金属ガスケット
【課題】燃焼室穴周りのビードの疲労を抑えて金属ガスケットの寿命向上を図る。
【解決手段】1又は2枚以上の基板1とシム板3とを積層して構成される金属ガスケットである。基板1には、燃焼室穴12が開口すると共にその燃焼室穴を囲むように無端環状に延びる燃焼室穴側ビード2を設け、更に、その燃焼室穴側ビードの外周側に複数の水穴や複数のボルト穴が開口している。シム板3は、燃焼室穴側ビードの凹部側から上記基板に当接する。上記シム板3における上記燃焼室穴側ビード2の凹部2aと対向する部分に、当該燃焼室穴側ビードの凹部内に収容可能に突出する補助ビード4を、上記燃焼室穴側ビード2の延在方向に沿って複数個設けた。
【解決手段】1又は2枚以上の基板1とシム板3とを積層して構成される金属ガスケットである。基板1には、燃焼室穴12が開口すると共にその燃焼室穴を囲むように無端環状に延びる燃焼室穴側ビード2を設け、更に、その燃焼室穴側ビードの外周側に複数の水穴や複数のボルト穴が開口している。シム板3は、燃焼室穴側ビードの凹部側から上記基板に当接する。上記シム板3における上記燃焼室穴側ビード2の凹部2aと対向する部分に、当該燃焼室穴側ビードの凹部内に収容可能に突出する補助ビード4を、上記燃焼室穴側ビード2の延在方向に沿って複数個設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを構成するシリンダーブロックとシリンダーヘッドの対向する接合面間に介装されて使用される金属ガスケットであって、上記シリンダーブロックとシリンダーヘッドが金属ガスケットを介装した状態でボルト締結されるエンジンで使用される当該金属ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属ガスケットとしては、例えば特許文献1や特許文献2に記載される金属ガスケットがある。
特許文献1、2に記載の金属ガスケットは、2枚の基板の間にシム板を介挿して構成される。上記シム板は、水穴位置よりも燃焼室穴側の領域にだけ部分的に介挿する。すなわち、上記シム板は、基板間において、燃焼室穴端部から水穴外側端部以内までの範囲にだけ併設される。
【0003】
これによって、シム板を配置した範囲では、シム板の厚さ分だけガスケット厚が増大する。この結果、上記金属ガスケットをエンジンに装填してボルトで締結した際に、シム板を配置した範囲である、燃焼室穴周りの領域の面圧増大を図ることが可能となる。
なお、特許文献1では、シム板に対し、基板に形成した燃焼室穴周りのビードよりも燃焼室側位置に肉厚部(ストッパ部)を形成している。この肉厚部は、燃焼室穴側の面圧をより高める役割と、上記基板に形成したビードが過度に押し潰されることを防止するビードストッパとしての役割とを有する。
【特許文献1】特許第3965537号公報
【特許文献2】特開2005−315419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの進化で小型軽量化、高性能化、希薄燃料燃焼等、ハイメカになり、エンジンは剛性低下の傾向にある。またこのようなエンジンに介装するガスケットは、上記エンジンの進化に伴い、ボア周り(燃焼室穴周り)のシール面圧の増大を図る必要がある。
そして、上記従来の金属ガスケットでは、高温高圧な燃焼ガスをシールするために、高面圧が必要な燃焼室穴周縁の基板間にシム板を配設することでガスケット厚を部分的に増大して、基板の燃焼室穴周囲に成型したビードの面圧増大を図っている。
【0005】
しかしながら、エンジンを締結するボルト部位では基板2枚分だけのガスケット厚となって、水穴から燃焼室穴側よりもシム板1枚分だけ薄くなっている。このため、締付けボルトで締結した時に、エンジンは、シム板の板厚分だけ、水穴の燃焼室穴側端部を支点に変形する。そして、エンジン剛性と、燃焼室穴周縁に配置成型されたビードのばね応力とのバランスで、対向するエンジン側の接合面に対し、ガスケット各部は僅かな隙間が発生するおそれがある。
【0006】
すなわち、軸間の広いボア間(燃焼室穴と燃焼室穴との間の狭い部分)やボルト穴間では、発生隙間が相対的に大きくなる。さらに、エンジンの稼働で繰り返される爆発の振動振幅によって、初期隙間から更に上記隙間の拡縮が発生し、徐々に燃焼室穴周りにビードのバネ応力が劣化して疲労破壊に繋がるおそれがある。特に、ボア間は、エンジンの小型軽量化で寸法を詰められる傾向にあり、また熱の影響も大きく受けて、エンジン面(接合面)の変形も起こり吹き抜けに繋がる欠点、を有している。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、エンジンの稼働で繰り返される爆発振動による、基板に成型したビードの振幅を制限することで、当該ビードの疲労を抑えて金属ガスケットの寿命向上を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、1又は2枚の基板とシム板とを積層して構成される金属ガスケットであって、
上記基板には、燃焼室穴が開口すると共にその燃焼室穴を囲むように無端環状に延びる燃焼室穴側ビードを設け、更に、その燃焼室穴側ビードの外周側に複数の水穴が開口すると共に、上記水穴よりも外周側に複数のボルト穴が開口しており、
上記シム板は、燃焼室穴側ビードの凹部側から上記基板に当接すると共に、そのシム板の外周端部を、ボルト穴位置よりも燃焼室穴に近い位置に設定し、
さらに、上記シム板における上記燃焼室穴側ビードの凹部と対向する部分に、当該燃焼室穴側ビードの凹部内に収容可能に突出するストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って設け、その各ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に延び且つ円周上において1箇所以上の未加工部分を有するビードで形成し、その各ストッパ用凸部の大きさや隣り合うストッパ用凸部間のピッチを調整することで、上記燃焼室穴側ビードの変形の制限を調整することを特徴とするものである。
【0008】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、基板に併設するシム板の燃焼室穴側端部を折り返し、折り返し範囲を燃焼室穴側ビードよりも内側の平坦部内とすることを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記シム板を2枚の基板の間に介挿し、その2枚の基板は、各基板に形成した燃焼室穴側ビードの凹部側を共にシム板側に向けた配置とし、
上記ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って複数設け、
その複数のストッパ用凸部の向きを、延在方向に沿って交互に反対方向に突出させることを特徴とするものである。
【0009】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、上記シム板における、上記ストッパ用凸部の位置よりも燃焼室穴側位置であって上記基板の燃焼室穴側ビードよりも燃焼室穴側の平坦部に対し、当該燃焼室穴外縁に沿って延在する第2のビードを形成することを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した構成に対し、上記ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って複数設け、
その各ストッパ用凸部を、シム板を成型してなる補助ビードで形成し、その補助ビードのうち少なくとも一部の補助ビードの凹部に対し、バネ力を発生可能な弾性シール材を充填して剛性調整を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、シム板によって基板の燃焼室穴側ビードの面圧を高く設定する。
