説明

金属カルボニルを除去する触媒、水素を含む混合改質ガスを製造する方法、金属カルボニルを除去する方法、燃料電池システム

【課題】 “その場”で金属カルボニルを生成抑制あるいは吸着/分解除去する技術は、今後燃料電池システムを始め多くのニーズが発生する可能性が高いが、“その場”での金属カルボニル生成抑制あるいは吸着/分解除去が行える要素技術が確立されていない。
【解決手段】 ニッケルを含む触媒体に対して、触媒体中のニッケルに対する金属換算の重量対比で0.001〜250%の銅を存在させ、必要により、酸化亜鉛や、粘土鉱物又は、平均粒径が50nm以下のルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、金、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、銅、鉄、亜鉛、バナジウム、マンガンから選ばれた一種又は二種以上の元素を担持させた粘土鉱物が存在する金属カルボニルを除去する触媒であって、該触媒を用いて、炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造し、改質の反応場で金属カルボニルを除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質反応を妨げることなく金属カルボニルを安全且つ効率良く除去する触媒並びに該触媒を用いた改質及び“その場”除去方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ニッケルを含んだ触媒を使用する場合に、一酸化炭素がある一定量以上存在すると150℃以下においてニッケルカルボニルが生成することが一般に知られている。生成量はガス中の一酸化炭素濃度と温度によってほぼ支配されている。例えば、100℃付近での化学平衡から求められるニッケルカルボニルの生成量は、ガス中に含まれる一酸化炭素濃度が1%の場合にはニッケルカルボニルはおよそ3×10−3ppmであり、炭化水素を600〜700℃で水蒸気改質反応した混合ガスに含まれる一酸化炭素量に近い10%下では30ppmとなる。
【0003】
金属カルボニルとしては、ニッケルカルボニル、鉄カルボニルの他に、コバルトカルボニル、タングステンカルボニル、バナジウムカルボニル、モリブデンカルボニル、クロムカルボニルなどがあり、これらは有毒ガス扱いとなっている。例えば、ニッケルカルボニルでは、作業環境許容最大濃度(8時間)は0.001ppm、致死濃度(30分)は30ppmという数字が挙げられている。
【0004】
従来から、金属カルボニルを除去する方法として、(A)一酸化炭素ガスを極限まで低減する方法、(B)一酸化炭素及び金属カルボニルを同時に除去する方法、及び(C)金属カルボニルだけを極限まで低減する方法が検討されてきている(特許文献1〜5)。
【0005】
上記(A)一酸化炭素を極限まで低減する方法としては、活性炭や無機多孔質吸着材を使用する方法や、白金、パラジウム、マンガン、セリウムなどをアルミナ担体に担持させた触媒を利用した一酸化炭素の分解除去法、フォージャサイト型ゼオライト及び/又は二酸化マンガン−酸化第二銅系化合物を用いた一酸化炭素吸着/分解除去法がある。金属カルボニル生成の原料となる一酸化炭素を除去することで金属カルボニルの生成を抑制する手法である。
【0006】
一方、上記(B)一酸化炭素及び金属カルボニルを同時に除去する方法としては、パラジウム担持した二酸化マンガン−酸化第二銅による分解除去方法がある。
【0007】
上記(C)金属カルボニルだけを極限まで低減する方法としては、Y型ゼオライトを利用した吸着除去方法がある。Si/Al比と細孔径の最適なY型ゼオライトを選択することで金属カルボニルだけを吸着除去する手法である。
【0008】
また、生成した金属カルボニル量を分析評価する手法としては、以前は原子吸光分光光度計による解析が行われていたが、より低濃度域での分析精度が求められ最近ではフーリエ変換赤外分光光度計による方法が一般化してきている(特開2003−26415号公報、特開2003−66019号公報、特開2005−265116号公報)。
