説明

金型把持方法、円筒部材の製造方法及び円筒部材の製造装置

【課題】芯体12と把持部材46とが擦れることで生じる磨耗粉の発生を抑制する。
【解決手段】芯体12と同一方向及び同一回転数で回転する一対の把持部材46が芯体12を把持する。これにより、無回転の把持部材46で芯体12を把持する場合に比べ、芯体12と把持部材46とが擦れることで生じる磨耗粉の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型把持方法、円筒部材の製造方法及び円筒部材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液状の耐熱性樹脂組成物を円筒状芯体の外周面に塗布する塗布工程と、該円筒状芯体の外周面に塗布された液状の耐熱性樹脂を加熱することにより樹脂被膜とする硬化工程と、該樹脂被膜を前記円筒状芯体から分離する分離工程と、を含むシームレス管状物の製造方法であって、前記円筒状芯体の端部全周域での表面水接触角(θ1)と円筒状芯体の中央部全周域の表面水接触角(θ2)との比(θ1/θ2)が、0.5〜0.9の範囲であることを特徴とするシームレス管状物の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、芯体10の中心軸を水平にして芯体10を回転させる回転手段と、皮膜形成樹脂溶液14を芯体10へ吐出して付着させると共に、その付着部が相対的に芯体10の一端から他の一端へ水平方向に移動する塗布手段であるディスペンサー16と、を有し、ディスペンサー16は、少なくともノズル18と、モーノポンプ20と、を備える塗布装置1、それを用いた管状物の製造方法及びその製造方法により得られた管状物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−88272号公報
【特許文献2】特開2006−7198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金型とその金型を把持する把持部材とが擦れることで生じる磨耗粉の発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、第1回転手段により金型を回転させる金型回転工程と、第2回転手段により、前記金型回転工程によって回転する金型の回転数との差が該金型の回転数が0であるとした場合との差よりも小さくなるように、把持部材を前記金型と同一方向に回転させる把持部材回転工程と、前記把持部材回転工程によって回転する前記把持部材により、前記金型回転工程によって回転する金型を把持する把持工程と、を備える金型把持方法である。
【0007】
請求項2の発明は、前記金型回転工程は、前記第1回転手段と前記金型とを断絶して前記金型を惰性で回転させ、前記把持部材回転工程は、前記金型回転工程によって惰性で回転する金型の回転数を検出する検出工程と、前記検出工程における検知結果によって、前記把持部材の回転数を制御する制御工程と、を備える請求項1に記載の金型把持方法である。
【0008】
請求項3の発明は、金型が円柱状又は円筒状とされ、請求項1又は請求項2に記載の金型把持方法によって把持された前記金型を前記第2回転手段で回転させながら、該金型の外周面に液体を塗布する塗布工程と、前記塗布工程で塗布された前記液体を加熱して硬化させる加熱工程と、前記加熱工程で硬化された液体を金型から脱型する脱型工程と、を備える円筒部材の製造方法である。
【0009】
請求項4の発明は、前記把持工程で、把持部材により、円柱で少なくとも軸方向端部が円管になっている金型の端部内周を把持する請求項3に記載の円筒部材の製造方法である。
【0010】
請求項5の発明は、円柱状又は円筒状の金型を回転させる第1回転手段と、前記第1回転手段によって回転した金型の回転数との差が該金型の回転数が0であるとした場合との差よりも小さくなるように、前記金型と同一方向に回転しながら、前記金型を把持する把持部材と、前記把持部材によって回転する金型の外周面に液体を塗布する塗布手段と、前記塗布手段によって塗布された前記液体を加熱して硬化させる加熱手段と、前記加熱手段によって硬化された液体を前記金型から脱型する脱型手段と、を備える円筒部材の製造装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の構成によれば、無回転の把持部材で金型を把持する場合に比べ、金型と把持部材とが擦れることで生じる磨耗粉の発生を抑制できる。
【0012】
本発明の請求項2の構成によれば、検知結果に基づく把持部材の回転制御を行わない場合に比べ、金型と把持部材とが擦れることで生じる磨耗粉の発生を効率よく抑制できる。
【0013】