このとき、上記シム板を設けることで、ボルト締付け時に、エンジンの対向する一対の接合面の少なくとも一方が、シム板の外周端部側よりも燃焼室側が隙間が形成されるような反り状態に変形する。
【0011】
上記のような変形が発生しても、ストッパ用凸部によって、高温高圧な燃焼ガスをシールするための燃焼室穴側ビードの面圧を確保可能となる。この結果、シール性能が向上する。
更に、上記ストッパ用凸部によって上記面圧が高くなった上記燃焼室穴側ビードの振幅(変形量)が、当該ストッパ用凸部によって規制される結果、エンジン稼働時の振動による振幅を制限する。これによって、燃焼室穴側ビードの振動振幅を制限して、上記燃焼室穴側ビードの疲労を抑え、金属ガスケットの寿命を向上する。
【0012】
なお、上記ストッパ用凸部を形成するビードには、円周上で1箇所以上ビード成型していない部分を作り、シム板に成型したビードの応力を調整している。よって、燃焼室穴側ビードよりも燃焼室穴側に、ビードストッパとしての厚肉部を形成する必要がない。
以上のような効果は、特に小型軽量化したアルミニウム合金製等のエンジンで燃焼室穴間が狭く、燃焼室穴側ビードより燃焼室側平坦部があまり取れない場合に適用する場合に、有効に作用する。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、シム板の燃焼室穴側端部を折り返して2重とし、折り返し範囲を燃焼室穴側平坦部内とし、シム板折り返し増厚部と基板ビード内のシム板ビードとの2重の方法で基板ビードのストッパとすることで、長期的に安定したシールが確保出来る。
なお、上記延在方向に沿ったエンジン接合面間の隙間に応じて、各ストッパ用凸部の大きさ、及び隣り合うストッパ用凸部間のピッチを調整することで、延在方向に沿った上記燃焼室穴側ビードの面圧を適正に調整することが可能となる。
【0014】
例えば、上記隙間が大きい部分では、ストッパ用凸部を高くしたり、当該ストッパ用凸部の長さを短くしたり、隣り合うストッパ用凸部間のピッチを狭くしたりして、相対的に剛性を高く設定する。
また、請求項3に係る発明によれば、複数のストッパ用凸部の向きを、延在方向に沿って交互に反対方向に突出させることで、1枚のシム板によって、2枚の基板の両方の燃焼室穴側ビードの変形を制限して、振動振幅による劣化や疲労破壊を防止することが出来る。
【0015】
また、請求項4に係る発明によれば、シム板におけるストッパ用凸部よりも燃焼室穴側部分に第2のビードを設けることで、次のような効果を奏する。
すなわち、上記ストッパ用凸部による燃焼室穴側ビードの変形量を制限することで、振動振幅よる劣化や疲労破壊を防止する。更に、上記エンジンの変形による燃焼室穴周縁の不整な隙間を、上記第2のビードのバネ力によって補間する。
【0016】
すなわち、燃焼室穴周囲は、シム板の板厚分だけエンジンを変形させて、面圧の増大を図っている。そして、エンジン剛性と基板に成型した燃焼室穴側ビードのばね応力とのバランスによりガスケットの各部位に異なる隙間が発生している。つまり、シム板によって増厚した部位である燃焼室穴側ビード上では高い面圧が発生しているものの、延在方向に沿った方向では相対的に、ボルト穴から離間しているボルト穴間やボア間では、相対的に隙間が大きく発生している。
【0017】
この隙間を、燃焼室穴側ビード内に成型するストッパ用凸部より内側に成型した第2のビードで燃焼室穴周縁の不整な隙間を補完してシールすると同時に、燃焼ガスを1次シールする。更に、その外側にある、燃焼室穴側ビードで2次シールする。
なお、上述のように、2次シールする燃焼室穴側ビード内にはシム板に成型したストッパ用凸部で燃焼室穴側ビードの変形を制限し、振動振幅によるビードの劣化や疲労破壊を防止する。
【0018】
また、請求項5に記載した発明は、弾性シール材を充填することで、その部分のストッパ用凸部の剛性を高めたり、バネ力を高くすることが可能となる。この結果、燃焼室穴側ビードの変形を制限する精度を向上可能となる。
例えば、延在方向に沿ったストッパ用凸部の大きさやピッチを等しく設定しても、剛性を高くしたい部分にだけ上記弾性シール材を充填すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の金属ガスケット10を一部切り欠いた状態で示す概要平面図である。図2は、図1のB−B断面図である。図3は、図1のA−A断面図である。また、図6は、本実施形態のシム板を一部切り欠いた状態で示す平面図である。図7は、本実施形態のシム板の一部を拡大した平面図である。
【0020】
(構成)
本実施形態の金属ガスケット10は、1枚の基板1とシム板3とを積層して構成する場合の例である。
上記基板1は、ステンレス鋼材等などバネ力を発生可能な薄板金属板からなる。その基板1には、図1に示すように、複数の燃焼室穴12、水穴15、ボルト穴17、及びオイル穴16が開口していると共に、燃焼室穴側ビード2、外周側ビード13、及び第3のビード14が形成されている。符号18は、かしめ穴である。
上記複数の燃焼室穴12は、基板1の長手方向に並んで配置してある。その各燃焼室穴12の外周縁に沿って、上記燃焼室穴側ビード2が延在している。すなわち、燃焼室穴側ビード2が各燃焼室穴12を無端環状に囲繞している。なお、ボア間が狭いことから、図3のように、ボア間では、隣り合う、燃焼室穴側ビード2が合流して1条となっている。
【0021】
その燃焼室穴側ビード2の形成位置の外側に複数の水穴15が開口している。その複数の水側の外周側に外周側ビードが形成され、その外周側ビードよりも外周側にボルト穴17が開口している。ここで、上記水穴15はエンジンに形成した冷却水領域(ウォータージャケットWJ)と対向する位置に形成される。
本実施形態では、図2及び図3に示すように、上記燃焼室穴側ビード2は、フルビードで構成され、上記外周側ビードは、ステップ状のハーフビードで構成される。
【0022】
また、上記シム板3は、図4に示すように、各燃焼室穴12を囲繞する平面視リング形状の平板から構成されている。本実施形態では、ボア間が狭いことから、隣り合うシム板3と一体に形成されている。そのシム板3の外周端部は、上記各燃焼室穴12よりも外周側であって、上記水穴15の位置若しくはその内周側に位置している。例えば、シム板3の外周端部は、燃焼室穴12の中心から一番遠い水穴の外縁以内に配置する。好ましくは、シム板3の外周端部は、上記冷却水領域(ウォータージャケットWJ)内に位置させる。
このシム板3は、上記基板1より薄い平板から成り、上記基板1に対して、上記燃焼室穴側ビード2の凹部2aから当接する。そのシム板3における、上記燃焼室穴側ビード2の凹部2aと対向する位置には、当該燃焼室穴側ビード2の延在方向に沿って複数の補助ビード4が形成されている。
【0023】
その補助ビード4は、上記燃焼室穴側ビード2の凹部2a内に収納可能な大きさとなっている。各補助ビード4は、燃焼室穴側ビード2のビード幅よりも狭く且つ当該燃焼室穴側ビード2よりも低いフルビードから構成される。そのような補助ビード4が、図5に示すように、上記燃焼室穴側ビード2の凹部2aの長手方向に沿って、所定ピッチ間隔で配置してある。上記複数の補助ビード4の列は、上記燃焼室穴側ビード2と同心状に配置してある。なお、シム板3における、上記補助ビード4よりも燃焼室穴12側は平坦となっている。なお、符号5は、シム板3を基板1に取り付ける部18を形成する張出部である。
【0024】
(作用効果)
エンジンを構成するシリンダーブロックの接合面SB1とシリンダーヘッドの接合面SB2との間に、上記構成の金属ガスケット10を介挿して、上記ボルト穴17を貫通する締付けボルトで締結する。
