説明

金属探知装置及び金属探知方法

【課題】高精度の測定を簡易な構造及び方法にて行うことができ、コンクリートの内部に埋設された鉄筋や金属配管の位置や大きさについても検知することができる、金属探知装置を提供すること。
【解決手段】測定点Pの磁場を測定する測定子11と、測定点Pに対して第1の磁場を発生させる内側コイル12と、この内側コイル12とは別体に構成されたものであって、測定点Pに対して第1の磁場とは反対方向の第2の磁場を発生させることにより、測定点Pにおける第1の磁場と第2の磁場との合成磁場を略ゼロとする外側コイル13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属を探知するための金属探知装置及び金属探知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な目的で金属探知が行われている。例えば、建屋の壁面や床面を構成するコンクリートの内部に埋設された鉄筋や金属配管の探知、空港やMRI(Magnetic Resonance Imaging)室の如き特殊領域に対する金属の出入りを監視するための探知、あるいは、食品への金属の混入を監視するための探知がある。このような金属探知を行うための一つの原理として、電磁誘導方式が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には電磁誘導方式の金属片選別装置が開示されている。この装置は、一対のセンサを備えて構成されている。これらセンサの各々には、駆動コイルと検出コイルとが相互に同心円状に配置されている。各センサの駆動コイルには、当該駆動コイルを励磁駆動するための交流信号源が接続されており、各センサの検出コイルには、当該検出コイルの検出信号の差分信号を出力する差動増幅器が接続されている。このような構造において、一方のセンサの検出コイル内に試料金属片をセットすると共に、他方のセンサの検出コイル内に標準となる試料金属片をセットした上で、交流信号源にて駆動コイルを励磁駆動すると、この駆動コイルにて発生された磁束によって各試料金属片に渦電流が生ずる。各試料金属片の渦電流は、試料金属片の組成や外形寸法の相違に応じて相互に異なるものとなるので、この渦電流の差分を差動増幅器にて増幅して解析することで、各試料金属片の組成の異同等を判定することができる。
【0004】
【特許文献1】特開昭59−43349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の金属片選別装置は、一対のセンサの各々にて発生される渦電流の差分を演算することで金属片の選別を行っているので、測定精度を高めるためには、各センサの相互間における製造誤差や、各センサに対する試料金属片の配置位置のずれや、標準となる試料金属片の製造誤差等を除去する必要があり、この除去処理を行うために、機械的な調整や、参照信号を予め取得する等の電気処理上の手間を要していた。また、この金属片選別装置では、標準となる試料金属片に対する相対的な組成の異同のみが検知でき、コンクリートの内部に埋設された鉄筋や金属配管の位置や大きさを検知することができなかった。
【0006】
この発明は、このような従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、高精度の測定を簡易な構造及び方法にて行うことができ、コンクリートの内部に埋設された鉄筋や金属配管の位置や大きさについても検知することができる、金属探知装置及び金属探知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、測定点の磁場を測定する磁場測定手段と、前記測定点に対して第1の磁場を発生させる第1のコイルと、前記第1のコイルとは別体に構成されたものであって、前記測定点に対して前記第1の磁場とは反対方向の第2の磁場を発生させることにより、前記測定点における前記第1の磁場と前記第2の磁場との合成磁場を略ゼロとする第2のコイルとを備える。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る本発明において、前記第2のコイルを、前記第1のコイルと同心状となる位置であって、当該第1のコイルを外側から囲繞する位置に配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項2に係る本発明において、前記第1のコイルにおける軸方向に沿った一端面と、前記第2のコイルにおける軸方向に沿った一端面とを、同一平面内に配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項2又は3に係る本発明において、前記磁場測定手段は、前記第1のコイルにて外側から囲繞される位置に配置されたピックアップコイルを備え、前記ピックアップコイルを、前記第1のコイルの軸及び前記第2のコイルの軸に対してそれぞれ平行な軸を有する一対のコイルであって、相互に差動接続された一対のコイルから構成したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る本発明は、請求項2から4のいずれか一項に係る本発明において、前記第1のコイルとして、相互に直径が異なると共に、相互に同心状に配置された複数の第1のコイルを設け、前記複数の第1のコイルを相互に切替える切替手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る本発明は、請求項2から4のいずれか一項に係る本発明において、前記第2のコイルとして、相互に直径が異なると共に、相互に同心状に配置された複数の第2のコイルを設け、前記複数の第2のコイルを相互に切替える切替手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る本発明は、請求項1から6のいずれか一項に係る本発明において、前記第1のコイルの巻数と前記第2のコイルの巻数との比を、前記第1のコイルの直径と前記第2のコイルの直径との比に対して等しくし、前記第1のコイルと前記第2のコイルとを相互に差動接続したことを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る本発明は、請求項1から7のいずれか一項に係る本発明において、前記第1の磁場と逆方向の磁場を前記測定点に対して発生させ、あるいは、前記第2の磁場と逆方向の磁場を前記測定点に対して発生させるものであって、前記測定点における前記合成磁場の強さを調整するための補正コイルを設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る本発明は、請求項1から8のいずれか一項に係る本発明において、前記第1のコイルと前記第2のコイルとを備えるコイルユニットを、前記測定点が同一直線上に並ぶように、同一直線上に複数並設したことを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る本発明は、請求項9に係る本発明において、前記第1のコイルと前記第2のコイルとを備えるコイルユニットを、前記測定点が同一直線上に並ぶように、同一直線上に複数並設することにってコイルユニット群を形成し、複数の前記コイルユニット群を、当該複数のコイルユニット群の各々のコイルユニットの測定点が同一直線上に並ぶように、並設したことを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る本発明は、請求項9又は10に係る本発明において、前記複数のコイルユニットの少なくとも一部による前記合成磁場のピークの深さを、当該一部以外の前記コイルユニットの前記合成磁場のピークの深さに対して、異なる深さとしたことを特徴とする。
【0018】
