説明

金属感塗料組成物及びこれを用いた積層塗膜の形成方法

【課題】金属感外観を有する金属感塗膜を良好に形成することができる金属感塗料組成物及びこれを用いた積層塗膜の形成方法を提供する。
【解決手段】被塗物又は下塗り塗膜層の上に積層され、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料と、アクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂とを含み、該光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)が0.1〜50%であり、該繊維素系樹脂が全樹脂量に対して7〜30%含まれている金属感塗料組成物である。
上記金属感塗料組成物を用い、被塗物上に該金属感塗料組成物を直接積層して金属感塗膜層を形成する工程、又は被塗物上に下塗り塗膜層を形成した後に該金属感塗料組成物を積層して金属感塗膜層を形成する工程、を行い、その後、該金属感塗膜層の上にクリヤ上塗り層を形成する工程、を行い、積層塗膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属感塗料組成物及びこれを用いた積層塗膜の形成方法に係り、更に詳細には、上下塗膜層との高い密着性を確保するとともに金属メッキ面等が有する金属感外観を示す塗膜を形成できる金属感塗料組成物及びこれを用いた積層塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属調塗料として、蒸着アルミ膜を粉砕して金属片とした蒸着アルミを含有した塗料が知られており、例えば、自動車の内装やホイールキャップ等の塗装に用いられている。
このような自動車の内外装塗装に用いられる金属調塗料は、いわゆる粒子感が無く、ハイライト領域とシェード領域の光沢の差が大きい独特の意匠性を有するものである。
【0003】
一方、自動車の部品や電化製品の部品等においては、上記の金属感塗料による金属素地感ではなく、鏡面のような金属面の光沢感が付与されたものが知られている。
このような金属感外観を有する部品では、一般に金属メッキや金属蒸着により、表面に金属薄膜を析出し付着させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭63−272544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属メッキによる方法では、基材全体をメッキ浴に浸漬する必要があり、製造工程が複雑で、設備上種々の制限があった。更に重金属の使用など昨今の環境対応に対し不利な面がある。
また、金属を蒸着させる方法では、真空又は減圧容器中に基材を設置する必要があり、大型の基材には適用できないという問題があった。また、製造工程上も、減圧化を必要とするなど実用化にあたり制限があった。
【0005】
更に、顔料として蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料単体のみを含む塗料により適度な金属素地感を出す工法もあったが、光輝材が塗膜中で奇麗に配向せずに意匠性がでなかったり、意匠性を確保するため一度に塗装する膜厚を極端に抑え多段塗装を実施し必要膜厚を確保するなど多くの工程を必要としたり、塗装場所の温度や湿度などの環境に敏感に影響を受けるため細かな塗装環境調整を実施していた。更にまた、光輝性顔料の配向が平滑になるに従い、光輝性顔料層とその上下塗膜層との密着が低下する結果となっっていた。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属感外観を有する金属感塗膜を良好に形成することができる金属感塗料組成物及びこれを用いた積層塗膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂の含有率を規定することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の金属感塗料組成物は、被塗物又は下塗り塗膜層の上に積層され、金属感外観を示す塗料組成物であって、
蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料と、アクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂とを含み、
上記光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)が0.1〜50%であり、上記グラフト化した繊維素系樹脂が全樹脂量に対して7〜30%含まれていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の金属感塗料組成物の好適形態は、上記グラフト化した繊維素系樹脂の分子量が5,000〜150,000であることを特徴とする。
【0010】
更に、本発明の積層塗膜の形成方法は、上記金属感塗料組成物を用いて積層塗膜を形成するに当たり、
被塗物上に該金属感塗料組成物を直接積層して金属感塗膜層を形成する工程、又は被塗物上に下塗り塗膜層を形成した後に該金属感塗料組成物を積層して金属感塗膜層を形成する工程、を行い、
