説明

金属ナノ粒子のコロイド溶液の製造方法及びそれにより製造された金属ナノ粒子

本発明による金属ナノ粒子コロイド溶液の製造方法は、金属塩が溶解している電解水溶液中に一対の金属電極を対向配置した後、攪拌手段により前記電解水溶液を攪拌しながら前記2つの電極に電流を印加することで、溶液中の金属イオンが還元されて金属ナノ粒子が析出するようにして調製される金属ナノ粒子のコロイド溶液の製造方法において、前記電解水溶液中にポリソルベートを添加して、電解水溶液から析出する金属ナノ粒子の外面をコーティングすることにより、金属ナノ粒子の凝集を防止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子のコロイド溶液の製造方法及びその方法により製造された金属ナノ粒子粉末に関する。より詳しくは、コロイド溶液内に分散しているナノ粒子が極めて微細であり、溶液中のそれらの安定性を維持することにより、体内に投与すると薬理作用を効果的に示すことができ、金属成分が体内に蓄積されることなく尿により体外に排出されるため、人体に無害な、金属ナノ粒子コロイド溶液の製造方法及びその方法により製造された金属ナノ粒子粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性材料として金属超微粒子、つまり、金属ナノ粒子に対して関心が高まっており、電気、電子、機械、金属などの分野だけでなく、医療分野においてもこれに関する多様な研究が行われている。
【0003】
医療分野の金属ナノ粒子に関する研究結果の例として、ダイクマン(Dykman L.A)らは、ウサギ及びマウスに自然界に存在する多様な抗原と金コロイド溶液を与える研究を行った結果、金コロイド溶液が抗原に対する免疫力を向上させることが分かった。一方、金コロイドは、抗原とアジュバントからなる組成を用いる従来の免疫強化系より迅速かつ高効率の抗体を得ることができ、このような報告により、血液中のリゾチーム濃度、タンパク質補完系の活性、並びに食細胞及び殺菌活性などの免疫反応を向上させるように適用できると考えられる。さらに、実験動物に金コロイド溶液とハプテン(hapten)又は完全な抗原を投与した結果、高い活性を有する抗体の生産を誘導することが確認された(L.A.Dykman, M. V. Sumaroka, S. A. Staroverov, I. S. Zaitseva, and V. A. Bogatyrev, Biology Bulletin, Vol.31, No. 1.2004, 75-79)。
【0004】
ソウルベンチャー情報大学院大学校の発酵食品科学科のHyung Sun Yoon教授は、金の抗炎症効果のメカニズムを示した。彼は、金が体内免疫系において重要な「トール様受容体(Toll-like receptor)」の信号伝達システムを塞ぐことにより、炎症を抑制すると報告した。具体的には、トール様受容体は、バクテリアやウイルスなどが生体に入ったとき、最初の防御システムとして作動して、先天性及び後天性の免疫反応を起こして疾病が発生することを防止する。しかし、トール様受容体の免疫系に過負荷がかかると炎症が発生する。この過程で、金は、炎症を起こし得る「トール様受容体」の信号伝達を止めて、抗炎症効果を得る。
【0005】
白金ナノ粒子の場合、触媒作用によりフリーラジカルを除去することが知られている。代謝症候群による心血管障害の治療に対する白金ナノ粒子の有用性がモデルマウスの実験で明らかになった。
【0006】
福岡市で開催された第21回国際高血圧学会(ISH2006)で東京大学病院腎臓内分泌内科の研究陣は、体外実験(in vitro)において白金ナノ粒子が触媒作用により反応性酸素種(ROS)を除去することを発表した。また、研究陣は、肥満モデルマウス(db/dbマウス)に血圧を上げる作用があるアンジオテンシンIIと高塩分食を与えて高血圧を発症させて代謝症候群のモデルを製作し、それから水と共に白金ナノ粒子を毎日投与して4週間のモデルの変化を観察した。その結果、正常なマウスの収縮期血圧は113mmHgであるが、白金ナノ粒子を投与しないモデルマウスは136mmHgと高く、白金ナノ粒子を投与したモデルマウスは129mmHgと低かった。コレステロール値の場合、正常なマウスは150mg/dL、白金ナノ粒子非投与マウスは151mg/dLと同程度であったが、白金ナノ粒子投与マウスでは140mg/dLに低下した。さらに、組織学的には、冠状動脈繊維化を50%縮小した。以上の研究結果から、白金ナノ粒子は、臓器損傷を起こす活性酸素を除去する抗酸化物質であると研究陣は結論を下した。
【0007】