請求項12に係る本発明は、測定対象に含まれる金属を探知する金属探知方法であって、測定点の磁場を測定する磁場測定手段と、前記測定点に対して第1の磁場を発生させる第1のコイルと、前記第1のコイルとは別体に構成されたものであって、前記測定点に対して前記第1の磁場とは反対方向の第2の磁場を発生させることにより、前記測定点における前記第1の磁場と前記第2の磁場との合成磁場を略ゼロとする第2のコイルと、を備えて構成された金属探知装置を用いた金属探知方法において、前記金属探知装置又は前記測定対象のいずれか一方を、いずれか他方に対して相対的に移動させ、前記移動中の各移動位置において、前記磁場測定手段にて測定された前記合成磁場の強度の変化に基づいて、前記測定対象に含まれる金属を探知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る本発明によれば、測定対象における金属の有無、測定対象における金属の位置、金属の大きさ、及び金属が導電体であるか磁性体であるかの判別を行うことができるので、各種の金属探知に有用である。特に、測定点の合成磁場を略ゼロとしているので、出力変化が微小であっても容易に判定でき、微小な磁場変化を捉えることができて、高いS/N比の探知が可能になる。また、金属の有無や種類を判別するためには、第1コイルと第2コイルのペアを一組のみ設ければよく、従来のように複数のコイルから構成されるセンサを複数設けたり、標準となる試料金属片を準備する必要もないことから、金属探知装置を簡易かつ安価に製造できる。
【0020】
請求項2に係る本発明によれば、第2のコイルを第1のコイルと同心状に配置したので、これらを並設する場合に比べて、第1コイルと第2コイルのペアから構成される測定ユニットを入れ子状に多重化して小型化することが容易になる。さらに、第1のコイル及び第2のコイルをそれぞれ円筒状に形成して相互に同心円状に配置すれば、これらコイルから外部に至る合成磁場が等方性を有することになり、これらコイルに対するいずれの位置に測定対象を配置した場合においても同一の磁場変化を生じさせることができるので、測定精度を一層向上させることができる。
【0021】
請求項3に係る本発明によれば、第1のコイルの一端面と第2のコイルの一端面とを揃えることで、合成磁場が略ゼロの測定点を測定対象に対して最も近づけることができるので、金属探知のS/N比を一層向上させることができる。
【0022】
請求項4に係る本発明によれば、差動接続された一対のコイルから構成したピックアップコイルを用いて磁場測定を行うことで、各コイル自体の磁場を相互に打ち消すことができ、測定点の合成磁場を略ゼロとすることが一層容易になるので、金属探知のS/N比を一層向上させることができる。
【0023】
請求項5に係る本発明によれば、複数の第1のコイルを相互に切替えることで、合成磁場のピークの深さを調整でき、測定対象の表面から金属までの深さを特定できる。特に、複数の第1コイルと第2コイルのペアを一組のみ準備するだけで合成磁場のピークの深さを調整できるので、複数の測定ユニットを準備する場合に比べて、装置コストを低減できると共に、探知作業を簡易かつ迅速に行うことが可能になる。
【0024】
請求項6に係る本発明によれば、複数の第2のコイルを相互に切替えることで、合成磁場のピークの深さを調整でき、測定対象の表面から金属までの深さを特定できる。特に、第1コイルと複数の第2コイルのペアを一組のみ準備するだけで合成磁場のピークの深さを調整できるので、複数の測定ユニットを準備する場合に比べて、装置コストを低減できると共に、探知作業を簡易かつ迅速に行うことが可能になる。また、内側に配置される第1のコイルを複数設ける場合に比べて、外側に配置される第2のコイルを複数設ける場合には、第2のコイルの追加や変更を一層容易に行なうことができる。
【0025】
請求項7に係る本発明によれば、第1の磁場と第2の磁場とを、相互に逆向きで同一強度の強さの磁場とすることができ、簡易な構成で、合成磁場を略ゼロにすることができる。
【0026】
請求項8に係る本発明によれば、補正コイルを設けることで合成磁場の強さを微調整することができるので、高いS/N比の探知が可能になる。特に、第1のコイルや第2のコイルの巻数を厳密に調整する必要がなくなるので、測定ユニットの製造を簡易かつ安価に行うことができる。
【0027】
請求項9に係る本発明によれば、複数のコイルユニットを直線状に配置することで、コイルユニットを単体で配置する場合に比べて、直線状の測定領域における測定を一括して行うことができ、直線状の測定領域の測定を一層迅速に行うことができる。
【0028】
請求項10に係る本発明によれば、コイルユニット群を複数並設することで、コイルユニット群を単体で配置する場合に比べて、面状の測定領域における測定を一括して行うことができ、面状の測定領域の測定を一層迅速に行うことができる。
【0029】
請求項11に係る本発明によれば、複数のコイルユニットの少なくとも一部による合成磁場のピークの深さを変えることで、直線状又は面状の測定領域における測定において、測定対象における深さ方向いずれの位置に金属が混入しているのかが事前には判らない場合であっても、当該金属を迅速に探知することが可能になる。
【0030】
請求項12に係る本発明によれば、金属探知装置又は測定対象のいずれか一方を、いずれか他方に対して相対的に移動させ、各移動位置での合成磁場の強度変化に基づいて金属を探知することにより、測定対象が広範な場合であっても、金属を迅速に探知することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、各発明の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の各々の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0032】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る金属探知装置及び金属探知方法は、測定対象に含まれる金属を探知するものである。この装置及び方法では、1)金属の有無、2)金属の位置、3)金属の大きさ、及び4)金属が導電体であるか磁性体であるかの判別を行うことができる。探知対象になる金属や探知の状況は任意であり、例えば、コンクリートの内部に埋設された配管の探知、特殊領域に対する金属の出入りを監視するための探知、あるいは、食品への金属の混入を監視するための探知に適用可能である。以下の例では、コンクリートの内部に埋設された鉄筋の探知を行う場合について説明する。
【0033】
各実施の形態に共通の特徴の一つは、測定点の磁場を測定する磁場測定手段と、この測定点に対して第1の磁場を発生させる第1のコイルと、この測定点に対して第1の磁場とは反対方向の第2の磁場を発生させることにより、測定点における第1の磁場と第2の磁場との合成磁場を略ゼロとする第2のコイルとを用いることにある。すなわち、少なくとも2つのコイルを用い、各コイルの機械的又は電気的な構成を工夫することで、各コイルにて発生される磁場が、所定の測定点においては自動的に相互に打ち消し合うようにする。このように合成磁場を略ゼロとすることで、各コイルにて発生される磁場の異同を信号処理によってゼロにする必要がなくなると共に、ゼロ点を基準とする磁場の変動に基づいて金属探知を行うことで磁場の微小変動を容易に把握できて測定精度を向上させることができる。
【0034】
なお、合成磁場を「略ゼロ」とするとは、合成磁場を完全にゼロにする場合の他、合成磁場を完全にゼロにはできないが測定精度上の支障にならない程度の合成磁場が残る場合を含む意味である。また、合成磁場を「略ゼロ」とする構成は、第1のコイル及び第2のコイルのみによって達成されなくてもよく、後述する補正コイルによる磁場調整にて達成してもよい。
【0035】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、各実施の形態に係る金属探知装置及び金属探知方法の具体的内容について説明する。
【0036】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、一対のコイルを二重同心円筒状に配置した基本的な形態である。
【0037】
(金属探知装置の構成)
図1は実施の形態1に係る金属探知装置を測定対象と共に示す模式図である。実施の形態1における測定対象1は、鉄筋1aが埋設されたコンクリート1bである。金属探知装置2は、測定ユニット10、発振器20、アンプ30、及びロックインアンプ40を備えて構成されている(図1と後述する図12及び図14においては、測定対象1及び測定ユニット10を縦断面図として示し、それ以外の構成要素を斜視図として示す。なお、縦断面とはコイルの中心軸方向に沿った切断面による断面を意味する。また、各図に示す各コイルの縦断面では、各コイルを構成する銅線を簡略化して示す)。
【0038】
測定ユニット10は、測定対象1に近接配置されるもので、特許請求の範囲におけるコイルユニットに対応する。この測定ユニット10は、測定子11、内側コイル12、及び外側コイル13を備えて構成されている。
【0039】
