説明

重質芳香族油からの芳香族物質の製造において水素を効率的に用いる方法

重質芳香族油からの芳香族物質の製造において水素を効率的に用いる方法。C炭化水素を含む炭化水素質流及び実質的に純粋な水素流を水素処理及び水素化分解して、芳香族物質を含む水素化分解区域流出流を生成させる。水素化分解区域流出流を分別して、C及びより軽質の炭化水素、180°F〜380°Fの間の沸点の炭化水素、及びディーゼルを分離回収する。より重質の炭化水素を低純度水素含有流と混合して加熱し、次に脱水素又はトランスアルキル化して、水素、揮発性化合物、及び芳香族物質を形成する。水素及び揮発性成分を芳香族物質から分離し、圧力スイング吸着によって処理して実質的に純粋な水素含有流を与え、これを圧縮し、水素処理及び水素化分解工程に供給する。芳香族物質含有流から液体生成物を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本発明は、重質芳香族油からの芳香族物質の製造において水素を効率的に用いる方法に関する。特に、本発明は、水素流をまず芳香族物質反応区域に通し、次に精製及び圧縮に通して送ることによって、水素を高圧水素処理及び水素化分解反応器において用いるワンススルー経路を提供することにより、石油精製施設における水素の必要量のバランスをとる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[02]石油化学精製においては、処理工程への供給原料として種々の組成の流れが必要である。これらの処理工程は、通常は他の処理工程において有用な副生成物流を生成する。例えば、高圧水素処理及び水素化分解のためには純粋な水素の高圧流が必要である。しかしながら、このような流れが他のプロセスからの副生成物として生成することは殆どない。したがって、通常は、水素処理及び水素化分解プロセスに有害な不純物を含む流れを精製することが必要である。更に、かかるユニットのための水素の要求量は高いので、比較的大量の供給が必要である。また、水素流は比較的高い圧力に圧縮しなければならない。
【0003】
[03]同様に、高圧水素化分解反応生成物の分別からのミッドカット(軽質ナフサ)を脱水素した後にトランスアルキル化することによって芳香族物質を形成するためには、比較的少量の水素が必要である。通常は、トランスアルキル化/分解反応器からの水素含有流を、通常はトランスアルキル化/分解反応器の直ぐ上流の脱水素反応器に再循環する。これらの反応器は高い水素/炭化水素比を必要とするが、水素をそれほどは消費しない。したがって、この再循環流を1つの反応器から他の反応器へ移動させるために圧縮器が必要であり、不純水素流が副生成物である。
【0004】
[04]したがって、精製業者はかかる副生成物流の使用が最大になるように流れの流路を配置することを試みている。しばしば、単一の流れを第1及び第2のプロセスにおいて順次用いることは実際的でない。これは、第1のプロセスは、化合物を第2のプロセスに好適でない流れの中に導入するからである。また、熱負荷及び圧縮の要求を考慮しなければならない。したがって、プロセスによって生成する副生成物流及びこれらのプロセスへの供給流の両方を最も効率的に使用する流路を開発することに大きな努力が払われている。
【0005】
[05]これらの流れの組成は、触媒、樹脂、及び他の処理材料が汚染されないことを確実にするためだけでなく、化合物が反応器中に反応を効率的且つ有効に行うことができる割合で存在することを確実にするためにも重要である。
【0006】
[06]多くの制御及び再循環システムが従来技術において公知である。例えば、米国特許第3,974,064号明細書は、気体再循環を有する接触反応における水素/炭化水素比を制御するためのシステムに関する。
【0007】
[07]米国特許第4,053,388号明細書は、互いに水素のバランスをとりつつ運転される水素処理器及び接触改質器の、キシレン類の製造における統合に関する。
[08]米国特許第4,362,613号明細書には、水素化分解蒸気を透過膜と接触させて蒸気から水素を分離し、それを圧縮し、それを水素化分解区域に戻すシステムが開示されている。
【0008】
[09]米国特許第4,929,794号明細書は、通常の水素源を用いる水素処理及び異性化プロセスの組み合わせに関する。この組合せによって、両方のプロセスにおいて望ましい低い水素/炭化水素比が与えられる。
【0009】
[10]米国特許第5,332,492号明細書には、水素化分解のような水素を消費するプロセスと統合すると特に有用な、冷却、圧力スイング吸着、及び分離プロセスの特定の配置によって水素に富む気体を回収することが開示されている。
【0010】
[11]米国特許第6,179,900号明細書は、選択透過膜によって接触分解器ガスのような精製施設のオフガスから水素を分離する方法に関する。
[12]米国特許第6,280,609号明細書には、装置を簡単にし、触媒の失活を最小にし、したがって再生の要求を最小にするために熱交換及び触媒移動の両方を行うことが開示されている。
【0011】
[13]米国特許第7,252,702号明細書は、通常は複数の圧力スイング吸着ユニットに供給する流れを、その代わりに混合して単一の圧力スイング吸着ユニットに供給する、石油精製施設及び石油化学プラントにおいて水素を回収する方法に関する。この方法により、供給流が減少し、燃料ガス又は燃焼物質として過剰の燃焼が減少するので、流れ改質器に対する負荷が低下する。
【0012】
[14]米国特許第7,265,252号明細書には、供給原料を選択的水素化分解し、次にベンゼン、トルエン、及びC炭化水素の割合が高い流れと共にトランスアルキル化区域に導入することが開示されている。
【0013】
[15]米国特許第7,268,263号明細書は、選択された脂肪族炭化水素をキシレン回収区域の異性化ユニットに再循環してユニットの効率性を増加させることに関する。
[16]米国特許第7,271,303号明細書には、C炭化水素を水素化分解して低イオウディーゼル及びナフサ沸点流を生成させ、これを改質及びトランスアルキル化してキシレン含有流を生成させ、水素の必要量のバランスをとる、低イオウディーゼル及び芳香族化合物を製造するための多区域プロセスが開示されている。水素を第1段階において圧縮し、改質/トランスアルキル化区域に送る。次に、水素に富む流れをこの区域から回収し、第2段階において加圧し、水素処理/水素化分解区域に分配する。
【0014】
[17]米国特許第7,288,687号明細書には、選択された脂肪族炭化水素をキシレン回収区域の異性化ユニットに再循環してユニットの効率性を増加させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,974,064号明細書
