、重合性液晶組成物bの液体−液晶相転移温度(T)との差(以下、混和液晶低下温度ΔTと定義する)ΔT=T−Tが、−10℃〜−0.1℃である液晶混和特性を有するような、重合性液晶組成物bが好ましい。以下、その関係を下記式に示す。
【0035】
【数1】

【0036】
(但し、T=(前記重合性液晶組成物が、前記アクリル共重合体(H)を20質量%含有した際の液体−液晶相転移温度)であり、T=(前記重合性液晶組成物から前記アクリル共重合体(H)を除いたとき(重合性液晶組成物b)の液体−液晶相転移温度)である)
【0037】
但し、混和液晶低下温度ΔTが下がりすぎると重合性液晶組成物自体の安定性が下がることがあるので、10℃を越えて低下しないような組み合わせが好ましい。
このような組み合わせは、基板側の配向規制力が空気界面付近まできちんと伝播した、配向欠陥のない光学異方体を得るうえでなお好ましい。この組み合わせは、特に基板側の配向規制力が略水平配向の場合に特に好ましく用いられ、基板面に対して垂直な方向から見たときの光学的異方性の大きい光学異方体を得ることができる。
【0038】
配向欠陥に対する効果は基(h)にナフタレン環、インデン環、あるいはナフタレン環及びインデン環の1つ以上の炭素原子がNまたはカルボニル基で置き換えられた環、ナフタレン環及びインデン環の互いに隣接しない1つ以上の炭素原子がS又はOで置き換えられた環、ナフタレン環及びインデン環の一部あるいは全部が水添されている環、が最も強く現れ、好ましい。また基(h)のスペーサーとしては、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレンオキシ基、又はアルキレン基が最も好ましい。
【0039】
前記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートと、前記一般式(2)で表される化合物に代表される、フッ化アルキル基等のフッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートとを必須原料として共重合させることで、アクリル共重合体(H)を得ることができる。共重合方法は特に限定はなく、公知の重合開始剤を用いて公知の合成方法に従って得ることができる。塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、放射線重合、光重合など各種の重合方式のいずれをも採用できる。中でも、溶液ラジカル重合法によるものが好ましい。
重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。重合に際しては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、酢酸エチル、エチレングリコ−ルモノエチルエ−テルアセテ−ト等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロパノ−ル、n−ブタノ−ル、イソブタノ−ル、ジグリム、エチレングリコ−ルモノエチルエ−テル等のアルコ−ル系あるいはエ−テル系溶剤を用いることができる。一般式(h)で表される基を有するモノ(メタ)アクリレートと、フッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートを溶剤に溶解し,脱気あるいは窒素置換などの処置を行い,重合反応が進行しやすくすることが好ましい。
【0040】
アクリル共重合体(H)の重量平均分子量(以下、Mwと略す)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で10000〜300000の範囲であり、12000〜200000がなお好ましく、20000〜100000がさらに好ましい。
Mwが10000未満では、本発明の課題である配向欠陥を改善させる力が弱く、特に配向性が悪い傾向がある。また、低分子量のため溶出しやすく他の部材を汚染するおそれもある。Mwが300000を越えると、粘度が高すぎてしまい取り扱いに不便を有することや、液晶層と完全に相分離してしまい本発明の効果を発揮できないおそれがある。
アクリル共重合体(H)のMwは、公知の方法、例えば、モノマーの対溶液濃度や重合開始剤の種類や濃度、溶媒の種類、反応条件等を適宜変化させることで制御可能であるので、目的に応じて条件を選択すればよい。例えば、溶媒として非プロトン溶媒を使用すると、比較的高分子量のアクリル共重合体(H)が得られるし、プロトン溶媒を使用すると比較的低分子量のアクリル共重合体(H)が得られる。
【0041】
アクリル共重合体(H)は、フッ素基含有率が3〜40質量%であり、且つ、基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%あると、本発明の効果を最もよく発揮できる。
