説明

金属接近検出装置

【課題】 必要な構成要素を一体化することによって装置の小型化を実現し、また、性能が均一で量産性に優れた金属接近検出装置を提供する。
【解決手段】 磁気抵抗素子11と、この磁気抵抗素子11にバイアス磁界を供給する磁石と、磁気抵抗素子11による検出情報を外部に出力するLED4とを一体化して構成し、磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10とLED4とを配設した多数の回路基板1aが格子状に縦横に配置されて一体化している第1の集合基板1と、磁石を有する第2の集合基板である集合磁気シート2とを接合して積層集合体を構成し、該積層集合体は製品領域の境界線X、Yに沿って切断されることにより、各小片が製品とされる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気検出素子を用いて金属部材の接近を検出する金属接近検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯車の歯を検出して回転数を測定したり、鋼球の計数を行うものとして、磁気検出素子とバイアス印加用の磁石を用いた磁気検出装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。以下、この特許文献1を図面に基づいて説明する。図16は特許文献1で開示されている従来の磁気検出装置の断面図である。図16に於いて、従来の磁気検出装置100は、磁気抵抗素子101、この磁気抵抗素子101にバイアス磁界を供給する磁石102、支持部材である回路基板103、及びケース104等によって構成されている。
【0003】
また、磁気抵抗素子101は接着剤等により回路基板103上に固着され、一方、リード端子105a、105bは、回路基板103に挿通されて、磁気抵抗素子101の電極とワイヤ106a、106bを介して電気的に接続されている。この従来の磁気検出装置は、磁気抵抗素子の感磁部の長手方向を検出対象物の通過方向に対して平行に配置することで、検出信号と他のノイズを区別でき、ノイズ処理回路が不要であることが示されている。
【0004】
また、他の従来例として、磁気検出素子とバイアス磁界印加用の磁石と磁性体からなるケースとを備え、磁石とケースが離隔し、磁石とケースとの間隔は、磁気検出素子と被検出物の間隔より大きい磁気検出装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この従来例の磁気検出装置は、ケースが閉磁路の一部を構成するので、被検出物からの磁路が安定し、被検出物に磁束が効率よく集中して高い検出感度を得ることが示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−292513号公報(第2頁、第2図)
【特許文献2】特開平10−300763号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の磁気検出装置は、基本的には磁気抵抗素子とバイアス用の磁石のみによって構成されるものであり、実際にこの磁気検出装置を使用するには、磁気抵抗素子の抵抗値の変化を電気信号に変換する波形成形回路や計数動作を行う計数回路等の電子回路、及び、測定結果を表示するための表示手段などを組み合わせて構成する必要があり、装置構成が複雑になっていた。このために、磁気検出装置を用いて歯車の回転数を測定したり、鋼球の計数を行う場合には、装置の配設に大きなスペースが必要であり、且つ、配設場所が限定されるなどの問題があった。
【0007】
また、従来の装置はケースで覆われているなどの構造のために、一つ一つの製品を個別に製造しなければならず、量産性に劣ることによるコスト高や、製造ばらつきによる磁気検出特性の均一性などに問題があった。
【0008】
本発明の目的は上記課題を解決し、必要な構成要素を一体化することによって装置の小型化を実現し、また、性能が均一で量産性に優れた金属接近検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の金属接近検出装置は、下記記載の構成を採用する。
【0010】
本発明の金属接近検出装置は、磁気検出素子と、この磁気検出素子にバイアス磁界を供給する磁石と、磁気検出素子による検出情報を外部に出力する出力手段と、を一体化して構成する金属接近検出装置であって、磁気検出素子を内蔵する集積回路と出力手段とを配設した多数の回路基板が格子状に配置されて一体化している第1の集合基板と、磁石を有する第2の集合基板と、を接合して積層集合体を構成し、該積層集合体は製品領域の境界線に沿って切断されることにより、各小片が製品とされることを特徴とする。