このとき、燃焼室側のガスケット厚が上記シム板3分だけ厚くなっていることから、燃焼室穴12側の面圧が高くなり、上記燃焼室穴側ビード2が板厚方向に弾性変形することによるバネ力によって、燃焼室穴12周りを高圧でシールする。つまり、燃焼室穴側ビード2によって、高温高圧な燃焼ガスをシールする。
【0025】
ここで、エンジンを締結するボルト部位は基板1を2枚だけで、水穴15から燃焼室穴12側の領域よりもシム板1枚分だけ薄くなっている。このため、締付けボルトで締結した時に、エンジンは、シム板3の板厚分だけ、水穴15の燃焼室穴12側端部側を支点に変形する。すなわち、金属ガスケット10を介挿するエンジン側の対向する接合面SB1,SB2の少なくとも一方に、シム板3の外周端部側よりも燃焼室側が隙間が形成されるような反り状態の変形が発生する。そして、エンジン剛性と、燃焼室穴12周縁に配置成型されたビードのばね応力とのバランスでガスケット各部は僅かな隙間が発生する。その隙間は、軸間の広いボア間(隣り合う燃焼室穴12、12間の狭い部分)やボルト穴17間で発生する隙間が相対的に大きくなる。
【0026】
上記のような変形が発生しても、ストッパ用凸部である補助ビード4によって、高温高圧な燃焼ガスをシールするための燃焼室穴側ビード2の面圧を確保可能となる。この結果、シール性能が向上する。
更に、上記ストッパ用凸部によって上記面圧が高くなった上記燃焼室穴側ビード2の振幅(変形量)が、当該ストッパ用凸部によって規制される結果、エンジン稼働時の振動による振幅を制限する。これによって、燃焼室穴側ビード2の振動振幅を制限して、上記燃焼室穴側ビード2の疲労を抑え、金属ガスケット10の寿命を向上する。
このような事は、特に小型軽量化したアルミニウム合金製等のエンジンに適用する場合に有効に作用する。
【0027】
また、ストッパ用凸部を補助ビード4で形成することで、シム板3を屈曲成型するだけで上記効果を奏することが可能となる。
ここで、補助ビード4を延在方向に沿って複数分離して形成することで、各補助ビード4の長さが短くなって、バネ剛性を高くすることが可能となる。そして、上記延在方向に沿ったエンジン接合面SB1,SB2間の隙間に応じて、各ストッパ用凸部の大きさ、及び隣り合うストッパ用凸部間のピッチを調整する事で、延在方向に沿った上記燃焼室穴側ビード2の面圧を適正に調整することが可能となる。
例えば、上記隙間が大きい部分では、ストッパ用凸部を高くしたり、当該ストッパ用凸部の長さを短くしたり、隣り合うストッパ用凸部間のピッチを狭くしたりして、相対的に剛性を高く設定する。
【0028】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の金属ガスケット10は、図6及び図7に示すように、2枚の基板1の間にシム板3を介挿して構成した場合の例である。
【0029】
すなわち、上述の構成からなる2枚の基板1について、燃焼室穴側ビード2の凹部2a側を対向させた状態で配置すると共に、その2枚の基板1の間に上記構成のシム板3を配置したものである。
ただし、上記シム板3に構成する補助ビード4の突出方向を延在方向に沿って交互に反対方向に向けた点が、シム板3の構成について上記第1実施形態と異なる。
【0030】
(作用効果)
補助ビード4を延在方向に沿って交互に反対方向に形成することで、1枚のシム板3で、積層した2枚の基板1の燃焼室穴側ビード2の変形を制限及び調整が出来る。
そして、上述と同様に、燃焼室穴側ビード2の疲労を抑えて金属ガスケット10の寿命が向上する。
【0031】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図8〜図11を参照しつつ説明する。なお、上記各実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
ここで、図8は、基板1が2枚の場合を例示したものである。図9は、基板1が1枚の場合を例示したものである。図10は、折返し部19内に基板1の端部を収容した例である。図11は、燃焼室穴12間の基板1が2枚構成例を示す図である。
【0032】
この実施形態では、基板1に併設するシム板3の燃焼室穴12側端部を折り返してなる折返し部19で増厚し、燃焼室穴12側端部の増厚部(ガスケット厚)を一番厚くする。また、折り返しのない水穴15迄のシム板3部分を2番目の増厚部とし、水穴15よりも外側は、シム板3が無く、基板1を2枚又は1枚で構成する。なお、基板1の枚数は、エンジン運転時の熱変形の大きさで選定すればよい。
【0033】
また、燃焼室穴12周囲に成型した燃焼室穴側ビード2内には、シム板3に成型した補助ビード4が対向配置し、そのシム板3の補助ビード4は、燃焼室穴側ビード2よりも幅、高さとも小さいビードである。上記シム板3に成型する補助ビード4は、基板1が1枚構成の場合は基板1側にのみ突出させ、更にビード4は円周上で少なくとも一箇所以上ビードを加工しない部分を作る。このとき、エンジンの締付け力の弱いボルト間や燃焼室穴間等は、このビードを加工しない箇所を増やして基板1の燃焼室穴側ビード2の変形防止応力を増大している。
【0034】
また、基板1が2枚で構成される金属ガスケットでは、燃焼室穴周囲の1の燃焼室穴側ビード2内のシム板3を成型するビード4は、上下交互に突出させ面圧の弱い部分にはピッチを細かくしたり、高さを高くしたりするなどの対応をする。
この実施形態では、シム板3の燃焼室穴側端部を折り返して折返し部19を形成して増厚部としているため、その増厚部に近いビード2は、当該増厚部がストッパとして作用して、ビード2の疲労破壊を防止できる。この技術は、剛性の低いエンジンやボア径の大きいエンジン、更には、筒内圧に高いエンジンに適用出来る。
【0035】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
金属ガスケット10の基本構成は、上記第2実施形態と同様であるが、シム板3の構成以外は、上記第1実施形態の金属ガスケット10に適用しても良い。
【0036】
そして、図12に示すように、シム板3に形成するストッパ用凸部の形状を、ポッチ状に突起部で形成した例である。すなわち、シム板3に、燃焼室穴側ビード2と同心円上に、円周方向に沿って独立した突起を上下交互に突出させる。その突起のピッチや高さに変化を付けることで、燃焼室穴側ビード2の変形を制限及び調整するものである。
作用効果は、上記実施形態と同様である。
ここで、上記突起は、シム板3を成型して形成する。
なお、上記突起部を、シム板3表面に突起部を固着して設けても良い。この場合には、延在方向に沿って上下交互に設ける必要はなく、シム板3の両面に個別に設ければよい。
【0037】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記各実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
第4実施形態の基本構成は、上記第2及び第3実施形態と同様である。
ただし、図13及び図14に示すように、シム板3に対して、ストッパ用凸部及び燃焼室側ビードよりも燃焼室穴12側に第2のビード6を形成した点が異なる。
【0038】
この第2のビード6は、燃焼室穴12の外縁に沿って延在している。第2のビード6は、燃焼室穴12全周を囲繞するように無端環状に配置しても良い。若しくは、第2のビード6は、相対的に上記隙間が大きくなる部分(ボア間やボルト穴17間)だけに設けても良い。
この第2のビード6は、基板1平坦部と当接するので、上記補助ビード4よりも低くて構わない。
第2のビード6のバネ力によって、エンジンの変形による燃焼室穴12周縁の不整な隙間を補間してシールする。
