金型支持装置、成形機及び成形方法
金型が小型であっても大型であっても、金型取り付け面が変形することがなく面圧が均一になり、かつ、鋳造によって容易に製作することができるようにする。そのため、金型支持装置(11)は、金型が取り付けられる金型取り付け面(13)を備える金型取り付け部(12)と、反力付与部材(42)からの反力(46)を受ける反力受け部(16)を隅部に備える背面部(14)とを有する金型支持装置(11)であって、前記金型取り付け部(12)の中央領域と前記背面部(14)の中央領域とが中央連結部材(22)によって連結され、前記金型取り付け部(12)の外周部と前記背面部(14)の外周部とが外周部連結部材(33,34)によって連結される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型支持装置、成形機及び成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機のような成形機においては、加熱シリンダ内においてスクリュを前進させ、加熱され、溶融させられた樹脂を高圧で射出して金型装置のキャビティに充填(てん)し、該キャビティ内において樹脂を冷却し、固化させることによって成形品を成形するようになっている。
【0003】
そのために、前記金型装置は固定金型及び可動金型から成り、型締装置によって前記可動金型を進退させ、前記固定金型に対して接離させることによって、型開閉、すなわち、型閉、型締及び型開を行うことができるようになっている。そして、前記型締装置は、一般的に、固定金型を保持する固定プラテン及び可動金型を保持する可動プラテンを有し、該可動プラテンを進退させる開閉装置としてトグル機構が配設され、該トグル機構は、駆動部に配設された電動モータ、サーボモータ等を駆動することによって作動させられる。
【0004】
図2は従来の固定プラテンの側面図である。
【0005】
図において、101は固定プラテンであり、図示されない可動プラテンと対向する金型取り付け面101aには固定金型102が取り付けられている。また、103は、前記固定プラテン101と図示されないトグルサポートとの間に架設された複数、例えば、四本のタイバーであり、端部がナット等の固定部材104によって前記固定プラテン101の背面101bに固定されている。そして、前記可動プラテンは、前記タイバー103に沿って進退(図における左右方向に移動)可能に配設される。なお、前記可動プラテンにおける固定プラテン101と対向する金型取り付け面には図示されない可動金型が取り付けられている。
【0006】
そして、前記可動プラテンが図示されないトグル機構によって固定プラテン101の方向に移動させられると、可動金型が前記固定金型102に押し付けられ、型閉及び型締が行われる。この場合、前記固定金型102は、前記可動プラテン及び可動金型を介して、トグル機構から強い型締力107を受ける。そして、該型締力107が固定プラテン101に伝達されるので、該固定プラテン101が撓(たわ)んで、金型取り付け面101aが変形してしまうことがある。
【0007】
図に示されるように、前記タイバー103は、それぞれ、固定金型102よりも上側及び下側において固定プラテン101の背面101bに固定されている。そして、前記固定プラテン101は、前記タイバー103によって、型締力107と向きが反対で大きさの等しい反力108を受ける。そのため、トグル機構から強い型締力107を受けると、固定プラテン101に曲げモーメントが作用し、前記固定プラテン101が撓み、106のように変形してしまう。それに伴い、金型取り付け面101aも106aのように変形してしまう。なお、図における変形後の固定プラテン106及び金型取り付け面106aは、説明の都合上、誇張して示されている。
【0008】
このように、金型取り付け面101aが106aのように変形すると、固定金型102も変形してしまうので、成形品にばりが生じたり偏肉が発生したりして、成形品の成形性
が低下してしまう。そこで、前記固定プラテン101の撓み及び金型取り付け面101aの変形を防止するために、前記固定プラテン101の板厚を厚くすることによって剛性を向上させている。しかし、前記固定プラテン101の板厚を厚くすると固定プラテン101の製造コストが高くなり、しかも、前記固定プラテン101の重量が増大するので、成形機全体の強度を向上させる必要があり、成形機全体の製造コストも高くなってしまう。
【0009】
そのため、固定プラテンを互いに離間した二つの壁部から構成し、該壁部を中間支持構造体によって接続する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、中間支持構造体によって金型取り付け面側の壁部の中央領域だけを支持するので、金型取り付け面側の壁部に曲げモーメントが作用しないようになっている。
【特許文献1】特開平9−38984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の中間支持構造体を有する固定プラテンにおいては、金型取り付け面側の壁部の中央領域だけが支持されるようになっているので、金型が大型のものであり、その固定金型の取り付け面が中央領域より外側の領域に及び、キャビティ空間が金型取り付け面側と中間支持構造体との連結部よりも外側に配置させる場合、前記金型取り付け面側の壁部は、中央領域の外側の領域でも型締力を受けることになる。この場合、中央領域の外側の領域は中間支持構造体によって支持されていないので、前記型締力によって変形してしまう。これにより、固定プラテンの金型取り付け面と固定金型が固定プラテンに接触する接触面との間の面圧が不均一になるだけでなく、キャビティ空間も外側に反ってしまい成形不良が生じてしまう。
【0011】
また、一般に、固定プラテンは鋳造によって製作されるが、前記従来の固定プラテンは、離間した二つの壁部を中間支持構造体によって接続するための構成が複雑である。そのため、鋳型の製作が困難となり、前記固定プラテンを鋳造によって製作する場合、製作コストが高くなってしまう。
【0012】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、金型が小型であっても大型であっても、金型取り付け面が変形することがなく面圧が均一になり、かつ、鋳造によって容易に製作することができる金型支持装置、成形機及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明の金型支持装置においては、金型が取り付けられる金型取り付け面を備える金型取り付け部と、反力付与部材からの反力を受ける反力受け部を隅部に備える背面部とを有する金型支持装置であって、前記金型取り付け部の中央領域と前記背面部の中央領域とが中央連結部材によって連結され、前記金型取り付け部の外周部と前記背面部の外周部とが外周部連結部材によって連結される。
【0014】
本発明の他の金型支持装置においては、さらに、前記金型取り付け部と背面部との間における前記中央連結部材の周囲に環状の空洞部が形成される。
【0015】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記中央連結部材の軸方向外周形状は、直線的又は対称に形成される。
【0016】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記中央連結部材は前記金型取り付け部の中央部と前記背面部の中央部とを連結する単一の部材である。
【0017】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記中央連結部材は前記金型取り
付け部の中央領域と前記背面部の中央領域とを連結する複数の部材である。
【0018】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記外周部連結部材は、前記金型取り付け部及び前記背面部の四方又は二方の外周部において前記金型取り付け部と背面部とを連結する。
【0019】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記反力受け部の金型取り付け側面と前記金型取り付け部の金型取り付け面との間には段差が存在する。
【0020】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記背面部は、成形機の型締装置を支持するフレームに固定される取り付け部を有し、該取り付け部は前記背面部の上下方向の変形を抑制する箇所に設けられる。
【0021】
本発明の成形機においては、本発明の金型支持装置を有する。
【0022】
本発明の成形方法においては、本発明の金型支持装置を使用して成形品を成形する。
【0023】
本発明の他の成形方法においては、固定金型支持装置に取り付けられた固定金型と可動金型支持装置に取り付けられた可動金型とから成る金型装置のキャビティに樹脂を充填して成形品を成形する成形方法であって、前記固定金型支持装置又は可動金型支持装置は、金型取り付け部の中央領域と背面部の中央領域とが中央連結部材によって連結され、前記金型取り付け部の外周部と前記背面部の外周部とが外周部連結部材によって連結され、型締装置の型締力によって前記可動金型を固定金型に押し付けるステップと、前記型締力が前記金型取り付け部から中央連結部材又は外周部連結部材の少なくとも一方を介して背面部に伝達されるステップと、前記型締力の反力を背面部の隅部における反力受け部が受けるステップと、溶融させられた樹脂が高圧で射出されて前記キャビティに充填されるステップとを有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、金型支持装置は、金型が小型であっても大型であっても、金型取り付け面の変形を抑制し、成形品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態における固定プラテンの金型取り付け面側から見た第1の斜視図である。