【0011】
これにより、磁気検出素子を内蔵する集積回路と磁石、及び出力手段を一体化して構成するので、単独で金属接近検出と検出情報の出力が出来ると共に、小型で取り付けスペースが小さい金属接近検出装置を提供することが出来る。また、積層集合体からの切断によって多数の製品を一度に製造できるので、性能が均一で量産性に優れた金属接近検出装置を提供出来る。
【0012】
また、第2の集合基板は、磁性材を含有して磁石を形成する磁気シートであることを特徴とする。
【0013】
これにより、磁気シートによって積層集合体の全面に磁石を構成できるので、構造が簡単であるにも関わらず磁気検出素子へのバイアス磁界の供給が確実で、且つ、着磁工程が簡素化された金属接近検出装置を提供できる。
【0014】
また、磁気シートは、全面着磁されて磁石を形成することを特徴とする。
【0015】
これにより、磁気シートへの着磁工程がきわめて容易であると共に、磁気シートの全面が磁石となるので、第1の集合基板に配設される磁気検出素子と位置合わせせずにバイアス磁界を確実に供給することが出来る。
【0016】
また、磁気シートは、磁気検出素子に対応する位置が部分着磁されて磁石を形成することを特徴とする。
【0017】
これにより、磁気シートへの着磁工程が容易であると共に、磁気検出素子に対応する位置が部分的に着磁されて磁石となるので、それぞれの磁気検出素子にバイアス磁界が確実に供給されて、検出感度に優れた金属接近検出装置を提供出来る。
【0018】
また、第1の集合基板は、磁気検出素子に対応する位置に磁性体による磁路を有することを特徴とする。
【0019】
これにより、磁気検出素子へのバイアス磁界が磁路を通って確実に供給されるので、検出感度に優れた金属接近検出装置を提供出来る。
【0020】
また、第2の集合基板は、磁気検出素子に対応する位置に磁石が填め込まれて構成されることを特徴とする。
【0021】
これにより、第2の集合基板は、第1の集合基板に配設される磁気検出素子に対応する位置に磁石が填め込まれるので、それぞれの磁気検出素子にバイアス磁界が確実に供給されて、検出感度に優れた金属接近検出装置を提供出来る。
【0022】
また、出力手段は表示素子であることを特徴とする。
【0023】
これにより、金属の検出を離れた場所から目視等により確認することが出来るので、金属接近検出装置の利用範囲を大きく広げることが出来る。
【発明の効果】
【0024】
上記の如く本発明によれば、磁気検出素子を内蔵する集積回路と磁石、及び出力手段を一体化して構成するので、単独で金属接近検出と検出情報の出力が出来ると共に、小型でスペース効率に優れた金属接近検出装置を提供することが出来る。また、積層集合体からの切断によって多数の製品を一度に製造できるので、性能が均一で量産性に優れた金属接近検出装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図に基づいて具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0026】
以下図面により本発明の実施例1の金属接近検出装置を詳述する。尚、実施例1の特徴は、バイアス磁界用の永久磁石として全面着磁された磁気シートを用いることである。ここでまず、実施例1の金属接近検出装置の製造工程を図1〜図3に基づいて説明する。図1は本発明の金属接近検出装置の実施例1の第1の集合基板と第2の集合基板を示す斜視図である。
【0027】
図1において、1は第1の集合基板であり、平面状の絶縁材によって成り、その上面には金属膜(図示せず)が形成されている。この第1の集合基板1は、磁気検出素子としての磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10と、出力手段である表示素子としての発光ダイオード(以下、LEDと略す)4と、を配設した多数の回路基板1aが格子状に縦横に配置されて一体化している。尚、磁気抵抗素子11は化合物半導体の中で最大の電子移動度を有するInSb等が適している。
【0028】
ここで、X及びYは、格子状に配置された多数の回路基板1aを分離する製品領域の境界線であり、後述する工程で、この境界線X、Yに沿って切断することにより、各小片が製品とされる。尚、集積回路10、及びLED4は、第1の集合基板1の上面の金属膜(図示せず)に、半田等(図示せず)によって固着され配設される。
【0029】