【0009】
これまでは、一酸化炭素及び/又は金属カルボニルが生成した“その場”での吸着/分解処理することは行われず、反応場から別の箇所に被処理物を移動させてから吸着/分解処理を行ったり、専用の吸着/分解処理箇所を反応場に設置しそこに被処理物を循環させ吸着/分解処理を行ったりしていた。これらの方法によって、より確実に一酸化炭素及び/又は金属カルボニルを除去していた。
【0010】
ところが、どうしても“その場”で一酸化炭素及び/又は金属カルボニルを除去する必要性が出る場合がある。例えば、吸着/分解処理設備の設置場所がない場合や、コスト面で不利な点が挙げられる。
【0011】
吸着/分解処理の設備を設置する場所がない例としては、近年であれば、小型化された家庭用燃料電池システムがある。
【0012】
このシステムは一戸建てやマンションなどへの設置を考慮した非常にコンパクトなサイズに仕上げることが一つの大きなコンセプトとなっている。また、システムのトータルコストダウンのためには設備の補器や機器の点数を減らす必要がある。このため、上記のような吸着/分解処理設備の設置は不可能である。
【0013】
このシステムの炭化水素を改質するための改質触媒としては、性能面より貴金属であるルテニウム触媒が現在は主に用いられているが、貴金属であるが故コストがかかるため、今後ニッケル触媒への変更の試みがなされている。
【0014】
燃料電池システムでは、改質反応によって水素と一酸化炭素、二酸化炭素が生成する。ニッケル改質触媒を用いた場合には、この改質ガス組成において温度条件さえ合致すればニッケルカルボニルが生成することになる。しかし、現在のところ家庭用燃料電池システムでのニッケルカルボニル生成に対してほとんど生成抑制のための対策がとられていない。
【0015】
【特許文献1】特開昭62−14944号公報
【特許文献2】特開昭62−136239号公報
【特許文献3】特開平8−281063号公報
【特許文献4】特開2004−82034号公報
【特許文献5】特表2002−520423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献1乃至5記載の技術では、“その場”での金属カルボニル生成抑制あるいは吸着/分解除去が行えない。
【0017】
“その場”で金属カルボニルを生成抑制あるいは吸着/分解除去する技術は、今後燃料電池システムを始め多くのニーズが発生する可能性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0019】
即ち、本発明は、ニッケルを含む触媒体に対して、触媒体中のニッケルに対する金属換算の重量対比で0.001〜250%の銅を存在させることを特徴とする金属カルボニルを除去する触媒である(本発明1)。
【0020】
また、本発明は、本発明1の触媒が酸化亜鉛を含んでいることを特徴とする金属カルボニルを除去する触媒である(本発明2)。
【0021】
また、本発明は、本発明1又は2の触媒に対して、重量対比で1〜50%の粘土鉱物を存在させることを特徴とする金属カルボニルを除去する触媒である(本発明3)。
【0022】
また、本発明は、本発明3の粘土鉱物に、平均粒径が50nm以下のルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、金、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、銅、鉄、亜鉛、バナジウム、マンガンから選ばれた一種又は二種以上の元素を担持させたことを特徴とする金属カルボニルを除去する触媒である(本発明4)。
【0023】
また、本発明は、本発明1〜4のいずれかに記載の触媒を用いて、炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造する方法である(本発明5)。
【0024】
また、本発明は、本発明1〜4のいずれかに記載の触媒を用いて、改質の反応場で金属カルボニルを除去する方法である(本発明6)。
