説明

金属光沢を有する有機着色料

【課題】溶液から膜を形成した際にも金属光沢を発現出来る、新規の金属光沢を有する有機着色料を提供することを目的とする。
【解決手段】式(1)で表わされる化合物(式中A,R,R,Rは特定の基を表わす)および、それを用いた保管時の安定性等に優れた新規金属光沢膜形成材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機着色料に関し、特に金属光沢を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
金属光沢を有する着色料は種々の用途に用いられており、その用途の一つとして例えばボールペン用インキ(例えば下記特許文献1参照)、マーキングペン用インキ(例えば下記特許文献2参照)などがある。そしてこれらはいずれの場合も金属粉や顔料を有機溶媒あるいは水溶液に分散させることで実現されており、その分散安定性を付与するために種々の技術が用いられている(例えば下記特許文献3参照)。
【0003】
金属光沢をより艶やかにするためには金属粉を用いることが好ましいが、金属粉を用いた場合、金属粉が時間の経過とともに腐食し、ガスを発生させてしまうため、その防止のためアルギニンを添加する技術がある(例えば下記特許文献4参照)。
【0004】
しかしながら、金属粉としては真鍮やアルミニウム等が用いられており、これらを用いている以上、保管時及び印字物として紙などの媒体に固着させた後(使用後)のいずれにおいてもその変質を完全に防ぐことは極めて困難である。なお変質の例としては保管時の沈降・凝集・変色などの経時変化があり、更には使用後線切れやインキ詰まりという問題もある。
【0005】
そこで、上記問題解決のために本発明者らは金属光沢を有する皮膜を形成しうる有機着色料としてトリフェニルアミン誘導体あるいはトリハロゲン置換ベンゼン誘導体から調整される有機着色料を提案している(特許文献5参照)。
【0006】
【特許文献1】特公平5−43758号公報
【特許文献2】特開平9−132747号公報
【特許文献3】再公表98/26014号公報
【特許文献4】特開2000−309740号公報
【特許文献5】特開2004−315545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、上記特許文献5では金属粉などを用いることが無く、腐食による着色料の変質のおそれが極めて少ない。しかしながら、上記特許文献5においては、色相が着色料の構造によって規定されてしまうため、暗紫色の単一色程度しか実現できないという課題がある。また、この着色料の原料となるトリフェニルアミン誘導体あるいはトリハロゲン置換ベンゼン誘導体に分子修飾を促して色相を調整することは困難であり、さらにこれらの誘導体は比較的高価であり、着色料の合成反応も収率が高いものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決し、保管時及び使用後における着色料の変質が極めて少なく、色相の調整が容易である有機着色料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る有機着色料は、下記一般式[1]で表されるものとする。
【化1】

(式中、Aは置換基を有してもよい芳香環残基、置換基を有してもよい複素環残基、置換基を有してもよい縮合多環残基、置換基を有してもよい脂環残基、置換基を有してもよい脂肪族残基、置換基を有してもよいスピロ環残基、置換基を有してもよいビフェニル残基、置換基を有してもよいフルオレン残基、又は、置換基を有してもよいトリフェニルアミン残基を表し、
Xは置換基を有してもよい芳香環残基、又は、置換基を有してもよい複素環残基を表し、
1、R2はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよい芳香環残基、置換基を有してもよい複素環残基、置換基を有してもよいアルキル残基、置換基を有してもよいアルケニル残基、又は、置換基を有してもよいシクロアルキル残基を表し、
は下記一般式[2]で表される基であり、
【化2】

