説明

金属で被覆されたポリイミド開口プレートおよびその作製方法

【課題】インクジェット印刷ヘッド用の開口プレートであって、所望の放射率をもたらし、放射電力損失を低減することができる、改善された開口プレートの提供。
【解決手段】第1放射率を有する第1層12と、第2放射率であって、第1放射率が第2放射率よりも高い第2放射率を有し、第1層の上に配置される第2層14と、接触角を制御するコーティング層を含む第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層18とを含む、開口プレート10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開口プレートに関する。詳細には、本開示は、インクジェット印刷ヘッド用の開口プレートであって、第1放射率を有する第1層と、第2放射率であって、第1放射率が第2放射率よりも高い第2放射率を有し、第1層の上に配置される第2層と、任意選択で第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層とを含む、開口プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
液体インクジェットシステムは、典型的には複数のインク噴出口を有する1つ以上の印刷ヘッドを含み、インク噴出口からの液滴が記録媒体に向かって噴出される。印刷ヘッドのインク噴出口は、印刷ヘッド内のインク供給チャンバまたはインク供給マニホールドからのインクを受け、チャンバまたはマニホールドは、溶融インク容器またはインクカートリッジなどの供給源からのインクを順繰りに受ける。各インク噴出口は、インク供給マニホールドとの流体連結を行う、一方の端部を有する流路を含む。インク流路の他方の端部は、インクの液滴を噴出するオリフィスまたはノズルを有する。インク噴出口のノズルは、インク噴出口のノズルに一致する開口部を有する開口プレート内に形成してもよい。動作中に、液滴噴出信号がインク噴出口内のアクチュエータを作動して、インク噴出口ノズルから記録媒体上へ液滴を放出する。記録媒体および/または印刷ヘッドアセンブリがお互い相対的に移動しながら、インク噴出口のアクチュエータを選択的に作動して液滴を噴出することによって、堆積した液滴は正確なパターンに形成され、記録媒体上に特定のテキストおよび図形画像を形成することができる。全幅アレイ印刷ヘッドの一例が、米国特許公開第20090046125号明細書に記載されている。このような印刷ヘッドにおいて吐出することができる紫外線硬化性ゲルインクの一例が、米国特許公開第20070123606号明細書に記載されている。このような印刷ヘッドにおいて吐出することができる固体インクの一例は、Xerox Corporationから入手可能な、Xerox ColorQube(商標)のシアン固体インクである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第20090046125号明細書
【特許文献2】米国特許公開第20070123606号明細書
【特許文献3】米国特許出願第20100040829号明細書
【特許文献4】米国特許出願第20100149262号明細書
【特許文献5】米国特許出願第12/625,442号明細書
【特許文献6】米国特許第5,291,225号明細書
【特許文献7】米国特許第5,218,381号明細書
【特許文献8】米国特許第5,212,496号明細書
【特許文献9】米国特許公開第2005/0285901号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体インクジェットシステムが直面する1つの困難は、印刷ヘッド前面上にインクが濡れる、垂れる、または溢れることである。このような印刷ヘッド前面の汚れは、インク噴出口ノズルおよびチャンネルの目詰まりを引き起こす、または目詰まりの原因となることがあり、これが、単独でまたは濡れた、汚れた前面と相まって、発射していないもしくは不足している液滴、普通よりも小さいもしくは間違った大きさに形成された液滴、衛星状飛沫、もしくは記録媒体上で誤った方向に向けられた液滴などを引き起こす、またはこのような液滴の原因となることがあり、それゆえに印刷品質が低下することになる。現行の印刷ヘッド前面のコーティングは、典型的にはスパッタされたポリテトラフルオロエチレンコーティングである。印刷ヘッドが傾いているとき、約75°C(75°CはUVゲルインクの典型的な吐出温度)の温度のUVゲルインクは、および約115°C(115°Cは固体インクの典型的な吐出温度)の温度の固体インクは、印刷ヘッド前面の表面上を容易には滑り落ちない。むしろこれらのインクは、印刷ヘッド前面を流れてインク膜を残し、これが吐出を妨げることになる。こういう訳で、UVおよび固体インク印刷ヘッドの前面は、UVおよび固体インクによって濡れる傾向にある。