【特許文献2】米国特許第4,053,388号明細書
【特許文献3】米国特許第4,362,613号明細書
【特許文献4】米国特許第4,929,794号明細書
【特許文献5】米国特許第5,332,492号明細書
【特許文献6】米国特許第6,179,900号明細書
【特許文献7】米国特許第6,280,609号明細書
【特許文献8】米国特許第7,252,702号明細書
【特許文献9】米国特許第7,265,252号明細書
【特許文献10】米国特許第7,268,263号明細書
【特許文献11】米国特許第7,271,303号明細書
【特許文献12】米国特許第7,288,687号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
[18]以上のことから明らかなように、処理スキームを単純にして運転コスト及び設備コストの両方を減少させる、重質芳香族油からの芳香族物質の製造において水素を効率的に用いるためのエネルギー効率の良い方法に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
[19]第1の態様においては、本発明はエネルギー効率が良く、処理スキームを単純にして運転コスト及び設備コストの両方を減少させる、重質芳香族油からの芳香族物質の製造において水素を効率的に用いる方法に関する。
【0018】
[20]第2の態様においては、本発明は、水素流をまず芳香族物質反応区域を通して送り、次に精製及び圧縮を通して送って高圧水素処理及び水素化分解反応器において用いることによって水素のワンススルー経路を与えることにより、石油精製施設における水素の必要量のバランスをとる方法に関する。
【0019】
[21]本発明の他の態様は、芳香族物質製造区域内での気体の再循環に対する必要性を減少又は排除することに関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】[22]図1は、本発明の一態様のフローチャート図を示す。
【図2】[23]図2は、本発明の一態様に関するフローチャート図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[24]石油の精製は複雑であり、多数の処理ユニットを必要とする。1つのユニットからの生成物は、通常は更なる処理のための他のユニットに送ることができる。運転効率を高めるために、ユニットからの副生成物流をしばしば他のユニットにおいて供給原料として用いる。本発明の幾つかの態様は、ディーゼル及び芳香族物質の製造において、プロセスフローを改良し、設備投資を最小にし、及び処理効率を向上させることに関する。特に、本発明の幾つかの態様は、キシレン類及び他の生成物を含む流れを生成するC水素処理及び水素化分解ユニットを含む石油精製施設の一部に関する。
【0022】
[25]本発明の一態様を図1に示す。重質芳香族油に富む供給流51を水素処理反応器1に導入し、次に水素化分解反応器2に導入する。高純度の水素を52A及び52Bにおいて別々にそれぞれの反応器中に導入する。水素処理反応器1は脱窒及び脱硫反応器である。好ましい脱窒及び脱硫反応条件或いは水素処理反応条件としては、204℃(400°F)〜482℃(900°F)の温度、3.5MPa(500psig)〜17.3MPa(2500psig)の圧力,0.1〜10hr−1の1種類の水素処理触媒又は複数の水素処理触媒の組み合わせと合わせた新しい炭化水素質供給原料の液時空間速度が挙げられる。
【0023】
[26]ここで用いる「水素処理」という用語は、主としてイオウ及び窒素のようなヘテロ原子の除去のために活性な好適な触媒の存在下で水素含有処理ガスを用いるプロセスを指す。本発明において用いるのに好適な水素処理触媒は、任意の公知の通常の水素処理触媒であり、高表面積担体材料、好ましくはアルミナ上の、少なくとも1種類の第VIII族金属、好ましくは鉄、コバルト、及びニッケル、より好ましくはコバルト及び/又はニッケル、並びに少なくとも1種類の第VI族金属、好ましくはモリブデン及びタングステンを含むものが挙げられる。他の好適な水素処理触媒としては、ゼオライト触媒、並びに貴金属触媒(ここで、貴金属はパラジウム及び白金から選択される)が挙げられる。同一の反応容器内で1つより多いタイプの水素処理触媒を用いることは、本発明の範囲内である。第VIII族金属は、通常は2〜20重量%、好ましくは4〜12重量%の範囲の量で存在させる。第VI族金属は、通常は1〜25重量%、好ましくは2〜25重量%の範囲の量で存在させる。通常の水素処理温度は204℃(400°F)〜482℃(900°F)の範囲であり、圧力は3.5MPa(500psig)〜17.3MPa(2500psig)、好ましくは3.5MPa(500psig)〜13.9MPa(2000psig)である。
【0024】
[27]本発明の好ましい態様によれば、脱窒区域及び脱硫区域から得られる流出流を、水素52Bと一緒に水素化分解区域2中に導入する。水素化分解区域には、同じか又は異なる触媒の1以上の床を含ませることができる。一態様においては、好ましい水素化分解触媒は、1以上の第VIII族又は第VIB族金属水素化成分と組み合わせたアモルファス基材又は低レベルゼオライト基材を用いる。他の態様においては、水素化分解区域には、一般にその上に小割合の第VIII族金属水素化成分を堆積させた任意の結晶質ゼオライト分解基材を含む触媒を含ませる。ゼオライト基材と組み合わせるための更なる水素化成分は第VIB族から選択することができる。ゼオライト分解基材は、当該技術において時にはモレキュラーシーブと呼ばれ、通常は、シリカ、アルミナ、及びナトリウム、マグネシウム、カルシウム、希土類金属等のような1種類以上の交換性カチオンから構成される。これらは、4〜14Åの比較的均一な直径の結晶細孔を有することを更に特徴とする。3〜12の間のシリカ/アルミナのモル比を有するゼオライトを用いることが好ましい。自然界に見られる好適なゼオライトとしては、例えば、モルデナイト、スティルバイト、ヒューランダイト、フェリエライト、ダキアルダイト、チャバサイト、エリオナイト、及びファージャサイトが挙げられる。好適な合成ゼオライトとしては、例えば、B、X、Y、及びLの結晶タイプ、例えば合成ファージャサイト及びモルデナイトが挙げられる。好ましいゼオライトは、8〜12Åの結晶細孔径を有し、シリカ/アルミナのモル比が4〜6であるものである。好ましい群に含まれるゼオライトの典型例は合成Yモレキュラーシーブである。
【0025】