【0025】
また、本発明は、本発明1〜4のいずれかに記載の触媒を用いることを特徴とする燃料電池システムである(本発明7)。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る改質反応を妨げることなく金属カルボニルを“その場”除去する改質触媒は、金属カルボニルを安全且つ効率良く除去する触媒である。また該触媒を用いた炭化水素の改質及び金属カルボニルの“その場”除去方法、燃料電池システムでの使用方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
先ず、本発明に係る改質反応を妨げることなく金属カルボニルを“その場”除去する触媒について述べる。
【0028】
本発明におけるニッケルを含む触媒体は、ニッケルを含有し、水蒸気存在下で炭化水素の改質反応を行えるものであれば、特に限定されない。例えば、アルミナにニッケルを担持した触媒、マグネシウムとシリカとアルミナから成る担体にニッケルを担持した触媒、ニッケルをマグネシウムのペリクラーゼ結晶構造化合物として固溶させ、熱処理によってニッケル金属をマグネシウム担体に析出させた触媒、ニッケルと担体を構成する元素とを共沈反応させた後、熱処理して得られる触媒などである。改質反応とは、水蒸気改質反応、オートサーマル改質反応、部分酸化反応を指す。
【0029】
本発明におけるニッケルを含む触媒体は、ニッケルの含有量が0.5〜50wt%であることが好ましい。0.5wt%以下の触媒体では、改質触媒としての特性が悪くなる。50wt%を超えると改質触媒としての特性が悪くなり、特にコーキングしやすくなる。好ましくは1〜45wt%、より好ましくは2.5〜40wt%である。
【0030】
ニッケルを含む触媒体は、成形体であることが好ましく、形状、サイズは特に限定されない。成形体としては、一般的な球状、円柱状などのビーズ形状や、メタルやセラミックスハニカムへの担持の形状も含む。
【0031】
本発明に係る触媒は、ニッケルを含む触媒体に対して、触媒体中のニッケルに対する金属換算の重量対比で0.001〜250%の銅が存在している。銅が金属換算で0.001%よりも少ないと金属カルボニル除去能力が十分に発揮できない。250%以上では、改質反応の触媒活性が低下する。好ましくは0.001〜200%、より好ましくは0.01〜150%である。
なお、銅は金属状態、酸化物状態のいずれであっても良い。
【0032】
銅は、ニッケルを含む触媒体に包含されても、別々の触媒若しくは触媒成形体として触媒層に混在されても、触媒成形体として別々の触媒層に分割して設置してもよい。
【0033】
また、ニッケルを含む触媒体とは別に、銅を含む成形体とする場合、成形体の形状やサイズは特に限定されないが、例えば、円柱状、球状、円筒状などの形状で1〜50mm程度のサイズでよい。
【0034】
別にハニカム状とする場合には、銅を、ニッケルを含む触媒体と混在させてハニカム化あるいはハニカム担体に担持したり、ハニカムの特定箇所のみへ塗布したり、ニッケルを含む触媒体の層の上層部や下層部に塗布したりしてもよく、必要に応じて自由に手法を選択すればよい。
【0035】
本発明に係る触媒には酸化亜鉛が含まれていてもよい(本発明2)。酸化亜鉛の量は特に限定されないが、例えば、触媒に含まれる銅に対する金属換算の重量対比で0.2〜1.8が好ましい。酸化亜鉛は銅と多く接触していることが好ましい。
【0036】
本発明に係る触媒に対して、重量対比で1〜50%の粘土鉱物を存在させてもよく(本発明3)、粘土鉱物を存在させることでより一層の金属カルボニルの“その場”除去ができる。粘土鉱物の存在量が1%未満では、添加する効果が薄い。50%以上の粘土鉱物を存在させると、有効体積中の改質触媒量が減るため、触媒活性を保つためにガス流量を減らす必要があり、結果、触媒層をより大きな容積にする必要が発生する。好ましくは2.5〜45%、より好ましくは5〜40%である。
【0037】
含まれる粘土鉱物としては、ゼオライト、セピオライト、モンモリロナイトなどが挙げられる。ゼオライトの構造は特に限定しないが、フォージャサイトが好ましく、フォージャサイト系のうちY型ゼオライトがより好ましい。
