説明

金属ベルト式無段変速機

【課題】 金属ベルト式無段変速機において、プーリV面傾斜角度を適切に設定することで、金属ベルトの耐久性を確保しながら伝達効率を向上させる。
【解決手段】 金属ベルト式無段変速機において、金属ベルトがプーリV面に巻き付く部分の軌道の半径が幾何学的速度比の理論軌道の半径に対して変化したとき、その最大半径と最小半径との差である最大軌道ずれ量が最小となるように、プーリV面傾斜角度αを8.8°以上11.0°未満の範囲に設定するので、プーリの両半体が非平行になって金属ベルトの軌道が理論軌道からずれる度合いを最小限に抑えることができ、これによりプーリV面に対して金属エレメントが強く擦れてエネルギー損失が発生するのを抑制し、金属ベルト式無段変速機の伝達効率を高めることができる。しかもV面傾斜角度αが従来の一般的な値である11°よりも小さくなり、従来に比べて金属ベルトの耐久性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブシャフトに支持したドライブプーリのプーリV面とドリブンシャフトに支持したドリブンプーリのプーリV面とに、金属リング集合体に多数の金属エレメントを支持した金属ベルトを巻き掛け、前記ドライブプーリおよび前記ドリブンプーリの溝幅を変化させて変速を行う金属ベルト式無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる金属ベルト式無段変速機において、金属エレメントに当接するプーリV面のプーリV面傾斜角度αは、プーリ回転面(回転軸に直交する平面)に対してプーリV面が成す角度として定義される(図1参照)。
【0003】
かかる金属ベルト式無段変速機において、プーリV面と金属エレメントとの間の静摩擦係数をμsとし、動摩擦係数をμaとしたとき、プーリV面傾斜角度αを、tan-1μa<α<tan-1μsを満たす範囲であって、かつ金属ベルト式無段変速機の伝達効率ηの低下が実用上支障のない範囲に設定するものが、下記特許文献1により公知である。
【0004】
また、かかる金属ベルト式無段変速機において、Nxをプーリの軸線方向の荷重とし、Rをプーリに巻き掛けられた金属ベルトの円弧の半径とし、λをプーリV面傾斜角度としたとき、最大加速比状態の4300rpmの入力回転速度における最大伝達可能トルクTと、有効摩擦係数μtanとの関係が、μtan=(T・cosλ)/(Nx・2・R)であり、プーリV面傾斜角度λが11°(0.19rad)よりも小さいときに、有効摩擦係数μtanを、rad単位のプーリV面傾斜角度λの0.7367倍の値の10%の公差内にあり、かつ0.06よりも大きく設定することで、金属ベルトの耐久性向上を図るものが、下記特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3660047号公報
【特許文献2】特許第3453437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1,2の何れに記載されたものも、プーリと金属エレメントとの間の摩擦係数と、プーリV面傾斜角度と、最大伝達可能トルクとの関係を開示するのみであり、プーリV面傾斜角度を変化させたときの伝達効率の変化についての考察がなされておらず、プーリV面傾斜角度を適切に設定することで伝達効率を向上させる余地を残していた。
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、金属ベルト式無段変速機において、プーリV面傾斜角度を適切に設定することで、金属ベルトの耐久性を確保しながら伝達効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、ドライブシャフトに支持したドライブプーリのプーリV面とドリブンシャフトに支持したドリブンプーリのプーリV面とに、金属リング集合体に多数の金属エレメントを支持した金属ベルトを巻き掛け、前記ドライブプーリおよび前記ドリブンプーリの溝幅を変化させて変速を行う金属ベルト式無段変速機において、前記金属ベルトが前記プーリV面に巻き付く部分の軌道の半径が幾何学的速度比の理論軌道の半径に対して変化したとき、その最大半径と最小半径との差である最大軌道ずれ量が最小となるようにプーリV面傾斜角度を設定することを特徴とする金属ベルト式無段変速機が提案される。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記最大軌道ずれ量は、最大車速が得られる変速比ないし最小変速比における値であることを特徴とする金属ベルト式無段変速機が提案される。