[28]天然ゼオライトは、通常は、ナトリウム形態、アルカリ土類金属形態、又は混合形態で見出される。合成ゼオライトは、殆ど常に、まずナトリウム形態で製造される。いずれの場合においても、分解基材として用いるためには、元々のゼオライト一価金属の殆ど又は全てを多価金属及び/又はアンモニウム塩でイオン交換し、次に加熱してゼオライトと結合しているアンモニウムイオンを分解して、それらの位置に水素イオン及び/又は交換部位(これは実際には水を更に除去することによって脱カチオン化する)を残留させることが好ましい。この性質の水素又は「脱カチオン化」Yゼオライトは、米国特許第3,130,006号明細書により詳しく記載されている。
【0026】
[29]混合多価金属−水素ゼオライトは、まずアンモニウム塩でイオン交換し、次に多価金属塩で部分的に逆交換し、次に焼成することによって製造することができる。幾つかの場合には、合成モルデナイトの場合と同様に、アルカリ金属ゼオライトの直接酸処理によって水素形態を製造することができる。好ましい分解基材は、当初のイオン交換容量を基準として少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%の金属カチオン欠乏のものである。具体的な望ましく安定な種類のゼオライトは、イオン交換容量の少なくとも20%が水素イオンによって充足されているものである。
【0027】
[30]本発明の好ましい水素化分解触媒において水素化成分として用いる活性金属は、第VIII族のもの、即ち、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金である。これらの金属に加えて、第VIB族の金属、例えばモリブデン及びタングステンなどの他の促進剤をこれらと共に用いることもできる。触媒中の水素化金属の量は広い範囲内で変化させることができる。広範に言うと、0.05重量%〜30重量%の量を用いることができる。貴金属の場合には、通常は0.05〜2重量%を用いることが好ましい。水素化金属を導入する好ましい方法は、ゼオライト基材を、金属がカチオン形態で存在している所望の金属の好適な化合物の水溶液と接触させることである。選択された1種類又は複数の水素化金属を加えた後、得られる触媒粉末を次に濾過し、乾燥し、所望の場合には潤滑剤、バインダーなどを加えてペレット化し、触媒を活性化し且つアンモニウムイオンを分解するために、空気中で、例えば371℃〜648℃(700°F〜1200°F)の温度において焼成する。或いは、まずゼオライト成分をペレット化し、次に水素化成分を加え、焼成によって活性化することができる。上記の触媒は非希釈形態で用いることができ、或いは粉末化ゼオライト触媒を、5〜90重量%の範囲の割合の他の比較的活性がより少ない触媒、希釈剤、又はバインダー、例えばアルミナ、シリカゲル、シリカ−アルミナコゲル、活性化クレーなどと混合し、共ペレット化することができる。これらの希釈剤はそのまま用いることができ、或いはこれらに小割合の第VIB族金属及び/又は第VIII族金属のような更なる水素化金属を含ませることができる。
【0028】
[31]例えばアルミノホスフェートモレキュラーシーブ、結晶質クロモシリケート、及び他の結晶質シリケートを含む更なる金属で活性化された水素化分解触媒を本発明方法において用いることもできる。結晶質クロモシリケートは、米国特許第4,363,718号明細書により十分に記載されている。
【0029】
[32]水素化分解触媒と接触させる炭化水素質供給原料の水素化分解は、水素の存在下において、好ましくは232℃(450°F)〜468℃(875°F)の温度、3.5MPa(500psig)〜20.8MPa(3000psig)の圧力、0.1〜30hr−1の液時空間速度(LHSV)、及び84標準m/m(500標準立方フィート/バレル)〜4200m/m(25,000標準立方フィート/バレル)の水素循環率を含む水素化分解反応器条件で行う。本発明によれば、水素化分解条件は、芳香族化合物及びディーゼルを製造するという観点から供給原料に基づいて選択する。
【0030】
[33]水素処理/水素化分解区域には、それぞれが1以上のタイプの水素処理触媒又は水素化分解触媒を含む1以上の容器又は床を含ませることができる。本発明の幾つかの態様においては液体炭化水素の再循環は通常的ではないが、液体炭化水素流を水素処理/水素化分解区域に再循環する場合には、再循環流は、水素化分解触媒中に直接導入することができ、或いは水素処理触媒の床を通して流し、次に水素化分解触媒と接触させることができる。
【0031】
[34]図1に要約するこの態様においては、水素化分解反応器からの流出流を気/液分離区域A中に導入する。分離区域Aにおいては、気体流を液体流から分離する。気体流は、再循環流55及びフラッシュガス58を含んでいてよく、後者はシステムから取り出す。また、不純な水流57もシステムから取り出し、炭化水素液59は更なる処理のために取り出す。
【0032】
[35]炭化水素液59は次に分別区域Bにおいて処理して、操作者の選択にしたがって種々の生成物留分を得る。分別区域Bから誘導することができる物質流としては、LPG、軽質ナフサ、ディーゼル、及び芳香族物質が挙げられる。操作者は、生成物の好ましい分布を得るように運転条件を調節する。
【0033】
[36]図1から分かるように、炭化水素液59は分別区域Bに導入する。分別区域Bにおいては、64においてディーゼルが分離回収され、流れ17においてLPGが分離回収される。
【0034】
[37]図1に示すように、分別区域Aからナフサ流65を取り出し、補給水素66と混合する。一態様においては、ナフサ流65は、LPGの沸点より高くディーゼルの沸点より低い沸点の全ての炭化水素を含んでいてよい。或いは、他の態様においては、分別区域Aにおける更なる分別運転からより軽質のナフサを分離回収することができる。
【0035】
[38]補給水素66は、通常はナフサ改質又は水素プラントからのガスのような低純度の供給源からのものであり、メタン及び他の軽質炭化水素、並びに微量のN、CO、CO、及びHOのような幾つかの汚染物質を含んでいてもよい。
【0036】
[39]この加熱流の全部を、通常は脱水素器、トランスアルキル化反応器、又は両方の反応器の組合せを含む芳香族物質反応区域Cに導入する。脱水素器は改質器としても知られている。当業者は、脱水素反応は非常に吸熱性であることを認識している。したがって、通常はこの目的のために複数の反応器を用い、生成物流を再加熱して反応の正味の吸熱を補償する。しかしながら、本発明の幾つかの態様においては、かかる再加熱は必要ではなく、或いは少なくとも相当に減少する。本発明のこれらの態様によれば、比較的大量の水素補給ガスによって相当量の熱が1つ又は複数の反応器を通して運ばれる。したがって、本発明の幾つかの態様によれば、複数の反応器をなお用いることができるが、反応器間の加熱の必要性はないか又は低くなる。
