説明

金属カルボン酸塩を含む潤滑組成物

本発明は、(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘度の油とを含む潤滑組成物に関する。本発明はさらに、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを潤滑するための潤滑組成物の使用を提供する。一実施形態において、本発明は、(i)潤滑剤熱安定性、(ii)潤滑剤酸化安定性、(iii)摩擦係数、(iv)燃料経済性、(v)デポジット制御、(vi)シール適合性、および(vii)チャタリング音(異常音)のうちの少なくとも1つにおいて許容可能なレベルを提供するための、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルにおける(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物に関する。本発明はさらに、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを潤滑するための潤滑組成物の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
車両におけるリミテッド・スリップ・ディファレンシャルは、通常、湿式多板クラッチを採用しており、すなわち、クラッチ板は、潤滑剤に浸漬されている。リミテッド・スリップ・ディファレンシャルは、通常、2つの動輪に対してそれらの回転速度に関係なく駆動トルクを均等に分配する傘歯車もしくは平歯車による遊星歯車機構を有している。これにより、曲路走行の際に、被駆動車輪の回転速度が異なるにもかかわらず、被駆動車輪が路面との間においてスリップすることなく回転することが可能となる。スリップを抑制するために、摩擦性能を改善することができる化合物を含有する潤滑剤、分散剤、並びに硫黄および/またはリンを含有する極圧添加剤が使用され得る。このタイプの潤滑剤の例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、および特許文献5において開示されている。
【0003】
(i)デポジット制御(特許文献6)および(ii)摩耗性能に対して好適な化合物を含有する潤滑剤について、特許文献7、特許文献8、および特許文献9に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,308,154号明細書
【特許文献2】米国特許第5,547,586号明細書
【特許文献3】米国特許第4,180,466号明細書
【特許文献4】米国特許第3,825,495号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0399764A1号明細書
【特許文献6】米国特許第3,284,409号明細書
【特許文献7】国際公開第96/037585号
【特許文献8】米国特許出願公開第2002/0119895号明細書
【特許文献9】米国特許第5,487,838号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者らは、本明細書において開示されるような潤滑組成物および方法が、(i)潤滑剤熱安定性、(ii)潤滑剤酸化安定性、(iii)高い静摩擦係数、(iv)燃料経済性、(v)デポジット制御、(vi)シール適合性、および(vii)多くの場合、チャタリング音(すなわち、通常、低周波の「うなり音」および「きしみ音」と呼ばれる、特に、速い速度での曲路走行操縦の際の異常音)として表される騒音・振動・ハーシュネス(NVH)の低傾向、のうちの少なくとも1つにおいて許容可能なレベルを提供することができるということを発見した。本発明者らは、予想外にも、本明細書において開示された潤滑剤組成物および方法が、1種以上の別個の板材料を有するリミテッド・スリップ・システムに好適であり得るということも発見した。例えば、板材料は、スチール、紙、セラミック、炭素繊維、並びに複数の板タイプの混合物、例えば、セラミック上のスチール、紙中の炭素繊維、または紙上のスチールなど、を採用した系であり得る。
【0006】
一実施形態において、本発明は、(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物を提供する。
【0007】
一実施形態において、本発明は、(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物をリミテッド・スリップ・ディファレンシャルに供給する工程を含む、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを潤滑する方法を提供する。
【0008】
一実施形態において、本発明は、(i)潤滑剤熱安定性、(ii)潤滑剤酸化安定性、(iii)摩擦係数、(iv)燃料経済性、(v)デポジット制御、(vi)シール適合性、および(vii)チャタリング音(異常音)のうちの少なくとも1つにおいて許容可能なレベルを提供するための、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルにおける(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物の使用を提供する。
【0009】
一実施形態において、本発明は、(a)金属カルボン酸塩が4〜16個の炭素原子を有するアルコールによりエステル化されたカルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と、(b)リン酸エステルのアミン塩と、(c)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物を提供する。
【0010】
一実施形態において、本発明は、(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物を提供する。
【0011】
一実施形態において、本発明は、(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物をリミテッド・スリップ・ディファレンシャルに供給する工程を含む、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを潤滑する方法を提供する。
【0012】
一実施形態において、本発明は、(i)潤滑剤熱安定性、(ii)潤滑剤酸化安定性、(iii)摩擦係数、(iv)燃料経済性、(v)デポジット制御、(vi)シール適合性、および(vii)チャタリング音(異常音)のうちの少なくとも1つにおいて許容可能なレベルを提供するための、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルにおける(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、本明細書で上記において開示されたような潤滑組成物および方法を提供する。
【0014】
金属カルボン酸塩
本発明の潤滑組成物は、非芳香族金属カルボン酸を含み、この場合、金属カルボン酸塩は、分枝鎖カルボン酸由来である。
【0015】
金属カルボン酸塩は、金属による分枝鎖カルボン酸の塩形成の工程を含む、既知の反応から誘導され得る。
【0016】
金属は、一価、二価、三価、またはそれらの混合物であり得る。金属カルボン酸塩の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または(通常、第4族(すなわち、スカンジウム〜亜鉛)の)遷移金属、あるいはそれらの混合物であり得る。
【0017】