【0010】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、プーリV面傾斜角度は、8.8°以上11.0°未満であることを特徴とする金属ベルト式無段変速機が提案される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の構成によれば、金属ベルト式無段変速機において、金属ベルトがプーリV面に巻き付く部分の軌道の半径が幾何学的速度比の理論軌道の半径に対して変化したとき、その最大半径と最小半径との差である最大軌道ずれ量が最小となるようにプーリV面傾斜角度を設定するので、プーリの両半体が非平行になって金属ベルトの軌道が理論軌道からずれる度合いを最小限に抑えることができ、これによりプーリV面に対して金属エレメントが強く擦れてエネルギー損失が発生するのを抑制し、金属ベルト式無段変速機の伝達効率を高めることができる。
【0012】
また請求項2の構成によれば、最大軌道ずれ量を最大車速が得られる変速比(TOP)ないし最小変速比(OD)における値としたので、車両の走行中に最も使用頻度が高い変速比の領域で伝達効率を高めることができる。
【0013】
また請求項3の構成によれば、プーリV面傾斜角度を8.8°以上11.0°未満としたので、V面傾斜角度が従来の一般的な値である11°よりも小さくなり、従来に比べて金属ベルトの耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】金属ベルト式無段変速機の縦断面図。
【図2】プーリ半体の傾斜と金属ベルトの軌道との関係を示す模式図。
【図3】プーリV面傾斜角度と金属ベルトの耐久性との関係を示すグラフ。
【図4】金属ベルトの巻き付き角度と金属ベルトの軌道の半径との関係を示すグラフ。
【図5】V面傾斜角度と最大軌道ずれ量との関係を各入力トルクについて示すグラフ。
【図6】図5のグラフの要部拡大図。
【図7】V面傾斜角度と伝達効率差との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1に示すように、エンジンEおよび電動モータMを駆動源とするハイブリッド車両用の金属ベルト式無段変速機Tのミッションケース11は、右ミッションケース12と、右ミッションケース12の左側面にボルト13…で結合された左ミッションケース14と、左ミッションケース14の左側面に隔壁15を挟んでボルト16…で結合されたミッションケースカバー17とを備える。
【0017】
左ミッションケース14および隔壁15にそれぞれ設けたボールベアリング18,19によってドライブシャフト20が支持されるとともに、インプットシャフト10が間接的に支持され、左ミッションケース14および隔壁15にそれぞれ設けたローラベアリング21およびボールベアリング22によってドリブンシャフト23が支持され、右ミッションケース12および左ミッションケース14にそれぞれ設けたボールベアリング24,25によってリダクションシャフト26が支持され、右ミッションケース12および左ミッションケース14にそれぞれ設けたボールベアリング27,28によってディファレンシャルギヤ29が支持される。
【0018】
電動モータMは、径方向外側に位置するステータ30と、径方向内側に位置するロータ31とを備えており、ステータ30はボルト32…でモータハウジング33に固定され、ロータ31はエンジンEのクランクシャフト34に結合されるとともに、フライホイール35を介して右ミッションケース12から右側に突出するインプットシャフト10の右端にスプライン結合される。
【0019】
インプットシャフト10の左端にプラネタリギヤ式の正逆転切換機構41が配置され、この正逆転切換機構41により、インプットシャフト10の外周に支持されたドライブシャフト20が、該インプットシャフト10に正転可能あるいは逆転可能に結合される。ドライブシャフト20にはドライブプーリ42が設けられている。ドリブンシャフト23にはドリブンプーリ43が設けられており、ドライブプーリ42およびドリブンプーリ43が金属ベルト44で接続される。またドリブンシャフト23の右端には湿式多板型の発進クラッチ45が設けられており、ドリブンシャフト23に相対回転自在に支持した第1リダクションギヤ46が該ドリブンシャフト23に結合あるいは結合解除される。
【0020】
