説明

金型装置

【課題】 2次成形の過程において、外層部を成形する側よりも内層部を形成する側に樹脂が早く充填されてしまう場合があり、その結果、外層部を成形する側に充填される樹脂が不十分となってしまい、外層部が短く形成されてしまう危険性があった。また、内層部を成形する樹脂が樹脂成型品である本体に接するのに対し、外層部を成形する樹脂が金属材質であるキャビティーに接する事とも相まって、外層部を成形する樹脂の未充填が顕著となる。
【解決手段】 1次成形品の表面に2次成形品を成形する2色成形における金型装置であって、前記2次成形品の外観を形成するキャビティーの内面と、前記1次成形品の外面との間に、2次成形品の内部に空間部を形成する筒状のコアピンを配置すると共に、そのコアピンの頂部近傍の外面に面取り部を施すと共に、その面取り部の近傍に前記キャビティーに樹脂を流し込むゲート部を形成した金型装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次成形品の表面に2次成形品を成形する2色成形における金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本体の把時する部分に、弾性を有する袋体とその袋体に内包された多孔質弾性体とからなるグリップ部材を配置した筆記具が知られている。前記本体は、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなど比較的硬質な樹脂材質から構成されており、前記袋体はニトリルブタジエンゴムやシリコーンゴムなど柔軟性のあるゴム状弾性体から構成されている。そして、その袋体の内部には液状シリコーンゴムやスポンジなど袋体よりも柔らかい弾性体が内包されている。
ところで、上記の本体と袋体は、生産性を向上させるために2色成型や異材質成型と言った射出成型手段によって成形される。具体的に説明すると、本体が1次成形金型によって成形され、次いで、2次成形金型によって本体の表面に袋体が成形される。
【特許文献1】特開平2005−111897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記袋体は、底部と外層部、並びに、内層部から構成されている。つまり、外層部と内層部との間には、空間部が形成されている。そして、その空間部は2次成形金型の構成である筒状のコアピンによって形成される。また、そのコアピンの前方には、袋体を成形する樹脂の流入口であるゲート孔が設けられている。さらに、前記のコアピンは、有底の袋体を形成するために、片持ち梁になっている。即ち、コアピンの基部は金型に固定されているものの、前端部は固定されておらずフリーな状態になっているのである。
かくして、2次成形の過程において、外層部を成形する側よりも内層部を形成する側に樹脂が早く充填されてしまう場合があり、その結果、外層部を成形する側に充填される樹脂が不十分となってしまい、外層部が短く形成されてしまう危険性があった。また、内層部を成形する樹脂が樹脂成型品である本体に接するのに対し、外層部を成形する樹脂が金属材質であるキャビティーに接する事とも相まって、外層部を成形する樹脂の未充填が顕著となる。つまり、キャビティーは、金属材質であるが故に、充填される樹脂が冷えやすく、完全に充填される前に硬化してしまうのである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、1次成形品の表面に2次成形品を成形する2色成形における金型装置であって、前記2次成形品の外観を形成するキャビティーの内面と、前記1次成形品の外面との間に、2次成形品の内部に空間部を形成する筒状のコアピンを配置すると共に、そのコアピンの頂部近傍の外面に面取り部を施すと共に、その面取り部の近傍に前記キャビティーに樹脂を流し込むゲート部を形成したことを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、1次成形品の表面に2次成形品を成形する2色成形における金型装置であって、前記2次成形品の外観を形成するキャビティーの内面と、前記1次成形品の外面との間に、2次成形品の内部に空間部を形成する筒状のコアピンを配置すると共に、そのコアピンの頂部近傍の外面に面取り部を施すと共に、その面取り部の近傍に前記キャビティーに樹脂を流し込むゲート部を形成したので、良好な2次成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の1例を図1〜図13に示し説明する。1次成形金型と2次成形金型とから構成されており、それら1次成形金型と2次成形金型は固定側型板群と可動側型板郡とから構成されている。それら1次成形金型と2次成形金型の固定側型板群は各々個別の構成をなしているが、可動側型板群は共通なものとなっている。つまり、1次成形金型で使用された可動側型板群が2次成形金型でも使用されるのである。