また、2は第2の集合基板としての集合磁気シートであり、絶縁性の樹脂に磁性粒子が略均一に含有された薄い平面状のシートである。この集合磁気シート2は、着磁装置(図示せず)によってその全面を強力な磁界で印加することにより着磁され、全面が永久磁石として磁化される。ここで、集合磁気シート2を矢印Aの方向に移動して第1の集合基板1の裏面に貼り合わせることで、後述する積層集合体が完成ずる。
【0030】
次に、図2(a)は、第1の集合基板と集合磁気シートを貼り合わせて積層集合体とした斜視図である。図2(a)において、第1の集合基板1と第2の集合基板である集合磁気シート2は貼り合わされて、接着剤(図示せず)等によって接合され、積層集合体3が完成する。
【0031】
また、図2(b)は、積層集合体を切断する工程を示す斜視図である。図2(b)において、積層集合体3は、前述した多数の回路基板1aを分離する製品領域の境界線X、Yに沿ってダイシングなどによる切断工程によって切断される。尚、図2(b)では、積層集合体3は境界線X、Yによって、9個の小片に分離されるが、この数は限定されるものではなく、積層集合体3の面積を大きくし、集積回路10やLED4の配設数を増やすことにより、ひとつの積層集合体から更に多くの製品を製造することが出来る。
【0032】
次に図3は、積層集合体3の切断によって多数の製品が分離され完成することを示す斜視図である。図3において、境界線X、Yに沿って切断されたことにより、積層集合体3は各小片に分離されて製品である複数の金属接近検出装置5が完成する。このように、本発明は積層集合体3からの切断によって多数の製品を一度に製造できるので、性能が均一で量産性に優れた金属接近検出装置を提供することが出来る。
【0033】
次に図4は、完成した金属接近検出装置5を略中央付近で切断した断面図である。図4において、完成した金属接近検出装置5は、第1の集合基板1から切断された回路基板1aと、第2の集合基板である集合磁気シート2から切断された磁気シート2aが接合された構造である。ここで、回路基板1aの上面には銅箔などによる金属膜6が形成されており、この金属膜6に磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10と、LED4が実装される。尚、LED4は回路基板1aに対して上向きに実装され、出射光Lは上側に出射されているが、実装の向きは横向きでも良い。また、金属膜6には、コンデンサ等の電気エレメントも実装されるが、ここでは図示を省略する。
【0034】
7は遮光性を有する不透明樹脂であり、集積回路10を封止する。また、8は透光性を有する透明樹脂であり、LED4を封止する。これにより、集積回路10は不透明樹脂7によって外部からの光が遮蔽されるので、光の影響を受けることなく安定して動作することが出来る。また、LED4は透明樹脂8で封止されるので、出射光Lを外部に効率よく出射することが出来る。また、LED4の周囲に図示しないが反射部材を設けるならば、出射光Lの指向性を高めることが出来る。
【0035】
尚、不透明樹脂7と透明樹脂8は、金属接近検出装置5が分離後に形成されても良く、又は、切断前の積層集合体3の状態で形成され、第1の集合基板1と集合磁気シート2と共に切断されても良い。また、金属接近検出装置5は、外部から電源供給を受けるための電極等が必要であるが、図示は省略する。
【0036】
次に図5に基づいて、本発明の実施例1の金属接近検出装置の回路構成の一例を説明する。図5において、集積回路10は磁気検出素子としての磁気抵抗素子11を内蔵すると共に、固定抵抗12、波形成形回路13、制御回路14、表示駆動回路15等を有している。また、外部からの電源としてプラス電圧+Vbとマイナス電圧−Vbが、集積回路10に接続され、図示しないが各回路に供給される。また、LED4は集積回路10からの表示駆動信号P4が接続されている。尚、金属接近検出装置5は、図示しないが内部に電池を内蔵し、外部からの電源供給を必要としない構成でも良い。
【0037】
次に集積回路10の内部は、磁気抵抗素子11と固定抵抗12が直列接続され、その接続点は金属検出信号P1として波形成形回路13に入力される。そして、固定抵抗12の他方の端子は、プラス電圧+Vbに接続され、磁気抵抗素子11の他方の端子は、マイナス電圧−Vbに接続される。この回路構成により、金属検出信号P1は磁気抵抗素子11と固定抵抗12の分割電圧になるので、磁気抵抗素子11が磁界の変動でその抵抗値が変化すると、金属検出信号P1は、プラス電圧+Vbとマイナス電圧−Vbの間で変動することになる。
【0038】
そして、波形成形回路13は金属検出信号P1を入力して波形成形し、デジタル信号であるパルス信号P2を出力する。制御回路14はパルス信号P2を入力し、表示制御信号P3を出力する。また、表示駆動回路15は表示制御信号P3を入力して、LED4を駆動する表示駆動信号P4を出力する。
