説明

重質油水素化分解触媒及びそれを用いた重質油の水素化処理方法

【課題】重質油に対する分解活性と脱硫活性とを両立させ、両機能共に優れる水素化分解触媒を提供すること。
【解決手段】結晶性アルミノシリケートと該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物とを含む担体に活性金属を担持した重質油水素化分解触媒であって、
(a)前記担体が、結晶性アルミノシリケートと該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物の合計量基準で、結晶性アルミノシリケート45質量%以上60質量%未満と該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物40質量%超55質量%以下を含み、(b)前記活性金属が、周期表第6族、第8族、第9族、第10族金属のうち少なくとも一種の金属であり、かつ、(c)前記重質油水素化分解触媒の細孔分布が、細孔径50〜10,000Åの細孔で定義される総細孔容積が0.40cc/g以上、細孔径が100Å以上200Å未満である中間メソ細孔容積の総細孔容積に占める割合が60%以上である、重質油水素化分解触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重質油水素化分解触媒に関し、詳しくは、優れた脱硫活性と分解活性を有する重質油水素化分解触媒及びそれを用いた重質油の水素化処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原油の常圧蒸留残渣油(AR)は、重油直接脱硫装置(以下、「直脱装置」と称する)にて水素化脱硫され、脱硫ナフサ、脱硫灯油、脱硫軽油などの留出油と脱硫重油を生成する。この脱硫重油は、低硫黄C重油として電力用のボイラー燃料などに用いられている。同時に脱硫重油は、流動接触分解(FCC)装置の原料としても使用され、接触分解ガソリン(以下、「FCCガソリン」と称する)、接触分解軽油(以下、「LCO」:ライトサイクルオイルと称する)、LPG留分等の軽質留分が生産されている。
近年、石油精製において使用できる原油は重質化し、重質油を多量に含む原油が多くなる傾向にある。しかも、発電、ボイラー用の重油の需要が減少するなど重質油の利用量は減少しつつある。また、流動接触分解装置からのLCO留分の需要も減少しつつある。
一方、ガソリン需要は拡大し、また、プロピレン、ブテン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのBTX等の多数の石油化学製品の原料として使用されるLPG留分やナフサ留分の需要も増大してきている。したがって、常圧蒸留残渣油などの重質油からガソリンやナフサ留分、LPG留分などの軽質留分を多量に製造する技術開発が重要な課題となっている。
【0003】
このような状況から、重質油を直脱装置、間脱装置などの水素化脱硫装置にて水素化脱硫処理して得られる脱硫重油、脱硫重質軽油などをさらに分解して、脱硫ナフサ、脱硫灯油、脱硫軽油等を増産する水素化分解法の開発が進められている。また、流動接触分解装置にて前記脱硫重油、脱硫重質軽油を高い分解率で接触分解することにより、LPG留分、FCCガソリン留分、LCO留分などの軽質留分へ転換する方法についての研究・開発が行われている。そして、ここでは、通常、重質油水素化分解触媒として、結晶性アルミノシリケートからなる担体に活性金属を担持した触媒が使用されている。
しかしながら、このような触媒を用いると、分解活性は高いものの、脱硫活性が不充分であることがあり、また、原料中の沸点が525℃以上の減圧蒸留残渣油(VR)のような高沸点成分に対する分解活性が不充分なことがあった。
そこで、それらの欠点を解決すべく研究開発が進められ、例えば、分解活性を付与するゼオライト等の結晶性アルミノシリケートと脱硫活性を付与するアルミナなどの無機酸化物の混合物からなる担体に活性金属を担持した触媒を用いた重質炭化水素油の水素化分解触媒が多数報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許文献1では、重質油の水素化分解において、中間留分の得率を高め得る触媒として、特定の鉄含有アルミノシリケート65重量%とアルミナ35質量%とからなる担体に活性金属を担持した重質油水素化分解触媒を開示している。
また、特許文献2では、ゼオライトを2〜35重量%と平均細孔直径が60〜125Åである特定のアルミナを65〜98重量%含有する担体に、活性金属を担持した触媒を用いた重質油分解触媒を開示している。
また、特許文献3では、結晶性アルミノシリケートのスラリーとアルミニウム化合物のスラリーを混合して製造された担体に活性金属を担持した触媒が、炭化水素転換反応に有効であることを開示している。ここでは、結晶性アルミノシリケートのスラリーとアルミニウム化合物のスラリーとの混合比率は、前者が65重量%であり、細孔分布におけるメソ細孔の割合が49%以下のものが記載されている。
【0004】
しかしながら、担体が結晶性アルミノシリケートとアルミナなどからなる上記水素化分解触媒は、特許文献1及び3に記載されたように、担体における結晶性アルミノシリケートの比率を高めると分解活性が高まるものの、脱硫活性が不十分になり、特許文献2に記載されたように、担体における結晶性アルミノシリケートの比率を低くしアルミナの比率を高めると、脱硫活性が高まるものの、分解活性が不十分になってしまい、高い分解活性と高い脱硫活性とを同時要求される重質油の水素化分解触媒においては、いずれもそのような要求を充分に満たすことができない状況にあった。
したがって、さらに高い分解活性と高い脱硫活性とを同時に備えた重質油の水素化分解触媒が切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−289419号公報
【特許文献2】特開平3−284354号公報
【特許文献3】特開平6−285374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような状況で、重質油に対する分解活性と脱硫活性とを両立させ、両機能共に優れる水素化分解触媒を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、担体が結晶性アルミノシリケートと該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物からなる水素化分解触媒において、結晶性アルミノシリケートの混合比率、及び触媒の細孔分布を詳細に最適化することによってその目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.結晶性アルミノシリケートと該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物とを含む担体に活性金属を担持した重質油水素化分解触媒であって、
(a)前記担体が、結晶性アルミノシリケートと該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物の合計量基準で、結晶性アルミノシリケート45質量%以上60質量%未満と該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物40質量%超55質量%以下を含み、
(b)前記活性金属が、周期表第6族、第8族、第9族、第10族金属のうち少なくとも一種の金属であり、かつ、
(c)前記重質油水素化分解触媒の細孔分布が、細孔径50〜10,000Åの細孔で定義される総細孔容積が0.40cc/g以上、かつ細孔径が100Å以上200Å未満である中間メソ細孔容積の総細孔容積に占める割合が60%以上である重質油水素化分解触媒、