【0039】
すなわち、燃焼室周囲は、シム板3の板厚分だけエンジンを変形させて、面圧の増大を図っている。そして、エンジン剛性と基板1に成型した燃焼室穴側ビード2のばね応力とのバランスにより各部位は異なる隙間が発生している。つまり、増厚部位の燃焼室穴側ビード2上では高い面圧が発生しているものの、延在方向に沿った方向では相対的に、ボルト穴17から離間している燃焼室穴12側端部やボルト穴17間では、隙間が大きく発生している。
【0040】
この隙間を、燃焼室穴側ビード2内に成型するストッパ用凸部より内側に成型した第2のビード6で燃焼室穴12周縁の不整な隙間を補完すると同時に、燃焼ガスを1次シールする。更に、その外側にある、燃焼室穴側ビード2で2次シールする。これによって、更に安定したシール機構を構築できる。
なお、上述のように、2次シールする燃焼室穴側ビード2内にはシム板3に成型したストッパ用凸部で燃焼室穴側ビード2の変形を制限し、振動振幅によるビードの劣化や疲労破壊を防止する。
【0041】
また、上記シム板3における、燃焼室穴側ビード2よりも外周側の基板1平坦部と対向する部分に第2の内側ビード7を形成する。
この第2の内側ビード7によって、燃焼ガスに対し、第3次シールが可能となる。また、水に対しては、一次シールとなる。
ここで、上記第2のビード6及び第2の内側ビード7の変形例を、図11〜13に示す。
【0042】
図15は、第2のビード6及び第2の内側ビード7をステップ状のハーフビードで形成した例である。図16は、第2のビード6及び第2の内側ビード7をフルビードで形成し、且つ複数条(図12では2条)設ける場合の例である。図17は、第2のビード6及び第2の内側ビード7をステップ状のハーフビードで形成し、且つ複数条(図12では2条)設ける場合の例である。隙間が大きい所ほど条数を増やすと良い。
【0043】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記各実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記各実施形態と同様である。
ただし、ストッパ用凸部を構成する補助ビード4の少なくとも一部の補助ビード4の凹部2aに対して、図18に示すように、弾性シール材からなる充填剤20を充填した例である。
【0044】
充填材を充填することで、補助ビード4のバネ剛性がその分高くすることが出来る。すなわち、適宜充填材を充填することで、補助ビード4のバネ剛性を調整することが可能となる。この結果、燃焼室穴側ビード2の変形を制限する精度を向上可能となる。
例えば、延在方向に沿ったストッパ用凸部の大きさやピッチを等しく設定しても、剛性を高くしたい部分にだけ上記弾性シール材を充填すればよい。
例えば、延在方向に沿ったストッパ用凸部の大きさやピッチを等しく設定しても、剛性を高くしたい部分にだけ上記弾性シール材を充填すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る金属ガスケットを示す一部破断した平面図である。
【図2】図1のB−B断面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係るシム板の一部破断した平面図である。
【図5】図4を一部拡大した平面詳細図である。
【図6】本発明に基づく第2実施形態に係る図1のB−B断面図である。
【図7】本発明に基づく第2実施形態に係る図1のA−A断面図である。
【図8】本発明に基づく第3実施形態に係る図1のB−B断面図である。
【図9】本発明に基づく第3実施形態に係る別の図1のB−B断面図である。
【図10】本発明に基づく第3実施形態に係る別の図1のB−B断面図である。
【図11】本発明に基づく第3実施形態に係る図1のA−A断面図である。
【図12】本発明に基づく第4実施形態に係るシム板を説明する一部破断した平面図である。
【図13】本発明に基づく第5実施形態に係る図1のA−A断面図である。
【図14】本発明に基づく第5実施形態に係る図1のB−B断面図である。
【図15】本発明に基づく第5実施形態に係るシム板に設ける第2及び第2の内側ビードの変形例を示す図である。
【図16】本発明に基づく第5実施形態に係るシム板に設ける第2及び第2の内側ビードの変形例を示す図である。
【図17】本発明に基づく第5実施形態に係るシム板に設ける第2及び第2の内側ビードの変形例を示す図である。
【図18】本発明に基づく第6実施形態に係るシム板の構成を説明する図1のA−A断面でのシム板を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 燃焼室穴側ビード
2a 凹部
3 シム板
4 補助ビード
6 第2のビード
7 第2の内側ビード
10 金属ガスケット
12 燃焼室穴
13 外周側ビード
15 水穴
16 オイル穴
17 ボルト穴
18 かしめ穴
19 シム板の折返し部
20 充填剤
SB1、SB2 接合面
WJ ウォータージャケット
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを構成するシリンダーブロックとシリンダーヘッドの対向する接合面間に介装されて使用される金属ガスケットであって、上記シリンダーブロックとシリンダーヘッドが金属ガスケットを介装した状態でボルト締結されるエンジンで使用される当該金属ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属ガスケットとしては、例えば特許文献1や特許文献2に記載される金属ガスケットがある。
特許文献1、2に記載の金属ガスケットは、2枚の基板の間にシム板を介挿して構成される。上記シム板は、水穴位置よりも燃焼室穴側の領域にだけ部分的に介挿する。すなわち、上記シム板は、基板間において、燃焼室穴端部から水穴外側端部以内までの範囲にだけ併設される。
【0003】
これによって、シム板を配置した範囲では、シム板の厚さ分だけガスケット厚が増大する。この結果、上記金属ガスケットをエンジンに装填してボルトで締結した際に、シム板を配置した範囲である、燃焼室穴周りの領域の面圧増大を図ることが可能となる。
なお、特許文献1では、シム板に対し、基板に形成した燃焼室穴周りのビードよりも燃焼室側位置に肉厚部(ストッパ部)を形成している。この肉厚部は、燃焼室穴側の面圧をより高める役割と、上記基板に形成したビードが過度に押し潰されることを防止するビードストッパとしての役割とを有する。
【特許文献1】特許第3965537号公報
【特許文献2】特開2005−315419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの進化で小型軽量化、高性能化、希薄燃料燃焼等、ハイメカになり、エンジンは剛性低下の傾向にある。またこのようなエンジンに介装するガスケットは、上記エンジンの進化に伴い、ボア周り(燃焼室穴周り)のシール面圧の増大を図る必要がある。
そして、上記従来の金属ガスケットでは、高温高圧な燃焼ガスをシールするために、高面圧が必要な燃焼室穴周縁の基板間にシム板を配設することでガスケット厚を部分的に増大して、基板の燃焼室穴周囲に成型したビードの面圧増大を図っている。
【0005】
しかしながら、エンジンを締結するボルト部位では基板2枚分だけのガスケット厚となって、水穴から燃焼室穴側よりもシム板1枚分だけ薄くなっている。このため、締付けボルトで締結した時に、エンジンは、シム板の板厚分だけ、水穴の燃焼室穴側端部を支点に変形する。そして、エンジン剛性と、燃焼室穴周縁に配置成型されたビードのばね応力とのバランスで、対向するエンジン側の接合面に対し、ガスケット各部は僅かな隙間が発生するおそれがある。