一実施形態において、金属カルボン酸塩の金属は、アルカリ土類金属または(通常、第4族の)遷移金属であり得る。好適な金属の例としては、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、銅、亜鉛、またはそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、金属は、亜鉛または銅である。一実施形態において、金属は亜鉛である。
【0018】
本発明のカルボン酸は、分枝鎖カルボン酸である。カルボン酸は、任意の分枝度、およびカルボン酸の炭素鎖に沿った任意の位置での分枝を有し得る。通常、カルボン酸は、分枝鎖カルボン酸であり得、この場合、分枝は、α炭素またはβ炭素において生じている。
【0019】
一実施形態において、分枝鎖カルボン酸は、α炭素において分枝し得る。
【0020】
一実施形態において、分枝鎖カルボン酸は、β炭素において分枝し得る。
【0021】
分枝鎖カルボン酸は、4〜20個、または6〜14個、または6〜12個の炭素原子を有し得る。
【0022】
分枝鎖カルボン酸は、2つ以上の分枝鎖を有し得る。分枝鎖カルボン酸が2つの分枝鎖を有する場合、分枝している基とカルボン酸基の炭素原子とを含む分子中の最も長い炭素鎖は、2〜19個、4〜19個、または4〜10個の炭素原子を含有し得る。例えば、2−エチルヘキサン酸は、6個の炭素原子による最も長い炭素鎖長を有し、並びに2−メチルヘキサン酸は、6個の炭素原子による最も長い鎖長を有する。
【0023】
分枝鎖カルボン酸は、2つ以上の分枝鎖を有し得る。分枝鎖カルボン酸が2つの分枝鎖を有する場合、分枝している炭素より後の最も短い炭素鎖は、2〜18個、または2〜10個の炭素原子を含有し得る。例えば、2−エチルヘキサン酸は、2個の炭素原子による最も短い炭素鎖長(すなわち、エチレン基)を有し、並びに2−メチルヘキサン酸は、1個の炭素原子による最も短い鎖長(すなわち、メチル基)を有する。通常、最も短い炭素鎖の炭素原子の数は、分枝している基とカルボン酸基の炭素原子とを含む分子における最も長い炭素鎖の炭素原子の数より、少なくとも1個または少なくとも2個少ない数であり得る。
【0024】
好適なカルボン酸の例としては、2−エチルヘキサン酸、イソ−トリデカン酸、イソ−デカン酸、イソ−ステアリン酸、イソ−酪酸、2−メチプロパン酸(2−methypropanoicacid)、2−エチル酪酸、2−メチルヘキサン酸、オレイン酸もしくはタル油脂肪酸のいずれかのダイマー酸もしくはトリマー酸(鉄触媒の存在下において調製されたもの(Uniquema社によってPripol(登録商標)の商標名において市販されている)、またはそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、カルボン酸は、2−エチルヘキサン酸であり得る。
【0025】
金属カルボン酸塩は、中性、塩基性、またはそれらの混合物のいずれかであり得る。一実施形態において、金属カルボン酸塩は、塩基性金属カルボン酸塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、もしくは亜鉛カルボン酸塩など、であり得る。一実施形態において、金属カルボン酸塩の金属は、銅または亜鉛であり得る。塩基性金属カルボン酸塩は、(R−COO)M−OHまたは(R−COO)M−O−M(OOC−R)を含む構造を有し得、この場合、R−COOは、分枝鎖カルボン酸部分を表し(分枝鎖カルボン酸につては上記において説明されている)、Mは、カルシウム、マグネシウム、銅、または亜鉛を表す。Mは、R−COOにイオン結合していると考えられる。金属が亜鉛の場合、塩基性化合物の式は、(RCOZnOまたは[(RCOZn]ZnO(両構造は、100%のカルボン酸亜鉛の塩基性化合物である)であり得る。(RCOZnOまたは[(RCOZn]ZnOの構造は、四面体構造中に亜鉛を有していると考えられる。
【0026】
通常、金属カルボン酸塩は、塩基性構造を有する金属カルボン酸塩を少なくとも50重量%または少なくとも60重量%含有する、塩基性金属カルボン酸塩であり得る。
【0027】
金属カルボン酸塩は、潤滑組成物の0.1重量%〜5重量%、または0.2重量%〜3重量%、または0.2重量%超〜3重量%、または0.5重量%〜3重量%、または0.5重量%〜2.5重量%の範囲の量において、潤滑組成物中に存在し得る。
【0028】
ホウ酸化リン脂質
任意により、潤滑組成物は、さらに、ホウ酸化リン脂質を含む。一実施形態において、潤滑組成物は、ホウ酸化リン脂質を含む。一実施形態において、潤滑組成物は、ホウ酸化リン脂質を含有しない。
【0029】
リン脂質は、リン酸基を含有する任意の脂質、例えば、レシチンまたはセファリン、あるいはそれらの誘導体であり得る。リン脂質の例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、およびそれらの混合物が挙げられる。リン脂質は、リン脂質の上記の一覧のグリセロール誘導体であるグリセロリン脂質であってもよい。通常、グリセロリン脂質は、グリセロール残基に1つまたは2つのアシル、アルキル、またはアルケニル基を有する。アルキル基またはアルケニル基は、8〜30個、または8〜25個、または12〜24個の炭素原子を含有し得る。好適なアルキル基またはアルケニル基の例としては、オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコサニル、オクテニル、ドデセニル、ヘキサデセニルおよびオクタデセニルが挙げられる。一実施形態において、リン脂質は、レシチンまたはその誘導体である。
【0030】
リン脂質の誘導体は、アシル化またはヒドロキシル化されたリン脂質であり得る。例えば、レシチン並びにアシル化およびヒドロキシル化されたレシチンが、本発明において使用され得る。アシル化レシチンは、アシル化剤をレシチンと反応させることによって調製することができる。アシル化剤は、酢酸を含む。市販されているアシル化レシチンの例は、Thermolec 200(商標)アシル化大豆レシチン(Decatur,IllのRoss&Rowe,Inc.から入手可能)である。ヒドロキシル化レシチンも使用され得る。ヒドロキシル化レシチンは、酸加水分解または酵素加水分解によって調製され得る。ヒドロキシル化レシチンの例は、Ross&Rowe,Inc.から市販されているThermolec 1018(商標)ヒドロキシル化レシチンである。
【0031】
リン脂質およびレシチンについては、Encyclopedia of Chemcial Technology,KirkおよびOthmer,3rd Edition,「Fats and Fatty Oils」,Volume 9,p795−831および「Lecithins」,Volume 14,p250−269に詳細に記載されている。
【0032】
リン脂質のホウ素化は、ホウ素化合物との反応によって実施され得る。ホウ素化合物としては、酸化ホウ素、酸化ホウ素水和物、三酸化ホウ素、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、ホウ素酸、例えば、ボロン酸(すなわち、アルキル−B(OH)またはアリール−B(OH))、ホウ酸(すなわち、HBO)、四ホウ酸(すなわち、H)、メタホウ酸(すなわち、HBO)など、ホウ素無水物、ホウ素アミド、およびそのようなホウ素酸の様々なエステルが挙げられる。
【0033】
潤滑組成物に好適なホウ酸化リン脂質については、(2007年12月6日に、BakerおよびRhoadsによって出願された)米国特許出願第60/992738号の、この仮出願の段落[0014]〜[0024]にさらに詳細に記載されている。
【0034】