2.前記重質油水素化分解触媒の細孔径が200〜500Åである拡大メソ細孔容積の総細孔容積に占める割合が10%以上20%以下である、前記1に記載の重質油水素化分解触媒、
3.前記重質油水素化分解触媒の細孔径が100Å以上200Å未満である中間メソ細孔容積のメソ細孔容積(細孔径50から500Åの細孔で定義される細孔容積)に占める割合が65%超75%以下である、前記1又は2に記載の重質油水素化分解触媒、
4.前記重質油水素化分解触媒の前記メソ細孔容積の前記総細孔容積に占める割合が85〜90%である、前記1〜3のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒、
5.さらに前記重質油水素化分解触媒に用いる担体の平均細孔径が140Å以上であり、メソ細孔の極大値が130〜150Åである、前記1〜4のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒、
6.結晶性アルミノシリケートが、超安定化Y型ゼオライト又は金属担持超安定化Y型ゼオライトである前記1〜5のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒、
7.前記結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物の主成分がアルミナであり、該アルミナが、アルミニウム塩を含む水溶液の中和反応により中間体としてアルミナ水和物(ベーマイトゲル)を得る工程を経て製造されるものであり、かつ該アルミナ水和物のX線回折分析(XRD)によるベーマイト結晶の相対ピークハイが65〜85のものである、前記1〜6のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒、
8.前記1〜6のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒を用いた重質油の水素化処理方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重質油に対する分解活性と脱硫活性とを両立させ、両機能共に優れる水素化分解触媒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明は、結晶性アルミノシリケートと、該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物(単に、「多孔性無機酸化物」と称することがある)とを含む担体に活性金属を担持した重質油水素化分解触媒である。
〔結晶性アルミノシリケート〕
前記結晶性アルミノシリケートとしては、種々のものが使用できる。例えば、水素型フォージャサイト、超安定化Y型ゼオライト(以下、「USYゼオライト」と称することがある)、金属担持USYゼオライトなどが好適のものとして挙げられる。中でもUSYゼオライト、金属担持USYゼオライトが好ましく、特に、金属担持USYゼオライトが好ましい。
当該金属担持USYゼオライトとしては、USYゼオライトに周期表第3〜16族から選ばれる1種または2種以上の金属を担持した金属担持USYゼオライトが好ましく、特に、金属として鉄を担持した鉄担持USYゼオライトが好適である。
【0011】
前記USYゼオライト、金属担持USYゼオライトは、例えば、以下の方法によって製造することができる。
USYゼオライトの原料として、アルミナに対するシリカの比率(モル比)、つまりSiO2/Al23が4.5以上、好ましくは5.0以上であり、また、Na2Oが2.4質量%以下、好ましくは1.8質量%以下のY型ゼオライトを用いる。
まず、上記のY型ゼオライトをスチーミング処理してUSYゼオライトとする。ここでスチーミング処理の条件としては様々な状況に応じて適宜選定すればよいが、温度510〜810℃の水蒸気の存在下で処理するのが好ましい。水蒸気は、外部から導入してもよいし、Y型ゼオライトに含まれる物理吸着水や結晶水を使用してもよい。また、スチーミング処理して得られたUSYゼオライトに鉱酸を加え、混合攪拌処理することによって、ゼオライト構造骨格からの脱アルミニウムとスチーミングおよび鉱酸処理により脱落アルミニウムの洗浄除去を行う。
このような鉱酸としては各種のものが挙げられるが、塩酸、硝酸、硫酸などが一般的であり、そのほかリン酸、過塩素酸、ペルオクソ二スルホン酸、二チオン酸、スルファミン酸、ニトロソスルホン酸等の無機酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸などを用いることもできる。添加すべき鉱酸の量は、USYゼオライト1kgあたり0.5〜20モルとし、好ましくは3〜16モルとする。鉱酸濃度は0.5〜50質量%溶液、好ましくは1〜20質量%溶液である。処理温度は、室温〜100℃、好ましくは50〜100℃である。処理時間は0.1〜12時間である。
【0012】
続いてこの系に金属塩溶液を加えてUSYゼオライトに金属を担持する。担持する方法としては混合攪拌処理、浸漬法、含浸法が挙げられ、混合撹拌処理が好ましい。金属としては周期表第3族のイットリア、ランタン、第4族のジルコニウム、チタン、第5族のバナジウム、ニオブ、タリウム、第6族のクロム、モリブデン、タングステン、第7族のマンガン、レニウム、第8族の鉄、ルテニウム、オスミウム、第9族のコバルト、ロジウム、イリジウム、第10族のニッケル、パラジウム、白金、第11族の銅、第12族の亜鉛、カドミウム、第13族のアルミニウム、ガリウム、第14族のスズ、第15族のリン、アンチモン、第16族のセレンなどが上げられる。この中で、チタン、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金が好ましく、特に鉄が好ましい。
【0013】
各種金属の塩としては硫酸塩、硝酸塩が好ましい。金属塩溶液処理を行う場合、状況により異なり一義的に決定することはできないが、通常は処理温度30〜100℃、好ましくは50〜80℃、処理時間0.1〜12時間、好ましくは0.5〜5時間とし、これらの金属の担持はゼオライト構造骨格から脱アルミニウムと同時に行うことが好ましく、pH2.0以下、好ましくはpH1.5以下の範囲で適宜選定し、実施する。鉄の塩の種類は、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄を挙げることができるが、硫酸第二鉄が好ましい。この鉄の硫酸塩はそのまま加えることもできるが、溶液として加えることが好ましい。この際の溶媒は鉄塩を溶解するものであればよいが、水、アルコール、エーテル、ケトン等が好ましい。また、加える鉄の硫酸塩の濃度は、通常は0.02〜10.0モル/リットル、好ましくは0.05〜5.0モル/リットルである。
なお、この鉱酸と鉄の硫酸塩を加えて結晶性アルミノシリケートを処理するにあたっては、そのスラリー比、すなわち、処理溶液容量(リットル)/アルミノシリケート重量(kg)は、1〜50の範囲が好都合であり、特に5〜30が好適である。
上述の処理により得られる鉄担持結晶性アルミノシリケートは、さらに必要に応じて水洗、乾燥を行う。
以上のようにして、USYゼオライト、金属担持USYゼオライトを製造することができる。
【0014】
〔結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物〕