具体的に説明する。1次成形金型1の固定側型板郡2は、溶融された樹脂を吐出するノズル3が配置された取付プレート4と中間プレート5、スプル孔6とランナー溝7が形成されたランナープレート8、並びに、1次成形品が成形され割型から構成されるキャビティーブロック9を有するキャビティープレート10とから構成されている。そして、前記取付プレート4と中間プレート5、並びに、ランナープレート8は、ボルト11によって一体的に固定されている。前記キャビティーブロック9には、1次成形品が形成されるキャビティー12と、そのキャビティー12に樹脂を流し込むゲート孔13、並びに、そのゲート孔13と前記ランナープレート8のランナー溝7と連接するランナー溝14が形成されている。
符号15は、前記スプル孔6などと連接するランナーロック溝であり、成形後、ランナーなどが固定側型板郡2に残留しないようにしている。また、符号16は、前記ランナープレート8に固定され、後述するコアピンの先端が差し込まれる支持ピンである。
一方、可動側型板郡17は、成形された成形品を後述するコアピンから離脱させるエジェクタプレート18、19と、1次成形品に中空部を形成するコアピン20が固定されたコアプレート21と取付プレート22から構成されている。そして、前記コアピン20の外形部とキャビティーブロック9の内形部との間には1次成形品が形成される隙間が形成されており、この隙間がキャビティー12となっている。
【0007】
次に、2次成形金型23について説明する。2次成形金型23の固定側型板郡24は、樹脂を突出するノズル25が配置された取付プレート26と中間プレート27、スプル孔28とランナー溝29が形成されたランナープレート30、並びに、2次成形品が成形され割型から構成されるキャビティーブロック31を有するキャビティープレート32とから構成されている。そして、前記取付プレート26と中間プレート27、ランナープレート30は、ボルト33によって一体的に固定されている。前記キャビティーブロック31には、2次成形品が形成されるキャビティー33と、そのキャビティー33に樹脂を流し込むゲート孔34、並びに、そのゲート孔34と前記ランナープレート30のランナー溝29と連接するランナー溝35が形成されている。また、前記中間プレート27には、2次成形品に空間部を形成する筒状のコアピン36が固定されており、そのコアピン36の内部には、前記可動側型板郡17のコアピン29の先端が差し込まれる嵌合孔37が形成されている。尚、本実施例におけるコアピン36は、中実のコア部36aと中空の筒部36bとから構成されているが、中実の柱状物を切削するなどして筒体としても良い。しかし、長い筒状体を切削によって正確に形成することは難しく、本実施例のように2部材から構成するのが好ましい。
【0008】
次に、前記コアピン36について具体的に説明する。コアピン36の前方部は、中空の筒状(筒部36b)をなしていると共に、先端部に向かって先細り形状をなしている。その筒部36bの先端部の側面には、直線状の面取り加工が施されている(面取り部38)が、円弧状の面取り部にしても良い。また、その面取り部38の両端部にも円弧状の面取り部38a、38bが施されているが、ほんの僅かな面取り部である。具体的には、半径が0.1mm〜0.2mm程度の面取り部となっている。尚、コアピン36の先端部の内面にも半径が0.3mm〜0.5mm程度の面取り部39が形成されている。端部を円弧状にすることによって、成形後における2次成形品の端部(角部)からの亀裂を防止しているのである。尚、前記面取り部38は、コアピン36の長手方向に沿って若干長く形成されている。後述もするが、ゲート孔34から流れ込む樹脂の方向を若干外側方向に流れ込み易くしているのである。また、コアピン36の前端部とキャビティー36との間には隙間が形成されており、その隙間にも樹脂が流入するようになっている。
次に、前記ゲート孔34について具体的に説明する。ゲート孔34は、コアピン36の前方に位置しており、また、キャビティー33に向かって縮径した円錐形状をなしていると共に、前記コアピン36の面取り部38bに向かって形成されている。即ち、ゲート孔34から流入した樹脂は、初めに面取り部38bに衝突し、その後、コアピン36によって区画される内層部側と外層部側に流れ込むのである。この時、前述したように、面取り部38が長手方向に沿って若干長く形成されているため、流れ込んだ樹脂は、外層部側に流れ込み易くなっている。
ここで、前記キャビティーブロック31の内面とコアピン36の外面とで形成される空間(外層部を成形するキャビティー33a)は、1次成形品の外面とコアピン36の内面とで形成される空間(内層部を成形するキャビティー33b)よりも僅かながらではあるが薄く形成されている。言い換えると、外層部を成形するキャビティー33aよりも、内層部を成形するキャビティー33bの方が厚く形成されている。この成形手段によって成形される製品を筆記具などのグリップ部材とした場合に、1次成形品の感触が極力伝わらないように、内層部の厚さを厚くしているのである。
【0009】
次に、動作について説明する。本実施例における成形品は、筆記具などの把持する部分に設けられているグリップ部材である。