このように、金、白金、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅などの金属ナノ粒子が医療分野に効果的に適用できることが次々と明らかになっているが、金属ナノ粒子が人体に害を及ぼさずにその薬理作用を効果的に発揮するためには、体内に投与される金属ナノ粒子に人体に害となる不純物がなく、粒子のサイズが極めて微細であり、粒子は体内で互いに凝集せずによく分散した状態を維持して尿により体外に容易に排出できる必要がある。
【0008】
前述したような金属ナノ粒子を製造する方法は、物理的方法、化学的方法、及び電気分解法の3つに大別される。
【0009】
前記物理的方法としては、真空又は低圧雰囲気中で金属を蒸発凝縮させる蒸発法、溶融金属を気体などの流体に飛散させるアトマイズ(atomize)法、気体や空気などの中で、金属間にアークを発生させる電気分散法などが挙げられるが、生産コストが高すぎて、生産性が極めて低いため、一般的に採用されていない。
【0010】
前記化学的方法としては、固体塩を融点未満の温度で、水素や一酸化炭素などにより還元するガス還元法、金属塩化物の蒸気を水素や一酸化炭素などにより還元する気相反応法、金属イオンを還元して金属を沈殿させる沈殿法などが挙げられる。しかし、この方法は、前述した物理的方法に比べて工業的規模の大量生産には好ましいが、プロセスが複雑で、不純物の混入を防ぐのが難しく、微粒子形成時の不均一な化学反応による粒子の不均一性及び粗大化が避けがたく、ほとんどの化学反応では、やむを得ず毒性のある原料を使用して製造するため、人体に副作用を与えることがあるので、化学的方法は医療用として使用するには適さない。
【0011】
一方、前記電気分解法では、金属電極を金属塩などが溶解している電解水溶液中に対向配置した後、直流、又は交流電流を加えることで、溶液中の金属イオンが還元されて金属ナノ粒子が析出するようにし、この堆積物を沈殿、濾過などにより分離し、次に乾燥して金属ナノ粒子を製造する。その例として、大韓民国特許出願公開公報第10−2004−105914号には直流法が、特開平4−157193号公報には交流法がそれぞれ開示されている。
【0012】
前述したような電気分解による金属ナノ粒子製造法は、物理的方法や化学的方法に比べると、不純物がなく、相対的に微細な粒子を得ることができるため、医療用に適用される金属ナノ粒子は一般的に電気分解法により製造され、粒子のコロイド溶液を得るために、金属ナノ粒子を純水やその他の溶液中に分散させて、そのコロイド溶液を注射、経口投与などの他の方法で体内に投与する。
【0013】
一方、電解水溶液内で還元された金属ナノ粒子は、サイズが非常に小さいため、粒子間に作用するファンデルワールス力を無視することができず、これにより、近くの粒子と接触して凝集しようとする傾向が非常に強く、一度凝集した粒子を分離することは非常に難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の電気分解による金属ナノ粒子製造法によれば、粒子の凝集を最小化して微細なサイズの粒子を得るために、超音波や攪拌器などにより電解水溶液を攪拌していたが、粒子間の相互作用による金属粒子の凝集を確実に防止することはできず、従って、従来法で調製された粒子のサイズが医療用として満たされない。さらに、調製された粒子を純水や薬液などの溶液に保管しておく場合、時間が経過するにつれて金属ナノ粒子が分子間引力により凝集することになる。
【0015】
さらに、沈殿及び乾燥プロセスに時間及びコストが多くかかる。このように製造された金属ナノ粒子の微細粉末を生体に投与するとき、純水やその他の溶液に溶解させ、コロイド溶液化しなければならないので、金属ナノ粒子コロイド溶液の製造コストも上昇させる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述したような従来の電気分解による金属ナノ粒子製造方式の問題を解決するためのものであり、本発明の目的は、製造プロセス中に、電解水溶液から析出した金属ナノ粒子が分子間引力により凝集することを防止することにより、コロイド溶液中に分散した金属ナノ粒子のサイズを最小化できると共に、生体に投与したり、長期間保管しても、金属ナノ粒子の凝集による粗大化が防止されて分散した状態を安定して維持できるようにする金属ナノ粒子のコロイド溶液の製造方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、沈殿及び乾燥プロセスを経ずに粒子の調製直後に人体に直接投与できる金属ナノ粒子コロイド溶液の製