本発明の請求項3の構成によれば、請求項1又は請求項2に記載の金型把持方法によって把持しない場合に比べ、製造される円筒部材への磨耗粉の付着を抑制できる。
【0014】
本発明の請求項4の構成によれば、金型の端部内周を把持しない場合に比べ、製造される円筒部材への磨耗粉の付着を抑制できる。
【0015】
本発明の請求項5の構成によれば、無回転の把持部材で金型を把持する場合に比べ、製造される円筒部材への磨耗粉の付着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施形態に係る円筒部材製造装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る支持装置の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る洗浄部の構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る芯体が把持部材で把持された状態を示す概略図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る塗布部の構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る塗布部の構成を示す側面図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る乾燥部の構成を示す概略図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る焼成部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係る円筒部材の製造装置10の構成)
まず、本実施形態に係る円筒部材の製造装置10(以下、「円筒部材製造装置10」と称する)の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る円筒部材製造装置10の構成を示す概略図である。
【0018】
本実施形態に係る円筒部材製造装置10は、円筒部材を製造するための装置である。円筒部材製造装置10で作製される円筒部材は、無端の管状体であって、電子写真式複写機、レーザープリンター等における感光体、中間転写ベルト、中間転写体、定着ベルト、搬送ベルト、帯電ロール、転写ロール、及び現像ロール等に好適に使用され、その用途機能等に応じて、材質、形状、大きさ等が適宜設定される。
【0019】
円筒部材製造装置10は、図1に示すように、金型の一例としての芯体12を洗浄する洗浄部30と、芯体12に樹脂溶液54を塗布する塗布手段の一例としての塗布部50と、塗布部50によって塗布された樹脂溶液54を加熱して硬化させる加熱手段の一例としての加熱部70と、を備えている。加熱部70は、塗布部50から樹脂溶液54が塗布されて形成された液状の塗布膜14を乾燥する乾燥部72と、乾燥部72によって乾燥された塗布膜14を焼成する焼成部80と、を備えている。
【0020】
さらに、円筒部材製造装置10は、芯体12を回転可能に支持する支持装置20と、洗浄部30、塗布部50、乾燥部72及び焼成部80において支持装置20を搬送する搬送部16と、を備えている。
【0021】
(芯体12の構成)
芯体12は、円筒状とされた円管で形成されている。なお、芯体12は、円柱状に形成されていても良い。また、後述のように、一対の把持部材46が芯体12の端部内周で芯体12を把持する構成においては、芯体12は、少なくとも軸方向両端部が円管となっていれば良く、軸方向の中央部においては、内部空間が形成されていない構成であっても良い。
【0022】
また、芯体12としては、アルミニウム、ニッケル合金、ステンレス鋼等の金属が用いられる。なお、芯体12の外周面は、芯体12の外周面に形成される塗布膜14の加熱の際に、塗布膜14中に残留している溶剤や水などの複生成物の影響によって塗布膜14に腫れが生じることを抑制する観点から、粗面化されていることが望ましい。
【0023】
具体的には、外周面の算術平均粗さRaが0.2μm以上2.0μm以下の範囲に粗面化されていることが望ましい。芯体12の外周面が上記範囲内に粗面化されていると、芯体12上に形成された塗布膜14の乾燥や焼成時に、塗布膜14から生じる残留溶剤や水の蒸気が芯体12と塗布膜14との間のわずかな隙間を通って外部に放出される。このため、塗布膜14に腫れが生じることが抑制される。
【0024】