ホウ酸化リン脂質についてのより詳細な説明および調製方法は、米国特許第5,487,838号に記載されている。米国特許第5,487,838語の第20欄第64行目〜第22欄第51行目に開示されている実施例1〜7では、ホウ酸化リン脂質の調製について例示されている。
【0035】
ホウ酸化リン脂質は、潤滑組成物の0重量%、5〜6重量%、または0.05重量%〜6重量%、または0.5重量%〜3重量%において存在し得る。
【0036】
リン酸エステルのアミン塩
一実施形態において、潤滑組成物は、さらに、リン酸エステルのアミン塩を含む。リン酸エステルアミン塩を調製するために使用されるリン酸は、リン酸またはチオリン酸のいずれかであり得る。
【0037】
リン酸エステルのアミン塩は、それぞれ1〜30個、6〜30個、8〜30個、10〜24個、または12〜20個、または16〜20個の炭素原子を有するエステル基を含有し得るが、ただし、エステル基の一部または全部は、リン酸エステルのアミン塩を潤滑粘性油に溶解させるのに十分長い。通常、4個以上の炭素原子を含有するエステル基が、特に有用である。
【0038】
好適なエステル基の例としては、イソプロピル、メチル−アミル(1,3−ジメチルブチルとも呼ばれる場合もある)、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ブタデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
一実施形態において、エステル基は、イソプロピル、メチル−アミル(1,3−ジメチルブチルとも呼ばれる場合がある)、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0040】
アミン塩としての使用に好適であり得るアミンは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、およびそれらの混合物を含む。アミンは、少なくとも1つのヒドロカルビル基を有するもの、あるいはある特定の実施形態においては、2つまたは3つのヒドロカルビル基を有するものを含む。ヒドロカルビル基は、2〜30個の炭素原子を含有し得、あるいは他の実施形態においては、8〜26個、または10〜20個、または13〜19個の炭素原子を含有し得る。
【0041】
第一級アミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、並びに、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、およびオレイアミン(oleyamine)のような直鎖アミンが挙げられる。他の有用な脂肪族アミンとしては、市販されている脂肪族アミン、例えば、「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals,Chicago,Illinoisから入手可能な製品)、例えば、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen S、およびArmeen SDなど、が挙げられ、この場合、文字表記は、脂肪性基、例えば、ヤシ、オレイル、獣脂、またはステアリル基など、に関連している。
【0042】
好適な第二級アミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、エチルアミルアミン、ジココアミン、およびジ−2エチルヘキシルアミンが挙げられる。第二級アミンは、環状アミン、例えば、ピペリジン、ピペラジン、およびモルホリンなど、であってもよい。
【0043】
アミンは、第三級脂肪族第一級アミンでもあり得る。この場合、脂肪族基は、2〜30個、または6〜26個、または8〜24個の炭素原子を含有するアルキル基であり得る。第三級アルキルアミンとしては、モノアミン、例えば、tert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、tert−オクチルアミン、tert−デシルアミン、tertドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミン、およびtert−オクタコサニルアミンなど、が挙げられる。
【0044】
リン酸エステルのアミン塩は、C12〜20アルキルリン酸と第三級C11〜22アルキル第一級アミンとの反応生成物であり得る。
【0045】
一実施形態において、リン酸エステルのアミン塩は、C11〜C14第三級アルキル第一級基またはそれらの混合物を有するアミンを含む。一実施形態において、リン化合物のアミン塩は、C14〜C18第三級アルキル第一級アミンまたはそれらの混合物を有するアミンを含む。一実施形態において、リン化合物のアミン塩は、C18〜C22第三級アルキル第一級アミンまたはそれらの混合物を有するアミンを含む。
【0046】
一実施形態において、リン酸エステルのアミン塩は、オクタデセニルリン酸とPrimene 81R(商標)との反応生成物を含む。
【0047】
本発明において、アミンの混合物も使用され得る。一実施形態において、アミンの有用な混合物は、「Primene(商標) 81R」および「Primene(商標) JMT」である。Primene(商標) 81RおよびPrimene(商標) JMT(両方とも、Rohm&Haas社によって製造および販売されている)は、それぞれC11〜C14第三級アルキル第一級アミンおよびC18〜C22第三級アルキル第一級アミンの混合物である。
【0048】
一実施形態において、リン酸エステルのアミン塩は、C14〜C18アルキル化リン酸と、C11〜C14第三級アルキル第一級アミンの混合物であるPrimene 81R(商標)(Rohm&Haas社によって製造および販売されている)との反応生成物である。
【0049】
リン酸エステルのアミン塩の例としては、イソプロピル、メチル−アミル(1,3−ジメチルブチルまたはそれらの混合物)、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、またはデシルジチオリン酸と、エチレンジアミン、モルホリン、またはPrimene 81R(商標)との反応生成物(単数または複数)、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0050】
リン酸エステルのアミン塩の例としては、テトラアデシル(tetraadecyl)、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、またはイコシルジチオリン酸と、エチレンジアミン、モルホリン、またはPrimene 81R(商標)との反応生成物(単数または複数)、並びにそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、リン酸エステルのアミン塩は、オクタデセニルジチオリン酸とPrimene 81R(商標)との反応生成物を含む。
【0051】
一実施形態において、リン化合物のアミン塩は、(i)リン酸のヒドロキシ−置換ジ−エステルまたは(ii)リン酸のリン酸化ヒドロキシ−置換ジエステルもしくはトリエステルのいずれかのアミン塩の、硫黄不含(sufphur−free)リン含有化合物であり得る。このタイプの化合物についてのより詳細な説明は、国際公開第2008/094759号においてより詳細に記載されている。
【0052】
一実施形態において、リン酸のアミン塩は、米国特許第3,197,405号に記載されている化合物である。一実施形態において、上記において開示されたもの以外のリン化合物のアミン塩は、米国特許第3,197,405号の実施例1〜25のうちの任意の1つによって調製することができる。
【0053】