【0006】
すなわち、軸間の広いボア間(燃焼室穴と燃焼室穴との間の狭い部分)やボルト穴間では、発生隙間が相対的に大きくなる。さらに、エンジンの稼働で繰り返される爆発の振動振幅によって、初期隙間から更に上記隙間の拡縮が発生し、徐々に燃焼室穴周りにビードのバネ応力が劣化して疲労破壊に繋がるおそれがある。特に、ボア間は、エンジンの小型軽量化で寸法を詰められる傾向にあり、また熱の影響も大きく受けて、エンジン面(接合面)の変形も起こり吹き抜けに繋がる欠点、を有している。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、エンジンの稼働で繰り返される爆発振動による、基板に成型したビードの振幅を制限することで、当該ビードの疲労を抑えて金属ガスケットの寿命向上を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、1又は2枚の基板とシム板とを積層して構成される金属ガスケットであって、
上記基板には、燃焼室穴が開口すると共にその燃焼室穴を囲むように無端環状に延びる燃焼室穴側ビードを設け、更に、その燃焼室穴側ビードの外周側に複数の水穴が開口すると共に、上記水穴よりも外周側に複数のボルト穴が開口しており、
上記シム板は、燃焼室穴側ビードの凹部側から上記基板に当接すると共に、そのシム板の外周端部を、ボルト穴位置よりも燃焼室穴に近い位置に設定し、
さらに、上記シム板における上記燃焼室穴側ビードの凹部と対向する部分に、当該燃焼室穴側ビードの凹部内に収容可能に突出するストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って設け、その各ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に延び且つ円周上において1箇所以上の未加工部分を有するビードで形成し、その各ストッパ用凸部の大きさや隣り合うストッパ用凸部間のピッチを調整することで、上記燃焼室穴側ビードの変形の制限を調整することを特徴とするものである。
【0008】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、基板に併設するシム板の燃焼室穴側端部を折り返し、折り返し範囲を燃焼室穴側ビードよりも内側の平坦部内とすることを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記シム板を2枚の基板の間に介挿し、その2枚の基板は、各基板に形成した燃焼室穴側ビードの凹部側を共にシム板側に向けた配置とし、
上記ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って複数設け、
その複数のストッパ用凸部の向きを、延在方向に沿って交互に反対方向に突出させることを特徴とするものである。
【0009】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、上記シム板における、上記ストッパ用凸部の位置よりも燃焼室穴側位置であって上記基板の燃焼室穴側ビードよりも燃焼室穴側の平坦部に対し、当該燃焼室穴外縁に沿って延在する第2のビードを形成することを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した構成に対し、上記ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って複数設け、
その各ストッパ用凸部を、シム板を成型してなる補助ビードで形成し、その補助ビードのうち少なくとも一部の補助ビードの凹部に対し、バネ力を発生可能な弾性シール材を充填して剛性調整を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、シム板によって基板の燃焼室穴側ビードの面圧を高く設定する。
このとき、上記シム板を設けることで、ボルト締付け時に、エンジンの対向する一対の接合面の少なくとも一方が、シム板の外周端部側よりも燃焼室側が隙間が形成されるような反り状態に変形する。
【0011】
上記のような変形が発生しても、ストッパ用凸部によって、高温高圧な燃焼ガスをシールするための燃焼室穴側ビードの面圧を確保可能となる。この結果、シール性能が向上する。
更に、上記ストッパ用凸部によって上記面圧が高くなった上記燃焼室穴側ビードの振幅(変形量)が、当該ストッパ用凸部によって規制される結果、エンジン稼働時の振動による振幅を制限する。これによって、燃焼室穴側ビードの振動振幅を制限して、上記燃焼室穴側ビードの疲労を抑え、金属ガスケットの寿命を向上する。
【0012】
なお、上記ストッパ用凸部を形成するビードには、円周上で1箇所以上ビード成型していない部分を作り、シム板に成型したビードの応力を調整している。よって、燃焼室穴側ビードよりも燃焼室穴側に、ビードストッパとしての厚肉部を形成する必要がない。
以上のような効果は、特に小型軽量化したアルミニウム合金製等のエンジンで燃焼室穴間が狭く、燃焼室穴側ビードより燃焼室側平坦部があまり取れない場合に適用する場合に、有効に作用する。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、シム板の燃焼室穴側端部を折り返して2重とし、折り返し範囲を燃焼室穴側平坦部内とし、シム板折り返し増厚部と基板ビード内のシム板ビードとの2重の方法で基板ビードのストッパとすることで、長期的に安定したシールが確保出来る。
なお、上記延在方向に沿ったエンジン接合面間の隙間に応じて、各ストッパ用凸部の大きさ、及び隣り合うストッパ用凸部間のピッチを調整することで、延在方向に沿った上記燃焼室穴側ビードの面圧を適正に調整することが可能となる。
【0014】
例えば、上記隙間が大きい部分では、ストッパ用凸部を高くしたり、当該ストッパ用凸部の長さを短くしたり、隣り合うストッパ用凸部間のピッチを狭くしたりして、相対的に剛性を高く設定する。
また、請求項3に係る発明によれば、複数のストッパ用凸部の向きを、延在方向に沿って交互に反対方向に突出させることで、1枚のシム板によって、2枚の基板の両方の燃焼室穴側ビードの変形を制限して、振動振幅による劣化や疲労破壊を防止することが出来る。
【0015】
また、請求項4に係る発明によれば、シム板におけるストッパ用凸部よりも燃焼室穴側部分に第2のビードを設けることで、次のような効果を奏する。
すなわち、上記ストッパ用凸部による燃焼室穴側ビードの変形量を制限することで、振動振幅よる劣化や疲労破壊を防止する。更に、上記エンジンの変形による燃焼室穴周縁の不整な隙間を、上記第2のビードのバネ力によって補間する。
【0016】
すなわち、燃焼室穴周囲は、シム板の板厚分だけエンジンを変形させて、面圧の増大を図っている。そして、エンジン剛性と基板に成型した燃焼室穴側ビードのばね応力とのバランスによりガスケットの各部位に異なる隙間が発生している。つまり、シム板によって増厚した部位である燃焼室穴側ビード上では高い面圧が発生しているものの、延在方向に沿った方向では相対的に、ボルト穴から離間しているボルト穴間やボア間では、相対的に隙間が大きく発生している。
【0017】
この隙間を、燃焼室穴側ビード内に成型するストッパ用凸部より内側に成型した第2のビードで燃焼室穴周縁の不整な隙間を補完してシールすると同時に、燃焼ガスを1次シールする。更に、その外側にある、燃焼室穴側ビードで2次シールする。
なお、上述のように、2次シールする燃焼室穴側ビード内にはシム板に成型したストッパ用凸部で燃焼室穴側ビードの変形を制限し、振動振幅によるビードの劣化や疲労破壊を防止する。
【0018】
