金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法及び制御装置、並びにこれらを用いた熱間曲げ加工製品の製造方法、熱間曲げ加工製品
【課題】目標形状等の目標品質が得られるように精度良く曲げ加工することができると共に、熟練者に頼らなくても作業能率を高めることができる金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法等を提供する。
【解決手段】金属材1をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段3と、送り出された金属材を案内支持する支持手段2と、金属材を局部的に加熱する加熱手段5と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段6と、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールにより金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段4とが配置された熱間曲げ加工装置の制御方法であって、熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、送出手段及び挟持手段を制御すると共に、支持手段、加熱手段及び冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御する。
【解決手段】金属材1をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段3と、送り出された金属材を案内支持する支持手段2と、金属材を局部的に加熱する加熱手段5と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段6と、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールにより金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段4とが配置された熱間曲げ加工装置の制御方法であって、熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、送出手段及び挟持手段を制御すると共に、支持手段、加熱手段及び冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法及び制御装置、並びにこれらを用いた熱間曲げ加工製品の製造方法、熱間曲げ加工製品に関する。より具体的には、目標品質(形状、硬度、ミクロ組織等)が得られるように精度良く曲げ加工することができると共に、熟練者に頼らなくても作業能率を高めることができる金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法及び制御装置、並びにこれらを用いた熱間曲げ加工製品の製造方法、熱間曲げ加工製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮から、構造用金属材として、軽量で高強度の材料が要請されるようになってきた。例えば、自動車業界においては、燃費向上や衝突安全性の向上といった観点から、自動車部品の軽量化及び高強度化に対する要請がますます厳しくなっており、自動車用部品の開発と共に自動車用部品の構造を見直すことが進められている。
【0003】
このように多様な自動車用部品に適用するために、多岐にわたる曲げ形状、例えば、曲げ方向が2次元的、さらには3次元的に異なる曲げ形状からなる金属材を目標品質が得られるように精度良く加工し得る曲げ加工技術の開発が強く要請されている。
【0004】
従来より、このような曲げ加工技術の開発要請に対応するため、種々の曲げ加工技術が提案されている。例えば、特許文献1には、押し曲げ方式の高周波加熱ベンダーであって、押し曲げローラを3次元方向へ移動自在に支持する高周波加熱ベンダーが提案されている。特許文献1に記載の高周波加熱ベンダーによれば、ガイドローラで支持した被曲げ加工物を押し曲げローラで一方向に曲げた後に、前記一方向とは曲げ方向の異なる曲げ加工に入る際、押し曲げローラを被曲げ加工物を跨いで反対方向の被曲げ加工物側面に移動させてその側面に当接させ曲げ加工するので、例えば、S字曲げのように、曲げ方向が2次元的に異なる連続曲げの場合であっても、被曲げ加工物を180度回転させる段取り作業を不要にできるという利点がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の高周波加熱ベンダーには、押し曲げローラに被曲げ加工物の両側面をクランプする手段がないため、高周波加熱後の冷却による残留応力に起因して変形が発生し易いことから、所定の寸法精度を確保するのが難しく、加工速度が制約されると共に、曲げ加工度を高めることが困難になる。
【0006】
また、特許文献2には、特許文献1に記載の高周波加熱ベンダーのガイドローラや押し曲げローラに代えて、固定ダイと3次元方向に移動可能な可動ジャイロダイとを設け、可動ジャイロダイによる金属部材の曲げ加工の曲率に応じた温度に金属部材を加熱する加熱手段、固定ダイや可動ジャイロダイに冷却流体を供給する冷却流体供給手段等を備えた金属部材の曲げ加工装置が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の曲げ加工装置が備える固定ダイ及び可動ジャイロダイは、双方共に被曲げ加工物である金属部材の長手方向(押し出し方向)に沿って回転可能に構成されていないため、金属部材の表面に焼き付きが生じ易い。また、特許文献2に記載の曲げ加工装置は、冷却流体供給手段によって固定ダイや可動ジャイロダイに冷却流体を供給し、両ダイの強度低下や熱膨張による加工精度の低下を回避しているが、曲げ加工された金属部材の焼入熱処理を意図するものではなく、焼入熱処理による金属部材の高強度化を図ることができない。
【0008】
一方、被曲げ加工物を多岐にわたる曲げ形状に精度良く加工するため、現状の加工現場では、熟練者の勘や技能によって、加熱条件、冷却条件、加工量等の諸条件を決めているのが実状である。
【0009】
しかしながら、近年では、これら熟練者の高齢化とこれに伴う作業従事者の減少などの問題が顕著になってきており、熟練を要する作業を特別な技能を必要としないで実施でき、且つ、処理能力の向上を実現できる技術が要望されている。
【特許文献1】特開2000−158048号公報
【特許文献2】特許第3195083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、自動車用部品等の金属材の熱間曲げ加工に際して、多岐にわたる曲げ形状が要求される場合であっても、目標形状等の目標品質が得られるように精度良く曲げ加工することができると共に、熟練者に頼らなくても作業能率を高めることができる金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法及び制御装置、並びにこれらを用いた熱間曲げ加工製品の製造方法、熱間曲げ加工製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するべく、本発明は、金属材をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段と、送り出された金属材を案内支持する支持手段と、金属材を局部的に加熱する加熱手段と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段と、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールにより金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段とが、金属材の長手方向に沿って配置され、金属材を間欠的に又は連続的に熱間曲げ加工する熱間曲げ加工装置の制御方法であって、熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の前記送出手段及び前記挟持手段を制御すると共に、前記支持手段、前記加熱手段及び前記冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴とする金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法を提供するものである。
【0012】
斯かる発明において、熱間曲げ加工装置が備える各手段は、例えば、金属材を送り出す方向の上流側から、送出手段、支持手段、加熱手段、冷却手段、挟持手段の順に配置される。そして、例えば、送出手段によって長手方向に送り出した金属材を支持手段で案内支持しながら、加熱手段の配置箇所で局部的に金属材を加熱し、挟持手段によって前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与し、その直後に冷却手段によって金属材の加熱された部位を冷却するように各手段を制御することによって、金属材に対して熱間曲げ加工が施される。この際、本発明によれば、挟持手段を用いて(すなわち、金属材の両側面を金属材の長手方向に沿って回転可能なロールによってクランプした状態で)、加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与すると共に、熱間曲げ加工後の金属材(熱間曲げ加工製品)が目標品質(形状、硬度、ミクロ組織等)となるように予め決定された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置を構成する各手段を制御するため、従来のように残留応力に起因した変形や焼き付きが発生し難く、精度の良い熱間曲げ加工が可能である。また、いったん目標品質を得るための制御パターンを決定しさえすれば、該決定した制御パターンに基づいて熱間曲げ加工装置の各手段を制御するだけでよく、熟練者の勘や技能に頼る必要がないため、熱間曲げ加工の作業能率を高めることも可能である。
【0013】
好ましくは、前記熱間曲げ加工装置は、前記挟持手段の駆動機構として、金属材の長手方向に略直交する平面内の一軸方向に沿って前記挟持手段を移動させる第1シフト機構、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向に沿って前記挟持手段を移動させる第2シフト機構、前記一軸方向周りに前記挟持手段を傾斜させる第1チルト機構、及び前記他軸方向周りに前記挟持手段を傾斜させる第2チルト機構の内、少なくとも1以上の機構を備え、前記挟持手段の駆動機構の駆動位置を制御する態様とされる。
【0014】
斯かる好ましい態様によれば、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールである挟持手段の駆動機構の数を増やせば増やすほど、金属材の曲げ形状が多岐にわたり、曲げ方向が2次元的に異なる連続曲げの場合や、さらには曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げの場合であっても、効率的に曲げ加工することが可能である。
【0015】
また、好ましくは、前記熱間曲げ加工装置は、前記挟持手段の駆動機構として、金属材の長手方向周りに前記挟持手段を回転させる第1回転機構を備え、前記第1回転機構の駆動位置を制御する態様とされる。
【0016】
斯かる好ましい態様によれば、挟持手段を金属材の長手方向周りに回転させることにより、金属材にねじり変形を付与することが可能である。
【0017】
さらに、好ましくは、前記熱間曲げ加工装置は、前記支持手段の駆動機構として、金属材の長手方向周りに前記支持手段を回転させる第2回転機構を備え、前記第2回転機構の駆動位置を制御する態様とされる。
【0018】
斯かる好ましい態様によれば、支持手段を回転させることにより、挟持手段を金属材の長手方向周りに回転させなくても、金属材にねじり変形を付与することが可能である。また、挟持手段を回転させながら支持手段をこれより多く又は少なく回転させることによっても、金属材にねじり変形を付与することが可能である。
【0019】
また、好ましくは、前記熱間曲げ加工装置は、前記加熱手段及び/又は前記冷却手段の駆動機構として、金属材の長手方向に略直交する平面内の一軸方向に沿って前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を移動させる第3シフト機構、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向に沿って前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を移動させる第4シフト機構、前記一軸方向周りに前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を傾斜させる第3チルト機構、及び前記他軸方向周りに前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を傾斜させる第4チルト機構の内、少なくとも1以上の機構を備え、前記加熱手段及び/又は前記冷却手段の駆動機構の駆動位置を制御する態様とされる。
【0020】
斯かる好ましい態様によれば、挟持手段の駆動と、加熱手段及び/又は冷却手段の駆動とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0021】
また、好ましくは、前記加熱手段の加熱出力及び/又は前記冷却手段による冷却媒体の供給を制御する態様とされる。
【0022】
斯かる好ましい態様によれば、挟持手段の駆動と、加熱手段の加熱出力(出力値の増減の他、加熱出力のオン/オフを含む)及び/又は冷却手段による冷却媒体の供給(供給量の増減の他、供給のオン/オフを含む)とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0023】
前記制御パターンは、例えば、前記送出手段による金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段(つまり、送出手段及び挟持手段の他、支持手段、加熱手段及び冷却手段の内、少なくとも1以上の手段)の制御量とすることができる。ここで、被制御手段が送出手段である場合、金属材の送り出し量や送り出し速度等が制御量となる。また、被制御手段が挟持手段の場合、挟持手段の駆動機構の駆動位置(挟持手段の位置に相当)等が制御量となる。被制御手段が支持手段の場合、支持手段の駆動機構の駆動位置(支持手段の回転位置に相当)等が制御量となる。被制御手段が加熱手段の場合、加熱手段の駆動機構の駆動位置(加熱手段の位置に相当)、加熱手段の加熱出力等が制御量となる。さらに、被制御手段が冷却手段の場合、冷却手段の駆動機構の駆動位置(冷却手段の位置に相当)、冷却手段による冷却媒体の供給等が制御量となる。
【0024】
しかしながら、金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた被制御手段の制御量を制御パターンとして一律に用いる場合(換言すれば、時間を基準として各被制御手段の制御量を設定した場合)、例えば、送出手段の時間応答性と、挟持手段の駆動機構の時間応答性との差異等に起因して、本来曲げ加工されるべき金属材の長手方向部位にズレが生じ、加工精度が低下する虞もある。
【0025】
従って、好ましくは、前記制御パターンは、金属材に関する経時的情報に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされており、検出した金属材に関する経時的情報と、前記制御パターンとに基づいて、前記被制御手段を制御する態様とされる。
【0026】
ここで、金属材に関する経時的情報とは、例えば、金属材の送り出し量や送り出し速度の他、金属材の曲げ加工の際に挟持手段に作用する荷重反力など、金属材の動きに関連して経時的に変化する情報を意味する。前記好ましい態様によれば、例えば、金属材の送り出し量に対応付けられた挟持手段の制御量を制御パターンとして用い、適宜の検出手段によって検出した金属材の送り出し量と、前記制御パターンとに基づいて(つまり、実際に検出した送り出し量に応じた適切な制御量に基づいて)、挟持手段を制御することになる。従って、前述のように、送出手段の時間応答性と、挟持手段の駆動機構の時間応答性との差異等があったとしても、本来曲げ加工されるべき金属材の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0027】
好ましくは、金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位、前記加熱手段近傍における金属材の温度、及び前記冷却手段近傍における金属材の温度の内、少なくとも1以上を測定し、前記測定値に基づいて、前記制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の被制御手段を制御する態様とされる。
【0028】