その後、該金属感塗膜層の上にクリヤ上塗り層を形成する工程、を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂の含有率を規定することとしたため、金属感外観を有する金属感塗膜の密着性能を良好に形成することができる金属感塗料組成物及びこれを用いた積層塗膜の形成方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の金属感塗料組成物について詳細に説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、濃度、含有量、充填量などについての「%」は、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0013】
上述の如く、本発明の金属感塗料組成物は、被塗物又は下塗り塗膜層の上に積層され、金属感外観を示す塗料組成物である。また、金属感塗料組成物は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を含み、この光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)は0.1〜50%とする。更に、金属感塗料組成物は、アクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂を全樹脂量に対して7〜30%の割合で含んでいる。
このような構成により、密着性能が良好な金属感塗膜を形成しうる塗料組成物となる。
【0014】
ここで、上記光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)は、上記範囲内でできるだけ高いことが好ましく、7〜20%であることが好ましい。
また、上記繊維素系樹脂も上記範囲内で多いことが好ましく、好ましいのは樹脂固形分(全樹脂量)に対して7〜30%、より好ましくは10〜25%含むことがよい。
上記光輝性顔料の含有量が多すぎると、塗装時の微粒子が低下するため外観が悪くなり、逆に光輝性顔料の含有量が少なすぎると金属感外観の意匠性が低下することがある。
【0015】
上記光輝性顔料は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料であれば特に限定されるものではない。
このような光輝性顔料は、一般にベースフィルム上に金属膜を蒸着させ、ベースフィルムを剥離した後、蒸着金属膜を粉砕して金属片とすることにより得られる。このときの蒸着金属膜の厚み、即ち粉砕して得られる金属片の厚みとしては、代表的には0.01〜1μm程度であることが好ましい。なお、0.01μm未満では、下地の色が透過しやすく、1μmを超えると、金属片が乱反射を起こすことがある。
【0016】
なお、光輝性顔料は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料であるので、極めて厚みが薄い金属片である。
従って、後述するように面上に配向することにより、表面がフラットな金属感塗膜層を形成することができ、良好な金属感外観をもたらすことができる。
これに対して、従来のメタリック塗料に用いられているアルミニウムフレーク等の金属フレークは、比較的厚みがあり、また表面に凹凸を有しているので、このような金属フレークを面上に配向しても、表面がフラットにならず、本発明のような良好な金属感外観は得られない。
【0017】
また、上記金属片の粉砕の程度としては、代表的には、平均粒径が0.1μm〜30μm程度であることが好ましい。なお、0.1μm未満では平滑感、均一性が無くなることがあり、30μmを超えると、塗膜作業性が低下することがある。
【0018】
更に、上記蒸着金属膜の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、金、銀、銅等の金属膜が挙げられる。腐食の観点からは、特にアルミニウム粉を光輝性顔料として用いることが好ましい。
【0019】
次に、上記グラフト化した繊維素系樹脂は、分子量が5,000〜150,000であることが好ましい。
このような高分子量であることから、塗料組成物中への配合量を増やすことで、塗料の構造粘性を発現させうる。また、線形高分子であることから該光輝性顔料の面上への配向に対し阻害しにくい。なお、分子量が5,000未満では、塗料粘性への効果が少なく、150,000を超えると、塗膜作業性が低下しやすくなる。
【0020】
また、本発明の金属感塗料組成物は、光輝性顔料とアクリル樹脂グラフト化繊維素系樹脂の他には、溶剤、バインダー樹脂、添加剤、その他の繊維素系樹脂を適宜添加して調製できる。
【0021】
上記溶剤は、光輝性顔料製造の際に用いた剥離剤やトップコート剤、又は金属調塗料塗装の下地塗膜の種類などを考慮して選択されるものであるが、例えば、有機溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤等の炭化水素系溶剤を挙げることができる。
なお、光輝性顔料がペーストのような市販品として入手される場合には、このペースト中に含有されている溶剤が含まれてもよい。
【0022】