また、請求項5に記載した発明は、弾性シール材を充填することで、その部分のストッパ用凸部の剛性を高めたり、バネ力を高くすることが可能となる。この結果、燃焼室穴側ビードの変形を制限する精度を向上可能となる。
例えば、延在方向に沿ったストッパ用凸部の大きさやピッチを等しく設定しても、剛性を高くしたい部分にだけ上記弾性シール材を充填すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の金属ガスケット10を一部切り欠いた状態で示す概要平面図である。図2は、図1のB−B断面図である。図3は、図1のA−A断面図である。また、図6は、本実施形態のシム板を一部切り欠いた状態で示す平面図である。図7は、本実施形態のシム板の一部を拡大した平面図である。
【0020】
(構成)
本実施形態の金属ガスケット10は、1枚の基板1とシム板3とを積層して構成する場合の例である。
上記基板1は、ステンレス鋼材等などバネ力を発生可能な薄板金属板からなる。その基板1には、図1に示すように、複数の燃焼室穴12、水穴15、ボルト穴17、及びオイル穴16が開口していると共に、燃焼室穴側ビード2、外周側ビード13、及び第3のビード14が形成されている。符号18は、かしめ穴である。
上記複数の燃焼室穴12は、基板1の長手方向に並んで配置してある。その各燃焼室穴12の外周縁に沿って、上記燃焼室穴側ビード2が延在している。すなわち、燃焼室穴側ビード2が各燃焼室穴12を無端環状に囲繞している。なお、ボア間が狭いことから、図3のように、ボア間では、隣り合う、燃焼室穴側ビード2が合流して1条となっている。
【0021】
その燃焼室穴側ビード2の形成位置の外側に複数の水穴15が開口している。その複数の水側の外周側に外周側ビードが形成され、その外周側ビードよりも外周側にボルト穴17が開口している。ここで、上記水穴15はエンジンに形成した冷却水領域(ウォータージャケットWJ)と対向する位置に形成される。
本実施形態では、図2及び図3に示すように、上記燃焼室穴側ビード2は、フルビードで構成され、上記外周側ビードは、ステップ状のハーフビードで構成される。
【0022】
また、上記シム板3は、図4に示すように、各燃焼室穴12を囲繞する平面視リング形状の平板から構成されている。本実施形態では、ボア間が狭いことから、隣り合うシム板3と一体に形成されている。そのシム板3の外周端部は、上記各燃焼室穴12よりも外周側であって、上記水穴15の位置若しくはその内周側に位置している。例えば、シム板3の外周端部は、燃焼室穴12の中心から一番遠い水穴の外縁以内に配置する。好ましくは、シム板3の外周端部は、上記冷却水領域(ウォータージャケットWJ)内に位置させる。
このシム板3は、上記基板1より薄い平板から成り、上記基板1に対して、上記燃焼室穴側ビード2の凹部2aから当接する。そのシム板3における、上記燃焼室穴側ビード2の凹部2aと対向する位置には、当該燃焼室穴側ビード2の延在方向に沿って複数の補助ビード4が形成されている。
【0023】
その補助ビード4は、上記燃焼室穴側ビード2の凹部2a内に収納可能な大きさとなっている。各補助ビード4は、燃焼室穴側ビード2のビード幅よりも狭く且つ当該燃焼室穴側ビード2よりも低いフルビードから構成される。そのような補助ビード4が、図5に示すように、上記燃焼室穴側ビード2の凹部2aの長手方向に沿って、所定ピッチ間隔で配置してある。上記複数の補助ビード4の列は、上記燃焼室穴側ビード2と同心状に配置してある。なお、シム板3における、上記補助ビード4よりも燃焼室穴12側は平坦となっている。なお、符号5は、シム板3を基板1に取り付ける部18を形成する張出部である。
【0024】
(作用効果)
エンジンを構成するシリンダーブロックの接合面SB1とシリンダーヘッドの接合面SB2との間に、上記構成の金属ガスケット10を介挿して、上記ボルト穴17を貫通する締付けボルトで締結する。
このとき、燃焼室側のガスケット厚が上記シム板3分だけ厚くなっていることから、燃焼室穴12側の面圧が高くなり、上記燃焼室穴側ビード2が板厚方向に弾性変形することによるバネ力によって、燃焼室穴12周りを高圧でシールする。つまり、燃焼室穴側ビード2によって、高温高圧な燃焼ガスをシールする。
【0025】
ここで、エンジンを締結するボルト部位は基板1を2枚だけで、水穴15から燃焼室穴12側の領域よりもシム板1枚分だけ薄くなっている。このため、締付けボルトで締結した時に、エンジンは、シム板3の板厚分だけ、水穴15の燃焼室穴12側端部側を支点に変形する。すなわち、金属ガスケット10を介挿するエンジン側の対向する接合面SB1,SB2の少なくとも一方に、シム板3の外周端部側よりも燃焼室側が隙間が形成されるような反り状態の変形が発生する。そして、エンジン剛性と、燃焼室穴12周縁に配置成型されたビードのばね応力とのバランスでガスケット各部は僅かな隙間が発生する。その隙間は、軸間の広いボア間(隣り合う燃焼室穴12、12間の狭い部分)やボルト穴17間で発生する隙間が相対的に大きくなる。
【0026】
上記のような変形が発生しても、ストッパ用凸部である補助ビード4によって、高温高圧な燃焼ガスをシールするための燃焼室穴側ビード2の面圧を確保可能となる。この結果、シール性能が向上する。
更に、上記ストッパ用凸部によって上記面圧が高くなった上記燃焼室穴側ビード2の振幅(変形量)が、当該ストッパ用凸部によって規制される結果、エンジン稼働時の振動による振幅を制限する。これによって、燃焼室穴側ビード2の振動振幅を制限して、上記燃焼室穴側ビード2の疲労を抑え、金属ガスケット10の寿命を向上する。
このような事は、特に小型軽量化したアルミニウム合金製等のエンジンに適用する場合に有効に作用する。
【0027】
また、ストッパ用凸部を補助ビード4で形成することで、シム板3を屈曲成型するだけで上記効果を奏することが可能となる。
ここで、補助ビード4を延在方向に沿って複数分離して形成することで、各補助ビード4の長さが短くなって、バネ剛性を高くすることが可能となる。そして、上記延在方向に沿ったエンジン接合面SB1,SB2間の隙間に応じて、各ストッパ用凸部の大きさ、及び隣り合うストッパ用凸部間のピッチを調整する事で、延在方向に沿った上記燃焼室穴側ビード2の面圧を適正に調整することが可能となる。
例えば、上記隙間が大きい部分では、ストッパ用凸部を高くしたり、当該ストッパ用凸部の長さを短くしたり、隣り合うストッパ用凸部間のピッチを狭くしたりして、相対的に剛性を高く設定する。
【0028】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の金属ガスケット10は、図6及び図7に示すように、2枚の基板1の間にシム板3を介挿して構成した場合の例である。
【0029】
すなわち、上述の構成からなる2枚の基板1について、燃焼室穴側ビード2の凹部2a側を対向させた状態で配置すると共に、その2枚の基板1の間に上記構成のシム板3を配置したものである。
ただし、上記シム板3に構成する補助ビード4の突出方向を延在方向に沿って交互に反対方向に向けた点が、シム板3の構成について上記第1実施形態と異なる。
【0030】
(作用効果)
補助ビード4を延在方向に沿って交互に反対方向に形成することで、1枚のシム板3で、積層した2枚の基板1の燃焼室穴側ビード2の変形を制限及び調整が出来る。
そして、上述と同様に、燃焼室穴側ビード2の疲労を抑えて金属ガスケット10の寿命が向上する。
【0031】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図8〜図11を参照しつつ説明する。なお、上記各実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
