説明

金属又は合金マトリクスに埋められた超硬質粒子を含む複合材料及びそれから作製された振動板

剛く、3次元であり、比較的小さい質量を有する構成部品が提供される。構成部品は、ダイアモンド及び/又はcBNなどの超硬質粒子又はグリットと共に埋め込まれた金属又は合金マトリクス複合体から形成された箔体を含む。それは、例えば音響用途などの高剛性及び低質量の組合せが要求される用途に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部品に関し、より詳細には、剛性が大きく質量が小さい音響用構成部品に係るものである。また、本発明は、それらの製造に使用される複合材料、及びそのような複合材料及び構成部品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
剛性が大きく質量が小さい構造を必要とする多くの用途がある。一般的な用途としては、実質的にそのすべての機械的な構成部品が、大きな剛性対質量比を有する必要のある航空宇宙産業におけるものである。
【0003】
しかし、軽量であるが剛性の大きい物体に対しては、ある範囲のその他の用途がある。具体的な用途としては、音響スピーカ用駆動ユニットの製造であり、とりわけ高周波数の音の正確な再生用の高周波数ツイータがある。
【0004】
人間の聴覚は、一般に、20Hz〜20kHzの範囲にわたると認識されている。したがって、高品質のスピーカ・システムは、少なくともこの周波数範囲にわたる周波数を正確に再生する必要がある。一般的な高性能スピーカは、電気信号を音波(圧縮波)に変換する機械的に効果のよいトランジューサである2個以上の駆動ユニットを使用する。各駆動ユニットは、可聴範囲の特定の部分をカバーする。駆動ユニットは、空気の粗密状態を生じさせる、前後に移動するピストンに近似できる。
【0005】
小型ピストンは、高周波数で大音圧レベルを効果的に生成でき、より大きな直径のピストンは、より低周波数で同等の効率によって同等の音圧レベルを生み出すことが要求されることがよく知られている。一般に、25mmの直径の駆動ユニットは、2〜20kHzの周波数範囲で動作でき、例えば100〜250mmの直径のより大きな駆動ユニットは、100Hz以下の低さの範囲にある周波数を生成できる。しかし、より大きな駆動ユニットは、不要な振動又は分割振動の問題が生じる虞があるため、高周波数の音を生み出す目的では容易に使用できない。人間の耳は、これらの分割振動モードによる音の「色付け」に非常に敏感である。この理由により、高周波数の駆動ユニットは、小さい直径を有する。最近、人間の聴覚の認識範囲外にある周波数での分割振動モードの存在が、音源の可聴な劣化を生じる可能性があることが実証された。こうした理由から、歪みなしで20kHzよりも高い周波数で動作できる駆動ユニットを製造するいくつかの試みがなされてきた。
【0006】
理想的なスピーカは、その感度を向上させるための非常に小さい質量、及び可聴の出力に悪影響を与える可能性のある動作の周波数スペクトル又はその近くでの共振をまったく伴わない、非常に大きな剛性を有するはずである。実際のツイータ・デバイスのすべては、当然、質量及び同時に共振を有する。スーパー・オーディオ・フォーマット(Super Audio format)(SACD及びDVDA)と呼ばれるものなどの音響媒体及び増幅システムの発展により、例えば、約22kHzの標準のCDの帯域幅の上限と比較して、最新式のスピーカの駆動に提供される周波数範囲が96kHzもの高さまで拡張される。
【0007】
より大きなヤング率及びより低密度の材料を使用して製造された、より軽量でより剛性のあるツイータ構造体は、より高周波数の共振を示すことがよく知られている。したがって、ツイータにダイアモンドを使用することがよいと報告されている。従来技術には、ある範囲の手段によって製造されたスピーカ・ドームの様々な構成が記録されているが、報告された性能の利点は、一般に芳しくなく、そのようなスピーカ・ドームは、広範囲に使用される状態のものではない。Al、Be、及びプラスチックなどのその他の材料、及びある範囲の幾何学的形状に基づいたツイータ・デバイスには、実質的な従来技術もある。
【0008】
米国特許第5556464号は、スピーカ用ダイアモンド・ドームの使用を開示し、縁部のひび割れの拡大を制御するように設計された様式で、一体式の平面のフランジの縁部を終端させる必要を詳細に記載している。ドイツ特許DE10049744号は、ドームの縁部が支持されないように、ボイス・コイル形成器の上に凹型に取り付けられたダイアモンドのドームの使用を記載している。このタイプの幾何学的形状は、出力音を色付けする可能性のある、ドーム構造内の不要な共振のある範囲に対処する。さらに最近になって、Bowers and Wilkins(英国のWest Sussex州Worthing Dale RoadのB&W Loudspeakers Ltd社)は、ダイアモンドのドームを使用した一連のスピーカを売り出し、その設計は同時係属の英国特許出願第GB048458.8号及び2004年11月17日にB&Wによって出版された技術注記(technical note)「Development of the B&W 800D」に記載されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、構成部品、とりわけ音響用構成部品が、金属又は合金マトリクスに埋め込まれた超硬質の材料の粒子又はグリットにより形成された箔(フォイル)体を含む。
【0010】
超硬質の粒子又はグリットは、好ましくはダイアモンド又はcBN(立方晶窒化ホウ素粒子又はグリット)である。
【0011】
金属又は合金マトリクスにダイアモンド又はcBNの粒子又はグリットを埋め込み、次いで、それを薄い箔体、特に3次元構造体に製造することによって、構成部品は、金属又は合金単体での使用によって得られるよりも大きい比ヤング率、及び/又は小さい密度を有する。
【0012】
金属又は合金マトリクスは、好ましくは、大きな比固さを有する金属(純金属又は合金)を含む。そのような金属には、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、チタン等が含まれてもよい。
【0013】
本発明の好ましい実施例では、音響用構成部品は、ドーム・セグメント(部片)を含む。
【0014】