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、人体に投与したり、コロイド溶液化すると、粒子が凝集することなく安定した分散状態を維持できる金属ナノ粒子を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例3のようにポリソルベート20を添加して調製した金ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例6によって調製された白金ナノ粒子を透過電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例7によって調製された銀ナノ粒子粉末を走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
粒子間引力による電解水溶液中の金属ナノ粒子の凝集を防止するために、本発明者らは、電解水溶液中にポリソルベートを投入すると、析出したナノ粒子の外面がポリソルベートでコーティングされるから、金属ナノ粒子のイオン化及び堆積に悪影響を及ぼすことなく、引力による粒子の凝集を確実に防止することができることを発見した。
【0021】
一実施形態において、本発明は、一対の金属電極を金属塩が溶解している電解水溶液中に対向配置した後、攪拌手段により前記電解水溶液を攪拌しながら前記2つの電極に電流を印加することにより、溶液中の金属イオンが還元されて金属ナノ粒子が析出する金属ナノ粒子のコロイド溶液製造方法において、前記電解水溶液中にポリソルベートを添加して、電解水溶液中に析出する金属ナノ粒子の表面をコーティングすることにより、金属ナノ粒子の凝集を防止することを特徴とする方法を提供する。
【0022】
本発明方法によれば、前述したように、析出した金属ナノ粒子の表面がコーティングされるため、金属ナノ粒子のイオン化及び析出反応に悪影響を及ぼすことなく、分子間引力による金属ナノ粒子の凝集を確実に防止することができる。つまり、ポリソルベートが分散剤として作用し、それにより、約3nmのサイズの超微粒子を電解水溶液中で安定に維持することができ、長期間保管しても、金属ナノ粒子の凝集による粗大化が防止され、それにより粒子の分散状態を安定して維持することができる。
【0023】
粒子のサイズが極めて微細であるとともに、体内で凝集することなく分散している状態を維持できるので、体内に投与されると、薬理作用を効果的に発揮することができ、また、尿により体外に容易に排出することができる。
【0024】
本方法に使用されたポリソルベートとしては、ポリソルベート20、60、65、80のいずれか1つが挙げられる。電解水溶液中に添加されるポリソルベートの量は0.005重量%〜5重量%である。ポリソルベートの添加量が0.005重量%未満である場合、粒子のコーティングによる凝集防止の効果を十分に得ることができず、ポリソルベートの比率が所定値を上回る場合、金属ナノ粒子の凝集防止の効果がこれ以上増大せず、粒子のサイズがほぼ一定である。ポリソルベートを5重量%を上回って投与すると、溶液に泡が発生し、金属ナノ粒子の析出量が減少し、悪臭が発生して医療用として不適切になる。
【0025】
一般に、電気分解法で電解水溶液に堆積した金属ナノ粒子を沈殿、乾燥させることにより、それらを粉末状態で保管及び流通している。人体に投与するために、これを再び純水やその他の溶液に溶解させることが一般的である。この状況で、本発明者らは、金属ナノ粒子コロイド溶液は長期間保管してもナノ粒子が分散した状態を安定して維持することができ、電解水溶液を調製するために使用される金属塩が人体に無害であり、沈殿や乾燥などの煩雑なプロセスを経ずに、製造されたコロイド溶液自体を経口投与や注射により医療用として直接適用することができるという点に着目し、様々な金属塩に対して長期間の試験を行った。
【0026】
その結果、本発明者らは、金属塩としてクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム、アスコルビン酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩を適用すると、金属ナノ粒子の析出効率が向上するだけでなく、人体に無害な金属ナノ粒子コロイド溶液を製造できることを発見した。
【0027】
このように製造された金属ナノ粒子コロイド溶液は、人体に無害なアルカリ性金属塩が使用され、溶液内の金属ナノ粒子の凝集現象がほとんどないため、長期間保管しても安定したコロイド状態を維持することができるので、別途の沈殿や乾燥プロセスを経ずに経口投与や注射などにより医療用として直接適用できるという利点がある。
