説明

金型位置決め構造

【課題】ガイドローラを円筒金型に適切に転がり接触させることができ、しかも原料から放出されるガス等の結露を未然に防止できる金型位置決め構造を提供する。
【解決手段】本発明は、円筒金型111,119をローラ107,109で支持し、ローラ107,109に駆動源から入力される回転力により円筒金型111,119を回転させる遠心成形装置の金型位置決め構造であって、円筒金型111の端部開口3よりもその径方向の外側に、円筒金型111,119の回転に倣い端面117,121に転がり接触するガイドローラ7を配置したものである。ガイドローラ7の端面117,121に転がり接触する位置は、円筒金型111,119にローラ107,109の接する接点から上方へ向けて円筒金型111,119の周方向に30°以内の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂等を原料とする遠心成形を行うための金型位置決め構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シームレス製品の円筒金型による遠心成形について特許文献1に記載がある。図6に示すように、遠心成形装置101は、互いに平行に延びる2本の支軸103を筐体105で軸受けし、2本の支軸103に各々設けた複数のローラ107,109で円筒金型111を支持したものである。支軸103に接続された回転機が、支軸103と共にローラ107,109を回転させることにより、円筒金型111にその中心Oを支点とする回転力が伝達される。
【0003】
円筒金型111をローラ107,109に対して位置決めするために、遠心成形装置101の筐体105に固定したブラケット113でガイドローラ115を軸受けし、円筒金型111の端面117にガイドローラ115を転がり接触させることが試みられている。図7は、円筒金型111よりも直径の大きな円筒金型119を示している。円筒金型111,119は、互いに直径を違える複数の円筒金型の中から選択されるものである。円筒金型111を円筒金型119に交換した場合、円筒金型119の端面121にガイドローラ115を転がり接触させるには、仮想線115'で表した位置にガイドローラを移動させなければならない。
【0004】
或いは、ローラ107,109の間にガイドローラ123を配置すれば、円筒金型111,119の何れの端面117,121にもガイドローラ123を転がり接触させることができる。しかしながら、電磁誘導コイル125により円筒金型111,119の誘導加熱を行う場合、後述の理由でガイドローラ123を軸受けするためのブラケット127が円筒金型111,119の内周面129よりも上方へ突出する。円筒金型111,119に原料として導入される熱硬化性樹脂が加熱されることによりガスを放出する。このガスが、内周面129よりも上方へ突出したブラケット127に直接当たることにより結露し、ガイドローラ123、及びブラケット127に埃等の付着する一因となる。
【0005】
また、電磁誘導コイル125はローラ107,109の間に配置されている。これは、円筒金型111から電磁誘導コイル125までの距離と、円筒金型111に代わる円筒金型119から電磁誘導コイル125までの距離との差を小さくして、電磁誘導コイル125が円筒金型111,119の双方を略等しく誘導加熱できるようにするためである。しかしながら、ガイドローラ123のブラケット127を円筒金型111,119の内周面129よりも低い位置に納めるには、電磁誘導コイル125が邪魔になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−38750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ガイドローラを適切に円筒金型に転がり接触させることができ、しかも原料から放出されるガス等の結露を未然に防止できる金型位置決め構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、互いの直径を違え端部開口の周りに端面を形成した複数の円筒金型の中から選択される円筒金型を、互いに水平方向に隔たる複数のローラで支持し、前記ローラに駆動源から入力される回転力により前記円筒金型を回転させる遠心成形装置の金型位置決め構造であって、前記ローラで支持された円筒金型の端部開口よりもその径方向の外側に、前記円筒金型の回転に倣い前記端面に転がり接触するガイドローラを配置したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記円筒金型の軸方向に直交する方向に延びる中心軸を有し前記ガイドローラを前記中心軸の周りで回転できるよう支持する可動ブラケットと、前記可動ブラケットに接合し前記円筒金型の軸方向に延びる回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受ホルダーとを備え、前記ガイドローラの前記端面に転がり接触する位置が、前記円筒金型に前記ローラの接する接点から上方へ向けて前記円筒金型の周方向に30°以内の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る金型位置決め構造によれば、円筒金型の端面に転がり接触するガイドローラを円筒金型の回転に倣わせることができる。言い換えると、円筒金型の端面に接するガイドローラの姿勢、又はガイドローラの回転する向きを円筒金型の回転する周方向に一致させることができる。このため、互いに直径を違えた複数の円筒金型の中から選択される円筒金型が遠心成形装置のローラに載せ換えられても、従来のようにガイドローラを移動させなくて済むという利点が得られる。