【0039】
次に、図6(a)と図6(b)に基づいて本発明の実施例1の金属接近検出装置の磁界検出動作を説明する。ここで、図6(a)は金属部材が接近していないスタンバイ状態を示し、図6(b)は金属部材が接近している検出状態を示している。
【0040】
まず、図6(a)のスタンバイ状態では、金属部材が接近していないので、全面が永久磁石とされた磁気シート2aからの磁束Φは、磁気シート2aからほぼ均一に発生し、大きく拡散している。そして、磁気抵抗素子11は磁気シート2aと回路基板1aを介して対向しているので、磁束Φは磁気抵抗素子11を通過するが、磁束Φが大きく拡散しているので、磁気抵抗素子11付近の磁束密度は小さい。
【0041】
次に図6(b)のように、磁性体の金属部材Kが金属接近検出装置5に対して矢印Hの方向に沿って接近移動すると、磁束Φは金属部材Kに引き寄せられ、金属部材Kが磁気抵抗素子11に近接したとき、磁束Φの一部は磁気抵抗素子11付近に集中するので、磁気抵抗素子11での磁束密度が大きくなる。そして、金属部材Kが金属接近検出装置5から離れると、磁束Φは再び拡散するので、磁気抵抗素子11付近の磁束密度は再び小さくなる。
【0042】
次に図7に基づいて、金属部材Kが接近したときの金属接近検出装置5の具体的な動作を説明する。図7は、時間Tに対する金属検出信号P1、パルス信号P2、表示駆動信号P4の推移を示すタイミングチャートである。
【0043】
図7において時間T1は、金属部材Kが金属接近検出装置5に接近前のスタンバイ状態を示しており、磁気抵抗素子11を通過する磁束Φは少ないので、磁気抵抗素子11の抵抗値は小さい。これにより、金属検出信号P1の電圧値は比較的低い状態(すなわちマイナス電圧−Vbに近い状態)が維持される。
【0044】
次に、金属部材Kが金属接近検出装置5に接近すると、磁気抵抗素子11を通過する磁束Φが増えるので磁気抵抗素子11の抵抗値が大きくなり、金属検出信号P1の電圧値は上昇する(すなわちプラス電圧+Vbに近づく)。ここで時間T2は、金属部材Kが磁気抵抗素子11に最接近した時であり、磁気抵抗素子11を通過する磁束Φが最大になるので、磁気抵抗素子11の抵抗値が最大となって、金属検出信号P1の電圧値は最も高くなる。
【0045】
その後、金属部材Kが金属接近検出装置5から離れていくと、磁気抵抗素子11を通過する磁束Φが減少するので磁気抵抗素子11の抵抗値も減少し、時間T3において、金属検出信号P1の電圧値は、スタンバイ状態に戻ることになる。
【0046】
ここで、波形成形回路13は、このように変化する金属検出信号P1を入力し、入力電圧が所定の閾値Vtを越えると、図示するようにパルス信号P2を論理“1”として出力し、入力電圧が所定の閾値Vt以下であれば、論理“0”を出力する。すなわち、波形成形回路13は、金属部材Kが金属接近検出装置5に接近するごとに、パルス信号P2を出力する。
【0047】
次に、制御回路14は、パルス信号P2が入力されると、その立ち上がりエッジ、又は、立ち下がりエッジを検出し、その検出タイミングに同期して所定の長さの表示制御信号P3を出力する。そして、表示駆動回路15は表示制御信号P3を入力し、LED4を駆動するための表示駆動信号P4を図示するように出力する。これにより、LED4は所定の期間点灯して出射光Lを出射し、金属部材Kの検出情報を外部に出力することが出来る。
【0048】
尚、LED4は単体のLEDアレイでも良いし、また複数のLEDによるLEDブロックや、発光色の異なる複数のLEDによる多色LEDブロックでも良く、さらに7セグメント構成の数字表示装置であっても良い。そして、これらの表示方式によって金属部材の接近をいろいろなモードで表示することができる。
【0049】
例えば、表示素子を7セグメント構成の数字表示装置によって構成し、集積回路10の制御回路14に計数回路を内蔵させることにより、金属部材の接近回数を表示したり、歯車の回転数を表示したり出来る。また、図示しないが、外部出力端子を備えてパルス信号P2や表示制御信号P3を外部に出力すれば、金属接近情報を外部に伝達出来るので、金属接近検出装置の利用範囲を大きく広げることが可能である。
【0050】
以上のように、本発明の金属接近検出装置によれば、磁気検出素子を内蔵する集積回路と磁石と出力手段とを一体化して構成するので、単独で金属接近検出と検出情報の出力が出来ると共に、小型で取り付けスペースも小さい金属接近検出装置を提供することが出来る。また、積層集合体からの切断によって多数の製品を一度に製造できるので、性能が均一で量産性に優れた金属接近検出装置を提供出来る。