【0037】
[40]芳香族物質反応区域Cにおいて改質器を存在させる場合には、任意の好適な改質触媒を用いることができる。好ましい改質触媒は、少なくとも1種類の白金族金属成分、及び場合によっては改質剤金属成分、例えばスズ又はレニウムがその上に分散されている固体耐熱性酸化物担体を含む。担体は、アルミナ、シリカ/アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、及びゼオライトなどの当該技術において周知の任意の数多くの担体であってよい。担体として用いることができるアルミナとしては、γ−アルミナ、θ−アルミナ、δ−アルミナ、及びα−アルミナが挙げられ、γ−及びθ−アルミナが好ましい。アルミナの中には、スズ、ジルコニウム、チタン、及びホスフェートのような変性剤を含むアルミナが含まれる。用いることのできるゼオライトとしては、ファージャサイト、ゼオライトβ、Lゼオライト、ZSM−5、ZSM−8、ZSM−11、ZSM−12、及びZSM−35が挙げられる。担体は、球状体、錠剤、ケーキ状物、押出物、粉末、顆粒等のような任意の所望の形状で形成することができ、任意の粒径で用いることができる。
【0038】
[41]球状アルミナ担体を製造する1つの方法は、米国特許第2,620,314号明細書に記載されている周知の油滴下法によるものである。油滴下法は、当該技術において教示されている任意の技術によって、好ましくはアルミニウム金属を塩酸と反応させることによってアルミニウムヒドロゾルを形成し;ヒドロゾルを好適なゲル化剤と混合し;得られた混合物を昇温温度に保持している油浴中に落下させる;ことを含む。混合物の液滴を、固化してヒドロゲル球状体が形成されるまで油浴中に保持する。次に、球状体を油浴から連続的に排出し、通常は油及びアンモニア性溶液中での特定の熟成及び乾燥処理にかけて、それらの物理特性を更に向上させる。得られる熟成しゲル化した球状体を、次に洗浄し、80℃〜260℃の比較的低い温度で乾燥し、次に455℃〜705℃の温度で1〜20時間焼成する。この処理によって、ヒドロゲルが対応する結晶質γ−アルミナに転化する。θ−アルミナが所望の場合には、次にヒドロゲル球状体を950℃〜1100℃の温度において焼成する。
【0039】
[42]担体材料の別の形態は、好ましくは押出可能なドウ(dough)が形成されるまでアルミナ粉末を水及びHClのような好適な解膠剤と混合することによって製造される円筒状の押出物である。得られるドウを好適な寸法のダイを通して押出して押出粒子を形成する。これらの粒子を次に、260℃〜427℃の温度において0.1〜5時間乾燥して押出粒子を形成する。耐熱性無機酸化物は実質的に純粋なアルミナを含むことが好ましい。代表的な実質的に純粋なアルミナは、チーグラーの米国特許第2,892,858号明細書に記載のチーグラー高級アルコール合成反応からの副生成物として、米国特許第3,852,190号明細書及び米国特許第4,012,313号明細書において特徴付けられている。
【0040】
[43]改質触媒の必須成分は分散された白金族成分である。この白金族成分は、最終触媒複合体内に、複合体の1種類以上の他の成分と化学的に組み合わせられた酸化物、硫化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物等のような化合物として、或いは元素状金属として存在していてよい。この成分の実質的に全部が元素状態で存在し、担体材料内に均一に分散していることが好ましい。この成分は、最終触媒複合体中に、触媒的に有効である任意の量で存在させることができるが、比較的少ない量が好ましい。所望の担体上に分散させることができる白金族金属の中では、ロジウム、パラジウム、白金が好ましい金属であり、白金が最も好ましい。
【0041】
[44]第IVA(IUPAC14)族金属成分は、改質触媒の場合によって用いる成分である。第IVA(IUPAC14)族金属の中では、ゲルマニウム及びスズが好ましく、スズが特に好ましい。この成分は、元素状金属として、酸化物、硫化物、ハロゲン化物、オキシ塩化物等のような化合物として、或いは多孔質担体材料及び/又は触媒複合体の他の成分との物理的又は化学的組合せとして存在させることができる。好ましくは、第IVA(IUPAC14)族金属の相当部分は、元素状金属の酸化状態よりも上の酸化状態で最終触媒中に存在する。
【0042】
[45]レニウムもまた、場合によって用いる改質触媒の金属促進剤である。上記の触媒成分に加えて、他の成分を触媒に加えることができる。例えば、鉛、インジウム、ガリウム、イリジウム、ランタン、セリウム、リン、コバルト、ニッケル、鉄、及びこれらの混合物の非排他的なリストから選択される変性剤金属を改質触媒に加えることができる。
【0043】
[46]脱水素、脱水素環化、又は水素化反応を含む本発明の幾つかの態様において特に有用な改質触媒の他の場合によって用いる成分は、アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分である。より正確には、この任意的な成分は、アルカリ金属−セシウム、ルビジウム、カリウム、ナトリウム、及びリチウム−の化合物、及びアルカリ土類金属−カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及びマグネシウム−の化合物から成る群から選択される。
【0044】
[47]脱水素化器が存在する場合には、反応物質は、個々の反応器内において、上向流、下向流、又は放射流の形態で触媒と接触させることができる。触媒は、関連する連続触媒再生手段を備える固定床システム又は移動床システム内に含ませる。失活した触媒を再活性化する代替的なアプローチは、当業者に周知であり、触媒の再生及び再活性化のためにユニット全体を停止する半再生型運転、或いは他の反応器を運転中のままにしながら、個々の反応器をシステムから隔離して、再生及び再活性化するスイング反応器運転が挙げられる。
【0045】
[48]本発明の幾つかの態様において改質区域内に適用される改質条件としては、通常は、100kPa(14.7psig)〜7MPa(1000psig)の範囲内で選択される圧力が挙げられる。特に良好な結果は、低い圧力、即ち350(50psig)〜2750MPa(400psig)の圧力において得られる。改質温度は、177℃(350°F)〜565℃(1049°F)の範囲である。改質技術における当業者に周知なように、この広い範囲内の温度の当初の選択は、主として、充填原料及び触媒の特性を考慮して、時にはオクタンの形態で測定される生成物リフォメートの所望の生成物混合比に応じて行われる。通常は、温度は、一定のオクタン生成物を与えるために、運転中にその後にゆっくりと上昇させて、生じる不可避的な失活を補償する。