一方、結晶性アルミノシリケートと混合して担体を構成する多孔性無機酸化物としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ、アルミナ−ボリア、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−チタニアなどが挙げられるが、本発明においては、アルミナを主成分とするのが好ましい。ここで、主成分とは、含有量が前記多孔性無機酸化物を基準(100質量%)として、50質量%以上、好ましくは、70質量%、より好ましくは80質量%のものをいう。ここで、アルミナとしては、ベーマイトゲル、アルミナゾルおよびこれらから製造されるアルミナが好ましく用いられる。活性金属が高分散担持できる点でアルミナが好適であり、特に以下に述べるアルミナが触媒の細孔分布の最適化を容易にする点で好ましい。
【0015】
特に好ましいアルミナは、アルミニウム塩を含む水溶液の中和反応により中間体としてアルミナ水和物(ベーマイトゲル)を得る工程を経て製造されるものであり、かつそのアルミナ水和物のX線回折分析(XRD)によるベーマイト結晶の相対ピークハイが65〜85のものである。相対ピークハイが65以上であれば、アルミナの平均細孔径が過剰に小さくなることによる触媒の重質油に対する脱硫活性が低下する虞がなく、85以下であれば、アルミナの平均細孔径が過剰に大きくなることによる、触媒の分解活性が低下する虞がない。
なお、本発明における、アルミナ水和物のベーマイト結晶の相対ピークハイは、X線回折装置を用いて、標準物質及び試料物質のアルミナ(ベーマイト)の2θ:10°〜20°のピークハイ(ピークの高さ)をそれぞれ測定し、後記の式(1)から算出したものである。具体的には、実施例の項に記載した方法で測定した値である。
【0016】
上記の条件を満たすアルミナの好適な製造方法を以下に例示する。
(1)アルミニウム塩を含む水溶液と中和剤を反応させ、pH6〜11のアルミナ水和物(ベーマイト)を得る工程、次いで、
(2)アルミナ水和物について、洗浄工程、熟成工程、乾燥工程、及び捏和工程を実施する。
上記方法において、アルミニウム塩としては、通常、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどが、また、中和剤としては、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ、苛性ソーダ、アンモニアなどが用いられる。
また、アルミナ水和物のpHはややアルカリ性で7〜10であることが、好ましい粒子径の水和物が得やすい点でより好ましい。
(2)の洗浄工程では、充分な洗浄を行い、例えばアルミニウム塩として、硫酸アルミニウムを用いた場合は、アルミナ水和物中の硫酸根(SO42-)残量が1質量%以下、さらには0.7質量%以下になるように行うことが好ましい。また、熟成工程の温度は80〜160℃、好ましくは90〜100℃、捏和時間は、1〜24時間、好ましくは2〜12時間行うことが好ましい。
なお、上記したアルミナの製造方法は、特許第3755826号公報に記載された方法で製造することが好ましい。
【0017】
〔水素化分解触媒担体の製造方法〕
本発明の重質油水素化分解触媒の担体は、前記のUSYゼオライトおよび金属担持USYゼオライトなどの結晶性アルミノシリケートと結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物とを混合したものを用いる。結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物との混合において結晶性アルミノシリケートの割合が少なすぎると、所望の分解率、軽質留分や中間留分を得るのに高い反応温度を必要とし、その結果、触媒の寿命に悪影響を与える。また、結晶性アルミノシリケートの割合が多すぎると、常圧蒸留残渣油(以下、AR(343+℃)留分と称す)の分解活性は向上するが、より重質な減圧蒸留残渣油(以下、VR(525+℃)留分と称す)の分解活性が低下するとともに軽質留分や中間留分の分解選択性が下がる。
一方、アルミナなどの多孔性無機酸化物は担持される活性金属を高度に分散させるため、多孔性無機酸化物の割合が多い(すなわち、結晶性アルミノシリケートが45質量%未満、かつ、多孔性無機酸化物が55質量%を超える場合)と水素化活性が高く、脱硫活性、脱窒素活性、脱残炭活性、脱アスファルテン活性、脱メタル活性などの少なくとも一つが向上するが、結晶性アルミノシリケートの割合が少なくなり、所望の分解率が得られず、軽質留分や中間留分を得るのが困難になる。また、多孔性無機酸化物の割合が少ない(すなわち、結晶性アルミノシリケートが60質量%以上、かつ、多孔性無機酸化物が40質量%以下の場合)と脱硫活性、脱窒素活性、脱残炭活性、脱アスファルテン活性、脱メタル活性などの少なくとも一つ(所謂、水素化活性)が低下するという問題がある。
そのため結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物の混合割合は、結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物の合計量基準で、結晶性アルミノシリケート45質量%以上60質量%未満と多孔性無機酸化物40質量%超55質量%以下からなることを要し、結晶性アルミノシリケート47質量%以上55質量%以下と多孔性無機酸化物45質量%以上53質量%以下からなるものがより好適である。
【0018】
本発明の重質油水素化分解触媒の担体は、前記結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物のみから成ることが好ましいが、必要に応じて粘土鉱物、リン等の第3成分を混合してもよい。その場合、第3成分の含有量は、結晶性アルミノシリケート、多孔性無機酸化物及び第3成分の合計量を100質量%として、1〜30質量%であり、特に3〜25質量%が好ましい。30質量%を超えると、担体の表面積が小さくなって触媒活性が十分に発現しない虞が有る。1質量%未満の場合は、第3成分を加える事による効果の発現が期待できない虞が有る。
【0019】
また、本発明の重質油水素化分解触媒の担体を製造するためには、上記USYゼオライトおよび金属担持USYゼオライトなどの結晶性アルミノシリケートは水洗後の水を含有したスラリー状態として使用することが好ましい。そして、上記結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物を十分な水分量のもとにニーダー(混練機)にて十分に混合する。
多孔性無機酸化物はゲル状又はゾル状であるが、結晶性アルミノシリケートと同じように水を加えてスラリー状として結晶性アルミノシリケートと混合する。それぞれのスラリー状態での水分量は、結晶性アルミノシリケートスラリーでは30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましく、多孔性無機酸化物スラリーでは50質量%〜90質量%が好ましく、55〜85質量%がより好ましい。
上記の結晶性アルミノシリケートと多孔性無機酸化物を混合捏和したのち、1/12インチ〜1/32インチの径、長さ1.5mm〜6mmに成型し、円柱状、三つ葉型、四葉型の形状の成型物を得る。成型物は30〜200℃、0.1〜24時間乾燥させ、次いで、300〜750℃(好ましくは450〜700℃)で、1〜10時間(好ましくは2〜7時間)焼成し担体とする。
【0020】
〔水素化分解触媒の製造〕
本発明の水素化分解触媒は、上記担体に、水素化活性金属として、周期表第6族、第8族、第9族、第10族金属のうち少なくとも一種の金属を担持する。ここで周期表第6族に属する金属としては、モリブデン、タングステンが好ましく、また第8〜10族に属する金属としては、ニッケル、コバルトが好ましい。二種類の金属の組み合わせとしては、ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、ニッケル−タングステン、コバルト−タングステンなどが挙げられ、なかでもコバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデンが好ましく、特に、ニッケル−モリブデンが好ましい。