構成部品の形状は、好ましくは球面状セグメントである。音響用構成部品のためのその他の好ましい形状は回転対称軸線を有し曲率半径の急激な変化のない楕円体、放物体、及び双曲線体のセグメントであり、対称軸線の周りで楕円又はその他の円錐断面のセグメントを回転させることによって定義される。
【0015】
好ましくは、構成部品は、スピーカ・ドームとしての使用に適するように一体のコイル取付けフランジ又は管を有する。
【0016】
本発明の特に好ましい実施例では、構成部品は、高性能のツイータとしての使用に適する。
【0017】
本発明は、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、及びチタン並びにそれらの組合せから選択された金属を含む金属又は合金マトリクスに埋め込まれたダイアモンド粒子又はグリットを含む複合材料に及ぶ。
【0018】
本発明は、金属又は合金マトリクスに埋め込まれたダイアモンド粒子又はグリットから形成された箔体を含む複合材料にも及び、そのダイアモンド粒子又はグリットは化学蒸着によって形成されている。
【0019】
本発明はさらに、超硬質の研磨用粒子又はグリット、及び金属マトリクス材料の素材を提供するステップと、複合ストリップ又は箔を形成するために超硬質の研磨用粒子又はグリット、及び金属マトリクス材料を共に圧縮成形するステップと、複合ストリップ又は箔を3次元構造体に形成するステップとを含む、比較的大きな剛性及び小さな質量を有する3次元構造体を製造する方法に及ぶ。
【実施例】
【0020】
次に本発明を添付の図面を参照して例示のみによって、より詳細に説明する。
【0021】
本発明は、剛性があり3次元であり比較的小さい質量を有する構成部品の形成を対象とする。構成部品は、超硬質粒子又はグリット、好ましくはダイアモンド及び/又はcBN粒子又はグリットと共に埋め込まれた金属又は合金マトリクス複合材料から形成された箔体を含む。構成部品は、例えば音響用途などの大きな剛性及び小さな質量の組合せが要求される用途に使用できる。
【0022】
明確にするために、用語のうちのいくつかが下記に定義される。
【0023】
固さ(stiffness)は、材料の弾性率(ヤング率)に関する特定の技術用語である。
固さ=ヤング率=E
【0024】
しばしば、第2の重要なパラメータは、材料の密度であり、したがって別の用語が、
比固さ=E/ρ、ここでρ=密度
として定義される。
【0025】
しかし、同じ固さの材料を使用しても、例えば、平板の上のI型ビームを比較すると、他のものよりもコンプライアンス(追従性)がはるかに低い構造を構築することが可能である。
したがって、
剛性(rigidity)=曲げによる変形に対する構造の耐性
【0026】
構造用形態の特定の例では、構造体の剛性が、その密度及びその厚さの3乗に比例して変化する。剛性は、曲げに対するものであることに留意されたい。圧縮に対して、変形はほぼ密度に反比例し、厚さに反比例して変化する。
【0027】
構造形態又は部分的に稠密化された材料では、さらなる重要なパラメータは、シート(薄板)密度即ちシートの単位面積当たりの密度である。
シート密度=ρ/A、ここで、A=シートの平面での面積
【0028】
好ましくは楕円又はその他の円錐断面の回転によって定義される球面のドーム又は同様の3次元構造体では、剛性は、構造の壁又は殻部の厚さの関数であり、同時にドーム(又は同様の3次元構造体)が一部分を形成する球面(又はその他の構造)の曲率半径、及びドーム(又は同様の3次元構造)を形成する球面(又はその他の構造)の割合などのパラメータの関数でもある。
【0029】
これらの固さ、比固さ、剛性、及びシート密度の定義は、本明細書全体を通して用いられる。
【0030】
ダイアモンド又はcBNを混入した金属又は合金マトリクス複合材料から形成される3次元構成部品又は本体は、以下の基準のうちの1つ又は複数を満たすことが好ましい。
a)箔体は、薄い層から形成され、特に箔体を形成する層の厚さは、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、さらにより好ましくは100μm以下、さらにより好ましくは70μm以下、最も好ましくは50μm以下である。
b)箔体を形成する層の厚さは、好ましくは5μmを超え、より好ましくは10μmを超え、さらにより好ましくは20μmを超え、さらにより好ましくは30μmを超え、最も好ましくは40μmを超える。
c)箔体は、好ましくは全体積密度で2%を超え、より好ましくは5%を超え、より好ましくは10%を超え、より好ましくは20%を超え、より好ましくは30%を超え、より好ましくは40%を超え、最も好ましくは50%を超えるダイアモンド又はcBN、或いはこの2つの混合物を含むことが好ましい。
d)圧縮成形前の平均径によって特徴付けられるグリットの寸法は、好ましくは60μmよりも小さく、より好ましくは30μmよりも小さく、さらにより好ましくは20μmよりも小さく、さらにより好ましくは15μmよりも小さく、最も好ましくは10μmよりも小さい(マルチ・モーダル(多数モード)のグリット分布において、この制限は使用される最大グリット寸法に関連する)。
e)平均径によって特徴付けられるグリットの寸法は、好ましくは0.2μmよりも大きく、より好ましくは0.5μmよりも大きく、さらにより好ましくは1μmよりも大きく、最も好ましくは4μmよりも大きい(多数モードのグリット分布において、この制限は使用される最大グリットの寸法に関連する)。
f)金属マトリクス・ストリップの最終厚さへの圧縮成形前の平均径によって特徴付けられるグリットの寸法の比率は、好ましくは0.5よりも小さく、より好ましくは0.4よりも小さく、さらにより好ましくは0.3よりも小さく、さらにより好ましくは0.25よりも小さく、最も好ましくは0.22よりも小さい(多数モードのグリット分布で、この制限は使用される最大グリットの寸法に関連する)。
g)金属マトリクス・ストリップの最終の厚さへの圧縮成形前の平均径によって特徴付けられるグリットの寸法の比率は、好ましくは0.05よも大きく、より好ましくは0.1よりも大きく、さらにより好ましくは0.15よりも大きく、さらにより好ましくは0.18よりも大きく、最も好ましくは0.2よりも大きい(多数モードのグリット分布において、この制限は使用される最大グリット寸法に関連する)。