両者をこのバランスとすることで、少量の使用量で効果的に空気界面付近の配向欠陥を改善させることができる。中でも、フッ素基含有率が5〜40質量%で且つ基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%であることが好ましく、フッ素基含有率が10〜40質量%で且つ基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合が50〜95モル%であることがなお好ましい。
なお、ここでいうフッ素基含有率は、アクリル共重合体(H)が有するフッ素原子の総量の質量%を表し、基(h)を有する側鎖の全側鎖に対する割合とは、全モノマー単位に対する基(h)を有する側鎖のモル%を表す。
【0042】
前記比率は、基(h)を有する(メタ)アクリレートと、フッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートとの配合量や、フッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートのフッ素基含有率より、所望の範囲に設計することが可能である。
フッ素基含有率は、原料であるフッ素基を有するモノ(メタ)アクリレートのフッ素基含有率及び共重合する際の配合量から計算する方法や、NMR等により測定することができる。
【0043】
さらに,本発明の効果を損なわない範囲で、一般式(1)で表される(メタ)アクリレートとフッ素基を有するモノ(メタ)アクリレート以外に,共重合可能な公知のエチレン性単量体を加えてもよい。公知のエチレン性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、3−クロロ−2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド,n−セチル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ベヘニル(メタ)アクリレート、iso−ステアリル(メタ)クリレート,アセトアセトキシエチルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルクロトナート、アセトアセトキシプロピルアクリレート、アセトアセトキシプロピルメタクリレート、アセトアセトキシプロピルクロトナート、2−シアノアセトアセトキシエチルメタクリレート、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ビニルなどが挙げられる。これらは、2種以上を併用してもよい。また、前記エチレン性単量体のうち、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ウレタン基等の官能基を有するものは、それらの官能基が重合中ゲル化したり、貯蔵中に反応が進行したりライフが短くなるなど好ましくないが、極少量ならば共重合することも可能である。
【0044】
前記公知のエチレン性単量体の使用量は、アクリル共重合体(H)としての機能を損なわない範囲内とするのが好ましく、例えば60質量%以下が好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
【0045】
(重合性基を有する液晶化合物)
本発明の重合性液晶組成物は、アクリル共重合体(H)と、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、エポキシ基等の重合性基を有する液晶化合物を含有する。
本発明においては、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を示すことが必要であって、使用する各々の重合性液晶化合物の全てが液晶相を示す必要はない。本発明において使用することのできる重合性液晶化合物は、単独で液晶相を示す化合物は勿論のこと、単独では液晶相を示さないが、融点を低下させて液晶相が発現するものや、他の液晶相を示す化合物と混合したときに液晶相を示すもの、液晶を示す化合物と類似した構造を持っていて他の液晶相を示す化合物が形成する液晶相の安定性を著しく低下させないもの等を含む。
【0046】
本発明で使用する重合性液晶化合物としては特に限定はなく、例えば、特開平8−3111号公報に記載の液晶化合物、特開2000−178233号公報に記載の液晶化合物、特開2000−119222号公報に記載の液晶化合物、特開2000−327632号公報に記載の液晶化合物、特開2002−220421号公報に記載の液晶化合物、特開2003−55661号公報に記載の液晶化合物、特開2003−12762号公報に記載の液晶化合物等を使用することができる。重合性基を両末端に有する棒状の二官能重合性液晶化合物あるいは三官能重合性液晶化合物を使用すると、配向を良好に固定化することができ好ましい。特に二官能重合性液晶化合物を使用することが好ましい。また、粘度や、液晶相を示す温度を調整する目的で、重合性基を片末端に有する棒状の単官能重合性液晶化合物を併用することも好ましい。
【0047】