ここで、図8は、基板1が2枚の場合を例示したものである。図9は、基板1が1枚の場合を例示したものである。図10は、折返し部19内に基板1の端部を収容した例である。図11は、燃焼室穴12間の基板1が2枚構成例を示す図である。
【0032】
この実施形態では、基板1に併設するシム板3の燃焼室穴12側端部を折り返してなる折返し部19で増厚し、燃焼室穴12側端部の増厚部(ガスケット厚)を一番厚くする。また、折り返しのない水穴15迄のシム板3部分を2番目の増厚部とし、水穴15よりも外側は、シム板3が無く、基板1を2枚又は1枚で構成する。なお、基板1の枚数は、エンジン運転時の熱変形の大きさで選定すればよい。
【0033】
また、燃焼室穴12周囲に成型した燃焼室穴側ビード2内には、シム板3に成型した補助ビード4が対向配置し、そのシム板3の補助ビード4は、燃焼室穴側ビード2よりも幅、高さとも小さいビードである。上記シム板3に成型する補助ビード4は、基板1が1枚構成の場合は基板1側にのみ突出させ、更にビード4は円周上で少なくとも一箇所以上ビードを加工しない部分を作る。このとき、エンジンの締付け力の弱いボルト間や燃焼室穴間等は、このビードを加工しない箇所を増やして基板1の燃焼室穴側ビード2の変形防止応力を増大している。
【0034】
また、基板1が2枚で構成される金属ガスケットでは、燃焼室穴周囲の1の燃焼室穴側ビード2内のシム板3を成型するビード4は、上下交互に突出させ面圧の弱い部分にはピッチを細かくしたり、高さを高くしたりするなどの対応をする。
この実施形態では、シム板3の燃焼室穴側端部を折り返して折返し部19を形成して増厚部としているため、その増厚部に近いビード2は、当該増厚部がストッパとして作用して、ビード2の疲労破壊を防止できる。この技術は、剛性の低いエンジンやボア径の大きいエンジン、更には、筒内圧に高いエンジンに適用出来る。
【0035】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
金属ガスケット10の基本構成は、上記第2実施形態と同様であるが、シム板3の構成以外は、上記第1実施形態の金属ガスケット10に適用しても良い。
【0036】
そして、図12に示すように、シム板3に形成するストッパ用凸部の形状を、ポッチ状に突起部で形成した例である。すなわち、シム板3に、燃焼室穴側ビード2と同心円上に、円周方向に沿って独立した突起を上下交互に突出させる。その突起のピッチや高さに変化を付けることで、燃焼室穴側ビード2の変形を制限及び調整するものである。
作用効果は、上記実施形態と同様である。
ここで、上記突起は、シム板3を成型して形成する。
なお、上記突起部を、シム板3表面に突起部を固着して設けても良い。この場合には、延在方向に沿って上下交互に設ける必要はなく、シム板3の両面に個別に設ければよい。
【0037】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記各実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
第4実施形態の基本構成は、上記第2及び第3実施形態と同様である。
ただし、図13及び図14に示すように、シム板3に対して、ストッパ用凸部及び燃焼室側ビードよりも燃焼室穴12側に第2のビード6を形成した点が異なる。
【0038】
この第2のビード6は、燃焼室穴12の外縁に沿って延在している。第2のビード6は、燃焼室穴12全周を囲繞するように無端環状に配置しても良い。若しくは、第2のビード6は、相対的に上記隙間が大きくなる部分(ボア間やボルト穴17間)だけに設けても良い。
この第2のビード6は、基板1平坦部と当接するので、上記補助ビード4よりも低くて構わない。
第2のビード6のバネ力によって、エンジンの変形による燃焼室穴12周縁の不整な隙間を補間してシールする。
【0039】
すなわち、燃焼室周囲は、シム板3の板厚分だけエンジンを変形させて、面圧の増大を図っている。そして、エンジン剛性と基板1に成型した燃焼室穴側ビード2のばね応力とのバランスにより各部位は異なる隙間が発生している。つまり、増厚部位の燃焼室穴側ビード2上では高い面圧が発生しているものの、延在方向に沿った方向では相対的に、ボルト穴17から離間している燃焼室穴12側端部やボルト穴17間では、隙間が大きく発生している。
【0040】
この隙間を、燃焼室穴側ビード2内に成型するストッパ用凸部より内側に成型した第2のビード6で燃焼室穴12周縁の不整な隙間を補完すると同時に、燃焼ガスを1次シールする。更に、その外側にある、燃焼室穴側ビード2で2次シールする。これによって、更に安定したシール機構を構築できる。
なお、上述のように、2次シールする燃焼室穴側ビード2内にはシム板3に成型したストッパ用凸部で燃焼室穴側ビード2の変形を制限し、振動振幅によるビードの劣化や疲労破壊を防止する。
【0041】
また、上記シム板3における、燃焼室穴側ビード2よりも外周側の基板1平坦部と対向する部分に第2の内側ビード7を形成する。
この第2の内側ビード7によって、燃焼ガスに対し、第3次シールが可能となる。また、水に対しては、一次シールとなる。
ここで、上記第2のビード6及び第2の内側ビード7の変形例を、図11〜13に示す。
【0042】
図15は、第2のビード6及び第2の内側ビード7をステップ状のハーフビードで形成した例である。図16は、第2のビード6及び第2の内側ビード7をフルビードで形成し、且つ複数条(図12では2条)設ける場合の例である。図17は、第2のビード6及び第2の内側ビード7をステップ状のハーフビードで形成し、且つ複数条(図12では2条)設ける場合の例である。隙間が大きい所ほど条数を増やすと良い。
【0043】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、上記各実施形態と同様な部品などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、上記各実施形態と同様である。
ただし、ストッパ用凸部を構成する補助ビード4の少なくとも一部の補助ビード4の凹部2aに対して、図18に示すように、弾性シール材からなる充填剤20を充填した例である。
【0044】
充填材を充填することで、補助ビード4のバネ剛性がその分高くすることが出来る。すなわち、適宜充填材を充填することで、補助ビード4のバネ剛性を調整することが可能となる。この結果、燃焼室穴側ビード2の変形を制限する精度を向上可能となる。
例えば、延在方向に沿ったストッパ用凸部の大きさやピッチを等しく設定しても、剛性を高くしたい部分にだけ上記弾性シール材を充填すればよい。
例えば、延在方向に沿ったストッパ用凸部の大きさやピッチを等しく設定しても、剛性を高くしたい部分にだけ上記弾性シール材を充填すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る金属ガスケットを示す一部破断した平面図である。
【図2】図1のB−B断面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係るシム板の一部破断した平面図である。
【図5】図4を一部拡大した平面詳細図である。
【図6】本発明に基づく第2実施形態に係る図1のB−B断面図である。
【図7】本発明に基づく第2実施形態に係る図1のA−A断面図である。
【図8】本発明に基づく第3実施形態に係る図1のB−B断面図である。
【図9】本発明に基づく第3実施形態に係る別の図1のB−B断面図である。
【図10】本発明に基づく第3実施形態に係る別の図1のB−B断面図である。
【図11】本発明に基づく第3実施形態に係る図1のA−A断面図である。
【図12】本発明に基づく第4実施形態に係るシム板を説明する一部破断した平面図である。