とRは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよい芳香環基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、若しくは置換基を有してもよいシクロアルキル基を、又は、R4とR5が一体となって置換基を有していてもよいアルキニレン基を表す。
nは1以上の整数を表し、nが2以上の場合はnでくくられている括弧の中のそれぞれのX、ならびにそれぞれのR1、R2、R3はそれぞれ互いに同じでも異なってもよく、
mは0以上の整数を表し、m=0のときは、単に結合を表す。)
【0010】
上記に記載の着色料は、フェニルアミン誘導体とアミノ基に対して反応活性な置換基を持つ化合物から容易に調製することができ、光・熱などに対して安定であり、種々の置換基の導入も可能なため分子修飾を容易に行なうことができ、トリフェニルアミン誘導体あるいはトリハロゲン置換ベンゼン誘導体に分子修飾を促して色相を調整することがきわめて容易になる。
【0011】
ここで上記一般式[1]において「芳香族環残基」とは特段に限定されるわけではないが、例えばベンゼン環、ナフタレン環等の炭素数6〜30で構成される化合物群をいい、「複素環残基」とは、例えばピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、カルバゾール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環等の炭素数2〜30で構成される化合物群をいい、また「縮合多環残基」とは上記の芳香族残基又は複素環残基に更に芳香族環あるいは複素環が1辺以上を共有して縮合した化合物をいう。また「脂環残基」とはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和環状炭素化合物誘導体をいい、環の一部が不飽和状態であるものも含まれる。また「スピロ環残基」とは構造の一部にスピロ原子を含む化合物をいい、「ビフェニル残基」とは上記定義の芳香環残基二つ以上が単結合で結合した化合物をいい、「フルオレン残基」とは構造の一部にフルオレン環を含む化合物をいい、「トリフェニルアミン残基」とは構造の一部にトリフェニルアミン構造を含む化合物をいう。
【0012】
また上記一般式[1]における「置換基」としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、スルホンアミド基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、シリル基、カルボキシル基、ホスホリル基、ホスホニル基、スルホニル基、スルホン酸基、ヒドロキシ基、チオール基、又はヒドロキサム酸基などが例示できるが、これら単独又は2以上が結合されたものも含まれる。また、この場合において置換基同士が結合して環を形成しても良く、用途に応じてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、4級アンモニウムなどと塩を形成しても良い。
【0013】
また上記一般式[1]における「n」は1以上の整数を表し、一般的には1〜4の整数を表す。nが2以上の場合は、nの括弧でくくられている部分の構造は同じでも異なっていてもよい。mは0以上の整数を表し、mが0の場合は単なる結合を表す。
【0014】
この化合物は、例えばジフェニルアミンのようなジアミン骨格を有する化合物を溶解した溶媒単独又は混合物(例えばジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、キシレン)中でテトラシアノエチレンと0〜140℃、好ましくは10〜80℃で反応させ、フェニル基にトリシアノエテニル基を導入した後、ジアミンの水素に対して反応活性な基を有する化合物を反応させて、抽出、洗浄、カラム分離精製等の処理を行うことで容易に調整することができる。なおジアミン骨格を有する化合物を先にジアミンの水素に対して反応活性な基を有する化合物を反応させて基本となる骨格を形成した後に、テトラシアノエチレンと反応させて調整することもできる。
【0015】
ここで「基本となる骨格」とは、上記一般式[1]の構造の一部を有する置換基を有してもよい芳香環残基、置換基を有してもよい複素環残基、置換基を有してもよい縮合多環残基、置換基を有して脂環残基、置換基を有してもよいスピロ環残基、置換基を有してもよいビフェニル残基、置換基を有してもよいフルオレン残基、又は置換基を有してもよいトリフェニルアミン残基と、置換基を有しても良いアリールアミノ基を、アルキル鎖を介して結合した骨格をいい、好ましくは求電子置換がしやすい置換位置を有する化合物が適しているが、反応条件等を調整することで反応する化合物対象は広い。
【0016】
特段限定されるわけではないが、本発明に係る有機着色料を用いる態様のうち代表的なものとしては、この化合物をトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルフォルムアミド等の有機溶剤に溶解し、そのままキャスト、ディップ、スピンコート等の手法で塗工する態様、更にバインダー成分を混合して被塗工物に付着させる皮膜形成材料としての態様がある。ここで用いられるバインダー成分としては、一般的な塗料に用いられるアルキドメラミン樹脂、アクリルメラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等、印刷インキ用に用いられる変性フェノール樹脂、石油系樹脂等、ボールペンインキ用キサンタンガム、石油樹脂等が該当するが、被塗工物や使用形態によっては溶剤可溶の樹脂を1種または数種の組み合わせて用いることも可能である。
【0017】
更に、本発明に係る有機着色料を、溶剤に不溶であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂にヘンシェルミキサー等の混合装置および2軸押し出し機等の分散装置で分散させた後粉砕し、又は、熱硬化性樹脂前駆体、紫外線硬化性樹脂前駆体や電子線硬化性樹脂前駆体に分散及び全体を硬化させた後粉砕し、着色粒子として使用する皮膜形成材料としての形態がある。なおこの場合、この着色粒子を溶剤単独あるいは上記説明のバインダー成分と混合・分散して用いることも出来る。この場合の樹脂としては本質的に使用する溶剤に不溶であれば良く、上記例示樹脂に限定されるものではない。これにより、溶液から皮膜を作製出来て膜状態が金属光沢を有し、これまでの分散体での利用範囲を大きく拡大する有機着色料及びその使用に関することができる。
【0018】
また、上記により本発明の効果を達成でき、特段に限定されるわけではないが以下に上記一般式[1]に示される化合物の具体例を列挙しておく。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【発明の効果】
【0019】
以上、本発明によれば、金属粉末分散体で問題となるような保管時の経時変化や使用時の不具合等が無く、長期に亘り安定に使用出来る金属光沢を有する有機着色料を得ることができる。更に、本発明の有機着色料によれば分子修飾を合成上、容易に促すことができるため、色相の調整が容易であり、鮮明な色相を有した金属光沢を有する着色料を実現することができる。従って、従来使用範囲が限られていた金属光沢を有する着色料の用途範囲を広げることが出来る。なお本発明の有機着色料は安価な原料の選択が可能であって容易に合成できるようになるという利点も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に実施例に基づき、本発明の実施の形態につき具体的に説明するが、化合物はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
N−Benzyl−N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]amine(化合物(1))の合成
【0022】
(1)中間体:N−Phenyl−N−[4−(tricyanoethelyl)phenyl]amineの合成
【0023】
(反応式)
【化34】