【0051】
更には、磁気シートを用いて、この磁気シートの全面を着磁して磁気抵抗素子にバイアス磁界を供給するので、構造が簡単であるにも関わらず磁気抵抗素子へのバイアス磁界の供給が確実であり、且つ、着磁工程が簡素化されるのでコストが安く信頼性にも優れた金属接近検出装置を提供出来る。
【実施例2】
【0052】
次に、本発明の実施例2の金属接近検出装置を説明する。尚、実施例2の特徴は、バイアス磁界用の永久磁石として部分着磁された磁気シートを用いることである。また、実施例2は実施例1と基本構造は同じであるので、同一要素には同一番号を付し重複する説明は一部省略する。ここでまず、図8に基づいて実施例2の金属接近検出装置の製造工程の一部を説明する。
【0053】
図8において、実施例1と同様に第1の集合基板1は、磁気検出素子としての磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10と表示素子としてのLED4とを配設した多数の回路基板1aが格子状に縦横に配置されて一体化している。
【0054】
また、22は第2の集合基板としての集合磁気シートであり、例えば、絶縁性の樹脂に磁性粒子が略均一に含有された薄い平面状のシートである。この集合磁気シート22は、第1の集合基板1の磁気抵抗素子11に対応する位置に、着磁装置(図示せず)によって略円形状に部分着磁された着磁領域23を有している。これにより、この着磁領域23が磁石として作用し、それぞれ対応する磁気抵抗素子11にバイアス磁界を供給する。尚、着磁領域23の形状は限定されない。
【0055】
この集合磁気シート22を矢印Aの方向に移動して第1の集合基板1の裏面に貼り合わせ、接着剤等によって接合して積層集合体が完成する。その後、各小片を切断工程によって境界線X、Yに沿って切断し、製品である金属接近検出装置に分離するが、これらの工程は実施例1と同様であるので説明は省略する。
【0056】
次に図9は、完成した実施例2の金属接近検出装置を略中央付近で切断した断面図である。図9において、20は完成した実施例2の金属接近検出装置であり、実施例1と同様に第1の集合基板1から切断された回路基板1aと、第2の集合基板である集合磁気シート22から切断された磁気シート22aが接合された構造である。ここで、金属接近検出装置20の回路基板1aの上面には金属膜6が形成されており、この金属膜6に磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10とLED4が実装される。
【0057】
また、磁気シート22aは、回路基板1aに配設される集積回路10の磁気抵抗素子11に対応する位置に着磁領域23を有している。この構造により、磁気シート22aは着磁領域23のみからバイアス磁界としての磁束が発生し、磁気抵抗素子11に供給される。その他、不透明樹脂7や透明樹脂8などは、実施例1と同様である。
【0058】
次に、図10(a)と図10(b)に基づいて実施例2の金属接近検出装置の磁界検出動作を説明する。ここで、図10(a)は金属部材が接近していないスタンバイ状態を示し、図10(b)は金属部材が接近している検出状態を示している。
【0059】
まず、図10(a)のスタンバイ状態では、金属部材が接近していないので、磁気シート22aの着磁領域23から発生する磁束Φは、着磁領域23から大きく拡散している。そして、磁気抵抗素子11と着磁領域23は回路基板1aを介して上下方向で位置的に対応しているので、磁束Φは磁気抵抗素子11を通過するが、磁束Φが拡散しているので、磁気抵抗素子11付近の磁束密度は小さい。
【0060】
次に図10(b)のように、磁性体の金属部材Kが金属接近検出装置20に対して矢印Hの方向に沿って接近移動すると、磁束Φは金属部材Kに引き寄せられ、金属部材Kが磁気抵抗素子11に近接したとき、磁束Φは磁気抵抗素子11付近に集中するので、磁気抵抗素子11での磁束密度が大きくなる。そして、金属部材Kが金属接近検出装置20から離れると、磁束Φは再び拡散するので、磁気抵抗素子11付近の磁束密度は小さくなる。
【0061】
このように、磁気シート22aの着磁領域23から発生する磁束Φは、金属部材Kの接近によって大きく変動するので、磁気抵抗素子11によってその磁束Φの変動を把握することにより、金属の接近を検出することが出来る。また、磁気シート22aの着磁領域23は、磁気抵抗素子11に対応する位置に形成されるので、着磁領域23から発生した磁束Φは、磁気抵抗素子11へのバイアス磁界として確実に供給される。これにより、微小な磁束変動の検出が可能となり、検出感度に優れた金属接近検出装置を実現出来る。尚、金属検出によって点灯するLED4の動作等は、実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【実施例3】