上記バインダー樹脂としては、一般に塗膜形成樹脂として用いられる樹脂などを用いることができ、アクリル樹脂、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂などの樹脂を挙げることができる。
これらバインダー樹脂は、アクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂とともに用いることができる。
【0023】
更に、本発明の金属感塗料組成物の膜厚は、特に限定されるものではないが、平滑な金属膜を形成するという観点からは、1〜20μmであることが好ましい。より好ましくは1〜5μm程度であるのがよい。
【0024】
次に、本発明の積層塗膜の形成方法について詳細に説明する。
本発明の積層塗膜の形成方法は、上述の金属感塗料組成物を用いて積層塗膜を形成するに当たり、次の第1及び第2工程を行うか、第1’及び第2工程を行うことを特徴とする。
【0025】
(第1 工程)被塗物上に該金属感塗料組成物を直接積層して金属感塗膜層を形成する。
(第1’工程)被塗物上に下塗り塗膜層を形成した後に該金属感塗料組成物を積層して金属感塗膜層を形成する。
(第2 工程)該金属感塗膜層の上にクリヤ上塗り層を形成する。
【0026】
このような工程を行うことにより、金属感外観を有する金属感塗膜と、被塗物や塗膜との密着性能を良好にした積層塗膜を形成することができる。言い換えれば、例えば第1’及び第2工程を行う場合は、下塗り塗膜層とクリヤ上塗り層の間に、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料を含む金属感塗膜層が設けられており、該金属感塗膜層中の光輝性顔料が実質的に面状に配向することにより、得られる積層塗膜は良好な金属感外観を示すようになる。
【0027】
ここで、本発明の積層塗膜の形成方法の第1工程においては、被塗物として、例えば、リン酸亜鉛処理したダル鋼板、亜鉛めっき鋼板などを採用することができる。具体的には、被塗物上に、顔料重量濃度(PWC)が0.1〜50%の光輝性顔料を含み、全樹脂比に対しアクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂を7〜30%含む金属調塗膜層が形成される。
これにより、金属メッキ面等が有する金属感外観を示す積層塗膜を良好な密着性能で被塗物上に形成することができる。
【0028】
また、被塗物への積層方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法などを適宜採用することができる。
【0029】
一方、本発明の積層塗膜の形成方法の第1’工程は、被塗物上且つ金属感塗膜層下に、下塗り塗膜層を形成する点で第1工程と異なる。
かかる下塗り塗膜層としては、クリヤ塗膜であってもよいし、着色された塗膜であってもよい。好ましくは着色塗膜である。具体的には、着色塗膜の場合、アルミニウムのような金属光沢に対しては、グレー系又はブラック等の濃色系無彩色の着色が好ましい。
また、下塗り塗膜層は、水系型や溶剤型、粉体塗料から適宜選択した塗料を用いて形成することができる。
なお、下塗り塗膜層の有無については、基材となる被塗物の種類、表面の凹凸の程度、密着性の要求レベルにより適宜選定することが望ましい。
【0030】
他方、本発明の積層塗膜の形成方法の第2工程は、第1工程又は第1’工程で形成された金属調塗膜層の上に、クリヤ上塗り層を形成する工程である。
かかるクリヤ上塗り層としては、一般的なクリヤ塗膜を用いることができ、更には半透明感を付与した、いわゆる濁りクリヤ塗膜を用いてもよい。
また、クリヤ上塗り層は、溶剤型塗料から形成してもよいし、粉体塗料から形成してもよい。溶剤型塗料としては、一液型塗料を用いてもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料のような二液型樹脂を用いてもよい。
【0031】
ここで、図1に、本発明の積層塗膜の形成方法で得られる積層塗膜の一実施形態の断面図を示す。
【0032】
図1に示すように、この積層塗膜は、下塗り塗膜層1とクリヤ上塗り層3の間に、金属調塗膜層2が設けられている。
また、下塗り塗膜層1及び金属調塗膜層2の厚みは、クリヤ塗膜上塗り層3に比べ薄くなっており、金属調塗膜層2は、下塗り塗膜層1とクリヤ上塗り層3に挟まれた状態で、面状に配向している。
このように、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料が面状に配向することにより、良好な金属感外観を示す。
【0033】
下塗り塗膜層1の厚みは、特に限定されるものではないが、一例として15〜200μm程度、好ましくは10〜25μm程度の厚みが挙げられる。また、クリヤ上塗り層3の厚みも特に限定されるものではないが、一例として10〜50μm程度、好ましくは25〜40μm程度の厚みが挙げられる。金属調塗膜層2の厚みは、薄いことが好ましく、一般には10μm以下、好ましくは5μm以下の厚みが好ましい。
【0034】
なお、かかる積層塗膜を鋼板等の金属板の上に形成する場合には、第1下塗り層を形成した後に、当該積層塗膜を形成してもよい。例えば、金属板の上に電着塗装を施した後、第1下塗り塗膜を形成し、その上に当該積層塗膜を形成してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0036】