h)金属マトリクス・ストリップの最終の厚さへの圧縮成形後の平均径によって特徴付けられるグリットの寸法の比率は、好ましくは0.3よりも小さく、より好ましくは0.25よりも小さく、最も好ましくは0.22よりも小さい(多数モードのグリット分布で、この制限は使用される最大グリットの寸法に関連する)。
i)金属マトリクス・ストリップの最終の厚さへの圧縮成形後の平均径によって特徴付けられるグリットの寸法の比率は、好ましくは0.05よりも大きく、より好ましくは0.1よりも大きく、さらにより好ましくは0.15よりも大きく、さらにより好ましくは0.18よりも大きく、最も好ましくは0.2よりも大きい(多数モードのグリット分布で、この制限は使用される最大グリットの寸法に関連する)。
j)箔体を形成する層は、稠密化(densified)され、好ましくは最大限に稠密化され、又は部分的にのみ稠密化され、又は多孔質にすることができる。
【0031】
特に本発明は、そのような構成部品をスピーカ駆動ユニットの用途に使用することに関する。
【0032】
上記の基準のうちのいずれかによって製造された構成部品は、スピーカ・ドームとしての使用に適するように一体のコイル取付けフランジ又は管を有することのできるドーム・セグメントにできる。特に、構成部品は、高性能ツイータ構成部品である。好ましくは、ツイータ構成部品は、本質的に周囲からの影響のない理想的な取付けで試験された場合、以下のうちの1つ又は複数の特性を示す。
a)31kHzよりも高い、好ましくは45kHzよりも高い、より好ましくは55kHzよりも高い、さらにより好ましくは65kHzよりも高い、最も好ましくは75kHzよりも高い分割振動周波数。
b)5dBよりも小さく、好ましくは3dBよりも小さく、より好ましくは2dBよりも小さく、さらにより好ましくは1dBよりも小さく、最も好ましくは0.5dBよりも小さい、20kHz、好ましくは30kHz、より好ましくは40kHz、さらにより好ましくは50kHzで測定される位相の減衰を可能にする、モデル化された理想の軸上応答曲線からの軸上応答曲線での偏り。
c)5dBよりも小さく、好ましくは3dBよりも小さく、より好ましくは2dBよりも小さく、より好ましくは1dBよりも小さく、最も好ましくは0.5dBよりも小さい、20kHz、好ましくは30kHz、より好ましくは40kHz、より好ましくは50kHzで測定される位相の減衰を可能にする、フラット応答からの軸上応答曲線での偏り。
【0033】
上述の特性a)からc)までのうちの1つ又は複数を示すツイータ構成部品は、高性能のツイータ構成部品として当業者によって一般に説明される。
【0034】
上述の仕様に対するツイータは、ソリッド・ダイアモンド・ツイータよりも低コストで最新式の音源用の出力をもたらし、ソリッド・ダイアモンド・ツイータに対するその他の代替物よりも高い音質の出力をもたらすために使用できる。
【0035】
本発明の本実施例の好ましい変形例では、高性能のツイータ・ドームが以下の基準のうちの1つ又は複数に対して製造される。
a)ツイータ構成部品の形状は、聴取者の側から見た場合に凸型である。
b)ツイータ構成部品の形状は、球面ドームに基づいている。
c)ツイータ構成部品の形状は、軸対称であり、楕円に基づいており、その楕円では、2つの軸a、b(但し、a≧b)は、a/bが1.5よりも小さく、好ましくは1.2よりも小さく、より好ましくは1.1よりも小さく、さらにより好ましくは1.05よりも小さく、最も好ましくは1.01よりも小さい。
d)ツイータ構成部品の形状は軸対称であり、湾曲した部分は、1つの円錐断面を取り、それを対称軸の周りで回転させることによって形成され、円錐断面は、適切な幾何学的形状の円錐の回転対称軸に平行な平面によって定義される。
e)ツイータ構成部品は、それにボイス・コイル用形成器を直接的に提供し、或いはそれに、例えば、Al又はKapton(登録商標)から作製された別個のボイス・コイル形成器用の機械的な取付け具の手段を提供する一体の軸方向の管構成部品で製造される。
f)ツイータ構成部品は、層の平面及びその厚さ全体にわたる両方での層又はシート厚さ、稠密化の度合い、又は厚さ全体の稠密化の分布、又は存在するところのグリット粒子の分布を局部的に変更する手段によって、特定のプロファイルのシート密度及び局部的な剛性を有するように製造され、好ましくはこれらのパラメータのプロファイルは、構成部品及びスカート部の縁部、又はボイス・コイル取付け部の領域での剛性を特に向上させ、構成部品の中央領域の質量を特に低減させるように選択される。
g)ツイータ構成部品の3次元曲線部分の直径は、下方に見た場合、その回転対称軸が20mmを超え、好ましくは24mmを超え、より好ましくは26mmを超え、さらにより好ましくは28mmを超え、最も好ましくは30mmを超える。
h)ツイータ構成部品の曲率半径は一定であり、15mmを超え、好ましくは18mmを超え、より好ましくは20mm、さらにより好ましくは22mmを超え、最も好ましくは24mmを超える。
i)ツイータ構成部品の曲率半径は一定でなく、すべての点で15mmを超え、好ましくは18mmを超え、より好ましくは20mm、さらにより好ましくは22mmを超え、最も好ましくは24mmを超える。
【0036】
金属又は合金内に埋め込まれたグリットからなる複合材料から形成される十分に稠密化された本体の場合には、複合材料の固さの増加は、2つの材料のヤング率に依存する。一般に、充填材の固さはマトリクス材料よりもはるかに大きい。例えば、ダイアモンドは、約1000GPaのヤング率を有し、アルミニウムは、80GPaのヤング率しか有していない。したがって、ダイアモンドは、アルミニウムより10倍の固さを有する。複合材料の固さは、2つの限界値の間にあると想定できる。最良の場合には、それは、混合の法則に一致し、最悪の場合には、剛性は、以下の関係を使用して計算される。
Ec=1/(Vf/Ef)+((1−Vf)/Em)
ここで、
Ec=複合材料の弾性率
Vf=充填物の体積率
Ef=充填物のヤング率
Em=マトリクスのヤング率。
【0037】
データは、アルミニウム及びダイアモンドからなる複合材料に関して添付の図1にプロットされている。このデータから、複合材料の弾性率をできる限り大きくすることを確実にするために、大きい弾性率の充填物が大きい割合で要求されることが理解できる。性能の最大の増加は、充填率を80%よりも大きく増加させることによって達成される。この充填率は、単一モード(モノ・モーダル)の球形粉末を最密構造にすることによって理論的に得ることができる充填率を実際に超えており、後述されるようなマルチ・モーダルのグリット分布を使用する利点を示している。