リダクションシャフト26には、前記第1リダクションギヤ46に噛合する第2リダクションギヤ47と、ファイナルドライブギヤ48とが設けられており、ファイナルドライブギヤ48はディファレンシャルギヤ29のファイナルドリブンギヤ49に噛合する。ディファレンシャルギヤ29から右ミッションケース12および左ミッションケース14を貫通して左右に延出する車軸50,50に図示せぬ駆動輪が接続される。
【0021】
従って、エンジンEの駆動力は、クランクシャフト34→電動モータMのロータ31→フライホイール35→インプットシャフト10→正逆転切換機構41→ドライブシャフト20→ドライブプーリ42→金属ベルト44→ドリブンプーリ43→ドリブンシャフト23→係合した発進クラッチ45→第1リダクションギヤ46→第2リダクションギヤ47→リダクションシャフト26→ファイナルドライブギヤ48→ファイナルドリブンギヤ49→ディファレンシャルギヤ29→車軸50,50の経路で駆動輪に伝達される。また電動モータMを駆動すると、その駆動力がロータ31からフライホイール35を介してインプットシャフト10に入力される。
【0022】
その間、金属ベルト44が巻き掛けられたドライブプーリ42およびドリブンプーリ43の有効径を油圧制御で変化させることで、金属ベルト式無段変速機Tの変速比を無段階に制御することができる。この金属ベルト式無段変速機Tの変速比の制御は周知技術であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0023】
図2はドライブシャフト20に支持されたドライブプーリ42を模式的に示すものである。金属ベルト44は、多数の金属エレメント51…を、複数枚の金属リングを積層してなる一対の金属リング集合体52,52に支持して構成されるもので、各金属エレメント51のプーリ当接面Pe,Peがドライブプーリ42の固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bのプーリV面Pp,Ppに当接する。
【0024】
ドライブプーリ42の固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bは、本来はドライブシャフト20に対して直交する方向に配置されるものであるが、固定側プーリ半体42aに対して可動側プーリ半体42bが油圧で押し付けられたとき、金属ベルト44が巻き付いている部分は溝幅が減少し難いのに対し、金属ベルト44が巻き付いていない部分は溝幅が減少し易いため、ドライブシャフト20が僅かに撓んで固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bは非平行に傾斜する。
【0025】
仮に、ドライブプーリ42の固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bが平行であると仮定すると、各金属エレメント51のプーリ当接面Pe,Peが固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bのプーリV面Pp,Ppに当接する部分の軌道半径は一定値のR0(幾何学的速度比の理論軌道の半径)となるはずである。しかしながら、実際には、ドライブシャフト20の撓みによって固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bが非平行になるため、金属ベルト44がプーリV面Pp,Ppに噛み込む部分(あるいは、プーリV面Pp,Ppから離脱する部分)において、固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bの溝幅は比較的に小さいW1となり、金属エレメント51が半径R0の理論軌道の外側に押し出されることで、その軌道半径は最大値のR1まで増加する。逆に、金属ベルト44がプーリV面Pp,Ppに噛み込む部分とプーリV面Pp,Ppから離脱する部分との間の中間位置において、固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bの溝幅は比較的に大きいW2となり、金属エレメント51が半径R0の理論軌道の内側に引き込まれることで、その軌道半径は最小値のR2まで減少する。
【0026】