【0005】
米国特許出願第20100040829号明細書は、尿素、イソシアナート、およびメラミンで構成されるグループから選択されたフッ素化化合物ならびに有機化合物を含む組成物でコーティングされた開口プレートを記載している。
【0006】
米国特許出願第20100149262号明細書は、第1モノマーと、第2モノマーと、フルオロシラン、フルオロアルキルアミド、フッ素化エーテルおよび同類のものなどのフッ素化化合物と、第1モノマーと第2モノマーとが異なる場合の光開始剤とを含む組成物でコーティングされた開口プレートを記載している。
【0007】
米国特許出願第12/625,442号明細書は、インクジェット印刷ヘッド前面用のコーティングであって、低接着コーティングを含み、低接着コーティングがインクジェット印刷ヘッド前面の表面上に配置されると、紫外線ゲルインクの吐出液滴または固体インクの吐出液滴は、印刷ヘッド前面の表面に対して、約1°未満から約30°未満までの低い滑り角を示す、コーティングを記載している。実施形態では、低接着コーティングは、紫外線ゲルインクまたは固体インクに対して約35°よりも大きい接触角を示す、撥油コーティングである。
【0008】
インク噴出口の目詰まりを防止したり取り除いたり、印刷ヘッド前面をクリーニングしたりするメンテナンス手順が、インク・ジェット・プリンタ内に実装されてきた。メンテナンス手順の例には、インク噴出口流路およびノズルからインクを吐出する手順または除去する手順、ならびに印刷ヘッド前面を拭き取る手順が含まれる。吐出する手順は、典型的には、噴出口から汚染物質を取り除くために、各インク噴出口から複数の液滴を噴出する手順を含む。除去する手順は、典型的には、インク容器へ空気圧パルスを加えて、すべての噴出口からインクの流れを引き起こすことを含む。吐出されたインクは、スピトーンなどの廃物容器内に収集してもよい。除去されたインクは、廃物トレイなどの廃物容器内に収集してもよい。印刷ヘッド前面が濡れたり汚れたりすると、この前面の上を廃物容器内へ滑り落ちようとするインクの能力が損なわれまたは低減され、それによって除去されたインクの収集は妨げられる。拭き取る手順は、通常はノズルプレートに対して移動する拭き取りブレードによって実行されて、インク残留物、および印刷ヘッド前面上に集まった任意の紙、ほこり、または他の破片を取り除く。吐出する/除去する手順および拭き取る手順は、それぞれ単独でまたは互いに連動して実行することができる。例えば、拭き取る手順は、ノズルプレートから超過したインクを拭き取るために、噴出口を通してインクが除去された後に、実行してもよい。
【0009】
固体インクジェット印刷ヘッドは、化学的にエッチングされるまたは機械的に形成される特徴を有するステンレス鋼プレートで構成されてきた。印刷ヘッドはまた、微小電気機械システム(MEMS)技術を有するシリコン基板を用いて構成されてきた。固体インクジェット印刷ヘッドのコストを低減する努力は、かなりなされてきた。1つの機会は、ステンレス鋼開口プレートをポリイミド開口プレートと置き換えることである。ステンレス鋼開口プレートでは、開口部は典型的には機械的に形成される。ステンレス鋼プレートを、レーザカット可能なポリイミドフィルムと置き換えることによって、ステンレス鋼プレートを機械的に形成することに起因してもたらされる欠陥および制限を含む問題を除去することが可能となる。さらに、ポリイミド開口プレートにおける穴の大きさおよび大きさの分布は、ステンレス鋼と同程度とすることができ、またはポリイミドをレーザカットする能力のゆえに、ステンレス鋼よりも改善することができる。加えて、ポリイミド開口プレートは、機械的に形成されるステンレス鋼プレートと比較して、製造コストを著しく低減することができる。
【0010】
ポリイミドは、高い強度、熱抵抗、剛性、および寸法安定性などの多くの利点のために、多くのエレクトロニクス用途で用いられる。上述したように、インクジェット印刷ヘッドでは、ポリイミドは、インクノズル用の開口プレートとして利用することができる。しかしながら、ポリイミドは、ステンレス鋼よりも高い放射率を有し、例えば、ポリイミドの約0.95に対してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティングステンレス鋼は約0.4であり、その結果、ポリイミドの放射熱損失は、PTFEコーティングステンレス鋼よりも約55%高い。
【0011】
