説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】加熱プレスなどによって扁平化したコンデンサ素子の中心部と外周部とのシワや傷、凹凸を防止でき、そのため高い信頼性を得ることが可能な金属化フィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】少なくとも片面に105℃以下でヒートシール性を有する層3を設けた第1のヒートシール性フィルム2を巻回し、その上に、2枚の片面金属化ポリプロピレンフィルム5を重ね合わせて、または重ね合わせた両面金属化ポリプロピレンフィルムとポリプロピレンフィルムとを重ね合わせて巻回し、さらにその上に、プラスチックフィルムの少なくとも片面に105℃以下でヒートシール性を有する層を設けた第2のヒートシール性フィルム6を巻回して構成し、その後、これを扁平化してコンデンサ素子1を具備する。ヒートシール性フィルム2、6は、ヒートシール性ポリオレフィン3とポリプロピレン4とのラミネートフィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘電体フィルムに蒸着電極を形成した金属化フィルムを巻回してなる金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の金属化フィルムコンデンサ素子11の一例を、図4に示している(例えば、特許文献1参照)。このコンデンサ素子11は、金属化ポリプロピレンフィルムをバーンオフしたポリプロピレンフィルム12もしくは厚めのポリプロピレンフィルムを巻回し、その上に、重ね合わせた2枚の金属化ポリプロピレンフィルム15を巻回し、さらにその上に、厚めのポリプロピレンフィルム16を巻回した構造のもので、これを加熱プレスなどの方法で扁平化している。巻き始めに厚めのポリプロピレンフィルム12を用いるのは、素子中心部での皺の発生を抑制するためである。
【特許文献1】特開2007−081007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載された金属化フィルムコンデンサにおいては、ポリプロピレンはヒートシール性が乏しいため、巻き始めのポリプロピレンフィルム12は、巻き取った後、融点近くの高温の加熱したコテを当ててヒートシールしなければならず、この結果、その表面に凹凸が生じてしまうことになる。そのため、加熱プレスなどの方法で扁平化する際に、金属ポリプロピレンフィルム15も表面が凹凸になったポリプロピレンフィルム12に強く押し付けられて表面が凹凸になってしまう。また、巻き終わりのポリプロピレンフィルム16のヒートシールは、素子の電気的特性への影響を考慮し、コテ当てを短時間で行わなければならず、このため後工程でフィルムが剥がれてしまうことがあり、金属化ポリプロピレンフィルム15にまで及ぶ傷や凹凸がつくことがある。そしてそれらが素子の絶縁耐圧に悪影響を及ぼし、コンデンサの信頼性の低下を招くという問題があった。
【0004】
この発明は上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、コンデンサ素子の中心部と外周部とのシワや傷、凹凸を防止でき、そのため高い信頼性を得ることが可能な金属化フィルムコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、この発明の金属化フィルムコンデンサは、プラスチックフィルムの少なくとも片面に105℃以下でヒートシール性を有する層3を設けたヒートシール性フィルム2を巻回し、その上に、2枚の片面金属化ポリプロピレンフィルム5を重ね合わせて、または両面金属化ポリプロピレンフィルムとポリプロピレンフィルムとを重ね合わせて巻回して構成したコンデンサ素子1を具備することを特徴としている。
【0006】
また、この発明の金属化フィルムコンデンサは、プラスチックフィルムの少なくとも片面に105℃以下でヒートシール性を有する層3を設けた第1のヒートシール性フィルム2を巻回し、その上に、2枚の片面金属化ポリプロピレンフィルム5を重ね合わせて、または両面金属化ポリプロピレンフィルムとポリプロピレンフィルムとを重ね合わせて巻回し、さらにその上に、プラスチックフィルムの少なくとも片面に105℃以下でヒートシール性を有する層を設けた第2のヒートシール性フィルム6を巻回して構成したコンデンサ素子1を具備することを特徴としている。
【0007】
また、上記ヒートシール性を有する層3は、ポリオレフィンからなることを特徴とし、さらに、上記ヒートシール性フィルム2は、ヒートシール性ポリオレフィン3とポリプロピレン4とのラミネートフィルムであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明の金属化フィルムコンデンサにおいては、コンデンサ素子の製造過程において、扁平化処理を行ってもヒートシール性フィルム同士が容易に熱接着して強固な板状になるので、素子中心部はシワになりにくい。また、素子外周部に傷や凹凸がつきにくい。そのため、従来よりも信頼性の高い金属化フィルムコンデンサを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、この発明の金属化フィルムコンデンサの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る金属化フィルムコンデンサは、図1に示すような断面形状を有するものである。まず最初に、巻芯保持治具(図示せず)に、片面にヒートシール性を有する層を設けた第1のヒートシール性フィルム2を巻芯保持具(図示せず)に巻回して巻芯を形成する。このヒートシール性フィルム2は、材料として、ポリオレフィンの一種である低密度ポリエチレンとポリプロピレンとを用い、これらを共押出法(溶融押出成型法において複数の素材を一度に押し出して重ねる手法)などを採用することによって製造したものであって、この方法によれば、安価でかつ良好な作業性で製造可能である。図2には、その構造を示しているが、これは基体フィルムをポリプロピレンフィルム4で構成し、その上下両面に、低密度ポリエチレンで構成したヒートシール性を有する層3、3を重ね合わせて一体化した構造のラミネートフィルムである。