測定子11は、測定点Pの磁場を測定するものであり、特許請求の範囲における磁場測定手段に対応する。この測定子11は、円筒状の測定子本体11aの先端近傍位置にピックアップコイル11bを巻き付けて構成されており、このピックアップコイル11bを通過する磁束の変化によって当該ピックアップコイル11bに起電力が発生し、当該磁束の変化に応じた電流が当該ピックアップコイル11bから出力される。すなわち、このピックアップコイル11bの中心軸上の中央位置が本実施の形態における測定点Pとなる。
【0040】
内側コイル12は、測定点Pに対して第1の磁場を発生させるもので、特許請求の範囲における第1のコイルに対応する。この内側コイル12は、銅線を円筒状に巻き付けることで形成されており、この内側コイル12にアンプ30から出力された電流を流すことで、内側コイル12の内部には、当該内側コイル12の軸方向に沿った第1の磁場が形成される。ここでは、内側コイル12の軸方向が鉛直方向に沿うように、当該内側コイル12を配置するものとし、第1の磁場を鉛直上向きの磁場とする。
【0041】
外側コイル13は、測定点Pに対して第2の磁場を発生させるもので、特許請求の範囲における第2のコイルに対応する。この外側コイル13は、銅線を円筒状に巻き付けることで形成されており、この外側コイル13にアンプ30から出力された電流を流すことで、外側コイル13の内部には、当該外側コイル13の軸方向に沿った第2の磁場が形成される。この第2の磁場は、第1の磁場とは反対方向になるように形成される(この点の詳細は後述する)。ここでは、外側コイル13の軸方向が鉛直方向に沿うように、当該外側コイル13を配置するものとするとし、第2の磁場を鉛直下向きの磁場とする。
【0042】
これら測定子11、内側コイル12、及び外側コイル13の相互関係について説明する。図2は図1の測定ユニット10における各コイルの平面図である。測定子11のピックアップコイル11bは、内側コイル12の内部であって、内側コイル12と同心状となる位置に配置されている。また、外側コイル13は、内側コイル12と同心状となる位置であって、当該内側コイル12を外側から囲繞する位置に配置されている。ここで、内側コイル12と外側コイル13とは相互に差動接続されている。従って、内側コイル12の端部と外側コイル13の端部とにアンプ30から出力された電流を流すことで、内側コイル12による第1の磁場と外側コイル13による第2の磁場とは相互に逆方向となる。
【0043】
また、内側コイル12の直径及び銅線の巻数と外側コイル13の直径及び銅線の巻数とは、第1の磁場の強さと第2の磁場の強さとが相互に同一になるように決定されている。具体的には、内側コイル12の直径と外側コイル13の直径との比が、内側コイル12の銅線の巻数と外側コイル13の銅線の巻数との比に等しくなるように、これら内側コイル12及び外側コイル13が形成されている。例えば、内側コイル12の直径を200mm、外側コイル13の直径を400mm、内側コイル12の銅線の巻数を155、外側コイル13の銅線の巻数を310としている。
【0044】
このように、第1の磁場と第2の磁場とを相互に逆方向としたこと、及び、第1の磁場の強さと第2の磁場の強さとを相互に同一としたことから、これら第1の磁場と第2の磁場との測定点Pにおける合成磁場は略ゼロになる。図3は、磁束密度の変化を示す図であり、横軸は測定点Pからの距離、縦軸は磁束密度を示す。ここで「距離」とは、測定点Pを始点として内側コイル12及び外側コイル13の軸方向に沿った距離を意味する(以下特記なき限り同じ)。この図3に示すように、測定点Pにおいては(測定点Pからの距離=0の点においては)、合成磁場(外側コイル13の磁場−内側コイル12の磁場)がゼロになることが判る。なお、理論上、内側コイル12と外側コイル13とを相互に完全に同一位置に配置した場合には、第1の磁場と第2の磁場とが、測定点P以外の位置においては相互に完全に打ち消し合い、金属の有無に応じた磁場変化が生じなくなるために好ましくない。従って、ここでは、内側コイル12と外側コイル13とを相互に完全に同一位置に配置した場合は除外しており、換言すれば、内側コイル12と外側コイル13とを相互に別体に構成することを条件としている。
【0045】
これら測定子11、内側コイル12、及び外側コイル13は、相互に一体に保持できる構造とすることが、測定の作業性を高めるためには好ましい。例えば、測定子11、内側コイル12、及び外側コイル13を、図示しない非金属円筒ケースの内部に配置して一体化することで、測定ユニット10を構成することが好ましい。
【0046】
図1において、発振器20は、所定周波数(例えば1KHzから数MHz)の電流を出力する基準電流源である。アンプ30は、発振器20から出力された電流を増幅して、内側コイル12の端部と外側コイル13の端部とに出力する。ロックインアンプ40には、測定子11のピックアップコイル11bから出力される電流が測定信号として入力されると共に、発振器20から出力された電流が参照信号として入力される。従って、ロックインアンプ40からは、測定子11のピックアップコイル11bから出力される電流のうち、発振器20から出力された電流と等しい周波数成分の電圧値が出力される。なお、アンプ30と内側コイル12又は外側コイル13とを相互に接続する電線50、ピックアップコイル11bとロックインアンプ40とを相互に接続する電線50、及び、内側コイル12と外側コイル13とを相互に接続する電線50としては、当該電線50自身によって発生する磁場の影響を極力低減するため、ツイスト導線を用いることが好ましい。
【0047】
(金属探知方法)
次に、このように構成された金属探知装置2を用いて行われる金属探知方法について説明する。この方法では、最初にゼロ調整を行う。具体的には、金属探知装置2の周囲に金属がない状態で、発振器20を起動して電流を流し、ロックインアンプ40の出力(電圧値)がゼロになるように、内側コイル12及び外側コイル13に対する測定子11の位置を調整する。ただし、金属探知装置2の製造工程等において、当該位置が予め調整されている場合には、ゼロ調整を省略してもよい。
【0048】
次に、測定ユニット10を測定対象1の近接に移動させる。この移動時には、第1の磁場のうち内側コイル12の外部に形成された第1の磁場、又は、第2の磁場のうち外側コイル13の外部に形成された第2の磁場が、測定対象1の金属に印加され、金属が磁性体である場合には印加磁界とほぼ同位相で磁化される。一方、金属が導電体の場合には、電磁誘導によって誘導電圧が発生し、誘導電流が流れる。このとき、金属の誘導性(インダクタンス)によって誘導電圧に比べさらに90度位相が遅れる。この磁場の変化により、第1の磁場又は第2の磁場が影響を受け、測定点Pにおける合成磁場が均衡を崩してゼロ以外の値を持つ。この合成磁場の強度及び参照信号に対する位相角を、ロックインアンプ40にて測定することで、測定対象1における金属の有無、測定対象1における金属の位置、金属の大きさ、及び金属が導電体であるか磁性体であるかの判別を行うことができる。このような判別ができる理由について以下説明する。
【0049】
(金属探知方法−金属の有無の特定)
測定対象1における金属の有無は、ロックインアンプ40の出力がゼロ以外になったか否かに基づいて判定することができる。すなわち、上述のように、金属探知装置2の周囲に金属がない状態では、ロックインアンプ40の出力がゼロとなるように調整されているため、ロックインアンプ40の出力がゼロ以外となった場合には、測定対象1に金属が含まれていることが判る。
【0050】
(金属探知方法−金属の位置の特定)
測定対象1における金属の位置は、測定対象1の表面から金属までの深さ(図1における上下方向の距離)と、当該深さ方向に対して直交する面内での位置(図1の紙面に直交する面内の距離)とを特定することで、3次元的に特定することが可能になる。
【0051】
深さ方向に対して直交する面内での位置は、測定対象1に対する測定ユニット10の位置に基づいて特定できる。すなわち、当該面内において測定ユニット10を水平移動させつつロックインアンプ40の出力を監視し、当該出力が最大になった位置が金属の位置である。
【0052】
また、測定対象1の表面から金属までの深さは、合成磁場のピークの深さを変えることで特定できる。図4は、外側コイル13の直径と、測定対象1の表面から合成磁場のピークまでの深さとの関係を示す図であり、横軸は外側コイル13の直径、縦軸は合成磁場のピークの深さを示す。この図4に示すように、外側コイル13の直径を大きくする程、合成磁場のピークを深くすることができる。従って、図1の構成において、内側コイル12の直径と外側コイル13の直径との比を維持しつつ、これら内側コイル12の直径及び外側コイル13の直径を大きくすることで、合成磁場のピークの深さを調整可能である。