ポリイミドなどのポリマー部材は、エキシマレーザなどのレーザによるレーザ切除を用いて、開口プレートへ形成することができる。レーザ切除方法は、結果として、優れた液滴噴出性能を提供する開口プレートをもたらす。しかしながら、このようなレーザ切除可能ポリマー部材は、典型的には疎水性でない。したがって、開口プレートの表面上に疎水性コーティングを設け、前面を疎水性にして、インクジェットの正確さおよび全性能を改善することが必要となる。しかしながら、ポリイミドは、一般にコーティングされない。ポリイミドは化学的に熱的に安定しており、多くのコーティング部材は、ポリイミド表面上に薄いかつ一様なコーティングを容易に形成することができない。しかしながら、金属被覆コーティングは、PTFEなどのコーティングの使用を可能にする。
【0012】
現在、入手可能な開口プレートおよび開口プレートを作製する方法は、所期の目的に適している。しかしながら、開口プレートを作製するのに適している、改善された開口プレートおよび方法が、依然として必要とされている。所望の放射率をもたらし、放射電力損失を低減することができる、改善された開口プレートおよびこの開口プレートを作製する方法も、依然として必要とされている。さらに、エネルギースターおよびTEC(標準消費電力)の要件を満たすことができる、改善された開口プレートおよびこの開口プレートを作製する方法が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1放射率を有する第1層と、第2放射率であって、第1放射率が該第2放射率よりも高い第2放射率を有し、第1層の上に配置される第2層と、任意選択で第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層とを含む、開口プレートが説明される。
【0014】
さらに、開口プレートを作製する方法であって、第1放射率を有する第1層を設けるステップと、第2放射率であって、第1放射率が該第2放射率よりも高い第2放射率を有する第2層を、第1層の上に配置するステップと、任意選択で少なくとも1つの追加層を、第2層の上に配置するステップと、少なくとも1つの開口部を形成するステップであって、第2層を第1層の上に配置するステップの前または後とすることができる、形成するステップとを含む、方法が説明される。
【0015】
開口プレートを有するインクジェット印刷ヘッドであって、第1放射率を有する第1層と、第2放射率であって、第1放射率が該第2放射率よりも高い第2放射率を有し、第1層の上に配置される第2層と、任意選択で第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層とを含み、任意選択で第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層のうちの1つは、表面張力を制御するコーティング層を含む、インクジェット印刷ヘッドも説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示に従う開口プレートの図である。
【図2】本開示に従う開口プレート内に形成された開口部の代表例の図である。
【図3】本開示に従う開口プレート内の開口部の大きさ分布を示すヒストグラムである。
【図4】本開示に従う開口プレートを有するインク噴出口スタックから噴出するインク液滴について、インク噴出口スタック前面の下方に向けられた、ストロボ付きのカメラ写真の図である。
【図5】本開示に従う開口プレート、PTFEコーティングされたステンレス鋼で構成される公称の開口プレート、およびポリイミド開口プレートに対して、消費電力(ワット、y軸)対開口プレートタイプ(x軸)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1放射率を有する第1層と、第2放射率であって、第1放射率が第2放射率よりも高い第2放射率を有し、第1層の上に配置される第2層と、任意選択で第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層とを含む開口プレートが、提供される。
【0018】
図1を参照すると、開口プレート10が、本開示の一実施形態に従って図示される。開口プレート10は、第1放射率を有する第1層または基板12と、第1放射率とは異なる第2放射率であって、第1放射率が第2放射率よりも高い第2放射率を有し、基板12上に配置される第2層14とを含む。層14は、コーティング層18が赤外波長に対して実質的に光学的透明である限り、任意選択の1つ以上の追加のコーティング層18を層14上に配置することができる。実施形態では、層14は、任意選択のコーティング層18を層14上に配置することができ、任意選択のコーティング層18は、表面張力の接触角を制御するコーティング層を含むことができる。
【0019】