上記活性成分である金属の担持量は、特に制限はなく原料油の種類や、所望するナフサ留分の得率などの各種条件に応じて適宜選定すればよいが、通常は第6族の金属は触媒全体の0.5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、第8〜10族の金属は、触媒全体の0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%である。
上記金属成分を担体に担持する方法については特に制限はなく、例えば、含浸法,混練法,共沈法などの公知の方法を採用することができる。
上記の金属成分を担体に担持したものは、通常30〜200℃で、0.1〜24時間乾燥し、次いで、250〜700℃(好ましくは300〜650℃)で、1〜10時間(好ましくは2〜7時間)焼成して、触媒として仕上げられる。
【0021】
〔水素化分解触媒の細孔分布〕
本発明の重質油水素化分解触媒は、以下の(1)〜(2)に示す細孔分布を有することを要する。
(1)総細孔容積
本触媒の細孔径50〜10,000Åの細孔で定義される総細孔容積は0.40cc/g以上であることを要し、0.42cc/g以上が好ましく、0.43cc/g以上がより好ましい。総細孔容積が0.40cc/g以上であれば減圧残渣油のような重質油分子の拡散を高めることができる。総細孔容積の上限は特に制限はないが、通常1.0cc/g以下である。
なお、本発明の触媒の直径50Å以上の総細孔容積は、ASTM D4284−03に規定する水銀圧入法により測定した。本発明の触媒の場合、水銀の接触角(contact angle)は140度、表面張力(surface tension)は480dyne/cmとして求めた。
以下の(2)〜(5)で述べる各細孔容積、及び平均細孔径の測定方法についても、これと同様の方法で測定した。
【0022】
(2)中間メソ細孔容積
本触媒の細孔径100以上200Å未満の細孔で定義される中間メソ細孔の細孔容積(中間メソ細孔容積)は、総細孔容積に占める割合が60%以上であることを要する。中間メソ細孔容積が60%未満では、脱窒素活性が低下する虞があって好ましくない。
中間メソ細孔容積については、メソ細孔容積に占める割合が65%超75%以下であることが好ましい。メソ細孔容積とは、細孔径50〜500Åを持つ細孔の細孔容積で定義される。このような細孔分布であることによって、常圧残油分解活性、減圧残油分解活性が高まり、所望の中間留分の収率を高めることができ、同時に、窒素、硫黄、メタル、アスファルテン、及び残炭のうち少なくとも一種を除去する性能を高めることができる。
【0023】
(3)マクロ細孔容積
本触媒は、細孔径500Å超10,000Å以下の細孔で定義されるマクロ細孔の細孔容積(マクロ細孔容積)の総細孔容積に占める割合が10%以上であることが好ましい。マクロ細孔容積の総細孔容積に占める割合が10%未満の場合は、減圧残渣の分解活性が低下する虞が有る。
【0024】
本発明の水素化分解に用いる触媒は、さらに以下の要件を満たすものが好ましい。
(4)拡大メソ細孔容積
本触媒の細孔径200〜500Åの細孔で定義される拡大メソ細孔の細孔容積(拡大メソ細孔容積)が、総細孔容積の10%以上20%以下であることが好ましい。この範囲内であれば脱窒素活性、脱残炭活性を高く維持することができる。
(5)メソ細孔容積
本触媒の細孔径50〜500Åの細孔で定義されるメソ細孔の細孔容積(メソ細孔容積)の総細孔容積に占める割合が85〜90%以上であることが好ましい。メソ細孔容積の割合がこの範囲内であれば、脱硫活性ならびに脱窒素活性、脱残炭活性が低下する虞がない。
【0025】
(6)平均細孔径およびメソ細孔極大値
また、本発明の水素化分解触媒に用いる担体の平均細孔径が140Å以上であることが好ましく、145〜155Åであることがより好ましい。さらに、前記担体の細孔径50〜500Åのメソ細孔極大値は130Å〜150Åの範囲であることが好ましい。担体の平均細孔径やメソ細孔極大値が前記範囲を満たしていると、分子量が大きい硫黄化合物の脱硫性能も良く、触媒活性も高く維持できる点で好ましい。
【0026】
本発明の重質油水素化分解触媒は、重質留分の水素化活性が向上し、525℃以上の沸点を持つ留分(VR留分)の分解活性が高く、かつ343℃以上の沸点を持つ留分(AR留分)の分解活性も比較的高い。さらに脱残炭活性、脱硫活性、脱窒素活性が高い。したがって、この触媒を用いて水素化分解すれば、得られた脱硫重質油(脱硫常圧残油:DSARや脱硫減圧軽油:DSVGO)の性状が流動接触分解装置等の原料として好ましいものとなる。
【0027】
本発明における水素化分解処理触媒は、水素化分解反応に用いられるが、水素化分解反応と同時に水素化脱硫反応、水素化脱窒素反応、水素化脱メタル反応なども行われ、これらは水素高圧下の条件で行う。このような高圧下での水素化分解反応を実施する装置としては、通常、直脱装置が用いられる。
【0028】
本発明の重質油水素化分解触媒を用いる水素化分解の条件は、特に制限はなく、従来、重質油の水素化分解や水素化脱硫反応で行われている反応条件で行えばよく、通常は反応温度は、好ましくは320〜550℃、より好ましくは350〜430℃、水素分圧が好ましくは1〜30MPa、より好ましくは5〜17MPa、水素/油比が好ましくは100〜2,000Nm3/キロリットル、より好ましくは300〜1,000Nm3/キロリットル、液空間速度(LHSV)が好ましくは0.1〜5h-1、より好ましくは0.2〜2.0h-1の範囲で適宜選定すればよい。
また、減圧残渣油、コーカー油、合成原油、抜頭原油、重質軽油、減圧軽油、LCO、ヘビーサイクルオイル(HCO)、クラリファイドオイル(CLO)、ガストゥリッキドオイル(GTL油)、ワックス等の重質油を常圧蒸留残渣油と混合して水素化分解処理をすることもできる。
【0029】
本発明の重質油水素化分解触媒は、これを単独で用いてもよいが、一般の水素化処理触媒と組み合わせたものを用いてもよい。組み合わせのパターンとしては、例えば全触媒充填量に対して第一段目に脱メタル触媒を10〜40容量%、第二段目に脱硫触媒を0〜50容量%、第三段目に本発明の重質油水素化分解触媒を10〜70容量%、第四段目にフィニシングの脱硫触媒として0〜40容量%の充填パターンが好ましい。これらは原料油の性状等によっては種々の充填パターンとすることができる。第一段目の脱メタル触媒の前に原料油中に含まれる鉄粉、無機酸化物等のスケールを除去する脱スケール触媒を充填しても良い。
【0030】
本発明の重質油水素化分解触媒は、例えば次のように利用することができる。
本発明の重質油水素化分解触媒を用いて、常圧蒸留残渣油を水素化分解処理し、得られた生成油の残渣油、若しくは残油と留出油との混合物を原料とし、流動接触分解処理する。
この場合、留出油としては、沸点120〜400℃の留出油が好適であり、150〜350℃のものがより好ましい。このような沸点範囲のものであれば、良好な沸点範囲の分解生成物が得られ、FCCガソリンなどを増量する効果が得られる。また、流動接触分解処理の原料における留出油の混合割合は、1〜30容量%であることが好ましく、3〜20容量%がより好ましい。このような範囲であれば、良好にLPG留分やFCCガソリン留分を増量する効果が認められる。
【0031】
