説明

重金属固定化剤およびそれを用いた灰の処理方法

【課題】アルミニウム塩を重金属含有灰に添加して重金属の固定処理を行う際の、薬剤添加設備や混練機などの反応容器の金属部の腐食を防止して、処理設備の寿命の延長、メンテナンス費用の軽減を図る。
【解決手段】アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤とを含む灰処理用重金属固定剤。アルミニウム塩としては硫酸バンドおよび/またはポリ塩化アルミニウムが好ましく、金属の腐食抑制剤としては第4級アンモニウム塩と有機イオウ化合物との併用が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重金属固定化剤およびそれを用いた灰の処理方法に係り、特に、廃棄物焼却施設や発電プラントなどの焼却プラントから発生する焼却灰や、排ガスに同伴して排出され、除塵された飛灰(以下、これら焼却灰および飛灰を「重金属含有灰」と記載する)を処理して、重金属の溶出を防止するための灰処理用重金属固定剤であって、この重金属固定処理のための処理設備の腐食劣化を防止して、その寿命の延長とメンテナンス費用の軽減を図る灰処理用重金属固定剤と、この灰処理用重金属固定剤を用いた灰の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重金属含有灰からの重金属の溶出防止方法として、重金属に重金属固定化剤を添加混練して重金属を固定する方法があり、重金属固定化剤としては、硫酸バンドと正リン酸やキレート剤等とを併用するものなどが提案されている(例えば、特開平9−141226号公報)。
【特許文献1】特開平9−141226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記処理において用いられる硫酸バンドやポリ塩化アルミニウムなどのアルミニウム塩は酸性物質であるため、これらを重金属含有灰に添加する際の添加設備や重金属含有灰との混練機などの反応容器の金属部を腐食させ、設備の寿命を短命化したり、メンテナンス費用を高くする問題があった。
即ち、例えば、混練機の内壁を構成する鉄またはステンレスの部分とアルミニウム塩が直接接触し、その部分を腐食させ、設備が短命化し、交換頻度が上がり、多額の修繕コストを要していた。また、重金属固定剤と接触するタンク、ポンプの注入ノズルなどの薬剤注入設備についても同様の問題があった。
【0004】
本発明は、アルミニウム塩を重金属含有灰に添加して重金属の固定処理を行う際の、薬剤添加設備や混練機などの反応容器の金属部の腐食を防止して、処理設備の寿命の延長、メンテナンス費用の軽減を図る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アルミニウム塩と共に金属の腐食抑制剤を併用することにより、金属腐食を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0007】
[1] アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤とを含むことを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【0008】
[2] [1]において、アルミニウム塩が硫酸バンドおよび/またはポリ塩化アルミニウムであることを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【0009】
[3] [1]または[2]において、金属の腐食抑制剤が、(A)第4級アンモニウム塩と、(B)有機イオウ化合物とを含むことを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【0010】
[4] [3]において、(A)4級アンモニウム塩が、アルキルピコリニウムクロライドおよび/または2−ウンデシル−1−ヒドロキシアルキル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライドであることを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【0011】
[5] [3]または[4]において、(B)有機イオウ化合物がチオ尿素化合物であることを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【0012】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、アルミニウム塩100重量部に対し、金属の腐食抑制剤を0.1〜10重量部含むことを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【0013】
[7] [1]ないし[6]のいずれかに記載の灰処理用重金属固定剤を、重金属含有灰に添加することを特徴とする灰の処理方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アルミニウム塩を用いた重金属含有灰の重金属固定処理において、金属の腐食抑制剤を併用することにより、アルミニウム塩による金属腐食を抑制して、処理設備の寿命の延長、メンテナンス費用の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の重金属固定化剤およびそれを用いた灰の処理方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
[灰処理用重金属固定剤]
本発明の灰処理用重金属固定剤は、アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤とを含むものである。
【0017】
<アルミニウム塩>
アルミニウム塩としては、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらのアルミニウム塩のうち、特に重金属の固定効果の面からは、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウムが好ましく、とりわけ硫酸バンドが好ましい。
【0018】
<金属の腐食抑制剤>
金属の腐食抑制剤としては、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物とを併用することが好ましい。