【0038】
粘土鉱物は、触媒に包含されても、別々の触媒若しくは触媒成形体として触媒層に混在されても、別々の触媒成形体として触媒層に分割して置いてもよい。
【0039】
粘土鉱物の形状やサイズは特に限定されないが、例えば、円柱状、球状、円筒状などの形状で1〜5mm程度のサイズでよい。
【0040】
別にハニカム状とする場合には、必要に応じて自由に手法を選択すればよい。
【0041】
本発明3に係る触媒の粘土鉱物に、平均粒径が50nm以下のルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、金、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、銅、鉄、亜鉛、バナジウム、マンガンから選ばれた一種又は二種以上の活性金属種を担持させてもよく(本発明4)、活性金属種を担持させることで、さらにより一層の金属カルボニルの“その場”除去の効果が得られる。
【0042】
ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、金、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、銅、鉄、亜鉛、バナジウム、マンガンなどの活性金属種の平均粒径が50nmを超えると粘土鉱物に担持する効果が得られにくくなる。好ましくは35nm、より好ましくは20nmである。
【0043】
粘土鉱物に担持された活性金属種の状態は、金属、酸化物いずれでもよい。
【0044】
粘土鉱物に担持される活性金属種の量は、担持する活性金属種の種類や担持する粘土鉱物の種類によって異なるので、特に限定されないが、例えば、粘土鉱物に対して重量対比で0.01〜30wt%でよい。
【0045】
次に、本発明に係る炭化水素から水素を含む混合ガスを製造する方法について述べる。
【0046】
本発明1〜4のいずれかからなる触媒は、炭化水素と接触させることで水素を含んだ混合改質ガスを得ることができる。
【0047】
炭化水素の原料としては、実用上例えば、純メタンガス、都市ガス、液体プロパンガス、灯油、ナフサ、石油などが挙げられる。
【0048】
上記改質触媒を用いて、水素を含んだ混合改質ガスを得る改質方法としては、部分酸化改質法、オートサーマル水蒸気改質法、水蒸気改質法を用いてよい。条件はシステムに合わせて選択することができる。例えば、部分酸化改質ではO/C=0.1〜0.8、オートサーマル水蒸気改質ではO/C=0.1〜0.8、S/C=1.0〜4.5、水蒸気改質ではS/C=1.0〜4.5でよく、反応場温度は200〜900℃でよい。
【0049】
本発明に係る触媒を、一酸化炭素を含むガス中でニッケルカルボニルが生成すると一般に言われる150℃以下の状態に置くことで、金属カルボニルを“その場”で除去できる。温度が150℃を超えると一般に一酸化炭素が安定性を増してニッケルカルボニルなどの金属カルボニルガスの生成がない。一酸化炭素の濃度は特に限定されないが、例えば30vol%以下でよい。一酸化炭素の濃度が高く、金属カルボニルの生成をより強く抑制したいときには、銅や粘土鉱物若しくは活性金属を担持した粘土鉱物の相対量を増やせばよい。
【0050】
本発明1〜4のいずれかからなる触媒は、燃料電池システムで使用することができる。燃料電池システムの改質反応部やプレ改質反応部及び/又は改質反応部の前後の工程、付属する工程、改質部外に本発明に係る触媒を設置すればよい。好ましくは改質反応部やプレ改質反応部及び/又は改質反応部の前後の工程への設置である。
【0051】
<作用>
本発明に係る銅や粘土鉱物若しくは活性金属を担持した粘土鉱物を存在させた改質触媒を用いることで金属カルボニルを“その場”で除去する効果が優れる理由は未だ明らかではないが、本発明者は次のように推定している。
【0052】
即ち、発生した金属カルボニルを、銅は表面への吸着作用があるとともに、酸化分解するものと本発明者は推定している。
