説明

金属微粒子分散物及びその製造方法、着色組成物、感光性転写材料、遮光画像付き基板、カラーフィルタ並びに液晶表示装置

【課題】分散安定性の高い金属微粒子分散物の製造方法及びこの金属微粒子分散物を含む着色組成物、この着色組成物を用いた感光性転写材料、遮光画像付き基板、この遮光画像付き基板を用いたカラーフィルタ並びにこのカラーフィルタを用いた液晶表示素子の提供。
【解決手段】硫黄の割合が3.0質量%以上の硫黄含有化合物と金属微粒子とを含む分散液を限外濾過により洗浄し、濃縮する工程を有することを特徴とする金属微粒子分散物の製造方法この金属微粒子分散物を含む着色組成物、この着色組成物を用いた感光性転写材料、遮光画像付き基板、この遮光画像付き基板を用いたカラーフィルタ並びにこのカラーフィルタを用いた液晶表示素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子分散物及びその製造方法、着色組成物、感光性転写材料、遮光画像付き基板、カラーフィルタ並びに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属微粒子を用いた着色組成物は、印刷インク、インクジェットインク、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、プラズマデイスプレイパネル(PDP)の隔壁、誘電体パターン、電極(導体回路)パターン、電子部品の配線パターン、導電ペースト、導電フイルム、ブラックマトリックス等の遮光画像等に広く用いられている。前記着色組成物の中で黒色材料用着色組成物は液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置の周辺部に設けられた黒色の縁や、赤、青、緑の画素間の格子状やストライプ状の黒色の部分、さらにTFT遮光のためのドット状や線状の黒色パターン等、いわゆるブラックマトリックス(以下、「BM」ともいう。)の他に各種遮光画像に用いられることが期待されている。
BMは表示コントラストを向上させるため、また薄膜トランジスター(TFT)を用いたアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置の場合には光による電流リークによる画質低下を防止するために用いられており、高い遮光性(光学濃度ODで3以上)が必要である。
【0003】
一方で、近年は液晶表示装置がTVへ応用されるようになってきたが、TVでは透過率が低く、かつ高い色純度カラーフィルタを使用して高輝度を得るため、バックライトの輝度が高くなる傾向にあり、コントラストの低下や、周辺額縁部分の透けを防止するため、BMに高い遮光性が要求される。
【0004】
更にTVは、太陽光が入射する部屋に長期間設置される事から、太陽光によるTFTの劣化が懸念され、また、(1)ODが高いことで画像の引締まり感がでること、つまりコントラストが高いこと、及び(2)外光での液晶の白さが目立たなくなることの意味でもBMに高い遮光性が要求される。
【0005】
クロム等の金属膜を遮光層とするBMの形成方法としては、例えば、金属薄膜を蒸着法やスパッタリング法により作製し、該金属薄膜の上にフォトレジストを塗布し、次いでBM用パターンをもつフォトマスクを用いてフォトレジスト層を露光現像し、その後露出した金属薄膜をエッチングし、最後に金属薄膜上のレジスト層を剥離することによりBMを形成する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
この方法は金属薄膜を用いるため、膜厚が小さくても高い遮光効果が得られるという利点がある。しかし、蒸着法やスパッタリング法という真空成膜工程やエッチング工程が必要となり、コストが高くなるとともに環境に対する負荷も無視できないという問題がある。また、金属膜であるため反射率が高く、強い外光の下では表示コントラストが低いという問題もある。これに対して、上記金属薄膜として、低反射クロム膜(金属クロムと酸化クロムとの2層からなるもの等)を用いるという手段があるが、更にコストアップとなることは否めない。そしてエッチング工程では金属イオンを含有した廃液が排出されるため、環境負荷が大きいという大きな欠点も有している。特に最もよく用いられるクロムは、有害で環境負荷が非常に大きい。昨今、EUのELV指令、RoHS指令に代表されるように環境負荷低減への社会的な関心が高まっており、クロムを代替した材料の提案が行われている。
【0007】
また、他のBM形成方法としては、遮光性顔料、例えばカーボンブラックを含有する感光性樹脂組成物を用いる方法も知られている。該方法としては、例えば、透明基板にR、G、B画素を形成した後、この画素の上にカーボンブラック含有感光性樹脂組成物を塗布し、透明基板のR、G、B画素非形成面側から全面に露光する、セルフアライメント方式のBM形成方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
上記方法は、上記金属膜のエッチングによる方法に比較して製造コストは低くなるものの、十分な遮光性を得るためには膜厚が厚くなるという問題がある。その結果、BMとR、G、B画素との重なり(段差)が生じ、カラーフィルターの平坦性が悪くなって液晶表示素子のセルギャップムラが発生し、表示ムラ等の表示不良につながることになる。
【0008】
表示ムラとは、液晶表示装置にグレイのテスト信号を入力させた時に観察される淡いムラである。ブラックマトリックス基板表面が平滑でない場合に、液晶の配向が乱れ、表示ムラの原因となると言われている。比較的くっきりした筋状に見える「スジムラ」は感光性樹脂層の形成時に生じた厚みムラ、露光のムラ、現像処理のムラ、熱処理のムラなど、配向制御用突起の形成時に発生しているものと、液晶表示装置として機能する際に、配向制御用突起と液晶の間のインターラクションにより発生するムラとが考えられるが、機構は定かではない。
【0009】
一方、透明基板上に親水性樹脂を含有する感光性レジスト層を形成し、BM用パターンを有するフォトマスクを介して露光・現像して透明基板上にレリーフを形成し、この透明基板を無電解メッキの触媒となる金属化合物の水溶液に接触させ、金属化合物をレリーフ中に含有させ乾燥した後、熱処理を施し、その後、上記透明基板上のレリーフを無電解メッキ液に接触させることにより、粒径0.01〜0.05μmの遮光用の金属粒子がその内部に均一に分散されたBMを作製する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。上記金属粒子としてはニッケル、コバルト、鉄、銅、クロムが記載され、具体例としては唯一ニッケルが示されている。
しかしながら、この方法は、露光現像工程を含むレリーフ形成−無電解メッキ触媒の付与−熱処理−無電解メッキという、水を扱う煩瑣な処理工程が多い。そのため、低コストでのBM製造を大きくは期待できない。
【0010】
また、以下の特許文献3には黒色パターンを作製する着色組成物に磁性フイラーを使った例があるが、これらの例は10ミクロン以上の厚膜であり、単位膜厚辺りの濃度が低く、薄膜で遮光性能が高い遮光画像を低コストで作製することができない。
【0011】
上記以外に、環境負荷が小さく薄膜で光学濃度の高いブラックマトリックスを得る方法として、金属微粒子を用いる方法が知られている(例えば、特許文献4又は5参照。)。この方法によると、環境負荷が小さく、薄膜で光学濃度の高いブラックマトリックスを得ることができるとされている。
しかし、上記金属微粒子を含む着色組成物を用い遮光膜を作製し、パターニング露光、現像処理によって高精細のマトリックスを形成したときに、金属微粒子の凝集物による凹凸や、遮光膜作製時に調液した着色組成物の経時安定が悪く、安定に製造できない問題があり、技術改良が望まれていた。
【0012】
上記の技術改良のためには不純物除去の観点から十分な水洗が必要である。水洗方法としてデカンテーション法、限外濾過法、遠心分離法などが知られている。これらの方法の中で限外濾過法は他の方法と比較して粒子間距離を縮めることなく水洗できるため、凝集無く水洗できることが期待されている。しかし、限外濾過により十分な水洗を行うと固形分重量比が増加してしまうことが知られている(例えば、特許文献6参照。)。粒子表面積の大きいアスペクト比の高い粒子ではこの固形分重量比の増加に伴う凝集が顕著であり、その結果、表示ムラが発生してしまうという問題を抱えていた。
【特許文献1】特開昭62−9301号公報
【特許文献2】特許第3318353号公報
【特許文献3】特開2001−13678号公報
【特許文献4】特開2004−334180号公報
【特許文献5】特開2005−17322号公報
【特許文献6】国際公開番号 WO2002/094954
【非特許文献1】共立出版(株)発行「カラーTFT液晶ディスプレイ」第218〜220頁(1997年4月10日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、分散安定性の高い金属微粒子分散物の製造方法及びその方法により得られた金属微粒子分散物、この金属微粒子分散物を含み塗布液経時安定性が高く凝集物が少なく、薄膜で黒色濃度(遮光性能)が高い黒色の膜又はブラックマトリックスを初めとする遮光画像、あるいは薄膜で濃度の高い着色膜をはじめとする画像を安定に作製することができる着色組成物、この着色組成物を用いた感光性転写材料、平坦性に優れた遮光画像付き基板、この遮光画像付き基板を用いたカラーフィルタ並びにこのカラーフィルタを用いた表示ムラの低い液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明は、
<1> 硫黄の割合が3.0質量%以上の硫黄含有化合物と金属微粒子とを含む分散液を限外濾過により洗浄し、濃縮する工程を有することを特徴とする金属微粒子分散物の製造方法である。
【0015】
<2> 前記金属微粒子のアスペクト比が2以上であることを特徴とする<1>に記載の金属微粒子分散物の製造方法である。
【0016】
<3> 前記硫黄含有化合物が、酸性基を有することを特徴する<1>又は<2>に記載の金属微粒子分散物の製造方法である。
【0017】
<4> 前記酸性基が、カルボキシル基であることを特徴とする<3>に記載の金属微粒子分散物の製造方法である。
【0018】
<5> 前記金属微粒子が、元素周期表の第4周期、第5周期及び第6周期からなる群から選ばれる金属を一種または二種以上含有することを特徴とする<1>乃至<4>のいずれか1つに記載の金属微粒子分散物の製造方法である。
【0019】
<6> <1>乃至<5>のいずれか1つに記載の金属微粒子分散物の製造方法により製造された金属微粒子分散物である。
【0020】
<7> <6>に記載の金属微粒子分散物を少なくとも含む着色組成物である。
【0021】
<8> 支持体上に少なくとも感光性遮光層を設けた感光性転写材料であって、前記感光性遮光層が<7>に記載の着色組成物を含むことを特徴とする感光性転写材料である。
【0022】