【図2】従来の固定プラテンの側面図である。
【図3】本発明の実施の形態における固定プラテンの金型取り付け面側から見た第2の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における固定プラテンの正面図である。
【図5】本発明の実施の形態における固定プラテンの背面側から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における固定プラテンの背面図である。
【図7】本発明の実施の形態における固定プラテンの縦断面図であり図6のB−B矢視図である。
【図8】本発明の実施の形態における固定プラテンの縦断カットモデルの斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの第1の斜視図であり図1のA−A矢視図である。
【図10】本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの第2の斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの正面図である。
【図12】本発明の実施の形態における固定プラテンの側断面図であり成形機に取り付けられた状態を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における固定プラテンを鋳造する鋳型の縦断面図である。
【図14】本発明の実施の形態における固定プラテンを鋳造する鋳型の横断面図であり図13のC−C矢視図である。
【符号の説明】
【0026】
11 固定プラテン
12 金型取り付け部
13 金型取り付け面
14 背面部
16、16a、16b タイバー荷重受け部
18 取り付け部
22 中央連結部材
25 空洞部
41 固定金型
42 タイバー
45 型締力
46 反力
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明はいかなる種類の成形機にも適用することができるものであるが、ここでは、射出成形機に適用した場合について説明する。
【0028】
図1は本発明の実施の形態における固定プラテンの金型取り付け面側から見た第1の斜視図、図3は本発明の実施の形態における固定プラテンの金型取り付け面側から見た第2の斜視図、図4は本発明の実施の形態における固定プラテンの正面図、図5は本発明の実施の形態における固定プラテンの背面側から見た斜視図、図6は本発明の実施の形態における固定プラテンの背面図、図7は本発明の実施の形態における固定プラテンの縦断面図であり図6のB−B矢視図、図8は本発明の実施の形態における固定プラテンの縦断カットモデルの斜視図、図9は本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの第1の斜視図であり図1のA−A矢視図、図10は本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの第2の斜視図、図11は本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの正面図である。
【0029】
図において、11は、図示されない射出成形機に使用される金型装置が取り付けられる金型支持装置としての固定プラテンである。前記射出成形機は、図示されない加熱シリンダ内においてスクリュを前進させ、加熱され、溶融させられた樹脂を高圧で射出して金型装置のキャビティに充填し、該キャビティ内において樹脂を冷却し、固化させることによって成形品を成形する。この場合、前記金型装置は可動金型及び後述される金型としての固定金型41から成り、図示されない型締装置によって前記可動金型を進退させ、前記固定金型41に対して接離させることによって、型開閉、すなわち、型閉、型締及び型開を行うことができるようになっている。そして、前記型締装置は、固定金型41を保持する固定プラテン11及び可動金型を保持する図示されない可動プラテンを有し、該可動プラテンを進退させる開閉装置としてトグル機構が配設され、該トグル機構は、駆動部に配設された電動モータ、サーボモータ等を駆動することによって作動させられる。なお、前記開閉装置は、トグル機構以外のもの、例えば、油圧シリンダ装置等であってもよい。
【0030】
そして、前記可動プラテンが前記トグル機構によって固定プラテン11の方向に移動させられると、可動金型が固定金型41に押し付けられ、型閉及び型締が行われる。この場合、前記固定金型41は、前記可動プラテン及び可動金型を介して、トグル機構から強い型締力を受ける。そして、該型締力が固定プラテン11に伝達される。
【0031】
ここで、該固定プラテン11は、鋳造によって一体的に形成された中空の箱状体から成るものである。なお、説明の都合上、前記箱状体の各部分に名称及び符号を付与して説明するが、各部分は、別個の部材ではなく、一体的に形成された前記箱状体を構成する部分であることに留意すべきである。
【0032】
前記固定プラテン11は、前記固定金型41が取り付けられる金型取り付け面13を備える金型取り付け部12と、前記金型取り付け面13と反対側に位置する背面15を備える背面部14とを有する。この場合、前記金型取り付け面13は、図示されない可動プラテンの側、すなわち、正面側に面し、前記背面15は、図示されない加熱シリンダ側に面している。また、前記背面部14は、後述される複数のタイバー42のそれぞれに対応する位置に、前記型締力に対する反力を固定プラテン11に付与する反力付与部材として機能するタイバー42が挿入される挿入孔(こう)としてのタイバー挿入孔17が形成された複数、例えば、四つのガイド部としてのタイバー荷重受け部16を有する。該タイバー荷重受け部16はタイバー42から反力を受ける反力受け部として機能する。なお、前記タイバー荷重受け部16の金型取り付け面13側の面は、図1及び3に示されるように、金型取り付け面13よりも引っ込んで、背面15側に位置する。
【0033】
そして、前記背面部14は、略矩(く)形の形状を有し、中心に、前記加熱シリンダの先端部に取り付けられた射出ノズルが進入するノズル進入孔21が形成されている。なお、該ノズル進入孔21は、図7及び8に示されるように、背面15側から金型取り付け面13側に進むに連れて径が漸減するテーパ状の縦断面を有する。そのため、前記ノズル進入孔21の背面15における径は、金型取り付け面13における径よりも大きくなっている。また、前記背面部14の左右下端には、取り付け部18がタイバー42よりも内側から下方に突き出された前記取り付け脚部材18aを介して取り付けられている。したがって、型締力の発生によってタイバー42が変形し、該タイバー42をナットによって止めているタイバー荷重受け部16が変形しても、上方のタイバー荷重受け部16aの変形と下方のタイバー荷重受け部16bの変形を均一にさせることができ、したがって、固定プラテン11の上下の変形のアンバランスを解消することができる。
【0034】
前記取り付け部18は、固定プラテン11を前記型締装置の固定フレームの上面に取り付けるための部材であり、図示されない固定ボルト等の固定部材によって、前記取り付け部18を前記固定台、固定フレーム等に固定するようになっている。また、前記固定部材による前記取り付け部18の固定位置は、タイバー42より外側の位置に取り付けられる。これにより、固定フレームの剛性を上げるために取り付けられた図示されない固定フレーム補強部材に、ボルト等の係止部材によって前記取り付け部18を固定させることができ、固定フレームに固定プラテン用の新たな部材を配設する必要がない。なお、左右の前記背面部14の下端に取り付けられた連結板19によって連結されている。
【0035】
また、前記金型取り付け部12は略矩形の形状を有し、中心に前記ノズル進入孔21が形成されている。なお、前記金型取り付け部12の金型取り付け面13には、通常、固定金型41を取り付けるためのボルト孔(あな)が複数形成されているが、本実施の形態においては省略されている。
【0036】
そして、固定プラテン11の内部において、該固定プラテン11の中央領域を残して空
洞部25が形成され、残された中央領域は金型取り付け部12と背面部14とを繋(つな)ぐ中央連結部材22として構成される。該中央連結部材22は、図9〜11に示されるように、略円柱状の外周が可動金型の進退方向において直線的又は対称な形状を有しているが、内部に前記ノズル進入孔21が形成されている。そのため、前記中央連結部材22は、内面がテーパ状の円筒状の形状を有しているとも言える。そして、前記金型取り付け部12と背面部14との間における前記中央連結部材22の周囲には、図7〜11に示されるように、環状の空洞部25が形成されている。なお、該空洞部25の内周側の側面は円筒面であり、外周側の側面は略四角筒面である。
【0037】
また、前記中央連結部材22の断面形状は、略円形以外の形状であってもよく、金型取り付け面13に取り付けられる固定金型41の形状に応じて、略楕(だ)円形、略菱(ひし)形等の任意の形状に変更することができる。例えば、固定金型41における取り付け面の形状が縦方向に長い形状である場合、中央連結部材22の断面形状を縦方向に長い略楕円形又は略菱形にすることが望ましい。前記中央連結部材22は、金型取り付け部12における変形の少ない箇所と背面部14とを連結する部材である。そのため、固定金型41における取り付け面の形状が変化すると金型取り付け部12における変形の少ない箇所の形状も変化するので、それに対応するように中央連結部材22の断面形状を変化させることが望ましい。例えば、2材成形機のように横長の金型を使用する場合には、横方向に長い略楕円形の形状にすることが望ましい。