【0053】
また、触媒に酸化亜鉛を共存させることによって、金属カルボニルを酸化亜鉛で吸着させながら近傍に存在する銅がそれを分解し、金属カルボニル除去効果が促進されると本発明者は推定している。
【0054】
さらに、粘土鉱物を混在させた場合には、発生した金属カルボニルに対して、粘土鉱物では吸着作用、活性金属を担持した粘土鉱物では吸着作用と酸化分解の作用とがあるものと本発明者は推定している。
【0055】
従って、本発明に係る触媒を用いれば、水素を含む混合改質ガスを得る改質反応を劣化させることなく、金属カルボニルが大量に発生する条件であっても、その反応場で、十分な金属カルボニル抑制効果を得ることができる。
【実施例】
【0056】
本発明の代表的な実施の形態は次の通りである。
【0057】
担持された活性種金属のサイズは透過型電子顕微鏡(日本電子(株)、JEM−1200EXII)を用いて測定した。
【0058】
Mg及び活性種金属の含有量は、試料を酸で溶解し、プラズマ発光分光分析装置(セイコー電子工業(株)、SPS4000)を用い分析して求めた。
【0059】
得られた触媒の活性評価はラボレベルの単管固定床流通式を用いた(反応管容積100cc)。一般に市販されているものでもよいが、自作した装置にて本発明の検討を実施した。改質反応後の成分分析はガスクロマトグラフを用いた。
【0060】
得られた触媒の金属カルボニル生成量の分析は特開2003−66019を参照した。具体的には、対象ガスを−150〜−190℃に冷却した捕集管に流通させて金属カルボニルを捕集した後、20〜30℃に昇温して金属カルボニルを捕集管から真空吸引して赤外吸光分析器に導入し分析する手法を用いた。求められた金属カルボニル毎に特定の波長ピーク強度より検量線法による金属カルボニルの定量分析を行った。例えば、ニッケルカルボニルの場合には、2057cm−1のピーク強度を用いて定量分析を行った。特定ピークは、他のガス成分ピークとの重なりやノイズに注意して選択する。検出下限値は、本検討では70ppbとした。
【0061】
実施例1 <触媒の調製>
Mg(NO・6HO 75.3gとAl(NO・9HO 28.3g、Ni(NO・6HO 9.0gを溶解させた金属溶解溶液600mlと、NaOH 58ml(14mol/L濃度)とNaCO 9.6gを溶解させた400mlのアルカリ混合溶液を用意した。このアルカリ混合溶液に前記マグネシウム塩、アルミニウム塩、ニッケル塩との混合溶液を加え、90℃で5.5時間熟成を行って含水複水酸化物を得た。これを濾別分離し、乾燥して、粉末を得た。3mmΦに成形後、さらに熱処理した後、還元処理を行ってニッケル触媒(ビーズ状)を得た。
別に、3mmΦのアルミナビーズに硝酸銅を用いて、銅を金属換算で10.6wt%スプレー担持させ、400℃にて1h熱処理した。
この銅を担持したアルミナビーズを上記ニッケル触媒に対して20wt%混合した触媒を用意した。このとき、ニッケル触媒ビーズに対して、銅を担持したアルミナビーズがなるべく均一に散在するようよく混ぜ合わせた。このとき、触媒中の銅はニッケルに対して重量比で金属換算にて20.4%であった。
【0062】
<触媒活性評価>
上記混合後の触媒を用いて、水蒸気改質反応での触媒活性評価を行った。触媒ビーズを10cc用いて流通反応装置において、純メタンガスをGHSV=3,000h−1で流し、温度500〜700℃、S/C=3での水蒸気改質反応を行った。いずれの温度においても化学平衡のガス組成値であり、700℃では、水素76.7vol%、メタン0.6vol%、二酸化炭素10.5vol%、一酸化炭素12.2vol%の水素を含む混合ガスであった。
【0063】
<金属カルボニル生成と分析>
上記の作業に引き続き、水蒸気改質反応を700℃で3時間行った。その後、窒素パージして降温し、100℃とした。次いで650℃、S/C=3での水蒸気改質反応の化学平衡ガス組成の混合ガスをGHSV=1000h−1にて30分間流した。反応管をバルブで封止して100℃にて1時間保持し、その後、室温まで降温して反応管を取り外した。3日間静置した後、ニッケルカルボニル生成量の定量分析を行った結果、検出下限値未満であり、十分な除去効果が得られたことを確認した。