<9> <7>に記載の着色組成物を用いて形成された遮光画像を有することを特徴とする遮光画像付き基板である。
【0023】
<10> <8>に記載の感光性転写材料を用いて形成された遮光画像を有することを特徴とする遮光画像付き基板である。
【0024】
<11> <9>又は<10>に記載の遮光画像付き基板を用いて作成されたことを特徴とするカラーフィルタである。
【0025】
<12> <11>に記載のカラーフィルタを用いて作成されたことを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、分散安定性の高い金属微粒子分散物の製造方法及びその方法により得られた金属微粒子分散物、この金属微粒子分散物を含み塗布液経時安定性が高く凝集物が少なく、薄膜で黒色濃度(遮光性能)が高い黒色の膜又はブラックマトリックスを初めとする遮光画像、あるいは薄膜で濃度の高い着色膜をはじめとする画像を安定に作製することができる着色組成物、この着色組成物を用いた感光性転写材料、平坦性に優れた遮光画像付き基板、この遮光画像付き基板を用いたカラーフィルタ並びにこのカラーフィルタを用いた表示ムラの低い液晶表示素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の金属微粒子分散物及びその製造方法、着色組成物、感光性転写材料、遮光画像付き基板、カラーフィルタ並びに液晶表示装置について詳細に説明する。
<金属微粒子分散物及びその製造方法>
本発明の金属微粒子分散物の製造方法は、硫黄の割合が3.0質量%以上の硫黄含有化合物(以下、本発明に係る硫黄含有化合物と称することがある。)と金属微粒子とを含む分散液を限外濾過により洗浄し、濃縮する工程を有することを特徴とする。
分散液中に不純物が多く含まれる場合に限外濾過を行うと、水洗回数を多くする必要があり、水洗回数が多いと従来では分散液中の金属微粒子が凝集することがあった。本発明の金属微粒子分散物の製造方法では、分散液中に硫黄の割合が3.0質量%以上の硫黄含有化合物を添加した状態で限外濾過を行うため、水洗回数が多くても金属微粒子の凝集を防ぐことができる。
【0028】
本発明に係る硫黄含有化合物の硫黄含有量が3.0質量%未満であると、分散安定性の低下のためか経時安定性の低下、品位の低下、表示ムラなどが生じることがある。
本発明に係る硫黄含有化合物の硫黄含有量の好ましい範囲は、4.5質量%以上であり、さらに好ましくは6.0質量%以上である。なお、本発明に係る硫黄含有化合物の硫黄含有量が多すぎると立体障害が弱まり分散安定性が低下するためか経時安定性の低下、品位の低下、表示ムラなどが生じることがある。そのため、本発明に係る硫黄含有化合物の硫黄含有量は30.0質量%以下であることが好ましい。
【0029】
本発明に係る硫黄含有化合物は、硫黄の含有量が3.0質量%以上であれば特に限定されるものではなく、例えば、チオエーテル基、メルカプト基、スルフィド基、チオキソ基等を含む化合物を挙げることができるが、分子中に酸性基を有することが好ましい。これにより、粒子形成時及び塗布液調製時に共に高い分散安定性を保持しているため、高品位で表示ムラのないブラックマトリックスを作製することができる。
本発明に係る硫黄含有化合物に含まれる酸性基は特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸、フェノール類、スルホアミド等が挙げられるが、この中でもカルボキシル基が塗布液調製時に特に分散安定性が高く、高品位で表示ムラのないブラックマトリックスを作製することができるため好ましい。
【0030】
本発明に係る硫黄含有化合物は、少なくとも1つのチオエーテル基を有する高分子化合物(以下、本発明に係る高分子分散剤と称することがある。)であってもよい。少なくとも1つのチオエーテル基を有する高分子化合物を用いることにより、金属微粒子の分散安定性を向上させることができる。本発明においては、このような高分子化合物の中でも高分子の側鎖部分にチオエーテル基を有する化合物が好適である。
【0031】
中でも、高分子の構成単位として、少なくとも一種のチオエーテル構造を側鎖に含むエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を分子中に有する高分子化合物が好ましく、下記一般式(1)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を有する高分子化合物が特に好ましい。
【0032】
【化1】

【0033】
前記一般式(1)において、R1は、水素原子、又は総炭素数1〜4のアルキル基を表す。
総炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、secブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。
【0034】
前記一般式(1)において、R2は、水素原子、総炭素数1〜18のアルキル基、総炭素数6〜14のアリール基、又は総炭素数7〜16のアラルキル基を表し、このアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は各々独立に、無置換でも置換基を有していてもよく、飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
【0035】
前記R2で表される総炭素数1〜18のアルキル基は、無置換でも置換基を有していてもよく、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基等のアルキル基が挙げられる。置換基を有する場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、スルホニル基等が好適である。
【0036】
上記のうち、総炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、総炭素数1〜8のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基は特に好ましい。
【0037】
前記R2で表される総炭素数6〜14のアリール基は、無置換でも置換基を有していてもよく、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基が挙げられる。置換基を有する場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、スルホニル基等が好適である。
上記のうち、総炭素数6〜10のアリール基が好ましく、フェニル基は特に好ましい。
【0038】
前記R2で表される総炭素数7〜16のアラルキル基は、無置換でも置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。置換基を有する場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、エステル基、スルホニル基等が好適である。
上記のうち、総炭素数7〜11のアラルキル基が好ましく、ベンジル基は特に好ましい。
【0039】
前記一般式(1)において、Zは、−O−又は−NH−を表す。また、Yは、総炭素数1〜8の2価の連結基を表す。
Yで表される総炭素数1〜8の2価の連結基は、例えば、アルキレン基(例、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基)、アルケニレン基(例、エテニレン基、プロぺニレン基)、アルキニレン基(例、エチニレン基、プロピニレン基)、アリーレン基(例、フェニレン基)、二価のヘテロ環基(例、6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基、ピリダジン−3,6−ジイル基)、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)、又はこれらの組み合わせ(例えば、−NHCH2CH2NH−、−NHCONH−等)であることが好ましい。
【0040】
前記Yで表されるアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、二価のヘテロ環基、並びにRで表されるアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。該置換基の例としては、前記R2で表されるアリール基の置換基と同じである。Rで表されるアルキル基及びアリール基は、既述のR2で表されるアルキル基及びアリール基と同義である。
【0041】
Yで表される総炭素数1〜8の2価の連結基のうち、総炭素数1〜6の2価の連結基が好ましく、中でも、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、−CH2−CH(OH)−CH2−、−C24−O−C24−は特に好ましい。
【0042】
本発明に係る高分子分散剤は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を1種のみならず、2種以上を共重合して硫黄原子を2以上含む高分子化合物であってもよい。また、側鎖を構成するチオエーテル構造は、硫黄原子を1つのみならず、前記Z、R2を硫黄原子を有する基で構成することにより、2つ以上の硫黄原子を有する側鎖とすることができる。
【0043】
本発明に係る高分子分散剤は、所望の高分子化合物に(好ましくは側鎖として)チオエーテル構造を導入する、あるいはチオエーテル基を(好ましくは側鎖に)持つ単量体の単独重合、又はチオエーテル基を(好ましくは側鎖に)持つ単量体と他の単量体との共重合により得ることができる。好ましくは、エチレン性不飽和単量体の側鎖にチオエーテル構造を導入する、あるいはチオエーテル構造を側鎖に含むエチレン性不飽和単量体の単独重合、又はチオエーテル構造を側鎖に含むエチレン性不飽和単量体と他の共重合成分との共重合により得ることができる。
【0044】
以下、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の具体例を示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0045】
【化2】

【0046】
上記した中でも、特に、R1が水素原子又はメチル基であって、R2がメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、又はフェニル基であって、Zが−O−であって、Yがエチレン基である化合物が好ましい。
【0047】
本発明に係る高分子分散剤は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位と、他のビニルモノマーとの共重合体であってもよい。