この塗布膜14の外周面の粗面化の方法としては、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法がある。特に、塗布膜14の内面を球状の凸形状にするために、芯体12の外周面には、球状の粒子を用いたブラスト処理を施すことが好ましい。球状の粒子を用いたブラスト処理は、直径0.1mm以上1mm以下程度のガラス、アルミナ、ジルコニア等からなる粒子を、圧縮した空気によって芯体に吹き付ける方法である。粒子として不定形のアルミナ粒子(例えば一般的な研磨粒子)を用いた場合には、芯体12の外周面の形状も不定形となり、特に鋭角の突起や窪みが形成されやすく、作製される円筒部材の内周面にも鋭角の突起や窪みが形成されてしまうため好ましくない。
【0025】
芯体12の外周面には、離型層が形成されている。この離型層は、芯体12の外周面全面にわたって均一に離型剤を塗布することで形成される。これによって、芯体12の外周面の全領域が離型性を有する状態となる。この離型剤としては、シリコーン系やフッ素系のオイルを変性して耐熱性を持たせたものが有効である。また、シリコーン樹脂の超微粒子を水に分散させた水系離型剤も用いられる。この離型層の形成は、芯体12の外周面に離型剤を塗布し、溶剤を乾燥させてそのまま、或いは焼き付けて行われる。
【0026】
(支持装置20の構成)
支持装置20は、図2及び図3に示すように、芯体12の外周面に接触して回転しその回転力を芯体12へ付与する複数の回転体22と、駆動部24(図4及び図6参照)からの駆動力を回転体22へ伝達する伝達部材としてのギヤ列26と、回転体22及びギヤ列26を回転可能に支持する支持体28と、を備えて構成されている。
【0027】
支持体28は、一対の側板29と、一対の側板29の間に側板29と一体的に設けられた底板27と、を備えて構成されている。回転体22は、一対の側板29の間で一対の側板29に回転可能に支持され、ギヤ列26は、一対の側板29又は底板27に回転可能に支持されている。
【0028】
回転体22は、芯体12の軸方向両端部のそれぞれに一対配置されている。回転体22に載せられた芯体12が、回転体22によって下方から支持されている。
【0029】
ギヤ列26は、伝達方向最上流側にあるギヤ(スプロケット)26Aが、第1回転手段の一例としての駆動部24の駆動力により循環移動(回転)するチェーン25と噛み合っている。
【0030】
これより、支持装置20では、駆動部24の駆動力は、循環移動(回転)するチェーン25及びギヤ列26によって、回転体22に伝達されて回転体22が回転し、回転体22の回転により芯体12が回転するようになっている。
【0031】
搬送部16は、ベルトコンベアで構成されており、芯体12の軸方向両端部で支持装置20を支持し、ベルト16Aが循環移動することにより、支持装置20が洗浄部30、塗布部50、乾燥部72及び焼成部80をこの順で搬送される。支持装置20では、搬送部16による搬送状態においても、駆動部24の駆動力が、循環移動(回転)するチェーン25及びギヤ列26によって、回転体22に伝達されて回転体22が回転し、回転体22の回転により芯体12が回転するようになっている。
【0032】
(洗浄部30の構成)
洗浄部30は、図4に示すように、芯体12を昇降させる昇降装置40と、昇降装置40によって上昇された芯体12を把持して芯体12を回転させる回転装置42と、回転装置42によって回転する芯体12の外周面を洗浄する洗浄装置32と、を備えて構成されている。
【0033】
昇降装置40は、芯体12の軸方向両端部で支持装置20を下方から支持し、支持装置20を昇降させる一対の昇降部材40Aを備えている。昇降装置40では、例えば、一対の昇降部材40Aが伸縮することで、支持装置20ごと芯体12を昇降させるように構成されている。芯体12は、昇降装置40によって上昇されることで、伝達部材の一例としてのチェーン25とギヤ列26との連結状態が解消されて駆動部24と断絶され、駆動部24からの駆動力が付与されない自由状態となるが、昇降装置40で上昇された状態においても惰性で回転するようになっている。また、上昇された芯体12は、昇降装置40によって下降されることで、チェーン25とギヤ列26とが連結され、駆動部24からの駆動力を付与可能な状態となる。
【0034】
回転装置42は、図5に示すように、昇降装置40によって惰性で回転する芯体12の回転数を検知する検知部44と、昇降装置40によって惰性で回転する芯体12を把持する一対の把持部材46と、一対の把持部材46をそれぞれ回転させる第2回転手段の一例としての回転部48と、検知部44の検知結果に基づき一対の把持部材46の回転数を制御する制御部49と、を備えている。
【0035】
検知部44は、例えば、惰性で回転する芯体12の回転数を検知するロータリエンコーダで構成されている。検知部44としては、ロータリエンコーダに限られるものではない。
【0036】
回転部48は、例えば、一対の把持部材46のそれぞれに対して、サーボモータ・パルスモータ等の駆動モータを備えて構成されている。この駆動モータによって、一対の把持部材46を回転させるようになっている。
【0037】
