説明

重合性組成物及びその重合物

【課題】高耐熱性、高屈折率が期待されるアントラセン骨格を有する重合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される化合物を重合して得られる重合物。


{式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し 、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシメチル基、アリールオキシメ チル基又はアリルオキシメチル基のいずれかを示し、X、Yは同一であっても異なって いてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。また、アントラセン環上の置換基Xは、5〜8位のうちいずれかの位置を占め、同じくYは、1〜4位のうちいずれかの位置を占める。}

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物をラジカル重合開始剤の存在下に重合して得られる重合物並びに当該アントラセン化合物及びラジカル重合開始剤を含有する重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族骨格を有するアクリレート化合物の重合物は脂環式アクリレートの重合物に比較し、耐熱性に富み、かつ屈折率が高い等の優れた物性を示すことが知られており、芳香族として例えばフェニル基を有するフェノキシエチルアクリレート化合物についていくつかの例が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
一方、ベンゼン骨格よりさらに高い耐熱性、高屈折率が期待されるナフタレン骨格、アントラセン骨格を有するアクリレート化合物については報告例が少なく、特にアントラセン化合物については、ビニルアントラセンとアクリル酸エステルの共重合体が知られているのみである。(特許文献3、4、5参照)
【特許文献1】特表2002−511012
【特許文献2】特表2002−511598
【特許文献3】特開平06−230224
【特許文献4】特開2006−350290
【特許文献5】特許02507889
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の解決しようとする課題は、高い耐熱性、高屈折率が期待されるアントラセン骨格を有する重合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため、アクリル基を有するアントラセン化合物の構造と重合性について鋭意検討した結果、下記式(1)に示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物がラジカル重合開始剤存在下に容易に重合することを見いだし、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、以下に記載の骨子を要旨とするものである。
【0007】
本発明の第1の要旨は、下記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物をラジカル重合開始剤の存在下に重合して得られる重合物に存する。
【0008】
【化1】

【0009】
{式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し 、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシメチル基、アリールオキシメ チル基又はアリルオキシメチル基のいずれかを示し、X、Yは同一であっても異なって いてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す 。また、アントラセン環上の置換基Xは、5〜8位のうちいずれかの位置を占め、同じ くYは、1〜4位のうちいずれかの位置を占める。}
【0010】
本発明の第2の要旨は、上記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物及び他のラジカル重合性モノマーをラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られる重合物に存する。
【0011】
本発明の第3の要旨は、上記のラジカル重合開始剤が、熱ラジカル重合開始剤であることを特徴とする上記第1又は第2の要旨に記載の重合物に存する。
【0012】
本発明の第4の要旨は、上記のラジカル重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする上記第1又は第2の要旨に記載の重合物に存する。
【0013】
本発明の第5の要旨は、上記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物及びラジカル重合開始剤を含有してなる重合性組成物に存する。
【0014】
本発明の第6の要旨は、上記の重合性組成物において、更に他のラジカル重合性モノマーを含有してなる重合性組成物に存する。
【0015】
本発明の第7の要旨は、上記の第5又は第6の要旨に記載の重合性組成物を重合してなる重合物に存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、ラジカル重合開始剤の存在下に容易に重合し、かつ、重合して得られる重合物は高い屈折率をしめす。このようにして得られた(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアントラセン化合物を重合して得られる重合物からなるフィルム、シートもしくは塊状物は高屈折率を示し、また、その構造から、紫外線吸収性、高硬度、高光沢率、高い疎水性等が期待できる工業的に有用な組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の重合物は、上記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物をラジカル重合開始剤の存在下に重合して得られる重合物である。
【0018】
上記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物において、nは1〜10の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はアルコキシメチル基のいずれかを示し、X、Yは同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す。なお、R1としては、好ましくはメチル基であり、nとしては、好ましくは1〜3の整数であり、更に好ましくは1である。
【0019】
上記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物としては、次のものを挙げることが出来る。
【0020】
すなわち、9,10−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−エチルアクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン等が挙げらる。
【0021】