他のビニルモノマーとしては、芳香族ビニル化合物(例、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンなど)、シアン化ビニル(例、(メタ)アクリロニトリル、及びα−クロロアクリロニトリルなど)、カルボン酸ビニルエステル(例、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルなど)、脂肪族共役ジエン(例、1,3−ブタジエン、及びイソプレンなど)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸アルキルアリールエステル(例、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリル酸置換アルキルエステル(例、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなど)、アルキル(メタ)アクリルアミド(例、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、及びtert−オクチル(メタ)アクリルアミドなど)、置換アルキル(メタ)アクリルアミド(例、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなど)、重合性オリゴマー(例、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー、及び片末端メタクリロイル化ポリエチレングリコールなど)等が好ましく用いられる。
【0048】
少なくとも1つのチオエーテル基を有する高分子化合物(本発明に係る高分子分散剤)における前記一般式(1)で表される繰り返し単位の重合比率は、質量分率で1〜100%が好ましく、5〜80%がより好ましく、10〜50%が特に好ましい。この重合比率が前記範囲内であると、金属微粒子の分散安定性をさらに向上させることができる。
【0049】
また、本発明に係る高分子分散剤は、必要に応じてアルカリ現像適性を付与できる点で、分子中に酸性基を有する高分子化合物が好ましい。前記酸性基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸、リン酸、ボロン酸、フェノール類、スルホアミドなどの基が好適であり、特にカルボン酸基を少なくとも一つ有する高分子化合物が好ましい。
【0050】
アルカリ現像が必要な場合には、本発明に係る高分子分散剤は、酸価が20〜250mgKOH/gであることが好ましく、50〜200mgKOH/gであることがより好ましく、70〜180mgKOH/gであることが最も好ましい。酸価が前記範囲内であると、分散安定性が良好であり、かつアルカリ現像性も良好である。
【0051】
本発明に係る高分子分散剤の分子量としては、重量平均分子量で、2,000〜1,000,000が好ましく、3,000〜200,000がより好ましく、5,000〜100,000が最も好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、分散性向上に有効で、良好な膜強度が得られると共に、現像性に支障を来すこともない。
【0052】
本発明に係る硫黄含有化合物の分散液中における含有量としては、金属微粒子の質量に対して、1〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。該含有量が前記範囲内であると、金属微粒子に本発明に係る硫黄含有化合物が充分に吸着して分散性が向上すると共に、熱による色相変化を抑えて色相及び光学濃度の向上に効果的であり、現像性に支障を来すこともない。
【0053】
金属固形分のアスペクト比が2.0以上の粒子は表面積が大きいため分散安定性を保持することが困難である。このようなアスペクト比が2.0以上の金属微粒子を多く含む金属微粒子分散物に対し本発明の効果は、顕著に奏される。
本発明において「アスペクト比」とは、金属微粒子の最長径を最小径で割った値(アスペクト比)の平均値である。粒子直径を有する平板状粒子については、各々その粒子直径を厚みで割った値(アスペクト比)の平均値である。粒子の厚みの測定は、参照用のラテックスを用いて、そのシャドーの長さを電子顕微鏡写真上で測定し、ラテックスのシャドーの長さを参照にして計算することにより容易にできる。本発明に係るアスペクト比は、金属微粒子1000個について測定されたアスペクト比の平均値である。
本発明に用いられる金属微粒子の好ましいアスペクト比は2.0以上であり、2.5以上がさらに好ましく、特に3.0以上が好ましい。また、アスペクト比が大きくなるにつれ表面積が大きくなり、分散安定性が低下するため金属微粒子のアスペクト比は100以下が好ましい。
本発明で用いられる金属微粒子の形状は特に制限は無いが、楕円形、板状(三角形、六角形、円形)針状、などのものが好ましい。最も好ましいものは板状(三角形、六角形、円形)である。
【0054】
本発明に用いられる金属微粒子の組成は特に限定されず、いかなるものを用いてもよい。本発明における金属微粒子としては、この中で長周期周期表(IUPAC1991)の例えば、元素周期表の第4周期、第5周期、及び第6周期からなる群から選ばれる金属を一種又は二種以上含有することが好ましく、また、第2族、第8族、第9族、第10族、第11族、第12族、第13族、及び第14族からなる群から選ばれる金属を一種又は二種以上含有することが好ましい。
これらの金属のうち、本発明における金属微粒子としては第4周期、第5周期、又は第6周期の金属であって、第2族、第10族、第11族、第12族、又は第14族の金属がさらに好ましく、カルシウム、金、銀、銅、白金、スズ又はパラジウムが特に好ましい。その中でも金、銀、銅、スズが好ましく、とりわけ銀が好ましい。金属微粒子の製造には、上記金属を2種以上組み合わせて用いてもよく、合金として用いることも可能である。
【0055】
金属微粒子は市販のものを用いることができる他、金属化合物を用いた化学的還元法、無電解メッキ法、金属の蒸発法、高圧水銀灯を用いて光照射する方法等により調製することが可能である。
上記金属化合物としては上述の金属を含むものであれば特に限定されず、例えば、テトラクロロ金(III)酸四水和物(塩化金酸)、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀(IV)、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(塩化白金酸)、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)、塩化パラジウム(II)二水和物、三塩化ロジウム(III)三水和物等を挙げることができる。これらは、1種又は2種以上を使用することができる。
【0056】
本発明に係る硫黄含有化合物の存在下で、還元性化合物を用いて上記金属化合物を金属へ還元することにより金属微粒子を調製することができる。
【0057】
上記還元性化合物としては、アミン化合物、水素化ホウ素ナトリウムなどのアルカリ金属水素化ホウ素塩、ヒドラジン化合物、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、ギ酸、ホルムアルデヒド、亜ニチオン酸、スルホキシル酸塩誘導体、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体、ヒドロキシルアセトンなどを挙げることができる。これらは、単独または組み合わせて使用することが可能である。上記還元性化合物としては、トリエタノールアミン、アスコルビン酸、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体、ヒドロキシルアセトンが好ましく、アスコルビン酸、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体がさらに好ましい。
【0058】
上記還元性化合物を添加する方法としては特に限定されず、例えば、本発明に係る硫黄含有化合物の添加後に行うことができる。この場合は、例えば、まず溶媒に本発明に係る硫黄含有化合物を溶解させ、更に、上記還元性化合物又は金属化合物の何れかを溶解させて得られる溶液に、還元性化合物又は金属化合物の残った方を加えることで、還元を進行させることができる。また、上記還元性化合物を添加する方法としては、まず溶媒に本発明に係る硫黄含有化合物を溶解させ、更に、上記還元性化合物と金属化合物を同時又はどちらか一方を添加中に残った方を加えることで、還元を進行させることができる。上記還元性化合物を添加する方法としては、先に本発明に係る硫黄含有化合物と上記還元性化合物又は金属化合物とを混合しておき、この混合物を還元性化合物又は金属化合物の残った方に加える形態をとってもよい。
【0059】
本発明の金属微粒子分散物の製造方法における分散液に用いられる溶媒としては、上記金属化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水、有機溶媒等を挙げることができる。上記有機溶媒等としては特に限定されず、例えば、エタノール、エチレングリコール等の炭素数1〜4のアルコール;アセトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。上記溶媒としては1種又は2種以上を用いることができる。上記溶媒が水と有機溶媒との混合物である場合には、上記有機溶媒としては、水可溶性のものが好ましく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール等が挙げられる。水、アルコール並びに水及びアルコールの混合溶液が好ましい。
【0060】
本発明に係る硫黄含有化合物の添加は、金属微粒子を含む分散液を製造するいずれの工程で添加してもよい。金属微粒子を含む分散液を限外濾過で洗浄、濃縮するときに添加してもよい。
【0061】
上記還元により、平均粒子径が約5nm〜1000nmである金属コロイド粒子を含む金属微粒子分散物が得られる。上記還元後の金属微粒子分散物は、上記金属コロイド粒子及び本発明に係る硫黄含有化合物を含むものであり、コロイド溶液となる。
平均粒子径は、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子(株)製)により得た写真を用いて次のようにして測定されるものである。粒子100個を選び、それぞれの粒子像と同じ面積の円の直径を粒子径とし、100個の粒子の粒子径の平均を平均粒子サイズとする。なお、写真は、倍率10万倍、加速電圧200kVで撮影したものを用いる。上記コロイド溶液とは、金属の微粒子が溶媒中に分散しており、溶液として視認できるような状態にあるものを意味している。
【0062】
分散液を限外濾過により洗浄、濃縮する際に用いられる濾過膜としては特に限定されないが、通常、例えば、ポリアクリロニトリル、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、ポリスルフォン、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂製のものが用いられる。これらのうち、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォンが好ましく、ポリスルフォンがより好ましい。上記限外濾過の濾過膜は、また、上記限外濾過終了後に通常行われる濾過膜の洗浄を効率よく行う点から、逆洗浄が可能な濾過膜を用いることが好ましい。