【0038】
そして、前記金型取り付け部12が固定金型41を介して受けた型締力は、中央連結部材22を介して、背面部14の中央領域に伝達される。一方、前記タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力は、背面部14及び中央連結部材22を介して金型取り付け部12の中央領域に伝達される。したがって、前記中央連結部材22の寸法、例えば、半径方向の肉厚は、前記型締力及び反力を伝達するために十分な強度を発揮するように決定される。また、固定プラテン11の内部において、該固定プラテン11の中央領域を残して空洞部25が形成されているので、金型取り付け部12は中央領域の外側において背面部14から切り離されている。そのため、タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力によって背面部14の外周部及びタイバー荷重受け部16が変形しても、該変形が金型取り付け部12に伝達されることがないので、該金型取り付け部12が変形することがない。したがって、金型取り付け面13と固定金型41が固定プラテン11に接触する接触面との間の面圧が不均一になることがない。本発明では、中央連結部材22は一つの部材で構成されているが、複数の部材を用いて金型取り付け部12の中央領域と背面部14の中央領域とを連結させてもよい。
【0039】
さらに、前記空洞部25は斜め方向開口部100によっても外部と連通されている。そして、タイバー荷重受け部16の金型取り付け側の側面と、金型取り付け面13との間に段差が形成される。前記斜め方向開口部100は、タイバー荷重受け部16と金型取り付け部12とを完全に切り離す作用をしているため、型締力がタイバー42にかかりタイバー荷重受け部16が変形したとしても、該タイバー荷重受け部16の変形が金型取り付け部14に伝達されることはない。さらに、前記背面部14の上下の水平な外周端縁における水平開口32に対応する位置には、金型取り付け部12の方向に向けて突出する側壁36が形成されている。また、該側壁36は、水平側縁連結部材34及び隣接するタイバー荷重受け部16に連結されている。そのため、前記背面部14の上下の水平な外周端縁は、前記側壁36がリブの役割を果たしているため強度が向上し、変形し難くなる。
【0040】
また、前記空洞部25は固定プラテン11の垂直側面の両側には外部に連通するように側部開口31が形成され、水平側面の両側には外部に連通するように水平開口32が形成される。前記側部開口31によって、固定プラテン11の垂直側面には垂直側縁連結部材33が、前記水平開口32によって、水平側面には水平側縁連結部材34が形成され、こ
れらの複数の側縁連結部材によって外周側縁連結部材が構成される。なお、前記側壁36は、必要に応じて、背面部14の左右の垂直な外周端縁における側部開口31に対応する位置に取り付けることもできる。また、側部開口31及び水平開口32の寸法、形状や数を金型サイズやプラテンの加工性、金型取り付け部12及び背面部14の強度、変形量に応じて適宜変更することで、垂直側縁連結部材33及び水平側縁連結部材34を最適な形状や数に変えることができる。
【0041】
さらに、前記金型取り付け部12は、左右の垂直な外周端縁における上下両端で、外周縁補助連結部材35によって、背面部14の左右の垂直な外周端縁における上下両端と連結されている。なお、前記外周縁補助連結部材35は、金型取り付け部12及び背面部14の強度、変形量等に応じて、寸法及び形状を適宜変更することもできるし、省略することもできる。さらに、前記金型取り付け部12及び背面部14の強度、変形量等に応じ、前記金型取り付け部12及び背面部14の上下の水平な外周端縁における左右両端を連結する位置に前記外周縁補助連結部材35を配設して、前記金型取り付け部12と背面部14とを連結することもできる。
【0042】
このように、金型取り付け部12は、四方の外周端縁におけるそれぞれの中央部で背面部14に連結されているので、固定金型41の寸法が大きく、金型取り付け部12の外周部及びその近傍、すなわち、中央領域の外側が型締力を受けた場合でも、前記中央領域の外側の部位が変形することがない。また、金型取り付け部12は、タイバー荷重受け部16から離れているので、該タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力によって背面部14におけるタイバー荷重受け部16近傍の部位が変形しても、該変形が金型取り付け部12に伝達されることがないので、該金型取り付け部12が変形することがない。したがって、金型取り付け面13と固定金型41の接触面との間の面圧が不均一になることがない。
【0043】
さらに、タイバー荷重受け部16は、隣接する側壁36及び外周縁補助連結部材35に連結されている。そのため、タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力によって変形し、タイバー42に曲がりが生じた場合でも、隣接した側壁36及び外周縁補助連結部材35を利用することで、過度にタイバー42に曲がりが生じることを防ぎ、タイバー42が破損してしまうことを防止することができる。つまり、金型に対する成形性能を向上させつつ、全体の剛性をも向上させることができる。
【0044】
ここで、前記固定プラテン11は鋳造によって製作されたものであり、前記金型取り付け部12、背面部14、タイバー荷重受け部16、取り付け部18、取り付け脚部材18a、連結板19、中央連結部材22、垂直側縁連結部材33、水平側縁連結部材34、外周縁補助連結部材35及び側壁36は、単一の部材として一体的に形成されている。なお、前記背面部14には、図5及び6に示されるように、鋳造の際に空洞部25を成形するために使用される後述される中子55を支持する支持部材56が貫通した背面貫通孔28が複数、例えば、四つ形成されている。また、前記背面貫通孔28は、図7、8、10及び11に示されるように、空洞部25と連通している。
【0045】
つまり、本実施の金型支持装置では、金型支持装置の内部において、可動金型の進退方向に延在する空洞部25に取り囲まれた中央連結部材22と、前記金型取り付け面13と隣り合う面に、前記空洞部25と貫通する貫通孔31及び32を備えた構造である。
【0046】
次に、前記構成の固定プラテン11の動作を説明する。
【0047】
図12は本発明の実施の形態における固定プラテンの側断面図であり成形機に取り付けられた状態を示す図である。
【0048】
まず、射出成形機における型締装置の駆動部としてのサーボモータが作動して、該サーボモータの回転運動が運動方向変換機構としてのボールねじによって直線運動に変換されて、トグル機構を介して図示されない可動プラテンに伝達する。これにより、該可動プラテンが固定プラテン11の方向に移動させられ、前記可動プラテンに取り付けられた図示されない可動金型が前記固定プラテン11の金型取り付け面13に取り付けられた固定金型41に押し付けられ、型閉及び型締が行われる。なお、前記固定プラテン11と図示されないトグルサポートとの間に架設された複数、例えば、四本のタイバー42が、図1及び3に示されるようなタイバー挿入孔17に挿入され、前記タイバー42の端部がナット等の固定部材43によって前記固定プラテン11のタイバー荷重受け部16に背面15から固定されている。
【0049】
続いて、図示されない射出装置から樹脂が高圧で射出され、前記可動金型及び固定金型41のキャビティ空間に充填される。そして、前記樹脂が冷却して固化することによって成形品が成形される。すると、前記型締装置の駆動部が作動し、可動プラテンが後退させられて可動金型が固定金型41から離間して、型開が行われる。続いて、図示されないエジェクタロッドを前進させると、エジェクタピンが、前記可動金型内部のキャビティに突出して成形品をエジェクトする。これにより、成形品が取り出される。以上の動作を繰り返すことによって、多数の成形品が成形される。
【0050】
ここで、型閉及び型締のときには、図12に示されるように、前記固定金型41は、前記可動プラテン及び可動金型を介して、トグル機構から強い型締力45を受ける。そして、該型締力45が固定プラテン11に伝達される。そして、該固定プラテン11のタイバー荷重受け部16は、前記タイバー42によって、型締力45と向きが反対で大きさの等しい反力46を受ける。そのため、トグル機構から強い型締力45を受けると、タイバー荷重受け部16がタイバー42から強い反力46を受け背面部14に曲げモーメントが作用し、該背面部14が撓み、14aで示されるように変形してしまう。この場合、前記背面部14は、中央領域に中央連結部材22が連結され、中央領域の強度が高くなっているので、中央領域においてはほとんど変形することがない。そのため、前記背面部14は、主として、中央領域の外側において変形する。それに伴い、背面15も15aで示されるように、主として、中央領域の外側において変形する。なお、図12における変形後の固定プラテン11の背面部14a及び背面15aは、説明の都合上、誇張して示されている。
【0051】
しかし、金型取り付け部12は、その中央領域が中央連結部材22によって、背面部14の中央領域と連結され、該中央領域の外側は空洞部25によって切り離されている。そのため、タイバー荷重受け部16が変形しても、該変形が金型取り付け部12に伝達されることがないので、該金型取り付け部12が変形することがない。そして、該金型取り付け部12及びその金型取り付け面13が変形せず、該金型取り付け面13と固定金型41の接触面との間の面圧が均一なので、固定金型41が変形することもない。したがって、成形品にばりが生じることも、偏肉が発生することもないので、成形品の品質を向上させることができる。