【0046】
[49]補給水素流66によって、改質区域に導入される炭化水素供給流1モルあたり1〜20モルの水素の量を与えるのに十分な水素を供給し、優れた結果は炭化水素供給流1モルあたり2〜10モルの水素を用いる場合に得られる。同様に、改質の際に用いる液時空間速度は、0.2〜20hr−1の範囲から選択される。
【0047】
[50]トランスアルキル化反応器が存在する場合には、通常は脱水素器からの生成物流の全部をトランスアルキル化反応器中に導入する。統合された改質−トランスアルキル化区域において好ましく用いられる運転条件としては、通常は、177℃(350°F)〜550℃(1022°F)の温度、及び0.2〜10hr−1の範囲の液時空間速度が挙げられる。
【0048】
[51]本発明の一態様によれば、この補給水素を用いることによって、気体状の水素に富む流れを再循環させてこの芳香族物質区域の水素必要量のバランスをとる必要性又は意義が取り除かれる。幾つかの態様においては、少量の再循環流をなお存在させることができる。再循環流が大きく減少することにより、再循環流圧縮器及び関連する配管のような装置、及び例えば再循環流圧縮器の運転に関する運転コストにおける大きな節約がもたらされる。更に、本発明の幾つかの態様においては、これらの反応器を通常は水素処理及び水素化分解反応器よりも低い圧力で運転し、このために補給水素流66を水素処理及び水素化分解反応器において用いる非常に高い圧力に圧縮する必要がなく、これによって大きな節約がもたらされる。
【0049】
[52]芳香族物質反応区域Cから得られる生成物67は、次に気/液分離器11に導入する。気/液分離器11は、通常は14〜30barの間のゲージ圧で運転する。ナフサ沸点範囲の液体炭化水素が流れ71として回収される。この液体炭化水素流は、ナフサよりも大きい芳香族物質モル流量を有する。この流れは更に分別して、生成物を分離回収又は再循環することができる。水素に富む気体流68は、圧力スイング吸着(PSA)ユニット15内で精製する。PSAユニットから、テールガス流69及び精製水素流70が回収される。一態様においては、流れ70の水素の純度は、通常は少なくとも95%、より通常的には少なくとも97%であり、最も通常的には少なくとも98%である。
【0050】
[53]水素流70は、高純度水素圧縮区域Dにおいて圧縮する。区域Dからの出口圧力は、水素を水素処理反応器1及び水素化分解反応器2中に確実に導入できるようにするのに十分である。圧縮区域Dからの高純度の高圧水素は、気/液分離区域Aからの塔頂気体流55と混合して、それぞれ流れ52A及び52Bとして水素処理反応器1及び水素化分解反応器2中に別々に導入することができる。
【0051】
[54]したがって、本発明の幾つかの態様によるこの水素のワンススルー処理によって、装置コスト及び運転コストの大きな節約が得られる。更に、補給水素流66をまず、低い純度が運転の問題を引き起こさない芳香族物質反応区域において用いて、吸熱反応のための熱を与え、好ましく高い水素/炭化水素のモル比を与える。次に、水素に富むオフガス(off gas)を単一の圧力スイング吸着ユニット内で精製して、消費する前に一旦圧縮する。
【0052】
[55]図2は、特定の生成物を製造する本発明の一態様を示す。図1及び2において、同様の参照番号は同様の部品を示すために用いる。したがって、例えば、チャージヒーター8はそれぞれの図面において同一の参照番号を有する。このように同一の部品に関して同じ番号を用いることによって、同様の部品が特定され、図の比較がより容易になる。
【0053】
[56]図2の態様は、炭化水素供給原料から芳香族物質及びディーゼルを製造するのに特に有用である。好適な炭化水素供給原料は、149℃(300°F)〜399℃(750°F)の範囲の沸点を有し、好ましくは少なくとも50体積%の芳香族化合物を含む。特に好ましい供給原料は、流動接触分解(FCC)プロセスの副生成物であるライトサイクルオイル(LCO)の少なくとも一部を含む。LCOは、最終生成物としては望ましくなく、相当量のイオウ、窒素、及び多核芳香族化合物を含んでいるので、経済的で有利な供給原料である。したがって、本発明によって、低い価値のLCO流を高価値の芳香族炭化水素化合物及びディーゼルに転化させることができる。
【0054】
[57]図2に関する記載及び記述を容易にするために、「反応区域」という用語は、それぞれが記載の目的を有する複数の反応容器を指すように用いることができる。同様に、反応器という記載は、単一の反応容器のみが存在することを示唆するものではない。むしろ、この用語は複数の反応容器も指す。図面において単一の容器として示されているそれぞれの反応器は、実際には複数の反応容器を含んでいてよい。
【0055】
[58]本発明の1つの好ましい態様においては、選択された供給原料51をまず、水素52Aと共に、水素処理反応条件において脱窒及び脱硫反応区域1中に導入する。脱窒反応及び脱硫反応、並びに水素化分解反応に関して好ましい反応条件は上記に示した。通常の触媒は、ここに記載したものと当業者に公知のものの両方である。
【0056】
[59]この態様によると、水素処理反応器1からの流出流を、高純度の高圧水素52Bと一緒に水素化分解反応器2に導入する。
[60]図2に示す態様によれば、水素化分解区域2から得られる流出流53を高圧分離器3中に導入する。スクラバー4内で蒸気54をアミン処理し、洗浄された炭化水素55を、水素流の一部として水素処理ユニット1及び水素化分解ユニット2に導入する。硫化水素、アンモニア、及び他の汚染物質55Aをシステムから取り出す。高圧分離器3からの液体56はフラッシュドラム4内でフラッシングして、不純の水57をシステムから取り出し、フラッシュガス58を回収する。
【0057】
[61]炭化水素液59はストリッパー5中に導入する。一態様においては、LPG及び軽質ナフサ60を塔頂から取り出し、ユニット17において分離回収する。ストリッパー5の底部からC炭化水素を含む液体流61が回収される。
【0058】
[62]液体流61は主分別器6に導入し、3つの主たる流れに分別する。C〜195°Fの沸点範囲のガソリン流62を塔頂から排出し、脱ヘキサンカラム12に導入する。しかしながら、より高いベンゼンの純度が所望の場合には、この流れは分離回収せず、ミッドカットナフサ流と共に更に処理する。塔底流はディーゼル流64を含む。
【0059】