【0062】
次に、本発明の実施例3の金属接近検出装置を説明する。尚、実施例3の特徴は、磁気抵抗素子に対応する位置に磁性体による磁路を有することである。また、実施例3は実施例1と基本構造は同じであるので、同一要素には同一番号を付し重複する説明は一部省略する。ここでまず、図11に基づいて実施例3の金属接近検出装置の製造工程の一部を説明する。
【0063】
図11において、31は第1の集合基板であり、実施例1と同様に磁気検出素子としての磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10と表示素子としてのLED4とを配設した多数の回路基板31aが格子状に縦横に配置されて一体化している。また、この第1の集合基板31は、その下面側に凹部が形成され、磁気抵抗素子11に対応するそれぞれの位置に磁路としての略円柱形状の磁性体32を有している。尚、磁性体32の形状は限定されない。
【0064】
また、実施例1と同様な第2の集合基板である集合磁気シート2は、絶縁性の樹脂に磁性粒子が略均一に含有された薄い平面状のシートである。この集合磁気シート2は、その全面を外部からの強力な磁界で印加することにより着磁され、全面が永久磁石として磁化されている。
【0065】
この集合磁気シート2を矢印Aの方向に移動して第1の集合基板31の裏面に貼り合わせ、接着剤等によって接合して積層集合体が完成する。その後、各小片を切断工程によって境界線X、Yに沿って切断し、製品である金属接近検出装置に分離するが、これらの工程は実施例1と同様であるので説明は省略する。
【0066】
次に図12は、完成した実施例3の金属接近検出装置を略中央付近で切断した断面図である。図12において、30は完成した実施例3の金属接近検出装置であり、実施例1と同様に第1の集合基板31から切断された回路基板31aと、第2の集合基板である集合磁気シート2から切断された磁気シート2aが接合された構造である。そして、回路基板31aの上面には金属膜6が形成されており、この金属膜6に磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10とLED4が実装される。
【0067】
また、回路基板31aの下面側には、磁気抵抗素子11に対応する位置に凹部33が形成され、この凹部33に磁性体32が填め込まれている。この磁性体32によって、磁気シート2aから磁気抵抗素子11への磁路が形成される。この構造により、磁気シート2aからの磁束の大部分は磁路となる磁性体32に集中するので、磁気抵抗素子11の周辺にはバイアス磁界としての磁束が確実に供給される。その他、不透明樹脂7や透明樹脂8は、実施例1と同様である。
【0068】
次に、図13(a)と図13(b)に基づいて、実施例3の金属接近検出装置の磁界検出動作を説明する。ここで、図13(a)は金属部材が接近していないスタンバイ状態を示し、図13(b)は金属部材が接近している検出状態を示している。
【0069】
まず、図13(a)のスタンバイ状態では、磁気シート2aから発生する磁束Φは、磁性体32による磁路を通って磁気抵抗素子11付近に達するが、金属部材が接近していないので、磁性体32を通過した磁束Φは、図示するように大きく拡散する。このため、磁気抵抗素子11付近の磁束密度は小さい。
【0070】
次に図13(b)のように、磁性体の金属部材Kが金属接近検出装置30に対して矢印Hの方向に沿って接近移動すると、磁束Φは金属部材Kに引き寄せられ、金属部材Kが磁気抵抗素子11に近接したとき、磁束Φは磁気抵抗素子11付近に集中するので、磁気抵抗素子11での磁束密度が大きくなる。そして、金属部材Kが金属接近検出装置30から離れると、磁束Φは再び拡散するので、磁気抵抗素子11付近の磁束密度は小さくなる。
【0071】
このように、磁気シート2aから発生する磁束Φは、磁路である磁性体32を通過して磁気抵抗素子11に達するが、金属部材Kの接近によって磁束Φが大きく変動するので、磁気抵抗素子11によってその磁束Φの変動を把握することにより、金属の接近を検出することが出来る。また、磁気シート2aと磁気抵抗素子11の間には、磁気抵抗素子11に対応する位置に磁路である磁性体32が置かれているので、磁束Φは磁性体32を通って磁気抵抗素子11へのバイアス磁界として確実に供給される。これにより、微小な磁束変動の検出が可能となり、検出感度に優れた金属接近検出装置を実現出来る。尚、金属検出によって点灯するLED4の動作等は、実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【実施例4】