図1に示す状態は、1次成形金型1の固定側型板郡2と可動側型板郡17が型締めされた状態である。この時、可動側型板郡17のコアピン20の先端は、固定側型板郡17に固定されている支持ピン16に嵌合している。即ち、コアピン20は、両端が固定された状態になっている。この状態から、ゲート孔13などを経て樹脂がキャビティー12に流入・充填され、1次成形品A(筆記具の軸筒)が形成される(図2参照)。その樹脂は、硬化すると比較的硬いポリプロピレンであるが、ポリプロピレンやポリアセタール、アクリロニトリルブタジエンスチレンなどであってもよい。次いで、固定側型板郡2と可動側型板郡17を離隔させるが、この時、割型から構成されるキャビティーブロック9も離隔・拡開し、ランナーRが分離させた状態で1次成形品Aがコアピン20に固定された状態で1次成形金型1から露出する(図3参照)。これと同時に、ランナーRは、自重により落下し、1次成形金型1から排出されるが、ロボットなどで把時するなどして排出しても良い(図4参照)。
次いで、前記1次成形品Aが固定押された可動側型板郡17が搬送、或いは、回転するなどして、2次成形金型23の固定側型板郡24の前方に位置する(図5参照)。ここで、再び、固定側型板郡24と可動側型板郡17とを型締めし、ゲート孔34から樹脂をキャビティー33(33a、33b)に充填する。その樹脂は、比較的弾力性のあるシリコーンゴムであるが、ニトリルブタジエンゴムや天然ゴムなどであってもよい。このとき、樹脂は外層部を形成するキャビティー33aに若干早く流れ込むが、内層部を形成するキャビティー33bにもほぼ同様な速度で流れ込み、充填される(図6→図9参照)。つまり、ゲート孔34から流入した樹脂は、初めに面取り部38bに衝突し、その後、コアピン36によって区画される外層部側(キャビティー33a)と内層部側(キャビティー33b)に流れ込むのである。このキャビティー33への充填動作によって、1次成形品Aの表面に袋状の2次成形品B(グリップ部材)が被覆された状態で成形される。勿論、その袋状の2次成形品Bの内層部は、外層部よりも厚く成形されている。
【0010】
次いで、固定側型板郡24と可動側型板郡17を離隔させるが、この時、割型から構成されるキャビティーブロック31も離隔・拡開し、ランナーNと、2次成形品Bが被覆された1次成形品Aがコアピン20に固定された状態で2次成形金型23から露出する(図10参照)。次いで、ランナーNを2次成形品Bから切り離し、2次成形金型23から排出する(図11参照)。その切り離し動作は、ロボットによってなしても良いし、金型の動作を利用してなしても良い。次いで、前記固定側型板郡24と可動側型板郡17とをさらに離隔させ、エジェクタプレート18、19を作動させる。このエジェクタプレート18、19の作動によって、2次成形品Bが被覆された1次成形品Aがコアピン20から押し出され、排出される(図12、図13参照)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】1次成形金型を示す要部断面図。
【図2】1次成形金型を示す要部断面図(樹脂の充填時)。
【図3】動作を示す要部断面図。
【図4】動作を示す要部断面図。
【図5】可動側型板郡の移動を示す要部断面図。
【図6】2次成形金型を示す要部断面図(樹脂の充填過程)。
【図7】図6の要部拡大図。
【図8】図7の要部拡大図。
【図9】2次成形金型を示す要部断面図(樹脂の充填時)。
【図10】動作を示す要部断面図。
【図11】動作を示す要部断面図。
【図12】動作を示す要部断面図。
【図13】図12の要部外観斜視図。
【符号の説明】
【0012】
1 1次成形金型
2 固定側型板郡
3 ノズル
4 取付プレート
5 中間プレート
6 スプル孔
7 ランナー溝
8 ランナープレート
9 キャビティーブロック
10 キャビティープレート
11 ボルト
12 キャビティー
13 ゲート孔
14 ランナー溝
15 ランナーロック溝
16 支持ピン
17 可動側型板郡
18 エジェクタプレート
19 エジェクタプレート
20 コアピン
21 コアプレート
22 取付プレート
23 2次成形金型
24 固定側型板郡
25 ノズル
26 取付プレート
27 中間プレート
28 スプル孔
29 ランナー溝
30 ランナープレート
31 キャビティーブロック
32 キャビティープレート
33 ボルト
34 ゲート孔
35 ランナー溝
36 コアピン
37 嵌合孔
38 面取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次成形品の表面に2次成形品を成形する2色成形における金型装置であって、前記2次成形品の外観を形成するキャビティーの内面と、前記1次成形品の外面との間に、2次成形品の内部に空間部を形成する筒状のコアピンを配置すると共に、そのコアピンの頂部近傍の外面に面取り部を施すと共に、その面取り部の近傍に前記キャビティーに樹脂を流し込むゲート部を形成した金型装置。
【請求項2】
前記キャビティーの内面とコアピンの外面とで形成される空間よりも、1次成形品の外面とコアピンの内面とで形成される空間を厚くした請求項1記載の金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−105325(P2010−105325A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281360(P2008−281360)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】