開口プレート10は、任意の適切な部材で作ることができ、デバイスに適切な任意の構成を成すことができる。四角形または長方形の形状の開口プレートが、典型的には、製造の容易さのゆえに選択される。第1層または基板12は第2層14の放射率よりも高い放射率を有するという条件で、任意の適切なまたは所望の部材で構成することができる。例えば実施形態では、第1層は、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、液晶ポリマー、ステンレス鋼、鋼、シリコン、またはこれらの組み合わせを含む。実施形態では、第1層12は、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ステンレス鋼、鋼、シリコン、またはこれらの組み合わせを含む。第1層12は、金などのろう付け部材で選択的にめっきされたステンレス鋼で作ることもできる。特定の実施形態では、第1層12はポリイミド層である。
【0020】
第1層12は、任意の適切な厚さとすることができる。実施形態では、第1層12は、約8から約75マイクロメートルまでの厚さ、もしくは約13から約50マイクロメートルまでの厚さ、または約25から約38マイクロメートルまでの厚さである。特定の実施形態では、第1層12は、約25マイクロメートルの厚さである。
【0021】
第2層14は、第1層12の放射率よりも低い放射率を有するという条件で、任意の適切なまたは所望の部材で構成することができる。実施形態では、第2層14は、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、クロム、チタン、タングステン、亜鉛、もしくはこれらの組み合わせなどの金属または金属合金を含む。特定の実施形態では、第2層14はアルミニウムを含む。
【0022】
実施形態では、第1層は、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、液晶ポリマー、ステンレス鋼、鋼、シリコン、またはこれらの組み合わせを含み、第2層は、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、クロム、チタン、またはこれらの組み合わせを含む。
【0023】
特定の一実施形態では、第1層12はポリイミド含み、第2層14はアルミニウムを含む。
【0024】
第2層14は、任意の適切な厚さとすることができる。実施形態では、第2層14は、約0.1から約50マイクロメートルまでの厚さ、もしくは約0.1から約0.3マイクロメートルまでの厚さ、または約900から約1,100オングストロームまでの厚さである。実施形態では、第2層は、サブミクロン厚のアルミニウム層とすることができる。
【0025】
放射率は、放射によってエネルギーを放出する、部材の表面の相対的な能力である。部材が反射すればするほど、この部材の放射率は低くなる。低放射率の部材は、低レベルの発光体エネルギーを放射するまたは放出する。完全な反射体、すなわち非放出部材は、理論的には放射率0を有することになる。完全な吸収体、すなわち黒色体は、放射率1を有することになる。第1放射率を有する第1層と、第2放射率であって、第1放射率が第2放射率よりも高い第2放射率を有し、第1層の上に配置される第2層とを含む開口プレートが、本明細書において提供される。第1層および第2層の放射率は、所期のデバイスに適している任意の放射率とすることができる。
【0026】
実施形態では、第1層が、約0.4から約0.95まで、もしくは約0.7から約0.95まで、または約0.85から約0.95までの放射率を有する高放射率層であり、第2層が、約0.02から約0.3まで、もしくは約0.02から約0.2まで、または約0.02から約0.1までの放射率を有する低放射率層である、開口プレートが提供される。
【0027】
実施形態では、第1層は、約0.4から約0.95までの放射率を有し、第2層は、約0.02から約0.3までの放射率を有する。さらなる実施形態では、第1層は、約0.7から約0.95までの放射率を有し、第2層は、約0.02から約0.2までの放射率を有する。特定の実施形態では、第1基板層は約0.95の放射率を有し、第2低放射率層は約0.04の放射率を有する。
【0028】
実施形態では、低放射率層(例えば、金属被覆層)は、改善された放射率を有する表面を、従来の開口プレートの上に設け、それによって放射電力損失を低下させる。実施形態では、低放射率層は、放射率が約0.1未満のアルミニウム層であり、放射電力損失を標準ステンレス鋼よりも約75%だけおよび未加工のポリイミドよりも約90%だけ低減する。実施形態では、アルミニウム厚さが約1マイクロメートル未満のまたは約1マイクロメートルに等しいアルミニウム金属でポリイミドを被覆すると、金属をきれいに取り除いて高品質の開口部を作り出すことができるレーザ穴開け工程が可能となり、それによって優れた指向性および堅牢な吐出性能が可能となる。