アクリル共重合体(H)は、重合性液晶組成物が液晶性を示す範囲内の添加量で使用し、通常は0.1〜6.0質量%の範囲で使用する。中でも、0.2〜3.0質量%の範囲が好ましく、0.2〜2.0質量%の範囲がさらに好ましく、0.3〜1.5質量%の範囲が最も好ましい。0.1質量%に満たない量では、層表面に均一に膜状にすることがやや困難であり、6.0質量%を越える量では、添加量全てが層表面に偏在できずに一部が層内部に残り、重合性液晶と相分離を起こることがある。
前記アクリル共重合体(H)は、数種類を併用して使用することもできる。
【0048】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性基を有していない液晶化合物を必要に応じて添加してもよい。しかし、添加量が多すぎると、得られた光学異方体から液晶化合物が溶出して積層部材を汚染する恐れがあり、加えて光学異方体の耐熱性が下がるおそれがあるので、添加する場合は、重合性液晶化合物全量に対して30質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。
【0049】
本発明の重合性液晶組成物は、必要に応じて、熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤を添加することもできる。熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン類等が挙げられる。また、光カチオン開始剤としては、光酸発生剤を用いることができる。光酸発生剤としてはジアゾジスルホン系化合物、トリフェニルスルホニウム系化合物、フェニルスルホン系化合物、スルフォニルピリジン系化合物、トリアジン系化合物及びジフェニルヨードニウム化合物が好適に用いられる。添加する場合は、重合性液晶組成物に対して10質量%以下であることが好ましく、6質量%以下が特に好ましく、1〜4質量%の範囲が更に好ましい。
【0050】
本発明の重合性液晶組成物は、重合性基を有するが重合性液晶化合物ではない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で重合性モノマーあるいは重合性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
【0051】
本発明の重合性液晶組成物は、光学活性を有する化合物、すなわちキラル化合物を添加してもよい。該キラル化合物は、それ自体が液晶相を示す必要は無く、また、重合性基を有していても、有していなくても良い。また、キラル化合物の螺旋の向きは、重合体の使用用途によって適宜選択することができる。
具体的には、例えば、キラル基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、キラル基として2−メチルブチル基を有するビーディーエイチ社製の「CB−15」、「C−15」、メルク社製の「S−1082」、チッソ社製の「CM−19」、「CM−20」、「CM」、キラル基として1−メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S−811」、チッソ社製の「CM−21」、「CM−22」などを挙げることができる。
キラル化合物を添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物の重合体の用途によるが、得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜100の範囲となる量を添加することが好ましく、0.1〜20の範囲となる量がさらに好ましい。
【0052】
本発明の重合性液晶組成物には、保存安定性を向上させるために安定剤を添加することもできる。安定剤として例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類等が挙げられる。添加する場合は、本発明の重合性液晶組成物に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0053】
本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物、などを添加してもよい。
【0054】
本発明の重合性液晶組成物を、配向機能を有する基板上に塗布し、本発明の重合性液晶組成物中の液晶分子を、ネマチック相を保持した状態で均一に配向させ、重合させることによって、本発明の光学異方体が得られる。
【0055】
(配向機能を有する基板)
前記基板は、有機、無機を問わず、公知慣用の材質の基板を使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート板、ポリカーボネート板、ポリイミド板、ポリアミド板、ポリメタクリル酸メチル板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル板、ポリテトラフルオロエチレン板、セルロース板、三酢酸セルロース板,ポリエーテルスルホン板、ポリシクロオレフィン板、シリコン板、ガラス板、方解石板等が挙げられる。基板の形状としては、平板の他、曲面を有するものであっても良い。これらの基板は、必要に応じて、電極層、反射防止機能、反射機能を有していてもよい。