【0052】
また、前記金型取り付け部12は、中央領域に中央連結部材22が連結され、中央領域の強度が高くなっているので、強い型締力45を受けても、中央領域においてはほとんど変形することがない。さらに、前記金型取り付け部12は、四方の外周端縁におけるそれぞれの中央部で、垂直側縁連結部材33及び水平側縁連結部材34によって、背面部14の四方の外周端縁におけるそれぞれの中央部と連結されている。そのため、固定金型41の寸法が大きく、金型取り付け部12の中央領域の外側が型締力45を受けた場合でも、前記中央領域の外側の部位が変形することがない。したがって、金型取り付け部12及び
その金型取り付け面13は、中央領域の外側であっても変形しないので、金型取り付け面13と固定金型41の接触面との間の面圧が不均一にならず、固定金型41が変形することもない。
【0053】
なお、金型取り付け部12と背面部14とが垂直側縁連結部材33及び水平側縁連結部材34によって連結されている四方の外周端縁における中央部は、タイバー荷重受け部16から離れている。そのため、該タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力46によって背面部14におけるタイバー荷重受け部16近傍の部位が変形しても、該変形が金型取り付け部12に伝達されることがないので、該金型取り付け部12が変形することがない。
【0054】
さらに、背面部14の外周端縁に側壁36及び外周縁補助連結部材35が取り付けられているので、前記背面部14の、特に、中央領域の外側における部位の強度が向上し、変形し難くなる。そのため、空洞部25によって重量が軽減されても、固定プラテン11の強度が低下することがない。
【0055】
次に、前記構成の固定プラテン11を鋳造によって製作するための鋳型について説明する。
【0056】
図13は本発明の実施の形態における固定プラテンを鋳造する鋳型の縦断面図、図14は本発明の実施の形態における固定プラテンを鋳造する鋳型の横断面図であり図13のC−C矢視図である。
【0057】
本実施の形態において、前記固定プラテン11は、図13及び14に示されるような鋳型50を使用し、鋳造によって製作される。図13に示されるように、前記鋳型50は、下型51及び上型52を有し、前記下型51と上型52との間の空間に、溶融した金属材料としての溶湯59が充填される。なお、該溶湯59は、例えば、鋳鋼である。この場合、前記溶湯59は、前記上型52に形成された湯口53から流し込まれ、湯道53aを通って前記空間内に流入する。なお、54は押湯のために前記上型52に形成された押湯口であり、任意の位置に必要な数だけ形成することができる。
【0058】
そして、前記空間内に空洞部25を形成するための中子55が配設されている。該中子55は、複数本、例えば、四本の支持部材56によって下から支えられているので、下型51の上面から離れ、前記空間内に浮遊した状態で配設される。なお、前記支持部材56は、背面部14の背面貫通孔28を形成する。また、図14に示されるように、前記中子55は、複数、例えば、各側面において二つずつの側面支持部材57によって横から支えられているので、上型52の内側面から離れた状態で配設される。なお、前記側面支持部材57は、側部開口31及び水平開口32を形成する。さらに、図14に示されるように、前記空間の四隅にはタイバー荷重受け部16のタイバー挿入孔17を形成するための挿入孔用中子58が配設される。
【0059】
このように、前記鋳型50は、簡単な構成を有しているので、固定プラテン11を容易に鋳造することができ、該固定プラテン11の製作コストを低くすることができる。また、空洞部25を形成するための中子55は、支持部材56及び側面支持部材57によって支持され、かつ、前記支持部材56及び側面支持部材57によって背面貫通孔28、側部開口31及び水平開口32が形成される。そのため、鋳造が終了した後に中子55を前記背面貫通孔28、側部開口31及び水平開口32から容易に取り出すことができる。
【0060】
このように、本実施の形態において、固定プラテン11は、金型取り付け部12と背面部14とを有し、前記金型取り付け部12と背面部14とは中央領域において中央連結部
材22によって連結され、かつ、前記中央領域の外側は空洞部25によって互いに切り離されている。しかも、前記金型取り付け部12と背面部14とは、四方の外周端縁におけるそれぞれの中央部で外周縁連結部材によって連結されている。
【0061】
そのため、簡単な構造でありながら、金型取り付け部12及びその金型取り付け面13は、固定金型41の大きさに関わらず、型締力45やその反力46によって変形することがない。したがって、固定金型41が変形することもないので、金型取り付け面13と固定金型41の接触面との間の面圧が不均一にならず、成形品にばりが生じることも、偏肉が発生することもなく、成形品の成形性が低下してしまうことがない。
【0062】
また、背面部14の外周端縁に側壁36及び外周縁補助連結部材35が空洞部25を形成する中子55の支持板によって形成されているので、前記背面部14の強度が向上し、変形し難くなる。
【0063】
さらに、前記固定プラテン11は、簡単な構成の鋳型50によって製作することができるので、容易に製作することができ、製作コストを低くすることができる。この場合、鋳造が終了した後に、空洞部25を形成するための中子55を背面貫通孔28、側部開口31及び水平開口32から容易に取り出すことができる。また、固定プラテン11の一方の面である金型を取り付ける面は、金型を取り付けるために面精度を必要とする面であるが、他方の面である背面部14は比較的求められる精度が低いので、背面部14に中子55の支持板を設けることで空洞部25の形成を容易にすることができる。
【0064】
なお、前記実施の形態においては、可動プラテンが横方向(水平方向)に移動する横置型の射出成形機について説明したが、本発明は、可動プラテンが縦方向(垂直方向)に移動する縦置型の射出成形機にも適用することができる。さらに、本発明は、射出成形機の他に、ダイキャストマシーン、IJ封止プレス等の成形機にも適用することができる。
【0065】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明は、金型支持装置、成形機及び成形方法に適用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型支持装置、成形機及び成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機のような成形機においては、加熱シリンダ内においてスクリュを前進させ、加熱され、溶融させられた樹脂を高圧で射出して金型装置のキャビティに充填(てん)し、該キャビティ内において樹脂を冷却し、固化させることによって成形品を成形するようになっている。
【0003】
そのために、前記金型装置は固定金型及び可動金型から成り、型締装置によって前記可動金型を進退させ、前記固定金型に対して接離させることによって、型開閉、すなわち、型閉、型締及び型開を行うことができるようになっている。そして、前記型締装置は、一般的に、固定金型を保持する固定プラテン及び可動金型を保持する可動プラテンを有し、該可動プラテンを進退させる開閉装置としてトグル機構が配設され、該トグル機構は、駆動部に配設された電動モータ、サーボモータ等を駆動することによって作動させられる。
【0004】
図2は従来の固定プラテンの側面図である。
【0005】
図において、101は固定プラテンであり、図示されない可動プラテンと対向する金型取り付け面101aには固定金型102が取り付けられている。また、103は、前記固定プラテン101と図示されないトグルサポートとの間に架設された複数、例えば、四本のタイバーであり、端部がナット等の固定部材104によって前記固定プラテン101の背面101bに固定されている。そして、前記可動プラテンは、前記タイバー103に沿って進退(図における左右方向に移動)可能に配設される。なお、前記可動プラテンにおける固定プラテン101と対向する金型取り付け面には図示されない可動金型が取り付けられている。
【0006】
そして、前記可動プラテンが図示されないトグル機構によって固定プラテン101の方向に移動させられると、可動金型が前記固定金型102に押し付けられ、型閉及び型締が行われる。この場合、前記固定金型102は、前記可動プラテン及び可動金型を介して、トグル機構から強い型締力107を受ける。そして、該型締力107が固定プラテン101に伝達されるので、該固定プラテン101が撓(たわ)んで、金型取り付け面101aが変形してしまうことがある。
【0007】
図に示されるように、前記タイバー103は、それぞれ、固定金型102よりも上側及び下側において固定プラテン101の背面101bに固定されている。そして、前記固定プラテン101は、前記タイバー103によって、型締力107と向きが反対で大きさの等しい反力108を受ける。そのため、トグル機構から強い型締力107を受けると、固定プラテン101に曲げモーメントが作用し、前記固定プラテン101が撓み、106のように変形してしまう。それに伴い、金型取り付け面101aも106aのように変形してしまう。なお、図における変形後の固定プラテン106及び金型取り付け面106aは、説明の都合上、誇張して示されている。
【0008】
このように、金型取り付け面101aが106aのように変形すると、固定金型102も変形してしまうので、成形品にばりが生じたり偏肉が発生したりして、成形品の成形性