【0028】
しかし、運送や保管のためには金属ナノ粒子の液体状態よりは粉末状態がより好ましい場合がある。この場合、金属ナノ粒子の前述した長所、すなわち、凝集がなく、安定したコロイド状態を維持するという特性は、金属ナノ粒子を粉末化するための沈殿や遠心分離などのプロセスにはむしろ障害となり、粉末の金属ナノ粒子の調製が非常に困難である。
【0029】
以下、このような問題を解決する方法について説明する。
【0030】
コロイド溶液に分散した金属粒子は、一般的に表面電位を持つ。本発明により製造された金属ナノ粒子コロイド溶液内に分散した金属ナノ粒子の表面電位は、金は−23.1mV、白金は−16mV、銀は−16.5mVであった。すなわち、前述した本発明により製造されたコロイド溶液内の金属ナノ粒子は、マイナス(−)の表面電位を持つ。
【0031】
従って、コロイド溶液をプラス(+)化すると、分散していた粒子は互いに凝集して沈殿し、これを乾燥すると、優れた品質のナノ粒子を得ることができる。溶媒をプラス(+)化するために、水素イオン(H+)の濃度を高くすることが可能である。
【0032】
塩酸や硝酸などの無機酸でなく、金属と反応しない有機酸を投入した結果、溶媒の水素イオン濃度が高くなって、本発明により製造されたコロイド溶液内の金属ナノ粒子の沈殿を引き起こすことを確認することができた。沈殿物を濾過及び乾燥させることにより金属ナノ粒子粉末を形成することができた。
【0033】
この目的で使われる有機酸としては、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、安息香酸、グルタミン酸、グルコン酸、アルギン酸などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記方法で製造された金属ナノ粒子は、コーティングされた状態で互いに凝集して沈殿する。したがって、従来の方法で調製された金属ナノ粒子粉末とは異なり、前記方法により調製された金属ナノ粒子の粉末は、粒子間の結合力が相対的に弱い。これを溶解してコロイド溶液化すると、容易に微細粒子に分離して、微細粒子が分散した状態を安定して維持することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
実施例1
分散剤を添加した後、電極に交流を印加して製造した金属ナノ粒子の分散性を調べるために、水にクエン酸ナトリウムを溶解し、電解水溶液を用意した。用意した電解水溶液に、それぞれ異なる分散剤を投与した。すなわち、ポリソルベート20、60、65、80、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムをそれぞれ0.01%ずつ投与して6種類の電解水溶液を用意した。それぞれの電解水溶液に一対の金(Au)電極を浸した後、溶液を攪拌しながらイオン化エネルギーを上回る電圧である10Vを20時間印加して金属ナノ粒子を製造した。電気分解時に発生する熱による電解水溶液の過度な温度上昇を防止するために、水溶液内に冷却管を設置して90℃未満に温度を維持した。
【0037】
実施例2
電極に交流を印加して金属ナノ粒子を製造した後、分散剤を添加した場合の分散性を調べるために、水にクエン酸ナトリウムを溶解させた6種類の電解水溶液を用意した。それぞれの電解水溶液に一対の金(Au)電極を浸した後、溶液を攪拌しながらイオン化エネルギーを上回る電圧である10Vを20時間印加して金属ナノ粒子を製造した。製造された6つのナノ粒子コロイド溶液に、それぞれ異なる分散剤を投与した。すなわち、ポリソルベート20、60、65、80、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムをそれぞれ0.01%ずつ投与した。電気分解時に発生する熱による電解水溶液の過度な温度上昇を防止するために、電解水溶液内に冷却管を設置して90℃未満に温度を維持した。
【0038】
表1は、実施例1、2により製造された金ナノ粒子のコロイド溶液の特性を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
上記表によると、ポリソルベート系分散剤を添加した後に電圧を印加して金属ナノ粒子の析出が行われた場合、最も優れた品質のコロイド溶液を得ることができた。粒子のサイズも3nm未満と非常に微細で、分散性に優れたものであり、その色も、5nm未満の金粒子の有する紫色であった。
【0041】