【0056】
前記基板に配向機能を付与する方法としては特に限定はなく、公知慣用の方法が挙げられる。具体的には、布等で基板表面をラビング処理する方法、ポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビング処理する方法、基板にSiOを斜方蒸着して配向膜を形成する方法、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜に、偏光または非偏光を照射する方法等が挙げられる。一様な配向状態を形成するためには、通常のツイステッド・ネマチック素子又はスーパー・ツイステッド・ネマチック素子で使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜を使用すると、液晶分子の配向状態の制御を容易にすることができる。
【0057】
一般に、配向機能を有する基板に液晶組成物を接触させた場合、液晶分子は基板付近で基板を配向処理した方向に沿って配向する。液晶分子が基板と水平に配向するか、傾斜あるいは垂直して配向するかは、基板への配向処理方法による影響が大きい。
例えば、インプレーンスイッチング(IPS)方式の液晶表示素子に使用するようなプレチルト角のごく小さな配向膜を基板上に設ければ、ほとんど水平に配向した重合性液晶層が得られる。
また、TN型液晶表示素子に使用するような配向膜を基板上に設けた場合は、少しだけ配向が傾斜した重合性液晶層が得られ、STN方式の液晶表示素子に使用するような配向膜を使うと、大きく配向が傾斜した重合性液晶層が得られる。
【0058】
液晶組成物をプレチルト角のごく小さな水平配向(略水平配向)機能を有する基板に接触させたとき、組成物中の液晶分子は、基板付近ではきちんと水平配向するが空気界面付近では配向規制力がうまく伝播されず、一部配向が乱れる(これが配向欠陥である)。しかしアクリル共重合体(H)を含有する本発明の重合性液晶組成物は、該共重合体Hが空気界面近傍に偏在し、重合性液晶組成物中の液晶分子が受けた基板側の配向規制力を妨げることなく、空気界面付近の液晶分子を配向させるため、ほとんど水平に配向した、あるいは、連続的に傾き角が変化し傾斜配向した重合性液晶層を得ることができ、配向欠陥がなく、基板面に対して垂直な方向から見たときの光学的異方性の大きい光学異方体を得ることができると考えられる。この効果は、基(h)が、排除体積効果による配向力がほとんどないと考えられるナフタレン環、インデン環、あるいはナフタレン環及びインデン環の1つ以上の炭素原子がNまたはカルボニル基で置き換えられた環、ナフタレン環及びインデン環の互いに隣接しない1つ以上の炭素原子がS又はOで置き換えられた環、ナフタレン環及びインデン環の一部あるいは全部が水添されている環であるアクリル共重合体(H)を使用した時に最も大きく得られ、更に、該アクリル共重合体(H)を添加することにより液体−液晶転移温度が低下するような重合性液晶組成物bの組み合わせで使用すると最も効果的である。該組み合わせでは、空気界面付近の液体−液晶転移温度が低下するので、基板側からうける液晶分子の配向規制力がさらに効果的に界面付近まできちんと伝播すると考えられる。
【0059】
また、本発明の重合性液晶組成物を、プレチルト角を有する水平配向機能を有する基板に接触させたときは、基板付近から空気界面付近まで一様又は連続的に角度が変化して傾斜配向した光学異方体を得ることができる。この機構も上記と同様と考えられる。
【0060】
また、分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜や光で異性化する官能基を有する有機薄膜(以下光配向膜と略す)に、偏光または非偏光を照射する方法等(光配向法)を用いれば、パターン状に配向方向が異なる領域が分布した基板を作製することができる。
【0061】
初めに、光配向膜を設置した基板上に光配向膜の吸収帯にある波長の光を照射し、一様な配向が得られる基板を準備する。その後、当該基板にマスクを被せ、マスクの上から光配向膜の吸収波長にある第1の照射と異なる状態の光、例えば偏光状態が異なる光あるいは照射角度及び方向が異なる光を照射して、照射部分だけに第1の照射で得られた部分と異なる配向機能を持たせる。
【0062】
以上のように得られたパターン状に配向機能の異なる領域が分布した基板に重合性液晶組成物を接触させれば、基板の配向機能に応じてパターン状に配向方向の異なる領域が分布する。この状態で光照射による重合を行えば、配向パターンを有する光学異方体を得ることができる。
【0063】
特に、前記基板として、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する基板を使用すれば、位相差膜として特に有用な光学異方体を得ることができる。
【0064】
この時に使われる光配向膜は、複数回の光照射に反応してそれぞれ配向方向を変えられなければならないので、低分子量の化合物から成るものが望ましい。
【0065】
光配向膜を使わずに配向パターンを得る方法としては、AFMの触針で配向膜をラビングする方法、光学異方体をエッヂングする方法などが挙げられるが、光配向膜を利用する方法が簡便であり好ましい。