【0038】
高い比固さ構造体を作製する別の方法は、間隙の体積の大部分を占有されない状態にする、即ち部分的に稠密化された又は多孔質構造にすることである。この方法は、いくつかの利点を有する。第1に、充填物が使用される場合、弾性率の大きい充填物粒子が互いに接触し、優れた固さを与える。第2に、構造の密度が小さくなり、したがって所与の厚さに対する質量も低下する。有効密度が低下するため、構造体を厚くして使用できるという利点が得られる。そのような部分的に稠密化した、又は多孔質の構造体を作製することにより、材料を製造し、形成して形作る手段を制限できる。1つの方法では、弾性率の大きな充填物が、所定の厚さの適切な金属層によって被覆される。次いで、被覆された粉末は、有機質結合材(例えば、ポリエチレン・グレコール、PEGなど)を使用してプレス加工されてニアネット・シェイプの圧粉体にされ、最後に、部分的に稠密化され、しかも一体の構造を作製するために焼結される。
【0039】
超硬質グリットなどを含む部分的に稠密化された金属材料では、最終形状の密度は、構成部品の厚さ全体にわたって、又は最大長を横切って選択的に変化できる。したがって、構成部品を形成する層は、層の平面及びその厚さ全体にわたる両方での層又はシート厚さ、稠密化の度合い、又は厚さ全体にわたる稠密化の分布、又は存在するところでのグリット粒子の分布を局部的に変える手段によって、特定の特性のシート密度及び局部的な剛性を有して製造できる。これにより、例えば、層の表面での材料の密度を内部と比較して増加させることによって、所与の厚さ及び質量に関する剛性が増大される。或いは、グリットが存在するところでは、層の表面でのグリット粒子の密度を内部と比較して増加させることによって、同時に所与の厚さ及び質量に関する剛性が増加する。これらの2つの効果は、互いに結び付けることができ、又は層の厚さの変化と結び付けることができる。多くの異なる可能性に対する最適の選択は、構成部品の正確な幾何学的形状、及び使用される製造方法の詳細に依存する。
【0040】
一般的な金属マトリクス複合材料は、アスペクト比が大きく固さの大きい充填物相を使用する。第1に、マトリクス相と比較した充填物のヤング率の違いが大きいほど、充填物相を形成する粒子のアスペクト比の利点がより大きくなる。圧縮成形によって形成されるシートの場合、特に充填物相がダイアモンド又はcBNの場合、繰り返しの圧縮成形及び圧延段階中に起こる粒子の寸法/形状の微細化は、アスペクト比の高いダイアモンド粒子を加えることの利点を制限するので、特にダイアモンドが高温高圧(HPHT)人造ダイアモンド又は天然ダイアモンドである場合には、大まかに等軸にされたグリット粒子が一般に好ましい。
【0041】
金属Alの密度は2.7g/cmである。ダイアモンドの密度は、わずかに高く3.51g/cmである。したがって合成材料の密度は、ダイアモンド含有率の増加に伴ってわずかに上昇するが、固さの上昇よりもはるかに遅い。しかし、部分的に稠密又は多孔質の構造の場合、剛性がさらに増加できる一方で、密度は混合材料を形成する材料の密度の加重平均よりも小さく、2.7g/cm未満に小さくできる。
【0042】
ダイアモンド又はcBNグリットは、当分野で周知のいくつかの方法によって調製できる。例えば、グリットは、ダイアモンド又はcBN超硬質材料を粉砕することによって調製でき、それを注意深く制御することによって、アスペクト比即ちグリット粒子の形状寸法の最大と最小の間の変化の基準である「ブロッキネス」がある範囲で変化するグリット形態を提供できる。粉砕した後に、グリットは、サイズ選別及び化学的な丸みだし又は研磨加工を含むさらなる加工を受けることができる。ダイアモンド及びcBNは、異なるグリットの寸法範囲で得ることができる。例えば、ナノ・ダイアモンドは、一般に5〜100nmの範囲の寸法で得られ、爆発合成、レーザ合成、及びその他の技術によって形成できる。より大きな寸法には、例えば50nmの寸法の広がりを伴って入手可能な0.1μm〜1μmの範囲のサブミクロン・グリット、及び1μm〜20μm以上の範囲を包含するミクロン寸法のグリットが含まれる。より大きなグリット寸法が、高圧高温技術を使用したプレス加工で一般に合成されるが、その他の適切な方法が使用できる。
【0043】
グリットを作製するさらなる新規な方法が、多結晶CVDダイアモンド合成によるものである。ある種の成長状態の下では、高成長速度で円柱状の粒を形成することが可能であり、それは、十分に連晶せず、化学エッチング及び粉砕などの方法によって分離することができる。注意深い調製によって、一般的に1.2を超え、より一般的には1.5を超え、さらにより一般的には2.0を超え、最も一般的には3.0を超えるアスペクト比を有する粒子を形成できる。この点で、そのようなダイアモンド・グリットは一般的でない。はるかに大きいアスペクト比を有するグリットも可能であるが、これらは、圧縮成形段階の間に完全な状態のまま残らないため、一般に、製品に有用な利点をもたらさない。さらに平面基材上のCVD成長プロセスに存在する固有の成長方向のために、多結晶のダイアモンド層に形成される個々のCVDダイアモンド結晶の内部成長形態のため、本発明の圧縮成形及び圧延の段階の間、それらを等軸粒子形態に縮小することに対してHPHTグリットよりも影響を受けにくい。これによって、金属マトリクス合成材料の形成が可能になり、そこでは、粒子の長径が好ましい配向に分布する場合、固さが特定の平面又は方向で向上し、又、配向がランダムな場合、固さの全体的な上昇が促進される。いくつかの例では、圧延の間、破断及び寸法の低下は起こらないが、破断平面は、最初のCVD成長方向を含み又はその近くに存在することが好ましく、それによって材料のより高いアスペクト比を維持し又は促進する。圧縮成形及び/又は圧延後のそのような非等軸粒子の厳密な配向分布は、それに続く加工段階の詳細に依存する。非等軸のダイアモンド結晶又はダイアモンド粒子の使用は、ニアネット・シェイプに直接的に形成された多孔質の圧縮成形物で特に有利である。非等軸CVDダイアモンドの別の形式は、例えば微細なフィラメントの上に成長する多結晶のウィスカであり、その後フィラメントは、化学的に除去できる。それらも同様に使用できるが、それらは上述の非等軸CVDダイアモンドの利点のいくつかを欠いている。