【0010】
そしてその後、上記のような巻芯の上に、重ね合わせた2枚の片面金属化ポリプロピレンフィルム5を所定回数だけ巻回する。そして、さらにその後、その上に、コンデンサ素子を絶縁保護する外装フィルムとして、第2のヒートシール性フィルム6を所定回数だけ巻回する。この第2のヒートシール性フィルム6は、上記第1のヒートシール性フィルム2と同様のものである。このようにしてリング状の素体が形成されると、このリング状素体を巻芯保持具(図示せず)から取り外し、その上下方向(径方向の両側)から、加熱プレスなどを用いて、80〜90℃の温度下において押し潰し加工を行って扁平化したコンデンサ素子1を製作する。
【0011】
上記片面金属化ポリプロピレンフィルム5は、絶縁マージンによって分割化されており、各分割電極がヒューズ部によって並列接続された電極構造を有するもので、自己保安機構を有している。
【0012】
上記したヒートシール性フィルム2において、ヒートシール性を有するとは、ヒートシールした部分の剥離強度が、15mm幅換算で40gf以上であること(以下、剥離強度40gf/15mmと記す)をいう。剥離強度は、具体的には、図3に示すように、ヒートシール後、15mm幅に切り出したフィルムの一方側7を固定し、他方側8をバネばかりで図中Fの方向に引張ったときの強度として把握する。なお、このときヒートシールは、重ね合わせた2枚のフィルムを2Kgf/cmで押圧し、所定の温度で5分間加熱して行う。
【0013】
上記のようにして製作されたコンデンサ素子1においては、扁平化処理を行ってもヒートシール性フィルム2、2同士が容易に熱接着して強固な板状になるので、素子中心部はシワになりにくい。また、素子外周部に傷や凹凸がつきにくい。そのため、従来よりも信頼性の高い金属化フィルムコンデンサを製作することが可能となる。
【0014】
以上にこの発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施形態においては、低密度ポリエチレンとポリプロピレンとを用いてヒートシール性フィルムを形成したが、ヒートシール性を有する層3を形成するための材料としては、低密度ポリエチレン(ポリオレフィン)の他にも、エチレン、プロピレン、ブテンなどのオレフィン系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ウレタン系樹脂などを挙げることができるが、これに限られるものではなく、要は、ポリプロピレンに対して与える熱影響の少ない105℃以下の温度でヒートシールが行える材料であればよい。上記においては、基体フィルム4としてポリプロピレンフィルムを用いているが、これは他の材質のプラスチックフィルムであってもよい。また、ヒートシール性を有する層3は、基体フィルム4の両面ではなく、片面にだけ設けるようにしてもよい。さらに、上記実施形態においては、重ね合わせた2枚の片面金属化ポリプロピレンフィルム5を用いているが、両面金属化ポリプロピレンフィルムとポリプロピレンフィルムとを重ね合わせてこれを巻回することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態に係る金属化フィルムコンデンサの金属化フィルムの断面図である。
【図2】上記実施形態において用いるヒートシール性フィルムの断面図である。
【図3】剥離強度の測定方法を示す説明図である。
【図4】従来の金属化フィルムコンデンサの断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1・・コンデンサ素子、2・・ヒートシール性フィルム(巻芯)、3・・低密度ポリエチレン(ヒートシール性を有する層)、4・・ポリプロピレンフィルム(基体フィルム)、5・・片面金属化ポリプロピレンフィルム、6・・ヒートシール性フィルム(外装フィルム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に105℃以下でヒートシール性を有する層(3)を設けたヒートシール性フィルム(2)を巻回し、その上に、2枚の片面金属化ポリプロピレンフィルム(5)を重ね合わせて、または両面金属化ポリプロピレンフィルムとポリプロピレンフィルムとを重ね合わせて巻回して構成したコンデンサ素子(1)を具備することを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に105℃以下でヒートシール性を有する層(3)を設けた第1のヒートシール性フィルム(2)を巻回し、その上に、2枚の片面金属化ポリプロピレンフィルム(5)を重ね合わせて、または両面金属化ポリプロピレンフィルムとポリプロピレンフィルムとを重ね合わせて巻回し、さらにその上に、プラスチックフィルムの少なくとも片面に105℃以下でヒートシール性を有する層を設けた第2のヒートシール性フィルム(6)を巻回して構成したコンデンサ素子(1)を具備することを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
上記ヒートシール性を有する層(3)は、ポリオレフィンからなることを特徴とする請求項1または請求項2の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
上記ヒートシール性フィルム(2)は、ヒートシール性ポリオレフィン(3)とポリプロピレン(4)とのラミネートフィルムであることを特徴とする請求項1または請求項2の金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−289793(P2009−289793A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137744(P2008−137744)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(390022460)株式会社指月電機製作所 (99)
【Fターム(参考)】