【0053】
図5から図8は、コイルの直径と、合成磁場のピークの深さとの関係を示す図であり、それぞれ、(a)は内側コイル12及び外側コイル13の縦断面、(b)は(a)の場合の磁束密度の変化を示す図であって、横軸は測定点Pからの距離、縦軸は磁束密度を示す。図5(a)から図8(a)では、いずれも内側コイル12の直径と外側コイル13の直径との比を1:2としているが、内側コイル12の直径及び外側コイル13の直径をそれぞれ図示のように変えている。図5(b)から図8(b)から明らかなように、合成磁場のピークは、図5(a)から図8(a)に至るにつれて深くなっている。従って、このように内側コイル12の直径及び外側コイル13の直径を変えた複数の測定ユニット10を準備しておき、例えば合成磁場のピークが浅い測定ユニット10にて最初の測定を行い、合成磁場のピークが徐々に深くなる測定ユニット10に順次切替えて測定を行い、金属が探知された時の測定ユニット10が持つ合成磁場のピークの深さが、測定対象1の表面から金属までの深さであると判定できる。
【0054】
(金属探知方法−金属の大きさの判別)
次に、金属の大きさの判別は、ロックインアンプ40の最大出力値に基づいて行うことができる。図9は、ロックインアンプ40の出力変化を示す図である。ここでは、ピックアップコイル11bについて、直径約40mm、巻数700、内側コイル12について、直径60mm、長さ120mm、巻数120、外側コイル13について、直径115、長さ230、巻数230とし、種類及び大きさが異なる金属を測定ユニット10に対する複数位置に配置した場合のロックインアンプ40の電圧値及び位相角を示している(実際には、この測定結果は巻数2で抵抗約70mmの補正コイル14を設けた場合の結果であるが、この補正コイル14については実施の形態2で説明する)。この図9から判るように、ロックインアンプ40の電圧値は、測定ユニット10に対して距離ゼロの位置に金属を配置した場合に最大となり、少なくともこの最大値は、鉄筋を直径10mm、直径15mm、直径20mmと太くするに伴って、大きくなっている。従って、これら最大値を予め取得しておき、測定で得られた最大値を既知の値と比較することで、金属の大きさを判別することができる。
【0055】
(金属探知方法−金属が導電体であるか磁性体であるかの判別)
次に、金属が導電体であるか磁性体であるかの判別は、合成磁場の位相角に基づいて行うことができる。図10は、測定ユニット10からの距離に応じた位相角の変化を示す図であり、横軸は測定ユニット10からの距離、縦軸は参照信号に対する測定信号の位相角を示す。ここでは、図9と同一の測定ユニット10を用いて、種類及び大きさが異なる金属を測定ユニット10に対する複数位置に配置した場合の結果を示す。この図10から判るように、鉄筋や鉄板の如き磁性体の場合には、位相角は遅れ(プラス)になり、真鍮板、アルミ板、及び銅板の如き導電体の場合には、測定ユニット10からの距離が約130mm以下では、位相角は進み(マイナス)になる。従って、この位相角に基づいて、金属が導電体であるか磁性体であるかを判別することができる。このように金属の種類が判別できる点は、特にMRI室への出入りを監視する際には重要である。すなわち、MRI室では、磁性体がMRI装置に引き付けられて危険であるため、磁性体の持込は禁止されているが、患者用のベッドの如き導電体については出入りを許容すべき場合があるため、両者を区別することが重要になる。
【0056】
その他にも、金属探知装置2を、コンクリート含有塩分濃度の測定に適用できる可能性がある。すなわち、コンクリートは含有塩分によって導電率が変化しるため、含有塩分が高いほど渦電流が大きく発生し、ロックインアンプ40の電圧値が大きくなる。従って、当該電圧値に基づいて、コンクリート含有塩分濃度を判定することが可能になる。
【0057】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、測定対象1における金属の有無、測定対象1における金属の位置、金属の大きさ、金属が導電体であるか磁性体であるかの判別、及びコンクリート含有塩分濃度の判定を行うことができるので、各種の金属探知に有用である。
【0058】
特に、測定点Pの合成磁場をゼロとしているので、出力変化が微小であっても容易に判定でき、微小な磁場変化を捉えることができて、高いS/N比の探知が可能になる。
【0059】
また、金属の有無や種類を判別するためには、測定ユニット10を一つのみ設ければよく、従来のように複数のコイルから構成されるセンサを複数設けたり、標準となる試料金属片を準備する必要もないことから、金属探知装置2を簡易かつ安価に製造できる。
【0060】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この実施の形態2は、補正コイルを設けた形態である。ただし、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0061】
図11は実施の形態2に係る測定ユニット10を概念的に示す図である。この測定ユニット10は、測定子11(図示を省略する)、内側コイル12、及び外側コイル13に加えて、補正コイル14を備えて構成されている。この補正コイル14は、内側コイル12の端部に取り付けられて第1の磁場と逆方向の磁場を電磁誘導による磁束によって測定点Pに対して発生させ、あるいは、外側コイル13の端部に取り付けられて第2の磁場と逆方向の磁場を電磁誘導による磁束によって測定点Pに対して発生させることにより、測定点Pにおける合成磁場の強さを調整するもので、特許請求の範囲における補正コイルに対応する。すなわち、実施の形態1の構成において、内側コイル12の直径及び銅線の巻数と外側コイル13の直径及び銅線の巻数とは、第1の磁場の強さと第2の磁場の強さとが相互に同一になるように決定されている。しかし実際には、銅線の巻数を所望の巻数とすることが難しい場合があり、この結果、第1の磁場又は第2の磁場の一方がわずかに強くなってしまい、測定点Pにおける合成磁場が完全にゼロにはならない可能性がある。この点を解消するため、補正コイル14にて合成磁場の強さを微調整することを可能とする。
【0062】
具体的には、補正コイル14は、少数の巻数(例えば1巻から3巻)の銅線14aと、この銅線に並列接続された抵抗(例えば数十mオームの抵抗)14bとから構成されており、内側コイル12又は外側コイル13のいずれか一方の終端に接続されずに巻かれている(ただし、外側コイル13の終端に巻いた方が接続作業が容易である点で好ましい)。例えば、内側コイル12及び外側コイル13をほぼ所定の巻数で形成した後、測定点Pにおける合成磁場を測定する。そして、この合成磁場に応じて、補正コイル14における銅線14aの巻数と抵抗14bの大きさとを決定し、補正コイル14を取り付けて電磁誘導による磁束を発生させ合成磁場がゼロになるように調整する。この構成によれば、補正コイル14による磁場を測定点Pに発生させることで、測定点Pにおける合成磁場を微調整してゼロにすることができるので、以降は、ゼロ調整を行うことなく測定を実施できる。あるいは、抵抗14bを可変抵抗とし、内側コイル12又は外側コイル13の端部に補正コイル14を巻いた後、この可変抵抗の値を調整することで、ゼロ調整をより簡便に実施してもよい。
【0063】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、合成磁場の強さを微調整することができるので、高いS/N比の探知が可能になる。特に、内側コイル12や外側コイル13の巻数を厳密に調整する必要がなくなるので、測定ユニット10の製造を簡易かつ安価に行うことができる。
【0064】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この実施の形態3は、1つの測定ユニット10に内側コイル12を複数設けた形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0065】