【0044】
グリットは被覆なしで使用できる。あるいは、グリットは被覆されることができる。特に、マトリクス材料をダイアモンド又はcBNグリット粒子に強固に接着するのに有利である。これは、ダイアモンド・グリットの表面で共有性炭化物を形成することにより、ダイアモンド・グリットにおいて最も良く達成される。一般に、これはTi、Ta、W、Cr、Va、Nb、Zrなどの金属を用いて粒子を被覆し、ダイアモンドとの反応によって、関連する炭化物を形成することによって作製できる。グリット粒子を被覆するために様々な手段が使用でき、最終製品の密度への影響を最小に抑えることが可能な最も薄い層を使用して最大表面被覆率を達成することが重要な要素である。例えば、Ti被覆を使用すると、層の厚さは、一般に5nm〜80nmの範囲であり、より好ましくは10nm〜40nmの範囲である。ダイアモンド上のチタン被覆は、アルミニウム炭化物が大部分は共有結合でなくイオン結合なので、金属マトリクスがアルミニウム又はアルミニウム合金の場合に特に有益である。Ti金属の密度は4.51g/cmである。したがって、ダイアモンドをAlマトリクスに強固に接着するために要求されるものを超えて過剰にTi被覆することは望ましくないことが明らかである。この点では、cBNは、アルミニウム・マトリクスと直接的にはるかに強い接着を形成する利点を有するので、グリット・マトリクスとの組合せにおいて被覆を使用することは、一般に有利ではない。
【0045】
金属マトリクスを形成する前にグリットに金属被覆を付着させる方法には、CVD被覆技術、蒸着技術、スパッタ技術、プラズマ溶射、及び溶射が含まれる。さらに、ゾル・ゲル法などのある範囲の有機化学に基づく技術が使用できる。そのような方法では、グリットの表面が有機層によって作られ、有機物を荷う金属がその層に接着され、次いで有機物元素を除去し、炭化物を形成するために、真空又は制御された大気圧の下での回転ドラム炉などの熱加工が使用される。
【0046】
一般に、ヤング率を最大化するために、最終の合成材料におけるダイアモンド又はcBNの体積を最大化し、金属マトリクスの体積を最小化することが有利である。これは、最終的な形状が形成できるように最終的材料の十分な加工性を保持することとも均衡をとる必要がある。ダイアモンド又はcBNグリットの体積での全含有率を増加させる特に有用な方法は、バイ・モーダル(bi−modal)、トリ・モーダル(tri−modal)、又はその他のマルチ・モーダルのグリット寸法分布を使用することである。例えば、バイ・モーダル・グリット分布では、より大きなグリット寸法の粒子間の隙間は、実質的により小さなグリット寸法を有するグリット粒子によって満たすことができる。トリ・モーダル分布では、最小のグリット寸法粒子が残りの隙間を満たすことができる。一般に、トリ・モーダル(又はバイ・モーダルで等価になった)グリット分布では、異なるグリットの寸法は、例えば4μm、0.4μm、及び40nmを含み、約10倍変化する。マルチ・モーダル・グリット分布を使用する金属マトリクス構成部品において、体積で80%よりも大きいグリット含有率を達成することができる。グリット寸法分布は、それに続いて金属マトリクス複合材料を加工することによってさらに変更でき、これも有利に使用できる。高いグリット密度(全体で最大稠密化した実体積と比較して)は、多孔質構造と組み合わせると特に有用であることができる。
【0047】
例えば、アルミニウム・マトリクスを使用する場合に特に有益な組合せは、より大きなグリット寸法としては、好ましくは例えばTiによって被覆されたダイアモンド・グリットを使用し、より小さなグリット寸法としては被覆されていないcBNを使用することである。これによって、グリット寸法が低下すると、グリットの被覆された表面積が急激に増大するので、被覆金属の全体の含有率が最小限に抑えられる。したがって、マルチ・モーダルのグリット分布の利益を得ながら、複合材料の密度も最小限に抑えることができる。
【0048】
当分野で知られた、最終の金属マトリクスを形成するための多種多様な方法がある。例示によってのみ、少数の変形形態が本明細書に説明される。1つ又は複数のグリット寸法を選択し、化学研磨又は金属被覆などの任意の前加工を行った後に、金属マトリクス複合材料を形成する次の段階は、例えば、回転ドラム混合容器などの技術を用いて粉末の形でのマトリクス金属を全体的に混入することである。加工可能なストリップの形成は、それから、有機質結合材を任意に加え、結合材及びマトリクス混合物を含むストリップを注入し、押出し成形し、又は鋳造することを伴うことができる。次いで、このストリップは、圧延及び熱処理を含む一連のステージによって最終製品に圧縮成形される。
【0049】
一般に、例えば、ステンレス鋼などから作製された支持ストリップの上に鋳造することによって、最初の圧縮成形されていない層又はストリップが形成されるが、用途によってはFe、Ni、又はCoを基としたものを含むその他の金属が適切である。結合材を乾燥又は硬化させることによって、ストリップは、自己支持型ストリップの形に変換でき、それを支持ストリップから引き離した後に、取扱いに十分な、さらに機械的加工に十分な機械的結着性を有する。或いは、金属マトリクス・ストリップが支持ストリップによってなお支持されて、それに続く圧縮成形及び熱処理段階の一部又はすべてを行うことができ、金属マトリクス・ストリップが十分に機械的に堅固になり、又は最終的な形状に加工する状態になった後に分離が行われる。
【0050】
次いで、最終製品の形成は、中間熱処理、ストリップの厚さを減らすこと、結合材を除去すること、ストリップを完全に稠密化すること、そして最後に、用途によって要求される厚さにストリップの厚さを減らすことを伴う一連の冷間又は熱間圧延段階を含むことができる。熱処理段階を制御することによって、最終的なストリップの加工硬化の度合いが制御できる。層が確実にローラを円滑に通過するように、標準的でよく知られた潤滑剤を使用することができる。
【0051】
ストリップを形成する方法に関する2つの特定の変形形態を示す。
a)粉末が、ステンレス鋼製などの支持金属ストリップの上にドライキャスト(dry cast)され、次いで結び付けられたストリップが少なくとも最初の圧延段階、及び任意で最初の熱処理段階を通過し、それから金属マトリクス複合材料ストリップが、支持ストリップから分離され、そして任意でさらに圧延/熱処理によって加工される。乾燥粉末に関する変形例としては、粉末を互いに水平に配置された2つのローラの間に直接的に下方に供給し、支持ストリップを使用しないで自己支持型ストリップを形成する。