なお、接触分解処理の条件は、特に制限はなく、公知の方法、条件で行えばよい。例えば、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシアなどのアモルファス触媒や、フォージャサイト型結晶アルミノシリケートなどのゼオライト触媒を用い、反応温度450〜650℃、好ましくは480〜580℃、再生温度550〜760℃、反応圧力0.02〜5MPa、好ましくは0.2〜2MPaの範囲で適宜選定すればよい。
【0032】
上記常圧蒸留残渣油の分解処理においては、最終工程である流動接触分解の生成油が、燃料や石油化学製品の原料として有用な、FCCガソリン留分およびLPG留分の割合を高く、需要が少ないLCO留分の割合を低くすることができる。
さらに、中間工程である直脱装置などによる水素化分解生成油におけるいわゆる中間留分である灯軽油留分や軽質留分であるナフサ留分などの得率が高く、燃料や石油化学製品の原料として活用できる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらの実施例になんら制限されるものではない。なお、実施例、比較例でいた触媒などの物性は、以下の方法で測定した。
(1)全細孔容量
ASTM D4222-03、D4641-94に規定する窒素吸着・脱着等温線から算出した(N2吸着法)。ここでは、窒素吸着等温線のP/P0=0.99の時の窒素吸着量を容量に換算して求めた。
測定にあたっては、予備前処理として400℃で3時間の真空加熱排気処理にて、充分に含有する水分を除去した後測定した。
(2)比表面積
比表面積は、BET窒素吸着法(ASTM D4365-95)に従って測定し解析した。BETブロットから比表面積を算出するP/P0の範囲は、0.01〜0.10の間の5点を直線に補間して、算出した。
なお、予備前処理として400℃で3時間の真空加熱排気処理にて、充分に含有する水分を除去した後測定した。
(3)平均細孔径およびメソ細孔極大値
担体の平均細孔径およびメソ細孔極大値は、ASTM D4284−03に規定される水銀圧入法により測定される値より解析して求めた。
本発明の担体の場合、水銀の接触角(contact angle)は150度、表面張力(surface tension)は480dyne/cmとして求めた。平均細孔径(APD(Å))は、当該測定によって得られる全細孔容積(PV(cc/g))と同じく全表面積(SA(m2/g))から、APD=4×PV/SA×104から計算される。また、メソ孔極大値は、当該測定によって得られた細孔径分布のうち、メソ細孔(50Å〜500Å)領域の分布で極大値となる細孔径(Å)とした。
【0034】
(4)アルミナ水和物のベーマイト結晶の相対ピークハイ
X線回折装置を用いて、標準物質及び試料物質のアルミナ(ベーマイト)ピークハイをそれぞれ測定し、下記の式(1)により相対ピークハイを算出した。
相対ピークハイ=(B/A)×100 (1)
但し、式中、Aは標準物質(サソール社製、商品名:CatapalD)のピークハイ、Bは試料物質のピークハイの測定値を示す。
なお、X線回折の測定条件は、以下のとおりである。
・測定装置 :リガク(RINT−2100)
・測定条件 :
Target:Cu
Filter:Ni
Voltage:30kV
Current:14mA
Scan speed:1°/min,
Full scall:1000cps,
平滑化点数 :19
Scan angle(2θ):10°〜20°
・ピークハイの計測方法:
折線プロファイルで、ピークの両側のバックグラウンドに接線を引き、次にピークトップから垂線を引き、バックグラウンドからピークトップまでの高さを求め、その値をそれぞれのピークハイとした。
(5)総細孔容積、中間メソ細孔容積、拡大メソ細孔容積、マクロ細孔容積及び平均細孔径
これらは、明細書に記載した方法で測定した。
【0035】
〔実施例1:重質油水素化分解触媒I〕
(1)アルミナ水和物の調製
44kgの純水を200リットルのステンレス製タンクに張り込み、これに22.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液2.12kgを添加し、60℃に加温した。この水溶液を高速(約40rpm)で攪拌しながら60±3℃に保持し、26.8質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液52.3gを加え、次いで60℃に加温した3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウム水溶液7.2kgを約10分間で添加して、pH7.2の種子アルミナスラリーを得た。
種子アルミナスラリー53.4kg(0.68kgのアルミナを含む)を、特許第3755826号特許公報の図2に記載されるアルミナ製造装置に張り込み攪拌した。種子アルミナスラリーを温度60℃に保ちながら、2.0m3/hrの流量で種子アルミナスラリーを循環させた。種子アルミナスラリーを攪拌及び循環させながら、これにグルコン酸ナトリウムを0.18質量%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液(6.0質量%のアルミナを含む)と、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウムとを、アルミナ製造装置のタンク内の溶液の温度が60±3℃、かつ、pH7.1±0.1を保つように、それぞれの添加速度を調整しながら3時間かけて添加し、循環スラリーを得た。各水溶液の添加量は、グルコン酸ナトリウムを添加した6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液が70.0kg、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウム72.7kgであった。
次に循環スラリーがpH9.9になるように、6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液を17.0kg添加した後、洗浄してナトリウム及び硫酸根を除去した調合スラリーを調製した。
得られた調合スラリーの、ナトリウム含有量は、Na2Oとして0.05質量%、硫酸根含有量は、SO42-として0.2質量%であった。
次にこの調合スラリーに脱イオン水を加えてAl23濃度で15質量%とし、更に、15質量%アンモニア水にてpH10.5に調整した後、還流器の付いた熟成タンクにて95℃で4.5時間熟成し、熟成スラリーを得た。熟成終了後、熟成スラリーをスチームジャケット付き双腕型ニーダーにより蒸発濃縮した後、さらに0.5時間捏和し、アルミナ水和物を得た。
上記アルミナ水和物について、下記の方法でベーマイト結晶の相対ピークハイを測定した。結果は、73であった。
【0036】
(2)結晶性アルミノシリケートの調製
合成NaY型ゼオライト(Na2O含量13.5質量%、SiO2/Al23モル比5.2、結晶格子定数2.466nm)をアンモニウムイオン交換し、引き続きスチ−ミング処理を650℃で施しUSY型ゼオライト(Na2O含量1.0質量%以下、結晶格子定数2.435nm)を得た。
次に、10kgのUSY型ゼオライトを純水115リットルに懸濁させた後、懸濁液を75℃に昇温し30分間攪拌した。次いで、この懸濁液に10質量%硫酸溶液13.7kgを35分間で添加し、更に濃度0.57モル/リットルの硫酸第二鉄溶液11.5kgを10分間で添加し、添加後更に30分間攪拌した後、濾過、洗浄し、固形分濃度30質量%の結晶性アルミノシリケート(鉄含有結晶性アルミノシリケート)のスラリーを得た。この結晶性アルミノシリケートのX線回折法によって求めた格子定数は2.432nmであった。