図12は実施の形態3に係る金属探知装置2を測定対象1と共に示す図である。この測定ユニット10は、測定子11、複数の内側コイル12a〜12c、及び外側コイル13を備えて構成されている。これら複数の内側コイル12a〜12cは相互に直径が異なると共に相互に同心状に配置されたもので、当該複数の内側コイル12a〜12cを相互に切替えて、いずれか一つの内側コイル12a〜12cを選択的に使用することで、合成磁場のピークの深さを変えて、金属の位置同定の容易化を測るものである。
【0066】
この内側コイル12a〜12cの切替の基本的概念について説明する。実施の形態1の説明では、図5から図8を参照しつつ、内側コイル12の直径及び外側コイル13の直径を変えることで、合成磁場のピークの深さが変るため、内側コイル12の直径及び外側コイル13の直径を変えた複数の測定ユニット10を順次切替えて使用すれば、測定対象1の表面から金属までの深さを特定できる点について説明した。しかしながら、このように複数の測定ユニット10を準備することは装置コストの面において好ましくなく、また、複数の測定ユニット10を切替えて使用することは探知作業が煩雑になるために好ましくない。
【0067】
一方、内側コイル12の直径及び外側コイル13の直径の両方を変えなくても、内側コイル12の直径と外側コイル13の直径との比率を変えることで、合成磁場のピークの深さを変えることができる。図13は合成磁場のピークの深さの変化を示したものであり、横軸は内側コイル12の直径、縦軸は合成磁場のピークの深さを示す。ここでは、外側コイル13について、直径90mm、長さ50mmに固定し、内側コイル12の直径のみを1mmから81mm程度まで変化させた場合における、合成磁場のピークの深さを測定した。ここでは、合成磁場のピークの深さ=0mmの点が、合成磁場のピークが外側コイル13及び内側コイル12の長さ方向の中央位置(測定点P)に位置する状態を示し、合成磁場のピークの深さ=25mm以上の範囲が、合成磁場のピークが外側コイル13より外部に位置する状態を示すことになる。この図13から判るように、内側コイル12の直径を大きくする程、合成磁場のピークが深くなる。
【0068】
そこで、本実施の形態3では、図12に示すように、外側コイル13の直径及び長さは固定し、内側コイル12a〜12cを選択的に切替えることで、測定に使用する内側コイル12a〜12cの寸法のみを変えて、合成磁場のピークの深さを調整できるようにした。ただし、測定点Pにおける合成磁場を略ゼロにする必要があることに変わりはないため、各内側コイル12a〜12cと外側コイル13とは相互に差動接続し、内側コイル12a〜12cの直径及び銅線の巻数と外側コイル13の直径及び銅線の巻数とは、第1の磁場の強さと第2の磁場の強さとが相互に同一になるように決定されている。例えば、外側コイル13について、直径180mm、巻数60とした場合、内側コイル12aについて、直径30mm、巻数10、内側コイル12bについて、直径60mm、巻数20、内側コイル12cについて、直径90mm、巻数30とする。
【0069】
これら内側コイル12a〜12cを相互に切替えるための具体的構成は任意であるが、例えば、各内側コイル12a〜12cと外側コイル13との相互間の差動接続位置と、各内側コイル12a〜12cからアンプ30に至る電線との相互間の接続位置とに、切替スイッチSWを設けておき、この切替スイッチSWを、測定者が手動にて切替えたり、あるいは、図示しない制御装置にて所定間隔で自動にて順次切替える。
【0070】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、複数の内側コイル12a〜12cを相互に切替えることで、合成磁場のピークの深さを調整でき、測定対象1の表面から金属までの深さを特定できる。特に、1つの測定ユニット10を準備するだけで合成磁場のピークの深さを調整できるので、複数の測定ユニット10を準備する場合に比べて、装置コストを低減できると共に、探知作業を簡易かつ迅速に行うことが可能になる。
【0071】
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態4について説明する。この実施の形態4は、1つの測定ユニット10に外側コイル13を複数設けた形態である。なお、実施の形態3と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態3で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0072】
図14は実施の形態4に係る金属探知装置2を測定対象1と共に示す図である。この測定ユニット10は、測定子11、内側コイル12、及び複数の外側コイル13a〜13cを備えて構成されている。これら複数の外側コイル13a〜13cは相互に直径が異なると共に相互に同心状に配置されたもので、当該複数の外側コイル13a〜13cを相互に切替えて、いずれか一つの外側コイル13a〜13cを選択的に使用することで、合成磁場のピークの深さを変えて、金属の位置同定の容易化を測るものである。
【0073】
すなわち、実施の形態4では、実施の形態3とは逆に、内側コイル12の直径及び長さは固定し、外側コイル13a〜13cを選択的に切替えることで、測定に使用する外側コイル13a〜13cの寸法のみを変えて、合成磁場のピークの深さを調整できるようにしている。この場合においても、内側コイル12と各外側コイル13a〜13cとは相互に差動接続し、内側コイル12の直径及び銅線の巻数と外側コイル13a〜13cの直径及び銅線の巻数とは、第1の磁場の強さと第2の磁場の強さとが相互に同一になるように決定されている。例えば、内側コイル12について、直径30mm、巻数10とした場合、外側コイル13aについて、直径60mm、巻数20、外側コイル13bについて、直径90mm、巻数30、外側コイル13cについて、直径180mm、巻数60とする。
【0074】
(実施の形態4の効果)
このように実施の形態4によれば、複数の外側コイル13a〜13cを相互に切替えることで、合成磁場のピークの深さを調整でき、測定対象1の表面から金属までの深さを特定できる。特に、1つの測定ユニット10を準備するだけで合成磁場のピークの深さを調整できるので、複数の測定ユニット10を準備する場合に比べて、装置コストを低減できると共に、探知作業を簡易かつ迅速に行うことが可能になる。また、外側コイル13a〜13cを複数設ける場合には、内側コイル12を複数設ける場合に比べて、外側コイル13a〜13cの追加や変更を一層容易に行なうことができる。
【0075】
〔実施の形態5〕
次に、実施の形態5について説明する。この実施の形態5は、内側コイル12の一端面と外側コイル13の一端面とを揃えた位置に配置すると共に、測定子11には一対のコイルから構成したピックアップコイル11bを設けた形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0076】
図15は実施の形態5に係る金属探知装置2を測定対象1と共に示す平面図、図16は図15のコイル部分を模式的に示す拡大平面図、図17は図15の縦断面図、図18は図15のコイル部分を模式的に示す縦断面図である。図17、18に示すように、この金属探知装置2において、内側コイル12における軸方向に沿った一端面(測定対象1に対して近接される側の端面)と、外側コイル13における軸方向に沿った一端面(測定対象1に対して近接される側の端面)とは、高さ方向における同一位置に配置されており、同一平面内に配置されている。この構造によれば、図18に示すように、合成磁場が略ゼロの測定点Pを測定対象に対して最も近づけることができるので、金属探知のS/N比を一層向上させることができる。このような位置に内側コイル12及び外側コイル13を配置するための具体的な構造としては種々の構造を採用することができるが、ここでは図17に示すように、これら内側コイル12と外側コイル13との相互間に、これら相互の空間部に対応する円環状の位置調整リング17が配置されており、この位置調整リング17に対して内側コイル12及び外側コイル13を固定することができる。
【0077】