窒素雰囲気下、N,N−diphenylamine(3.385g、0.020mol)及びtetracyanoethylene(2.690g、0.021mol)をdry DMF(20ml)に溶解させ、70℃で4時間攪拌した。
反応終了後、トルエンを加え減圧濃縮した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン−酢酸エチル=2:1)で精製することによりN−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]amine(5.16g、0.019mol、95%)を緑色粉末として再結晶により緑色光沢結晶として得た。
【0024】
(物性値)
N−Phenyl−N−(4−tricyanoethenylphenyl)−amine
【化35】

緑色金属光沢結晶
mp 188−189℃
1H NMR (CDCl3, 300 MHz)
δ(ppm)= 8.06 (d, 2H, J=9.1 Hz, Ha)
7.44 (t, 2H, J=8.4 and 8.3
Hz, Hd)
7.27 (t, 3H, J=7.7 and 8.2
Hz, Hc and He)
7.01 (d, 2H,J=9.2 Hz, Hb)
6.67 (brs, 1H, NH)
IR (KBr) 3311, 2366, 2212, 1610, 1587, 1477, 1446, 1363, 1321,
1182 (cm-1)
UV-Vis(THF, 3x10-5 M) λmax(ε) 505 nm(39200 M-1cm-1)
【0025】
(2)N−Benzyl−N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)Pphenyl]amineの合成
【0026】
(反応式)
【化36】

窒素雰囲気下、N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]amine(0.150g、0.555mmol)及び炭酸ナトリウム(0.294g、2.78mmol)をdry DMFに懸濁し氷冷した。そこにBbenzylbromide(0.124g、0.723mmol)を滴下し、室温で3時間、30℃で22間攪拌した。
反応停止後、飽和食塩水(20ml)を加え、酢酸エチル(20ml×3)で抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン-酢酸エチル=2:1)で精製することにより、N−benzyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]phenylamine(0.120g、0.333mmol、60%)を黄緑色光沢薄膜として得た。
【0027】
(物性値)
1−N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]amine
【化37】

黄緑色光沢薄膜
1H NMR (CDCl3, 300 MHz)
δ(ppm)=7.97(d, 2H, J=9.3
Hz, Ha)
1H NMR(CDCl3,
300 MHz)

7.49(t, 2H, J=7.2 and 7.8, Hd)

7.40-7.26(m, 8H, Hc and Hg or He and Hi or Hh)

6.79(d, 2H, J=9.3 Hz, Hb)

5.09(s, 2H, Hf)

IR (KBr) 2216, 1606, 1587, 1487, 1450, 1396, 1340, 1296, 1212,
1188 (cm-1)
UV-Vis(THF, 3x10-5 M) λmax(ε) 503 nm(30600 M-1cm-1)
【実施例2】
【0028】
α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−o−xylene(化合物(2))の合成
【0029】
(反応式)
【化38】

窒素雰囲気下、氷冷したN−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]amine(0.155g、0.575mmol)及び炭酸ナトリウム(0.1342g、1.25mol)にα,α’−dibromo−o−xylene(0.66g、0.250mmol)を加え、dry DMFに懸濁させ、30℃で45時間攪拌した。
反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(50ml)を加え、酢酸エチル(50ml×3)で抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた固体をカラムクロマトフラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン−酢酸エチル=2:1)で精製することにより、α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−o−xylene(0.0423g、0.066mmol、26%)を黄緑色光沢薄膜として得た。
【0030】
(物性値)
α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−o−xylene
【化39】