斯かる好ましい態様によれば、例えば、金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位を測定し、該測定値に基づいて、加熱手段についての制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、加熱手段を制御することになる。より具体的には、例えば、加熱手段近傍で測定した金属材の変位に基づいて、制御パターン(例えば、金属材の送り出し量に対応付けられた加熱手段の位置)を修正(例えば、金属材の変位が目標範囲内となるように、加熱手段の位置を変更)し、該修正後の制御パターンに基づいて、加熱手段の位置を制御することになる。例えば、加熱手段が金属材の長手方向に直交する断面を囲繞する加熱コイルであるときに、加熱コイルと金属材との芯ずれが小さくなるように金属材の変位の目標範囲を定めておけばよい。これにより、修正前の制御パターンでは、加熱コイルと金属材との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材の周方向に均一な加熱ができない場合であっても、修正後の制御パターンに基づいて加熱コイルの位置を制御すれば、加熱コイルと金属材との芯ずれが小さくなる結果、金属材の周方向に均一な加熱ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、加熱コイルと金属材との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合にも、前記好ましい態様によれば、加熱コイルと金属材の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン(金属材の送り出し量に対応付けられた加熱手段の位置)を修正することにより、所望の硬度ムラを発生させることができる点で有効である。
【0029】
また、上記好ましい態様によれば、例えば、加熱手段近傍における金属材の温度(加熱手段によって加熱された部位の温度、或いは前記部位に近接する部位の温度)を測定し、該測定値に基づいて、加熱手段についての制御パターン(例えば、金属材の送り出し量に対応付けられた加熱手段の加熱出力)を修正(例えば、測定温度が目標範囲内となるように、加熱手段の加熱出力を変更)し、該修正後の制御パターンに基づいて、加熱手段を制御することになる。これにより、設定温度(予測温度)ではなく実測温度に基づいた適切な加熱が可能となる結果、十分な硬度の熱間曲げ加工製品を得ることができる。冷却手段近傍における金属材の温度(冷却手段によって冷却された部位の温度、或いは前記部位に近接する部位の温度)を測定し、該測定値に基づいて、冷却手段についての制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、冷却手段を制御する場合も同様の作用効果を奏する。なお、制御パターンの修正は、現在熱間曲げ加工中の金属材に適用している制御パターンに対して実施することも可能であるが、現在熱間曲げ加工中の金属材について測定した変位等に基づいて、次回以降に熱間曲げ加工が施される金属材に提供される制御パターンに対して実施することも無論可能である。
【0030】
また、前記課題を解決するべく、本発明は、金属材をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段と、送り出された金属材を案内支持する支持手段と、金属材を局部的に加熱する加熱手段と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段と、金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段とが、金属材の長手方向に沿って配置された熱間曲げ加工装置を制御する装置であって、熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンを記憶し、前記記憶された制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の前記送出手段及び前記挟持手段を制御すると共に、前記支持手段、前記加熱手段及び前記冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴とする金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置としても提供される。
【0031】
前記制御パターンは、例えば、前記送出手段による金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とすることができる。
【0032】
あるいは、前記制御装置は、金属材に関する経時的情報を検出する検出手段を備え、前記記憶される制御パターンは、前記検出手段によって検出される金属材に関する経時的情報に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされており、前記検出手段によって検出した金属材に関する経時的情報と、前記制御パターンとに基づいて、前記被制御手段を制御する態様を採用することも可能である。
【0033】
また、好ましくは、前記制御装置は、金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位を測定する変位測定手段、前記加熱手段近傍における金属材の温度を測定する加熱温度測定手段、及び前記冷却手段近傍における金属材の温度を測定する冷却温度測定手段の内、少なくとも1以上の測定手段を備え、前記測定手段の測定値に基づいて、前記記憶された制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の被制御手段を制御する態様とされる。
【0034】
さらに、本発明は、上記の制御方法を用いて前記熱間曲げ加工装置を制御する工程を含むことを特徴とする熱間曲げ加工製品の製造方法、及び該製造方法で製造した熱間曲げ加工製品としても提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、挟持手段を用いて、加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与すると共に、熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置を構成する各手段を制御するため、従来のように残留応力に起因した変形や焼き付きが発生し難く、精度の良い熱間曲げ加工が可能である。また、いったん目標品質を得るための制御パターンを決定しさえすれば、該決定した制御パターンに基づいて熱間曲げ加工装置の各手段を制御するだけでよく、熟練者の勘や技能に頼る必要がないため、熱間曲げ加工の作業能率を高めることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る制御方法を適用する熱間曲げ加工装置、及び該制御方法を実施するための制御装置の全体構成を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、金属材1をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段3と、送り出された金属材1を案内支持する支持手段2と、金属材1を局部的に加熱する加熱手段5と、加熱された金属材1の部位を冷却する冷却手段6と、金属材1を挟持して前記加熱された金属材1の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段4とが、金属材の長手方向に沿って配置され、金属材1を間欠的に又は連続的に熱間曲げ加工するように構成されている。本実施形態では、金属材1を送り出す方向の上流側から、送出手段3、支持手段2、加熱手段5、冷却手段6、挟持手段4の順に配置されている。
【0037】
図1に示す金属材1は、断面形状が丸形とされた管であるが、熱間曲げ加工装置10によって熱間曲げ加工される対象はこれに限るものではなく、各種の断面形状を有する金属材に適用可能である。例えば、図1に示す丸形の他、矩形、台形、その他複雑な形状を有する閉断面材や、図2(a)に示すようなロールフォーミング等で製造された開断面材(チャンネル)、図2(b)に示すような押し出し加工で製造された異型断面材(チャンネル)、或いは各種の断面形状からなる棒材(丸棒、角棒、異型棒)等に適用することが可能である。ただし、適用される金属材1の断面形状に応じて、支持手段2や挟持手段4の形状を設計する必要がある。
【0038】
前述のように、本実施形態では、熱間曲げ加工を施す金属材1として丸形の管を用いているため、支持手段2としては、丸形の管を案内支持することができるように、2対の対向する支持ロールを採用している。しかしながら、支持手段2としては、これに限定されるものではなく、適用される金属材の断面形状に応じた支持ガイドを採用することも可能である。また、支持手段2として支持ロールを採用する場合であっても、本実施形態のように2対の支持ロールに限るものではなく、1対又は2対を超える複数対の支持ロールを採用することも可能である。
【0039】
なお、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、支持手段2の駆動機構として、金属材1の長手方向周りに支持手段2を回転させて回転位置θSXとする第2回転機構21を備えている。第2回転機構21は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の動力を支持手段2に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。斯かる第2回転機構21のより具体的な構成については、公知の各種回転機構を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。この第2回転機構21を駆動して金属材1の長手方向周りに支持手段2を回転させることにより、後述するように挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させなくても、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。また、挟持手段4を回転させながら支持手段2をこれより多く又は少なく回転させることによっても、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。
【0040】
本実施形態に係る送出手段3は、金属材1を長手方向に間欠的に又は連続的に押し出して、押し出し量(送り出し量)FXとする押出装置とされている。斯かる押出装置は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の回転動力を直線運動に変換するボールねじ等の機械要素から構成することが可能である。また、油圧シリンダーやエアシリンダー等のシリンダー装置を採用することも可能である。そして、ボールねじや、シリンダー装置のピストンロッド等によって金属材1の端部を押圧することにより、金属材1が長手方向に押し出されることになる。
【0041】
本実施形態に係る挟持手段4は、金属材1の長手方向に沿って回転可能な1対の対向するロールとされている。しかしながら、挟持手段4としては、これに限定されるものではなく、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールであって金属材1を挟持できる限りにおいて、適用される金属材1の断面形状等に応じた2対の対向するロールや3つ以上のロールを採用することも可能である。
【0042】
なお、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、挟持手段4の駆動機構として、金属材1の長手方向に略直交する平面内の一軸方向(本実施形態では左右方向)に沿って挟持手段4を移動させて位置KYとする第1シフト機構411、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向(本実施形態では上下方向)に沿って挟持手段4を移動させて位置KZとする第2シフト機構412、前記一軸方向周りに挟持手段4を傾斜させて回転位置θKYとする第1チルト機構413、及び前記他軸方向周りに挟持手段4を傾斜させて回転位置θKZとする第2チルト機構414の内、少なくとも1以上の機構を備えている。本実施形態に係る挟持手段4の駆動機構41は、好ましい構成として、これら第1シフト機構411、第2シフト機構412、第1チルト機構413及び第2チルト機構414の全てを備える構成とされている。各機構411〜414を適宜駆動することにより、挟持手段4は、金属材1を挟持した状態でシフト又はチルトすることになり、これにより、金属材1には加熱手段5によって加熱された部位を支点とする曲げモーメントが付与される。そして、駆動する各機構411〜414の組み合わせや駆動量を適宜選択することにより、金属材1の曲げ形状が多岐にわたり、曲げ方向が2次元的に異なる連続曲げの場合や、さらには曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げの場合であっても、効率的に曲げ加工することが可能である。
【0043】
第1シフト機構411及び第2シフト機構412は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の回転動力を直線運動に変換して挟持手段4に伝達するボールねじ等の機械要素から構成することが可能である。また、第1チルト機構413及び第2チルト機構414は、例えば、前記と同様の駆動源や、該駆動源の動力を挟持手段4に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。これら各機構411〜414のより具体的な構成については、公知の各種機構を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。当然のことながら、例えば、挟持手段4に接続した汎用の多軸ロボットを挟持手段4の駆動機構として用いることも可能である。
【0044】
なお、挟持手段4の駆動機構として、金属材1の長手方向周りに挟持手段4を回転させて回転位置θKXとする第1回転機構を備えることも可能である。この第1回転機構も、第1チルト機構413及び第2チルト機構414と同様に、例えば、前記と同様の駆動源や、該駆動源の動力を挟持手段4に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。この第1回転機構を駆動して、挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させることにより、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。
【0045】
図3は、本実施形態に係る加熱手段5及び冷却手段6の概略構成を示す縦断面図である。図1又は図3に示すように、本実施形態に係る加熱手段5は、金属材1の長手方向に直交する断面を囲繞する中空の導電性材料からなる加熱コイル51を具備する。そして、加熱コイル51に高周波電流を通電することにより、金属材1が局部的に加熱されることになる。また、本実施形態に係る冷却手段6は、金属材1の長手方向に直交する断面を囲繞するように、加熱コイル51の内側に環状に配置された複数のノズル61を具備する。そして、ノズル61から金属材1に向けて冷却媒体611を供給(噴射)することにより、加熱手段5によって加熱された金属材1の部位が冷却されることになる。図3に示すように、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とが一体化されている。すなわち、ノズル61は、加熱コイル51を構成する導電性材料の内側の一部を穿孔することによって形成されており、加熱コイル51の中空部52に供給された冷却媒体611を金属材1に向けて噴射する構成とされている。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、加熱手段5と冷却手段6とを別体とすることも無論可能である。
【0046】
本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構として、金属材1の長手方向に略直交する平面内の一軸方向(本実施形態では左右方向)に沿って加熱手段5及び冷却手段6を移動させて、それぞれ位置HY、CYとする第3シフト機構521、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向(本実施形態では上下方向)に沿って加熱手段5及び冷却手段6を移動させて、それぞれ位置HZ、CZとする第4シフト機構522、前記一軸方向周りに加熱手段5及び冷却手段6を傾斜させて、それぞれ回転位置θHY、θCYとする第3チルト機構523、及び前記他軸方向周りに加熱手段5及び冷却手段6を傾斜させて、それぞれ回転位置θHZ、θCZとする第4チルト機構524の内、少なくとも1以上の機構を備えている。本実施形態に係る加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構52は、好ましい構成として、これら第3シフト機構521、第4シフト機構522、第3チルト機構523及び第4チルト機構524の全てを備える構成とされている。そして、各機構521〜524を適宜駆動することにより、挟持手段4の駆動と、加熱手段5及び冷却手段6の駆動とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0047】