[63]185°F〜380°Fの沸点を有するミッドカットナフサは、脱硫器7内で処理してその中にイオウが実質的に存在しないようにすることができる。実質的にイオウを含まない雰囲気中で改質区域9を運転することが好ましい実施である。当該技術において公知の任意の保護床制御手段を用いて、改質反応区域9に充填するナフサ供給原料63を処理することができる。供給流中の好ましい最大イオウ濃度は2ppmである。必要な場合には、例えば供給原料を、保護床吸着プロセス、保護床接触プロセス、又はこれらの組合せにかけて、流れの中のイオウを2ppm未満に保持することができる。
【0060】
[64]好ましい保護床吸着プロセスにおいては、モレキュラーシーブ、高表面積アルミナ、高表面積シリカ−アルミナ、炭素モレキュラーシーブ、結晶質アルミノシリケート、活性炭、及び高表面積の金属、例えばニッケル又は銅を含む組成物などのような吸着剤を用いることができる。保護床は改質区域9又は水素化分解区域2内の別々の容器内に装填することができ、或いは保護床は1つ又は複数の触媒容器それ自体の内部に装填することができる。保護床はまた、トランスアルキル化触媒上を通過する特定の流れから生成する可能性があるイオウ又は塩化物のような任意の汚染物質を処理するために、必要に応じてトランスアルキル化区域と関連して装填することもできる。得られる脱硫ナフサ65は、次に補給水素66及びトルエン分別カラム13からの塔頂流76と混合してチャージヒーター8に導入することができる。
【0061】
[65]この態様においては、補給水素流66は、通常は、水素プラント又はナフサ改質器からのような低純度供給源からのものである。脱水素器9において行う吸熱脱水素工程は熱を必要とし、これは比較的大量の気体流によって反応器を通して運ばれる。したがって、反応器間の加熱は必要ではない。通常の運転条件及び触媒を以下に記載する。
【0062】
[66]本発明の幾つかの態様においては、脱水素器のみ、トランスアルキル化反応器のみ、或いは両方を用いることができる。図2に示す態様は、脱水素反応器又は区域9、及びトランスアルキル化反応器又は区域10の両方を示す。しかしながら、本発明の全ての態様において両方のプロセスが必要なわけではない。
【0063】
[67]トランスアルキル化区域10においては、リフォメート供給原料(reformate feedstock)を、好ましくは気相中、水素の存在下においてトランスアルキル化する。トルエン及び9以上の炭素数の芳香族炭化水素は、トランスアルキル化区域の部分に直接供給して改質区域の部分を迂回させることもできる。このような流れは、キシレン類塔頂流とA11塔底流との間の留分である流れ80としてキシレン類カラム14から得ることができる。遊離水素は、存在する場合には、アルキル芳香族物質1モルあたり0.1モル乃至アルキル芳香族物質1モルあたり10モルの量で存在する。この水素とアルキル芳香族物質との比は、水素/炭化水素比とも呼ばれる。トランスアルキル化反応によって、好ましくは、キシレン含量が増加しており、トルエンも含む生成物67が得られる。
【0064】
[68]トランスアルキル化反応区域10への供給流は、通常は、まず導入される流れ96及び/又は80による急冷によるか、及び/又は反応区域の流出流に対する間接的な熱交換によって冷却し、次により冷たい流れか又は流れを製造するためのボイラーの供給水による交換によって反応温度に更に冷却する。トランスアルキル化触媒の円筒状の固定床を有する単一の反応容器を用いることが好ましいが、所望の場合には触媒の移動床又は放射流反応器を用いる他の反応構成を用いることができる。反応区域10を通して混合流を流すことによって、未転化の供給流及び生成物炭化水素を含む流出流67が生成する。この流出流は、通常は、反応区域に導入される流れに対する間接的な熱交換によって冷却し、次に空気又は冷却水を用いることによって更に冷却する。
【0065】
[69]トランスアルキル化反応を行うために、本発明においては少なくとも1つの区域内にトランスアルキル化触媒を含ませるが、特定の触媒に関して限定する意図はない。トランスアルキル化区域10において用いる条件としては、通常は200℃(392°F)〜540℃(1004°F)の温度が挙げられる。トランスアルキル化区域10は、広範には100kPa(14.7psig)〜6MPa(870psig)の範囲の比較的高い圧力において運転する。トランスアルキル化反応は、広範囲の空間速度にわたって行うことができる。液時空間速度は一般に0.1〜20hr−1の範囲である。
【0066】
[70]任意の好適なトランスアルキル化触媒をトランスアルキル化区域において用いることができる。好ましいトランスアルキル化触媒は、任意的な金属成分と組み合わせた固体酸物質を含む。好適な固体酸物質としては、全ての形態及びタイプのモルデナイト、マザイト(ω−ゼオライト)、β−ゼオライト、ZSM−11,ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23,MFIタイプのゼオライト、NESタイプのゼオライト、EU−1、MAPO−36、MAPSO−31、SAPO−5、SAPO−11、SAPO−41、及びシリカ−アルミナ、或いはかかる固体酸のイオン交換形態が挙げられる。例えば、米国特許第3,849,340号明細書には、30:1未満の当初のSiO/Alのモル比で製造したモルデナイトからAlを酸抽出することによって製造される少なくとも40:1のSiO/Alのモル比を有するモルデナイト成分、並びに銅、銀、及びジルコニウムから選択される金属成分を含む触媒複合体が記載されている。上記記載の及び他の公知の触媒材料と組み合わせた耐熱性無機酸化物が、トランスアルキル化操作において有用であることが分かっている。例えば、シリカ−アルミナが米国特許第5,763,720号明細書に記載されている。結晶質アルミノシリケートも、当該技術においてトランスアルキル化触媒として用いられている。ZSM−12は、米国特許第3,832,449号明細書により詳しく記載されている。ゼオライトβは、米国再発行特許発明第28,341号(原特許:米国特許第3,308,069号)明細書により詳しく記載されている。ゼオライトβの好ましい形態は米国特許第5,723,710号明細書(参照として本明細書中に包含する)に記載されている。MFIトポロジーのゼオライトの製造も当該技術において周知である。1つの方法においては、アルミナ源、シリカ源、アルカリ金属源、水、及びアルキルアンモニウム化合物又はその前駆体を含む混合物を結晶化させることによってゼオライトを製造する。更なる記載は、米国特許第4,159,282号明細書、同第4,163,018号明細書、及び同第4,278,565号明細書において見られる。ゼオライトωの合成は米国特許第4,241,036号明細書に記載されている。本発明において有用なZSM中孔径ゼオライトとしては、ZSM−5(米国特許第3,702,886号);ZSM−11(米国特許第3,709,979号);ZSM−12(米国特許第3,832,449号);ZSM−22(米国特許第4,556,477号);ZSM−23(米国特許第4,076,842号);が挙げられる。欧州特許第0378916号明細書には、NESタイプのゼオライト、及びNU−87を製造する方法が記載されている。EUO構造タイプのEU−1ゼオライトは米国特許第4,537,754号明細書に記載されている。MAPO−36は米国特許第4,567,029号明細書に記載されている。MAPSO−31は米国特許第5,296,208号明細書に記載されており、代表的なSAPO組成物、例えばSAPO−5、SAPO−11、及びSAPO−41は米国特許第4,440,871号明細書に記載されている。