金属の腐食抑制剤として、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物とを併用することによる優れた金属の腐食抑制効果は、金属表面への(B)有機イオウ化合物のS原子の孤立電子対による化学吸着と、金属表面の負に帯電した部位への長いアルキル鎖を有する(A)第4級アンモニウム塩のN原子による酸環境の遮蔽作用によるものであり、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物との併用による相乗効果で、アルミニウム塩による金属の腐食が十分に抑制される。
【0019】
((A)第4級アンモニウム塩)
第4級アンモニウム塩としては、アルキルピコリニウムクロライド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシアルキル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライドが特に望ましいが、それ以外の化合物として、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド)−2,2’−オクタン、アルキルピリジニウムクロライド、N−(p−クロロベンジル)−ピコリニウムクロライド、アルキルピコリニウムブロマイド、ベンジルピリジニウムクロライド、ベンジルピコリニウムクロライド、N−ヒドロキシエチル−ピリジニウムクロライド、N−ヒドロキシエチル−ピコリニウムクロライド、N−(p−ラウリルベンジル)−ピリジニウムクロライド、N−カルボキシメチル−ピリジニウムクロライド、N−カルボキシメチル−ピコリニウムクロライド、N−ヒドロキシエトキシエチル−ピリジニウムクロライド、N−ヒドロキシエチルエトキシエチル−ピコリニウムクロライド、N−アリル−ピリジニウムクロライド、N−アリル−ピコリニウムクロライド、ドデシルベンジル−4−ピコリニウムクロライド、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムエトサルフェート、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムクロライド、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムブロマイド、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムアイオダイド、1−ヒドロキシ−1−エチル−2−ステアリルイミダゾリウムフルオライド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムエトサルフェート、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムブロマイド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムアイオダイド、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムフルオライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムエトサルフェート、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムクロライド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムブロマイド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムアイオダイド、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムフルオライド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムエトサルフェート、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムブロマイド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムアイオダイド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムフルオライド、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムエトサルフェート、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムブロマイド、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムアイオダイド、2−アビエチル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムフルオライド、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムエトサルフェート)−2,2’−オクタン、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド)−2,2’−オクタン、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムブロマイド)−2,2’−オクタン、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムアイオダイド)−2,2’−オクタン、1,8−ビス(1−ヒドロキシ−1−ベンジルイミダゾリウムフルオライド)−2,2’−オクタン、アルキルキノリニウムクロライド、アルキルキノリニウムブロマイド、アルキルイソキノリニウムクロライド、アルキルイソキノリニウムブロマイドなどを用いても同様の効果を得ることができる。
【0020】
これらの第4級アンモニウム塩は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0021】
これらのうち、特に鉄塩系重金属固定剤との相互溶解性が良好で、かつ腐食抑制性能に優れていることにより、アルキルピコリニウムクロライドおよび/または2−ウンデシル−1−ヒドロキシアルキル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライドであることが好ましいが、アルキルピコリニウムクロライドとしては、具体的には、アルキル基の炭素数が8〜18のものが好ましく、具体的にはオクチルピコリニウムクロライド、セチルピコリニウムクロライド、ステアリルピコリニウムクロライドなどが挙げられる。また、2−ウンデシル−1−ヒドロキシアルキル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライドとしては、アルキル基の炭素数が2〜3のものが好ましく、具体的には、2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−ウンデシル−1−ヒドロキシプロピル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライドなどが挙げられる。