【0066】
(塗布方法)
本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布する場合は、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、キャップコーティング、ディッピング法等の公知慣用のコーティング法を利用すればよい。このとき、塗工性を高めるために、本発明の重合性液晶組成物に公知慣用の有機溶媒を添加しても良い。この場合は、本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布後、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等で有機溶媒を除去する。
【0067】
塗布後、本発明の重合性液晶組成物中の液晶分子をネマチック相を保持した状態で均一に配向させることが好ましい。具体的には、液晶の配向を促すような熱処理を行うと、アクリル共重合体(H)をより表面に偏在させ、配向をより促進することができ好ましい。熱処理法としては、例えば、本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布後、該液晶組成物のN(ネマチック相)−I(等方性液体相)転移温度(以下、N−I転移温度と略す)以上に加熱して、該液晶組成物を等方相液体状態にする。そこから、必要に応じ徐冷してネマチック相を発現させる。このとき、一旦液晶相を呈する温度に保ち、液晶相ドメインを充分に成長させてモノドメインとすることが望ましい。
あるいは、本発明の重合性液晶組成物を基板上に塗布後、本発明の重合性液晶組成物のネマチック相が発現する温度範囲内で温度を一定時間保つような加熱処理を施しても良い。
【0068】
加熱温度が高過ぎると重合性液晶化合物が好ましくない重合反応を起こして劣化するおそれがある。また、冷却しすぎると、重合性液晶組成物が相分離を起こし、結晶の析出、スメクチック相のような高次液晶相を発現し、配向処理が不可能になることがある。
このような熱処理をすることで、単に塗布するだけの塗工方法と比べて、配向欠陥の少ない均質な光学異方体を作製することができる。
また、このようにして均質な配向処理を行った後、液晶相が相分離を起こさない最低の温度、即ち過冷却状態となるまで冷却し、該温度において液晶相を配向させた状態で重合すると、より配向秩序が高く、透明性に優れる光学異方体を得ることができる。
【0069】
(重合方法)
本発明の重合性液晶組成物を重合させる方法としては、活性エネルギー線を照射する方法や熱重合法等が挙げられるが、加熱を必要とせず、室温で反応が進行することから活性エネルギー線を照射する方法が好ましく、中でも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。照射時の温度は、本発明の重合性液晶組成物が液晶相を保持できる温度とし、重合性液晶組成物の熱重合の誘起を避けるため、可能な限り30℃以下とすることが好ましい。尚、液晶組成物は、通常、昇温過程において、C(固相)−N(ネマチック)転移温度(以下、C−N転移温度と略す。)から、N−I転移温度範囲内で液晶相を示す。一方、降温過程においては、熱力学的に非平衡状態を取るため、C−N転移温度以下でも凝固せず液晶状態を保つ場合がある。この状態を過冷却状態という。本発明においては、過冷却状態にある液晶組成物も液晶相を保持している状態に含めるものとする。紫外線照射強度は、1W/m〜10kW/mの範囲が好ましい。特に、5W/m〜2kW/mの範囲が好ましい。紫外線強度が1W/m未満の場合、重合を完了させるのに多大な時間がかかる。一方、2kW/mを超える強度では、重合性液晶組成物中の液晶分子が光分解する傾向にあることや、重合熱が多く発生して重合中の温度が上昇し、重合性液晶のオーダーパラメーターが変化して、重合後のフィルムのリタデーションに狂いが生じる可能性がある。
【0070】
マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させた後、該未重合部分の配向状態を、電場、磁場又は温度等をかけて変化させ、その後該未重合部分を重合させると、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることもできる。
【0071】
また、マスクを使用して特定の部分のみを紫外線照射で重合させる際に、予め未重合状態の重合性液晶組成物に電場、磁場又は温度等をかけて配向を規制し、その状態を保ったままマスク上から光を照射して重合させることによっても、異なる配向方向をもった複数の領域を有する光学異方体を得ることができる。
【0072】