【0067】
[71]任意的に耐熱性のバインダー又はマトリクスを用いて、トランスアルキル化触媒の製造を容易にし、強度を与え、製造コストを減少させる。バインダーは、組成が均一で、プロセスにおいて用いる条件に対して比較的耐性でなければならない。好適なバインダーとしては、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、クロミア、チタニア、ボリア、トリア、ホスフェート、酸化亜鉛、及びシリカの1以上のような無機酸化物が挙げられる。アルミナが好ましいバインダーである。
【0068】
[72]トランスアルキル化触媒にも任意的な金属成分を含ませることができる。1つの好ましい金属成分は第VIII(IUPAC8〜10)族の金属、例えばニッケル、鉄、コバルト、及び白金族金属である。白金族、即ち白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、及びイリジウムの中では、白金が特に好ましい。他の好ましい金属成分はレニウムであり、以下に一般的に記載するように用いられる。この金属成分は、最終触媒複合体内に、複合体の1以上の他の成分と化学的に組み合わせられた酸化物、硫化物、ハロゲン化物、又はオキシハロゲン化物のような化合物として存在させることができる。レニウム金属成分は、共沈殿、イオン交換、共摩砕、又は含侵のような任意の好適な方法で触媒中に含ませることができる。触媒を製造する好ましい方法は、レニウム金属の可溶性の分解性化合物を用いて、これを担体材料に比較的均一に含侵させることを含む。用いることのできる代表的なレニウム化合物としては、過レニウム酸アンモニウム、過レニウム酸ナトリウム、過レニウム酸カリウム、オキシ塩化カリウムレニウム、ヘキサクロロレニウム酸(IV)カリウム、塩化レニウム、レニウムヘプトキシド、過レニウム酸などの化合物が挙げられる。好ましくは、この化合物は、共汚染種を除去するための追加の工程が必要ない可能性があるので、過レニウム酸アンモニウム又は過レニウム酸である。
【0069】
[73]トランスアルキル化触媒には、場合によっては、すでに議論した金属成分に加えて更なる金属成分を含ませることができ、或いはこれらの金属成分の全部に代えて更なる金属成分を含ませることができる。触媒の更なる金属成分としては、例えばスズ、ゲルマニウム、鉛、及びインジウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。当該技術において公知の任意の手段によって、触媒的に有効な量のかかる更なる金属成分を触媒中に含ませることができる。
【0070】
[74]トランスアルキル化区域10から得られる流出流67は、気/液分離器11中に導入して水素に富む気体流68を与え、これを圧力スイング吸着器15内での精製にかける。テールガス69が分離回収される。
【0071】
[75]圧力スイング吸着器15において、水素生成物70の純度を少なくとも99.5重量%、より通常的には99.8重量%、更により通常的には99.9重量%に上昇させる。実質的に純粋な水素流70を1以上の段階の圧縮器16で圧縮して、アミンスクラバー4からの流れ55と一緒に、高い圧で、流れ52Aとして水素処理区域1、及び流れ52Bとして水素化分解区域2に供給し、そこで実質的に完全に消費する。
【0072】
[76]したがって、本発明の幾つかの態様によるこの水素のワンススルー処理によって、設備コスト及び運転コストの大きな節約がもたらされる。更に、補給水素流66は、まず低い純度が運転の問題を引き起こさない脱水素器9及びトランスアルキル化反応器10において用いて、吸熱反応のための熱を与え、好ましく高い水素/炭化水素のモル比を与える。次に、水素に富むオフガスを単一の圧力スイング吸着ユニット内で精製して、消費する前に一旦圧縮する。
【0073】
[77]気/液分離器11からのナフサ沸点範囲のC液体芳香族物質を含む炭化水素71は、脱ヘキサンカラム12内で分別する。一態様においては、ガソリン流62を脱ヘキサンカラム12への供給流と混合して、ベンゼン流より低い温度の沸点の炭化水素72を取り出す。一態様においては、この流れの一部を流れ73としてユニット17におけるLPG及び軽質ナフサ回収に送ることができる。残りはシステムから取り出す。
【0074】
[78]一態様においては、ベンゼン留分94を塔底留分75と混合して、トルエンカラム13内で更に分別する。トルエンカラム13からの塔頂流96は、次にトランスアルキル化反応器10に戻す。この態様によりキシレンの製造が最大になる。他の態様においては、キシレン製造を犠牲にしてより多くのベンゼン及びトルエンを製造するために、流れ74及び76を生成物タンクに送ることができる。例えば、操作者が更なる高オクタンガソリンを製造することを望む場合には、ベンゼン/トルエンの正味の生成物流速を増加させ、それによって全キシレン製造量を減少させる。この容易に利用できる特徴によって、異なる生成物の候補物質を製造する非常に柔軟な方法が与えられる。
【0075】
[79]図2において他の好ましい態様も示す。この態様においては、ベンゼン74をシステムから取り出し、塔底流75をトルエンカラム13に与える。塔頂トルエン流76を再循環して軽質ナフサ65と混合する。
【0076】
[80]全ての態様において、トルエンカラム13からの塔底流77は、更なる分別のためにトランスアルキル化/分解カラム14に送る。本発明の幾つかの態様においては、これらの流れはトランスアルキル化/分解カラム13から排出される。塔頂流78はキシレン類生成物を含む。塔底流79は少なくとも10個の炭素原子を有する芳香族化合物を含む。前示の態様では、9個又は10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を流れ80として排出し、トランスアルキル化/分解反応器10への供給流に直接戻す。
【0077】