制御部49は、一対の把持部材46のそれぞれを同一方向へ同一回転数で回転させるように、回転部48を制御するようになっている。さらに、制御部49は、検知部44の検知結果に基づき、芯体12と同一方向へ同一回転数で一対の把持部材46が回転するように、回転部48を制御するようになっている。
【0038】
なお、回転部48は、単一の駆動部からの駆動力が、ギヤ列26によって一対の把持部材46に分配されて、一対の把持部材46が同一方向へ同一速度で回転する構成であってもよい。
【0039】
一対の把持部材46は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)などの金属材料で構成されている。また、一対の把持部材46は、それぞれ、円錐形状に形成された先端部を有している。この先端部は、芯体12の軸方向両端部から芯体12の内部空間に差し込まれ、芯体12の端部内周に接触するように構成されている。これにより、芯体12は、回転部48によって回転する一対の把持部材46によって、芯体12の軸方向両端部から挟まれて把持される。さらに、芯体12は、一対の把持部材46で把持された状態で、回転部48によって回転駆動されるようになっている。なお、芯体12として、例えば、ステンレス鋼(SUS)を用いる場合には、その相手側となる把持部材46についても、芯体12と同じ材料であるステンレス鋼(SUS)を用いることが望ましい。
【0040】
洗浄装置32は、図4に示すように、回転部48によって回転する芯体12の外周面を払拭する払拭部材の一例としてのウエス34と、ウエス34に洗浄液を供給する供給部36と、一対の把持部材46に把持された状態の芯体12の軸方向に沿ってウエス34及び供給部36を移動させる移動機構38と、を備えて構成されている。
【0041】
ウエス34は、ウエス34を巻き出す巻出部材の一例としての巻出ロール39と、巻出ロール39から巻き出されたウエス34を巻き取る巻取部材の一例としての巻取ロール37と、巻取ロール37と巻出ロール39との間で巻出ロール39から巻き出されたウエス34を芯体12へ押し付ける押付部材の一例としての押付ロール35と、に巻き掛けられている。巻出ロール39、巻取ロール37及び押付ロール35は、支持体33に回転可能に支持されている。ウエス34は、芯体12の軸方向長さよりも短くされており、芯体12の軸方向の一部に接触して芯体12の外周面を払拭する構成とされている。
【0042】
供給部36は、ウエス34に洗浄液(例えば、エタノール等の有機溶剤)を吐出してウエス34に洗浄液を供給する構成とされている。これにより、洗浄液が含浸したウエス34によって、芯体12の外周面が払拭される。なお、供給部36としては、芯体12の外周面に洗浄液を直接供給する構成であっても良い。供給部36としては、吐出以外の塗布方法を用いても良い。また、洗浄液は、予めウエス34に含浸させる構成であってもよい。
【0043】
移動機構38は、一対の把持部材46に把持された状態の芯体12の軸方向へ形成されたガイド31に沿って、支持体33及び供給部36を一体に移動させる構成とされている。これにより、洗浄装置32では、ウエス34及び供給部36が移動機構38によって、回転部48によって回転する芯体12の軸方向へ沿って一体に移動しながら、洗浄液が含浸されたウエス34が芯体12の外周面を払拭する構成とされている。
【0044】
(塗布部50の構成)
塗布部50は、図6及び図7に示すように、芯体12を昇降させる昇降装置40と、昇降装置40によって上昇された芯体12を回転させる回転装置42と、回転装置42によって回転する芯体12の外周面に樹脂溶液54を塗布する塗布装置52と、を備えて構成されている。
【0045】
昇降装置40は、洗浄部30の場合と同様に、芯体12の軸方向両端部で支持装置20を下方から支持し、支持装置20を昇降させる一対の昇降部材40Aを備えている。昇降装置40では、例えば、一対の昇降部材40Aが伸縮することで、支持装置20ごと芯体12を昇降させるように構成されている。芯体12は、昇降装置40によって上昇されることで、伝達部材の一例としてのチェーン25とギヤ列26との連結状態が解消されて駆動部24と断絶され、駆動部24からの駆動力が付与されない自由状態となるが、昇降装置40で上昇された状態においても惰性で回転するようになっている。また、上昇された芯体12は、昇降装置40によって下降されることで、チェーン25とギヤ列26とが連結され、駆動部24からの駆動力を付与可能な状態となる。
【0046】
回転装置42は、図5に示すように、昇降装置40によって惰性で回転する芯体12の回転数を検知する検知部44と、昇降装置40によって惰性で回転する芯体12を把持する一対の把持部材46と、一対の把持部材46をそれぞれ回転させる第2回転手段の一例としての回転部48と、検知部44の検知結果に基づき一対の把持部材46の回転数を制御する制御部49と、を備えている。