一実施形態において、上記において開示されたもの以外のリン化合物のアミン塩は、ジチオリン酸をエポキシドまたはグリコールと反応させて調製された反応生成物である。この反応生成物は、さらに、リン酸、無水物、または低級エステル(「低級」は、エステルにおけるアルコール誘導部分の1〜8個、または1〜6個、または1〜4個、または1〜2個の炭素原子を意味する)と反応する。エポキシドは、脂肪族エポキシドまたは酸化スチレンを含む。有用なエポキシドの例としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブテン、酸化オクテン、酸化ドデセン、酸化スチレンなどが挙げられる。一実施形態において、エポキシドは、酸化プロピレンである。グリコールは、1〜12個、または2〜6個、または2〜3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールを含む。ジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン試薬、およびそれらを反応させる方法は、米国特許第3,197,405号および同第3,544,465号に記載されている。得られた酸は、次いで、アミンと塩形成される。
【0054】
好適なジチオリン酸ベースの生成物の例は、514グラムのヒドロキシプロピルO,O−ジ(1,3−ジメチルブチル)ホスホロジチオエート(25℃において、ジ(1,3−ジメチルブチル)−ホスホロジチオ酸と1.3モルの酸化プロピレンとを反応させて調製したもの)に、58℃で45分間かけて、五酸化リン(約64グラム)を加えることによって調製する。得られた混合物を、75℃で2.5時間加熱し、ケイ藻土と混合して、70℃で濾過した。濾液は、11.8重量%のリン、15.2重量%の硫黄を含有し、並びに87の酸価(ブロモフェノール・ブルー)を有する。
【0055】
リン酸エステルのアミン塩は、潤滑組成物の0重量%〜5重量%、または0.01重量%〜5重量%、または0.01重量%〜2重量%、または0.25重量%〜1重量%において存在し得る。
【0056】
潤滑粘性油
潤滑組成物は、潤滑粘性油を含む。そのような油としては、天然および合成油、水素化分解、水素添加、および水素化仕上げから誘導された油、未精製、精製、再精製された油、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0057】
未精製油は、概してさらなる精製処理を行わずに(またはほとんど行わずに)、天然または合成の供給源から直接得られたものである。
【0058】
精製油は、1種以上の特性を改善するために、1つ以上の精製工程においてさらに処理されていることを除いて、未精製油に類似する。精製技術は、当技術分野において公知であり、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションなどを含む。
【0059】
再精製油も、再生油または再処理油として知られており、精製油を得るために使用されたものと同様のプロセスによって得られ、多くの場合、廃添加剤および油分解産物を除去するための技術によってさらに処理される。
【0060】
本発明の潤滑剤の製造において有用な天然油としては、動物油(例えば、ラード油)、植物油(例えば、ヒマシ油)、鉱油系潤滑油、例えば、液体石油、およびパラフィン型、ナフテン型、または混合パラフィン−ナフテン型の溶媒処理もしくは酸処理した鉱油系潤滑油など、並びに石炭もしくは頁岩から誘導される油、あるいはそれらの混合物が挙げられる。
【0061】
合成潤滑油は有用であり、炭化水素油、例えば、重合および内部重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびそれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体および同族体またはそれらの混合物、を含む。
【0062】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル(Priolube(登録商標)3970など)、ジエステル、リン含有酸の液状エステル(例えば、トリクレジルリン酸塩、トリオクチルリン酸塩、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、または重合テトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって製造され得、通常、ヒドロ異性化されたフィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであり得る。一実施形態において、油は、他のガス・ツー・リキッド油と同様に、フィッシャー・トロプシュガス・ツー・リキッド合成法によって調製され得る。
【0063】
潤滑粘性油は、米国石油協会(API)のBase Oil Interchangeability Guidelinesにおいて分類されているように定義することもできる。5つの基油群は、以下の通り:I群(硫黄含量>0.03重量%、および/または<90重量%飽和度、粘度指数80〜120);II群(硫黄含量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和度、粘度指数80〜120);III群(硫黄含量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和度、粘度指数≧120);IV群(全てのポリαオレフィン(PAO));ならびにV群(I群、II群、III群、またはIV群に含まれない他の全て)である。潤滑粘性油は、APIのI群、II群、III群、IV群、V群の油、またはそれらの混合油を含む。多くの場合、潤滑粘性油は、APIのI群、II群、III群、IV群の油またはそれらの混合物である。あるいは、潤滑粘性油は、多くの場合、APIのII群、III群もしくはIV群の油またはそれらの混合物である。
【0064】
存在する潤滑粘性油の量は、通常、100重量%から、ホウ酸化リン脂質、リン酸エステルのアミン塩、および他の性能の添加剤の量の合計を除した後に残る残分である。
【0065】
潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に配合された潤滑剤の形態であり得る。本明細書において開示される潤滑組成物が、濃縮物の形態である場合(追加の油と組み合わせることにより全体としてまたは部分的に最終潤滑剤を形成し得る)、潤滑組成物の成分と潤滑粘性油および/または希釈油との比率としては、1:99〜99:1または80:20〜10:90の範囲の重量比が挙げられる。濃縮物の形態の場合、本発明は、完全な潤滑剤組成物の一部であり得るか、あるいは補助添加剤のパッケージまたは「トップ処理(top treat)」であり得る。
【0066】
他の性能の添加剤
本発明の組成物は、任意により、さらに少なくとも1種の他の性能の添加剤を含む。他の性能の添加剤としては、分散剤、金属不活性化剤、洗剤、粘度調整剤、極圧添加剤(通常、ホウ素および/または硫黄および/またはリン含有)、摩耗防止剤、酸化防止剤、(例えば、ヒンダードフェノール、アミン性酸化防止剤、またはモリブデン化合物)、腐食防止剤、抑泡剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、摩擦調整剤、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0067】
油不含ベースにおいて存在する他の性能の添加剤(粘度調整剤を除く)の総合計量としては、組成物の0重量%〜25重量%、または0.01重量%〜20重量%、または0.1重量%〜15重量%、または0.5重量%〜10重量%、または1〜5重量%の範囲が挙げられる。1種以上の他の性能の添加剤が存在していてもよいが、他の性能の添加剤は、通常、互いに異なる量において存在する。