【0022】
((B)有機イオウ化合物)
有機イオウ化合物としては、チオ尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、フエニルチオ尿素、トリルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、S−メチルチオ尿素、N−メチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、メチルイソチオ尿素、二酸化チオ尿素、グアニルチオ尿素、ベンジルイソチオ尿素、ジイソブチルチオ尿素などのチオ尿素化合物が最も好適に用いることができるが、その他の有機イオウ化合物として、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、チオグリセロール、チオ酢酸、チオグリコール、3,3−チオジプロピオン酸、チオフェノール、ベンジルメルカプタン、チオ安息香酸、チオサリチル酸、2−アミノチオフェノール、2−メルカプトイミダゾリン、2−メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸−3−メトキシブチル、β−チオプロピロール、β−メルカプトプロピオン酸−2−エチルヘキシル、2−メルカプトベンゾチアゾール、トリグリコールジメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジン、ペンタエリストールテトラキスチオグリコレート、3,3−ジチオジプロピオン酸、2,2−ジチオエタノール、エチレングリコールジチオグリコレート、チオジグリコール、チオジグリコール酸、ジチオジグリコール酸ジアンモニウム、チオアセトアミド、イソチアン酸アミド、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、クリオキザール重亜硫酸ナトリウム、チオ乳酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトブチル酸、チオシアン酸ベンジル、ジメチルスルオキシド、ジエチルチオカルバミン酸ナトリウム、p−ジエチルチオカルバミン酸ナトリウム、p−トルエンスルホンヒドラジン、メタンスルホン酸、ブタンスルフィン酸、ベンジンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ピリジンスルフィン、ベンゼンスルフィン酸アンモニウム、トルエンスルフィン酸アンモニウム、ベンゼンスルフィン酸エチル、塩化ベンゼンスルフィン酸フィニル、N-メチルベンゼンスルフィニルアミド、ブタンスルフェニルクロライド、塩化ベンゼンスルフェニル、ピリジンスルフェニルクロライド、ブタンジスルホキシド、ベンゼンスルオキシド、ピリジンスルオキシド、ブタンジスルホン、ジフェニルスルホン、ジビリジンスルホン、ベンゼンスルフィン酸、1−チオグリセロールなどを用いても同様の効果を得ることができる。
【0023】
これらの有機イオウ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0024】
((A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物の使用割合)
金属の腐食抑制剤としての(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物の使用割合は、特に制限はなく、用いる第4級アンモニウム塩および有機イオウ化合物の種類とその組み合わせによっても異なるが、一方が過度に多く、他方が過度に少ないと、両者を併用することによる優れた金属の腐食抑制効果が得られない。
【0025】
従って、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物の使用割合は、重量比で(A)第4級アンモニウム塩:(B)有機イオウ化合物=1〜100:1、特に2〜20:1とすることが好ましい。
【0026】
<アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤との使用割合>
本発明の灰処理用重金属固定剤において、金属の腐食抑制剤の配合割合(即ち、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物との合計の配合割合)は、用いるアルミニウム塩と金属の腐食抑制剤との組み合わせによっても異なるが、アルミニウム塩100重量部に対して0.1〜10重量部、特に0.2〜5.0重量部とすることが好ましい。金属の腐食抑制剤の配合割合がこの下限よりも少ないと、十分な腐食抑制効果を得ることができず、この上限よりも多くても腐食抑制効果は飽和し、また、薬剤コストの高騰を招き、好ましくない。
【0027】
<その他の成分>
本発明の灰処理用重金属固定剤は、アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤とを含むものであるが、必要に応じて、アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤以外の成分を含んでいても良い。
例えば、重金属固定成分として、更にリン酸、リン酸塩や、鉄塩化合物の1種または2種以上を配合することができる。
【0028】
<調製方法>
本発明の灰処理用重金属固定剤は、アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤と、更に必要に応じて配合されるその他の成分が予め混合されて一剤化されたものであっても良く、各々別々に貯留されて現場にて混合使用されるものであっても良い。
【0029】
ただし、金属の腐食抑制剤がアルミニウム塩とは別に反応容器の金属部などに塗布されて使用されることは好ましくなく、アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤は混合状態で薬注されることが好ましい。これは、金属の腐食抑制剤が予め金属部に塗布されても、重金属含有灰との摩擦等で塗布された金属の腐食抑制剤が剥れ落ち、腐食抑制効果を得ることができなくなるためである。
【0030】
[灰の処理方法]
本発明の灰の処理方法は、上述のような本発明の灰処理用重金属固定剤を、重金属含有灰に添加することにより、重金属含有灰からの重金属の溶出を防止するものである。