また本実施の形態では、図15〜17に示すように、測定子11のピックアップコイル11bを、一対のコイル11c、11dから構成している。これら一対のコイル11c、11dは、相互に略同一の径及び長さにて形成されており、少なくとも一端部(測定対象1に対して近接される側の端部)が内側コイル12にて外側から囲繞されるように、この内側コイル12の内部に配置されている。これらコイル11c、11dの軸方向は、内側コイル12及び外側コイル13の軸方向と略平行となっている。ここで、これらコイル11c、11dは、いわゆる八の字平面差動コイルであり、相互に差動接続されている。具体的には、図16に矢印で示すように、コイル11cの銅線の巻き線方向とコイル11dの銅線の巻き線方向とが相互に逆向きになるように、これらコイル11c、11dが接続されている。この構造では、各コイル11c、11d自体の磁場を相互に打ち消すことができ、測定点Pの合成磁場を略ゼロとすることが一層容易になるので、金属探知のS/N比を一層向上させることができる。なお、図17に示す構造では、内側コイル12の内側に配置された高さ調整板18aに対して底板18bが配置されており、この底板18bに設けたネジ孔に対して高さ調節棒18c、18dが螺合している。この高さ調節棒18cにはコイル11c、高さ調節棒18dにはコイル11dがそれぞれ固定されており、この高さ調節棒18c、18dを軸周りに回転させて上下動させることで、コイル11c、11dの高さを調整できるので、測定点Pの合成磁場がゼロになる位置を容易に微調整することができる。
【0078】
次に、本実施の形態に係る金属探知装置2による測定結果について説明する。図19は測定状況を説明する模式図であり、(a)は測定対象1を金属探知装置2と共に示す平面図、(b)(c)は測定対象1の側面図である。この測定対象1は、幅300mm×長さ1000mm×厚み100mmのコンクリート1bの内部に、鉄筋1a及び合成樹脂製可とう電線管(以下CD管)1cを埋設して構成されている。ここでは、測定対象1の上面近傍位置に金属探知装置2の内側コイル12及び外側コイル13を配置し、この測定対象1をその長手方向に沿った行き方向及び戻り方向に移動させた時の各位置において、金属探知装置2のロックインアンプ40(図19では図示せず)からの出力を得た。また、図19の例では、鉄筋1aをコンクリート1bの内部に埋設した例のみを示すが、この鉄筋1aを埋設していない場合(CD管1cのみを埋設した場合)についても測定を行った。
【0079】
図20から図23は、ロックインアンプ40の出力変化を示す図であり、縦軸にはロックインアンプ40の出力電圧、横軸には測定位置を示す。ここでは、測定位置=10cmの位置をCD管1cの位置とする。図20は、CD管1cのみを埋設した場合であって、発振器20の周波数を約450kHzとした場合であり、行き方向と戻り方向のいずれにおいても、CD管1cの位置に内側コイル12及び外側コイル13を配置した場合に、出力電圧が最大値(または最小値)を示す。
【0080】
図21は、鉄筋1a及びCD管1cを埋設した場合であって、発振器20の周波数を約450kHzとした場合であり、図20ほど明瞭ではないものの、行き方向と戻り方向のいずれにおいても、CD管1cの位置に内側コイル12及び外側コイル13を配置した場合に、出力電圧が最大値を示すことから、CD管1cの位置を特定することができる可能性がある。
【0081】
図22は、CD管1cのみを埋設した場合であって、発振器20の周波数を約80kHzとした場合であり、CD管1cの位置と出力電圧との対応関係を把握することは困難である。なお、この図22では、行き方向の測定結果のみを示す。
【0082】
図23は、CD管1cのみを埋設した場合であって、発振器20の周波数を約4.5kHzとした場合であり、図22と同様に、CD管1cの位置と出力電圧との対応関係を把握することは困難である。
【0083】
図20及び図21から判るように、出力電圧が最大値を示す位置とCD管1cの位置とが相互に対応していることから、この出力電圧のピークを検知することで、CD管1cの位置を特定することができる。このことから、図15から図18に示すように金属探知装置2を構成してそのS/N比を向上させることで、金属以外の測定にも金属探知装置2を活用することができる。
【0084】
さらに、図20及び図21と、図22及び図23との対比から判るように、発振器20の周波数を約450kHzとすることで、CD管1cの位置が特定可能となっている。従って、CD管1cの位置を特定するためには、発振器20の周波数を約450kHzとすることが好ましい。これは、励磁コイルである内側コイル12及び外側コイル13の周波数を一桁上げることで、コンクリート内の起電流(起電圧)が一桁上がり、さらにこの起電流の磁束により発生するピックアップコイル11bの起電圧が一桁上がるので、SN比が全体として二桁向上するためである。
【0085】
(実施の形態5の効果)
このように実施の形態5によれば、内側コイル12の一端面と外側コイル13の一端面とを揃えることで、合成磁場が略ゼロの測定点Pを測定対象に対して最も近づけることができるので、金属探知のS/N比を一層向上させることができる。また、差動接続された一対のコイル11c、11dから構成したピックアップコイル11bを用いて磁場測定を行うことで、コイル11c、11d自体の磁場を相互に打ち消すことができ、測定点Pの合成磁場を略ゼロとすることが一層容易になるので、金属探知のS/N比を一層向上させることができる。
【0086】
〔実施の形態6〕
次に、実施の形態6について説明する。この実施の形態6は、複数の測定ユニット10を、測定点Pが同一直線上に並ぶように、同一直線上に並設した形態である。なお、実施の形態1と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態1で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0087】
図24は実施の形態6に係る金属探知装置2の平面図、図25は図24のA−A矢視断面図である。この金属探知装置2は測定ゲート60を備えており、この測定ゲート60にはコイルユニット群15が内蔵されている。このコイルユニット群15は、複数の測定ユニット10から構成されている。これら複数の測定ユニット10は、相互に同一に構成されたもので、同一の合成磁場のピークの深さを持っている。このような複数の測定ユニット10を、各測定ユニット10の軸方向を揃えた状態で、各測定ユニット10の端部が同一面内に位置するように、かつ、各測定ユニット10の測定点が直線状に並ぶように、測定ゲート60の底面の近傍位置に配置している。発振器20、アンプ30、及びロックインアンプ40は、図示は省略するが、各測定ユニット10の各々に個別に設けられており、各測定ユニット10の合成磁場の強度や位相角を個別に出力する。あるいは、発振器20、アンプ30、及びロックインアンプ40を、複数の測定ユニット10に対して1組のみ設けてもよく、この場合には、ロックインアンプ40の画面内に、各測定ユニット10の強度や位相角を色分け等にて表示したり、最も大きな強度のみを表示するようにしてもよい。
【0088】
このように構成された金属探知装置2を用いた金属探知方法は以下の通りである。すなわち、測定ゲート60の下方の直線状の領域を測定領域に設定し、この直線状の測定領域を横切るように測定対象1を相対的に移動させる。例えば、測定ゲート60の下方にベルトコンベア70を配置し、このベルトコンベア70によって、測定対象1である食品を複数並列状に搬送する。並列された食品のいずれかに金属が混入している場合には、当該金属がロックインアンプ40の出力にて探知できるので、当該探知された場合には警報を出力する。また、複数の測定ユニット10のいずれによって金属が探知されたのかを判別することで、金属が混入している食品の位置を特定できるので、当該金属が探知された食品のみを自動的にベルトコンベアから排出する。
【0089】
(実施の形態6の効果)
このように実施の形態6によれば、複数の測定ユニット10を直線状に配置することで、測定ユニット10を単体で配置する場合に比べて、直線状の測定領域における測定を一括して行うことができるので、直線状の測定領域の測定を一層迅速に行うことができる。
【0090】
〔実施の形態7〕
次に、実施の形態7について説明する。この実施の形態7は、実施の形態6と同様のコイルユニット群15を複数並設した形態である。なお、実施の形態6と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態6で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0091】
図26は実施の形態7に係る金属探知装置2の平面図、図27は図26のB−B矢視断面図である。この金属探知装置2には複数のコイルユニット群15が内蔵されている。各コイルユニット群15は複数の測定ユニット10から構成されている。これら複数のコイルユニット群15を、測定プレート80の底面近傍位置に並設している。