【0064】
実施例2
実施例1の銅担持アルミナビーズの代わりに、酸化銅、酸化亜鉛、アルミナの混合物からなり、それぞれが重量対比45、45、10(銅含有量は金属銅換算35.9wt%)とである成形体を用意した。また別に、Pdを金属換算で0.5wt%担持したY型ゼオライトを直径1mm、高さ2〜3mmの成形体として用意した。担持されたPdの金属サイズは電子顕微鏡より1.5nmであることを確認した。上記したニッケル触媒ビーズに対してPd担持Y型ゼオライトを、重量対比で15wt%用意した。また銅−亜鉛−アルミナ成形体はニッケル触媒ビーズに対して3wt%用意し、ニッケル触媒ビーズになるべく均一に散在するようよく混ぜ合わせた。Pd担持Y型ゼオライト成形体は、このニッケル触媒と銅−亜鉛−アルミナ成形体の混合物の上層及び下層部に設置した。このとき、触媒中の銅はニッケルに対して重量比で金属換算にて10.4%であった。
【0065】
上記触媒の触媒活性評価を行った。触媒ビーズを10cc用いて、脱硫触媒を通して十分に硫黄成分を除去した都市ガス13AをGHSV=800h−1、温度500〜700℃、S/C=2.7での水蒸気改質反応を行った結果、いずれの温度においても化学平衡のガス組成値であり、700℃では、水素76.6vol%、メタン0.6vol%、二酸化炭素10.5vol%、一酸化炭素12.3vol%の水素を含む混合ガスであった。
【0066】
上記作業の後、窒素パージを行って、400℃まで降温させた。その後、400℃を保持したまま水素10vol%/窒素ガスにて1時間還元処理を行った。次いで、100℃まで降温させてから、650℃、S/C=3での水蒸気改質反応の化学平衡ガス組成の混合ガスをGHSV=1000h−1にて1時間流した。反応管をバルブで封止して100℃にて1時間保持し、その後、室温まで降温して反応管を取り外した。3日間静置した後、ニッケルカルボニル生成量の定量分析を行った結果、検出下限値未満であり、十分な除去効果が得られたことを確認した。
【0067】
実施例3
実施例1のニッケル触媒ビーズ50ccに対して銅金属換算0.5wt%の硝酸銅溶液及び酸化亜鉛換算0.8wt%相当の塩化亜鉛をスプレー担持した。500℃にて40分間熱処理して触媒を得た。また別に、直径1mm、高さ2〜3mmのY型ゼオライトを成形体として用意した。上記ニッケル触媒ビーズに対してY型ゼオライトを、重量対比で20wt%用意した。このとき、ニッケル触媒ビーズとY型ゼオライト成形体がなるべく均一に散在するようよく混ぜ合わせた。このとき、触媒中の銅はニッケルに対して重量比で金属換算にて4.8%であった。
【0068】
上記触媒の触媒活性評価を行った。触媒ビーズを10cc用いて、純メタンガスをGHSV=1000h−1、温度500〜700℃、S/C=3での水蒸気改質反応を行った結果、いずれの温度においても化学平衡のガス組成値であり、700℃では、水素76.7vol%、メタン0.5vol%、二酸化炭素10.6vol%、一酸化炭素12.2vol%の水素を含む混合ガスであった。
【0069】
上記作業の後、窒素パージを行って、400℃まで降温させた。その後、400℃を保持したまま水素10vol%/窒素ガスにて1時間還元処理を行った。次いで、100℃まで降温させてから、650℃、S/C=3での水蒸気改質反応の化学平衡ガス組成の混合ガスをGHSV=1000h−1にて1時間流した。反応管をバルブで封止して100℃にて1時間保持し、その後、室温まで降温して反応管を取り外した。3日間静置した後、ニッケルカルボニル生成量の定量分析を行った結果、21ppmであり除去効果が得られたことを確認した。
【0070】
実施例4
12gの3mmΦのアルミナビーズに、硝酸ニッケル33.7g、硝酸マグネシウム18.2gを溶解し全量50mlとした混合溶液を含浸させ、60℃で乾燥させた後、450℃で5時間熱処理した。その後、10vol%水素/窒素ガスにて500℃で6時間還元処理して、ニッケル触媒(ビーズ状)を得た。