・金属感塗料の調製
金属感塗料として、アルミニウム蒸着膜を粉砕して得られるアルミニウム粉を含有した塗料を調製した。
【0037】
なお、金属感塗料組成物を形成する塗料としては、以下のものを用いた。
【0038】
(製造例1:アクリル樹脂溶液の製造)
温度計、サーモスタット、撹拌機、還流冷却器及び滴下用ポンプを備えた反応器に、キシレン40質量部、n−ブタノール21質量部を仕込み、撹拌しながら110℃まで昇温した。
次いで、同温度を保持しつつ、メチルメタクリレート46質量部、エチルアクリレート40質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.5質量部、アクリル酸1.5質量部及びアゾビスイソブチルニトリル0.3質量部からなる混合物100.3質量部を、滴下用ポンプを利用して、3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後1時間110℃に保ち、撹拌を続けた。
その後、追加触媒アゾビスジメチルバレロニトリル0.7質量部をキシレン14質量部に溶解させたものを1時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後1時間110℃に保持した後、冷却し、反応を終了した。
次いで、キシレン24質量部を加え、不揮発分50%のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂の水酸基価は54mgKOH/g、酸価は12mgKOH/g、質量平均分子量は65,000であった。
【0039】
(製造例2:CABグラフトアクリル樹脂溶液の製造)
温度計、サーモスタット、攪拌機、還流冷却器及び滴下用ポンプを備えた反応器に、トルエン4.2質量部、酢酸2−ブトキシエチル2.8質量部及びCAB−551−0.01(商品名、イーストマン・ケミカル・プロダクツ社製、セルロースアセテートブチレート(以下、これを「CAB」と略称する場合がある)、質量平均分子量5,000)7質量部を仕込み、窒素ガス雰囲気下で、約1時間かけて100℃まで加熱した。100℃となり、CABが完全に溶解したことを確認した後、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.6質量部、アクリル酸0.05質量部、スチレン1質量部、メチルメタクリレート1質量部、メチルアクリレート2.35質量部、キシレン2.5質量部及び過酸化ベンゾイル0.1質量部からなるモノマー混合液7.6質量部をCAB溶液中に3時間にわたって滴下した。滴下終了30分後、アゾビスイソブチロニトリルを0.025質量部加え、更に窒素雰囲気下で2時間、100℃に保ち、固形分含有率55%のCABグラフトアクリル樹脂溶液(A1)を得た。
【0040】
表2に示す配合とする以外は、製造例2と同様の操作を繰り返して、CABグラフトアクリル樹脂溶液(A2)〜(A6)を得た。製造例2と併せて、得られたCABグラフトアクリル樹脂溶液(A1)〜(A6)のCAB量、グラフトアクリル量及び固形分含有率も表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例1)
(1)金属感塗料
製造例1で得たアクリル樹脂溶液116質量部、製造例2で得たCABグラフトアクリル樹脂溶液(A1)22質量部、「メタシーンスラリー 70−0010」(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ社製、蒸着アルミニウム膜を粉砕して得られるアルミニウム粉のスラリー、平均粒子径13μm、厚さ0.05μm、アルミニウム粉含有量10%)200質量部及び「ユーバン28−60」(商品名(「ユーバン」は登録商標)、三井化学社製、メラミン樹脂、固形分60%)50質量部からなる混合物を、酢酸ブチル/キシレン/「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族炭化水素系溶剤)=50/40/10の混合溶剤を用いて、粘度11秒(フォードカップ#4,20℃)に調製し、金属感塗料(X1)を得た。
【0043】
(2)積層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、70mm×150mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「NT200」、関西ペイント社製カチオン型電着塗料)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分焼き付けた。その後、関西ペイント社製のグレーの中塗り(商品名:KPXー70)を30μm塗装し、140℃で30分焼き付けた。
【0044】
次に、第一層(金属感塗料組成物)、及び第二層(クリヤ上塗り層)から成る積層塗膜を形成した。
第一層は乾燥膜厚3〜6μmとなるようにスプレー塗装し、第二層は乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装した。その後、140℃で30分間焼き付け、積層塗膜を形成した。