(3)重質油水素化分解触媒の調製
乾燥重量として1.50kgのアルミナ水和物と、鉄含有ゼオライトのスラリーを乾燥重量として1.50kg分とをニーダーに加え、加熱、攪拌しながら押し出し成形可能な濃度に濃縮した後、1/18インチサイズの四葉型ペレット状に押し出し成型した。
得られた成型品は、110℃で16時間乾燥した後、550℃で3時間焼成し、鉄含有ゼオライト/アルミナ(固形分換算質量比)で50/50の触媒担体Aを得た。
次に、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルを純水に懸濁したものを90℃に加熱した後、リンゴ酸を添加し溶解させた溶解液を、触媒担体Aにそれぞれ触媒全体に対してMoO3として10.6質量%、NiOとして4.2質量%になるように含浸した後、250℃で乾燥させて、550℃で1時間焼成し、重質油水素化分解触媒Iを得た。
重質油水素化分解触媒Iの物性を第1表に示した。
【0037】
〔実施例2:重質油水素化分解触媒II〕
(1)アルミナ水和物の調製
実施例1と同じ種子アルミナスラリー53.4kg(0.68kgのアルミナを含む)を、アルミナ製造装置に張り込み攪拌した。種子アルミナスラリーを温度60℃に保ちながら、2.0m3/hrの流量で種子アルミナスラリーを循環した。種子アルミナスラリーを攪拌及び循環させながら、これにグルコン酸ナトリウムを0.18質量%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液(6.0質量%のアルミナを含む)と、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウムとを、アルミナ製造装置タンク内の溶液の温度が60±3℃、かつ、pH7.2±0.1を保つように、それぞれの添加速度を調整しながら3時間かけて添加し、循環スラリーを得た。各水溶液の添加量は、グルコン酸ナトリウムを添加した6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液が70.0kg、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウム70.8kgであった。
次に循環スラリーがpH9.8になるように、6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液を11.9kg添加した後、洗浄してナトリウム及び硫酸根を除去した調合スラリーを調製した。得られた調合スラリーは、ナトリウムがNa2Oとして0.05質量%、また、硫酸根がSO42-として0.6質量%含有されていた。
次にこの調合スラリーに脱イオン水を加えてAl23濃度で15質量%とし、更に、15質量%アンモニア水にてpH10.5に調整した後、還流器の付いた熟成タンクにて95℃で8.5時間熟成し、熟成スラリーを得た。熟成終了後、熟成スラリーをスチームジャケット付き双腕型ニーダーにより蒸発濃縮した後、さらに0.5時間捏和し、アルミナ水和物を得た。このアルミナ水和物のベーマイト結晶の相対ピークハイは、78であった。
【0038】
(2)重質油水素化分解触媒の調製
乾燥重量として1.44kgのアルミナ水和物と、実施例1と同様な方法で調製した鉄含有ゼオライトのスラリーを乾燥重量として1.56kg分とをニーダーに加え、加熱、攪拌しながら押し出し成形可能な濃度に濃縮した後、1/18インチサイズの四葉型ペレット状に押し出し成型した。
得られた成型品は、110℃で16時間乾燥した後、550℃で3時間焼成し、鉄含有ゼオライト/アルミナ(固形分換算質量比)で52/48の触媒担体Bを得た。
次に、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルを純水に懸濁したものを90℃に加熱した後、リンゴ酸を添加し溶解させた溶解液を、触媒担体Aにそれぞれ触媒全体に対してMoO3として10.6質量%、NiOとして4.2質量%になるように含浸した後、250℃で乾燥させて、550℃で1時間焼成し、重質油水素化分解触媒IIを得た。
重質油水素化分解触媒IIの物性を第1表に示した。
【0039】
〔比較例1:重質油水素化分解触媒III〕
(1)アルミナ水和物の調製
実施例1と同じ種子アルミナスラリー53.4kg(0.68kgのアルミナを含む)を、アルミナ製造装置に張り込み攪拌した。種子アルミナスラリーを温度60℃に保ちながら、2.0m3/hrの流量で種子アルミナスラリーを循環した。種子アルミナスラリーを攪拌及び循環させながら、これにグルコン酸ナトリウムを0.18質量%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液(6.0質量%のアルミナを含む)と、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウムとを、タンク内の溶液の温度が60±3℃、かつ、pH7.2±0.1を保つように、それぞれの添加速度を調整しながら3時間かけて添加し、循環スラリーを得た。各水溶液の添加量は、グルコン酸ナトリウムを添加した6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液が70.0kg、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウム70.8kgであった。
次に循環スラリーがpH9.6になるように、6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液を9.3kg添加した後、洗浄してナトリウム及び硫酸根を除去した調合スラリーを調製した。得られた調合スラリーは、ナトリウムがNa2Oとして0.05質量%、また、硫酸根がSO42-として1.2質量%含有されていた。
次にこの調合スラリーに脱イオン水を加えてAl23濃度で15質量%とし、更に、15質量%アンモニア水にてpH10.5に調整した後、還流器の付いた熟成タンクにて95℃で8.5時間熟成し、熟成スラリーを得た。熟成終了後、熟成スラリーをスチームジャケット付き双腕型ニーダーにより蒸発濃縮した後、さらに0.5時間捏和し、アルミナ水和物を得た。このアルミナ水和物のベーマイト結晶の相対ピークハイは、60であった。
【0040】
(2)重質油水素化分解触媒の調製
乾燥重量として1.20kgのアルミナ水和物と、実施例1と同様な方法で調製した鉄含有ゼオライトのスラリーを乾燥重量として1.80kg分とをニーダーに加え、加熱、攪拌しながら押し出し成形可能な濃度に濃縮した後、1/18インチサイズの四葉型ペレット状に押し出し成型した。
得られた成型品は、110℃で16時間乾燥した後、550℃で3時間焼成し、鉄含有ゼオライト/アルミナ(固形分換算質量比)で60/40の触媒担体Cを得た。
次に、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルを純水に懸濁したものを90℃に加熱した後、リンゴ酸を添加し溶解させた溶解液を、触媒担体Aにそれぞれ触媒全体に対してMoO3として10.6質量%、NiOとして4.2質量%になるように含浸した後、250℃で乾燥させて、550℃で1時間焼成し、重質油水素化分解触媒IIIを得た。
重質油水素化分解触媒IIIの物性を第1表に示した。
【0041】
〔比較例2:重質油水素化分解触媒IV〕
(1)アルミナ水和物の調製