【0068】
一実施形態において、潤滑組成物は、モリブデン含有添加剤を含有しない。
【0069】
粘度調整剤
一実施形態において、潤滑組成物は、さらに、1種以上の粘度調整剤を含む。
【0070】
粘度調整剤が存在する場合、潤滑組成物の0.5重量%〜70重量%、1重量%〜60重量%、または5重量%〜50重量%、または10重量%〜50重量%の量において存在し得る。
【0071】
粘度調整剤としては、(a)ポリメタクリレート、(b)(i)ビニル芳香族モノマーと(ii)不飽和カルボン酸、無水物、またはそれらの誘導体とのエステル化されたコポリマー、(c)(i)α−オレフィンと(ii)不飽和カルボン酸、無水物、またはそれらの誘導体との、エステル化された内部ポリマー、または(d)スチレン−ブタジエンジの水素化されたコポリマー、(e)エチレンープロピレンコポリマー、(f)ポリイソブテン、(g)水素化されたスチレン−イソプレンポリマー、(h)水素化されたイソプレンポリマー、あるいは(i)それらの混合物が挙げられる。
一実施形態において、粘度調整剤は、(a)ポリメタクリレート、(b)(i)ビニル芳香族モノマーと(ii)不飽和カルボン酸、無水物、またはそれらの誘導体との、エステル化されたコポリマー、(c)(i)α−オレフィンと(ii)不飽和カルボン酸、無水物、またはそれらの誘導体との、エステル化された内部ポリマー、あるいは(i)それらの混合物を含む。
【0072】
極圧添加剤
極圧添加剤は、ホウ素および/または硫黄および/またはリンを含有する化合物を含む。
【0073】
極圧添加剤は、潤滑組成物の0重量%〜20重量%、または0.05重量%〜10重量%、または0.1重量%〜8重量%において、潤滑組成物中に存在し得る。
【0074】
一実施形態において、極圧添加剤は、硫黄含有化合物である。一実施形態において、硫黄含有化合物は、硫化オレフィン、多硫化物、またはそれらの混合物であり得る。
【0075】
硫化オレフィンの例としては、プロピレン、イソブチレン、ペンテンから誘導された硫化オレフィン;ベンジルジスルフィド;ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド;ジブチルテトラスルフィド;ジ−第三級ブチルポリスルフィドなどの有機スルフィドおよび/またはポリスルフィド;および硫化メチルエステルのオレイン酸、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、硫化ディールス・アルダー付加体、アルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカルバメート;またはそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、硫化オレフィンは、プロピレン、イソブチレン、ペンテン、またはそれらの混合物から誘導された硫化オレフィンを含む。
【0076】
一実施形態において、極圧添加剤である硫黄含有化合物は、ジメルカプトチアジアゾ−ルまたはその誘導体、あるいはそれらの混合物を含む。ジメルカプトチアジアゾ−ルの例としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾ−ルまたはヒドロカルビル−置換2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾ−ル、あるいはそれらのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル−置換2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾールのオリゴマーは、通常、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール単位の間に硫黄−硫黄結合を形成して2つ以上の当該チジアゾール単位による誘導体またはオリゴマーを形成することによって形成される。好適な2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾ−ル誘導化合物としては、2,5−ビス(tert−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ルまたは2−tert−ノニルジチオ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾ−ルが挙げられる。
【0077】
ヒドロカルビル−置換2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾ−ルのヒドロカルビル置換基の炭素原子の数としては、通常、1〜30個、または2〜20個、または3〜16個が挙げられる。
【0078】
一実施形態において、極圧添加剤は、ホウ素含有化合物を含む。ホウ素含有化合物としては、ホウ酸エステル(ホウ酸化エポキシドと呼ばれる場合もある)、ホウ酸アルコール、ホウ酸化分散剤、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0079】
一実施形態において、ホウ素含有化合物は、ホウ酸エステルまたはホウ酸アルコールである。ホウ酸エステルまたはホウ酸アルコール化合物は、ホウ酸アルコールが、エステル化されていない少なくとも1つのヒドロキシル基を有することを除いて、実質的に同じである。したがって、本明細書において使用される場合、用語「ホウ酸エステル」は、ホウ酸エステルまたはホウ酸アルコールのいずれかを意味するために使用される。
【0080】
ホウ酸エステルは、ホウ素化合物と、エポキシ化合物、ハロヒドリン化合物、エピハロヒドリン化合物、アルコール、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物との反応によって調製され得る。アルコールは、二価アルコール、三価アルコール、または高級アルコールを含むが、ただし、一実施形態においては、ヒドロキシル基は隣接する炭素原子上にあり、すなわち隣接位である。用語「エポキシ化合物」は、「エポキシ化合物、ハロヒドリン化合物、エピハロヒドリン化合物、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物」を意味する場合に使用される。
【0081】
ホウ酸エステルの調製に好適なホウ素化合物としては、ホウ酸(メタホウ酸であるHBO、オルトホウ酸であるHBO、および四ホウ酸であるHなど)、酸化ホウ素、三酸化ホウ素、およびアルキルホウ酸塩から成る群から選択される様々な形態が挙げられる。ホウ酸エステルは、ハロゲン化ホウ素から調製することもできる。
【0082】
一実施形態において、好適なホウ酸エステル化合物としては、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリヘプチル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリノニル、およびホウ酸トリデシルが挙げられる。
【0083】
一実施形態において、ホウ酸エステル化合物は、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリ−2−エチルヘキシル、またはそれらの混合物を含む。
【0084】
一実施形態において、ホウ素含有化合物は、典型的にはN−置換長鎖アルケニルスクシンイミドから誘導されるホウ酸化分散剤である。一実施形態において、ホウ酸化分散剤は、ポリイソブチレンスクシンイミドを含む。ホウ酸化分散剤については、米国特許第3,087,936号および同第3,254,025号においてより詳細に記載されている。