が低下してしまう。そこで、前記固定プラテン101の撓み及び金型取り付け面101aの変形を防止するために、前記固定プラテン101の板厚を厚くすることによって剛性を向上させている。しかし、前記固定プラテン101の板厚を厚くすると固定プラテン101の製造コストが高くなり、しかも、前記固定プラテン101の重量が増大するので、成形機全体の強度を向上させる必要があり、成形機全体の製造コストも高くなってしまう。
【0009】
そのため、固定プラテンを互いに離間した二つの壁部から構成し、該壁部を中間支持構造体によって接続する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この場合、中間支持構造体によって金型取り付け面側の壁部の中央領域だけを支持するので、金型取り付け面側の壁部に曲げモーメントが作用しないようになっている。
【特許文献1】特開平9−38984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の中間支持構造体を有する固定プラテンにおいては、金型取り付け面側の壁部の中央領域だけが支持されるようになっているので、金型が大型のものであり、その固定金型の取り付け面が中央領域より外側の領域に及び、キャビティ空間が金型取り付け面側と中間支持構造体との連結部よりも外側に配置させる場合、前記金型取り付け面側の壁部は、中央領域の外側の領域でも型締力を受けることになる。この場合、中央領域の外側の領域は中間支持構造体によって支持されていないので、前記型締力によって変形してしまう。これにより、固定プラテンの金型取り付け面と固定金型が固定プラテンに接触する接触面との間の面圧が不均一になるだけでなく、キャビティ空間も外側に反ってしまい成形不良が生じてしまう。
【0011】
また、一般に、固定プラテンは鋳造によって製作されるが、前記従来の固定プラテンは、離間した二つの壁部を中間支持構造体によって接続するための構成が複雑である。そのため、鋳型の製作が困難となり、前記固定プラテンを鋳造によって製作する場合、製作コストが高くなってしまう。
【0012】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、金型が小型であっても大型であっても、金型取り付け面が変形することがなく面圧が均一になり、かつ、鋳造によって容易に製作することができる金型支持装置、成形機及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明の金型支持装置においては、金型が取り付けられる金型取り付け面を備える金型取り付け部と、反力付与部材からの反力を受ける反力受け部を隅部に備える背面部とを有する金型支持装置であって、前記金型取り付け部の中央領域と前記背面部の中央領域とが中央連結部材によって連結され、前記金型取り付け部の外周部と前記背面部の外周部とが外周部連結部材によって連結される。
【0014】
本発明の他の金型支持装置においては、さらに、前記金型取り付け部と背面部との間における前記中央連結部材の周囲に環状の空洞部が形成される。
【0015】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記中央連結部材の軸方向外周形状は、直線的又は対称に形成される。
【0016】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記中央連結部材は前記金型取り付け部の中央部と前記背面部の中央部とを連結する単一の部材である。
【0017】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記中央連結部材は前記金型取り
付け部の中央領域と前記背面部の中央領域とを連結する複数の部材である。
【0018】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記外周部連結部材は、前記金型取り付け部及び前記背面部の四方又は二方の外周部において前記金型取り付け部と背面部とを連結する。
【0019】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記反力受け部の金型取り付け側面と前記金型取り付け部の金型取り付け面との間には段差が存在する。
【0020】
本発明の更に他の金型支持装置においては、さらに、前記背面部は、成形機の型締装置を支持するフレームに固定される取り付け部を有し、該取り付け部は前記背面部の上下方向の変形を抑制する箇所に設けられる。
【0021】
本発明の成形機においては、本発明の金型支持装置を有する。
【0022】
本発明の成形方法においては、本発明の金型支持装置を使用して成形品を成形する。
【0023】
本発明の他の成形方法においては、固定金型支持装置に取り付けられた固定金型と可動金型支持装置に取り付けられた可動金型とから成る金型装置のキャビティに樹脂を充填して成形品を成形する成形方法であって、前記固定金型支持装置又は可動金型支持装置は、金型取り付け部の中央領域と背面部の中央領域とが中央連結部材によって連結され、前記金型取り付け部の外周部と前記背面部の外周部とが外周部連結部材によって連結され、型締装置の型締力によって前記可動金型を固定金型に押し付けるステップと、前記型締力が前記金型取り付け部から中央連結部材又は外周部連結部材の少なくとも一方を介して背面部に伝達されるステップと、前記型締力の反力を背面部の隅部における反力受け部が受けるステップと、溶融させられた樹脂が高圧で射出されて前記キャビティに充填されるステップとを有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、金型支持装置は、金型が小型であっても大型であっても、金型取り付け面の変形を抑制し、成形品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態における固定プラテンの金型取り付け面側から見た第1の斜視図である。
【図2】従来の固定プラテンの側面図である。
【図3】本発明の実施の形態における固定プラテンの金型取り付け面側から見た第2の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における固定プラテンの正面図である。
【図5】本発明の実施の形態における固定プラテンの背面側から見た斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における固定プラテンの背面図である。
【図7】本発明の実施の形態における固定プラテンの縦断面図であり図6のB−B矢視図である。
【図8】本発明の実施の形態における固定プラテンの縦断カットモデルの斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの第1の斜視図であり図1のA−A矢視図である。
【図10】本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの第2の斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの正面図である。
【図12】本発明の実施の形態における固定プラテンの側断面図であり成形機に取り付けられた状態を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態における固定プラテンを鋳造する鋳型の縦断面図である。
【図14】本発明の実施の形態における固定プラテンを鋳造する鋳型の横断面図であり図13のC−C矢視図である。
【符号の説明】
【0026】
11 固定プラテン
12 金型取り付け部
13 金型取り付け面
14 背面部
16、16a、16b タイバー荷重受け部
18 取り付け部
22 中央連結部材
25 空洞部
41 固定金型
42 タイバー
45 型締力
46 反力
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明はいかなる種類の成形機にも適用することができるものであるが、ここでは、射出成形機に適用した場合について説明する。
【0028】
図1は本発明の実施の形態における固定プラテンの金型取り付け面側から見た第1の斜視図、図3は本発明の実施の形態における固定プラテンの金型取り付け面側から見た第2の斜視図、図4は本発明の実施の形態における固定プラテンの正面図、図5は本発明の実施の形態における固定プラテンの背面側から見た斜視図、図6は本発明の実施の形態における固定プラテンの背面図、図7は本発明の実施の形態における固定プラテンの縦断面図であり図6のB−B矢視図、図8は本発明の実施の形態における固定プラテンの縦断カットモデルの斜視図、図9は本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの第1の斜視図であり図1のA−A矢視図、図10は本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの第2の斜視図、図11は本発明の実施の形態における固定プラテンの横断カットモデルの正面図である。
【0029】