【0029】
開口プレートは、第2層14の上に配置される、少なくとも1つの追加層18を有することができる。実施形態では、開口プレートは、第2層14の上に配置される、少なくとも1つの追加層18であって、接触角を制御するコーティング層を含む追加層18を有することができる。実施形態では、開口プレートは、第2層14の上に配置される、少なくとも1つの追加層18であって、追加層18が接触角を制御するコーティング層を含み、接触角が約35°から約120°までの追加層18を有することができる。
【0030】
第2層の上に配置される、少なくとも1つの追加層18は、任意の適切なまたは所望の部材を含むことができる。実施形態では、少なくとも1つの追加層18は、フルオロポリマー(フッ素重合体)またはシロキサンポリマーを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの追加層18は、ポリテトラフルオロエチレンを含む。
【0031】
任意選択の追加層18は、任意の適切な厚さとすることができる。実施形態では、層18は、約400から約2,000オングストロームまでの厚さ、もしくは約650から約1,350オングストロームまでの厚さ、または約900から約1,150オングストロームまでの厚さである。
【0032】
実施形態では、例えば3マイクロリットルのUVゲルインク液滴および1マイクロリットルの固体インク液滴などの、開口プレート上に落ちるUVゲルインクおよび固体インクの衛星状飛沫が、約35°から約120°までの接触角、特定の実施形態では、約35°よりも大きい接触角または追加層18を用いて約55°よりも大きい接触角を示すような接触角特性を、追加層18はもたらす。
【0033】
開口プレートは、本明細書では任意の適切なまたは所望の方法によって作製することができる。本明細書の実施形態では、開口プレートを作製する方法は、第1放射率を有する第1層を設けるステップと、第2放射率であって、第1放射率が第2放射率よりも高い第2放射率を有する第2層を、第1層の上に配置するステップと、任意選択で少なくとも1つの追加層を、第2層の上に配置するステップと、少なくとも1つの開口部を形成するステップであって、第2層を、第1層の上に配置するステップの前または後とすることができる、形成するステップとを含む。
【0034】
種々の層は、任意の適切な工程を用いて配置することができる。開口プレートの層は、物理気相成長、化学気相成長、ラミネート加工、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スタンプ印刷、およびブレードコーティング技術などの、任意の適切な方法によって形成することができる。
【0035】
実施形態では、1つ以上の層を配置するステップは、物理気相成長、化学気相成長、ラミネート加工、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スタンプ印刷、スロットコーティング、およびブレードコーティング、またはこれらの組み合わせによって配置するステップを含む。特定の実施形態では、物理気相成長は、1つ以上の層を付着するのに用いられる。別の特定の実施形態では、物理気相成長は、第2低放射率層を第1高放射率基板層へ付着するのに用いられる。別の特定の実施形態では、物理気相成長は、第2低放射率層に対する接触角を制御する、任意選択の追加のコーティング層を付着するのに用いられる。さらに別の特定の実施形態では、物理気相成長は、第2低放射率層を、実施形態では金属層を、さらなる実施形態ではアルミニウムを、第1高放射率層へ、実施形態ではポリイミドへ付着するのに用いられる。さらに別の特定の実施形態では、物理気相成長は、任意選択の追加のコーティング層を、実施形態ではポリテトラフルオロエチレンを、第2低放射率層へ、実施形態ではアルミニウムへ付着するのに用いられる。
【0036】
開口プレートは、1つ以上の穴またはインク・ジェット・オリフィスを含むことができる。穴またはオリフィスは、任意の適切な方法によって形成することができる。例えば、オリフィスは、任意の適切な技術を用いて、カットし、エッチングし、機械的に形成し、またはレーザを用いて作り出すことができる。特定の実施形態では、少なくとも1つの開口部を形成するステップは、レーザを用いて1つ以上の開口部を形成するステップを含む.エキシマレーザなどの任意の適切なレーザを、用いることができる。
【0037】
開口部は、開口プレートを組み立てる前または後に形成することができる。実施形態では、開口部は、第2層を第1層の上に配置する前または後に形成することができる。