【0063】
本発明の金属微粒子分散物は、上述した本発明の金属微粒子分散物の製造方法により製造される。本発明の金属微粒子分散物中には、本発明に係る硫黄含有化合物と金属微粒子とが少なくとも含まれる。
【0064】
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、本発明の金属微粒子分散物を少なくとも含み、必要に応じてさらに樹脂またはその前駆体の少なくとも1種、顔料微粒子、バインダーとなるポリマー、モノマー、開始剤、溶媒等を含有してもよい。
本発明の着色組成物は、印刷インク、インクジェットインク、フォトマスク作製材料、印刷用プルーフ作製用材料、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、プラズマデイスプレイパネル(PDP)の隔壁、誘電体パターン、電極(導体回路)パターン、電子部品の配線パターン、導電ペースト、導電フイルム、ブラックマトリックス等の遮光画像等に用いることができる。好ましくは表示装置カラー液晶表示装置等に用いるカラーフィルタの表示特性向上のために、着色パターンの間隔部、周辺部分、及びTFTの外光側等に遮光画像を設けるために好適に用いることができる。特に好ましくは、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置の周辺部に設けられた黒色の縁や、赤、青、緑の画素間の格子状やストライプ状の黒色の部分、さらに好ましくはTFT遮光のためのドット状や線状の黒色パターン等のブラックマトリックス(BM)として好適に用いられる。
【0065】
<樹脂またはその前駆体>
本発明の着色組成物に含有されてもよい樹脂としては、側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、例えば、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、及び特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、また側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体が挙げられる。この他にも水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好ましく使用することができる。特に、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の共重合体やベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体も挙げることができる。
【0066】
前記樹脂は、30〜400mgKOH/gの範囲の酸価と1000〜300000の範囲の重量平均分子量を有するものを選択して使用するのが好ましい。以上の他に、種々の性能、例えば、硬化膜の強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲で、硫黄含有化合物を添加してもよい。これらのアルカリ可溶なバインダーポリマーとしては、アルコール可溶性ナイロン或いはエポキシ樹脂を挙げることができる。
樹脂の前駆体としては硬化することで樹脂となるモノマー等が挙げられる。これらは後述する。
【0067】
<顔料>
本発明の着色組成物における金属微粒子は顔料として機能する。
本発明の着色組成物には、金属微粒子の他に、顔料微粒子を含有せしめることにより、色相を黒色に近づけることも可能となる。
本発明の着色組成物に含有させる顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、又は黒鉛が好適なものとして挙げられる。
前記カーボンブラックの例として、Pigment Black(ピグメント・ブラック) 7(カーボンブラック C.I.No.77266)が好ましい。市販品としては、三菱カーボンブラック MA100(三菱化学(株)製)、三菱カーボンブラック #5(三菱化学(株)製)が挙げられる。
【0068】
前記チタンブラックの例として、TiO2、TiO、TiNやこれらの混合物が好ましい
。市販品として、三菱マテリアルズ(株)製の商品名:12Sや13Mが挙げられる。また用いるチタンブラックの粒子径は40〜100nmが好ましい。
【0069】
前記黒鉛の例として、粒子径がストークス径として3μm以下のものが好ましい。3μmを超えた黒鉛を用いると、遮光パターンの輪郭形状が不均一になり、シャープネスが悪くなるので好ましくない。また粒子径の大部分は0.1μm以下であることが望ましい。
【0070】
前記顔料の他に、公知の顔料を用いることもできる。顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、本発明においては有機顔料が好ましい。好適に使用される顔料の例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料を挙げることができる。該有機顔料の色相は、例えば黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等が好ましい。以下に、着色組成物に用いられる顔料(着色剤)を列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0071】
本発明に用いる着色剤としては、具体的には、特開2005−17716号公報[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。
【0072】
また、前記着色剤の他、「顔料便覧、日本顔料技術協会編、誠文堂新光社、1989」、「COLOUR INDEX、THE SOCIETY OF DYES & COLOURIST、THIRD EDITION、1987」に記載のものを参照して適宜用いることもできる。
【0073】
顔料は、金属微粒子の色相と補色関係にあるものを用いることが望ましい。また、顔料は1種でも2種以上を組み合せて用いてもよい。好ましい顔料の組合わせとしては、赤色系及び青色系の互いに補色関係にある顔料混合物と黄色系及び紫色系の互いに補色関係にある顔料混合物との組合せや、前記の混合物に更に黒色の顔料を加えた組み合わせや、青色系と紫色系と黒色系との顔料の組合せを挙げることができる。
【0074】
顔料は、組成物中に均一に分散されていることが好ましい。顔料の平均粒径は、5nm以上5μm以下が好ましく、特に10nm以上1μm以下が好ましく、更にカラーフィルタ用としては20nm以上0.5μm以下が好ましい。
【0075】
<遮光画像作製用着色組成物>
前記着色組成物を、特に遮光画像作製用着色組成物(以下、「遮光用着色組成物」とも言う。)として用いる場合について以下に詳述する。
本発明の遮光用着色組成物を用いて遮光層(パターニングする前の層)を形成した場合、遮光層の膜厚1μmあたりの光学濃度が1以上となることが好ましい。例えば、カラーフィルタの作製時など、ポストベークの際、金属微粒子が融着するのを防止することを考慮すると、前記遮光用着色組成物における金属微粒子の含有量は、形成される遮光層において10〜90質量%、好ましくは10〜80質量%程度になるように調節することが好ましい。また、前記含有量は、金属微粒子の平均粒径による光学濃度の変動を考慮して行うのが好ましい。
また、後述の感光性を有する遮光用着色組成物における金属微粒子の含有量も同様である。
【0076】
本発明で言う「遮光画像」は、ブラックマトリックスを包含する意味で用いる。「ブラックマトリックス」とは、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置の周辺部に設けられた黒色の縁や、赤、青、緑の画素間の格子状やストライプ状の黒色の部分、更にTFT遮光のためのドット状や線状の黒色パターン等のことであり、このブラックマトリックスの定義は、例えば、菅野泰平著、「液晶ディスプレイ製造装置用語辞典」、第2版、日刊工業新聞社、1996年、p.64に記載されている。遮光画像の例としては、有機ELディスプレイ(例えば、特開2004−103507号公報)、PDPのフロントパネル(例えば、特開2003−51261号公報)、PALCではバックライトの遮光等が挙げられる。
ブラックマトリックスは表示コントラストを向上させるため、また薄膜トランジスター(TFT)を用いたアクティブマトリックス駆動方式の液晶表示装置の場合には光の電流リークによる画質低下を防止するため、高い遮光性(光学濃度ODで3以上)が必要である。
【0077】
<感光性遮光画像作製用着色組成物>
前記遮光画像作製用着色組成物は感光性を有することがより好ましい。具体的には、感光性樹脂組成物を添加することで感光性を付与することができる。前記感光性樹脂組成物は、バインダーとなるポリマー、光重合開始剤、及びエチレン性不飽和二重結合を有し光の照射によって付加重合するモノマー(以下「光重合性モノマー」という場合がある。)等を含有してなる態様が好ましくあげられる。
【0078】
前記感光性樹脂組成物は、アルカリ水溶液で現像可能なものと、有機溶剤で現像可能なものとがある。安全性と現像液のコストとの点からは、アルカリ水溶液現像可能なものが好ましい。そのようにするにはバインダーのポリマーをアルカリ可溶性ポリマーにすることが好ましい。
前記感光性樹脂組成物は、上述のような光や電子線などの放射線を受容する部分が硬化するネガ型でもよいし、放射線未受容部が硬化するポジ型でもよい。
【0079】
前記ポジ型感光性樹脂組成物にはノボラック系の樹脂を用いたものが挙げられる。例えば、特開平7−43899号公報記載のアルカリ可溶性ノボラック樹脂系を使用することができる。また、特開平6−148888号公報記載の、ポジ型感光性樹脂層、即ち、該公報記載のアルカリ可溶性樹脂と感光剤として1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと該公報記載の熱硬化剤の混合物を含む感光性樹脂層を用いることができる。更に、特開平5−262850号公報記載の組成物も活用可能である。
【0080】
ネガ型感光性樹脂組成物としては、ネガ型ジアゾ樹脂とバインダーからなる感光性樹脂、光重合性組成物、アジド化合物とバインダーとからなる感光性樹脂組成物、桂皮酸型感光性樹脂組成物等が挙げられる。その中でも特に好ましいのは光重合開始剤、光重合性モノマー及びバインダーを基本構成要素として含む光重合性組成物である。該光重合性組成物には、特開平11−133600号公報記載の「重合性化合物B」「重合開始剤C」「界面活性剤」「接着助剤」や、その他の組成物が利用できる。