第3シフト機構521及び第4シフト機構522は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の回転動力を直線運動に変換して加熱手段5及び冷却手段6に伝達するボールねじ等の機械要素から構成することが可能である。また、第3チルト機構523及び第4チルト機構524は、例えば、前記と同様の駆動源や、該駆動源の動力を加熱手段5及び冷却手段6に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。これら各機構521〜524のより具体的な構成については、公知の各種機構を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。当然のことながら、例えば、加熱手段5及び冷却手段6に接続した汎用の多軸ロボットを加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構として用いることも可能である。
【0048】
なお、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とが一体化されているため、両手段5、6を一体的に駆動する駆動機構52を採用して駆動機構を共用しているが、加熱手段5と冷却手段6とを別体とした場合には、それぞれに独立した駆動機構を設ければよい。
【0049】
また、熱間曲げ加工装置10は、加熱手段5の加熱出力を設定する加熱手段設定部53及び/又は冷却手段6による冷却媒体の供給を設定する冷却手段設定部62を備える。本実施形態では、加熱手段設定部53及び冷却手段設定部62の双方を備える構成とされている。加熱手段設定部53は、例えば、通電量可変の高周波電源等から構成され、加熱手段(加熱コイル)5への高周波電流の通電量を設定する(通電のオン/オフを含む)ことによって加熱出力を設定する構成とされる。また、冷却手段設定部62は、例えば、冷却手段6に冷却媒体611を供給する配管に設けられた流量調整弁や、環状に配置された各ノズル61の開閉弁から構成され、前記流量調整弁を調整することによってノズル61から供給される冷却媒体611の全体供給量(流量)を設定(供給のオン/オフを含む)したり、前記開閉弁により各ノズル61の開閉を調整することによって周方向の冷却媒体611の供給量(流量)分布を設定する構成とされる。そして、各設定部53、63を適宜制御することにより、挟持手段4の駆動と、加熱手段5の加熱出力及び冷却手段6による冷却媒体の供給とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0050】
なお、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、上述した構成の他、送出手段3と支持手段2との間に配置され、送り出し前の金属材1の長手方向一端部を把持して他端部を送出手段3に取り付けるためのクランプ7を備えている。そして、クランプ7の駆動機構として、金属材1の長手方向周りにクランプ7を回転させて回転位置θXとするクランプ回転機構71を備えている。クランプ回転機構71は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の動力をクランプ7に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。このクランプ回転機構71を駆動して、クランプ7を金属材1の長手方向周りに回転させることにより、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、必要に応じて、挟持手段4、加熱手段5及び冷却手段6を金属材1の長手方向に沿って移動させて、それぞれ位置KX、HX、CXとするシフト機構を備える構成とすることも可能である。斯かるシフト機構は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の回転動力を直線運動に変換して挟持手段4、加熱手段5及び冷却手段6のそれぞれに伝達するボールねじ等の機械要素や汎用のロボットなどから構成することが可能である。
【0052】
以上に説明した構成を有する熱間曲げ加工装置10を構成する各手段は、制御装置20によって制御され、これにより金属材1に熱間曲げ加工が施される。基本的に、制御装置20は、送出手段3によって長手方向に送り出した金属材1を支持手段2で案内支持しながら、加熱手段5の配置箇所で局部的に金属材1を加熱し、挟持手段4によって前記加熱された金属材1の部位に曲げモーメントを付与し、その直後に冷却手段6によって金属材1の加熱された部位を冷却するように、熱間曲げ加工装置10を構成する各手段を制御する。
【0053】
ここで、制御装置20としては、所定の動作プログラムをインストールした制御用コンピュータを利用できる他、アナログ型のプログラム設定器等を利用することも可能である。そして、制御装置20は、熱間曲げ加工後の金属材1(熱間曲げ加工製品)が目標品質(形状、硬度、ミクロ組織等)となるように予め決定された制御パターンを記憶している。より具体的に説明すれば、予め種々の適当な制御パターンに基づいて、金属材1に熱間曲げ加工を施し、得られた熱間曲げ加工製品の形状、硬度を測定したり、ミクロ組織等を観察することにより、目標品質が得られる良好な制御パターンを選定し、これを制御装置20に記憶している。そして、制御装置20は、前記記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4を制御すると共に、支持手段2、加熱手段5及び冷却手段6の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴としている。以下、制御装置20の具体的構成について、複数の例を挙げて、より詳細に説明する。
【0054】
<第1構成例>
図4は、本発明の第1構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。図4に示すように、本構成例の制御装置20Aは、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4を制御する構成とされている。そして、本構成例において記憶される制御パターンは、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間tに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(送出手段3、挟持手段4)の制御量とされている。
【0055】
より具体的に説明すれば、本構成例の制御装置20Aには、下記(1)〜(5)の制御パターンが、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
(1)経過時間tに対応付けられた送出手段3の送り出し量FXsからなる制御パターン21A
(2)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(挟持手段4の左右方向位置に相当)KYsからなる制御パターン22A
(3)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2シフト機構412の駆動位置(挟持手段4の上下方向位置に相当)KZsからなる制御パターン23A
(4)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(挟持手段4の左右方向周りの回転位置に相当)θKYsからなる制御パターン24A
(5)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2チルト機構414の駆動位置(挟持手段4の上下方向周りの回転位置に相当)θKZsからなる制御パターン25A
なお、図4に示すFXs、KYs、KZs、θKYs、θKZsは、それぞれ図1に示すFX、KY、KZ、θKY、θKZの設定値を意味する。
【0056】
制御装置20は、金属材1の送り出し開始を示す適宜のトリガー信号を起点として、クロックを出力するクロック発生器201を具備する。そして、クロック発生器201から出力されるクロックの数(金属材1の送り出し開始からの経過時間tに相当)と、各制御パターン21A〜25Aとに応じて決定される制御量設定値FXs、KYs、KZs、θKYs、θKZsを各被制御手段に逐次出力するように構成されている。具体的には、送り出し量FXsは送出手段3に出力される。そして、送出手段3は、入力された送り出し量FXsに相当する金属材1の送り出し量となるように予め設定された駆動量だけ、駆動源であるACサーボモータ等を駆動する。なお、本構成例のクロック発生器201は、好ましい態様として、クロックレートが可変とされている。従って、例えば、制御パターン21Aが、経過時間t(クロック数)に比例する送り出し量FXsとされている場合、クロック発生器201のクロックレートを高くすると、単位時間(実時間)当たりに出力されるクロック数が増えるため、単位時間当たりの送り出し量FXsの変化(すなわち、送り出し速度)も大きくなる。逆に、クロックレートを低くすると、送り出し速度は小さくなる。つまり、上記好ましい態様によれば、クロック発生器201のクロックレートの設定を変更するだけで、金属材1の送り出し速度を容易に変更可能である。
【0057】
同様にして、駆動位置KYs、KZs、θKYs、θKZsは、それぞれ挟持手段4の第1シフト機構411、第2シフト機構412、第1チルト機構413、第2チルト機構414に出力される。そして、これら各機構411〜414は、各機構411〜414が前記入力された各駆動位置KYs、KZs、θKYs、θKZsとなるように予め設定された駆動量だけ、各機構411〜414の駆動源を駆動する。
【0058】
以上に説明した本構成例の制御装置20Aによれば、熱間曲げ加工後の金属材1が目標品質となるように予め決定された制御パターン21A〜25Aに基づいて、熱間曲げ加工装置10を構成する各手段(送出手段3、挟持手段4)を制御するため、精度の良い熱間曲げ加工が可能である。また、いったん目標品質を得るための制御パターン21A〜25Aを決定しさえすれば、該決定した制御パターン21A〜25Aに基づいて熱間曲げ加工装置10の各手段(送出手段3、挟持手段4)を制御するだけでよく、熟練者の勘や技能に頼る必要がないため、熱間曲げ加工の作業能率を高めることも可能である。
【0059】
なお、前述したように、送出手段3は、制御装置20から入力された制御量(送出手段3による金属材1の送り出し量)が得られるように、予め設定された駆動量だけ駆動源を駆動する。同様に、挟持手段4も、制御装置20から入力された制御量(挟持手段4の駆動機構41の駆動位置)が得られるように、予め設定された駆動量だけ駆動源を駆動する。これら駆動源の駆動制御方法としては、図13(a)に示すような、一般的な制御方法を採用することも可能である。すなわち、制御装置20から初めに入力された制御量に対応する駆動量がS1である場合には、停止状態から駆動速度V1となるまで加速し、該駆動速度V1で所定時間駆動した後に、減速して再び停止状態とする。そして、上記動作に対応するハッチング部分の面積が駆動量S1に等しくなるように、駆動速度V1及び動作時間T1を設定する。制御装置20から次に入力された制御量に対応する駆動量がS2である場合には、再び、停止状態から駆動速度V2となるまで加速し、該駆動速度V2で所定時間駆動した後に、減速して停止状態とする。そして、上記動作に対応するハッチング部分の面積が駆動量S2に等しくなるように、駆動速度V2及び動作時間T2を設定する。以下、同様の動作を繰り返す方法であり、複雑な曲げ製品を得ることができる。ただし、図13(a)に示す制御方法によれば、加速、定速、減速、停止を繰り返す動作となるため、高寸法精度が求められる製品に対しては、図14(a)に示すように、駆動位置精度が不十分となる場合もある。
【0060】
これに対し、本実施形態のように、送出手段3の駆動源や、挟持手段4の駆動機構41の駆動源として、駆動速度を任意に設定可能なACサーボモータ等を用いる場合には、図13(b)に示すような制御方法を採用することが可能である。すなわち、制御装置20から初めに入力された制御量に対応する駆動量がS1’である場合には、停止状態から駆動速度V1’となるまで加速し、該駆動速度V1’で所定時間駆動する。そして、上記動作に対応するハッチング部分の面積が駆動量S1’に等しくなるように、駆動速度V1’及び動作時間T1’を設定する。制御装置20から次に入力された制御量に対応する駆動量がS2’である場合には、駆動速度V1’から駆動速度V2’となるまで加速(又は減速)し、該駆動速度V2’で所定時間駆動する。そして、上記動作に対応するハッチング部分の面積が駆動量S2’に等しくなるように、駆動速度V2’及び動作時間T2’を設定する。以下、同様の動作を繰り返す方法である。図13(b)に示す方法によれば、図14(b)に示すように、駆動位置を精度良く近似できるため、高い駆動位置精度を確保することができる。
【0061】
また、本構成例では、金属材1の曲げ方向が3次元的に異なる曲げ加工を施すことができるように、挟持手段4の第1シフト機構411、第2シフト機構412、第1チルト機構413、第2チルト機構414の全てを制御する態様について説明したが、曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工しか施さない場合には、何れかの機構の制御を省略する(或いは、機構自体を設けない構成とする)ことが可能である。また、金属材1の曲げ半径が大きい場合には、第1チルト機構413、第2チルト機構414の制御を省略する(或いは、第1チルト機構413、第2チルト機構414自体を設けない構成とする)ことも可能である。
【0062】
さらに、熱間曲げ加工装置10が、挟持手段4を金属材1の長手方向に沿って移動させて位置KXとするシフト機構を備える構成である場合、前述したのと同様に、制御装置20Aに、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の前記シフト機構の駆動位置(挟持手段4の金属材1の長手方向に沿った位置に相当)からなる制御パターンを予め記憶させ、制御装置20Aが、前記記憶された制御パターンに基づいて挟持手段4を制御する構成とすることも可能である。
【0063】
<第2構成例>
図5は、本発明の第2構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図5において、図4に示す第1構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図5に示すように、本構成例の制御装置20Bも、第1構成例と同様に、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4を制御する構成とされている。ただし、制御装置20Bが金属材1に関する経時的情報(本構成例では、金属材1の送り出し量FXiであり、図1に示すFXの検出値に相当する)を検出する送出量検出手段202を備える点で相違する。また、制御装置20Bに記憶される制御パターン21B〜25Bの内、送出手段3についての制御パターン21Bを除き、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(挟持手段4)の制御量とされている点でも相違する。さらに、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22B〜25Bとに基づいて、被制御手段(挟持手段4)を制御する点でも相違する。なお、送出手段3についての制御パターン21Bは、第1構成例と同様に、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間t(実際には、クロック発生器201から出力されるクロックの数)に対応付けられた送出手段3の制御量とされており、送出手段3は、この制御パターン21Bに基づいて制御される。
【0064】
送出量検出手段202としては、例えば、送出手段3の機械要素であるボールねじやピストンロッド等の駆動方向の変位を変位計で測定して、送り出し量FXiを直接的に検出する構成や、送出手段3の駆動源であるACサーボモータ等の回転量をエンコーダで検出し、それをボールねじ等の駆動方向の変位に換算して、送り出し量FXiを間接的に検出する構成を採用することが可能である。
【0065】
制御パターン22B〜25Bは、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiを変数とする関数形式や、送り出し量FXiと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。制御パターン21Bは、第1構成例と同様に、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