実施例1と同じ種子アルミナスラリー53.4kg(0.68kgのアルミナを含む)を、アルミナ製造装置に張り込み攪拌した。種子アルミナスラリーを温度60℃に保ちながら、2.0m3/hrの流量で種子アルミナスラリーを循環した。種子アルミナスラリーを攪拌及び循環させながら、これにグルコン酸ナトリウムを0.18質量%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液(6.0質量%のアルミナを含む)と、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウムとを、タンク内で循環する温度が60±3℃、かつ、pH7.2±0.1を保つように、それぞれの添加速度を調整しながら3時間かけて添加し、循環スラリーを得た。各水溶液の添加量は、グルコン酸ナトリウムを添加した6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液が70.0kg、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウム70.8kgであった。
次に循環スラリーがpH9.6になるように、6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液を9.3kg添加した後、洗浄してナトリウム及び硫酸根を除去した調合スラリーを調製した。得られた調合スラリーは、ナトリウムがNa2Oとして0.05質量%、また、硫酸根がSO42-として1.2質量%含有されていた。
次にこの調合スラリーに脱イオン水を加えてAl23濃度で15質量%とし、更に、15質量%アンモニア水にてpH10.5に調整した後、還流器の付いた熟成タンクにて95℃で8.5時間熟成し、熟成スラリーを得た。熟成終了後、熟成スラリーをスチームジャケット付き双腕型ニーダーにより蒸発濃縮した後、さらに0.5時間捏和し、アルミナ水和物を得た。アルミナ水和物のベーマイト結晶の相対ピークハイは、60であった。
【0042】
(2)重質油水素化分解触媒の調製
乾燥重量として1.50kgのアルミナ水和物と、実施例1と同様な方法で調製した鉄含有ゼオライトのスラリーを乾燥重量として1.50kg分とをニーダーに加え、加熱、攪拌しながら押し出し成形可能な濃度に濃縮した後、1/18インチサイズの四葉型ペレット状に押し出し成型した。
得られた成型品は、110℃で16時間乾燥した後、550℃で3時間焼成し、鉄含有ゼオライト/アルミナ(固形分換算質量比)で50/50の触媒担体Dを得た。
次に、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルを純水に懸濁したものを90℃に加熱した後、リンゴ酸を添加し溶解させた溶解液を、触媒担体Aにそれぞれ触媒全体に対してMoO3として10.6質量%、NiOとして4.2質量%になるように含浸した後、250℃で乾燥させて、550℃で1時間焼成し、重質油水素化分解触媒IVを得た。
重質油水素化分解触媒IVの物性を第1表に示した。
【0043】
〔比較例3:重質油水素化分解触媒V〕
(1)アルミナ水和物の調製
実施例1と同じ種子アルミナスラリー53.4kg(0.68kgのアルミナを含む)を、アルミナ製造装置に張り込み攪拌した。種子アルミナスラリーを温度60℃に保ちながら、2.0m3/hrの流量で種子アルミナスラリーを循環した。種子アルミナスラリーを攪拌及び循環させながら、これにグルコン酸ナトリウムを0.18質量%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液(6.0質量%のアルミナを含む)と、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウムとを、タンク内で循環する循環スラリーの溶液の温度が60±3℃、かつ、pH7.5±0.1を保つように、それぞれの添加速度を調整しながら3時間かけて添加し、循環スラリーを得た。各水溶液の添加量は、グルコン酸ナトリウムを添加した6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液が70.0kg、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウム69.2kgであった。
次に循環スラリーがpH9.6になるように、6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液を6.8kg添加した後、洗浄してナトリウム及び硫酸根を除去した調合スラリーを調製した。得られた調合スラリーは、ナトリウムがNa2Oとして0.05質量%、また、硫酸根がSO42-として1.3質量%含有されていた。
次にこの調合スラリーに脱イオン水を加えてAl23濃度で15質量%とし、更に、15質量%アンモニア水にてpH10.5に調整した後、還流器の付いた熟成タンクにて95℃で8.5時間熟成し、熟成スラリーを得た。熟成終了後、熟成スラリーをスチームジャケット付き双腕型ニーダーにより蒸発濃縮した後、さらに0.5時間捏和し、アルミナ水和物を得た。アルミナ水和物のベーマイト結晶の相対ピークハイは、50であった。
【0044】
(2)重質油水素化分解触媒の調製
乾燥重量として1.35kgのアルミナ水和物と、実施例1と同様な方法で調製した鉄含有ゼオライトのスラリーを乾燥重量として1.65kg分とをニーダーに加え、加熱、攪拌しながら押し出し成形可能な濃度に濃縮した後、1/18インチサイズの四葉型ペレット状に押し出し成型した。
得られた成型品は、110℃で16時間乾燥した後、550℃で3時間焼成し、鉄含有ゼオライト/アルミナ(固形分換算質量比)で45/55の触媒担体Eを得た。
次に、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルを純水に懸濁したものを90℃に加熱した後、リンゴ酸を添加し溶解させた溶解液を、触媒担体Aにそれぞれ触媒全体に対してMoO3として10.6質量%、NiOとして4.2質量%になるように含浸した後、250℃で乾燥させて、550℃で1時間焼成し、重質油水素化分解触媒Vを得た。
重質油水素化分解触媒Vの物性を第1表に示した。
【0045】
〔比較例4:重質油水素化分解触媒VI〕
(1)アルミナ水和物の調製
実施例1と同じ種子アルミナスラリー53.4kg(0.68kgのアルミナを含む)を、アルミナ製造装置に張り込み攪拌した。種子アルミナスラリーを温度60℃に保ちながら、2.0m3/hrの流量で種子アルミナスラリーを循環した。種子アルミナスラリーを攪拌及び循環させながら、これにグルコン酸ナトリウムを0.18質量%含有するアルミン酸ナトリウム水溶液(6.0質量%のアルミナを含む)と、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウムとを、タンク内の循環スラリーの溶液の温度が60±3℃、かつ、pH7.2±0.1を保つように、それぞれの添加速度を調整しながら3時間かけて添加し、循環スラリーを得た。各水溶液の添加量は、グルコン酸ナトリウムを添加した6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液が70.0kg、3.0質量%のアルミナを含む硫酸アルミニウム71.3kgであった。
次に循環スラリーがpH9.7になるように、6.0質量%のアルミナを含むアルミン酸ナトリウム水溶液を13.9kg添加した後、洗浄してナトリウム及び硫酸根を除去した調合スラリーを調製した。得られた調合スラリーは、ナトリウムがNa2Oとして0.05質量%、また、硫酸根がSO42-として0.8質量%含有されていた。
次にこの調合スラリーに脱イオン水を加えてAl23濃度で15質量%とし、更に、15質量%アンモニア水にてpH10.5に調整した後、還流器の付いた熟成タンクにて95℃で8.5時間熟成し、熟成スラリーを得た。熟成終了後、熟成スラリーをスチームジャケット付き双腕型ニーダーにより蒸発濃縮した後、さらに0.5時間捏和し、アルミナ水和物を得た。アルミナ水和物のベーマイト結晶の相対ピークハイは、65であった。