ところで、固定側プーリ半体42a,43aおよび可動側プーリ半体42b,43bが相互に平行であるとき、金属ベルト式無段変速機Tの変速比はドライブプーリ42およびドリブンプーリ43の溝幅により一義的に決定される。幾何学的速度比の理論軌道とは、固定側プーリ半体42a,43aおよび可動側プーリ半体42b,43bが相互に平行であって所定の溝幅を有するときの、金属ベルト44がプーリV面Pp,Ppに係合する部分の軌道として定義される。理論軌道は正確な円弧であり、その半径はR0とされる。
【0027】
図2において、白矢印は、各金属エレメント51のプーリ当接面Pe,Peと固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bのプーリV面Pp,Ppとの当接部が、理論軌道の外側にずれる状態を示している。また黒矢印は、前記当接部が理論軌道の内側にずれる状態を示している。このように、プーリ当接面Pe,PeおよびプーリV面Pp,Ppの当接部が理論軌道に対して外側あるいは内側にずれると、プーリ当接面Pe,PeおよびプーリV面Pp,Ppの当接部に大きな摩擦力が作用して金属ベルト式無段変速機Tの伝達効率が低下する問題がある。
【0028】
その理由は、金属ベルト44がドライブプーリ42に巻き付く部分で金属エレメント51…の軌道が径方向に変化すると、軌道の半径が小さい部分のプーリV面Pp,Ppの周速は小さくなり、軌道の半径が大きい部分のプーリV面Pp,Ppの周速は大きくなるのにも関わらず、金属エレメント51…の移動速度は金属ベルト44の移動速度と同じ一定速度であるため、プーリ当接面Pe,PeがプーリV面Pp,Ppに対して強く擦れ合ってエネルギー損失が発生するためと考えられる。
【0029】
本願発明は、固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bのプーリV面Pp,Ppがドライブシャフト20に直交する平面に対して成す角度(以下、プーリV面傾斜角度αという:図1参照)を適切に設定することで、固定側プーリ半体42aおよび可動側プーリ半体42bを可及的に平行状態に維持してベルト式無段変速機Tの伝達効率を高めるものである。
【0030】
図3はプーリV面傾斜角度αと金属ベルト44の耐久性との関係を示すグラフであり、プーリV面傾斜角度αを小さくするほど金属ベルト44の耐久性が向上することがわかる。但し、プーリV面Pp,Ppおよびプーリ当接面Pe,Pe間の摩擦係数と、プーリV面傾斜角度αと、最大伝達トルクとから最適のプーリV面傾斜角度αを決定する従来の手法では、金属ベルト44の耐久性を高めることは可能であっても、必ずしも金属ベルト式無段変速機Tの伝達効率を高めることはできなかった。
【0031】
次に、金属ベルト式無段変速機Tの最大の伝達効率が得られるプーリV面傾斜角度αを設定する手法を説明する。
【0032】
図4はドライブプーリ42に対する金属ベルト44の巻き付き角(プーリ入口で0°、プーリ出口で210°)の各位置における、金属ベルト44の理論軌道に対する実軌道のずれ量を示すものである。プーリ入口では実軌道の半径は最大軌道半径R1であって理論軌道半径R0に対してプラス側にずれており、そこから実軌道の半径は次第に減少して理論軌道の半径R0をマイナス側へと下回り、最小軌道半径R2となる。その後に実軌道の半径は最小軌道半径R2から次第に増加して理論軌道の半径R0を上回り、プーリ出口において実軌道の半径は最大軌道半径R1となる。
【0033】
理論軌道半径R0に対する最大軌道半径R1のずれ量(絶対値)をG1とし、理論軌道半径R0に対する最小軌道半径R2のずれ量(絶対値)をG2としたとき、最大軌道ずれ量Gは、G=G1+G2により定義される。
【0034】
図5はV面傾斜角度αに対する最大軌道ずれ量Gの変化を、金属ベルト式無段変速機Tの入力トルクTin毎に示すものである。何れの入力トルクTinにおいても、V面傾斜角度αが9°のときに最大軌道ずれ量Gが最小になっていることがわかる。9°というV面傾斜角度αは、基準となる従来の一般的なV面傾斜角度αである11°よりも小さい値であり、V面傾斜角度α=11°のものに比べて金属ベルト44の耐久性は向上する(図3参照)。そして最大軌道ずれ量Gが最小になるということは、ドライブプーリ42に巻き付く部分での金属エレメント51…の軌道が理論軌道に近づくことを意味しており、これによりプーリ当接面Pe,PeがプーリV面Pp,Ppに対して強く擦れ合うことによるエネルギー損失を最小限に抑え、一般的なV面傾斜角度αである11°を含む他のV面傾斜角度αを採用する場合に比べて、金属ベルト式無段変速機Tの伝達効率を高めることができる。
【0035】