【0072】
次に、本発明の実施例4の金属接近検出装置を説明する。尚、実施例4の特徴は、磁気検出素子に対応する位置に磁石が填め込まれた第2の集合基板を用いることである。また、実施例4は実施例1と基本構造は同じであるので、同一要素には同一番号を付し重複する説明は一部省略する。ここでまず、図14に基づいて実施例4の金属接近検出装置の製造工程の一部を説明する。
【0073】
図14において、実施例1と同様に第1の集合基板1は、磁気検出素子としての磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10と表示素子としてのLED4とを配設した多数の回路基板1aが格子状に縦横に配置されて一体化している。
【0074】
また、42は第2の集合基板であり、平面状の絶縁材によって成る。この第2の集合基板42は、第1の集合基板1に配設されている集積回路10の磁気抵抗素子11に対応するそれぞれの位置に貫通孔43を有し、その貫通孔43には、略円柱形状の永久磁石44が填め込まれている。これにより、永久磁石44によって磁気抵抗素子11にバイアス磁界が供給される。尚、永久磁石44の形状は限定されない。
【0075】
この第2の集合基板42を矢印Aの方向に移動して第1の集合基板1の裏面に貼り合わせ、接着剤等によって接合して積層集合体が完成する。その後、各小片を切断工程によって境界線X、Yに沿って切断し、製品である金属接近検出装置に分離するが、これらの工程は実施例1と同様であるので説明は省略する。
【0076】
次に図15は、完成した実施例4の金属接近検出装置を略中央付近で切断した断面図である。図15において、40は完成した実施例4の金属接近検出装置であり、第1の集合基板1から切断された回路基板1aと、第2の集合基板42から切断された基板42aが接合された構造である。そして、回路基板1aの上面には金属膜6が形成されており、この金属膜6に磁気抵抗素子11を内蔵する集積回路10とLED4が実装される。
【0077】
また、回路基板1aに実装された磁気抵抗素子11に対応する基板42aの位置に貫通孔43が形成され、この貫通孔43に永久磁石44が填め込まれている。この構造により、永久磁石44から発生する磁束Φは、バイアス磁界として磁気抵抗素子11に供給される。その他、不透明樹脂7や透明樹脂8は、実施例1と同様である。
【0078】
ここで、この金属接近検出装置40の磁界検出動作、すなわち、永久磁石44からの磁束Φが、金属部材の接近によって変動する様子は、実施例2又は実施例3に近似しているので説明は省略する。また、金属検出によって点灯するLED4の動作等は、実施例1と同様であるので、この説明も省略する。尚、永久磁石44を填め込むための第2の集合基板42の貫通孔43は、第2の集合基板の上面側、又は下面側に形成される凹部でも良く、この凹部に永久磁石を填め込んでも良い。
【0079】
以上のように、本発明の実施例4の金属接近検出装置によれば、磁気検出素子を内蔵する集積回路と出力手段を一体化した第1の集合基板と、磁石を填め込んだ第2の集合基板を接合して積層集合体を構成し、この積層集合体からの切断によって多数の製品を一度に製造できるので、性能が均一で量産性に優れた金属接近検出装置を提供出来る。
【0080】
また、第2の集合基板は、磁気抵抗素子に対応する位置に永久磁石が填め込まれることにより、磁気抵抗素子にバイアス磁界を確実に供給出来るので、検出感度に優れ安定した性能の金属接近検出装置を提供することが出来る。
【0081】
尚、本発明の実施例で示した構成は限定されるものではなく、本発明の要旨を満たすものであれば、本発明はどのような構成であっても良い。また、実施例では、磁気検出素子を磁気抵抗素子として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ホール素子や、他の磁気検出素子でも適応することが出来る。また、出力手段としてLED等による表示素子を示したが、出力手段は限定されるものではなく、例えば、圧電ブザーや電磁ブザー等の発音体などでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の金属接近検出装置の実施例1である第1の集合基板と集合磁気シートを示す斜視図である。
【図2(a)】本発明の金属接近検出装置の実施例1である積層集合体を示す斜視図である。
【図2(b)】本発明の金属接近検出装置の実施例1である積層集合体の切断工程を示す斜視図である。
【図3】本発明の金属接近検出装置の実施例1である積層集合体を切断して各小片が製品とされた金属接近検出装置の斜視図である。