さらに、9,10−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−アクリロイルオキシブトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシブトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−(2−アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−(2−アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−(2−アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−(2−アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−(2−エチルアクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0022】
そのほか、9,10−ジ(2−(2−(2−アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン、9,10−ジ(2−(2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−(2−(2−アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン、2−メチル−9,10−ジ(2−(2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−(2−(2−アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン、2−メトキシ−9,10−ジ(2−(2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−(2−(2−アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−(2−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン、2−クロロ−9,10−ジ(2−(2−(2−エチルアクリロイルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)アントラセン等が挙げられる。
【0023】
9,10−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の中では、9,10−ビス(メタクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物が好ましく、特に9,10−ビス(メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンが好ましい。
【0024】
代表的化合物としては、以下の構造のものが挙げられる。
【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
本発明の9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物を塩基性化合物の存在下、酸化アルキレンと反応させて構造式(4)で表される9,10−ジ(ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物となす第一反応と、第一反応で得られた9,10−ジ(ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物をさらに、塩基性化合物の存在下、塩化アクリロイルもしくは塩化メタクリロイルと反応させる第二反応より得ることが出来る。{下記反応式中、各R1、R2、X、Y及びnは、上記式(1)における各R1、R2、X、Y及びnと同じ意味である}
【0028】
【化4】

【0029】
第一反応において原料となる9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物としては、9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−メトキシ−9,10−ジヒドロキシアントラセン、2−クロロ−9,10−ジメトキシアントラセン等が挙げられる。酸化アルキレンとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン等が挙げられる。酸化アルキレンは9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物に対して、2モル倍から20モル倍添加する。2モル倍未満では、未反応の9,10−ジヒドロキシアントラセン化合物が残留し好ましくない。また、酸化アルキレンの添加量を2モル倍以上とした場合、例えば、5モル倍を越えて添加した場合は、第一反応で得られる9,10−ジ(ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物において、nが2以上の化合物が生成してくる。主に生成してくる化合物は、n=1のものに加えて、n=2〜3の化合物である。更に、添加量を増やすことによってnの範囲が広がるので、目的とするnの範囲に応じて酸化アルキレンの添加量を上記範囲より適宜選択する。
【0030】
塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。塩基性化合物の添加量はヒドロキシアルコキシアントラセン化合物に対して2倍モルから3倍モルが望ましい。反応は通常溶媒の存在下行われる。使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール、ジメトキシエタノール、等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジクロルメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が用いられる。
【0031】
反応温度は、0℃以上、80℃以下が望ましい。0℃未満では反応が遅く、80℃を超える温度では副反応による副生物が増加するため好ましくない。反応時間は反応温度によるが、通常0.5時間から2時間である。反応の進行に伴い、n=1の9,10−ジ(ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物は溶媒に不溶となり、沈澱してくる。一方、n=2以上の生成物は、溶媒に溶けたままであり、沈殿物を吸引濾過することにより,n=1の反応生成物を単離することが出来る。一方、n=2以上の生成物については、反応混合物を濾過して得られる、n=1の生成物を除いた濾液を濃縮することにより得ることが出来る。必要ならば、可溶性溶媒である例えばトルエンに溶解し,貧溶媒である、例えば,n−ヘキサンを加え再結晶して精製することが可能である