b)水および水に拡散又は溶解された結合材の混合物を加えることによって、乾燥粉末からスラリが形成される。一般に、結合材は、メチルセルロースなどのセルロース結合材である。結合材は、第1の圧縮成形ステップの後に熱処理ステップ中に粒子混合物から除去されるように注意深く選択される。任意で、二クロム酸カリウム又はその他の混合物に加えられる腐食防止剤があってもよい。次いでこのスラリは、ステンレス鋼などの金属支持ストリップの上に鋳造され、それから乾燥されて可撓性フィルムを形成する。このフィルムは、自己支持型であり、この段階で支持ストリップから分離できる。或いは、このフィルムは、例えば少なくとも最初の圧延段階、及び任意で最初の熱処理段階を通過して、支持ストリップ上でさらに加工することができ、それから金属マトリクス複合材料ストリップは、支持ストリップから分離され、そして任意でさらに圧延/熱処理によって加工される。
【0052】
加工方法に関するその他の変形形態には、従来のプレス加工及び打抜き加工技術が含まれてもよい。単一又は複数段階の熱間プレス加工及び熱処理も、粉末を最終的な寸法及び形状に直接的に稠密化し、形成するための両方に使用できる。したがって、最終的な形状に形成することは、稠密化加工と一体化した1部分であることができ、又はストリップ、又は未加工の金属マトリクス複合材料のその他の様態に行われるその後に続く加工であることができる。後者の場合では、最終的な形状に形成することは、この場合も同様に冷間又は熱間プレス加工などの方法によるものであることができる。最終的な方法に形成するこれらの方法は、弾性率の大きい材料から100%構成された構成部品を製造するのに使用されるものよりもかなり簡単明瞭である。
【0053】
プレス加工及び同様の技術の特有の特徴は、最終形状の箔が、全体的に均一の厚さを有していないことである。特に、最初の平坦な層から偏りを形成するように伸張された領域は、より薄くなる傾向がある。金属マトリクス・スピーカ構成部品の場合には、3次元に湾曲した領域の頂点の付近の箔を薄くすること、及びボイス・コイルの装着点を形成するスカート部又は管状の延長部付近を厚くすることを含むスピーカの形状が特に有利な設計なので、それほど大きな強度を必要としない点で質量を低減し、したがって音響特性を向上させるという利点を得るためにこれを利用することができる。
【0054】
或いは、特に、好ましくは部分的に稠密化され又は多孔質である最終形状に直接的に圧縮成形する場合には、最終的な構造体の中のダイアモンドの粒子の寸法、形状又は分布を制御し変化させること、及び同時に圧縮成形又は多孔質の度合いを変化させることも可能である。グリットの寸法及び形状は、鋳型へ加える点で制御することができ、または、これは行うのが複雑であるが、構造全体にわたる各点での圧縮成形の度合い及び状態によって制御できる。1つの例として、主として屈曲される最終的な構造体の領域は、より高度に多孔質にされ、それによって質量を増加させずに固さを増加させ、主として圧縮又は引っ張り領域は、より重く圧縮成形できる。これらの変形形態は、構造の外部の厚さを変更することへの付加又は代替としてのものであることができる。ツイータ構成部品の特定の場合には、構成部品の頂点は主として屈曲状態にあるので、これはより多孔質であり、より低い密度であることができ、したがって固さを増加させながら、質量が低減できるようにする。この場合に、厳密な設計及び多孔質の度合いによって、この領域での厚さを増加させ、又は減少させることができる。
【0055】
本発明のツイータ構成部品は従来技術に比べて有利な点がいくつかある。特に、それはダイアモンド又はcBNの極度に大きな固さによって促進された性能を提供する。ダイアモンド又はその他の超硬質粒子内容は、はるかにコストが少なくてすむので、固体ダイアモンド・ツイータ・ドームの固さに、より低いコストで近づくこともできる。さらに、最終的な形状に形成する方法としては、十分に確立され最終形状へのダイアモンド合成技術よりも汎用性のある技術を使用する。
【0056】
さらに、理想的なツイータ構成部品は、作動帯域幅内又はその近くでの自然共振をまったく伴わない剛性の大きい構造を含む。作動帯域幅に近接するが、外側(例えば、動作の帯域幅の2オクターブ以内、及びさらには5オクターブ以内)にある共振でも、作動又は可聴帯域幅内で歪み又は倍音を生じる虞がある。金属マトリクス材料を注意深く調整することによって、大きい固さを得ると同時に、どのような振動の制振も達成することができ、したがって生成される音質をさらに高めることができる。
【0057】
より従来からのスピーカ技術と比較して、ダイアモンド又はcBNグリットを含む金属マトリクス構成部品は、より軽く、及び/又はより強固な解決策を提供する。
【0058】
次に本発明を以下の限定されない例を参照して、例示によってのみ説明する。
【0059】
「実施例1」
粉砕されたままの状態の6μmのダイアモンド・グリットが充填物相として選択され、化学的に洗浄された。金属マトリクスは、Alが選択され、これが7〜15μmの平均粒子寸法及び53μmよりも小さい最大粒子の制限を伴う99.5%純Al粒子として調製された。次いで金属マトリクス材料の2つの構成部品が、混合ドラム内で体積%で25%のダイアモンドと混合され、次いで水にメチルセルロースを加えることによってスラリに変えられた。次いで、一般に約1.2mmの厚さ、35〜40%の密度の自己支持型フィルムを形成するために、ステンレス鋼支持ストリップの上に鋳造され、乾燥され、支持ストリップから分離された。第1の圧延段階及び熱処理サイクルによって約0.45mmの厚さ及び約80%の密度、第2の圧延及び熱処理サイクルの後に0.4mmの厚さ及び約99%の密度、及び第3の圧延及び熱処理サイクルによって0.35mmの最大限の密度の層に低減された。これらの熱処理段階は、結合材を除去するために、窒素雰囲気内で一般に約650℃で行われた。最大密度層の厚さをさらに低減するために、複数の圧延通路を使用し、前の熱処理での厚さと比較した熱処理ごとの厚さは、約70%であり、これを達成するための圧延通路の数は、約10から約40まで着実に増加された。この熱処理は、空気中で約450℃で行われた。これは、最終のストリップが50μmの厚さになるまで続き、最終の熱処理が完了した。