なお、第二層目用塗料には、溶剤型クリヤ(商品名「ルーガベークM90」、関西ペイント製アクリルメラミン系塗料)を用いた。
【0045】
(実施例2〜5、比較例1及び2)
表2に示す配合とする以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、金属感塗料(X2)〜(X7)を得た。また、積層塗膜を形成した。
【0046】
【表2】

【0047】
(性能評価)
得られた実施例1〜5、比較例1及び2の積層塗膜について、光沢感、金属感外観及び密着性を以下のようにして評価した。
【0048】
(1)光沢感
以下の基準により評価した。
○:光沢がある。
△:光沢が少ない。
×:光沢がない。
【0049】
(2)金属感外観
以下の基準で肉眼により評価した。
○:ハイライト部とシェード部の対比が大きい。
△:ハイライト部とシェード部の対比が小さい。
×:ムラ等がありメタリック感も無い。
【0050】
(3)密着性
塗膜をカッターナイフ(JIS K 5400の7.2(2)(e)に規定)で塗膜素地に達する直交する縦横11本ずつの平行線を2mmの間隔で引き、正方形の基盤目状の塗膜の上にセロハンテープ(JIS Z 1522に規定)を密着させ上方に一気に引き剥がし、100個の基盤目中の塗膜の残った基盤目の数を測定した。
【0051】
【表3】

【0052】
表3より、本発明の一例である金属感塗料組成物を用いて得た積層塗膜は、アクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂を用いているため、蒸着金属層を増量しても密着性の低下は見られないことがわかる。また、均一な金属感外観も付与されていることがわかる。
一方、従来品に該当する比較例1〜4で得られた積層塗膜は、蒸着金属を増加させた場合には、蒸着金属層とその上下層での密着性の低下が生じることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、鏡面光沢ほどの強い光沢感ではないが、従来のシルバー塗装に比較すると強い光沢感を有する金属感外観を塗膜の形成により物品に付与することができる。
従って、取っ手やホイールなどの自動車部品や自動車車体など、又は電化製品やその他の物品に、従来のシルバー塗装より強い金属感外観を簡易な工程で付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の金属感塗料組成物を用いた積層塗膜の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…下塗り塗膜層
2…金属感塗膜層
3…クリヤ上塗り層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物又は下塗り塗膜層の上に積層され、金属感外観を示す塗料組成物であって、
蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料と、アクリル樹脂をグラフト化した繊維素系樹脂とを含み、
上記光輝性顔料の顔料重量濃度(PWC)が0.1〜50%であり、上記グラフト化した繊維素系樹脂が全樹脂量に対して7〜30%含まれていることを特徴とする金属感塗料組成物。
【請求項2】
上記グラフト化した繊維素系樹脂の分子量が5,000〜150,000であることを特徴とする請求項1に記載の金属感塗料組成物。
【請求項3】
厚みが1〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属感塗料組成物。
【請求項4】
上記光輝性顔料がアルミニウム粉であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の金属感塗料組成物。
【請求項5】
上記光輝性顔料を構成する金属片の厚みが0.01〜1μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の金属感塗料組成物。
【請求項6】
上記光輝性顔料を構成する金属片の平均粒径が0.1〜30μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の金属感塗料組成物。
【請求項7】
上記請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属感塗料組成物を用いて積層塗膜を形成するに当たり、
被塗物上に該金属感塗料組成物を直接積層して金属感塗膜層を形成する工程、又は被塗物上に下塗り塗膜層を形成した後に該金属感塗料組成物を積層して金属感塗膜層を形成する工程、を行い、
その後、該金属感塗膜層の上にクリヤ上塗り層を形成する工程、を行うことを特徴とする積層塗膜の形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−274164(P2008−274164A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121466(P2007−121466)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】