【0085】
一実施形態において、ホウ酸化分散剤は、硫黄含有化合物またはホウ酸化エステルと組み合わせて使用される。
【0086】
一実施形態において、極圧添加剤は、ホウ酸化分散剤以外である。
【0087】
長鎖アルケニル基が誘導される炭化水素の数平均分子量としては、350〜5000、または500〜3000、または550〜1500の範囲が挙げられる。長鎖アルケニル基は、550、または750、または950〜1000の数平均分子量を有し得る。
【0088】
N−置換された長鎖アルケニルスクシンイミドは、ホウ酸(例えば、メタホウ酸であるHBO、オルトホウ酸であるHBO、および四ホウ酸であるH)、酸化ホウ素、三酸化ホウ素、およびアルキルホウ酸塩などの様々な薬剤を使用してホウ酸化される。一実施形態において、ホウ酸化剤は、ホウ酸であり、これは、単独においてまたは他のホウ酸化剤と組み合わせて使用され得る。
【0089】
ホウ酸化分散剤は、ホウ素化合物とN−置換長鎖アルケニルスクシンイミドとを混合し、それらを好適な温度、例えば、80℃〜250℃、または90℃〜230℃、または100℃〜210℃において、所望の反応を生じるまで加熱することによって調製され得る。ホウ素化合物とN−置換長鎖アルケニルスクシンイミドとのモル比は、10:1〜1:4または4:1〜1:3などの範囲であり得るか、または、ホウ素化合物とN−置換長鎖アルケニルスクシンイミドとのモル比は、1:2であり得る。反応の実施において、不活性な液体を使用してもよい。そのような液体は、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、またはそれらの混合物を含み得る。
【0090】
摩擦調整剤((a)ホウ酸化リン脂質および(b)リン酸エステルのアミン塩以外)としては、脂肪族アミン、エステル、例えば、ホウ酸化グリセロールエステル、脂肪族亜リン酸塩、脂肪酸アミド、脂肪族エポキシド、ホウ酸化脂肪族エポキシド、アルコキシル化脂肪族アミン、ホウ酸化アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、または脂肪族イミダゾリンなど、カルボン酸の縮合物、並びにポリアルキレン−ポリアミンが挙げられる。
【0091】
一実施形態において、潤滑組成物は、上記において説明したリン酸エステルのアミン塩の極圧添加剤として説明された化合物以外の、リン含有もしくは硫黄含有摩耗防止剤を含有し得る。摩耗防止剤の例としては、非イオン性リン化合物(通常、+3または+5の酸化状態においてリン原子を有する化合物)、金属ジアルキルジチオリン酸塩(通常、ジアルキルジチオリン酸亜鉛)、金属モノアルキルリン酸塩もしくはジアルキルリン酸塩(通常、リン酸亜鉛)、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0092】
非イオン性リン化合物としては、亜リン酸エステル、リン酸エステル、またはそれらの混合物が挙げられる。非イオン性リン化合物のより詳細な説明としては、米国特許第6,103,673号の第9欄第48行目〜第11欄第8行目が挙げられる。
【0093】
一実施形態において、本発明の潤滑組成物は、さらに、分散剤を含む。分散剤は、スクシンイミド分散剤(例えば、N−置換長鎖アルケニルスクシンイミド)、マンニッヒ分散剤、エステル含有分散剤、脂肪族ヒドロカルビルモノカルボン酸アシル化剤とアミンもしくはアンモニアとの縮合生成物、アルキルアミノフェノール分散剤、ヒドロカルビル−アミン分散剤、ポリエーテル分散剤、またはポリエーテルアミン分散剤であり得る。
【0094】
一実施形態において、スクシンイミド分散剤は、ポリイソブチレン−置換スクシンイミドを含み、この場合、分散剤が誘導されるポリイソブチレンは、400〜5000、または950〜1600の数平均分子量を有し得る。
【0095】
スクシンイミド分散剤およびその調製方法は、米国特許第4,234,435号および同第3,172,892号に、より詳細に記載されている。
【0096】
好適なエステル含有分散剤は、通常、高分子量のエステルである。これらの材料は、米国特許第3,381,022号に、より詳細に記載されている。
【0097】
一実施形態において、分散剤は、ホウ酸化分散剤を含む。通常、ホウ酸化分散剤は、ポリイソブチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド分散剤を含み、この場合、分散剤が誘導されるポリイソブチレンは、400〜5000の数平均分子量を有し得る。ホウ酸化分散剤については、上記の極圧添加剤の説明内に、より詳細に記載されている。
【0098】
分散粘度調整剤(多くの場合、DVMと呼ばれる)は、官能化ポリオレフィンを含み、例えば、無水マレイン酸とアミンとの反応生成物によって官能化されているエチレン−プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応させたスチレン−無水マレイン酸コポリマーが、本発明の組成物において使用され得る。
【0099】
腐食防止剤としては、1−アミノ−2−プロパノール、オクタン酸オクチルアミン、ドデセニルコハク酸もしくは無水物および/または脂肪酸、例えば、オレイン酸など、とポリアミンとの縮合生成物が挙げられる。
【0100】
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(通常、トリルトリアゾール)、1,2,4−トリアゾール、ベンズイミダゾール、2−アルキルジチオベンズイミダゾール、または2−アルキルジチオベンゾチアゾールが挙げられる。金属不活性化剤は、腐食防止剤としても説明され得る。
【0101】
抑泡剤としては、エチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート、並びに任意により酢酸ビニルとのコポリマーが挙げられる。
【0102】
解乳化剤としては、リン酸トリアルキル、並びにエチレングリコール、酸化エチレン、酸化プロピレン、またはそれらの混合物の様々なポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0103】
流動点降下剤としては、無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミドが挙げられる(including)。
【0104】
シール膨潤剤としては、Exxon Necton−37(商標)(FN 1380)およびExxon Mineral Seal Oil(商標)(FN 3200)が挙げられる(including)。
【0105】
(産業上の利用可能性)
リミテッド・スリップ・ディファレンシャルは、通常、ディファレンシャルのハウジングまたはキャリア内に入れられた内蔵型潤滑剤から分離されたそのような潤滑剤の供給源を具備する。リミテッド・スリップ・ディファレンシャルの内蔵型潤滑剤は、一般的に、マニュアル・トランスミッション・フルードまたはオートマチック・トランスミッション・フルードに供給される潤滑剤とは異なる。リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを含まないマニュアルおよびオートマチック・トランスミッション・システムの両方では、すべてのトランスミッション構成要素を潤滑するのに、1種の潤滑剤で十分である。
【0106】
リミテッド・スリップ・ディファレンシャルに好適な潤滑組成物は、0.3重量%〜5重量%、または0.5重量%〜5重量%、または0.5重量%〜3重量%、または0.8重量%〜2.5重量%、または1重量%〜2重量%の範囲の硫黄含有量を有し得る。
【0107】