また、酸化銅、酸化亜鉛、アルミナの混合物からなり、それぞれが重量対比45、45、10(銅含有量は金属銅換算35.9wt%)となる成形体を用意した。これをニッケル触媒ビーズに対して0.2wt%用意した。また別に、直径1mm、高さ2〜3mmのY型ゼオライトを成形体として用意した。上記ニッケル触媒ビーズに対してY型ゼオライトを、重量対比で8wt%用意した。ニッケル触媒ビーズと銅−亜鉛−アルミナ成形体及びY型ゼオライト成形体がなるべく均一に散在するようよく混ぜ合わせた。このとき、触媒中の銅はニッケルに対して重量比で金属換算にて0.23%であった。
【0071】
上記触媒の触媒活性評価を行った。触媒ビーズを10cc用いて、純メタンガスをGHSV=1000h−1、温度500〜700℃、S/C=3.3での水蒸気改質反応を行った結果、いずれの温度においても化学平衡のガス組成値であり、700℃では、水素76.7vol%、メタン0.6vol%、二酸化炭素10.5vol%、一酸化炭素12.2vol%の水素を含む混合ガスであった。
【0072】
上記作業の後、窒素パージを行って、400℃まで降温させた。その後、400℃を保持したまま水素10vol%/窒素ガスにて1時間還元処理を行った。次いで、100℃まで降温させてから、650℃、S/C=3での水蒸気改質反応の化学平衡ガス組成の混合ガスをGHSV=1000h−1にて1時間流した。反応管をバルブで封止して100℃にて1時間保持し、その後、室温まで降温して反応管を取り外した。3日間静置した後、ニッケルカルボニル生成量の定量分析を行った結果、42ppmであり除去効果が得られたことを確認した。
【0073】
実施例5
酸化銅、酸化亜鉛、アルミナの混合物からなり、それぞれが重量対比45、45、10(銅含有量は金属銅換算35.9wt%)となる成形体を用意した。これを実施例4記載のニッケル触媒ビーズに対して30wt%用意して、ニッケル触媒ビーズと銅−亜鉛−アルミナ成形体がなるべく均一に散在するようよく混ぜ合わせた。このとき、触媒中の銅はニッケルに対して重量比で金属換算にて34.3%であった。
【0074】
上記触媒の触媒活性評価を行った。触媒ビーズを10cc用いて、純メタンガスをGHSV=850h−1、温度500〜700℃、S/C=3.3での水蒸気改質反応を行った結果、いずれの温度においても化学平衡のガス組成値であり、700℃では、水素76.7vol%、メタン0.6vol%、二酸化炭素10.5vol%、一酸化炭素12.2vol%の水素を含む混合ガスであった。
【0075】
上記作業の後、窒素パージを行って、400℃まで降温させた。その後、400℃を保持したまま水素10vol%/窒素ガスにて1時間還元処理を行った。次いで、100℃まで降温させてから、650℃、S/C=3での水蒸気改質反応の化学平衡ガス組成の混合ガスをGHSV=1000h−1にて1時間流した。反応管をバルブで封止して100℃にて1時間保持し、その後、室温まで降温して反応管を取り外した。3日間静置した後、ニッケルカルボニル生成量の定量分析を行った結果、検出下限値未満であり、十分な除去効果が得られたことを確認した。
【0076】
実施例6
20gのアルミナビーズに対してNi(NO・6HO 0.77g水溶液を含浸させ、乾燥後、450℃で1h熱処理後、さらに51g/LのRu金属を含む硝酸ルテニウム溶液1.96mlを含浸させ、乾燥後、窒素中で200℃にて0.5h熱処理した。
別に、酸化銅、酸化亜鉛、アルミナの混合物からなり、それぞれが重量対比45、45、10(銅含有量は金属銅換算35.9wt%)となる成形体を用意した。これを、上記ルテニウム・ニッケルを担持したアルミナ触媒ビーズに対して30wt%用意して、ルテニウム・ニッケルを担持したアルミナ触媒ビーズと銅−亜鉛−アルミナ成形体がなるべく均一に散在するようよく混ぜ合わせた。このとき、触媒中の銅はニッケルに対して重量比で金属換算にて200%であった。
【0077】