本発明の重合性液晶組成物を重合させて得られる光学異方体は、基板から剥離して単体で光学異方体として使用することも、基板から剥離せずにそのまま光学異方体として使用することもできる。特に、他の部材を汚染し難いので、被積層基板として使用したり、他の基板に貼り合わせて使用したりするときに有用である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。また、アクリル共重合体(H−1)〜(H−4)のMwは、ポリスチレン換算のGPCにて測定した。また、基(h)及びフッ化アルキル基の含有率(モル分率)はNMRにより決定した。
【0074】
(アクリル共重合体(H)の合成)
(合成例1 モノアクリレートA−1の合成)
22gの1−ナフトール(0.2モル)、30gの炭酸カリウム、0.8gのヨウ化カリウムをN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)50mLに溶解し、窒素雰囲気下、攪拌しながら、6−クロロ−1−ヘキサノール28g(0.2モル)を滴下した。混合物を100℃に加熱し反応させた。5時間後、ガスクロマトグラフィーで原料由来のピークが消失したのを確認した後、析出した固体を濾別し、DMFを減圧下で留去し、オイル状の粗製物を得た。得られた粗製物を再結晶(エタノール)により精製し、淡黄色固体の1−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ナフタレンを得た。(収率65%)
【0075】
合成した1−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ナフタレン24g(0.2モル)、1,5−ジクロロ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリスタノキサン1g、4−メトキシフェノール0.5gを250mLのエチルアクリレート中で105℃に加熱撹拌した。反応により生成するエタノールをエチルアクリレートとの混合物として留去しながら加熱を続け、20時間後、ガスクロマトグラフィーで原料由来のピークが消失したのを確認した後、エチルアクリレートを減圧下で留去し、得られた残査を再結晶(エタノール)により精製し、白色固体の、モノアクリレートである、6−(1−ナフチルオキシ)ヘキシル アクリレート(A‐1)を得た。(収率48%)
【0076】
【化4】

(A−1)
【0077】
(合成例2 モノアクリレートA−2の合成)
合成例1において、1−ナフトールの代わりに2−ナフトールを使用した他は合成例1と同様にして、モノアクリレートである、6−(2−ナフチルオキシ)ヘキシル アクリレート(A‐2)を、22g得た。
【0078】
【化5】

(A−2)
【0079】
(合成例1 アクリル共重合体(H−1)の合成)
ガラス製重合管に,化合物(A−1)1gと、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレート0.5g、及び2,2’アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.03gを秤取し,トルエン2.2gを加えて溶解させた。この溶液に窒素気流を通じて酸素を取り除いた後,75℃で7時間反応させた。反応終了後、20mLのテトラヒドロフランで希釈した反応液を200mlのメタノール中に滴下し、ポリマーを沈降させた。デカンテーションにて溶媒を除き、残ったオイル状のポリマーを再度、同様の処理をして精製、乾燥後、Mw43,000の、1−ヘキシルオキシナフチル基及び1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル基を有するアクリル共重合体(H−1)0.7gを得た。((1−ヘキシルオキシナフチル基)のモル分率:78モル%,フッ素基含有率:20重量%)
【0080】
(合成例2 アクリル共重合体(H−2)の合成)
合成例1において、化合物(A−1)の代わりに化合物(A−2)を使用した他は合成例1と同様にして、Mw32,000の、2−ヘキシルオキシナフチル基及び1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル基を有するアクリル共重合体(H−2)0.7gを得た。((2−ヘキシルオキシナフチル基)のモル分率:79モル%,フッ素基含有率:22重量%)
【0081】
(比較合成例 メタクリル重合体(H−3)及びアクリル共重合体(H−4)の合成)
合成例1において、モノマーをメチルメタクリレートのみにした他は合成例1と同様にして、Mw29,600のメタクリル重合体(H−3)を得た。また、アクリル共重合体(H−1)をGPCにより分取し、分子量が7,000の比較用アクリル共重合体(H−4)を得た。
【0082】
(比較例用の添加剤)
比較例用の添加剤として、式Mで表される構造のフッ素系化合物を使用した。(添加剤(M)中のフッ素含有量は50質量%,分子量は644である)
【0083】
【化6】

(M)
【0084】
(重合性液晶組成物LC−1の調製)
式(a)〜(e)で表される化合物を(a):(b):(c):(d):(e)の配合比率が、質量比にして33:22:22:18:5となるよう使用し、重合性液晶組成物LC−1を調製した。
【0085】
【化7】

【0086】
(光学異方体用基板の作成)