【0011】
本発明に係る金型位置決め構造によれば、円筒金型の端部開口よりもその径方向の外側にガイドローラ、及び可動ブラケットを配置できるので、円筒金型に原料として導入される合成樹脂からガスが放出されても、このようなガスがガイドローラに直接当たることはなく、ガスの結露に起因する埃等の付着を未然に防止することができる。また、ガイドローラを遠心成形装置の電磁誘導コイルから離すことができるので、電磁誘導コイルによってガイドローラの設置が制限されることはない。
【0012】
更に、本発明に係る金型位置決め構造は、ガイドローラが円筒金型の端面に転がり接触する位置を、円筒金型にローラの接する接点から上方へ向けて円筒金型の周方向に30°以内の範囲に設定している。このため、当該金型位置決め構造によれば、遠心成形装置のローラに載せられる円筒金型の直径の大小に関わらず、円筒金型の端面に接するガイドローラの姿勢、又はガイドローラの回転する向きが円筒金型の周方向に一致するように、可動ブラケットが回転軸を支点として旋回する。これによる効果は上記の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る金型位置決め構造を適用された遠心成形装置の一部を省略した平面図。
【図2】(a)は本発明の実施形態に係る金型位置決め構造の要部を破断した平面図、(b)はその側面図。
【図3】図2(b)のY−Y線断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る金型位置決め構造のガイドローラの配置される範囲を説明する遠心成形装置の概略図。
【図5】本発明の実施形態に係る金型位置決め構造の作用を説明する遠心成形装置の概略図。
【図6】従来例の金型位置決め構造を適用された遠心成形装置の一部を省略した平面図。
【図7】従来例の金型位置決め構造のガイドローラの配置を説明する遠心成形装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る金型位置決め構造1を遠心成形装置101に適用した例を示している。円筒金型111は、その端部開口3の周りに端面117を形成している。遠心成形装置101の2本の支軸103の軸間距離を[s]とすると、円筒金型111の直径[d]はd=0.8s〜1.5sとなるのが好ましい。この点は後述の円筒金型119についても同様である。
【0015】
図1〜図3に示すように、金型位置決め構造1は、矢印Xで指した円筒金型111の軸方向に直交する方向に延びる中心軸5を有しガイドローラ7を中心軸5の周りで回転できるよう支持する可動ブラケット9と、可動ブラケット9に接合し円筒金型111の軸方向に延びる回転軸11と、遠心成形装置101の筐体105に固定され回転軸11を回転自在に軸受けする軸受ホルダー13とを備える。
【0016】
可動ブラケット9は、中心軸5を片持ち支持する先端金具15を回転軸11に固定したものである。軸受ホルダー13は、水平片17と垂下片19とを有するベース部材21と、水平片17の上面の前端に固定された前端軸受部材23と、水平片17の上面の後端に固定された後端軸受部材25と、回転軸11に固定された規制板27と、規制板27の真下で水平片17に固定されたストッパー29,31とを備える。
【0017】
ベース部材21は、その垂下片19を遠心成形装置101の筐体105から水平方向に突出したステー33に固定されている。ステー33は、遠心成形装置101のローラ107,109に対して軸受ホルダー13と共にガイドローラ7を所望の位置に設けられるものであれば良い。ガイドローラ7は、円筒金型111の端面117より数mm後退した位置にあることが好ましい。回転軸11は、その軸方向の途中に拡径部35,37を形成している。拡径部35,37が前端軸受部材23、及び後端軸受部材25にそれぞれ突き当たることにより、ベース部材21に対して回転軸11が円筒金型111の端面117から後退するのを規制する。
【0018】
規制板27は次の理由で設けられている。即ち、図1に示す先端金具15は、円筒金型111の内周面129よりも円筒金型111の径方向の外側に位置している。この状態から回転軸11が約180°回転すると、先端金具15が内周面129よりも円筒金型111の径方向の内側に突出することになる。これを予防するために、回転軸11が回転できる角度は、規制板27の下縁39がストッパー29に受け止められる位置から規制板27の傾斜縁41がストッパー31に受け止められる位置までの範囲に制限されている。また、規制板27は、ベース部材21に対して回転軸11が円筒金型111の端面117に前進するのを規制する役割も果たしている。符号43はベアリングを指している。
【0019】
ガイドローラ7が円筒金型111の端面117に転がり接触する位置は、図4に示すように、円筒金型111の中心Oと円筒金型111にローラ107が接する接点45とを通る仮想線を基準として、接点45の上方へ向けて円筒金型111の周方向に、30°以下の角度[θ]の範囲に定められることが好ましい。或いは、円筒金型119の中心O'と円筒金型119にローラ109が接する接点47とを通る仮想線を基準として、接点47の上方へ向けて円筒金型119の周方向に、30°以下の角度[θ]の範囲に、ガイドローラ7が円筒金型119の端面121に転がり接触する位置を定めても良い。
【0020】