【0047】
検知部44は、例えば、惰性で回転する芯体12の回転数を検知するロータリエンコーダで構成されている。検知部44としては、ロータリエンコーダに限られるものではない。
【0048】
回転部48は、例えば、一対の把持部材46のそれぞれに対して、サーボモータ・パルスモータ等の駆動モータを備えて構成されている。この駆動モータによって、一対の把持部材46を回転させるようになっている。
【0049】
制御部49は、一対の把持部材46のそれぞれを同一方向へ同一回転数で回転させるように、回転部48を制御するようになっている。さらに、制御部49は、検知部44の検知結果に基づき、芯体12と同一方向へ同一回転数で一対の把持部材46が回転するように、回転部48を制御するようになっている。
【0050】
なお、回転部48は、単一の駆動部からの駆動力が、ギヤ列26によって一対の把持部材46に分配されて、一対の把持部材46が同一方向へ同一速度で回転する構成であってもよい。
【0051】
一対の把持部材46は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)などの金属材料で構成されている。また、一対の把持部材46は、それぞれ、円錐形状に形成された先端部を有している。この先端部は、芯体12の軸方向両端部から芯体12の内部空間に差し込まれ、芯体12の端部内周に接触するように構成されている。これにより、芯体12は、回転部48によって回転する一対の把持部材46によって、芯体12の軸方向両端部から挟まれて把持される。さらに、芯体12は、一対の把持部材46で把持された状態で、回転部48によって回転駆動されるようになっている。なお、芯体12として、例えば、ステンレス鋼(SUS)を用いる場合には、その相手側となる把持部材46についても、芯体12と同じ材料であるステンレス鋼(SUS)を用いることが望ましい。
【0052】
塗布装置52は、図6に示すように、樹脂溶液54を芯体12の外周面に供給する供給部56と、供給部56によって供給された樹脂溶液54を芯体12の外周面上でならす板状のブレード58と、一対の把持部材46に把持された状態の芯体12の軸方向に沿って供給部56及びブレード58を移動させる移動機構59と、を備えて構成されている。
【0053】
供給部56は、貯留部56Aに貯留された樹脂溶液54を、ポンプ56Bによって吐出部56Cから吐出して芯体12の外周面に樹脂溶液54を供給する構成とされている。なお、供給部56としては、吐出以外の塗布方法を用いても良い。
【0054】
ブレード58は、芯体12の外周面に接触して、樹脂溶液54をならし、樹脂溶液54によって形成される塗布膜14の膜厚を均一化するように構成されている。ブレード58及び吐出部56Cは、支持体57に支持されている。
【0055】
移動機構59は、一対の把持部材46に把持された状態の芯体12の軸方向へ形成されたガイド55に沿って、ボールネジやベルトなどの伝達部材51を介して駆動力を支持体57に伝達して移動させる構成とされている。これにより、塗布装置52では、吐出部56C及びブレード58が移動機構59によって、回転部48によって回転する芯体12の軸方向へ沿って一体に移動しながら、樹脂溶液54による塗布膜14が芯体12の外周面に形成される構成となっている。なお、芯体12への樹脂溶液54の供給は、昇降装置40により支持装置20を下降させることで芯体12から支持装置20(回転体22)が離間している状態でなされる。
【0056】
(乾燥部72の構成)
乾燥部72は、図8に示すように、芯体12が支持された状態の支持装置20が収容可能な収容空間74Aを内部に有する加熱装置74を備えている。加熱装置74では、塗布膜14から液だれしないように、芯体12が回転しながら、支持装置20が収容空間74A内を通過し、樹脂溶液54の水分を蒸発させることで塗布膜14を乾燥するようになっている。これにより、塗布膜14が硬化するようになっている。
【0057】
(焼成部80の構成)
焼成部80は、図9に示すように、支持装置20からおろされた芯体12が垂直に載せられる台座82を備えている。焼成部80では、台座82に載せられた芯体12を加熱し、塗布膜14を焼成するようになっている。これにより、塗布膜14が硬化するようになっている。
【0058】
なお、塗布膜14が焼成された芯体12は、室温に冷やされた後、脱型手段の一例としての空気注入部84によって、焼成された塗布膜14と芯体12の外周面の軸方向端部との隙間に空気が注入されることによって、焼成された塗布膜14が芯体12から脱型される。
【0059】
(円筒部材の製造方法)
次に、本実施形態に係る円筒部材製造装置を用いた円筒部材の製造方法について説明する。