【0031】
重金属含有灰に対する本発明の灰処理用重金属固定剤の添加量は、重金属含有灰の重金属量や含有される重金属の種類、用いる灰処理用重金属固定剤の薬剤や配合によっても異なるが、通常重金属含有灰に対するアルミニウム塩のAl換算の添加量として0.1〜4.0重量%とすることが好ましい。これよりも少ない添加量では十分な重金属固定効果を得ることができず、多くてもそれ以上の効果の向上は望めず、従に薬剤コストが嵩み好ましくない。
【0032】
通常、本発明の灰処理用重金属固定剤は、水と共に灰処理用重金属固定剤と混練される。水の使用量には特に制限はなく、取り扱い性、作業性に基いて決定されるが、通常重金属含有灰に対して10〜40重量%程度である。
本発明の灰処理用重金属固定剤は、特に、アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤とを含む、有効成分濃度1.0〜30重量%程度の水溶液として重金属含有灰に添加混練することにより、簡便な操作で重金属含有灰を処理することができる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
なお、以下において用いた薬剤とその略号は次の通りである。
<(A)第4級アンモニウム塩>
A−1:セチルピコリニウムクロライド
A−2:2−ウンデシル−1−ヒドロキシエチル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライド
<(B)有機イオウ化合物>
B−1:チオ尿素
B−2:ジエチルチオ尿素
B−3:チオグリコール酸
<ポリアミン化合物>
PA−1:ポリエチレンイミン(分子量1800)
PA−2:ポリアミンスルホン(分子量5000)
<アセチレンアルコール>
AA−1:プロパギルアルコール
AA−2:3−メチル−1−ブチン−3−オール
【0035】
[腐食試験]
A焼却プラントにおける添加設備、反応器に用いられている金属として、SS400、SUS304、SUS316Lを用いて、腐食抑制効果の確認を行った。
表1に示す配合の灰処理用重金属固定剤に、A焼却プラントから排出される飛灰5gを添加して試験液を調製し、この試験液中に、SS400、SUS304、SUS316Lの各試験片を2時間浸漬したときの腐食速度を下記の式により計算し、結果を表1に示した。
【0036】
【数1】

【0037】
[重金属溶出試験]
表1に示す配合の灰処理用重金属固定剤を、Al換算の硫酸バンド添加量が飛灰に対して1.2重量%となるように添加すると共に、飛灰に対して25重量%の水を添加して混練した。
得られた処理灰について、環境庁告示第13号で定められた溶出試験を行い、溶出液中の重金属(鉛)濃度を測定した。溶出試験結果を表1に示した。
腐食抑制剤を添加した実施例に示す重金属剤は、良好な溶出抑制効果を示した。
【0038】
【表1】

【0039】
[考察]
表1より次のことが分かる。
金属の腐食抑制剤を含まない比較例1ではいずれの試験片でも大きな腐食が起こる。
従来、金属の腐食抑制に有効とされているポリアミン化合物(ポリアミンスルホン、ポリエチレンイミン)やアセチレンアルコール(プロパギルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール)を配合した実施例19,20でも、腐食抑制効果が得られるが、金属の腐食抑制剤として(A)第4級アンモニウム塩および/または(B)有機イオウ化合物を用いたものが好ましく、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物とのいずれか一方のみを用いた実施例11〜14や、(A)第4級アンモニウム塩または(B)有機イオウ化合物とポリアミン化合物またはアセチレンアルコールとを併用した実施例15〜18よりも、とりわけ、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物とを併用した実施例1〜10で良好な結果が得られる。なお、実施例7〜10に示されるように、(A)第4級アンモニウム塩と(B)有機イオウ化合物とを併用し、更にポリアミン化合物またはアセチレンアルコールを用いても、ポリアミン化合物またはアセチレンアルコールを用いたことによる腐食抑制効果の向上効果は殆ど得られない。
また、これら金属の腐食抑制剤を硫酸バンドに組み合わせても、重金属の固定効果に影響はなく、良好な重金属固定効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム塩と金属の腐食抑制剤とを含むことを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【請求項2】
請求項1において、アルミニウム塩が硫酸バンドおよび/またはポリ塩化アルミニウムであることを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【請求項3】
請求項1または2において、金属の腐食抑制剤が、(A)第4級アンモニウム塩と、(B)有機イオウ化合物とを含むことを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【請求項4】
請求項3において、(A)4級アンモニウム塩が、アルキルピコリニウムクロライドおよび/または2−ウンデシル−1−ヒドロキシアルキル−1−ベンジルイミダゾリウムクロライドであることを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【請求項5】
請求項3または4において、(B)有機イオウ化合物がチオ尿素化合物であることを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、アルミニウム塩100重量部に対し、金属の腐食抑制剤を0.1〜10重量部含むことを特徴とする灰処理用重金属固定剤。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の灰処理用重金属固定剤を、重金属含有灰に添加することを特徴とする灰の処理方法。

【公開番号】特開2009−78197(P2009−78197A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247446(P2007−247446)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(000213840)朝日化学工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】