ガイドローラ7が円筒金型111,119のそれぞれの端面117,121に転がり接触する範囲は、上記の条件[d=0.8s〜1.5s]が満たされる限り、図中でドットを付した領域内に定めることができる。また、接点45,47を説明の便宜により区別したが、ローラ107,109は互いに同様のものであり、上記の範囲を接点45,47の何れに基づき定めるかは、本発明を実施する際の選択事項である。
【0021】
金型位置決め構造1によれば、円筒金型111,119の端部開口3よりもその径方向の外側(下方)に可動ブラケット9を配置しているので、円筒金型111,119に原料として導入される合成樹脂からガスが放出されても、このようなガスが可動ブラケット9に直接当たることはなく、ガスの結露に起因する埃等の付着を未然に防止することができる。また、ガイドローラ7を電磁誘導コイル125から離れた位置に設置できるので、従来のように可動ブラケット9の配置が電磁誘導コイル125によって制限されることがない。
【0022】
更に、金型位置決め構造1によれば、円筒金型111がローラ107,109に対してその軸方向に滑る等して、ガイドローラ7に円筒金型111の端面117が接触すると、直ちにガイドローラ7が中心軸5の周りで回転する。そして、可動ブラケット9が回転軸11を支点として回動することにより、ガイドローラ7の姿勢、又はガイドローラ7の回転する向きが円筒金型111の周方向に一致する。
【0023】
例えば、円筒金型111の端面117にガイドローラ7が接触しているとき、可動ブラケット9は、その中心軸5の軸方向を図5に示す線分OAに一致させている。線分OAは円筒金型111の中心Oとガイドローラ7の中心Cを通る仮想線である。この状態で、遠心成形装置101を停止させ、円筒金型111が円筒金型119に交換されたとする。遠心成形装置101の動作が再開され、ガイドローラ7に円筒金型119の端面121が接触すると、可動ブラケット9は、その中心軸5の軸方向が円筒金型119の中心O'とガイドローラ7の中心Cとを通る線分O'Bに一致するまで、図3に示す回転軸11を支点として矢印αで指した向きに回動する。
【0024】
金型位置決め構造1は、以上に述べたように遠心成形装置101のローラ107,109に円筒金型が載せ換えられる毎に、ガイドローラ7を移動させる必要がない。また、ガイドローラ7をローラ107、又はローラ109の上方に配置しているので、電磁誘導コイル125によってガイドローラ7の設置が制限されることはない。
【0025】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施することができる。図1は、円筒金型111の両端のうちの一方の端面117のみを表しているが、円筒金型111の他方の端面に別のガイドローラを転がり接触させても良い。この場合、別のガイドローラは、既述の軸受ホルダー等を介して遠心成形装置101の筐体105に取付けられるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、円筒金型の用途、又は材質に関わらず、円筒金型を遠心成形装置に手際よく載せ換えるのに役立つ技術である。
【符号の説明】
【0027】
1...金型位置決め構造、3...端部開口、5...中心軸、7,115,123...ガイドローラ、9...可動ブラケット、11...回転軸、13...軸受ホルダー、15...先端金具、17...水平片、19...垂下片、21...ベース部材、23...前端軸受部材、25...後端軸受部材、27...規制板、29,31...ストッパー、33...ステー、35,37...拡径部、39...下縁、41...傾斜縁、43...ベアリング、45,47...接点、101...遠心成形装置、103...支軸、105...筐体、107,109...ローラ、111,119...円筒金型、113,127...ブラケット、117,121...端面、125...電磁誘導コイル、129...内周面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの直径を違え端部開口の周りに端面を形成した複数の円筒金型の中から選択される円筒金型を、互いに水平方向に隔たる複数のローラで支持し、前記ローラに駆動源から入力される回転力により前記円筒金型を回転させる遠心成形装置の金型位置決め構造であって、
前記ローラで支持された円筒金型の端部開口よりもその径方向の外側に、前記円筒金型の回転に倣い前記端面に転がり接触するガイドローラを配置したことを特徴とする金型位置決め構造。
【請求項2】
前記円筒金型の軸方向に直交する方向に延びる中心軸を有し前記ガイドローラを前記中心軸の周りで回転できるよう支持する可動ブラケットと、前記可動ブラケットに接合し前記円筒金型の軸方向に延びる回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受ホルダーとを備え、
前記ガイドローラの前記端面に転がり接触する位置が、前記円筒金型に前記ローラの接する接点から上方へ向けて前記円筒金型の周方向に30°以内の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の金型位置決め構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194794(P2011−194794A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65977(P2010−65977)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】