【0038】
開口プレートを有するインクジェット印刷ヘッドであって、第1放射率を有する第1層と、第2放射率であって、第1放射率が第2放射率よりも高い第2放射率を有し、第1層の上に配置される第2層と、任意選択で第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層とを含み、任意選択で第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層のうちの1つは、接触角を制御するコーティング層を含む、インクジェット印刷ヘッドがさらに説明される。
【0039】
開口プレートは、制限なしに任意の適切な構成を有する、任意のタイプの印刷ヘッドに用いることができる。一般に、インクジェット印刷ヘッドは複数の流路を含み、これらの流路はインク供給源からインクを充填することができ、これらの流路は、印刷ヘッドの一表面であって、本明細書で説明された開口プレートを構成する表面上のノズルで終端する。適切なインクジェット印刷ヘッドの設計が、米国特許第5,291,225号明細書、米国特許第5,218,381号明細書、および米国特許第5,212,496号明細書に記載されている。別の適切なインクジェット印刷ヘッドの設計が、米国特許公開第2005/0285901号明細書に記載されている。
【0040】
本明細書の開口プレートは、任意の適切なインクに対して用いることができる。実施形態では、本明細書の開口プレートは、染料ベースのインク、顔料インク、相転移インク、紫外線硬化性インクなどの硬化性インク、およびゲル化剤インクを含む、インク・ジェット・インクに対して用いることができる。
(実施例)
比較の例1
【0041】
比較する開口プレートは、アルミニウムで被覆されていないフィルムであって、開口部をレーザ切除によって形成したポリイミドフィルムで構成されるように作製された。
実施例2
【0042】
開口プレートが、次の方法によって作製された。0.1マイクロメートル層のアルミニウムが、物理気相成長によってポリイミドフィルム(25マイクロメートル厚)上に堆積した。アルミニウムで被覆されたポリイミドは、商業的にはシェルダール社(Sheldahl)から得ることができる。ポリテトラフルオロエチレン層(0.1マイクロメートルの厚さ)が、物理気相成長によってアルミニウムで被覆されたポリイミドフィルムの上に堆積した。開口部は、248nmのエキシマレーザによる切除によって作り出された。
【0043】
図2は、例2の開口プレート内に形成された開口部を示す顕微鏡写真であり、良好な円形であることおよび金属の残りが何も無いことを図示している。
【0044】
品質の重要な尺度は、開口部の大きさの測定分布から判断することができる。例2のように作製された、880個の開口部をそれぞれ有する3つの開口プレートが、座標測定顕微鏡上で測定された。図3は、例2に従って作製された、アルミニウムで被覆されたポリイミド開口プレートの開口部の大きさ分布を示すヒストグラムである。平均の直径は39.3マイクロメートルであり、1σの範囲は±0.2マイクロメートルである。この開口部の大きさ分布は、コーティングされていないポリイミドで得られた分布と同様であり、通常の印刷ヘッドに用いるための要件に適している。
【0045】
図3は、例2に従う開口プレートを有する、圧電式インク・ジェット・プリンタのインク噴出口スタックから噴出される固体インク液滴について、インク噴出口スタック前面の下方に向けられた、ストロボ付きのカメラ写真の図である。固体インクジェットの飛沫が適切な大きさおよび品質であったこと、ならびにアルミニウムで被覆されたコーティングが吐出に悪影響を及ぼさなかったことを理解することができる。
【0046】
図5は、例1に従うアルミニウムで被覆されたポリイミド開口プレート、PTFEコーティングされたステンレス鋼を含む公称の開口プレート、および比較の例1における比較のポリイミド開口プレートに対して、消費電力(ワット、y軸)対開口プレートタイプ(x軸)を示すグラフである。本明細書の実施形態では、本アルミニウム被覆開口プレートは、あらかじめ入手可能な開口プレートを超える電力利用の利益をもたらす。
【0047】