一実施形態において、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルに好適な潤滑組成物は、完全に配合された液体である。
【0108】
一実施形態において、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルに好適な潤滑組成物は、トップ処理濃縮物である。
【0109】
潤滑組成物が、トップ処理濃縮物の形態である場合、その濃縮物は、リミテッド・スリップ・ディファレンシャル中の潤滑剤の量に対して0.2重量%〜10重量%、または0.5重量%〜7重量%において添加され得る。
【0110】
一実施形態において、潤滑組成物は、(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と、(b)リン酸エステルのアミン塩と、(c)潤滑粘性油と、任意により粘度調整剤とから成るか、または実質的に成る。通常、このタイプの潤滑組成物は、トップ処理濃縮物であり得る。
【0111】
一実施形態において、潤滑組成物は、(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と、(b)リン酸エステルのアミン塩と、(c)潤滑粘性油と、(d)ホウ酸化リン脂質と、任意により粘度調整剤とから成るか、または実質的に成る。通常、このタイプの潤滑組成物は、トップ処理濃縮物であり得る。
【0112】
以下の実施例は、本発明の例示を提示するものである。これらの実施例は、包括的なものではなく、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0113】
調製例1(Prep1)は、2−エチルヘキサン酸亜鉛の調製である。1.5モルの2−エチルヘキサン酸および0.2gの2,6−ジ−第三級ブチルクレゾールを、メカニカルスターラー、窒素導入口、熱電対、および冷却管を備えた四つ口フラスコに加える。フラスコを80℃に加熱し、次いで、1モルの酸化亜鉛を90分かけて加える。次に、フラスコを、80℃でさらに240分間維持する。冷却器を取り外し、蒸留液を除去するために、S字形管冷却器を取り付ける。減圧にして、温度を150℃まで上げて、40分間維持する(それによって、水が除去される)。フラスコを、150℃でさらに30分間維持した後、100℃まで冷却する。生成物を冷却し、Fax−5フィルターを通して濾過する。254gの浅黄色の液体が得られる。生成物のTBNは、試料1gあたり376.2mgKOHである。亜鉛含有量は、22.5%〜23%の間である。
【0114】
実施例1(EX1):1271gの市販の軸液を、29.3gのPrep1の生成物でトップ処理する。
【0115】
EX1の組成物は、オーバーヘッドスターラー、熱電対、冷却管、および空気導入口を備えた四つ口フラスコにおいて、軸液をPrep1と混合することによって調製される。冷却管の出口ポートには、苛性剤およびさらし粉による一連のトラップが備えられている。フラスコおよび内容物を60℃に加熱し、30分間維持する。空気を導入し、フラスコを140℃で7時間加熱し、その後、150℃で8時間加熱する。冷却すると、暗茶色の液体が得られる。
【0116】
比較例1(CE1)は、2−エチルヘキサン酸亜鉛が加えられないことを除いて、EX1と同じ市販されている軸液であり、EX1と同じ熱応力を受ける。
【0117】
調製された実施例(EX1およびCE1)は、Low Speed SAE#2試験機において、μ−PVT(μ、圧力、速度、および温度を変えて得られる摩擦係数)摩擦スクリーニング試験を用いて評価する。この摩擦スクリーニング試験では、以下のプレート構成(S−F−S−F−S−F−S−F−S、この場合、Sは、スチールプレートであり、Fは摩擦プレートである)を有し、それによって8つの活性摩擦表面を生じるMiba MC−631摩擦材のDana Model 80プレート構成が用いられる。試験は、温度を50℃で一定に維持しつつ、適用圧力およびプレート・ディファレンシャル速度を変量するマップに従って実施する。190、380、570、760、950、および1075kPaの6段階の適用圧力設定を用いる。各適用圧力設定において、15、50、85、および120rpmの4つの異なるプレート・ディファレンシャル速度を用いる。各プレート・ディファレンシャル速度において、25反復サイクルを実施する。各試験では、合計で600サイクル(6段階の圧力×4段階のスピード×25サイクル)を行う。摩擦性能の変化を評価するために、600サイクルのμ−PVTまたは摩擦マップを耐久性サイクルの前および後に実施する。耐久性サイクルは、80℃の流体温度での570kPaの一定の適用圧力、および120rpmと0rpmとの間のプレート・ディファレンシャル速度のサイクルから成る。1つのサイクル全体は、0rpmでの5秒間および120rpmでの5秒間から成る。これが、合計2500サイクル繰り返される。一次測定は、各別個のスピード事象の際のトルク信号における変化またはその事象の際に得られる最小と最大の摩擦係数の間の差を表すNVHレーティングである。この測定は、以下の表に従って、トルク信号の変化の大きさに対してある数値を割り当てる:

トルク信号の変化 NVHレーティング
0〜0.02の間の摩擦ユニットの係数 0
0.02〜0.04の間の摩擦ユニットの係数 1
0.04〜0.06の間の摩擦ユニットの係数 2
0.06〜0.08の間の摩擦ユニットの係数 3
0.08〜0.10の間の摩擦ユニットの係数 4
0.10〜0.12の間の摩擦ユニットの係数 5
0.12〜0.14の間の摩擦ユニットの係数 6
0.14〜0.16の間の摩擦ユニットの係数 7

これらのレーティングは、ある1つの適用圧力およびスピード設定において完了したすべてのサイクルについて合計され、次いで試験全体について合計される。最大NVHレーティングは、9600ポイント(6段階の圧力×4段階のスピード×25回の繰り返し×NVHレーティングの8=4800、耐久性評価の前後として×2=9600)である。これは、非常に乏しい摩擦性能であると見なされるであろう。最小のNVHレーティングは0ポイントである。これは、優れた摩擦性能であると考えられるであろう。後耐久性NVHレーティングは、EX1では945であり、CE1では2095である。
【0118】
この試験から得られたデータは、本発明の潤滑組成物が、多くの場合にチャタリング音として表される耐久性評価後のNVHに対して低傾向を有するリミテッド・スリップ・ディファレンシャルを提供することができるということを示している。
【0119】
上記において説明した材料のいくつかは、最終配合物において相互作用する場合があり、そのために最終配合物の成分は、最初に添加された成分とは異なる場合があるということが知られている。それによって形成される生成物は、意図された用途における本発明の潤滑剤組成物の使用の際に形成される生成物を含めて、容易に説明することができない場合がある。それでもなお、全てのそのような改変物および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれ、したがって、本発明は、上記において説明した成分を混合することによって調製される潤滑剤組成物を包含する。
【0120】
本明細書において使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者にとって周知の通常の意味において使用される。特に、これらの用語は、この分子の残りの部分に直接結合している炭素原子を有しかつ支配的に炭化水素の性質を有する基を意味する。ヒドロカルビル基の例としては、
(i)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、並びに芳香族−、脂肪族−、および脂環式−置換芳香族置換基、並びに環状置換基、この場合、環は、分子の別の一部により完成している(例えば、2つの置換基が一緒に環を形成する)、