例えば、ネガ型感光性樹脂組成物でアルカリ水溶液現像可能な感光性樹脂組成物としては、主成分としてカルボン酸基含有バインダー(アルカリ可溶性バインダー)と、光重合開始剤と、光重合性モノマーと、を含んでなる感光性樹脂組成物が挙げられる。尚、前記アルカリ可溶性バインダーとしては、前述の<樹脂またはその前駆体>において挙げた樹脂を好適なものとして使用できる。
【0081】
前記アルカリ可溶性バインダーのポリマーは、感光性の遮光画像作製用着色組成物の全固形分に対して通常、10〜95質量%含有され、更に20〜90質量%が好ましい。10〜95質量%の範囲では、感光性遮光層の粘着性が高すぎることもなく、形成される層の強度及び光感度が劣ることもない。
【0082】
前記光重合開始剤としては、米国特許第2367660号明細書に開示されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号及び同第2951758号の各明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組合せ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されているトリハロメチルオキサジアゾール化合物等が挙げられる。特に好ましくはトリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール、トリアリールイミダゾール二量体である。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとして挙げることができる。
これらの光重合開始剤又は光重合開始剤系は、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、特に二種類以上を用いることが好ましい。また、感光性樹脂組成物の全固形分に対する光重合開始剤の含有量は、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0083】
黄ばみなどの着色がなく、かつ露光感度を高くすることができる、表示特性の良い例としては、ジアゾール系光重合開始剤と、トリアジン系光重合開始剤の組み合わせが挙げられ、中でも、2−トリクロロメチル5−(p−スチリルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾールと、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジンの組み合わせが最も良い。
これらの光重合開始剤の比率は、ジアゾール系/トリアジン系の質量比率で、好ましくは95/5から20/80、より好ましくは90/10から30/70、最も好ましくは80/20から60/40である。これらの光重合開始剤は、特開平1−152449号公報、特開平1−254918号公報、特開平2−153353号公報に記載されている。
更に、好適な例としてはベンゾフェノン系も挙げられる。
【0084】
感光性の遮光画像作製用着色組成物の固形分全体に占める顔料の割合が15から25質量%付近の場合、前記光重合開始剤に、クマリン系化合物を混合することによっても、黄ばみなどの着色がなく、かつ高感度化することができる。クマリン系化合物としては、7−[2−[4−(3−ヒドロキシメチルビペリジノ)−6−ジエチルアミノ]トリアジニルアミノ]−3−フェニルクマリンが最も良い。これらの光重合開始剤とクマリン系化合物の比率は、光重合開始剤/クマリン系化合物の質量比率で、好ましくは20/80から80/20、より好ましくは30/70から70/30、最も好ましくは40/60から60/40である。
ただし、本発明に使用できる光重合性組成物はこれらに限定されるものではなく、公知のものの中から適宜選択することできる。
【0085】
前記光重合開始剤は、感光性の遮光画像作製用着色組成物の全固形分に対して、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。前記含有量が前記範囲内であると、光感度や画像強度の低下を防止でき、十分に性能を向上させることができる。
【0086】
前記光重合性モノマーとしては、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン若しくはグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加反応させた後で(メタ)アクリレート化したもの等の多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0087】
更に、特公昭48−41708号、同50−6034号、特開昭51−37193号の各公報に開示されているウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、同52−30490号の各公報に開示されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートを挙げることができる。これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。前記光重合性モノマーは、単独でも2種類以上を混合して用いてもよい。前記光重合性モノマーの感光性の遮光画像作製用着色組成物の全固形分に対する含有量は、5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。前記含有量が前記範囲内にあると光感度や画像の強度も低下せず、感光性遮光層の粘着性が過剰になることもない。
【0088】
前記感光性樹脂組成物としては、前記成分の他に更に熱重合防止剤を添加することが好ましい。前記熱重合防止剤の例としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、p−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、β−ナフトール、ピロガロール等の芳香族ヒドロキシ化合物、ベンゾキノン、p−トルキノン等のキノン類、ナフチルアミン、ピリジン、p−トルイジン、フェノチアジン等のアミン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩又はアンモニウム塩、クロラニール、ニトロベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0089】
前記感光性樹脂組成物として、更に必要に応じて公知の添加剤、例えば、可塑剤、界面活性剤、密着促進剤、分散剤、垂れ防止剤、レベリング剤、消泡剤、難燃化剤、光沢剤、溶剤等を添加することができる。
【0090】
前記密着促進剤としては、例えばアルキルフェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ゴム、アクリル樹脂系粘着剤、芳香族系、脂肪族系又は脂環族系の石油樹脂、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0091】
また、棒状金属微粒子を銀コロイドのように水分散物として用いる場合には、前記感光性樹脂組成物として水系のもの用いることが必要である。このような感光性樹脂組成物としては特開平8−271727号公報の段落[0015]乃至[0023]に記載のものの他、市販のものとしては例えば、東洋合成工業(株)製の「SPP−M20」等が挙げられる。
【0092】
本発明の遮光画像作製用着色組成物(感光性のものを含む)を用いてブラックマトリックスを形成することで、薄膜でかつ光学濃度が高いブラックマトリックスを作製することができる。
【0093】
≪感光性転写材料≫
本発明においては、前記の感光性を有する遮光画像作製用着色組成物を用いて、遮光画像作製用の感光性転写材料を作製し、これを用いてブラックマトリックス等の遮光画像を作製することができる。
本発明の感光性転写材料は、支持体上に少なくとも本発明の着色組成物を含む前述の感光性を有する遮光画像作製用着色組成物を用いて形成した感光性遮光層を設けたものであり、必要に応じて熱可塑性樹脂層、中間層、又は保護層等を設けることができる。
前記感光性遮光層の膜厚は0.1〜4μmの範囲が好ましく、特に0.1〜2.0μmの範囲が好ましく更に0.2〜1.0μmが好ましい。
【0094】
<支持体>
前記感光性転写材料における支持体としては、ポリエステル、ポリスチレン等の公知の支持体を用いることができる。中でも2軸延伸したポリエチレンテレフタレートはコスト、耐熱性、寸法安定性の観点から好ましい。前記支持体の厚みは15〜200μm程度、より好ましくは30〜150μm程度が好ましい。前記支持体の厚みが前記範囲内にあると、ラミネーション工程時に熱によりトタン板状のしわが発生するのを効果的に抑制することができ、コスト上も有利である。
また前記支持体には必要に応じて特開平11−149008号公報に記載されている導電性層を設けてもよい。
【0095】
<熱可塑性樹脂層>
また、支持体と感光性遮光層、又は支持体と中間層の間に、アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層を設けることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂層は、下地表面の凹凸(既に形成されている画像などによる凹凸等も含む)を吸収することができるようにクッション材としての役割を担うものであるため、当該凹凸に応じて変形しうる性質を有していることが好ましい。
【0096】
アルカリ可溶な熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂としては、エチレンとアクリル酸エステル共重合体とのケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等との(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のケン化物、等より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。更に「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会発行、1968年10月25日発行)による有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することもできる。また、これらの熱可塑性樹脂のうち、軟化点が80℃以下のものが好ましい。尚、本願明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称し、その誘導体の場合も同様である。
【0097】