【0066】
その他、送出手段3の駆動源や、挟持手段4の駆動機構41の駆動源を駆動制御する方法として、前述した図13(a)や(b)に示す方法を採用できる点は、第1構成例と同様である。ただし、駆動機構41の駆動源を駆動制御する方法については、本構成例では、制御量が金属材1の送り出し量FXiに対応付けられているため、図13(a)、(b)に示すグラフの横軸は金属材1の送り出し量となり、縦軸は単位送り出し量当たりの駆動量となる。また、曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工しか施さない場合には、挟持手段4の何れかの機構の制御を省略する(或いは、機構自体を設けない構成とする)ことが可能である点、金属材1の曲げ半径が大きい場合には、挟持手段4の第1チルト機構413、第2チルト機構414の制御を省略する(或いは、第1チルト機構413、第2チルト機構414自体を設けない構成とする)ことも可能である点も、第1構成例と同様である。
【0067】
また、熱間曲げ加工装置10が、挟持手段4を金属材1の長手方向に沿って移動させて位置KXとするシフト機構を備える構成である場合、前述した制御パターン22B〜25Bと同様に、制御装置20Bに、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた挟持手段4の前記シフト機構の駆動位置(挟持手段4の金属材1の長手方向に沿った位置に相当)からなる制御パターンを予め記憶させ、制御装置20Bが、前記記憶された制御パターンに基づいて挟持手段4を制御する構成とすることも可能である。
【0068】
以上に説明した本構成例の制御装置20Bによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Bによれば、第1構成例の制御装置20Aと異なり、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4の制御量を制御パターン22B〜25Bとして用い、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22B〜25Bとに基づいて挟持手段4を制御することになる。従って、送出手段3の時間応答性と、挟持手段4の駆動機構の時間応答性との差異等があったとしても、第1構成例の制御装置20Aと異なり、本来曲げ加工されるべき金属材1の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0069】
<第3構成例>
図6は、本発明の第3構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図6において、図4に示す第1構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図6に示すように、本構成例の制御装置20Cは、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、支持手段2、クランプ7、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。そして、本構成例において記憶される制御パターンは、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間tに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(送出手段3、挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている。
【0070】
より具体的に説明すれば、本構成例の制御装置20Cには、下記(1)〜(6)の制御パターンが、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
(1)経過時間tに対応付けられた送出手段3の送り出し量FXsからなる制御パターン21C
(2)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の駆動機構41の駆動位置からなる制御パターン22C(経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(挟持手段4の左右方向位置に相当)KYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2シフト機構412の駆動位置(挟持手段4の上下方向位置に相当)KZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(挟持手段4の左右方向周りの回転位置に相当)θKYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2チルト機構414の駆動位置(挟持手段4の上下方向周りの回転位置に相当)θKZsからなる制御パターン)
(3)経過時間tに対応付けられた支持手段2の駆動機構21の駆動位置(支持手段2の金属材1の長手方向周りの回転位置に相当)θSXsからなる制御パターン23C
(4)経過時間tに対応付けられたクランプ7の駆動機構71の駆動位置(クランプ7の金属材1の長手方向周りの回転位置に相当)θXsからなる制御パターン24C
(5)経過時間tに対応付けられた加熱手段5の駆動機構52の駆動位置からなる制御パターン25C(経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第3シフト機構521の駆動位置(加熱手段5の左右方向位置に相当)HYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第4シフト機構522の駆動位置(加熱手段5の上下方向位置に相当)HZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第3チルト機構523の駆動位置(加熱手段5の左右方向周りの回転位置に相当)θHYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第4チルト機構524の駆動位置(加熱手段5の上下方向周りの回転位置に相当)θHZsからなる制御パターン)
(6)経過時間tに対応付けられた冷却手段6の駆動機構52の駆動位置からなる制御パターン26C(経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第3シフト機構521の駆動位置(冷却手段6の左右方向位置に相当)CYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第4シフト機構522の駆動位置(冷却手段6の上下方向位置に相当)CZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第3チルト機構523の駆動位置(冷却手段6の左右方向周りの回転位置に相当)θCYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第4チルト機構524の駆動位置(冷却手段6の上下方向周りの回転位置に相当)θCZsからなる制御パターン)
【0071】
なお、図6に示すθSXs、θXs、HYs、HZs、θHYs、θHZs、CYs、CZs、θCYs、θCZsは、それぞれ図1に示すθSX、θX、HY、HZ、θHY、θHZ、CY、CZ、θCY、θCZの設定値を意味する。また、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とが一体化され、両手段5、6を一体的に駆動する駆動機構52を採用しているため、HYs=CYs、HZs=CZs、θHYs=θCYs、θHZs=θCZsとなる。しかしながら、加熱手段5と冷却手段6とを別体とし、それぞれに独立した駆動機構を設ける場合には、無論、HYs≠CYs、HZs≠CZs、θHYs≠θCYs、θHZs≠θCZsとすることが可能である。
【0072】
制御装置20Cは、クロック発生器201から出力されるクロックの数(金属材1の送り出し開始からの経過時間tに相当)と、各制御パターン21C〜26Cとに応じて決定される制御量設定値FXs、KYs、KZs、θKYs、θKZs、θSXs、θXs、HYs、HZs、θHYs、θHZs、CYs、CZs、θCYs、θCZsを各被制御手段に逐次出力するように構成されている。ただし、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とを一体的に駆動する駆動機構52を採用しているため、実際にはCYs、CZs、θCYs、θCZsは出力されない。しかしながら、加熱手段5と冷却手段6とを別体とし、それぞれを別個の駆動機構で駆動する場合には、冷却手段6の駆動機構にCYs、CZs、θCYs、θCZsが出力されることになる。
【0073】
具体的には、駆動位置θSXsは、支持手段2の駆動機構(第2回転機構)21に出力され、第2回転機構21は、該第2回転機構21が前記入力された駆動位置(回転位置)θSXsとなるように予め設定された駆動量だけ、第2回転機構21の駆動源を駆動する。また、駆動位置θXsは、クランプ7の駆動機構(クランプ回転機構)71に出力され、クランプ回転機構71は、該クランプ回転機構71が前記入力された駆動位置(回転位置)θXsとなるように予め設定された駆動量だけ、クランプ回転機構71の駆動源を駆動する。本実施形態では、クランプ回転機構71を第2回転機構21と同期駆動するため、θXs=θSXsとされている。さらに、駆動位置HYs(=CYs)、HZs(=CZs)、θHYs(=θCYs)、θHZs(=θCZs)は、それぞれ加熱手段5(及び冷却手段6)の第3シフト機構521、第4シフト機構522、第3チルト機構523、第4チルト機構524に出力される。そして、これら各機構521〜524は、各機構521〜524が前記入力された各駆動位置HYs、HZs、θHYs、θHZsとなるように予め設定された駆動量だけ、各機構521〜524の駆動源を駆動する。
【0074】
なお、送出手段3による金属材1の送り出し量FXs、及び挟持手段4の駆動機構41の駆動位置KYs、KZs、θKYs、θKZsについては、第1構成例と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
その他、送出手段3の駆動源や、挟持手段4の駆動機構41の駆動源を駆動制御する方法として、前述した図13(a)や(b)に示す方法を採用できる点は、第1構成例と同様である。本構成例では、支持手段2の駆動機構21、クランプ7の駆動機構71、加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構52についても、前述した図13(a)や(b)に示す方法を採用して駆動源を駆動制御することが可能である。また、曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工しか施さない場合には、挟持手段4の何れかの機構の制御を省略する(或いは、機構自体を設けない構成とする)ことが可能である点、金属材1の曲げ半径が大きい場合には、挟持手段4の第1チルト機構413、第2チルト機構414の制御を省略する(或いは、第1チルト機構413、第2チルト機構414自体を設けない構成とする)ことも可能である点も、第1構成例と同様である。
【0076】
また、熱間曲げ加工装置10が、挟持手段4を金属材1の長手方向に沿って移動させて位置KXとするシフト機構を備える構成である場合、第1構成例と同様に、制御装置20Cに、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の前記シフト機構の駆動位置(挟持手段4の金属材1の長手方向に沿った位置に相当)からなる制御パターンを予め記憶させ、制御装置20Cが、前記記憶された制御パターンに基づいて挟持手段4を制御する構成とすることも可能である。熱間曲げ加工装置10が、加熱手段5、冷却手段6を金属材1の長手方向に沿って移動させて、それぞれ位置HX、CXとするシフト機構(本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とが一体化されているため、HX=CXであり、両手段5、6を一体的に駆動するシフト機構とされる)を備える構成である場合も、同様の構成とすることが可能である。
【0077】
以上に説明した本構成例の制御装置20Cによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Cによれば、挟持手段4の駆動と、加熱手段5及び冷却手段6の駆動とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。また、支持手段2の駆動機構21を駆動して金属材1の長手方向周りに支持手段2を回転させることにより、さらにはクランプ7の駆動機構71を支持手段2の駆動機構21と同期駆動(θXs=θSXs)してクランプ7を回転させることにより、挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させなくても、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。
【0078】
なお、金属材1へのねじり変形の付与は、本構成例のように、挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させることなく、その回転位置を固定する一方、支持手段2及びクランプ7を金属材1の長手方向周りに回転させる制御によって行える他、下記の(1)〜(3)の制御によって行うことも可能である。
(1)支持手段2及びクランプ7を金属材1の長手方向周りに回転させることなく、その回転位置を固定する一方、挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させて回転位置θKXsとする。
(2)挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させることなく、その回転位置を固定する一方、支持手段2を金属材1の長手方向周りに回転させて回転位置θSXsとする。この際、クランプ7による金属材1の把持を解除し、クランプ7に対して金属材1を長手方向周りに自由に回転し得る状態(アイドル状態)とする。
(3)挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させて回転位置θKXsとする一方、支持手段2及びクランプ7を金属材1の長手方向周りに同期回転させて回転位置θSXs(=θXs)とする。
【0079】
<第4構成例>
図7は、本発明の第4構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図7において、図6に示す第3構成例や図5に示す第2構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図7に示すように、本構成例の制御装置20Dも、第3構成例と同様に、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、支持手段2、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。ただし、制御装置20Dが金属材1に関する経時的情報(本構成例では、金属材1の送り出し量FXiであり、図1に示すFXの検出値に相当する)を検出する送出量検出手段202を備える点で相違する。また、制御装置20Dに記憶される制御パターン21D〜26Dの内、送出手段3についての制御パターン21Dを除き、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている点でも相違する。さらに、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22D〜26Dとに基づいて、被制御手段(挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6)を制御する点でも相違する。なお、送出手段3についての制御パターン21Dは、第3構成例と同様に、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間t(実際には、クロック発生器201から出力されるクロックの数)に対応付けられた送出手段3の制御量とされており、送出手段3は、この制御パターン21Dに基づいて制御される。すなわち、本構成例の制御装置20Dと第3構成例の制御装置20Cとの関係は、第2構成例の制御装置20Bと第1構成例の制御装置20Aとの関係と同様である。従って、本構成例の制御装置20Dについては、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0080】