上記触媒の触媒活性評価を行った。触媒ビーズを10cc用いて、純メタンガスをGHSV=750h−1、温度500〜700℃、S/C=3.0での水蒸気改質反応を行った結果、いずれの温度においても化学平衡のガス組成値であり、700℃では、水素76.8vol%、メタン0.6vol%、二酸化炭素10.5vol%、一酸化炭素12.1vol%の水素を含む混合ガスであった。
【0078】
上記作業の後、窒素パージを行って、400℃まで降温させた。その後、400℃を保持したまま水素10vol%/窒素ガスにて1時間還元処理を行った。次いで、100℃まで降温させてから、650℃、S/C=3での水蒸気改質反応の化学平衡ガス組成の混合ガスをGHSV=1000h−1にて1時間流した。反応管をバルブで封止して100℃にて1時間保持し、その後、室温まで降温して反応管を取り外した。3日間静置した後、ニッケルカルボニル生成量の定量分析を行った結果、検出下限値未満であり、十分な除去効果が得られたことを確認した。
【0079】
比較例
実施例4のニッケル・マグネシウム担持アルミナビーズを用いて触媒活性評価を行った。触媒ビーズを10cc用いて、純メタンガスをGHSV=1000h−1、温度500〜700℃、S/C=3.3での水蒸気改質反応を行った結果、いずれの温度においても化学平衡のガス組成値であり、700℃では、水素76.7vol%、メタン0.6vol%、二酸化炭素10.5vol%、一酸化炭素12.2vol%の水素を含む混合ガスであった。
【0080】
上記作業の後、窒素パージを行って、400℃まで降温させた。その後、400℃を保持したまま水素10vol%/窒素ガスにて1時間還元処理を行った。次いで、100℃まで降温させてから、650℃、S/C=3での水蒸気改質反応の化学平衡ガス組成の混合ガスをGHSV=1000h−1にて1時間流した。反応管をバルブで封止して100℃にて1時間保持し、その後、室温まで降温して反応管を取り外した。3日間静置した後、ニッケルカルボニル生成量の定量分析を行った結果、検出上限値の100ppmを超えた値が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
“その場”で金属カルボニルを生成抑制あるいは吸着/分解除去する技術は、今後燃料電池システムを始め多くのニーズが発生する可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルを含む触媒体に対して、触媒体中のニッケルに対する金属換算の重量対比で0.001〜250%の銅を存在させることを特徴とする金属カルボニルを除去する触媒。
【請求項2】
請求項1記載の触媒が酸化亜鉛を含んでいることを特徴とする金属カルボニルを除去する触媒。
【請求項3】
請求項1又は2記載の触媒に対して、重量対比で1〜50%の粘土鉱物を存在させることを特徴とする金属カルボニルを除去する触媒。
【請求項4】
請求項3記載の粘土鉱物に、平均粒径が50nm以下のルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金、金、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、銅、鉄、亜鉛、バナジウム、マンガンから選ばれた一種又は二種以上の元素を担持させたことを特徴とする金属カルボニルを除去する触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒を用いて、炭化水素から水素を含む混合改質ガスを製造する方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒を用いて、改質の反応場で金属カルボニルを除去する方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の触媒を用いることを特徴とする燃料電池システム。

【公開番号】特開2007−319737(P2007−319737A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149941(P2006−149941)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】