【0092】
このように構成された金属探知装置2を用いた金属探知方法は以下の通りである。すなわち、コンクリートや地面の如き2次元又は3次元領域を測定対象1に設定し、この測定対象1の表面に対して、測定アーム81を介して測定プレート80を平行に走査する。測定対象1に金属が埋設されている場合には、当該金属がロックインアンプ40の出力にて探知できるので、当該探知された場合には警報を出力する。複数の測定ユニット10のいずれによって金属が探知されたのかを判別することで、金属が埋設されている位置を特定できる。
【0093】
(実施の形態7の効果)
このように実施の形態7によれば、複数のコイルユニット群15を並設することで、コイルユニット群15を単体で配置する場合に比べて、面状の測定領域における測定を一括して行うことができるので、面状の測定領域の測定を一層迅速に行うことができる。
【0094】
〔実施の形態8〕
次に、実施の形態8について説明する。この実施の形態8は、実施の形態6と同様に複数の測定ユニット10を直線状に並設した形態であって、各複数の測定ユニット10の合成磁場のピークの深さを変えた形態である。なお、実施の形態6と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態6で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0095】
図28は実施の形態8に係る金属探知装置2の平面図、図29は図28のC−C矢視断面図である。この金属探知装置2は測定ゲート90を備えており、この測定ゲート90にはコイルユニット群16が内蔵されている。このコイルユニット群16は、複数の測定ユニット10a〜10cから構成されている。これら複数の測定ユニット10は、合成磁場のピークの深さが相互に異なるように構成されたもので、具体的には、内側コイル12又は外側コイル13の一方の直径及び巻数を共通化し、内側コイル12又は外側コイル13の他方の直径及び巻数を変えることで、合成磁場のピークの深さを変えている。
【0096】
このように構成された金属探知装置2を用いた金属探知方法は以下の通りである。すなわち、測定ゲート90の下方の直線状の領域を測定領域に設定し、この直線状の測定領域に沿うように測定対象を相対的に移動させる。例えば、測定ゲート90の下方にベルトコンベア70を配置し、このベルトコンベア70によって、測定対象1である複数の食品を一列に搬送する。この食品は、合成磁場のピークの深さが異なる測定ユニット10a〜10cの下方を順次通過することになり、食品に厚みがあり、この厚み方向(深さ方向)のいずれの位置に金属が混入しているのかが事前には判らない場合であっても、当該金属がいずれかの測定ユニット10a〜10cからのロックインアンプ40に対する出力で探知できるので、当該探知された場合には警報を出力したり、当該金属が探知された食品を自動的にベルトコンベアから排出する。また、複数の測定ユニット10a〜10cのいずれによって金属が探知されたのかを判別することで、金属が混入している食品の深さ方向の位置も特定できる。
【0097】
(実施の形態8の効果)
このように実施の形態8によれば、合成磁場のピークの深さが異なる複数の測定ユニット10を直線状に配置することで、測定ユニット10を単体で配置する場合に比べて、直線状の測定領域における測定を一層迅速に行うことができると共に、測定対象における深さ方向いずれの位置に金属が混入しているのかが事前には判らない場合であっても、当該金属を迅速に探知することが可能になる。
【0098】
〔実施の形態9〕
次に、実施の形態9について説明する。この実施の形態9は、実施の形態8と同様のコイルユニット群を複数並設した形態である。なお、実施の形態8と略同様の構成要素については、必要に応じて、実施の形態8で用いたのと同一の符号又は名称を付してその説明を省略する。
【0099】
図30は実施の形態9に係る金属探知装置2の平面図、図31は図30のD−D矢視断面図である。この金属探知装置2には複数のコイルユニット群16が内蔵されている。各コイルユニット群16は複数の測定ユニット10a〜10dから構成されており、これら複数のコイルユニット群16を、測定領域であるMRI室の入口ゲートの床面100の近傍位置に並設している。各コイルユニット群16は、実施の形態8と同様に、複数の測定ユニット10a〜10dから構成されており、これら複数の測定ユニット10a〜10dは、合成磁場のピークの深さが相互に異なるように構成されている。
【0100】
このように構成された金属探知装置2を用いた金属探知方法は以下の通りである。すなわち、入口ゲートの上方を測定領域に設定し、この測定領域に対して測定対象1である、患者を乗せたベットを通過させる。患者が金属製品を身に付けている場合あるいはベッドに金属が含まれている場合には、当該金属がいずれかの測定ユニット10からのロックインアンプ40に対する出力で探知できるので、当該探知された場合には警報を出力する。また、複数の測定ユニット10a〜10dのいずれによって金属が探知されたのかを判別することで、金属製品の水平領域内における位置を特定できる。さらに、複数の測定ユニット10a〜10dのいずれによって金属が探知されたのかを判別することで、金属の深さ方向の位置も特定できる。さらには、実施の形態1において図11を参照しつつ説明したように、金属が導電体であるか磁性体であるかを判別できるので、ベットの如き導電体は除外し、磁性体が探知された場合にのみ警報出力を行うことで、不要な警報出力を行うことを防止できる。
【0101】
(実施の形態9の効果)
このように実施の形態9によれば、合成磁場のピークの深さが異なる複数の測定ユニット10a〜10dを面状に配置することで、測定ユニット10a〜10dを単体で配置する場合に比べて、面状の測定領域における測定を一層迅速に行うことができると共に、測定対象における深さ方向いずれの位置に金属が混入しているのかが事前には判らない場合であっても、当該金属を迅速に探知することが可能になる。
【0102】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0103】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0104】
(形状や数値について)
各実施の形態で示した形状や数値は例示であり、例えば実施例の各寸法値は任意に変更することができる。
【0105】
(各実施の形態の相互の関係について)
各実施の形態に示した構成又は方法の一部は、他の実施の形態に適用可能である。例えば、実施の形態2の補正コイル14を実施の形態3から実施の形態9の金属探知装置2に設けてもよい。
【0106】
(コイルの構成について)
第1のコイル、第2のコイル、及び補正コイルは、図示のように円筒状に形成される場合の他、角筒状を含む任意の形状で構成することができる。
【0107】
(コイルの配置について)
第1のコイルと第2のコイルは、測定点Pにおける合成磁場を略ゼロとできる限りにおいて、任意の配置可能である。例えば、図32に概念的に示すように、同一の中心軸を持つように、第1のコイル12’と第2のコイル13’とを相互に直列状に配置した場合においても、これら第1のコイル12’と第2のコイル13’との相互の中間位置の合成磁場を略ゼロとできる。あるいは、図33に概念的に示すように、第1のコイル12’と第2のコイル13’とを、各々の中心軸が平行になるように並設した場合においても、これら第1のコイル12’と第2のコイル13’との相互の中間位置の合成磁場を略ゼロとできる。ただし、実施の形態1から実施の形態9に示したように、第1のコイル(内側コイル12)と第2のコイル(外側コイル13)を同円心状に配置することで、測定ユニット10を多重化して小型化することが容易になる。
【0108】
(コイルの接続について)
第1のコイルと第2のコイルとは、必ずしも相互に差動接続される必要はなく、例えば第1のコイルと第2のコイルとを相互に異なるアンプ30に接続し、これらアンプ30から同一位相で逆方向の電流を流すことで、逆方向磁場を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
この発明は、金属を探知するためのものであり、手持ち式の金属探知装置や、設置型の金属探知装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態1に係る金属探知装置を測定対象と共に示す模式図である。