【0060】
本製造方法では、芯体12が、支持装置20に載せられた状態で、駆動部24の駆動力により回転しながら、搬送部16によって洗浄部30を搬送される。
【0061】
次に、洗浄部30において、芯体12が、昇降装置40によって支持装置20ごと上昇される。これにより、芯体12が、駆動部24と断絶され、惰性で回転する(芯体回転工程)。
【0062】
次に、検知部44が、惰性で回転する芯体12の回転数を検知する(検知工程)。この検知結果に基づき、回転部48が制御部49によって制御されて(制御工程)、一対の把持部材46が、芯体12と同一方向及び同一回転数で回転部48によって回転する(把持部材回転工程)。
【0063】
次に、芯体12と同一方向及び同一回転数で回転する一対の把持部材46が芯体12の端部内周を把持する(把持工程)。次に、一対の把持部材46の回転数を徐々に上昇させ、芯体12の回転数を上昇させる。このように、芯体12を把持する芯体把持方法が行われる。
【0064】
そして、洗浄液を含浸したウエス34が移動機構38によって、回転部48によって回転する芯体12の軸方向へ沿って移動しながら、一対の把持部材46で把持されて回転する芯体12の外周面を払拭する(洗浄工程)。
【0065】
次に、支持装置20が、昇降装置40によって下降されて、搬送部16に載せられる。次に、芯体12が、支持装置20に載せられた状態で、駆動部24の駆動力により回転しながら、搬送部16によって塗布部50を搬送される。
【0066】
次に、塗布部50において、洗浄部30と同様に、芯体12が、昇降装置40によって支持装置20ごと上昇される。これにより、芯体12が、駆動部24と断絶され、惰性で回転する(芯体回転工程)。
【0067】
次に、検知部44が、惰性で回転する芯体12の回転数を検知する(検知工程)。この検知結果に基づき、回転部48が制御部49によって制御されて(制御工程)、一対の把持部材46が、芯体12と同一方向及び同一回転数で回転部48によって回転する(把持部材回転工程)。
【0068】
次に、芯体12と同一方向及び同一回転数で回転する一対の把持部材46が芯体12の端部内周を把持する(把持工程)。次に、一対の把持部材46の回転数を徐々に上昇させ、芯体12の回転数を上昇させる。このように、芯体12を把持する芯体把持方法が行われる。
【0069】
そして、吐出部56C及びブレード58が移動機構59によって、回転部48によって回転する芯体12の軸方向へ沿って一体に移動しながら、樹脂溶液54が芯体12の外周面に塗布されて、液状の塗布膜14が形成される(塗布工程)。
【0070】
次に、支持装置20が、昇降装置40によって下降されて、搬送部16に載せられる。次に、芯体12が、支持装置20に載せられた状態で、駆動部24の駆動力により回転しながら、搬送部16によって、乾燥部72の加熱装置74を搬送される。支持装置20が加熱装置74の収容空間74A内を通過し、塗布膜14が乾燥される(乾燥工程)。
【0071】
次に、焼成部80では、支持装置20からおろされて台座82に載せられた芯体12が加熱され、塗布膜14が焼成される(焼成工程)。
【0072】
以上のように、本実施形態では、乾燥工程及び焼成工程によって、液状の塗布膜14を加熱して硬化させる加熱工程が構成される。
【0073】
次に、塗布膜14が焼成された芯体12が、室温に冷やされた後、空気注入部84によって、焼成された塗布膜14と芯体12の外周面の軸方向端部との隙間に空気が注入されることによって、焼成された塗布膜14が芯体12から脱型され(脱型工程)、円筒部材が製造される。
【0074】
このように、本実施形態の製造方法では、芯体12と同一方向及び同一回転数で回転する一対の把持部材46が芯体12を把持するので、無回転の把持部材46で芯体12を把持する場合に比べ、芯体12と把持部材46とが擦れることで生じる磨耗粉の発生が抑制される。これにより、製造される円筒部材への磨耗粉の付着が抑制される。
【0075】
また、本実施形態では、ある程度回転する芯体12を一対の把持部材46で把持してから、芯体12の回転数を上昇させるので、無回転状態から芯体12の回転数を上昇させる構成に比べ、芯体12と把持部材46とが擦れることで生じる磨耗粉の発生が抑制される。これにより、製造される円筒部材への磨耗粉の付着が抑制される。
【0076】
また、本実施形態の製造方法では、一対の把持部材46が芯体12の端部内周を把持するので、仮に、芯体12と把持部材46とが擦れることで磨耗粉が生じたとしても、周速が小さいので磨耗が少なく、しかも芯体12の内周側に磨耗粉がとどまり易くなる。これにより、金型の端部内周を把持しない場合に比べ、製造される円筒部材への磨耗粉の付着が抑制される。
【0077】