以上に説明した本構成例の制御装置20Dによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Dによれば、第3構成例の制御装置20Cと異なり、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6の制御量を制御パターン22D〜26Dとして用い、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22D〜26Dとに基づいて挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6を制御することになる。従って、送出手段3の時間応答性と、挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6の駆動機構の時間応答性との差異等があったとしても、第3構成例の制御装置20Cと異なり、本来曲げ加工されるべき金属材1の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0081】
<第5構成例>
図8は、本発明の第5構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図8において、図4に示す第1構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図8に示すように、本構成例の制御装置20Eは、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。そして、本構成例において記憶される制御パターンは、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間tに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(送出手段3、挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている。
【0082】
より具体的に説明すれば、本構成例の制御装置20Eには、下記(1)〜(4)の制御パターンが、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
(1)経過時間tに対応付けられた送出手段3の送り出し量FXsからなる制御パターン21E
(2)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の駆動機構41の駆動位置からなる制御パターン22E(経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(挟持手段4の左右方向位置に相当)KYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2シフト機構412の駆動位置(挟持手段4の上下方向位置に相当)KZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(挟持手段4の左右方向周りの回転位置に相当)θKYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2チルト機構414の駆動位置(挟持手段4の上下方向周りの回転位置に相当)θKZsからなる制御パターン)
(3)経過時間tに対応付けられた加熱手段5の加熱手段設定部53による加熱出力設定値(例えば、加熱手段5への高周波電流の通電量に相当)HPsからなる制御パターン23E
(4)経過時間tに対応付けられた冷却手段6の冷却手段設定部62による冷却媒体611の供給設定値(例えば、冷却手段6のノズル61から供給される冷却媒体611の全体供給量(流量)に相当)CPsからなる制御パターン24E
なお、本構成例では、冷却媒体611の全体供給量を設定する場合について例示しているが、冷却手段6の各ノズル61の開閉を調整することによって周方向の冷却媒体611の供給量(流量)分布を設定する場合には、各ノズル61に対応する複数の制御パターンを記憶しておけばよい。
【0083】
制御装置20Eは、クロック発生器201から出力されるクロックの数(金属材1の送り出し開始からの経過時間tに相当)と、各制御パターン21E〜24Eとに応じて決定される制御量設定値FXs、KYs、KZs、θKYs、θKZs、HPs、CPsを各被制御手段に逐次出力するように構成されている。
【0084】
具体的には、加熱出力設定値HPsは、加熱手段5の加熱手段設定部53に出力され、加熱手段設定部53は、加熱手段5が前記入力された加熱出力設定値HPsに相当する加熱出力(高周波電流の通電量)を示すように、加熱手段設定部53の高周波電源等を制御する。また、冷却媒体の供給設定値CPsは、冷却手段6の冷却手段設定部62に出力され、冷却手段設定部62は、冷却手段6が前記入力された供給設定値CPsに相当する冷却媒体の供給(全体供給量)を示すように、冷却手段設定部62の流量調整弁等を制御する。
【0085】
なお、送出手段3による金属材1の送り出し量FXs、及び挟持手段4の駆動機構41の駆動位置KYs、KZs、θKYs、θKZsについては、第1構成例及び第3構成例と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
その他、送出手段3の駆動源や、挟持手段4の駆動機構41の駆動源を駆動制御する方法として、前述した図13(a)や(b)に示す方法を採用できる点は、第1構成例及び第3構成例と同様である。また、曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工しか施さない場合には、挟持手段4の何れかの機構の制御を省略する(或いは、機構自体を設けない構成とする)ことが可能である点、金属材1の曲げ半径が大きい場合には、挟持手段4の第1チルト機構413、第2チルト機構414の制御を省略する(或いは、第1チルト機構413、第2チルト機構414自体を設けない構成とする)ことも可能である点も、第1構成例及び第3構成例と同様である。
【0087】
また、熱間曲げ加工装置10が、挟持手段4を金属材1の長手方向に沿って移動させて位置KXとするシフト機構を備える構成である場合、第1構成例と同様に、制御装置20Eに、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の前記シフト機構の駆動位置(挟持手段4の金属材1の長手方向に沿った位置に相当)からなる制御パターンを予め記憶させ、制御装置20Eが、前記記憶された制御パターンに基づいて挟持手段4を制御する構成とすることも可能である。
【0088】
以上に説明した本構成例の制御装置20Eによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Eによれば、挟持手段4の駆動と、加熱手段5の加熱出力及び冷却手段6による冷却媒体の供給とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0089】
<第6構成例>
図9は、本発明の第6構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図9において、図8に示す第5構成例や図7に示す第4構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図9に示すように、本構成例の制御装置20Fも、第5構成例と同様に、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、支持手段2、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。ただし、制御装置20Fが金属材1に関する経時的情報(本構成例では、金属材1の送り出し量FXiであり、図1に示すFXの検出値に相当する)を検出する送出量検出手段202を備える点で相違する。また、制御装置20Fに記憶される制御パターン21F〜24Fの内、送出手段3についての制御パターン21Fを除き、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている点でも相違する。さらに、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22F〜24Fとに基づいて、被制御手段(挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)を制御する点でも相違する。なお、送出手段3についての制御パターン21Fは、第5構成例と同様に、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間t(実際には、クロック発生器201から出力されるクロックの数)に対応付けられた送出手段3の制御量とされており、送出手段3は、この制御パターン21Fに基づいて制御される。すなわち、本構成例の制御装置20Fと第5構成例の制御装置20Eとの関係は、第2構成例の制御装置20Bと第1構成例の制御装置20Aとの関係や、第4構成例の制御装置20Dと第3構成例の制御装置20Cとの関係と同様である。従って、本構成例の制御装置20Fについては、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0090】
以上に説明した本構成例の制御装置20Fによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Fによれば、第5構成例の制御装置20Eと異なり、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6の制御量を制御パターン22F〜24Fとして用い、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22F〜24Fとに基づいて挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6を制御することになる。従って、送出手段3の時間応答性と、挟持手段4の駆動機構や、加熱手段5、冷却手段6の設定部の時間応答性との差異等があったとしても、第5構成例の制御装置20Eと異なり、本来曲げ加工されるべき金属材1の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0091】
<第7構成例>
図10は、本発明の第7構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図10において、図6に示す第3構成例や図8に示す第5構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図10に示すように、本構成例の制御装置20Gは、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。そして、本構成例において記憶される制御パターンは、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間tに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(送出手段3、挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている。
【0092】
より具体的に説明すれば、本構成例の制御装置20Gには、下記(1)〜(6)の制御パターンが、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
(1)経過時間tに対応付けられた送出手段3の送り出し量FXsからなる制御パターン21G
(2)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の駆動機構41の駆動位置からなる制御パターン22G(経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(挟持手段4の左右方向位置に相当)KYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2シフト機構412の駆動位置(挟持手段4の上下方向位置に相当)KZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(挟持手段4の左右方向周りの回転位置に相当)θKYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2チルト機構414の駆動位置(挟持手段4の上下方向周りの回転位置に相当)θKZsからなる制御パターン)
(3)経過時間tに対応付けられた加熱手段5の駆動機構52の駆動位置からなる制御パターン23G(経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第3シフト機構521の駆動位置(加熱手段5の左右方向位置に相当)HYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第4シフト機構522の駆動位置(加熱手段5の上下方向位置に相当)HZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第3チルト機構523の駆動位置(加熱手段5の左右方向周りの回転位置に相当)θHYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第4チルト機構524の駆動位置(加熱手段5の上下方向周りの回転位置に相当)θHZsからなる制御パターン)
(4)経過時間tに対応付けられた加熱手段5の加熱手段設定部53による加熱出力設定値(加熱手段5への高周波電流の通電量に相当)HPsからなる制御パターン24G
(5)経過時間tに対応付けられた冷却手段6の駆動機構52の駆動位置からなる制御パターン25G(経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第3シフト機構521の駆動位置(冷却手段6の左右方向位置に相当)CYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第4シフト機構522の駆動位置(冷却手段6の上下方向位置に相当)CZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第3チルト機構523の駆動位置(冷却手段6の左右方向周りの回転位置に相当)θCYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第4チルト機構524の駆動位置(冷却手段6の上下方向周りの回転位置に相当)θCZsからなる制御パターン)
(6)経過時間tに対応付けられた冷却手段6の冷却手段設定部62による冷却媒体の供給設定値(冷却手段6のノズル61から供給される冷却媒体611の全体供給量(流量)に相当)CPsからなる制御パターン26G
なお、図10では、制御パターン26Gは1つの制御パターンからなり、冷却媒体611の全体供給量を設定する場合について図示しているが、冷却手段6の各ノズル61の開閉を調整することによって周方向の冷却媒体611の供給量(流量)分布を設定する場合には、各ノズル61に対応する複数の制御パターンを記憶しておけばよい。
【0093】
本構成例の制御装置20Gは、金属材1の長手方向に略直交する平面内における金属材1の変位を測定する変位測定手段203、加熱手段5近傍における金属材1の温度(加熱手段5によって加熱された部位の温度、或いは前記部位に近接する部位の温度)を測定する加熱温度測定手段204、及び冷却手段6近傍における金属材1の温度(冷却手段6によって冷却された部位の温度、或いは前記部位に近接する部位の温度)を測定する冷却温度測定手段205の内、少なくとも1以上の測定手段を備えることを特徴としている。本構成例では、好ましい態様として、変位測定手段203、加熱温度測定手段204及び冷却温度測定手段205の全てを備える構成とされている。そして、本構成例の制御装置20Gは、上記測定手段203〜205の測定値に基づいて、記憶された制御パターン21G〜26Gの内、制御パターン23G〜26Gを修正し、該修正後の制御パターン23G〜26Gに基づいて、熱間曲げ加工装置10の被制御手段(加熱手段5、冷却手段6)を制御することを特徴としている。なお、制御パターン21G、22Gについては、測定手段203〜205の測定値に基づいて修正することなく、予め記憶された状態のままで用いられる。
【0094】
なお、本構成例の制御装置20Gは、測定手段203〜205の測定値に基づいて、記憶された制御パターン23G〜26Gを修正する点を除き、第3構成例の制御装置20Cや第5構成例の20Eと略同様の動作となるため、以下では、主として上記修正動作について説明する。
【0095】
変位測定手段203としては、例えば、超音波式、渦流式、光学式等の各種非接触式の変位計が好適に用いられる。また、加熱温度測定手段204、冷却温度測定手段205としては、放射温度計等の非接触式温度計が好適に用いられる。以下、変位測定手段203の測定値に基づく制御パターンの修正、加熱温度測定手段204の測定値に基づく制御パターンの修正、冷却温度測定手段205の測定値に基づく制御パターンの修正について、順に説明する。
【0096】
<変位測定手段203の測定値に基づく制御パターンの修正>