下記式(S)で表されるアゾ化合物0.5gを、N−メチルピロリドン25gに加熱溶解し、この溶液にブチルセロソルブ(2−ブトキシエタノール)25gを加えた。これをポリフッ化ビニリデン製の孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過した。超音波洗浄を行った厚さ1mm、サイズが76mm×52mmの光学ガラス製ガラス板に前記アゾ化合物(S)溶液をスピンコートし(500回転/分で5秒後、2500回転/分で20秒)、100℃のホットプレート上で1分乾燥させた。その後室温で該光学ガラス板の真上から366nmの偏光紫外線照射(紫外線強度は200W/m、照射時間は100秒)を行った。
【0087】
【化8】

【0088】
(リタデーション値)
リタデーションは中央精機(株)製「液晶特性評価装置(OMS−DI4RD)」を用いて測定した。
【0089】
(重合性液晶組成物に(メタ)アクリル共重合体(H)を20%添加したときの、液体−液晶転移温度測定方法)
重合性液晶組成物LC−1に、前記方法により合成した(メタ)アクリル共重合体(H)を20質量%添加し、液体−液晶転移温度を測定した。測定は、PERKIN-ELMER社製DSC7を用いて、サンプルを一度液体状態まで加温し、10℃/minで降温しながら行った。
【0090】
(実施例1)
アクリル共重合体(H−1)を1部、重合性液晶組成物LC−1を100部、チバスペシャリティケミカルズ(株)製の光重合開始剤「イルガキュア907」4部、キシレン100部を混合し、塗工用の組成物とした。この組成物をスピンコーターを用いて前記配向膜付きの光学異方体用基板上にスピンコートし(500回転/分で5秒後、2500回転/分で20秒)、重合性液晶組成物層を作成した。スピンコート後、40℃にて1分間加熱した後の重合性液晶組成物層を偏光顕微鏡にて観察したところ、ディスクリネーションはまったく観察されず、良好な配向であった。この後、窒素雰囲気下で1分保った後、窒素雰囲気下で紫外線照射(紫外線強度:34W/m、照射時間:120秒)することで、ディスクリネーションのない、きれいな光学異方体を得た。得られた光学異方体の垂直方向から測定したリタデーション値は183nmと大きい値を示し、光学的異方性の大きい光学異方体であることが確認できた。また、配向規制軸に沿って垂直方向から傾くに従いリタデーション値は小さくなり垂直方向からみた場合のリタデーション値が最大値であったことから液晶分子は略水平配向していることがわかった。また、LC−1にアクリル共重合体(H−1)を20%添加したときの液体−液晶転移温度は0.6℃低下した。
【0091】
(実施例2)
アクリル共重合体(H−1)を、アクリル共重合体(H−2)に変更した他は実施例1と同様にして重合性液晶組成物層を作成した。スピンコート後、40℃にて1分間加熱した後の重合性液晶組成物層を偏光顕微鏡にて観察したところ、ディスクリネーションはまったく観察されず、良好な配向であった。この後、実施例1と同様にして光重合を行い、ディスクリネーションのない、きれいな光学異方体を得た。得られた光学異方体の配向規制軸に沿って垂直方向から50度傾けた方向からのリタデーション値は180nmであり、逆方向に50度傾けた方向からのリタデーション値は155nmと小さくなっていたので液晶分子の配向はハイブリッドであることがわかった。また、LC−1にアクリル共重合体(H−2)を20%添加したときの液体−液晶転移温度は0.7℃低下した。
【0092】
(比較例1)
アクリル共重合体を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして重合性液晶組成物層を作成した。重合性液晶組成物層を偏光顕微鏡にて観察したところ、多数のディスクリネーションが観察され配向性は悪かった。この後、実施例1と同様にして光重合を行ったところ、得られた光学異方体にも多数のディスクリネーションが観察され、配向性は悪かった。
【0093】
(比較例2)
アクリル共重合体(H−1)を、メタクリル重合体(H−3)に変更した他は実施例1と同様にして重合性液晶組成物層を作成した。重合性液晶組成物層を偏光顕微鏡にて観察したところ、多数のディスクリネーションが観察され配向性は悪かった。この後、実施例1と同様にして光重合を行ったところ、得られた光学異方体にも多数のディスクリネーションが観察され、配向性は悪かった。
【0094】
(比較例3)
アクリル共重合体(H−1)を、メタクリル重合体(H−4)に変更した他は実施例1と同様にして重合性液晶組成物層を作成した。重合性液晶組成物層を偏光顕微鏡にて観察したところ、多数のディスクリネーションが観察され配向性は悪かった。この後、実施例1と同様にして光重合を行ったところ、得られた光学異方体にも多数のディスクリネーションが観察され、配向性は悪かった。
【0095】
(比較例4)