黄緑色光沢薄膜
1H NMR(CDCl3, 300 MHz)
δ(ppm)= 7.97 ( d, 4H, J = 9.3 Hz, Ha)
7.49 ( t, 4H, J = 6.8 and 7.8
Hz, Hd)
7.42 ( t, 2H, J = 7.1 Hz, He)
7.33 ( s, 2H, Hh)
7.32 ( s, 2H, Hg)
6.67 ( d, 4H, Hb)

IR (KBr) 2216, 1606, 1587, 1487, 1446, 1394, 1338, 1294, 1213,
1188 (cm-1)
UV-Vis(THF, 3x10-5 M) λmax(ε) 503 nm(58200 M-1cm-1)
【実施例3】
【0031】
α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−m−xylene(化合物(3))の合成
【0032】
(反応式)
【化40】

窒素雰囲気下、氷冷したN−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]amine(0.622g、2.30mmol)、炭酸ナトリウム(0.529g、5.00mmol)にα,α’−dibromo−m−xylene(0.264g、1.00mmol)を加え、dry DMFに懸濁させ、30℃で45時間攪拌した。
反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)を加え、酢酸エチル(100ml×3)で抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた固体をカラムクロマトフラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン−酢酸エチル=2:1)で精製することにより、α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−m−xylene(0.287g、0.447mmol、45%)を黄緑色光沢薄膜として得た。
【0033】
(物性値)
α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−m−xylene
【化41】

黄緑色光沢薄膜
1H NMR(CDCl3, 300 MHz)
δ(ppm)= 7.93 ( d, 4H , J = 9.5 Hz, Ha)
7.44 - 7.35 ( m, 6H, Hd and
He )
7.24 ( brs, 2H, Hh )
7.21 ( brs, 1H, Hg )
7.15 ( brs, 1H, Hi )
7.12 ( ddlike, 4H, Hc )

6.71 ( d, 4H, Hb )

IR (KBr) 2218, 1606, 1587, 1487, 1446, 1392, 1338, 1294, 1213,
1190 (cm-1)
UV-Vis(THF, 3x10-5 M) λmax(ε) 503 nm(66300 M-1cm-1)
【実施例4】
【0034】
α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−p−xyleneの合成
【0035】
(反応式)
【化42】

窒素雰囲気下、氷冷したN−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]amine(2.487g、9.20mmol)、炭酸ナトリウム(2.12g、20.0mmol)にα,α’−dibromo−p−xylene(1.06g、4.00mmol)を加え、dry DMFに懸濁させ、30℃で45時間攪拌した。
反応終了後、吸引濾過をし得られた固体を、飽和塩化アンモニウム水溶液(100ml)、及びクロロホルム(100ml×3)で抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−p−xylene(0.652g、1.01mmol、25%)を赤色粉末として得た。そしてこれを再結晶することにより、銀色光沢を示す結晶として得た。
【0036】
(物性値)
α,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−p−xylene
【化43】

銀色粉末結晶
1H NMR(CDCl3, 300 MHz)
δ(ppm)= 7.96 ( d, 4H , J = 9.3 Hz, Ha)
7.49 ( t, 4H, J = 7.1 and 7.8
Hz, Hd )
7.38 ( t, 2H, J = 7.4 and 7..3
Hz, He )
7.29 ( d, 4H, J = 6.1Hz, Hc )
7.28 ( s, 4H, Hg )

6.76 ( d, 4H, J = 9.5 Hz, Hb )

IR (KBr) 2220, 1605, 1587, 1485, 1458, 1443, 1394, 1344, 1213,
1190 (cm-1)
UV-Vis(THF, 3x10-5 M) λmax(ε) 504 nm(77600 M-1cm-1)
【実施例5】
【0037】
1,3,5−tris{N−phenyl−[N−(4−tricyanoethenyl)phenylaminomethyl]}benzeneの合成
【0038】
(反応式)
【化44】

窒素雰囲気下、1,3,5−Ttris(bromomethyl)benzene(0.150g、0.420mmol)にN−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenyl]amine(0.375g、1.38mmol)、炭酸ナトリウム(0.529g、5.00mmol)を加え、dry DMFに懸濁させ、30℃で3日間攪拌した。
反応終了後、水および1規定塩酸を加えてpH@7にし、クロロホルム(25ml×3)で抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し減圧濃縮した。得られた固体をカラムクロマトフラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン−酢酸エチル=1:1)で精製することにより、1,3,5−tris{N−phenyl−[N−(4−tricyanoethenyl)phenylaminomethyl]}benzene(0.055g、0.059mmol、14%)を黄緑色光沢物質として得た。
【0039】
(物性値)
1,3,5−tris{N−phenyl−[N−(4−tricyanoethenyl)phenylaminomethyl]}benzene
【化45】