図において、11は、図示されない射出成形機に使用される金型装置が取り付けられる金型支持装置としての固定プラテンである。前記射出成形機は、図示されない加熱シリンダ内においてスクリュを前進させ、加熱され、溶融させられた樹脂を高圧で射出して金型装置のキャビティに充填し、該キャビティ内において樹脂を冷却し、固化させることによって成形品を成形する。この場合、前記金型装置は可動金型及び後述される金型としての固定金型41から成り、図示されない型締装置によって前記可動金型を進退させ、前記固定金型41に対して接離させることによって、型開閉、すなわち、型閉、型締及び型開を行うことができるようになっている。そして、前記型締装置は、固定金型41を保持する固定プラテン11及び可動金型を保持する図示されない可動プラテンを有し、該可動プラテンを進退させる開閉装置としてトグル機構が配設され、該トグル機構は、駆動部に配設された電動モータ、サーボモータ等を駆動することによって作動させられる。なお、前記開閉装置は、トグル機構以外のもの、例えば、油圧シリンダ装置等であってもよい。
【0030】
そして、前記可動プラテンが前記トグル機構によって固定プラテン11の方向に移動させられると、可動金型が固定金型41に押し付けられ、型閉及び型締が行われる。この場合、前記固定金型41は、前記可動プラテン及び可動金型を介して、トグル機構から強い型締力を受ける。そして、該型締力が固定プラテン11に伝達される。
【0031】
ここで、該固定プラテン11は、鋳造によって一体的に形成された中空の箱状体から成るものである。なお、説明の都合上、前記箱状体の各部分に名称及び符号を付与して説明するが、各部分は、別個の部材ではなく、一体的に形成された前記箱状体を構成する部分であることに留意すべきである。
【0032】
前記固定プラテン11は、前記固定金型41が取り付けられる金型取り付け面13を備える金型取り付け部12と、前記金型取り付け面13と反対側に位置する背面15を備える背面部14とを有する。この場合、前記金型取り付け面13は、図示されない可動プラテンの側、すなわち、正面側に面し、前記背面15は、図示されない加熱シリンダ側に面している。また、前記背面部14は、後述される複数のタイバー42のそれぞれに対応する位置に、前記型締力に対する反力を固定プラテン11に付与する反力付与部材として機能するタイバー42が挿入される挿入孔(こう)としてのタイバー挿入孔17が形成された複数、例えば、四つのガイド部としてのタイバー荷重受け部16を有する。該タイバー荷重受け部16はタイバー42から反力を受ける反力受け部として機能する。なお、前記タイバー荷重受け部16の金型取り付け面13側の面は、図1及び3に示されるように、金型取り付け面13よりも引っ込んで、背面15側に位置する。
【0033】
そして、前記背面部14は、略矩(く)形の形状を有し、中心に、前記加熱シリンダの先端部に取り付けられた射出ノズルが進入するノズル進入孔21が形成されている。なお、該ノズル進入孔21は、図7及び8に示されるように、背面15側から金型取り付け面13側に進むに連れて径が漸減するテーパ状の縦断面を有する。そのため、前記ノズル進入孔21の背面15における径は、金型取り付け面13における径よりも大きくなっている。また、前記背面部14の左右下端には、取り付け部18がタイバー42よりも内側から下方に突き出された前記取り付け脚部材18aを介して取り付けられている。したがって、型締力の発生によってタイバー42が変形し、該タイバー42をナットによって止めているタイバー荷重受け部16が変形しても、上方のタイバー荷重受け部16aの変形と下方のタイバー荷重受け部16bの変形を均一にさせることができ、したがって、固定プラテン11の上下の変形のアンバランスを解消することができる。
【0034】
前記取り付け部18は、固定プラテン11を前記型締装置の固定フレームの上面に取り付けるための部材であり、図示されない固定ボルト等の固定部材によって、前記取り付け部18を前記固定台、固定フレーム等に固定するようになっている。また、前記固定部材による前記取り付け部18の固定位置は、タイバー42より外側の位置に取り付けられる。これにより、固定フレームの剛性を上げるために取り付けられた図示されない固定フレーム補強部材に、ボルト等の係止部材によって前記取り付け部18を固定させることができ、固定フレームに固定プラテン用の新たな部材を配設する必要がない。なお、左右の前記背面部14の下端に取り付けられた連結板19によって連結されている。
【0035】
また、前記金型取り付け部12は略矩形の形状を有し、中心に前記ノズル進入孔21が形成されている。なお、前記金型取り付け部12の金型取り付け面13には、通常、固定金型41を取り付けるためのボルト孔(あな)が複数形成されているが、本実施の形態においては省略されている。
【0036】
そして、固定プラテン11の内部において、該固定プラテン11の中央領域を残して空
洞部25が形成され、残された中央領域は金型取り付け部12と背面部14とを繋(つな)ぐ中央連結部材22として構成される。該中央連結部材22は、図9〜11に示されるように、略円柱状の外周が可動金型の進退方向において直線的又は対称な形状を有しているが、内部に前記ノズル進入孔21が形成されている。そのため、前記中央連結部材22は、内面がテーパ状の円筒状の形状を有しているとも言える。そして、前記金型取り付け部12と背面部14との間における前記中央連結部材22の周囲には、図7〜11に示されるように、環状の空洞部25が形成されている。なお、該空洞部25の内周側の側面は円筒面であり、外周側の側面は略四角筒面である。
【0037】
また、前記中央連結部材22の断面形状は、略円形以外の形状であってもよく、金型取り付け面13に取り付けられる固定金型41の形状に応じて、略楕(だ)円形、略菱(ひし)形等の任意の形状に変更することができる。例えば、固定金型41における取り付け面の形状が縦方向に長い形状である場合、中央連結部材22の断面形状を縦方向に長い略楕円形又は略菱形にすることが望ましい。前記中央連結部材22は、金型取り付け部12における変形の少ない箇所と背面部14とを連結する部材である。そのため、固定金型41における取り付け面の形状が変化すると金型取り付け部12における変形の少ない箇所の形状も変化するので、それに対応するように中央連結部材22の断面形状を変化させることが望ましい。例えば、2材成形機のように横長の金型を使用する場合には、横方向に長い略楕円形の形状にすることが望ましい。
【0038】
そして、前記金型取り付け部12が固定金型41を介して受けた型締力は、中央連結部材22を介して、背面部14の中央領域に伝達される。一方、前記タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力は、背面部14及び中央連結部材22を介して金型取り付け部12の中央領域に伝達される。したがって、前記中央連結部材22の寸法、例えば、半径方向の肉厚は、前記型締力及び反力を伝達するために十分な強度を発揮するように決定される。また、固定プラテン11の内部において、該固定プラテン11の中央領域を残して空洞部25が形成されているので、金型取り付け部12は中央領域の外側において背面部14から切り離されている。そのため、タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力によって背面部14の外周部及びタイバー荷重受け部16が変形しても、該変形が金型取り付け部12に伝達されることがないので、該金型取り付け部12が変形することがない。したがって、金型取り付け面13と固定金型41が固定プラテン11に接触する接触面との間の面圧が不均一になることがない。本発明では、中央連結部材22は一つの部材で構成されているが、複数の部材を用いて金型取り付け部12の中央領域と背面部14の中央領域とを連結させてもよい。
【0039】
さらに、前記空洞部25は斜め方向開口部100によっても外部と連通されている。そして、タイバー荷重受け部16の金型取り付け側の側面と、金型取り付け面13との間に段差が形成される。前記斜め方向開口部100は、タイバー荷重受け部16と金型取り付け部12とを完全に切り離す作用をしているため、型締力がタイバー42にかかりタイバー荷重受け部16が変形したとしても、該タイバー荷重受け部16の変形が金型取り付け部14に伝達されることはない。さらに、前記背面部14の上下の水平な外周端縁における水平開口32に対応する位置には、金型取り付け部12の方向に向けて突出する側壁36が形成されている。また、該側壁36は、水平側縁連結部材34及び隣接するタイバー荷重受け部16に連結されている。そのため、前記背面部14の上下の水平な外周端縁は、前記側壁36がリブの役割を果たしているため強度が向上し、変形し難くなる。
【0040】
また、前記空洞部25は固定プラテン11の垂直側面の両側には外部に連通するように側部開口31が形成され、水平側面の両側には外部に連通するように水平開口32が形成される。前記側部開口31によって、固定プラテン11の垂直側面には垂直側縁連結部材33が、前記水平開口32によって、水平側面には水平側縁連結部材34が形成され、こ
れらの複数の側縁連結部材によって外周側縁連結部材が構成される。なお、前記側壁36は、必要に応じて、背面部14の左右の垂直な外周端縁における側部開口31に対応する位置に取り付けることもできる。また、側部開口31及び水平開口32の寸法、形状や数を金型サイズやプラテンの加工性、金型取り付け部12及び背面部14の強度、変形量に応じて適宜変更することで、垂直側縁連結部材33及び水平側縁連結部材34を最適な形状や数に変えることができる。
【0041】
さらに、前記金型取り付け部12は、左右の垂直な外周端縁における上下両端で、外周縁補助連結部材35によって、背面部14の左右の垂直な外周端縁における上下両端と連結されている。なお、前記外周縁補助連結部材35は、金型取り付け部12及び背面部14の強度、変形量等に応じて、寸法及び形状を適宜変更することもできるし、省略することもできる。さらに、前記金型取り付け部12及び背面部14の強度、変形量等に応じ、前記金型取り付け部12及び背面部14の上下の水平な外周端縁における左右両端を連結する位置に前記外周縁補助連結部材35を配設して、前記金型取り付け部12と背面部14とを連結することもできる。