図6は図5の一部(V面傾斜角度α=8°〜11°の部分)を拡大して示すもので、入力トルクTinが98Nmの場合には、V面傾斜角度αが8.4°以上11.0°未満の範囲で、その最大軌道ずれ量Gが基準となるV面傾斜角度α=11°の場合の最大軌道ずれ量Gよりも小さくなり、金属ベルト式無段変速機Tの伝達効率向上が可能になる。また入力トルクTinが128Nmあるいは147Nmの場合には、共にV面傾斜角度αが8.4°以上11.0°未満の範囲で、その最大軌道ずれ量Gが基準となるV面傾斜角度α=11°の場合の最大軌道ずれ量Gよりも小さくなり、金属ベルト式無段変速機Tの伝達効率の向上が可能になる。
【0036】
よって、V面傾斜角度αを8.4°以上11.0°未満の範囲に設定することにより、入力トルクTinの値に関わらずに、最大軌道ずれ量Gを従来よりも小さく抑えて金属ベルト式無段変速機Tの伝達効率を高めることができる。
【0037】
図7はV面傾斜角度αに対する伝達効率差を金属ベルト式無段変速機Tの各変速比について示すものである。変速比がLOW(ロー)、MID(ミディアム)、TOP(トップ)およびOD(オーバドライブ)の何れの場合にも、V面傾斜角度α=9°のときに伝達効率が最大になっている。V面傾斜角度αが9°を上回る領域では、TOPおよびMIDでの伝達効率が最大になり、LOWおよびODでの伝達効率は殆ど一致している。またV面傾斜角度αが9°を下回る領域では、ODでの伝達効率が最大になり、TOP、LOWおよびMIDに向けて伝達効率は次第に低下している。
【0038】
従って、車両の運転中に最も使用する頻度が高いTOPからODの変速比において最大軌道ずれ量Gが最小になるようにV面傾斜角度αを決定しても、その値は9°となる。そしてV面傾斜角度αを9°に設定すれば、全ての変速比領域で最大の伝達効率を得ることができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0040】
例えば、実施の形態では主としてドライブシャフト20に支持したドライブプーリ42について説明したが、本発明はドリブンシャフト23に支持したドリブンプーリ43に対しても同様に適用可能である。
【0041】
また図1に示す金属ベルト式無段変速機Tの構造は一例にすぎず、本発明は任意の構造の金属ベルト式無段変速機Tに対して適用することができる。
【0042】
また金属ベルト44の構造も実施の形態の2本の金属リング集合体52に多数の金属エレメント51…を支持したものに限定されず、1本の金属リング集合体52に多数の金属エレメント51…を支持したものであっても良い。
【符号の説明】
【0043】
20 ドライブシャフト
23 ドリブンシャフト
42 ドライブプーリ
43 ドリブンプーリ
44 金属ベルト
51 金属エレメント
52 金属リング集合体
G 最大軌道ずれ量
Pp プーリV面
R0 幾何学的速度比の理論軌道の半径
R1 軌道の最大半径
R2 軌道の最小半径
α プーリV面傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブシャフト(20)に支持したドライブプーリ(42)のプーリV面(Pp)とドリブンシャフト(23)に支持したドリブンプーリ(43)のプーリV面(Pp)とに、金属リング集合体(52)に多数の金属エレメント(51)を支持した金属ベルト(44)を巻き掛け、前記ドライブプーリ(42)および前記ドリブンプーリ(43)の溝幅を変化させて変速を行う金属ベルト式無段変速機において、
前記金属ベルト(44)が前記プーリV面(Pp)に巻き付く部分の軌道の半径が幾何学的速度比の理論軌道の半径(R0)に対して変化したとき、その最大半径(R1)と最小半径(R2)との差である最大軌道ずれ量(G)が最小となるようにプーリV面傾斜角度(α)を設定することを特徴とする金属ベルト式無段変速機。
【請求項2】
前記最大軌道ずれ量(G)は、最大車速が得られる変速比ないし最小変速比における値であることを特徴とする、請求項1に記載の金属ベルト式無段変速機。
【請求項3】
プーリV面傾斜角度(α)は、8.8°以上11.0°未満であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の金属ベルト式無段変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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