このようにして、第一反応で得られた9,10−ジ(ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物を塩化アクリロイルまたは塩化メタアクリロイルと塩基性化合物の存在下反応させる第二反応により9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物となす事が出来る。塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピリジン等の有機アミン化合物が挙げられる。
【0032】
反応は通常溶媒の存在下行われる。使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、ジクロルメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が用いられる。
【0033】
塩化アクリロイルもしくは塩化メタアクリロイルは9,10−(ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物に対して、2モル倍から3モル倍添加する。塩基性化合物の添加量は9,10−ジ(ヒドロキシアルコキシ)アントラセン化合物に対して2モル倍から3モル倍が望ましい。2モル倍未満では、未反応のヒドロキシアルコキシアントラセン化合物が残留し、3モル倍を超える場合では、生成物の単離収率が下がり好ましくない。反応温度は、0℃以上,80℃以下が望ましい。0℃未満では反応が遅く、80℃を超える条件では副反応による副生物が増えるため好ましくない。通常、室温で問題なく反応は進行する。反応の進行に伴い、塩基性化合物の塩酸塩が析出する。水溶性ケトンまたは水溶性エーテルを溶媒として用いる場合は、析出した塩基性化合物の塩酸塩を水を加えて溶解させ、ついでさらに水を加えることにより生成物が析出させる。析出物をろ過・乾燥し、相当する9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物を得ることが出来る。また、反応溶媒として水不溶性の溶媒を用いる場合は、反応終了後水を加えて塩基性化合物の塩酸塩を溶かして2層となし、分液操作により水層を分離する。次いで有機層を濃縮し、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の貧溶媒を加えて、生成物を析出させる。
【0034】
かくして得られた9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物(以下、単にアントラセン誘導体と略す場合がある)は、熱分解型、レドックス分解型、光分解型等のラジカル重合開始剤の存在下或いは不存在下に、熱エネルギーの他、紫外線、電子線、マイクロ波等の活性エネルギー線や機械的エネルギーを与えて重合させることができる。なお、ラジカル重合開始剤の存在下に重合させるのが速やかに重合するため好ましい。これら重合開始については文献等で公知である。(たとえば、大津隆行「改訂高分子合成の化学」(株式会社化学同人1979))本発明アントラセン誘導体の重合に好適なラジカル重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0035】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物等のどちらでも使用可能である。有機過酸化物としては、例えばt− ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t− ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチル パーオキシ−3.5.5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート類等のパーオキシ エステル類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5− トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、 ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド 類等を挙げることができる。またアゾ系化合物の開始剤 としては、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリルや、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス (シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾニトリル類を挙げることができる。
【0036】
熱ラジカル重合開始剤の添加濃度は、アントラセン誘導体および必要に応じて併用されるラジカル重合性モノマーの合計重量に対して 0.1〜10重量%の範囲から選ばれ、好ましくは 1〜3重量%である。0.1重量%より少ないと硬化速度が遅く、10重量%より多いと重合物の物性が悪化するので好ましくない。
【0037】
熱ラジカル重合開始剤の存在下に行われる熱ラジカル重合は、通常溶媒の存在下で行われるが、加熱し溶融状態で重合させることも可能である。溶媒を用いる場合は、溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、t−ブチルベンゼン、クロロベンゼン、クロロナフタレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、シクロヘキサノン、メイルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が用いられる。重合温度は、通常50℃から150℃の間で行われる。50℃以下では、重合が遅すぎて好ましくなく、また150℃以上では重合物が着色して好ましくない。より好ましくは、80℃から120℃の範囲である。溶媒を用いた場合は、重合の進行に伴い、重合物が不溶性となり沈澱して来る。この沈殿物を、濾過・乾燥し、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物が重合した重合物を得ることが出来る。得られた重合物は、原料モノマーの9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の融点以上に加熱しても融解せず、また、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の良溶媒であるトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン等にも全く溶解せず、重合物であることが確認された。
【0038】
また、溶融して重合させる場合は、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の融点以上に加熱して溶融させた後、所定量の熱ラジカル重合開始剤を添加し、窒素雰囲気下加熱を続ける。時間の進行に伴い、溶融物は硬化・重合してくる。加熱時間は通常数分から数十分である。
【0039】
このようにして得られる重合物は、原料モノマーの9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の融点以上に加熱しても融解せず、また、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の良溶媒であるトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン等にも全く溶解せず、重合物であることが確認された。