【0042】
このように、金型取り付け部12は、四方の外周端縁におけるそれぞれの中央部で背面部14に連結されているので、固定金型41の寸法が大きく、金型取り付け部12の外周部及びその近傍、すなわち、中央領域の外側が型締力を受けた場合でも、前記中央領域の外側の部位が変形することがない。また、金型取り付け部12は、タイバー荷重受け部16から離れているので、該タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力によって背面部14におけるタイバー荷重受け部16近傍の部位が変形しても、該変形が金型取り付け部12に伝達されることがないので、該金型取り付け部12が変形することがない。したがって、金型取り付け面13と固定金型41の接触面との間の面圧が不均一になることがない。
【0043】
さらに、タイバー荷重受け部16は、隣接する側壁36及び外周縁補助連結部材35に連結されている。そのため、タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力によって変形し、タイバー42に曲がりが生じた場合でも、隣接した側壁36及び外周縁補助連結部材35を利用することで、過度にタイバー42に曲がりが生じることを防ぎ、タイバー42が破損してしまうことを防止することができる。つまり、金型に対する成形性能を向上させつつ、全体の剛性をも向上させることができる。
【0044】
ここで、前記固定プラテン11は鋳造によって製作されたものであり、前記金型取り付け部12、背面部14、タイバー荷重受け部16、取り付け部18、取り付け脚部材18a、連結板19、中央連結部材22、垂直側縁連結部材33、水平側縁連結部材34、外周縁補助連結部材35及び側壁36は、単一の部材として一体的に形成されている。なお、前記背面部14には、図5及び6に示されるように、鋳造の際に空洞部25を成形するために使用される後述される中子55を支持する支持部材56が貫通した背面貫通孔28が複数、例えば、四つ形成されている。また、前記背面貫通孔28は、図7、8、10及び11に示されるように、空洞部25と連通している。
【0045】
つまり、本実施の金型支持装置では、金型支持装置の内部において、可動金型の進退方向に延在する空洞部25に取り囲まれた中央連結部材22と、前記金型取り付け面13と隣り合う面に、前記空洞部25と貫通する貫通孔31及び32を備えた構造である。
【0046】
次に、前記構成の固定プラテン11の動作を説明する。
【0047】
図12は本発明の実施の形態における固定プラテンの側断面図であり成形機に取り付けられた状態を示す図である。
【0048】
まず、射出成形機における型締装置の駆動部としてのサーボモータが作動して、該サーボモータの回転運動が運動方向変換機構としてのボールねじによって直線運動に変換されて、トグル機構を介して図示されない可動プラテンに伝達する。これにより、該可動プラテンが固定プラテン11の方向に移動させられ、前記可動プラテンに取り付けられた図示されない可動金型が前記固定プラテン11の金型取り付け面13に取り付けられた固定金型41に押し付けられ、型閉及び型締が行われる。なお、前記固定プラテン11と図示されないトグルサポートとの間に架設された複数、例えば、四本のタイバー42が、図1及び3に示されるようなタイバー挿入孔17に挿入され、前記タイバー42の端部がナット等の固定部材43によって前記固定プラテン11のタイバー荷重受け部16に背面15から固定されている。
【0049】
続いて、図示されない射出装置から樹脂が高圧で射出され、前記可動金型及び固定金型41のキャビティ空間に充填される。そして、前記樹脂が冷却して固化することによって成形品が成形される。すると、前記型締装置の駆動部が作動し、可動プラテンが後退させられて可動金型が固定金型41から離間して、型開が行われる。続いて、図示されないエジェクタロッドを前進させると、エジェクタピンが、前記可動金型内部のキャビティに突出して成形品をエジェクトする。これにより、成形品が取り出される。以上の動作を繰り返すことによって、多数の成形品が成形される。
【0050】
ここで、型閉及び型締のときには、図12に示されるように、前記固定金型41は、前記可動プラテン及び可動金型を介して、トグル機構から強い型締力45を受ける。そして、該型締力45が固定プラテン11に伝達される。そして、該固定プラテン11のタイバー荷重受け部16は、前記タイバー42によって、型締力45と向きが反対で大きさの等しい反力46を受ける。そのため、トグル機構から強い型締力45を受けると、タイバー荷重受け部16がタイバー42から強い反力46を受け背面部14に曲げモーメントが作用し、該背面部14が撓み、14aで示されるように変形してしまう。この場合、前記背面部14は、中央領域に中央連結部材22が連結され、中央領域の強度が高くなっているので、中央領域においてはほとんど変形することがない。そのため、前記背面部14は、主として、中央領域の外側において変形する。それに伴い、背面15も15aで示されるように、主として、中央領域の外側において変形する。なお、図12における変形後の固定プラテン11の背面部14a及び背面15aは、説明の都合上、誇張して示されている。
【0051】
しかし、金型取り付け部12は、その中央領域が中央連結部材22によって、背面部14の中央領域と連結され、該中央領域の外側は空洞部25によって切り離されている。そのため、タイバー荷重受け部16が変形しても、該変形が金型取り付け部12に伝達されることがないので、該金型取り付け部12が変形することがない。そして、該金型取り付け部12及びその金型取り付け面13が変形せず、該金型取り付け面13と固定金型41の接触面との間の面圧が均一なので、固定金型41が変形することもない。したがって、成形品にばりが生じることも、偏肉が発生することもないので、成形品の品質を向上させることができる。
【0052】
また、前記金型取り付け部12は、中央領域に中央連結部材22が連結され、中央領域の強度が高くなっているので、強い型締力45を受けても、中央領域においてはほとんど変形することがない。さらに、前記金型取り付け部12は、四方の外周端縁におけるそれぞれの中央部で、垂直側縁連結部材33及び水平側縁連結部材34によって、背面部14の四方の外周端縁におけるそれぞれの中央部と連結されている。そのため、固定金型41の寸法が大きく、金型取り付け部12の中央領域の外側が型締力45を受けた場合でも、前記中央領域の外側の部位が変形することがない。したがって、金型取り付け部12及び
その金型取り付け面13は、中央領域の外側であっても変形しないので、金型取り付け面13と固定金型41の接触面との間の面圧が不均一にならず、固定金型41が変形することもない。
【0053】
なお、金型取り付け部12と背面部14とが垂直側縁連結部材33及び水平側縁連結部材34によって連結されている四方の外周端縁における中央部は、タイバー荷重受け部16から離れている。そのため、該タイバー荷重受け部16がタイバー42から受けた反力46によって背面部14におけるタイバー荷重受け部16近傍の部位が変形しても、該変形が金型取り付け部12に伝達されることがないので、該金型取り付け部12が変形することがない。
【0054】
さらに、背面部14の外周端縁に側壁36及び外周縁補助連結部材35が取り付けられているので、前記背面部14の、特に、中央領域の外側における部位の強度が向上し、変形し難くなる。そのため、空洞部25によって重量が軽減されても、固定プラテン11の強度が低下することがない。
【0055】
次に、前記構成の固定プラテン11を鋳造によって製作するための鋳型について説明する。
【0056】
図13は本発明の実施の形態における固定プラテンを鋳造する鋳型の縦断面図、図14は本発明の実施の形態における固定プラテンを鋳造する鋳型の横断面図であり図13のC−C矢視図である。
【0057】
本実施の形態において、前記固定プラテン11は、図13及び14に示されるような鋳型50を使用し、鋳造によって製作される。図13に示されるように、前記鋳型50は、下型51及び上型52を有し、前記下型51と上型52との間の空間に、溶融した金属材料としての溶湯59が充填される。なお、該溶湯59は、例えば、鋳鋼である。この場合、前記溶湯59は、前記上型52に形成された湯口53から流し込まれ、湯道53aを通って前記空間内に流入する。なお、54は押湯のために前記上型52に形成された押湯口であり、任意の位置に必要な数だけ形成することができる。
【0058】
そして、前記空間内に空洞部25を形成するための中子55が配設されている。該中子55は、複数本、例えば、四本の支持部材56によって下から支えられているので、下型51の上面から離れ、前記空間内に浮遊した状態で配設される。なお、前記支持部材56は、背面部14の背面貫通孔28を形成する。また、図14に示されるように、前記中子55は、複数、例えば、各側面において二つずつの側面支持部材57によって横から支えられているので、上型52の内側面から離れた状態で配設される。なお、前記側面支持部材57は、側部開口31及び水平開口32を形成する。さらに、図14に示されるように、前記空間の四隅にはタイバー荷重受け部16のタイバー挿入孔17を形成するための挿入孔用中子58が配設される。
【0059】
このように、前記鋳型50は、簡単な構成を有しているので、固定プラテン11を容易に鋳造することができ、該固定プラテン11の製作コストを低くすることができる。また、空洞部25を形成するための中子55は、支持部材56及び側面支持部材57によって支持され、かつ、前記支持部材56及び側面支持部材57によって背面貫通孔28、側部開口31及び水平開口32が形成される。そのため、鋳造が終了した後に中子55を前記背面貫通孔28、側部開口31及び水平開口32から容易に取り出すことができる。