しかし、カルボキシメチルセルロース及びポリアクリル酸ナトリウムは、分散剤の役割が果たせないことが観察された。調製した粒子が沈殿し、色は黒であった。これはカルボキシメチルセルロース及びポリアクリル酸ナトリウムが、電場下でクエン酸ナトリウムと反応して第3の物質が合成されたものであると推察される。
【0042】
実施例2のように、金属ナノ粒子の析出が行われた後に分散剤を添加した実施例2では、若干の分散性が維持されるが、堆積中に粒子サイズが成長した。粒子の平均サイズが15〜25nmであり、これは、析出した粒子が分散剤がない条件で互いに衝突して、粒子間の引力により凝集して、粒子サイズの成長が起こったと解釈することができる。
【0043】
実施例3
分散剤添加量に応じた分散性の変化を調べるために、クエン酸ナトリウムを溶解させた電解水溶液に添加するポリソルベート量を0.005〜5%の範囲で変化させ、金を電極として使用し、析出中に電解水溶液を攪拌しながら電解水溶液の温度を90℃未満に維持して、20Vの交流を印加して金ナノ粒子のコロイド溶液を製造した。
【0044】
表2は、分散剤の種類と分散剤添加量の変化による金コロイドの平均粒子サイズを示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示すように、分散剤添加量が増加するにつれて、製造される金粒子のサイズが小さくなる。0.005重量%の分散剤を添加した場合、粒子のサイズは4.2〜5.6nmであった。0.1重量%以上の分散剤を添加した場合、粒子のサイズがほぼ一定であった。5重量%の分散剤を添加した場合、粒子のサイズは0.78〜1.75nmであった。しかし、ポリソルベートを5重量%を上回って投入すると、溶液が発泡し、金属ナノ粒子の析出量が減少し、悪臭が発生し、粒子を医療用として不適切にする。
【0047】
従って、0.005重量%〜5重量%の分散剤を添加することが好ましい。
【0048】
図1は、実施例3のようにポリソルベート20を0.01重量%添加して製造した金ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【0049】
実施例4
電解質の温度変化に応じた金属ナノ粒子の分散性とサイズを調べるために、温度を80〜100℃に変化させながら、金ナノ粒子のコロイド溶液を製造した。その際、電解水溶液内に冷却コイルを設置して、冷却水の流量を調節して温度を制御した。分散剤としてはポリソルベート20を0.1重量%添加し、析出中に電解水溶液を攪拌しながら20Vの交流を20時間印加した。
【0050】
表3は、温度の変化に応じた金ナノ粒子のサイズと分散性を示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3に示すように、電解水溶液の温度が高くなるにつれて粒子サイズが大きくなった。これは、温度上昇によって溶液内に分散している粒子の移動速度が増加することによって、粒子間の衝突頻度が高くなり、粒子のサイズが増大したからであると思われる。また、粒子の衝突頻度の増加により、100℃の温度では若干の沈殿が発生した。
【0053】
実施例5
実施例4の結果に基づいて決定した分散剤添加量と温度の条件を用いて、金電極に直流を印加して、分散性を安定して維持できるか否かを決定するために金属ナノ粒子コロイド溶液を製造した。水にクエン酸ナトリウムを溶解させてポリソルベート20、60、65、80のそれぞれを異なる電解水溶液に0.01%添加した。一対の金電極をそれぞれの電解水溶液に浸し、温度を95℃に維持して20Vの直流を20時間印加することにより金ナノ粒子のコロイド溶液を製造した。
【0054】
表4は、直流を印加して製造した金ナノ粒子コロイドのサイズ及びコロイド溶液の分散性を示す。
【0055】
【表4】

【0056】
表4は、実施例5によって製造されたコロイド溶液の平均粒子サイズと分散性を示す。この実施例では、交流を印加して製造したものよりは約1nm程度粒子のサイズが大きいが、分散性と色は良好であるため、直流の条件でもナノ粒子コロイドを製造することができるということが分かった。
【0057】
実施例6
実施例4の結果に基づいて決定した分散剤添加量と温度を用いて、白金ナノ粒子コロイド溶液を製造した。水にクエン酸ナトリウムを溶解させた後、ポリソルベート20を0.01%添加し、一対の白金電極を浸した後、温度は95℃に維持して20Vの交流を20時間印加することにより、白金ナノ粒子のコロイド溶液を製造した。
【0058】
図2は、実施例6によって製造された白金ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。製造された粒子のサイズは、ほぼ2nmであり、これは、ポリソルベート20によって粒子が溶液に上手く分散していることを示す。従って、白金ナノ粒子の製造にも前記分散条件が適している。