インクジェット印刷ヘッド用に、実施形態では圧電式インクジェット印刷ヘッド用に改善された開口プレートが提供される。実施形態では、本開口プレートは、従来の開口プレートを超えて改善された付着力および放射率特性を提供する。本方法は付着力の改善を可能にし、その結果、標準ポリテトラフルオロエチレン工程は、ポリイミド基板開口プレートに対して用いることができる。実施形態では、本開口プレートは、抗湿潤コーティングに対して用いることができ、抗湿潤コーティングに対する付着力を改善することができる。特定の実施形態では、開口プレートは、ポリイミド層または他の適切な基板層、サブミクロン厚のアルミニウム層またはポリイミド層上に配置される他の適切な低放射率層、およびポリテトラフルオロエチレンまたはアルミニウム層上に配置される他の適切な層を含む。アルミニウムコーティングされたポリイミドは、裸のポリイミドと比較して容易にかつ良好な付着力で、ポリイミド層を開口プレート上にコーティングすることを可能にする。さらに、ポリテトラフルオロエチレンコーティングは、現行の印刷ヘッド上のコーティングよりも機械的に強く、それによって顔料インクおよび紫外線インクなどのインクに対して経験することがある、垂れるという問題が、低減されまたは除去される。実施形態では、アルミニウムで被覆されたポリイミド開口プレートは、消費電力を低減するための低放射率をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1放射率を有する第1層と、
第2放射率であって、前記第1放射率が該第2放射率よりも高い第2放射率を有し、前記第1層の上に配置される第2層と、
任意選択で前記第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層とを含む、開口プレート。
【請求項2】
前記第1層は、約0.4から約0.95までの放射率を有し、
前記第2層は、約0.02から約0.3までの放射率を有する、請求項1に記載の開口プレート。
【請求項3】
前記第1層は、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、液晶ポリマー、ステンレス鋼、鋼、シリコン、またはこれらの組み合わせを含み、前記第2層は、金属または金属合金を含む、請求項1に記載の開口プレート。
【請求項4】
前記第2層は、アルミニウム、ニッケル、金、銀、銅、クロム、チタン、タングステン、亜鉛、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の開口プレート。
【請求項5】
前記第2層の上に配置される、前記少なくとも1つの追加層は、接触角を制御するコーティング層を含む、請求項1に記載の開口プレート。
【請求項6】
前記第2層の上に配置される、前記少なくとも1つの追加層は、接触角を制御するコーティング層を含み、前記接触角は、約35°から約120°までである、請求項1に記載の開口プレート。
【請求項7】
前記第2層の上に配置される、前記少なくとも1つの追加層は、フルオロポリマーまたはシロキサンポリマーを含む、請求項1に記載の開口プレート。
【請求項8】
開口プレートを作製する方法であって、
第1放射率を有する第1層を設けるステップと、
第2放射率であって、前記第1放射率が該第2放射率よりも高い第2放射率を有する第2層を、前記第1層の上に配置するステップと、
任意選択で少なくとも1つの追加層を、前記第2層の上に配置するステップと、
少なくとも1つの開口部を形成するステップであって、前記第2層を前記第1層の上に配置するステップの前または後とすることができる、形成するステップとを含む、方法。
【請求項9】
前記第1層は、約0.4から約0.95までの放射率を有し、
前記第2層は、約0.02から約0.3までの放射率を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの開口部を形成するステップは、レーザを用いて1つ以上の開口部を形成するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項11】
開口プレートを有するインクジェット印刷ヘッドであって、
第1放射率を有する第1層と、
第2放射率であって、前記第1放射率が該第2放射率よりも高い第2放射率を有し、前記第1層の上に配置される第2層と、
任意選択で前記第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層とを含み、
前記任意選択で前記第2層の上に配置される少なくとも1つの追加層のうちの1つは、接触角を制御するコーティング層を含み、
前記第1層は、約0.4から約0.95までの放射率を有し、
前記第2層は、約0.02から約0.3までの放射率を有する、インクジェット印刷ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−86561(P2012−86561A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218380(P2011−218380)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】