【0060】
このように、本実施の形態において、固定プラテン11は、金型取り付け部12と背面部14とを有し、前記金型取り付け部12と背面部14とは中央領域において中央連結部
材22によって連結され、かつ、前記中央領域の外側は空洞部25によって互いに切り離されている。しかも、前記金型取り付け部12と背面部14とは、四方の外周端縁におけるそれぞれの中央部で外周縁連結部材によって連結されている。
【0061】
そのため、簡単な構造でありながら、金型取り付け部12及びその金型取り付け面13は、固定金型41の大きさに関わらず、型締力45やその反力46によって変形することがない。したがって、固定金型41が変形することもないので、金型取り付け面13と固定金型41の接触面との間の面圧が不均一にならず、成形品にばりが生じることも、偏肉が発生することもなく、成形品の成形性が低下してしまうことがない。
【0062】
また、背面部14の外周端縁に側壁36及び外周縁補助連結部材35が空洞部25を形成する中子55の支持板によって形成されているので、前記背面部14の強度が向上し、変形し難くなる。
【0063】
さらに、前記固定プラテン11は、簡単な構成の鋳型50によって製作することができるので、容易に製作することができ、製作コストを低くすることができる。この場合、鋳造が終了した後に、空洞部25を形成するための中子55を背面貫通孔28、側部開口31及び水平開口32から容易に取り出すことができる。また、固定プラテン11の一方の面である金型を取り付ける面は、金型を取り付けるために面精度を必要とする面であるが、他方の面である背面部14は比較的求められる精度が低いので、背面部14に中子55の支持板を設けることで空洞部25の形成を容易にすることができる。
【0064】
なお、前記実施の形態においては、可動プラテンが横方向(水平方向)に移動する横置型の射出成形機について説明したが、本発明は、可動プラテンが縦方向(垂直方向)に移動する縦置型の射出成形機にも適用することができる。さらに、本発明は、射出成形機の他に、ダイキャストマシーン、IJ封止プレス等の成形機にも適用することができる。
【0065】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明は、金型支持装置、成形機及び成形方法に適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金型が取り付けられる金型取り付け面を備える金型取り付け部と、
(b)反力付与部材からの反力を受ける反力受け部を隅部に備える背面部とを有する金型支持装置であって、
(c)前記金型取り付け部の中央領域と前記背面部の中央領域とが中央連結部材によって連結され、
(d)前記金型取り付け部の外周部と前記背面部の外周部とが外周部連結部材によって連結されることを特徴とする金型支持装置。
【請求項2】
前記金型取り付け部と背面部との間における前記中央連結部材の周囲に環状の空洞部が形成される請求項1に記載の金型支持装置。
【請求項3】
前記中央連結部材の軸方向外周形状は、直線的又は対称に形成される請求項1又は2に記載の金型支持装置。
【請求項4】
前記中央連結部材は前記金型取り付け部の中央部と前記背面部の中央部とを連結する単一の部材である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項5】
前記中央連結部材は前記金型取り付け部の中央領域と前記背面部の中央領域とを連結する複数の部材である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項6】
前記外周部連結部材は、前記金型取り付け部及び前記背面部の四方又は二方の外周部において前記金型取り付け部と背面部とを連結する請求項1〜5のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項7】
前記反力受け部の金型取り付け側面と前記金型取り付け部の金型取り付け面との間には段差が存在する請求項1〜6のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項8】
(a)前記背面部は、成形機の型締装置を支持するフレームに固定される取り付け部を有し、
(b)該取り付け部は前記背面部の上下方向の変形を抑制する箇所に設けられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金型支持装置を有する成形機。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金型支持装置を使用して成形品を成形する成形方法。
【請求項11】
(a)固定金型支持装置に取り付けられた固定金型と可動金型支持装置に取り付けられた可動金型とから成る金型装置のキャビティに樹脂を充填して成形品を成形する成形方法であって、
(b)前記固定金型支持装置又は可動金型支持装置は、金型取り付け部の中央領域と背面部の中央領域とが中央連結部材によって連結され、前記金型取り付け部の外周部と前記背面部の外周部とが外周部連結部材によって連結され、
(c)型締装置の型締力によって前記可動金型を固定金型に押し付けるステップと、
(d)前記型締力が前記金型取り付け部から中央連結部材又は外周部連結部材の少なくとも一方を介して背面部に伝達されるステップと、
(e)前記型締力の反力を背面部の隅部における反力受け部が受けるステップと、
(f)溶融させられた樹脂が高圧で射出されて前記キャビティに充填されるステップとを
有することを特徴とする成形方法。
【請求項1】
(a)金型が取り付けられる金型取り付け面を備える金型取り付け部と、
(b)反力付与部材からの反力を受ける反力受け部を隅部に備える背面部とを有する金型支持装置であって、
(c)前記金型取り付け部の中央領域と前記背面部の中央領域とが中央連結部材によって連結され、
(d)前記金型取り付け部の外周部と前記背面部の外周部とが外周部連結部材によって連結されることを特徴とする金型支持装置。
【請求項2】
前記金型取り付け部と背面部との間における前記中央連結部材の周囲に環状の空洞部が形成される請求項1に記載の金型支持装置。
【請求項3】
前記中央連結部材の軸方向外周形状は、直線的又は対称に形成される請求項1又は2に記載の金型支持装置。
【請求項4】
前記中央連結部材は前記金型取り付け部の中央部と前記背面部の中央部とを連結する単一の部材である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項5】
前記中央連結部材は前記金型取り付け部の中央領域と前記背面部の中央領域とを連結する複数の部材である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項6】
前記外周部連結部材は、前記金型取り付け部及び前記背面部の四方又は二方の外周部において前記金型取り付け部と背面部とを連結する請求項1〜5のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項7】
前記反力受け部の金型取り付け側面と前記金型取り付け部の金型取り付け面との間には段差が存在する請求項1〜6のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項8】
(a)前記背面部は、成形機の型締装置を支持するフレームに固定される取り付け部を有し、
(b)該取り付け部は前記背面部の上下方向の変形を抑制する箇所に設けられる請求項1〜7のいずれか1項に記載の金型支持装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金型支持装置を有する成形機。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金型支持装置を使用して成形品を成形する成形方法。
【請求項11】
(a)固定金型支持装置に取り付けられた固定金型と可動金型支持装置に取り付けられた可動金型とから成る金型装置のキャビティに樹脂を充填して成形品を成形する成形方法であって、
(b)前記固定金型支持装置又は可動金型支持装置は、金型取り付け部の中央領域と背面部の中央領域とが中央連結部材によって連結され、前記金型取り付け部の外周部と前記背面部の外周部とが外周部連結部材によって連結され、
(c)型締装置の型締力によって前記可動金型を固定金型に押し付けるステップと、
(d)前記型締力が前記金型取り付け部から中央連結部材又は外周部連結部材の少なくとも一方を介して背面部に伝達されるステップと、
(e)前記型締力の反力を背面部の隅部における反力受け部が受けるステップと、
(f)溶融させられた樹脂が高圧で射出されて前記キャビティに充填されるステップとを
有することを特徴とする成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【国際公開番号】WO2005/084909
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510792(P2006−510792)
【国際出願番号】PCT/JP2005/004041
【国際出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2005/004041
【国際出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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