図10は、変位測定手段203による金属材1の変位測定値に基づいて、制御パターン23G、25G及び26Gを修正する例を示している。より具体的には、変位測定手段203を加熱手段5近傍に配置し、該変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて、制御パターン23Gの内、加熱手段5の第3シフト機構521の駆動位置HYsからなる制御パターン、加熱手段5の第4シフト機構522の駆動位置HZsからなる制御パターンを修正(例えば、金属材1の変位が目標範囲内となるように、駆動位置HYs、HZsを変更)し、該修正後の制御パターン23Gに基づいて、加熱手段5の駆動機構52を制御する構成とされている。前述のように、本実施形態に係る加熱手段5は、金属材1の長手方向に直交する断面を囲繞する加熱コイルであるため、加熱コイルと金属材1との芯ずれが小さくなるように金属材1の変位の目標範囲を定めておけばよい。これにより、修正前の制御パターン23Gでは、加熱コイルと金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な加熱ができない場合であっても、修正後の制御パターン23Gに基づいて加熱コイルの位置を制御すれば、加熱コイルと金属材1との芯ずれが小さくなる結果、金属材1の周方向に均一な加熱ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、加熱コイルと金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、加熱コイルと金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン23Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0097】
また、制御装置20Gは、変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて、制御パターン25Gの内、冷却手段6の第3シフト機構521の駆動位置CYsからなる制御パターン、冷却手段6の第4シフト機構522の駆動位置CZsからなる制御パターンを修正(例えば、金属材1の変位が目標範囲内となるように、駆動位置CYs、CZsを変更)し、該修正後の制御パターン25Gに基づいて、冷却手段6の駆動機構52を制御する構成とされている。ただし、前述のように、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とを一体的に駆動する駆動機構52を採用しているため、HYs=CYs、HZs=CZsであり、実際には修正後のCYs、CZsは駆動機構52に出力されない。しかしながら、加熱手段5と冷却手段6とを別体とし、それぞれを別個の駆動機構で駆動する場合には、冷却手段6の駆動機構に修正後のCYs、CZsが出力されることになる。これにより、修正前の制御パターン25Gでは、冷却手段6と金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な冷却ができない場合であっても、修正後の制御パターン25Gに基づいて冷却手段6の位置を制御すれば、冷却手段6と金属材1との芯ずれが小さくなる結果、金属材1の周方向に均一な冷却ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、冷却手段6と金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、冷却手段6と金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン25Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0098】
さらに、制御装置20Gは、変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて、制御パターン26Gを修正(金属材1の変位に応じて、冷却媒体611の供給設定値CPsを変更)し、該修正後の制御パターン26Gに基づいて、冷却手段設定部62を制御する構成とされている。より具体的には、変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて制御パターン26Gを修正する場合、制御パターン26Gとしては、各ノズル61から供給する冷却媒体611の供給量からなる複数の制御パターンが記憶される。そして、変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて、冷却手段6と金属材1との間の芯ずれを検知し、金属材1から離れたノズル61からの冷却媒体611の供給量が増加するように該ノズル61についての制御パターンを修正する一方、金属材1に近いノズル61からの冷却媒体611の供給量が減少するように該ノズル61についての制御パターンを修正し、該修正後の制御パターン26Gに基づいて、冷却手段設定部62を制御する構成とされる。これにより、修正前の制御パターン26Gでは、加熱コイルと金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な冷却ができない場合であっても、修正後の制御パターン26Gに基づいて周方向の冷却媒体611の供給量分布を設定すれば、金属材1の周方向に均一な冷却ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、加熱コイルと金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、加熱コイルと金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン26Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0099】
<加熱温度測定手段204の測定値に基づく制御パターンの修正>
図10は、加熱温度測定手段204による加熱手段5近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、制御パターン23G及び24Gを修正する例を示している。より具体的には、制御パターン23Gを修正する場合、加熱温度測定手段204は、金属材1の周方向に沿った複数点の温度を測定できるように、金属材1の周方向に沿って複数の放射温度計等を配置した構成とされる。そして、加熱温度測定手段204によって測定した各点の温度測定値に基づいて、制御パターン23Gの内、加熱手段5の第3シフト機構521の駆動位置HYsからなる制御パターン、加熱手段5の第4シフト機構522の駆動位置HZsからなる制御パターンを修正(例えば、各点の測定温度が略同等となるように、駆動位置HYs、HZsを変更)し、該修正後の制御パターン23Gに基づいて、加熱手段5の駆動機構52を制御する構成とされている。これにより、修正前の制御パターン23Gでは、加熱コイルと金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な加熱ができない場合であっても、修正後の制御パターン23Gに基づいて加熱コイルの位置を制御すれば、加熱コイルと金属材1との芯ずれが小さくなる結果、金属材1の周方向に均一な加熱ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、加熱コイルと金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、加熱コイルと金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン23Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0100】
また、制御装置20Gは、加熱温度測定手段204による加熱手段5近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、制御パターン24Gを修正(例えば、金属材1の温度測定値が目標範囲内となるように、加熱出力設定値HPsを変更)し、該修正後の制御パターン24Gに基づいて、加熱手段設定部53を制御する構成とされている。これにより、設定温度(予測温度)ではなく実測温度に基づいた適切な加熱が可能となる結果、十分な硬度の熱間曲げ加工製品を得ることができる。
【0101】
なお、図10には示していないが、加熱温度測定手段204による加熱手段5近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、金属材1の送り出し速度を制御する(例えば、金属材1の温度測定値が目標値よりも小さければ送り出し速度を小さくし、目標値よりも大きければ送り出し速度を大きくする等)構成を採用することも可能である。具体的には、加熱温度測定手段204による金属材1の温度測定値に基づいて、クロック発生器201のクロックレートの設定を変更し、これにより金属材1の送り出し速度を制御すればよい。
【0102】
<冷却温度測定手段205の測定値に基づく制御パターンの修正>
図10は、冷却温度測定手段205による冷却手段6近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、制御パターン25G及び26Gを修正する例を示している。より具体的には、制御パターン25Gを修正する場合、冷却温度測定手段205は、金属材1の周方向に沿った複数点の温度を測定できるように、金属材1の周方向に沿って複数の放射温度計等を配置した構成とされる。そして、冷却温度測定手段205によって測定した各点の温度測定値に基づいて、制御パターン25Gの内、冷却手段6の第3シフト機構521の駆動位置CYsからなる制御パターン、冷却手段6の第4シフト機構522の駆動位置CZsからなる制御パターンを修正(例えば、各点の測定温度が略同等となるように、駆動位置CYs、CZsを変更)し、該修正後の制御パターン23Gに基づいて、冷却手段6の駆動機構52を制御する構成とされている。ただし、前述のように、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とを一体的に駆動する駆動機構52を採用しているため、HYs=CYs、HZs=CZsであり、実際には修正後のCYs、CZsは駆動機構52に出力されない。しかしながら、加熱手段5と冷却手段6とを別体とし、それぞれを別個の駆動機構で駆動する場合には、冷却手段6の駆動機構に修正後のCYs、CZsが出力されることになる。これにより、修正前の制御パターン25Gでは、冷却手段6と金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な冷却ができない場合であっても、修正後の制御パターン25Gに基づいて冷却手段6の位置を制御すれば、冷却手段6と金属材1との芯ずれが小さくなる結果、金属材1の周方向に均一な冷却ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、冷却手段6と金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、冷却手段6と金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン25Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0103】
また、制御装置20Gは、冷却温度測定手段205による冷却手段6近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、制御パターン26Gを修正(例えば、金属材1の温度測定値が目標範囲内となるように、冷却媒体611の供給設定値CPsを変更)し、該修正後の制御パターン26Gに基づいて、冷却手段設定部62を制御する構成とされている。これにより、設定温度(予測温度)ではなく実測温度に基づいた適切な冷却が可能となる結果、十分な硬度の熱間曲げ加工製品を得ることができる。
【0104】
さらに、制御パターン26Gとして、各ノズル61から供給する冷却媒体611の供給量からなる複数の制御パターンが記憶される場合、冷却温度測定手段205は、金属材1の周方向に沿った複数点の温度を測定できるように、金属材1の周方向に沿って複数の放射温度計等を配置した構成とされる。そして、冷却温度測定手段205によって測定した各点の温度測定値に基づいて、冷却手段6と金属材1との間の芯ずれを検知し、金属材1から離れたノズル61からの冷却媒体611の供給量が増加するように該ノズル61についての制御パターンを修正する一方、金属材1に近いノズル61からの冷却媒体611の供給量が減少するように該ノズル61についての制御パターンを修正し、該修正後の制御パターン26Gに基づいて、冷却手段設定部62を制御する構成とされる。これにより、修正前の制御パターン26Gでは、冷却手段6と金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な冷却ができない場合であっても、修正後の制御パターン26Gに基づいて周方向の冷却媒体611の供給量分布を設定すれば、金属材1の周方向に均一な冷却ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、故意に硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、冷却手段6によって金属材1の周方向に所望の不均一な冷却ができるように制御パターン26Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0105】
なお、図10には示していないが、冷却温度測定手段205による冷却手段6近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、金属材1の送り出し速度を制御する(例えば、金属材1の温度測定値が目標値よりも小さければ送り出し速度を小さくし、目標値よりも大きければ送り出し速度を大きくする等)構成を採用することも可能である。具体的には、冷却温度測定手段205による金属材1の温度測定値に基づいて、クロック発生器201のクロックレートの設定を変更し、これにより金属材1の送り出し速度を制御すればよい。
【0106】
<第8構成例>
図11は、本発明の第8構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図11において、図10に示す第7構成例や図7に示す第4構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図11に示すように、本構成例の制御装置20Hも、第7構成例と同様に、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。ただし、制御装置20Hが金属材1に関する経時的情報(本構成例では、金属材1の送り出し量FXiであり、図1に示すFXの検出値に相当する)を検出する送出量検出手段202を備える点で相違する。また、制御装置20Hに記憶される制御パターン21H〜26Hの内、送出手段3についての制御パターン21Hを除き、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている点でも相違する。さらに、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22H〜26Hとに基づいて、被制御手段(挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)を制御する点でも相違する。なお、送出手段3についての制御パターン21Hは、第7構成例と同様に、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間t(実際には、クロック発生器201から出力されるクロックの数)に対応付けられた送出手段3の制御量とされており、送出手段3は、この制御パターン21Hに基づいて制御される。すなわち、本構成例の制御装置20Hと第7構成例の制御装置20Gとの関係は、第2構成例の制御装置20Bと第1構成例の制御装置20Aとの関係、第4構成例の制御装置20Dと第3構成例の制御装置20Cとの関係、第6構成例の制御装置20Fと第5構成例の制御装置20Eとの関係と同様である。従って、本構成例の制御装置20Hについては、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0107】
以上に説明した本構成例の制御装置20Hによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Hによれば、第7構成例の制御装置20Gと異なり、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6の制御量を制御パターン22H〜26Hとして用い、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22H〜26Hとに基づいて挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6を制御することになる。従って、送出手段3の時間応答性と、挟持手段4の駆動機構や、加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構、設定部の時間応答性との差異等があったとしても、第7構成例の制御装置20Gと異なり、本来曲げ加工されるべき金属材1の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0108】