【0059】
また、金属電極として、一対の金/白金電極を設置して実験した結果、金及び白金が同時に分散しているコロイド溶液が製造された。
【0060】
実施例7
銀ナノ粒子を得るために、電解水溶液にクエン酸ナトリウムを溶解させた後、ポリソルベート20を0.01%添加した。2つの銀電極を溶液中に浸して、温度は95℃を維持して、20Vの直流を20時間印加し、銀ナノ粒子の溶液を製造した。製造された銀ナノ粒子コロイド溶液にクエン酸1%を添加してpHを3に調節した。クエン酸が添加されたコロイド溶液は、直ちに沈殿し、24時間後は粒子が完全に沈殿した。このスラリー状の銀粒子を濾過して乾燥器で乾燥させることにより銀ナノ粒子粉末を得ることができた。
【0061】
図3は、実施例7によって製造された銀ナノ粒子粉末を走査電子顕微鏡で観察した写真である。40nmサイズの非常に均一なサイズの銀粒子が観察される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明の方法は、ナノ粒子が溶液中で安定して分散性を維持することができる、金属ナノ粒子コロイド溶液の製造方法を提供する。コロイド溶液を長期間保管しても、金属ナノ粒子の凝集による粗大化が防止されるため、コロイド溶液は分散した状態を安定して維持できる。さらに、本コロイド溶液は別途の沈殿や乾燥プロセスを経ずに経口投与や注射などによる医薬として、生体に直接投与できる。
【0063】
また、本発明により製造された金属ナノ粒子の粉末は、従来法により製造された金属ナノ粒子粉末とは異なり、ナノ粒子がコーティングされた状態で互いに凝集して沈殿したものであるため、粒子間の結合力が相対的に弱い。この粉末を溶解させてコロイド溶液化すると、溶液内で容易に微細粒子に分離して分散した状態を安定して維持することができる。
【0064】
以上の説明において、金属ナノ粒子の医薬用としての適用を重点的に説明してきたが、本発明の特徴や利点は医薬としての金属ナノ粒子の適用に限定されるものではないことは当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩が溶解している電解水溶液中に一対の金属電極を対向配置し、攪拌手段により前記電解水溶液を攪拌しながら前記2つの電極に電流を印加することにより、溶液中の金属イオンを還元して金属ナノ粒子を析出させる、金属ナノ粒子のコロイド溶液の製造方法であって、
前記電解水溶液中にポリソルベートを添加して、その電解水溶液から析出する金属ナノ粒子の表面をコーティングすることにより、金属ナノ粒子の凝集を防止することを特徴とする金属ナノ粒子のコロイド溶液の製造方法。
【請求項2】
ポリソルベート20、60、65、及び80からなる群から選択されるいずれか1つ以上のポリソルベートを、0.005重量%〜5重量%の量で添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電解水溶液に溶解している前記金属塩は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム、及びアスコルビン酸ナトリウムからなる群から選択されるいずれか1つ以上のアルカリ金属塩を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法により調製された金属ナノ粒子のコロイド溶液に有機酸を添加することにより、粒子を沈殿させて、沈殿物を濾過及び乾燥させることにより調製されることを特徴とする金属ナノ粒子の粉末。
【請求項5】
クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、グルコン酸、及びアルギン酸からなる群から選択された1つ以上の有機酸が添加されることを特徴とする請求項4に記載の金属ナノ粒子の粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−521585(P2010−521585A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553505(P2009−553505)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000892
【国際公開番号】WO2008/111735
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(509257776)
【Fターム(参考)】