【0040】
また、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は
活性エネルギー線を照射することにより重合させることも出来る。使用可能な活性エネルギー線としては可視光、UV光、電子線等が挙げられる。まず、可視光、UV光による重合について説明する。
【0041】
9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、光ラジカル重合開始剤の存在下、光照射することにより重合させることが出来る。光重合開始剤としては、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好適に用いることが出来る。例としては、チバ・スペシャリティ社製の商品名DAROCUR TPOで知られるトリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、商品名IRGACURE819で知られるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド挙げられる。さらには、チバ・スペシャリティ社製の商品名IRGACURE784で知られるビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムも有効である。さらにまた、ナフタセンキノン化合物である6,12−(ビス)トリメチルシリルオキシ−1,11−ナフタセンキノン化合物も使用可能である。これらの光ラジカル重合開始剤のうち、好ましくは、商品名IRGACURE784で知られるビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)である。
【0042】
光ラジカル重合において用いる、光ラジカル重合開始剤の添加濃度は、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物および必要に応じて併用されるラジカル重合性モノマーの合計重量に対して0.1〜5重量%の範囲から選ばれ、好ましくは0.3〜1重量%である。0.1重量%より少ないと硬化速度が遅く、5重量%より多いと重合物の物性が悪化するので好ましくない。本発明の9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物は、使用する光ラジカル重合開始剤の吸収波長に相当する波長の光を含む光線を照射することで容易に硬化させることができる。好ましい波長範囲は、380〜500nmである。照射光の波長範囲がこの範囲を外れると、充分な硬化ができず好ましくない。具体的には、この波長範囲の光線を照射できるランプ等の光源を用いて硬化させることができる。具体的には、UV−LED,青色LED,白色LED等の光源が挙げられる。そのほか、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ等の光源も使用可能であるが、光硬化における操作性の向上や硬化物の特性改善のため吸収フィルター等で波長範囲を調整してもよい。太陽光の使用も可能である。
【0043】
光ラジカル重合の具体的な態様としては、溶媒を使用した溶液状態での重合、溶媒を使用しない塊状態での重合共に可能である。前者の溶媒を使用した溶液状態の重合で使用可能な溶媒としては、重合禁止効果を持たなければ特に種類を選ばない。なかでも、トルエン、キシレン、t−ブチルベンゼン、クロロベンゼン、クロロナフタレン等の芳香族系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒が好適に用いられる。溶液状態での重合方法においては、光照射に伴い、重合物が不溶解性となり沈澱してくる。このものを濾別・乾燥し、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の重合物を得ることが出来る。このようにして得られる重合物は、原料モノマーの9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の融点以上に加熱しても融解せず、また、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の良溶媒であるトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン等にも全く溶解せず、重合物であることが確認された。
【0044】
また、溶媒を使用しない光重合の場合は、目的とする形状に応じた塊のまま重合させる場合と、フィルム状にして硬化・重合させる場合とがある。塊のまま光ラジカル重合させる場合は、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の融点以上に加熱して溶融させるか、もしくは9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物に他のラジカル重合性モノマーを加えて得られる混合物を加熱共融させ、そこに所定の光ラジカル開始剤を添加・溶解させ、溶融状態のまま光照射する。
【0045】
光照射に使用する光源は、溶液状態で用いた光源と同じである。光照射するにつれ、溶融物或いは固化物が硬化・重合してくる。光照射時間は、通常数分から10分の間である。重合物は原料モノマーの9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の融点以上に加熱しても融解せず、また、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の良溶媒であるトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン等にも全く溶解せず、重合物であることが確認された。
【0046】
次に、溶媒を使用しない光重合において、フィルム状で重合させる場合は、次のように行う。フィルムの作成は,たとえば上記のように調整した9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物と光ラジカル開始剤を含む組成物を、ポリエステルフィルム、アルミ箔、金属板等の基板上にバーコーターを用いて塗布し,膜厚200μm程度の塗膜を作ることにより行う。同様にして、厚さ1mmから10mm程度の厚みのシート状の組成物の硬化が可能である。塗布物に上記記述したランプを用いて光照射することにより、重合したフィルムやシートを得ることが出来る。得られたフィルムやシートは、原料モノマーの9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の融点以上に加熱しても融解せず、また、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の良溶媒であるトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン等にも全く溶解せず、重合物であることが確認された。また、屈折率を測定した結果、モノマーの屈折率より高い屈折率が得られており、フィルムやシートが重合していることが示された。
【0047】