[81]以上のことから明らかなように、本発明の幾つかの態様によって、ディーゼル及び芳香族物質を製造するための水素化分解区域及び芳香族物質区域を含み、芳香族物質区域内の再循環気体圧縮器の必要性が低くなり又は排除され、水素循環流路が「ワンススルー」で構成されており、即ち相当量の再循環が必要ない、多区域プロセスが提供される。かかるプロセスに典型的なように、不純の水素含有流がプロセスのための水素源として働く。しかしながら、本発明の幾つかの態様においては、不純流を芳香族物質セクションのためのチャージヒーター中に導入して、脱水素反応における反応の吸熱を補償する必要性を減少させ、芳香族物質区域内の脱水素器及びトランスアルキル化反応器の周りに水素含有流を再循環させる必要性を実質的に排除するように働かせる。また、本発明の幾つかの態様によれば、水素補給流のための「ワンススルー」流路が与えられ、水素精製のための圧力スイング吸着ユニットの数が1に減少する。本発明の幾つかの態様によれば、水素は水素処理及び水素化分解反応工程において実質的に消費されるので、良好にプロセスの水素必要量のバランスが保たれる。
【0078】
[82]本発明を実施する現在好ましいモードを含む具体的な例に関して本発明を記載したが、当業者であれば、特許請求の範囲に示す本発明の精神及び範囲内の上記に記載のシステム及び方法の数多くの変更及び置換が存在することを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度の大量の水素を消費する少なくとも1つの第1の反応ユニット、及び大量の水素を消費しないが水素の存在が必要であり、低純度の水素の存在を許容することができる少なくとも1つの第2の反応ユニットを有する生成物製造反応システムにおいて水素流を統合する方法であって、
(a)少なくとも1つの第1の反応ユニット内において第1の反応物質と実質的に純粋な水素流を反応させて第1の流出流を生成させ;
(b)第1の流出流を分別して少なくとも1つの第1の生成物流を回収し;
(c)低純度水素含有流を工程(b)からの少なくとも1つの第1の生成物流に導入して混合流を形成し;
(d)混合流を反応させて、水素、揮発性化合物、及び生成物を含む第2の生成物流を形成し;
(e)生成物から水素及び揮発性成分を分離して、気体流及び生成物含有流を形成し;
(f)気体流を精製して実質的に純粋な水素含有流を与え;
(g)実質的に純粋な水素含有流上への圧力を上昇させ、実質的に純粋な水素含有流を工程(a)の少なくとも1つの第1の反応ユニットに導入し;そして
(h)生成物を回収する;
ことを含む上記方法。
【請求項2】
低純度水素含有流中に混入物質を含ませることによって工程(d)における転化率を向上させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不純水素流を芳香族物質区域に供給し;
芳香族物質区域内において不純水素流を他の炭化水素と反応させて流出流を生成させ;
流出流から水素に富む流れを分離し;
水素に富む流れを精製して実質的に純粋な水素流を生成させ;
実質的に純粋な水素流を圧縮し、実質的に純粋な水素流を高圧水素処理反応器及び水素化分解反応器の少なくとも1つに供給する;
ことを含む、石油精製施設内での水素の必要量のバランスをとる方法。
【請求項4】
芳香族物質区域が少なくとも1つの脱水素反応器を含み、他の炭化水素が軽質ナフサ流を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
芳香族物質区域内に脱アルキル化反応器を更に含む、請求項3及び4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
水素に富む流れを分離した後の流出流の残りを分別して、ベンゼンフラクション、トルエンフラクション、及びキシレン類フラクションを形成する、請求項3、4、及び5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
(a)C炭化水素を含む炭化水素質流及び実質的に純粋な水素流を、それぞれ水素処理条件下で水素処理触媒、及び水素化分解区域内において水素化分解条件下で水素化分解触媒と順次接触させて、キシレン類を含む水素化分解区域流出流を生成させ;
(b)分別区域内において、水素化分解区域流出流を分別して、C及びより軽質の炭化水素を含む炭化水素の第1の流れ、195°Fより低い沸点の炭化水素を含む炭化水素の第2の流れ、180°F〜380°Fの間の沸点の炭化水素を含む第3の流れ、及びディーゼルを含む第4の流れを分離回収し;
(c)低純度水素含有流を工程(b)からの第3の流れに導入して混合流を形成し、混合流を加熱して加熱混合流を形成し;
(d)加熱混合流を、脱水素触媒、トランスアルキル化触媒、又は脱水素触媒及びトランスアルキル化触媒の両方と接触させて脱水素流を形成し;
(e)脱水素流中の芳香族物質から水素及び揮発性成分を分離して、気体流及び芳香族物質含有流を形成し;
(f)気体流を圧力スイング吸着にかけて、実質的に純粋な水素含有流を与え;
(g)実質的に純粋な水素含有流上への圧力を上昇させ、それを工程(a)の水素化分解区域に導入し;そして
(h)芳香族物質含有流中の液体炭化水素生成物を回収する;
ことを含む、重質芳香族油からの芳香族物質の製造において水素を効率的に用いる方法。
【請求項8】
工程(h)の芳香族物質含有流を分別して、ベンゼンフラクション、トルエンフラクション、及びキシレン類フラクションを形成することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
トランスアルキル化触媒を存在させ、トルエンフラクションをトランスアルキル化反応器に再循環することを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
キシレン類フラクションを分別して、C〜C10アルキル芳香族化合物を含む流れを形成し、この流れを工程(d)の脱水素流と混合し、この混合物をトランスアルキル化触媒と接触させることを更に含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−513522(P2012−513522A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543514(P2011−543514)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/062022
【国際公開番号】WO2010/074802
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】