【0060】
「実施例2」
混合及び圧縮成形の前に当分野で知られた方法によって、20〜30nmの厚さの層を形成するためにTiによって予め被覆される点を除いて、実施例1の方法に従った。
【0061】
「実施例3」
充填物が、実施例2でのTiによって予め被覆された6μmのダイアモンド・グリットを体積で合計20%まで含み、被覆されない0.6μmのcBNグリットを体積で合計15%まで含んだ点を除いて、実施例1の方法に従った。
【0062】
「実施例4」
3次元の固い構造体、特に図2及び図3に示されるスピーカ用のツイータ・ドームを形成するために、実施例1〜3で作製された材料が使用された。最大幅の点12で28mmの直径を有したツイータ10を形成するために、最終的な最大限の密度の形態でのストリップが、ステンレス鋼成形型を使用する鋳型内に熱間プレスされ、24mmの半径を有した球面のセグメントを形成した。さらに、縁部14の周囲には直径が28mmの円筒形の部分を形成するリム16があり、それは1mm延びボイス・コイル形成器(図示されない)用の取付け具の手段を提供した。
【0063】
「実施例5」
自己支持型ストリップが、実施例1〜4に述べられたプロセスの初期段階に形成される前に、ある範囲の厚さに実施例1の方法によって作製され、最大稠密化が完了する前に除去された。特に、45%、80%、及び95%の稠密化率を有し、及び厚さが50μm〜200μmの材料が生産された。次いで、これらの材料は、図2及び図3に示されたものと同様な構成で、様々な稠密化の度合いを伴う最終形状のツイータ構成部品を形成するために、熱間及び冷間プレス加工技術を使用して最終形状に直接的に形成され、それから熱処理された。特に、材料は最大幅の点で28mmの直径のツイータを形成するために、ステンレス鋼成形型を使用する鋳型内に熱間プレスされ、24mmの半径を有した球面のセグメントを形成した。さらに、縁部の周囲には直径で28mmの円筒形の部分を形成するリムがあり、それは1mm延び、ボイス・コイル形成器(図示されない)用の取付け具の手段を提供した。
【0064】
「実施例6」
実施例1に記述された様式でダイアモンド/アルミニウム・スラリが調製された。これは、次いで、一般に130μmの厚さ、及び約35%の密度の、ドームの頂点付近で110μmに薄くされた自己支持型ドーム構造を形成するため、ステンレス鋼成形型を使用して最終的な形状に近似して鋳造され、乾燥され、成形型から分離された。これは、次いですべての点で60μmの厚さ、及び体積の大部分で稠密化が約75%であるが、ドームの頂点で64%に稠密化が低減されたドームを得るために、ステンレス鋼成形型を使用した2つの圧縮成形/熱処理段階を使用して最終的な形状に圧縮成形された。ドームの頂点付近の稠密化の低減によって、この領域でのグリット寸法が、わずかにより大きなグリット寸法分布を維持することが可能になった。第1の圧縮成形後の熱処理は、結合材を除去するために窒素雰囲気内で約650℃で行われ、第2の圧縮成形段階の後の熱処理は、Alの加工硬化の度合いを制御するために低い温度範囲にわたるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】アルミニウム・マトリクス内のダイアモンド充填物によって例示される、充填材の体積率の関数としての複合材料のヤング率又は固さ変化における上方及び下方の境界を示すグラフ。
【図2】本発明の構成部品の好ましい実施例の斜視図。
【図3】図2の構成部品の線3〜3での側断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属又は合金マトリクスに埋め込まれた超硬質材料の粒子又はグリットから形成された箔体を含む構成部品。
【請求項2】
前記超硬質粒子又はグリットが、ダイアモンド又はcBN(立方晶窒化ホウ素)粒子又はグリットである、請求項1に記載された構成部品。
【請求項3】
前記箔体が5μm〜500μmの厚さを有する、請求項1又は請求項2に記載された構成部品。
【請求項4】
前記箔体が20μm〜100μmの厚さを有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項5】
前記箔体が40μm〜50μmの厚さを有する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項6】
前記箔体が、全体積密度で2%を超えるダイアモンド又はcBN粒子又はグリット、或いはその混合物を含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項7】
前記箔体が、全体積密度で10%を超えるダイアモンド又はcBN粒子又はグリット、或いはその混合物を含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項8】
前記箔体が、全体積密度で30%を超えるダイアモンド又はcBN粒子又はグリット、或いはその混合物を含む、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項9】
前記箔体が、全体積密度で50%を超えるダイアモンド又はcBN粒子又はグリット、或いはその混合物を含む、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項10】
圧縮前の平均径によって特徴付けられる平均の粒子又はグリット寸法が、0.2μm〜60μmである、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項11】
圧縮前の平均径によって特徴付けられる平均の粒子又はグリット寸法が、1μm〜20μmである、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項12】
圧縮前の平均径によって特徴付けられる平均の粒子又はグリット寸法が、4μm〜10μmである、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項13】
前記箔体が、剛い3次元形状を有する、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項14】
前記箔体が球面のセグメントを含む、請求項13に記載された構成部品。