【図4】本発明の金属接近検出装置の実施例1の断面図である。
【図5】本発明の金属接近検出装置の実施例1の回路構成を示す回路図である。
【図6(a)】本発明の金属接近検出装置の実施例1の金属部材が接近していないスタンバイ状態を示す説明図である。
【図6(b)】本発明の金属接近検出装置の実施例1の金属部材が接近している検出状態を示す説明図である。
【図7】本発明の金属接近検出装置の実施例1の検出動作を説明するタイミングチャートである。
【図8】本発明の金属接近検出装置の実施例2である第1の集合基板と集合磁気シートを示す斜視図である。
【図9】本発明の金属接近検出装置の実施例2の断面図である。
【図10(a)】本発明の金属接近検出装置の実施例2の金属部材が接近していないスタンバイ状態を示す説明図である。
【図10(b)】本発明の金属接近検出装置の実施例2の金属部材が接近している検出状態を示す説明図である。
【図11】本発明の金属接近検出装置の実施例3である第1の集合基板と集合磁気シートを示す斜視図である。
【図12】本発明の金属接近検出装置の実施例3の断面図である。
【図13(a)】本発明の金属接近検出装置の実施例3の金属部材が接近していないスタンバイ状態を示す説明図である。
【図13(b)】本発明の金属接近検出装置の実施例3の金属部材が接近している検出状態を示す説明図である。
【図14】本発明の金属接近検出装置の実施例4である第1の集合基板と第2の集合基板を示す斜視図である。
【図15】本発明の金属接近検出装置の実施例4の断面図である。
【図16】従来の磁気検出装置の断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1、31 第1の集合基板
1a、31a 回路基板
2、22 集合磁気シート
2a、22a 磁気シート
3 積層集合体
4 発光ダイオード(LED)
5、20、30、40 金属接近検出装置
6 金属膜
7 不透明樹脂
8 透明樹脂
10 集積回路
11 磁気抵抗素子
12 固定抵抗
13 波形成形回路
14 制御回路
15 表示駆動回路
23 着磁領域
32 磁性体
33 凹部
42 第2の集合基板
42a 基板
43 貫通孔
44 永久磁石
Φ 磁束
K 金属部材
L 出射光
P1 金属検出信号
P2 パルス信号
P3 表示制御信号
P4 表示駆動信号
+Vb プラス電圧
−Vb マイナス電圧
Vt 閾値
X、Y 境界線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出素子と、この磁気検出素子にバイアス磁界を供給する磁石と、前記磁気検出素子による検出情報を外部に出力する出力手段と、
を一体化して構成する金属接近検出装置であって、
前記磁気検出素子を内蔵する集積回路と前記出力手段とを配設した多数の回路基板が格子状に配置されて一体化している第1の集合基板と、
前記磁石を有する第2の集合基板と、
を接合して積層集合体を構成し、該積層集合体は製品領域の境界線に沿って切断されることにより、各小片が製品とされることを特徴とする金属接近検出装置。
【請求項2】
前記第2の集合基板は、磁性材を含有して前記磁石を形成する磁気シートであることを特徴とする請求項1記載の金属接近検出装置。
【請求項3】
前記磁気シートは、全面着磁されて前記磁石を形成することを特徴とする請求項2記載の金属接近検出装置。
【請求項4】
前記磁気シートは、前記磁気検出素子に対応する位置が部分着磁されて前記磁石を形成することを特徴とする請求項2記載の金属接近検出装置。
【請求項5】
前記第1の集合基板は、前記磁気検出素子に対応する位置に磁性体による磁路を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の金属接近検出装置。
【請求項6】
前記第2の集合基板は、前記磁気検出素子に対応する位置に前記磁石が填め込まれて構成されることを特徴とする請求項1に記載の金属接近検出装置。
【請求項7】
前記出力手段は表示素子であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の金属接近検出装置。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−300130(P2009−300130A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152411(P2008−152411)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】