【図13】本発明に基づく第5実施形態に係る図1のA−A断面図である。
【図14】本発明に基づく第5実施形態に係る図1のB−B断面図である。
【図15】本発明に基づく第5実施形態に係るシム板に設ける第2及び第2の内側ビードの変形例を示す図である。
【図16】本発明に基づく第5実施形態に係るシム板に設ける第2及び第2の内側ビードの変形例を示す図である。
【図17】本発明に基づく第5実施形態に係るシム板に設ける第2及び第2の内側ビードの変形例を示す図である。
【図18】本発明に基づく第6実施形態に係るシム板の構成を説明する図1のA−A断面でのシム板を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 基板
2 燃焼室穴側ビード
2a 凹部
3 シム板
4 補助ビード
6 第2のビード
7 第2の内側ビード
10 金属ガスケット
12 燃焼室穴
13 外周側ビード
15 水穴
16 オイル穴
17 ボルト穴
18 かしめ穴
19 シム板の折返し部
20 充填剤
SB1、SB2 接合面
WJ ウォータージャケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2枚の基板とシム板とを積層して構成される金属ガスケットであって、
上記基板には、燃焼室穴が開口すると共にその燃焼室穴を囲むように無端環状に延びる燃焼室穴側ビードを設け、更に、その燃焼室穴側ビードの外周側に複数の水穴が開口すると共に、上記水穴よりも外周側に複数のボルト穴が開口しており、
上記シム板は、燃焼室穴側ビードの凹部側から上記基板に当接すると共に、そのシム板の外周端部を、ボルト穴位置よりも燃焼室穴に近い位置に設定し、
さらに、上記シム板における上記燃焼室穴側ビードの凹部と対向する部分に、当該燃焼室穴側ビードの凹部内に収容可能に突出するストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って設け、その各ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に延び且つ円周上において1箇所以上の未加工部分を有するビードで形成し、その各ストッパ用凸部の大きさや隣り合うストッパ用凸部間のピッチを調整することで、上記燃焼室穴側ビードの変形の制限を調整することを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】
基板に併設するシム板の燃焼室穴側端部を折り返し、折り返し範囲を燃焼室穴側ビードよりも内側の平坦部内とすることを特徴とする請求項1に記載した金属ガスケット。
【請求項3】
上記シム板を2枚の基板の間に介挿し、その2枚の基板は、各基板に形成した燃焼室穴側ビードの凹部側を共にシム板側に向けた配置とし、
上記ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って複数設け、
その複数のストッパ用凸部の向きを、延在方向に沿って交互に反対方向に突出させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した金属ガスケット。
【請求項4】
上記シム板における、上記ストッパ用凸部の位置よりも燃焼室穴側位置であって上記基板の燃焼室穴側ビードよりも燃焼室穴側の平坦部に対し、当該燃焼室穴外縁に沿って延在する第2のビードを形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した金属ガスケット。
【請求項5】
上記ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って複数設け、
その各ストッパ用凸部を、シム板を成型してなる補助ビードで形成し、その補助ビードのうち少なくとも一部の補助ビードの凹部に対し、バネ力を発生可能な弾性シール材を充填して剛性調整を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した金属ガスケット。
【請求項1】
1又は2枚の基板とシム板とを積層して構成される金属ガスケットであって、
上記基板には、燃焼室穴が開口すると共にその燃焼室穴を囲むように無端環状に延びる燃焼室穴側ビードを設け、更に、その燃焼室穴側ビードの外周側に複数の水穴が開口すると共に、上記水穴よりも外周側に複数のボルト穴が開口しており、
上記シム板は、燃焼室穴側ビードの凹部側から上記基板に当接すると共に、そのシム板の外周端部を、ボルト穴位置よりも燃焼室穴に近い位置に設定し、
さらに、上記シム板における上記燃焼室穴側ビードの凹部と対向する部分に、当該燃焼室穴側ビードの凹部内に収容可能に突出するストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って設け、その各ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に延び且つ円周上において1箇所以上の未加工部分を有するビードで形成し、その各ストッパ用凸部の大きさや隣り合うストッパ用凸部間のピッチを調整することで、上記燃焼室穴側ビードの変形の制限を調整することを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】
基板に併設するシム板の燃焼室穴側端部を折り返し、折り返し範囲を燃焼室穴側ビードよりも内側の平坦部内とすることを特徴とする請求項1に記載した金属ガスケット。
【請求項3】
上記シム板を2枚の基板の間に介挿し、その2枚の基板は、各基板に形成した燃焼室穴側ビードの凹部側を共にシム板側に向けた配置とし、
上記ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って複数設け、
その複数のストッパ用凸部の向きを、延在方向に沿って交互に反対方向に突出させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した金属ガスケット。
【請求項4】
上記シム板における、上記ストッパ用凸部の位置よりも燃焼室穴側位置であって上記基板の燃焼室穴側ビードよりも燃焼室穴側の平坦部に対し、当該燃焼室穴外縁に沿って延在する第2のビードを形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した金属ガスケット。
【請求項5】
上記ストッパ用凸部を、上記燃焼室穴側ビードの延在方向に沿って複数設け、
その各ストッパ用凸部を、シム板を成型してなる補助ビードで形成し、その補助ビードのうち少なくとも一部の補助ビードの凹部に対し、バネ力を発生可能な弾性シール材を充填して剛性調整を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した金属ガスケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−38299(P2010−38299A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203435(P2008−203435)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000230261)日本メタルガスケット株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000230261)日本メタルガスケット株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
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