これらの光重合において文献等公知の技術を用いることも可能である。(たとえば、ラドテック研究会「UV・EB硬化技術の最新動向」(株式会社シーエムシー出版、2006))活性エネルギー線のうち電子線の照射による重合も可能である。その場合、ラジカル重合開始剤を用いなくても重合させることができ、例えば、フィルム状態での電子線硬化を行う場合は、加速電圧150kV,K値99で2分間の電子線照射で硬化・重合したフィルムを得ることが出来る。得られたフィルムは、原料モノマーの9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の融点以上に加熱しても融解せず、また、9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物の良溶媒であるトルエン、アセトン、テトラヒドロフラン等にも全く溶解せず、重合物であることが確認された。また、屈折率を測定した結果、モノマーの屈折率より高い屈折率が得られており、フィルムが重合していることが示された。
【0048】
本発明の重合において、上記のアントラセン誘導体、すなわち(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアントラセン化合物を単独モノマーとして用いるだけでなく、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアントラセン化合物以外の他のラジカル重合性モノマーを加えて共重合性の重合物とすることも出来る。他のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレートさらには、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの他のラジカル重合性モノマーを用いる場合、(メタ)アクリロイルオキシアントラセン化合物との相溶性にもよるが、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアントラセン化合物10重量部に対し、他のラジカル重合性モノマーを0.1から90重量部の範囲で用いるのが好ましい。他のラジカル重合性モノマーを90重量部を越えて用いると重合物の耐熱性や屈折率などの性能が低くなるので好ましくない。
【0049】
また、これらの重合操作の前にラジカル重合開始剤以外の添加剤を加えることも可能である。添加剤としては、重合物の変質、劣化等を防止するために、重合禁止剤、酸化防止剤、光(紫外線)吸収剤、光安定剤、老化防止剤、防火微剤等、美観、意匠を向上させるための顔料、染料、光沢材等、加工性を向上させるための可塑剤、スリップ剤、離型剤、ゲル化剤等、その他の機能を付与させるために難燃剤、帯電防止剤、抗菌剤、防臭剤、香料等挙げられる。
【0050】
以上、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアントラセン化合物をラジカル重合開始剤の存在下あるいは不存在下に重合させて得られる重合物について説明したが、上記説明からわかるように、本発明の(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアントラセン化合物とラジカル重合開始剤を含有してなる重合性組成物とすることも有用である。当該重合性組成物を上述のような方法により重合させることで重合物を得ることができる。すなわち、予め調製した重合性組成物とすることにより、この重合性組成物を任意の形状に加工した後、熱エネルギーや活性エネルギー線の照射により、目的とする形状の重合物を得ることができる。さらに、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアントラセン化合物以外の他のラジカル重合性モノマーを更に含有する重合性組成物とすることも有用であり、この場合には、共重合性の重合物を得ることができる。
【0051】
本発明の重合物の用途としては、レンズ、回折格子、フィルター、反射材等の光機能材料、封止剤、レジスト、絶縁材料、コンデンサー材料等のエレクトロニクス材料、キャパシター、太陽電池等のエネルギー関連材料、イオン交換樹脂等の分離機能材料、歯科材料等のバイオ、医療機能材料、高強度材料、接着剤等の航空、自動車材料、その他、塗料、粘着剤挙げられ、文献等で広く紹介されている。(たとえば、高分子材料・技術総覧編集委員会「高分子材料・技術総覧」(株式会社産業技術サービスセンター、2004)、光応用技術・材料事典編集委員会「光応用技術・材料事典」(株式会社産業技術サービスセンター、2006)。光学材料の分野において、レンズは高屈折率ほど薄くでき、レジスト材料は屈折率高いほど解像度が良いため、高屈折率が求められる傾向にある。ここで高屈折率とは常温でのD線の屈折率が1.55以上のものを示す。
【0052】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0053】
<9,10−ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセンの熱重合>
温度計、攪拌機つきの200ml三つ口フラスコに、窒素雰囲気下、9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセン2.0g(4.6ミリモル)を仕込み、ついでトルエン40g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを40mg添加した。内温を106℃に保ち加熱したところ、5分後大量に黄色い沈殿が生じた。さらに10分間加熱し、冷却して黄色のスラリーをえた。メタノール150mlを投入し、十分攪拌し、吸引ろ過、乾燥し、1.8gの黄色の粉末状の重合物を得た。単離収率は90モル%であった。このものを、原料9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセンの融点105℃以上に加熱したが全く融解せず、かつ、9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アントラセンの良溶媒である、トルエン、ジクロルメタン、ジメチルホルムアミドにも全く溶解せず、重合していることが確認された。
【実施例2】
【0054】
<9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンの熱重合>
温度計、攪拌機つきの200ml三つ口フラスコに、窒素雰囲気下、9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン2g(4.3ミリモル)を仕込み、ついでトルエン30g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを40mg添加した。内温を106℃に保ち加熱したところ、5分後大量に黄色の沈殿が生じた。さらに10分間加熱し、冷却して黄色のスラリーをえた。メタノール150mlを投入し、十分攪拌し、吸引ろ過、乾燥し、1.9gの黄色い粉末状の重合物を得た。単離収率は95モル%であった。このものを、原料9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンの融点である121℃以上に加熱したが全く融解せず、かつ9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンの良溶媒である、トルエン、ジクロルメタン、ジメチルホルムアミドにも全く溶解せず、重合していることが確認された。