前記アルカリ可溶な熱可塑性樹脂層に含まれる樹脂の中でも、重量平均分子量3千〜50万(Tg=0〜170℃)の範囲で選択して使用することが好ましく、更には重量平均分子量4千〜20万(Tg=30〜140℃)の範囲がより好ましい。これらの樹脂の具体例としては、特公昭54−34327号、特公昭55−38961号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭61−134756号、特公昭59−44615号、特開昭54−92723号、特開昭54−99418号、特開昭54−137085号、特開昭57−20732号、特開昭58−93046号、特開昭59−97135号、特開昭60−159743号、特開昭60−247638号、特開昭60−208748号、特開昭60−214354号、特開昭60−230135号、特開昭60−258539号、特開昭61−169829号、特開昭61−213213号、特開昭63−147159号、特開昭63−213837号、特開昭63−266448号、特開昭64−55551号、特開昭64−55550号、特開平2−191955号、特開平2−199403号、特開平2−199404号、特開平2−208602号、特開平5−241340号の各公報に記載されているアルカリ水溶液に可溶な樹脂を挙げることができる。
【0098】
また、これらの中でも特に好ましいものとしては、特開昭63−147159号明細書に記載されたメタクリル酸/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体、特公昭55−38961号、特開平5−241340号の各公報に記載のスチレン/(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。
【0099】
また、前記熱可塑性樹脂層には、熱可塑性樹脂層と支持体との接着力を調節するために、各種可塑剤、各種ポリマー、過冷却物質、密着改良剤、界面活性剤、又は離型剤等を加えることが可能である。好ましい可塑剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、ビフェニルジフェニルフォスフェート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂とポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアナートとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、有機ジイソシアナートとポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、ビスフェノールAとポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの縮合反応生成物等を挙げることができる。前記熱可塑性樹脂層中の可塑剤の量は、該熱可塑性樹脂に対して、200質量%以下が一般的で、好ましくは20〜100質量%である。
【0100】
また、アルカリ可溶な熱可塑性樹脂層の厚みは6μm以上が好ましい。熱可塑性樹脂の厚みが6μm以上であれば、下地表面の凹凸を完全に吸収することができる。また、上限については、現像性、製造適性から約100μm以下が一般的であり、好ましくは約50μm以下である。
【0101】
本発明において、熱可塑性樹脂層を形成する際に用いる塗布液の溶媒としてはこの層を構成する樹脂を溶解するものであれば特に制限なく使用できる。前記溶媒としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n−プロパノール、i−プロパノール等が挙げられる。
【0102】
(中間層)
本発明の感光性転写材料は、支持体と感光性遮光層との間に中間層を設けてもよい。
中間層を構成する樹脂としてはアルカリ可溶であれば特に制限はない。該樹脂の例としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体を挙げることができる。またポリエステルのように通常はアルカリ可溶性でない樹脂にカルボキシル基やスルホン酸基を持つモノマーを共重合した樹脂も用いることができる。
これらの中で好ましいものはポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールとしては鹸化度が80%以上のものが好ましく、83〜98%のものがより好ましい。
【0103】
中間層を構成する樹脂は2種類以上を混合して使用することが好ましく、特にポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを混合して用いることが特に好ましい。両者の質量比はポリビニルピロリドン/ポリビニルアルコール=1/99〜75/25の範囲が好ましく、更には10/90〜50/50の範囲がより好ましい。前記質量比が前記の範囲内にあると中間層の面状が良好であり、その上に塗設した感光性遮光層との密着性がよく、更に、酸素遮断性が低下して感度が低下するのを防止することができる。
尚、前記中間層には必要に応じて界面活性剤などの添加剤を添加することができる。
【0104】
前記中間層の厚みは0.1〜5μm、更に0.5〜3μmの範囲が好ましい。中間層の厚みが前記範囲内にあると、酸素遮断性を低下させることなく、また、現像時の中間層除去時間が増大するのを防止することができる。
中間層の塗布溶媒としては前記の樹脂が溶解すれば、特にその他の制限はないが、中でも水が好ましく、また水に前述の水可溶性の有機溶剤を混合した混合溶媒も好ましい。好ましい塗布溶媒の具体例としては、例えば、水、水/メタノール=90/10、水/メタノール=70/30、水/メタノール=55/45、水/エタノール=70/30、水/1−プロパノール=70/30、水/アセトン=90/10、水/メチルエチルケトン=95/5(ただし比は質量比を表す)等が挙げられる。
【0105】
<感光性転写材料の作製>
本発明の感光性転写材料を作製するには、支持体に、本発明の感光性を有する遮光画像作製用着色組成物の溶液を、例えば、スピナー、ホワイラー、ローラーコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、ワイヤーバーコーター、エクストルーダー等の塗布機を用いて塗布・乾燥させることにより形成することができる。アルカリ可溶性の熱可塑性樹脂層、中間層を設ける場合にも同様にして形成することができる。
【0106】
本発明の感光性転写材料は、上述のごとき本発明の遮光画像作製用着色組成物を用いて感光性遮光層を設けているため、薄膜でかつ光学濃度が高い遮光層を作製することができる。
【0107】
≪遮光画像の作製方法≫
本発明において、遮光画像は、前記着色組成物又は感光性転写材料を用いて形成した遮光層をパターニングすることにより作製され、該遮光層の膜厚は0.2〜2.0μm程度、更には0.9μm以下であることが好ましい。本発明における遮光層は金属微粒子を分散させたものであるため、前記のごとき薄膜でも十分な光学濃度(3.5以上)を発揮することができる。
【0108】
また、本発明の遮光画像作製用着色組成物を用いて遮光画像を作製する(パターニングする)方法は特に限定はない。以下にブラックマトリックスのパターン形成方法の一例を挙げる。
【0109】
第1の方法は、まず金属微粒子並びに樹脂またはその前駆体の少なくとも1種とを含有し、感光性を有する本発明の遮光画像作製用着色組成物を基板に塗布し、金属微粒子を含有した感光性遮光層を形成する。その後、露光現像によりパターン以外の部分の遮光層を除却することによりパターン形成を行い遮光画像を得る方法である。また、上述の中間層と同組成の層を前記感光性遮光層上に形成して保護層とすることもできる。この場合、塗布液の塗布は、前記<感光性転写材料の作製>で記述した塗布機を用いて塗布することができるが、中でもスピンコート法によって行うのが好ましい。
【0110】
第2の方法は、まず、金属微粒子並びに樹脂またはその前駆体の少なくとも1種とを含有し、非感光性の本発明の遮光画像作製用着色組成物を基板に塗布して棒状金属微粒子を含有した遮光層を形成する。その後、該遮光層上に感光性レジスト液を塗布してレジスト層を形成する。次いで露光によりレジスト層を露光現像してレジスト層にパターンを形成した後、このパターンに応じて遮光層の非パターン部を溶解し、遮光層にパターンを形成する。最後にレジスト層を除却して、遮光画像を作製する方法である。
【0111】
第3の方法は、予め基板上のパターン以外の部分に塗布層を形成しておき、この上に金属微粒子並びに樹脂またはその前駆体の少なくとも1種とを含有し、非感光性の本発明の遮光画像作製用着色組成物を塗布して微粒子含有層を含有した遮光層を形成する。次いで、始めに形成した塗布層を上の遮光層とともに除却し、遮光画像が作製される。
【0112】
前記感光性転写材料を用いる遮光画像の作製方法としては、光透過性基板の上に、前記感光性転写材料を、感光性転写材料の感光性遮光層が接触するように配置して積層する。次に、感光性転写材料と光透過性基板との積層体から支持体を剥離し、その後、前記層を露光した後現像して遮光画像を形成する方法である。
この遮光画像の製造方法は、煩瑣な工程を行うことを必要とせず、低コストである。
【0113】
次に、前記露光及び現像工程について述べる。
(露光及び現像)
前記基板上に形成された遮光層の上方に所定のマスクを配置し、その後該マスク上方から露光し、次いで現像液による現像を行い、パターニング画像を得、引き続き必要に応じて、水洗処理を行う、という工程により、本発明の遮光画像を得ることができる。露光は上述のようなマスクを配置する方法以外に、マスクを介さずに直接に画像データに基づいて露光光を相対走査することでパターン画像を得ても良い。
ここで、前記露光の光源としては、感光性遮光層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LD、超高圧水銀灯、YAG−SHG固体レーザー、KrFレーザー、固体レーザー等が挙げられる。露光量としては、通常5〜200mJ/cm2程度であり、好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
この際に使用する露光機は、特に限定されるわけではないが、前記マスクを介して露光するプロキシミティ露光機の他、散乱光線露光機、平行光線露光機、プステッパー、及びレーザー露光などを用いることができる。
【0114】
また、前記現像液としては、特に制約はなく、特開平5−72724号公報に記載のものなど、公知の現像液を使用することができ、中でもアルカリ性物質の希薄水溶液が好ましく用いられる。詳しくは、現像液は感光性遮光層が溶解型の現像挙動をするものが好ましい。尚、更に水と混和性を有する有機溶剤を少量添加してもよい。
また、前記現像の前には、純水をシャワーノズル等にて噴霧して、該感光性遮光層の表面を均一に湿らせることが好ましい。
【0115】