アクリル共重合体(H−1)のかわりに、添加剤Mを、重合性液晶組成物LC−1に対するフッ素基量が実施例1と同じとなるように、重合性液晶組成物LC−1 100部に対して、0.4部加えた以外は、実施例1と同様にして光学異方体を作製した。重合性液晶組成物層を偏光顕微鏡にて観察したところ、多数のディスクリネーションが観察され配向性は悪かった。この後、実施例1と同様にして光重合を行ったところ、得られた光学異方体にも多数のディスクリネーションが観察され、配向性は悪かった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性基を有する液晶化合物を含有する重合性液晶組成物において、
1)フッ素基を有する側鎖と、ナフタレン環、インデン環、ペンタレン環、アズレン環、及びヘプタレン環から選ばれる縮合環(但し、該縮合環を構成する1つ以上の炭素原子はNまたはカルボニル基で置き換えられていてもよく、また、互いに隣接しない1つ以上の炭素原子は、S又はOで置き換えられていてもよく、縮合環の一部あるいは全部が水添されていてもよい。また置換基を有していてもよい。)を1つ有する側鎖を有し、
2)フッ素基含有率が3〜40質量%であり
3)前記縮合環を有する側鎖の全側鎖に対する割合が9〜95モル%であり、
4)質量平均分子量が10000〜100000である
(メタ)アクリル共重合体(H)を
0.1〜6.0質量%含有することを特徴とする重合性液晶組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル共重合体(H)が、一般式(1)で表される化合物と、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1〜18のフッ化アルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートとを必須原料とする(メタ)アクリル共重合体である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【化1】

(1)
(式中、Xは水素原子又はメチル基を表わし、Rは、単結合、あるいは炭素原子数1〜18のアルキレン基(但し、該基中に存在し、−COO−と直接結合しない1個又は2個以上のメチレン基は、場合によりそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、−O−で置き換えられていても良い)を表す。Aは、ナフタレン環、インデン環、ペンタレン環、アズレン環、及びヘプタレン環から選ばれる縮合環(但し、該縮合環を構成する1つ以上の炭素原子はNまたはカルボニル基で置き換えられていてもよく、また、互いに隣接しない1つ以上の炭素原子は、S又はOで置き換えられていてもよく、縮合環の一部あるいは全部が水添されていてもよい。また置換基を有していてもよい。)を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)において、Aが、フッ素基、シアノ基、トリフルオロアルキル基、炭素原子数1〜12の分岐又は直鎖アルキル基、炭素原子数1〜12の分岐あるいは直鎖アルキルオキシ基、炭素原子数1〜12のアルカノイル基、炭素原子数1〜12のアルカノイルオキシ基、又は炭素原子数1〜12のアルキルオキシカルボニル基を置換基として有していても良いナフタレン環(但しナフタレン環を構成する1つ以上の炭素原子はNまたはカルボニル基で置き換えられていてもよく、また、互いに隣接しない1つ以上の炭素原子は、S又はOで置き換えられていてもよい。)である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
前記重合性基を有する液晶化合物が、ネマチック液晶相を示す重合性液晶化合物である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
前記重合性基を有する液晶化合物が、前記(メタ)アクリル共重合体(H)を20質量%添加することによって、その液体―液晶転移温度が0.1℃〜10℃の範囲で低下するような重合性液晶化合物である、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の重合性液晶組成物を、配向機能を有する基板上に塗布し、配向させた状態で重合させて得られることを特徴とする光学異方体。
【請求項7】
前記配向機能を有する基板が、略水平配向機能を有する基板である、請求項6に記載の光学異方体。
【請求項8】
パターン状に配向方向の異なる領域が分布している配向機能を有する請求項6に記載の光学異方体。
【請求項9】
前記配向機能を有する基板が光配向膜を有する基板である請求項6に記載の光学異方体。
【請求項10】
請求項1に記載の重合性液晶組成物を、パターン状に配向方向の異なる領域が分布している略水平配向機能を有する基板に塗布し、配向させた状態で重合させて得られることを特徴とする位相差膜。




【公開番号】特開2007−138099(P2007−138099A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336936(P2005−336936)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】