黄緑色光沢薄膜
1H NMR(CDCl3, 300 MHz)
δ(ppm)= 7.90 ( d, 6H ,
J = 9.3 Hz, Ha)
7.42 - 7.37 ( m, 9H, Hd and He )
7.12 ( s, 3H, Hg )
7.21 ( brs, 1H, Hg )
7.09-7.03 ( m, 6H, Hc )
5.06 ( s, 6H, Hf )

IR (KBr) 2218, 1606,
1589, 1486, 1446, 1392,
1340, 1296, 1213, 1190 (cm-1)
【実施例6】
【0040】
α,α’−bis(N,N−diphenylamino)−o−xylene経由のα,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−o−xyleneの合成
【0041】
(反応式)
【化46】

窒素雰囲気下、α,α’−bis(N,N−diphenylamino)−o−xylene(0.528g、2.00mmol)、N,N−diphenylamine(1.02g、6.02mmol)、および炭酸ナトリウム(1.06g、10.0ml)を、dry DMF(1.50ml)に懸濁させ、40℃で2日、65℃で1日攪拌した。反応終了後、水および、1N塩酸を加え、pH @ 7にし、30分超音波洗浄器で洗浄後、固体吸引濾過により分離した。得られた固体をエタノール(50ml□)で還流した後、吸引濾過および小量のエタノールで洗浄し、α,α’−bis(N,N−diphenylamino)−o−xylene(0.523g、1.19mmol、59%)を白色固体として得た。
窒素雰囲気下、ここに得られたα,α’−dibromo−o−xylene(0.150g、0.341mmol)とTtetracyanoethylene(0.130g、1.02mmol)を、dry DMFに溶解させ、65℃で5時間攪拌した。
反応終了後、トルエンを加え、減圧濃縮したのち、得られた固体をカラムクロマトフラフィー(中性シリカゲル、ヘキサン−酢酸エチル=2:1)で精製することにより、α,α’−bis(N,N−diphenylamino)−o−xylene経由のα,α’−bis{N−phenyl−N−[4−(tricyanoethenyl)phenylamino]}−o−xylene(0.179g、0.066mmol)を黄緑色光沢薄膜として得た。NMRとIRにより、実施例2で得られた化合物と同定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表される有機着色料。
【化1】

(式中、Aは置換基を有してもよい芳香環残基、置換基を有してもよい複素環残基、置換基を有してもよい縮合多環残基、置換基を有してもよい脂環残基、置換基を有してもよい脂肪族残基、置換基を有してもよいスピロ環残基、置換基を有してもよいビフェニル残基、置換基を有してもよいフルオレン残基、又は、置換基を有してもよいトリフェニルアミン残基を表し、
Xは置換基を有してもよい芳香環残基、又は、置換基を有してもよい複素環残基を表し、
1、R2はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよい芳香環残基、置換基を有してもよい複素環残基、置換基を有してもよいアルキル残基、置換基を有してもよいアルケニル残基、又は、置換基を有してもよいシクロアルキル残基を表し、
は下記一般式[2]で表される基であり、
【化2】

とRは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよい芳香環残基、置換基を有してもよい複素環残基、置換基を有してもよいアルキル残基、置換基を有してもよいアルケニル残基、若しくは置換基を有してもよいシクロアルキル残基を、又は、R4とR5が一体となって置換基を有していてもよいアルキニレン残基を表す。
nは1以上の整数を表し、nが2以上の場合はnでくくられている括弧の中のそれぞれのX、ならびにそれぞれのR1、R2、R3はそれぞれ互いに同じでも異なってもよく、
mは0以上の整数を表し、m=0のときは、単に結合を表す。)
【請求項2】
金属光沢を有する請求項1記載の有機着色料。
【請求項3】
請求項1記載の有機着色料を含む皮膜形成材料。
【請求項4】
バインダー成分も含む請求項2記載の皮膜形成材料。
【請求項5】
着色料と溶剤不溶性の樹脂からなる着色粒子を含む請求項2又は3記載の皮膜形成材料。

【公開番号】特開2006−249259(P2006−249259A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68245(P2005−68245)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】