図12は、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10の制御装置20(第2構成例の制御装置20B)を用いて、金属材1(管)に曲げ加工(曲率半径R=150mm、45°曲げ)を施した例を示す。図12(a)は、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(シフト量)からなる制御パターンを、図12(b)は、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(チルト量)からなる制御パターンを、図12(c)は、得られた熱間曲げ加工製品の外観写真を示す。図12に示すように、熱間曲げ加工後の金属材1が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の被制御手段を制御することにより、目標品質(曲率半径R=150mm、45°曲げ)に対して精度良く熱間曲げ加工できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る制御方法を適用する熱間曲げ加工装置、及び該制御方法を実施するための制御装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、熱間曲げ加工される金属材の例を示す縦断面図であり、図2(a)はロールフォーミング等で製造された開断面材を、図2(b)は押し出し加工で製造された異型断面材を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る加熱手段及び冷却手段の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の第2構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第3構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明の第4構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、本発明の第5構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、本発明の第6構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、本発明の第7構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、本発明の第8構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係る熱間曲げ加工装置の制御装置を用いて、金属材(管)に曲げ加工(曲率半径R=150mm、45°曲げ)を施した例を示す。図12(a)は、金属材の送り出し量に対応付けられた挟持手段の第1シフト機構の駆動位置(シフト量)からなる制御パターンを、図12(b)は、金属材の送り出し量に対応付けられた挟持手段の第1チルト機構の駆動位置(チルト量)からなる制御パターンを、図12(c)は、得られた熱間曲げ加工製品の外観写真を示す。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係る熱間曲げ加工装置の駆動源の駆動制御方法の一例を示す図であり、図13(a)は一般的な制御方法を、図13(b)は高い駆動位置精度を確保する場合の制御方法を示す。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に係る熱間曲げ加工装置の駆動源の駆動制御方法による制御結果の一例を模式的に示す図であり、図14(a)は図13(a)に示す制御方法によって得られる制御結果を、図14(b)は図13(b)に示す制御方法によって得られる制御結果を示す。
【符号の説明】
【0110】
1・・・金属材
2・・・支持手段
3・・・送出手段
4・・・挟持手段
5・・・加熱手段
6・・・冷却手段
7・・・クランプ
10・・・熱間曲げ加工装置
20・・・制御装置
21・・・支持手段の駆動機構
41・・・挟持手段の駆動機構
52・・・加熱手段及び冷却手段の駆動機構
53・・・加熱手段設定部
62・・・冷却手段設定部
71・・・クランプの駆動機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法及び制御装置、並びにこれらを用いた熱間曲げ加工製品の製造方法、熱間曲げ加工製品に関する。より具体的には、目標品質(形状、硬度、ミクロ組織等)が得られるように精度良く曲げ加工することができると共に、熟練者に頼らなくても作業能率を高めることができる金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法及び制御装置、並びにこれらを用いた熱間曲げ加工製品の製造方法、熱間曲げ加工製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への配慮から、構造用金属材として、軽量で高強度の材料が要請されるようになってきた。例えば、自動車業界においては、燃費向上や衝突安全性の向上といった観点から、自動車部品の軽量化及び高強度化に対する要請がますます厳しくなっており、自動車用部品の開発と共に自動車用部品の構造を見直すことが進められている。
【0003】
このように多様な自動車用部品に適用するために、多岐にわたる曲げ形状、例えば、曲げ方向が2次元的、さらには3次元的に異なる曲げ形状からなる金属材を目標品質が得られるように精度良く加工し得る曲げ加工技術の開発が強く要請されている。
【0004】
従来より、このような曲げ加工技術の開発要請に対応するため、種々の曲げ加工技術が提案されている。例えば、特許文献1には、押し曲げ方式の高周波加熱ベンダーであって、押し曲げローラを3次元方向へ移動自在に支持する高周波加熱ベンダーが提案されている。特許文献1に記載の高周波加熱ベンダーによれば、ガイドローラで支持した被曲げ加工物を押し曲げローラで一方向に曲げた後に、前記一方向とは曲げ方向の異なる曲げ加工に入る際、押し曲げローラを被曲げ加工物を跨いで反対方向の被曲げ加工物側面に移動させてその側面に当接させ曲げ加工するので、例えば、S字曲げのように、曲げ方向が2次元的に異なる連続曲げの場合であっても、被曲げ加工物を180度回転させる段取り作業を不要にできるという利点がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の高周波加熱ベンダーには、押し曲げローラに被曲げ加工物の両側面をクランプする手段がないため、高周波加熱後の冷却による残留応力に起因して変形が発生し易いことから、所定の寸法精度を確保するのが難しく、加工速度が制約されると共に、曲げ加工度を高めることが困難になる。
【0006】
また、特許文献2には、特許文献1に記載の高周波加熱ベンダーのガイドローラや押し曲げローラに代えて、固定ダイと3次元方向に移動可能な可動ジャイロダイとを設け、可動ジャイロダイによる金属部材の曲げ加工の曲率に応じた温度に金属部材を加熱する加熱手段、固定ダイや可動ジャイロダイに冷却流体を供給する冷却流体供給手段等を備えた金属部材の曲げ加工装置が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の曲げ加工装置が備える固定ダイ及び可動ジャイロダイは、双方共に被曲げ加工物である金属部材の長手方向(押し出し方向)に沿って回転可能に構成されていないため、金属部材の表面に焼き付きが生じ易い。また、特許文献2に記載の曲げ加工装置は、冷却流体供給手段によって固定ダイや可動ジャイロダイに冷却流体を供給し、両ダイの強度低下や熱膨張による加工精度の低下を回避しているが、曲げ加工された金属部材の焼入熱処理を意図するものではなく、焼入熱処理による金属部材の高強度化を図ることができない。
【0008】
一方、被曲げ加工物を多岐にわたる曲げ形状に精度良く加工するため、現状の加工現場では、熟練者の勘や技能によって、加熱条件、冷却条件、加工量等の諸条件を決めているのが実状である。
【0009】
しかしながら、近年では、これら熟練者の高齢化とこれに伴う作業従事者の減少などの問題が顕著になってきており、熟練を要する作業を特別な技能を必要としないで実施でき、且つ、処理能力の向上を実現できる技術が要望されている。
【特許文献1】特開2000−158048号公報
【特許文献2】特許第3195083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、自動車用部品等の金属材の熱間曲げ加工に際して、多岐にわたる曲げ形状が要求される場合であっても、目標形状等の目標品質が得られるように精度良く曲げ加工することができると共に、熟練者に頼らなくても作業能率を高めることができる金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法及び制御装置、並びにこれらを用いた熱間曲げ加工製品の製造方法、熱間曲げ加工製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するべく、本発明は、金属材をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段と、送り出された金属材を案内支持する支持手段と、金属材を局部的に加熱する加熱手段と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段と、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールにより金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段とが、金属材の長手方向に沿って配置され、金属材を間欠的に又は連続的に熱間曲げ加工する熱間曲げ加工装置の制御方法であって、熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の前記送出手段及び前記挟持手段を制御すると共に、前記支持手段、前記加熱手段及び前記冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴とする金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法を提供するものである。
【0012】
斯かる発明において、熱間曲げ加工装置が備える各手段は、例えば、金属材を送り出す方向の上流側から、送出手段、支持手段、加熱手段、冷却手段、挟持手段の順に配置される。そして、例えば、送出手段によって長手方向に送り出した金属材を支持手段で案内支持しながら、加熱手段の配置箇所で局部的に金属材を加熱し、挟持手段によって前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与し、その直後に冷却手段によって金属材の加熱された部位を冷却するように各手段を制御することによって、金属材に対して熱間曲げ加工が施される。この際、本発明によれば、挟持手段を用いて(すなわち、金属材の両側面を金属材の長手方向に沿って回転可能なロールによってクランプした状態で)、加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与すると共に、熱間曲げ加工後の金属材(熱間曲げ加工製品)が目標品質(形状、硬度、ミクロ組織等)となるように予め決定された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置を構成する各手段を制御するため、従来のように残留応力に起因した変形や焼き付きが発生し難く、精度の良い熱間曲げ加工が可能である。また、いったん目標品質を得るための制御パターンを決定しさえすれば、該決定した制御パターンに基づいて熱間曲げ加工装置の各手段を制御するだけでよく、熟練者の勘や技能に頼る必要がないため、熱間曲げ加工の作業能率を高めることも可能である。
【0013】
好ましくは、前記熱間曲げ加工装置は、前記挟持手段の駆動機構として、金属材の長手方向に略直交する平面内の一軸方向に沿って前記挟持手段を移動させる第1シフト機構、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向に沿って前記挟持手段を移動させる第2シフト機構、前記一軸方向周りに前記挟持手段を傾斜させる第1チルト機構、及び前記他軸方向周りに前記挟持手段を傾斜させる第2チルト機構の内、少なくとも1以上の機構を備え、前記挟持手段の駆動機構の駆動位置を制御する態様とされる。
【0014】
斯かる好ましい態様によれば、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールである挟持手段の駆動機構の数を増やせば増やすほど、金属材の曲げ形状が多岐にわたり、曲げ方向が2次元的に異なる連続曲げの場合や、さらには曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げの場合であっても、効率的に曲げ加工することが可能である。
【0015】
また、好ましくは、前記熱間曲げ加工装置は、前記挟持手段の駆動機構として、金属材の長手方向周りに前記挟持手段を回転させる第1回転機構を備え、前記第1回転機構の駆動位置を制御する態様とされる。
【0016】
斯かる好ましい態様によれば、挟持手段を金属材の長手方向周りに回転させることにより、金属材にねじり変形を付与することが可能である。
【0017】
さらに、好ましくは、前記熱間曲げ加工装置は、前記支持手段の駆動機構として、金属材の長手方向周りに前記支持手段を回転させる第2回転機構を備え、前記第2回転機構の駆動位置を制御する態様とされる。
【0018】
斯かる好ましい態様によれば、支持手段を回転させることにより、挟持手段を金属材の長手方向周りに回転させなくても、金属材にねじり変形を付与することが可能である。また、挟持手段を回転させながら支持手段をこれより多く又は少なく回転させることによっても、金属材にねじり変形を付与することが可能である。
【0019】
また、好ましくは、前記熱間曲げ加工装置は、前記加熱手段及び/又は前記冷却手段の駆動機構として、金属材の長手方向に略直交する平面内の一軸方向に沿って前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を移動させる第3シフト機構、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向に沿って前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を移動させる第4シフト機構、前記一軸方向周りに前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を傾斜させる第3チルト機構、及び前記他軸方向周りに前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を傾斜させる第4チルト機構の内、少なくとも1以上の機構を備え、前記加熱手段及び/又は前記冷却手段の駆動機構の駆動位置を制御する態様とされる。
【0020】
斯かる好ましい態様によれば、挟持手段の駆動と、加熱手段及び/又は冷却手段の駆動とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0021】
また、好ましくは、前記加熱手段の加熱出力及び/又は前記冷却手段による冷却媒体の供給を制御する態様とされる。
【0022】
斯かる好ましい態様によれば、挟持手段の駆動と、加熱手段の加熱出力(出力値の増減の他、加熱出力のオン/オフを含む)及び/又は冷却手段による冷却媒体の供給(供給量の増減の他、供給のオン/オフを含む)とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0023】
前記制御パターンは、例えば、前記送出手段による金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段(つまり、送出手段及び挟持手段の他、支持手段、加熱手段及び冷却手段の内、少なくとも1以上の手段)の制御量とすることができる。ここで、被制御手段が送出手段である場合、金属材の送り出し量や送り出し速度等が制御量となる。また、被制御手段が挟持手段の場合、挟持手段の駆動機構の駆動位置(挟持手段の位置に相当)等が制御量となる。被制御手段が支持手段の場合、支持手段の駆動機構の駆動位置(支持手段の回転位置に相当)等が制御量となる。被制御手段が加熱手段の場合、加熱手段の駆動機構の駆動位置(加熱手段の位置に相当)、加熱手段の加熱出力等が制御量となる。さらに、被制御手段が冷却手段の場合、冷却手段の駆動機構の駆動位置(冷却手段の位置に相当)、冷却手段による冷却媒体の供給等が制御量となる。
【0024】