【請求項15】
前記箔体の形状が、長円又はその他の円錐曲線を回転させることによって定義される、回転対称軸線を有し曲率半径の急激な変化のない楕円体、放物体、及び双曲線体である、請求項13に記載された構成部品。
【請求項16】
前記金属又は合金マトリクスが十分に稠密化されている、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項17】
前記金属又は合金マトリクスが部分的に稠密化され、又は多孔質である、請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項18】
前記金属又は合金マトリクスが、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、及びチタンからなる群から選択される純金属又は合金を含む、請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項19】
音響構成部品である、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項20】
前記音響構成部品がドーム・セグメントである、請求項19に記載された構成部品。
【請求項21】
前記ドーム・セグメントが、スピーカ・ドームとしての使用に適するように一体のコイル取付けフランジ又は管を有する、請求項20に記載された構成部品。
【請求項22】
前記スピーカ・ドームが31kHzよりも大きい分割振動周波数を有する、請求項21に記載された構成部品。
【請求項23】
前記スピーカ・ドームが軸上応答曲線からの偏りを有し、20kHzで測定される5dBよりも少ない位相の減衰を可能にする、請求項21又は請求項22に記載された構成部品。
【請求項24】
高性能のツイータ構成部品である、請求項1から請求項23までのいずれか1項に記載された構成部品。
【請求項25】
アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、及びチタン並びにそれらの組合せから選択された金属を含む金属又は合金マトリクスに埋め込まれたダイアモンド粒子又はグリットを含む複合材料。
【請求項26】
金属又は合金マトリクスに埋め込まれたダイアモンド粒子又はグリットから形成された箔体を含む複合材料であって、前記ダイアモンド粒子又はグリットが化学蒸着によって形成されている複合材料。
【請求項27】
前記ダイアモンド・グリットが非等軸である、請求項26に記載された複合材料。
【請求項28】
前記ダイアモンド・グリットが1.2を超えるアスペクト比を有する、請求項26又は請求項27に記載された複合材料。
【請求項29】
金属又は合金マトリクスに埋め込まれた超硬質材料の粒子又はグリットから形成された、圧縮成形された箔体を含む複合材料であって、最終的な箔厚さへの圧縮成形前の最大の粒子又はグリット寸法の比率が0.5〜0.05の範囲にあるように前記粒子又はグリットが選択されることを特徴とする複合材料。
【請求項30】
金属又は合金マトリクスに埋め込まれた超硬質材料の粒子又はグリットから形成された、圧縮成形された箔体を含む複合材料であって、最終的な箔厚さへの圧縮成形後の最大の粒子又はグリット寸法の比率が0.3〜0.05の範囲にあるように前記粒子又はグリットが選択されることを特徴とする複合材料。
【請求項31】
比較的大きな剛性及び小さな質量を有する3次元構造体を製造する方法において、該方法が、超硬質の研磨用粒子又はグリット、及び金属マトリクス材料を提供するステップと、複合ストリップ又は箔を形成するために前記超硬質の研磨用粒子又はグリット、及び前記金属マトリクス材料を共に圧縮成形するステップと、前記複合ストリップ又は箔を前記3次元構造体に形成するステップとを含む、3次元構造体を製造する方法。
【請求項32】
前記超硬質粒子又はグリットを、前記金属マトリクス材料と共に圧縮成形する前に、金属又は合金と共に予め被覆し、金属被覆が前記金属マトリクス材料の金属と同じ又は異なることができる、請求項31に記載された3次元構造体を製造する方法。
【請求項33】
前記金属被覆がチタン又はチタン基合金である、請求項32に記載された3次元構造体を製造する方法。
【請求項34】
前記金属マトリクスの材料が、圧縮成形の前に前記超硬質粒子又はグリットの上に被覆される、請求項31に記載された3次元構造体を製造する方法。
【請求項35】
前記超硬質粒子又はグリットが、ダイアモンド粒子又はグリットである、請求項31から請求項34までのいずれか1項に記載された3次元構造体を製造する方法。
【請求項36】
前記複合ストリップ又は箔が、バイ・モーダル、トリ・モーダル、又はその他のマルチ・モーダルのダイアモンド粒子又はグリットの寸法分布を含む、請求項35に記載された3次元構造体を製造する方法。
【請求項37】
前記超硬質粒子又はグリット、及び前記金属マトリクス材料が乾燥粉末の形で提供され、混ぜ合わせられて、圧縮成形され、自己支持型ストリップを形成する、請求項31から請求項36までのいずれか1項に記載された3次元構造体を製造する方法。
【請求項38】
前記3次元構造体の剛性又は密度が、層又はシートの厚さ、稠密化の度合い、厚さ全体にわたる稠密化の分布、又は前記複合ストリップ又は箔の平面又は厚さ全体にわたる超硬質粒子又はグリットの分布を変えることによって変えられる、請求項31から請求項37までのいずれか1項に記載された3次元構造体を製造する方法。
【請求項39】
前記3次元構造体がスピーカ・ドームであり、前記ストリップ又は箔の厚さが前記スピーカ・ドームの外周部に向かって増加する、請求項38に記載された3次元構造体を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−522023(P2008−522023A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542167(P2007−542167)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003546
【国際公開番号】WO2006/056871
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(503458043)エレメント シックス リミテッド (45)
【Fターム(参考)】