(ii)置換炭化水素置換基、すなわち、本明細書との関連において、置換基(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)の主要な炭化水素の性質を変えない非炭化水素基を含有する置換基、
(iii)ヘテロ置換基、すなわち、支配的に炭化水素の性質を有しつつ、本明細書との関連において、その他が炭素原子で構成される環または鎖中に、炭素以外を含有する置換基、および
(iv)ヘテロ原子、例えば、硫黄、酸素、窒素など、
が挙げられ、並びにピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルなどの置換基を包含する。概して、ヒドロカルビル基において、炭素原子10個あたり2つ以下、好ましくは1つ以下の非炭化水素置換基が、存在するであろうし、したがって、通常、ヒドロカルビル基に非炭化水素置換基は存在しないであろう。
【0121】
上記において言及される各文献は、参照により本明細書中に組み入れられる。実施例または他に明示的に示される場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定する本説明中の全ての数量は、単語「約」によって修飾されていると理解すべきである。そうでないことが示されない限り、本明細書において言及される各化学物質または組成物は、市販グレードの材料であると解釈されるべきであり、これらは、異性体、副生成物、誘導体、および市販グレード中に存在すると通常理解される他のそのような物質を含み得る。しかしながら、各化学成分の量は、そうでないことが示されない限り、慣習的に市販の材料中に存在し得る任意の溶媒または希釈油を除いて表される。本明細書において説明される量、範囲、および比率の上限および下限は、独立して組み合わせることができるということは理解すされるべきである。同様に、本発明の各要素に対する範囲および量は、任意の他の要素に対する範囲または量と共に使用され得る。
【0122】
本発明について、その好ましい実施形態に関連して説明してきたが、それらの様々な改変物は、本明細書を読むことによって当業者には明らかとなるであろうということは理解されるべきである。したがって、本明細書において開示される本発明は、添付の特許請求の範囲内であるような改変物を包含することが意図されるということは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属カルボン酸塩が分枝鎖カルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と(b)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物。
【請求項2】
前記分枝鎖カルボン酸が、α炭素またはβ炭素において分枝している、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記分枝鎖カルボン酸が、α炭素において分枝している、請求項1または2いずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記分枝鎖カルボン酸が、β炭素において分枝している、請求項1または2いずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記分枝鎖カルボン酸が、4〜20個、または6〜14個、または6〜12個の炭素原子を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
前記分枝鎖カルボン酸が、4〜19個または4〜10個の炭素原子の、前記分枝している基とカルボン酸基の炭素原子とを含む分子中の最も長い炭素分枝鎖を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記分枝鎖カルボン酸が、分枝している炭素より後に2〜18個または2〜10個の炭素原子の最も短い炭素分枝鎖を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記潤滑組成物が、さらに、硫黄含有化合物を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記硫黄含有化合物が、ジメルカプトチアジアゾ−ルまたはその誘導体あるいはそれらの混合物である、請求項8に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記硫黄含有化合物が、ポリスルフィドまたは硫化オレフィンである、請求項8に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
前記潤滑組成物が、さらに、リン含有化合物を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
前記リン含有化合物が、リン酸エステルのアミン塩である、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
前記リン酸エステルのアミン塩が、(i)リン酸のヒドロキシ−置換ジ−エステルまたは(ii)リン酸のリン酸化ヒドロキシ−置換ジエステルもしくはトリエステルのうちのいずれかのアミン塩の硫黄不含のリン含有化合物である、請求項12に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
前記潤滑組成物が、さらに、ホウ素含有化合物を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
前記ホウ素含有化合物が、ホウ酸化分散剤、ホウ酸エステル、またはホウ酸化リン脂質である、請求項14に記載の潤滑組成物。
【請求項16】
(a)金属カルボン酸塩が4〜16個の炭素原子を有するアルコールによりエステル化されたカルボン酸由来である少なくとも0.05重量%の非芳香族金属カルボン酸塩と、(b)リン酸エステルのアミン塩と、(c)潤滑粘性油とを含む潤滑組成物とを含む潤滑組成物。
【請求項17】
前記潤滑組成物が、0.3重量%〜5重量%または0.8重量%〜2.5重量%の範囲の硫黄含有量を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項18】
前記潤滑組成物が、トップ処理濃縮物である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項19】
前記金属カルボン酸塩が、前記潤滑組成物の0.1重量%〜5重量%、または0.2重量%〜3重量%、または0.2重量%超〜3重量%の範囲の量において存在する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の潤滑組成物。
【請求項20】
リミテッド・スリップ・ディファレンシャルに、請求項1〜19のいずれか1項に記載の潤滑組成物を供給する工程を含む、該リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを潤滑する方法。

【公表番号】特表2012−506922(P2012−506922A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533284(P2011−533284)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061408
【国際公開番号】WO2010/048244
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】