【実施例3】
【0055】
<1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンの光重合>
モノマーとして9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン100重量部に、開始剤としてビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバ・スペシャリティー社製、商品名:イルガキュア784)を1重量部を加え、均一な重合性組成物とした。この重合性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100μm)表面に、膜厚300μmになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、青色LED(Luxeon社製、中心波長460nm、3W)を照射した。1分光照射後、9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンが重合した平滑なフィルムが得られた。
【0056】
このものを、ホットプレート上で、原料9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンの融点である121℃以上に加熱したが、全く融解しなかった。また、得られたフィルムのIRスペクトルを測定したところ、メタクリル基に起因する1620cm-1の吸収が消失していることが確認された。さらに、このフィルムの屈折率を測定したところ、1.611(nD)であり、モノマーの屈折率の1.593(nD)より高くなっており、重合していることが確認された。
【実施例4】
【0057】
<1,4−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンとトリシクロデカンジメタノールジアクリレートとの光共重合>
モノマーとして9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセン50重量部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート50重量部に、開始剤としてビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバ・スペシャリティー社製、商品名:イルガキュア784)を1重量部を加え、均一な重合性組成物とした。この重合性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100μm)表面に、膜厚300μmになるように塗布した。
ついで、窒素雰囲気下、青色LED(Luxeon社製、中心波長460nm、3W)を照射した。1分光照射後、平滑なフィルムが得られた。
【0058】
このものを、ホットプレート上で、原料9,10−ジ(2−メタクリロイルオキシプロポキシ)アントラセンの融点である121℃以上に加熱したが、全く融解しなかった。また、このフィルムの屈折率を測定したところ、1.563(nD)であり、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートのポリマーの屈折率1.536(nD)より高くなっており、共重合していることが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物をラジカル重合開始剤の存在下に重合して得られる重合物。
【化1】

{式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し 、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシメチル基、アリールオキシメ チル基又はアリルオキシメチル基のいずれかを示し、X、Yは同一であっても異なって いてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す 。また、アントラセン環上の置換基Xは、5〜8位のうちいずれかの位置を占め、同じ くYは、1〜4位のうちいずれかの位置を占める。}
【請求項2】
下記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物及び他のラジカル重合性モノマーをラジカル重合開始剤の存在下に共重合して得られる重合物。
【化2】

{式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し 、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシメチル基、アリールオキシメ チル基又はアリルオキシメチル基のいずれかを示し、X、Yは同一であっても異なって いてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す 。また、アントラセン環上の置換基Xは、5〜8位のうちいずれかの位置を占め、同じ くYは、1〜4位のうちいずれかの位置を占める。}
【請求項3】
ラジカル重合開始剤が、熱ラジカル重合開始剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合物。
【請求項4】
ラジカル重合開始剤が、光ラジカル重合開始剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の重合物。
【請求項5】
下記式(1)で示される9,10−ジ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)アントラセン化合物及びラジカル重合開始剤を含有してなる重合性組成物。
【化3】

{式(1)において、nは1〜10の整数を表し、R1は水素原子又はメチル基を表し 、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシメチル基、アリールオキシメ チル基又はアリルオキシメチル基のいずれかを示し、X、Yは同一であっても異なって いてもよく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表す 。また、アントラセン環上の置換基Xは、5〜8位のうちいずれかの位置を占め、同じ くYは、1〜4位のうちいずれかの位置を占める。}
【請求項6】
請求項5に記載の重合性組成物において、更に他のラジカル重合性モノマーを含有してなる重合性組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の重合性組成物を重合してなる重合物。

【公開番号】特開2009−40811(P2009−40811A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204402(P2007−204402)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000199795)川崎化成工業株式会社 (133)
【Fターム(参考)】