【図2】図1の測定ユニットにおける各コイルの平面図である。
【図3】磁束密度の変化を示す図である。
【図4】外側コイルの直径と合成磁場のピークの深さとの関係を示す図である。
【図5】コイルの直径と、合成磁場のピークの深さとの関係を示す図であり、(a)は内側コイル及び外側コイルの縦断面、(b)は(a)の場合の磁束密度の変化を示す図である。
【図6】コイルの直径と、合成磁場のピークの深さとの関係を示す図であり、(a)は内側コイル及び外側コイルの縦断面、(b)は(a)の場合の磁束密度の変化を示す図である。
【図7】コイルの直径と、合成磁場のピークの深さとの関係を示す図であり、(a)は内側コイル及び外側コイルの縦断面、(b)は(a)の場合の磁束密度の変化を示す図である。
【図8】コイルの直径と、合成磁場のピークの深さとの関係を示す図であり、(a)は内側コイル及び外側コイルの縦断面、(b)は(a)の場合の磁束密度の変化を示す図である。
【図9】金属の寸法に応じたロックインアンプの出力変化を示す図である。
【図10】測定ユニットからの距離に応じた位相角の変化を示す図である。
【図11】実施の形態2に係る測定ユニットを概念的に示す図である。
【図12】実施の形態3に係る金属探知装置を測定対象と共に示す図である。
【図13】合成磁場のピークの深さの変化を示す図である。
【図14】実施の形態4に係る金属探知装置を測定対象と共に示す図である。
【図15】実施の形態5に係る金属探知装置を測定対象と共に示す平面図である。
【図16】図15のコイル部分を模式的に示す拡大平面図である。
【図17】図15の縦断面図である。
【図18】図15のコイル部分を模式的に示す縦断面図である。
【図19】測定状況を説明する模式図であり、(a)は測定対象を金属探知装置と共に示す平面図、(b)(c)は測定対象の側面図である。
【図20】ロックインアンプの出力変化を示す図である。
【図21】ロックインアンプの出力変化を示す図である。
【図22】ロックインアンプの出力変化を示す図である。
【図23】ロックインアンプの出力変化を示す図である。
【図24】実施の形態6に係る金属探知装置の平面図である。
【図25】図24のA−A矢視断面図である。
【図26】実施の形態7に係る金属探知装置の平面図である。
【図27】図26のB−B矢視断面図である。
【図28】実施の形態8に係る金属探知装置の平面図である。
【図29】図28のC−C矢視断面図である。
【図30】実施の形態9に係る金属探知装置の平面図である。
【図31】図30のD−D矢視断面図である。
【図32】変形例に係るコイルの配置関係を概念的に示す図である。
【図33】変形例に係るコイルの配置関係を概念的に示す図である。
【符号の説明】
【0111】
1 測定対象
1a 鉄筋
1b コンクリート
1c CD管
2 金属探知装置
10、10a〜10d 測定ユニット
11 測定子
11a 測定子本体
11b ピックアップコイル
11c、11d コイル
12、12a〜12c 内側コイル
12’ 第1のコイル
13、13a〜13c 外側コイル
13’ 第2のコイル
14 補正コイル
15、16 コイルユニット群
17 位置調整リング
18a 高さ調整板
18b 底板
18c、18d 高さ調節棒
20 発振器
30 アンプ
40 ロックインアンプ
50 電線
60、90 測定ゲート
70 ベルトコンベア
80 測定プレート
81 測定アーム
P 測定点
SW 切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定点の磁場を測定する磁場測定手段と、
前記測定点に対して第1の磁場を発生させる第1のコイルと、
前記第1のコイルとは別体に構成されたものであって、前記測定点に対して前記第1の磁場とは反対方向の第2の磁場を発生させることにより、前記測定点における前記第1の磁場と前記第2の磁場との合成磁場を略ゼロとする第2のコイルと、
を備えることを特徴とする金属探知装置。
【請求項2】
前記第2のコイルを、前記第1のコイルと同心状となる位置であって、当該第1のコイルを外側から囲繞する位置に配置したこと、
を特徴とする請求項1に記載の金属探知装置。
【請求項3】
前記第1のコイルにおける軸方向に沿った一端面と、前記第2のコイルにおける軸方向に沿った一端面とを、同一平面内に配置したこと、
を特徴とする請求項2に記載の金属探知装置。
【請求項4】
前記磁場測定手段は、前記第1のコイルにて外側から囲繞される位置に配置されたピックアップコイルを備え、
前記ピックアップコイルを、前記第1のコイルの軸及び前記第2のコイルの軸に対してそれぞれ平行な軸を有する一対のコイルであって、相互に差動接続された一対のコイルから構成したこと、
を特徴とする請求項2又は3に記載の金属探知装置。
【請求項5】
前記第1のコイルとして、相互に直径が異なると共に、相互に同心状に配置された複数の第1のコイルを設け、
前記複数の第1のコイルを相互に切替える切替手段を設けたこと、
を特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の金属探知装置。
【請求項6】
前記第2のコイルとして、相互に直径が異なると共に、相互に同心状に配置された複数の第2のコイルを設け、
前記複数の第2のコイルを相互に切替える切替手段を設けたこと、
を特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の金属探知装置。
【請求項7】
前記第1のコイルの巻数と前記第2のコイルの巻数との比を、前記第1のコイルの直径と前記第2のコイルの直径との比に対して等しくし、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとを相互に差動接続したこと、
を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の金属探知装置。
【請求項8】
前記第1の磁場と同じ方向の磁場を前記測定点に対して発生させ、あるいは、前記第2の磁場と同じ方向の磁場を前記測定点に対して発生させるものであって、前記測定点における前記合成磁場の強さを調整するための補正コイルを設けたこと、
を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の金属探知装置。
【請求項9】
前記第1のコイルと前記第2のコイルとを備えるコイルユニットを、前記測定点が同一直線上に並ぶように、同一直線上に複数並設したこと、
を特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の金属探知装置。
【請求項10】
前記第1のコイルと前記第2のコイルとを備えるコイルユニットを、前記測定点が同一直線上に並ぶように、同一直線上に複数並設することにってコイルユニット群を形成し、
複数の前記コイルユニット群を、当該複数のコイルユニット群の各々のコイルユニットの測定点が同一直線上に並ぶように、並設したこと、
を特徴とする請求項9に記載の金属探知装置。
【請求項11】
前記複数のコイルユニットの少なくとも一部による前記合成磁場のピークの深さを、当該一部以外の前記コイルユニットの前記合成磁場のピークの深さに対して、異なる深さとしたこと、
を特徴とする請求項9又は10に記載の金属探知装置。
【請求項12】
測定対象に含まれる金属を探知する金属探知方法であって、
測定点の磁場を測定する磁場測定手段と、前記測定点に対して第1の磁場を発生させる第1のコイルと、前記第1のコイルとは別体に構成されたものであって、前記測定点に対して前記第1の磁場とは反対方向の第2の磁場を発生させることにより、前記測定点における前記第1の磁場と前記第2の磁場との合成磁場を略ゼロとする第2のコイルと、を備えて構成された金属探知装置を用いた金属探知方法において、
前記金属探知装置又は前記測定対象のいずれか一方を、いずれか他方に対して相対的に移動させ、
前記移動中の各移動位置において、前記磁場測定手段にて測定された前記合成磁場の強度の変化に基づいて、前記測定対象に含まれる金属を探知すること、
を特徴とする金属探知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2009−186337(P2009−186337A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26985(P2008−26985)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】