現像工程に用いられる前記アルカリ性物質としては、アルカリ金属水酸化物類(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、アルカリ金属炭酸塩類(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、アルカリ金属重炭酸塩類(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)、アルカリ金属ケイ酸塩類(例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)、アルカリ金属メタケイ酸塩類(例えば、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム)、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、テトラアルキルアンモンニウムヒドロキシド類(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、燐酸三ナトリウム、等が挙げられる。アルカリ性物質の濃度は、0.01〜30質量%が好ましく、pHは8〜14が好ましい。
【0116】
前記「水と混和性を有する有機溶剤」としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等が好適に挙げられる。水と混和性を有する有機溶剤の濃度は0.1〜30質量%が好ましい。更に、公知の界面活性剤を添加することもでき、該界面活性剤の濃度としては0.01〜10質量%が好ましい。
【0117】
前記現像液は、浴液としても、あるいは噴霧液としても用いることができる。遮光層の未硬化部分を除去する場合、現像液中で回転ブラシや湿潤スポンジで擦るなどの方法を組合わせることができる。現像液の液温度は、通常室温付近から40℃が好ましい。現像時間は、遮光層の組成、現像液のアルカリ性や温度、有機溶剤を添加する場合にはその種類と濃度、等に依るが、通常10秒〜2分程度である。短すぎると非露光部の現像が不充分となると同時に紫外線の吸光度も不充分となることがあり、長すぎると露光部もエッチングされることがある。いずれの場合にも、遮光画像形状を好適なものとすることが困難となる。この現像工程にて、遮光画像が形成される。
【0118】
≪遮光画像付き基板≫
本発明の遮光画像付き基板は、光透過性基板の上に遮光画像作製用着色組成物又は感光性転写材料を用いて形成された遮光層を前記のようにしてパターニングすることにより作製される。
この遮光画像付き基板(好ましくは、ブラックマトリックス基板)における遮光画像の膜厚は0.2〜2.0μmが好ましく、特に0.2〜0.9μmが好ましい。前記ブラックマトリックス基板における遮光層は金属微粒子を分散させたものであるため、薄膜でも十分な光学濃度を有する。
【0119】
本発明の遮光画像付き基板は、テレビ、パーソナルコンピュータ、液晶プロジェクター、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの用途に特に制限なく適用できる。また、下記カラーフィルタの作製においても好適に用いることができる。
【0120】
≪カラーフィルタ≫
本発明のカラーフィルタは、光透過性基板の上に、着色層からなり、互いに異なる色を呈する2以上の画素群を有し、前記画素群を構成する各画素は互いに遮光画像(以下「ブラックマトリックス」とも言う。)により離画されている構成を有し、前記ブラックマトリックスは、本発明の前記遮光画像作製用着色組成物又は感光性転写材料を用いて作製される。前記画素群は2つでも、3つでも4つ以上でもよい。例えば3つの場合は赤(R)、緑(G)及び青(B)の3つの色相が好適に用いられる。赤、緑、青の3種の画素群を配置する場合は、モザイク型、トライアングル型等の配置が好ましく、4種以上の画素群を配置する場合ではどのような配置であってもよい。
【0121】
前記光透過性基板としては、表面に酸化珪素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス板、ノンアルカリガラス板、石英ガラス板等の公知のガラス板或いはプラスチックフィルム等が用いられる。
カラーフィルタを作製するには、光透過性の基板に常法により2以上の画素群を形成した後、前記のようにしてブラックマトリックスを形成してもよいし、或いは、最初にブラックマトリックスを形成し、その後2以上の画素群を形成してもよい。
本発明のカラーフィルタは上述のごとき薄膜で高濃度であるブラックマトリックスを備えているため、表示コントラストが高くまた平坦性に優れている。
【0122】
≪表示装置≫
本発明のカラーフィルタは、表示装置に好適に用いることができる。表示装置としてはプラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置、液晶表示素子等が挙げられ、中でも液晶表示素子に用いた場合に本発明の遮光画像作製用着色組成物の効果が顕著に発揮される。表示装置の定義や各表示装置の説明は、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、隅工業調査会 1990毎発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順幸著、産業図書側 平成元年発行)」などに記載されている。
【0123】
本発明の表示装置は、前記カラーフィルタ以外に電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ.視野角補償フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、防眩フィルムなどさまざまな部材から一般的に構成される。本発明における遮光画像はこれらの公知の部材で構成される液晶表示素子に適用することができる。これらの部材については例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉 (株)富士キメラ総研 2003等発行)」に記載されており、LCDの種類としては、STN、TN、VA、IPS、OCS、及びR−OCB等が挙げられる。
【0124】
液晶表示素子の一つとしては、少なくとも1方が光透過性の1対の基板の間に、カラーフィルタ、液晶層及び液晶駆動手段(単純マトリックス駆動方式及びアクティブマトリックス駆動方式を含む)を少なくとも備えたものが挙げられる。
前記カラーフィルタとしては、前記のごとき複数の画素群を有し、前記画素群を構成する各画素が、互いに本発明による遮光画像により離画されているカラーフィルタを好適に用いることができる。前記カラーフィルタは平坦性が高いため、このカラーフィルタを備える液晶表示素子は、カラーフィルタと基板との間にセルギャップムラが発生せず、色ムラ等の表示不良の発生が改善される。
【0125】
また、前記液晶表示素子の別の態様としては、少なくとも1方が光透過性の1対の基板の間に、カラーフィルタ、液晶層及び液晶駆動手段を少なくとも備え、前記液晶駆動手段がアクティブ素子(例えばTFT)を有し、かつ各アクティブ素子の間に本発明の遮光画像作製用着色組成物又は感光性転写材料を用いて作製されるブラックマトリックスが形成されているものである。
液晶表示素子については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、側工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明の表示装置(液晶表示素子)には特に制限はなく、例えば前記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示素子に適用できる。本発明はこれらの中でも、特にカラーTFT方式の液晶表示素子に対して有効である。
カラーTFT方式の液晶表示素子については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。更に本発明はもちろんIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示素子にも適用できる。これらの方式については例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページに記載されている。
【0126】
前記液晶表示素子に用いることのできる液晶としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、強誘電液晶等が挙げられる。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
<銀微粒子分散液の調製>
1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用い、pHを11.0に調整した水溶液2.5Lに、硫黄原子が7.2質量%含有する下記高分子化合物D−1を3g加え、完全に溶解するまで45℃で30分攪拌した。
この溶液を45℃に温度制御し、アスコルビン酸12gを含む水溶液と、硝酸銀30gを含む水溶液を同時に添加して、黒色の銀微粒子分散液を調製した。得られた銀微粒子は、算術平均粒径52nm、算術標準偏差33nmの、アスペクト比1.0〜5.0(平均アスペクト比3.5)を含む不定形のジャガイモ状の粒子であった。結果を表1に示す。
次に、限外濾過モジュールSIP1013(旭化成社製;分画分子量6000)、マグネットポンプ、ステンレスカップをシリコンチューブで接続し、限外濾過装置とした。先の銀微粒子分散液(水溶液)をステンレスカップに入れ、ポンプを稼動させて限外濾過を行った。モジュールからの濾液が2.5lになった時点で、ステンレスカップに2.5lの蒸留水を加え、洗浄を行った。上記の洗浄を10回繰り返した後、母液の量が50mlになるまで濃縮を行った。この銀粒子分散液をA−1分散液とする。この金属微粒子分散液A−1、0.25μmlを25mlのメスフラスコ容器に取り、蒸留水にてメスアップした。日立製の「U−3410形自記分光光度計」を用い、その溶液の435nmでの濃度の測定を行った。そのサンプルを25℃で一定に恒温された部屋に2週間放置し、同様な方法で吸収を測定した。経時前と2週間後の溶液との濃度の変化の絶対値を「ΔW」として、以下の基準に従って経時安定性を判断した。結果を表2に示した。
○ :ΔWの絶対値が0.8未満であった。
× :ΔWの絶対値が0.8以上であった。
【0128】
【化3】

【0129】
<感光性遮光層用塗布液の調製>
下記組成を混合して、感光性遮光層用塗布液を調製した。
〔組成〕
・A−1分散液 50.00g
・ノルマルプロパノール 40.00g
・フッ素系界面活性剤 0.5g
(F780F、大日本インキ化学工業 (株) 製)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 1.75g
(KAYARAD DPHA (日本化薬社製))
・ビス[4−[N−(4,6−ビストリクロロメチル―s―トリアジン―2−イル)フェニル]カルバモイル]フェニル]セバケート 0.17g
・アセトン 415g
【0130】
<保護層用塗布液の調製>
下記組成を混合して、保護層用塗布液を調製した。
・ポリビニルアルコール 3.0g
(商品名:PVA205、(株)クラレ製)