なお、本実施形態では、一対の把持部材46が、惰性で回転する芯体12を把持する構成となっていたが、一対の把持部材46が、駆動部24からの駆動力を付与されている状態の芯体12を把持する構成であっても良い。
【0078】
また、本実施形態では、芯体12を昇降させて芯体12と駆動部24とを断絶させる構成であったが、これに限られず、芯体12と駆動部24とを切り離して芯体12と駆動部24とを断絶させる構成であればよい。
【0079】
また、本実施形態では、一対の把持部材46が、惰性で回転する芯体12と同一方向及び同一回転数で回転する構成となっていたが、少なくとも、惰性で回転する芯体12の回転数との差が、回転数0の場合との差よりも小さくなるように、一対の把持部材46が回転する構成であれば良い。すなわち、ある特定の範囲において、惰性で回転する芯体12と一対の把持部材46との間で回転数に差が生じていても良い。
【0080】
以下、実施例および比較例を示して、具体的に説明する。但し、特にこれらに限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
芯体12として、内径φ253mm、長さ980mm、厚み6.9mm、重さ14kgのステンレス管を準備し、外周面をRa0.45μmとなるようにブラスト加工した。この芯体12の表面を脱脂した後、信越化学工業(株)製シリコン系離型剤「セパコート」とヘプタンの混合液を塗布し、420℃で2時間焼き付けた。さらに、芯体12が十分冷めた後にもう一度、前記した離型剤とヘプタンの混合液を塗布し、今度は330℃で1時間焼き付けた。これによって、芯体12の外周面に離型層を形成して、外周面が離型性を有する芯体12を調整した。
【0082】
上記調整した芯体12を用いて、上記実施形態に示す円筒部材製造装置10において、上記実施形態に示す製造方法を実施して、円筒部材を製造した。
【0083】
具体的には、芯体12が、支持装置20に載せられた状態で、駆動部24の駆動力により、10rpmで回転しながら、搬送部16によって塗布部50を搬送される。次に、塗布部50において、芯体12が、昇降装置40によって支持装置20ごと上昇される。これにより、芯体12が、駆動部24と断絶され、惰性で回転する(芯体回転工程)。次に、検知部44が、惰性で回転する芯体12の回転数を検知する(検知工程)。このとき検知された回転数は、9rpmであった。この検知結果に基づき、回転部48が制御部49によって制御されて(制御工程)、一対の把持部材46が、芯体12と同一方向及び同一回転数(9rpm)で回転部48によって回転する(把持部材回転工程)。次に、芯体12と同一方向及び同一回転数で回転する一対の把持部材46が、芯体12の端部内周を0.3MPaの圧力で把持する(把持工程)。次に、一対の把持部材46の回転数を徐々に上昇させ、芯体12の回転数を9rpmから2秒かけて99.7rpm上昇させた。
【0084】
なお、塗布部50では、樹脂溶液54として、25°での粘度が50Pa・sのPI前駆体溶液(商品名:Uイミド、ユニチカ製)100重量部にカーボンを20重量部分散させた混合液を用いた。また、塗布部50における成膜条件は、ポンプ56Bとしてモーノポンプを用いて、直径(内径)2mm長さ10mmのノズルから樹脂溶液54を芯体12の外周面に供給した。また、芯体12の回転数は、回転速度は99.7rpmとし、吐出部56C及びブレード58の移動速度(芯体12の軸方向への移動速度)は229mm/分とした。
【0085】
また、乾燥部72では、芯体12を10rpmで回転させながら、支持装置20ごと130℃の加熱装置74に入れて23分間乾燥させた。
【0086】
また、焼成部80においては、台座82に芯体12を垂直に設置した状態で、125℃、185℃、230℃、260℃でそれぞれ27.5分ずつ昇温して加熱することで、ポリイミド樹脂からなる塗布膜14を焼成した。そして、室温に冷やされた後、焼成された塗布膜14を芯体12から脱型し、円筒部材としての無端ベルトを製造した。
【0087】
得られた無端ベルトは、平均膜厚が80μm、表面には、膨れ、凹みなどの欠陥のない良好な品質であり、裏面には所望の粗度のある形状であった。該無端ベルトを転写ベルトとしてカラー電子写真装置で使用したところ、回転を継続しても、転写ベルトの裏面に汚れ、トナーの蓄積も無く、画像欠陥の無い良好な画質の印刷物が得られた。金属粉による不良は0であった。
【0088】
(実施例2)
上記実施例1の、円筒部材製造装置10によって実施された製造方法において、検知部44が検知した芯体12の回転数が、5rpmであった。これに対して、この検知結果に基づき、回転部48が制御部49によって制御されて(制御工程)、一対の把持部材46が、芯体12と同一方向及び回転数9rpmで回転部48によって回転する(把持部材回転工程)。次に、芯体12と同一方向及び同一回転数で回転する一対の把持部材46が、芯体12の端部内周を0.3MPaの圧力で把持する(把持工程)。次に、一対の把持部材46の回転数を徐々に上昇させ、芯体12の回転数を9rpmから2秒かけて99.7rpm上昇させた。