【0046】
(2)重質油水素化分解触媒の調製
乾燥重量として1.20kgのアルミナ水和物と、実施例1と同様な方法で調製した鉄含有ゼオライトのスラリーを乾燥重量として1.80kg分とをニーダーに加え、加熱、攪拌しながら押し出し成形可能な濃度に濃縮した後、1/18インチサイズの四葉型ペレット状に押し出し成型した。
得られた成型品は、110℃で16時間乾燥した後、550℃で3時間焼成し、鉄含有ゼオライト/アルミナ(固形分換算質量比)で40/60の触媒担体Fを得た。
次に、三酸化モリブデンと炭酸ニッケルを純水に懸濁したものを90℃に加熱した後、リンゴ酸を添加し溶解させた溶解液を、触媒担体Aにそれぞれ触媒全体に対してMoO3として10.6質量%、NiOとして4.2質量%になるように含浸した後、250℃で乾燥させて、550℃で1時間焼成し、重質油水素化分解触媒VIを得た。
重質油水素化分解触媒VIの物性を第1表に示した。
【0047】
【表1】

【0048】
〔実施例3,4、比較例5〜8:重質油の水素化分解処理方法〕
上記重質油水素化分解触媒I〜VIの水素化分解処理性能を評価した。結果を第3表に示す。
なお、水素化分解処理方法は、重質油水素化分解触媒I〜VIを高圧固定床反応器に100cc充填し、硫化処理した後、第2表に示す性状のアラビアンヘビーの常圧蒸留残渣油を原料油として、以下の条件で水素化分解処理を行った。
《水素化分解条件》
反応温度(WAT:Weight Average Temperature,重量平均温度) 400℃
液空間速度(LHSV) 0.3h-1
水素分圧 13MPa
水素/油比 1,000Nm3/キロリットル
【0049】
上記水素化分解処理によって得られた生成油(以下、単に生成油と呼ぶ場合も有る)をガスクロマトグラフィー蒸留法(ASTM D5307−97)により分析を行い、沸点343℃超525℃以下の留分(343+℃)、525℃より高い沸点の留分(沸点525+℃)、中間留分として灯軽油留分である沸点範囲150〜343℃の留分等各留分の収率を求めた。更に下記定義の343+℃及び525+℃の転化率を求めた。結果を第3表に示す。中間留分得率、転化率は値が大きいほど、重質油水素化分解触媒の水素化分解活性が高いことを意味する。
下記定義中の原料油は、第2表のアラビアンヘビーの常圧蒸留残渣油である。
343+℃転化率(質量%)=(原料油中の残油留分−生成油中の残油留分)/原料油中の残油留分
525+℃転化率(質量%)=(原料油中の減圧残油留分−生成油中の残油留分)/原料油中の減圧残油留分
【0050】
また、脱硫活性、脱窒素活性、脱残炭活性、脱アスファルテン活性、及び脱メタル活性を下記測定法及び定義に従って評価し、通常の方法にて算出した。結果を第3表に示す。
また、上記水素化分解処理によって得られた生成油(以下、単に生成油と呼ぶ場合も有る)中の硫黄分を放射線式励起法(JIS K 2541−4)で、窒素分を化学発光法(JIS K 2609)で、バナジウムとニッケル分を蛍光X線法(JPI−5S−62−2000)で、ヘプタン(C7)不溶解分をUOP 614−80法で、残留炭素分をミクロ法(JIS K 2270)で測定した。第2表のアラビアンヘビーの常圧蒸留残渣油(以下、単に原料油と呼ぶ場合も有る)も、硫黄分を燃焼管式空気法(JIS K 2541−3)で行った以外は、同じ方法で評価した。
脱硫活性(質量%)=(原料油中の硫黄分−生成油中の硫黄分)/原料油中の硫黄分
脱窒素活性(質量%)=(原料油中の窒素分−生成油中の窒素分)/原料油中の窒素分
脱残炭活性(質量%)=(原料油中の残留炭素分−生成油中の残留炭素分)/原料油中の残留炭素分
脱アスファルテン活性(質量%)=(原料油中のC7不溶解分−生成油中のC7不溶解分)/原料油中のC7不溶解分
脱メタル活性(質量%)=(原料油中のVとNiの和−生成油中のVとNiの和)/原料油中のVとNiの和
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の重質油水素化分解触媒は、分解活性と脱硫活性とを両立させ、両機能共に優れる水素化分解触媒を提供することができるものである。したがって、有用な水素化分解触媒として広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性アルミノシリケートと該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物とを含む担体に活性金属を担持した重質油水素化分解触媒であって、
(a)前記担体が、結晶性アルミノシリケートと該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物の合計量基準で、結晶性アルミノシリケート45質量%以上60質量%未満と該結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物40質量%超55質量%以下を含み、
(b)前記活性金属が、周期表第6族、第8族、第9族、第10族金属のうち少なくとも一種の金属であり、かつ、
(c)前記重質油水素化分解触媒の細孔分布が、細孔径50〜10,000Åの細孔で定義される総細孔容積が0.40cc/g以上、細孔径が100Å以上200Å未満である中間メソ細孔容積の総細孔容積に占める割合が60%以上である、
重質油水素化分解触媒。
【請求項2】
前記重質油水素化分解触媒の細孔径が200〜500Åである拡大メソ細孔容積の総細孔容積に占める割合が10%以上20%以下である、請求項1に記載の重質油水素化分解触媒。
【請求項3】
前記重質油水素化分解触媒の細孔径が100Å以上200Å未満である中間メソ細孔容積のメソ細孔容積(細孔径50〜500Åの細孔で定義される細孔容積)に占める割合が65%超75%以下である、請求項1又は2に記載の重質油水素化分解触媒。
【請求項4】
前記重質油水素化分解触媒の前記メソ細孔容積の前記総細孔容積に占める割合が85〜90%である、請求項1〜3のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒。
【請求項5】
さらに前記重質油水素化分解触媒に用いる担体の平均細孔径が140Å以上であり、メソ細孔の極大値が130〜150Åである、請求項1〜4のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒。
【請求項6】
結晶性アルミノシリケートが、超安定化Y型ゼオライト又は金属担持超安定化Y型ゼオライトである請求項1〜5のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒。
【請求項7】
前記結晶性アルミノシリケートを除く多孔性無機酸化物は、主成分がアルミナであり、該アルミナが、アルミニウム塩を含む水溶液の中和反応により中間体としてアルミナ水和物(ベーマイトゲル)を得る工程を経て製造されるものであり、かつ該アルミナ水和物のX線回折分析(XRD)によるベーマイト結晶の相対ピークハイが65〜85のものである、請求項1〜6のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の重質油水素化分解触媒を用いた重質油の水素化処理方法。

【公開番号】特開2011−31194(P2011−31194A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180946(P2009−180946)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【Fターム(参考)】