・ポリビニルピロリドン 1.3g
(商品名:PVP−K30、アイエスピー・ジャパン社製)
・蒸留水 50.7g
・メチルアルコール 45.0g
【0131】
<感光材料の作製>
ガラス基板上に、スピンコーターを用いて乾燥膜厚が0.8μmになるように上記感光性遮光層用塗布液を塗布して100℃で5分間乾燥し感光性遮光層を形成した。次いで、この上にスピンコーターを用いて上記保護層用塗布液を乾燥膜厚が1.5μmになるように塗布して、100℃で5分間乾燥し保護層を形成した。
【0132】
更に、上記作製した感光材料に対して、作製時から2日間経持した感光性遮光層用着色組成物を用い、同様に塗布し感光材料をZ−1とした。
【0133】
《ブラックマトリックスの作製》
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング(株)製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と保護層を塗布面の間の距離を200μmに設定し、露光量70mJ/cm2でパターン露光した。次いで、現像処理液TCD(富士写真フイルム(株)製、アルカリ現像液)を用いて現像処理(33℃)を行った。画面サイズ10インチで、画素数が480×640であり、また、ブラックマトリックス幅が24μmで、画素部の開口が86μm×304μmであるブラックマトリックスを得た。現像時間は上記露光量で光硬化させた膜が現像され、ガラス面が見えるまでの時間を最短現像時間として、最短現像時間×1.2、を処理時間とした。
【0134】
《評価1:パターン形状の評価》
得られたブラックマトリックスについて下記の評価を行った。結果を下記表2に示す。
−ブラックマトリックスの品位−
ブラックマトリックスを形成したガラス基板のパターン形状を目視または顕微鏡にて観察し、ラインが直線であること、断線の有無を評価した。直線で且つ断線が確認されないものを○、直線で無いもの、断線が確認されたものを×とした。
【0135】
(液晶表示装置の作成)
上記で得られたブラックマトリックスを形成した基板を用いて、特開平11−242243号公報の第一実施例[0079]〜[0082]に記載の方法を用いて、液晶表示装置を作製したところ、誤作動なく表示することを確認した。
【0136】
《評価2》
得られた液晶表示装置について、下記の評価を行った。結果を下記表2に示す。
−ムラの測定−
液晶表示装置にグレイのテスト信号を入力させた時に、目視及びルーペにて観察し、ムラの発生の有無を判断した。ムラが観察されなかったものを○、ムラが確認できたものを×とした。
【0137】
[実施例2]
<金微粒子分散液の調整>
1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用い、pHを11.0に調整した水溶液2.5Lに、D−1を3g加え、完全に溶解するまで45℃で30分攪拌した。
この溶液を75℃に温度制御し、アスコルビン酸12gを含む水溶液600ccと、テトラクロロ(III)金酸四水和物74.8gを含む水溶液1000ccを同時に添加して、金微粒子分散液を調製した。この分散液を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び2に示す。
次に、実施例1の銀微粒子分散液の代わりに金微粒子分散液(水溶液)を使用し、実施例1と同様に限外濾過による洗浄、濃縮を行った。実施例1の銀微粒子のかわりに上記金微粒子分散液を使用し、実施例1と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0138】
[実施例3]
<AuAg合金粒子分散液の調整>
蒸留水2782gと1Nの水酸化ナトリウム水溶液150gを混合した溶液を作成した。この溶液に、D−1を3g加え、完全に溶解するまで攪拌した。この溶液をG液とする。蒸留水208gに1Nの水酸化ナトリウム水溶液231gを混合した溶液中にアスコルビン酸11.9gを加え、完全に溶解するまで30分攪拌した。この溶液をH液とする。蒸留水189gにテトラクロロ(III)金酸四水和物37.4g、硝酸銀15.7gを混合した溶液を作成し、30分攪拌した。この溶液をI液とする。ここで、50℃に温度コントロールし、スリワンモーターで600rpmに攪拌したG液中にH液とI液を同時に添加し、AuAg合金微粒子分散液を調製した。この分散液を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び2に示す。
次に、実施例1の銀微粒子のかわりに上記AuAg合金微粒子分散液を使用し、実施例1と同様に限外濾過による洗浄、濃縮を行った。実施例1の銀微粒子のかわりに上記AuAg合金微粒子分散液を使用し、実施例1と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0139】
[実施例4]
<AgSn合金粒子分散液の調製>
純水3082.6mlに、酢酸銀(I)31g、酢酸スズ(II)87.3g、グルコン酸70.2g、ピロリン酸ナトリウム60.3g、D−1 3.0gを溶解し、溶液Jを得た。別途、純水451.6mlにヒドロキシアセトン48.4gを溶解して、溶液Kを得た。上記より得た溶液Jを25℃に保ちつつ1100rpmで攪拌しながら、これに上記の溶液Kを2分間かけて添加し、300rpm6時間攪拌を継続した。すると、混合液が黒色に変化し、銀錫(AgSn)合金微粒子を得た。この分散液を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び2に示す。
次に、実施例1の銀微粒子分散液の代わりにAgSn微粒子分散液(水溶液)を使用し、実施例1と同様に限外濾過による洗浄、濃縮を行った。実施例1の銀微粒子のかわりに上記AgSn合金微粒子分散液を使用し、実施例1と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0140】
[比較例1]
実施例1で作成した銀ナノ顔料分散液を、D−1の代わりにD−2を用いること以外、全て同様にして調製した。この分散液を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び2に示す。
次に実施例1の銀微粒子のかわりに上記銀微粒子分散液を使用し、実施例1と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0141】
【化4】

【0142】
[比較例2]
実施例2で作成した金微粒子分散液を、D−1の代わりにD−2を用いること以外、全て同様にして調製した。結果を表1及び2に示す。次に実施例1の金微粒子のかわりに上記金微粒子分散液を使用し、実施例1と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0143】
[比較例3]
実施例3で作成したAuAg微粒子分散液を、D−1の代わりにD−2を用いること以外、全て同様にして調製した。この分散液を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び2に示す。
次に実施例3の金銀微粒子のかわりに上記金銀微粒子分散液を使用し、実施例1と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0144】
[比較例4]
実施例4で作成した銀錫微粒子分散液を、D−1の代わりにD−2を用いること以外、全て同様にして調製した。この分散液を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び2に示す。次に実施例4の銀錫微粒子のかわりに上記銀錫微粒子分散液を使用し、実施例1と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0145】
[比較例5]
実施例1で作成した銀微粒子分散液を、限外ろ過工程の代わりに遠心分離処理(12000rpm・30min)を行った以外はすべて同様にして、銀微粒子分散液を調製した。この分散液を実施例1と同様に評価した。結果を表1及び2に示す。
次に実施例1の銀微粒子のかわりに上記銀金微粒子分散液を使用し、実施例1と同様にブラックマトリックスと液晶表示装置を作製し、同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
【表2】

【0148】
表2から、本発明の金属微粒子分散物を用いた液晶表示装置は、表示ムラがなく表示品質が良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄の割合が3.0質量%以上の硫黄含有化合物と金属微粒子とを含む分散液を限外濾過により洗浄し、濃縮する工程を有することを特徴とする金属微粒子分散物の製造方法。
【請求項2】
前記金属微粒子のアスペクト比が2以上であることを特徴とする請求項1に記載の金属微粒子分散物の製造方法。
【請求項3】
前記硫黄含有化合物が、酸性基を有することを特徴する請求項1又は2に記載の金属微粒子分散物の製造方法。
【請求項4】
前記酸性基が、カルボキシル基であることを特徴とする請求項3に記載の金属微粒子分散物の製造方法。
【請求項5】
前記金属微粒子が、元素周期表の第4周期、第5周期及び第6周期からなる群から選ばれる金属を一種または二種以上含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属微粒子分散物の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の金属微粒子分散物の製造方法により製造された金属微粒子分散物。
【請求項7】
請求項6に記載の金属微粒子分散物を少なくとも含む着色組成物。
【請求項8】
支持体上に少なくとも感光性遮光層を設けた感光性転写材料であって、
前記感光性遮光層が請求項7に記載の着色組成物を含むことを特徴とする感光性転写材料。
【請求項9】
請求項7に記載の着色組成物を用いて形成された遮光画像を有することを特徴とする遮光画像付き基板。
【請求項10】
請求項8に記載の感光性転写材料を用いて形成された遮光画像を有することを特徴とする遮光画像付き基板。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の遮光画像付き基板を用いて作成されたことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項12】
請求項11に記載のカラーフィルタを用いて作成されたことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2007−186652(P2007−186652A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7748(P2006−7748)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】