【0089】
得られた無端ベルトの不良発生率は約1%であり、実施例1よりは劣るものの、無視できる程度の少ない不良であった。
【0090】
(比較例1)
上記実施例1の、円筒部材製造装置10によって実施された製造方法において、9rpmで回転する芯体12を、無回転の一対の把持部材46で把持した。次に、一対の把持部材46の回転数を徐々に上昇させ、芯体12の回転数を2秒かけて99.7rpm上昇させた。
【0091】
その結果、得られた無端ベルトには金属粉の欠陥があり、表面に突起が形成されていた。
【0092】
該無端ベルトを転写ベルトとしてカラー電子写真装置で使用したところ、金属粉と同箇所において、欠陥のある画質が得られた。このような欠陥がある不良の無端ベルトは全数の約6%発生していた。無回転状態から芯体を回転させると、磨耗粉が多く発生することがわかった。
【0093】
(比較例2)
上記実施例1の、円筒部材製造装置10によって実施された製造方法において、芯体12が無回転の状態とし、無回転の芯体12を、無回転状態の一対の把持部材46で把持した。次に、一対の把持部材46の回転数を徐々に上昇させ、芯体12の回転数を2秒かけて99.7rpm上昇させた。
【0094】
その結果、得られた無端ベルトの不良発生率は約3%であり、比較例1よりは少ないものの、無回転状態から芯体12を回転させた場合でも、磨耗粉が発生することがわかった。
【0095】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 円筒部材製造装置
12 芯体(金型の一例)
24 駆動部(第1回転手段の一例)
46 把持部材
48 回転部(第2回転手段の一例)
50 塗布部(塗布手段の一例)
70 加熱部(加熱手段の一例)
84 空気注入部(脱型手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転手段により金型を回転させる金型回転工程と、
第2回転手段により、前記金型回転工程によって回転する金型の回転数との差が該金型の回転数が0であるとした場合との差よりも小さくなるように、把持部材を前記金型と同一方向に回転させる把持部材回転工程と、
前記把持部材回転工程によって回転する前記把持部材により、前記金型回転工程によって回転する金型を把持する把持工程と、
を備える金型把持方法。
【請求項2】
前記金型回転工程は、前記第1回転手段と前記金型とを断絶して前記金型を惰性で回転させ、
前記把持部材回転工程は、
前記金型回転工程によって惰性で回転する金型の回転数を検出する検出工程と、
前記検出工程における検知結果によって、前記把持部材の回転数を制御する制御工程と、
を備える請求項1に記載の金型把持方法。
【請求項3】
金型が円柱状又は円筒状とされ、請求項1又は請求項2に記載の金型把持方法によって把持された前記金型を前記第2回転手段で回転させながら、該金型の外周面に液体を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で塗布された前記液体を加熱して硬化させる加熱工程と、
前記加熱工程で硬化された液体を金型から脱型する脱型工程と、
を備える円筒部材の製造方法。
【請求項4】
前記把持工程で、把持部材により、円柱で少なくとも軸方向端部が円管になっている金型の端部内周を把持する請求項3に記載の円筒部材の製造方法。
【請求項5】
円柱状又は円筒状の金型を回転させる第1回転手段と、
前記第1回転手段によって回転した金型の回転数との差が該金型の回転数が0であるとした場合との差よりも小さくなるように、前記金型と同一方向に回転しながら、前記金型を把持する把持部材と、
前記把持部材によって回転する金型の外周面に液体を塗布する塗布手段と、
前記塗布手段によって塗布された前記液体を加熱して硬化させる加熱手段と、
前記加熱手段によって硬化された液体を前記金型から脱型する脱型手段と、
を備える円筒部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−201253(P2011−201253A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72816(P2010−72816)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【特許番号】特許第4609595号(P4609595)
【特許公報発行日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】