しかしながら、金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた被制御手段の制御量を制御パターンとして一律に用いる場合(換言すれば、時間を基準として各被制御手段の制御量を設定した場合)、例えば、送出手段の時間応答性と、挟持手段の駆動機構の時間応答性との差異等に起因して、本来曲げ加工されるべき金属材の長手方向部位にズレが生じ、加工精度が低下する虞もある。
【0025】
従って、好ましくは、前記制御パターンは、金属材に関する経時的情報に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされており、検出した金属材に関する経時的情報と、前記制御パターンとに基づいて、前記被制御手段を制御する態様とされる。
【0026】
ここで、金属材に関する経時的情報とは、例えば、金属材の送り出し量や送り出し速度の他、金属材の曲げ加工の際に挟持手段に作用する荷重反力など、金属材の動きに関連して経時的に変化する情報を意味する。前記好ましい態様によれば、例えば、金属材の送り出し量に対応付けられた挟持手段の制御量を制御パターンとして用い、適宜の検出手段によって検出した金属材の送り出し量と、前記制御パターンとに基づいて(つまり、実際に検出した送り出し量に応じた適切な制御量に基づいて)、挟持手段を制御することになる。従って、前述のように、送出手段の時間応答性と、挟持手段の駆動機構の時間応答性との差異等があったとしても、本来曲げ加工されるべき金属材の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0027】
好ましくは、金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位、前記加熱手段近傍における金属材の温度、及び前記冷却手段近傍における金属材の温度の内、少なくとも1以上を測定し、前記測定値に基づいて、前記制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の被制御手段を制御する態様とされる。
【0028】
斯かる好ましい態様によれば、例えば、金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位を測定し、該測定値に基づいて、加熱手段についての制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、加熱手段を制御することになる。より具体的には、例えば、加熱手段近傍で測定した金属材の変位に基づいて、制御パターン(例えば、金属材の送り出し量に対応付けられた加熱手段の位置)を修正(例えば、金属材の変位が目標範囲内となるように、加熱手段の位置を変更)し、該修正後の制御パターンに基づいて、加熱手段の位置を制御することになる。例えば、加熱手段が金属材の長手方向に直交する断面を囲繞する加熱コイルであるときに、加熱コイルと金属材との芯ずれが小さくなるように金属材の変位の目標範囲を定めておけばよい。これにより、修正前の制御パターンでは、加熱コイルと金属材との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材の周方向に均一な加熱ができない場合であっても、修正後の制御パターンに基づいて加熱コイルの位置を制御すれば、加熱コイルと金属材との芯ずれが小さくなる結果、金属材の周方向に均一な加熱ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、加熱コイルと金属材との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合にも、前記好ましい態様によれば、加熱コイルと金属材の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン(金属材の送り出し量に対応付けられた加熱手段の位置)を修正することにより、所望の硬度ムラを発生させることができる点で有効である。
【0029】
また、上記好ましい態様によれば、例えば、加熱手段近傍における金属材の温度(加熱手段によって加熱された部位の温度、或いは前記部位に近接する部位の温度)を測定し、該測定値に基づいて、加熱手段についての制御パターン(例えば、金属材の送り出し量に対応付けられた加熱手段の加熱出力)を修正(例えば、測定温度が目標範囲内となるように、加熱手段の加熱出力を変更)し、該修正後の制御パターンに基づいて、加熱手段を制御することになる。これにより、設定温度(予測温度)ではなく実測温度に基づいた適切な加熱が可能となる結果、十分な硬度の熱間曲げ加工製品を得ることができる。冷却手段近傍における金属材の温度(冷却手段によって冷却された部位の温度、或いは前記部位に近接する部位の温度)を測定し、該測定値に基づいて、冷却手段についての制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、冷却手段を制御する場合も同様の作用効果を奏する。なお、制御パターンの修正は、現在熱間曲げ加工中の金属材に適用している制御パターンに対して実施することも可能であるが、現在熱間曲げ加工中の金属材について測定した変位等に基づいて、次回以降に熱間曲げ加工が施される金属材に提供される制御パターンに対して実施することも無論可能である。
【0030】
また、前記課題を解決するべく、本発明は、金属材をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段と、送り出された金属材を案内支持する支持手段と、金属材を局部的に加熱する加熱手段と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段と、金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段とが、金属材の長手方向に沿って配置された熱間曲げ加工装置を制御する装置であって、熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンを記憶し、前記記憶された制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の前記送出手段及び前記挟持手段を制御すると共に、前記支持手段、前記加熱手段及び前記冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴とする金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置としても提供される。
【0031】
前記制御パターンは、例えば、前記送出手段による金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とすることができる。
【0032】
あるいは、前記制御装置は、金属材に関する経時的情報を検出する検出手段を備え、前記記憶される制御パターンは、前記検出手段によって検出される金属材に関する経時的情報に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされており、前記検出手段によって検出した金属材に関する経時的情報と、前記制御パターンとに基づいて、前記被制御手段を制御する態様を採用することも可能である。
【0033】
また、好ましくは、前記制御装置は、金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位を測定する変位測定手段、前記加熱手段近傍における金属材の温度を測定する加熱温度測定手段、及び前記冷却手段近傍における金属材の温度を測定する冷却温度測定手段の内、少なくとも1以上の測定手段を備え、前記測定手段の測定値に基づいて、前記記憶された制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の被制御手段を制御する態様とされる。
【0034】
さらに、本発明は、上記の制御方法を用いて前記熱間曲げ加工装置を制御する工程を含むことを特徴とする熱間曲げ加工製品の製造方法、及び該製造方法で製造した熱間曲げ加工製品としても提供される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、挟持手段を用いて、加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与すると共に、熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置を構成する各手段を制御するため、従来のように残留応力に起因した変形や焼き付きが発生し難く、精度の良い熱間曲げ加工が可能である。また、いったん目標品質を得るための制御パターンを決定しさえすれば、該決定した制御パターンに基づいて熱間曲げ加工装置の各手段を制御するだけでよく、熟練者の勘や技能に頼る必要がないため、熱間曲げ加工の作業能率を高めることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る制御方法を適用する熱間曲げ加工装置、及び該制御方法を実施するための制御装置の全体構成を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、金属材1をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段3と、送り出された金属材1を案内支持する支持手段2と、金属材1を局部的に加熱する加熱手段5と、加熱された金属材1の部位を冷却する冷却手段6と、金属材1を挟持して前記加熱された金属材1の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段4とが、金属材の長手方向に沿って配置され、金属材1を間欠的に又は連続的に熱間曲げ加工するように構成されている。本実施形態では、金属材1を送り出す方向の上流側から、送出手段3、支持手段2、加熱手段5、冷却手段6、挟持手段4の順に配置されている。
【0037】
図1に示す金属材1は、断面形状が丸形とされた管であるが、熱間曲げ加工装置10によって熱間曲げ加工される対象はこれに限るものではなく、各種の断面形状を有する金属材に適用可能である。例えば、図1に示す丸形の他、矩形、台形、その他複雑な形状を有する閉断面材や、図2(a)に示すようなロールフォーミング等で製造された開断面材(チャンネル)、図2(b)に示すような押し出し加工で製造された異型断面材(チャンネル)、或いは各種の断面形状からなる棒材(丸棒、角棒、異型棒)等に適用することが可能である。ただし、適用される金属材1の断面形状に応じて、支持手段2や挟持手段4の形状を設計する必要がある。
【0038】
前述のように、本実施形態では、熱間曲げ加工を施す金属材1として丸形の管を用いているため、支持手段2としては、丸形の管を案内支持することができるように、2対の対向する支持ロールを採用している。しかしながら、支持手段2としては、これに限定されるものではなく、適用される金属材の断面形状に応じた支持ガイドを採用することも可能である。また、支持手段2として支持ロールを採用する場合であっても、本実施形態のように2対の支持ロールに限るものではなく、1対又は2対を超える複数対の支持ロールを採用することも可能である。
【0039】
なお、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、支持手段2の駆動機構として、金属材1の長手方向周りに支持手段2を回転させて回転位置θSXとする第2回転機構21を備えている。第2回転機構21は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の動力を支持手段2に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。斯かる第2回転機構21のより具体的な構成については、公知の各種回転機構を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。この第2回転機構21を駆動して金属材1の長手方向周りに支持手段2を回転させることにより、後述するように挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させなくても、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。また、挟持手段4を回転させながら支持手段2をこれより多く又は少なく回転させることによっても、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。
【0040】
本実施形態に係る送出手段3は、金属材1を長手方向に間欠的に又は連続的に押し出して、押し出し量(送り出し量)FXとする押出装置とされている。斯かる押出装置は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の回転動力を直線運動に変換するボールねじ等の機械要素から構成することが可能である。また、油圧シリンダーやエアシリンダー等のシリンダー装置を採用することも可能である。そして、ボールねじや、シリンダー装置のピストンロッド等によって金属材1の端部を押圧することにより、金属材1が長手方向に押し出されることになる。
【0041】
本実施形態に係る挟持手段4は、金属材1の長手方向に沿って回転可能な1対の対向するロールとされている。しかしながら、挟持手段4としては、これに限定されるものではなく、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールであって金属材1を挟持できる限りにおいて、適用される金属材1の断面形状等に応じた2対の対向するロールや3つ以上のロールを採用することも可能である。
【0042】
なお、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、挟持手段4の駆動機構として、金属材1の長手方向に略直交する平面内の一軸方向(本実施形態では左右方向)に沿って挟持手段4を移動させて位置KYとする第1シフト機構411、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向(本実施形態では上下方向)に沿って挟持手段4を移動させて位置KZとする第2シフト機構412、前記一軸方向周りに挟持手段4を傾斜させて回転位置θKYとする第1チルト機構413、及び前記他軸方向周りに挟持手段4を傾斜させて回転位置θKZとする第2チルト機構414の内、少なくとも1以上の機構を備えている。本実施形態に係る挟持手段4の駆動機構41は、好ましい構成として、これら第1シフト機構411、第2シフト機構412、第1チルト機構413及び第2チルト機構414の全てを備える構成とされている。各機構411〜414を適宜駆動することにより、挟持手段4は、金属材1を挟持した状態でシフト又はチルトすることになり、これにより、金属材1には加熱手段5によって加熱された部位を支点とする曲げモーメントが付与される。そして、駆動する各機構411〜414の組み合わせや駆動量を適宜選択することにより、金属材1の曲げ形状が多岐にわたり、曲げ方向が2次元的に異なる連続曲げの場合や、さらには曲げ方向が3次元的に異なる連続曲げの場合であっても、効率的に曲げ加工することが可能である。
【0043】
第1シフト機構411及び第2シフト機構412は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の回転動力を直線運動に変換して挟持手段4に伝達するボールねじ等の機械要素から構成することが可能である。また、第1チルト機構413及び第2チルト機構414は、例えば、前記と同様の駆動源や、該駆動源の動力を挟持手段4に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。これら各機構411〜414のより具体的な構成については、公知の各種機構を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。当然のことながら、例えば、挟持手段4に接続した汎用の多軸ロボットを挟持手段4の駆動機構として用いることも可能である。
【0044】
なお、挟持手段4の駆動機構として、金属材1の長手方向周りに挟持手段4を回転させて回転位置θKXとする第1回転機構を備えることも可能である。この第1回転機構も、第1チルト機構413及び第2チルト機構414と同様に、例えば、前記と同様の駆動源や、該駆動源の動力を挟持手段4に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。この第1回転機構を駆動して、挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させることにより、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。
【0045】
図3は、本実施形態に係る加熱手段5及び冷却手段6の概略構成を示す縦断面図である。図1又は図3に示すように、本実施形態に係る加熱手段5は、金属材1の長手方向に直交する断面を囲繞する中空の導電性材料からなる加熱コイル51を具備する。そして、加熱コイル51に高周波電流を通電することにより、金属材1が局部的に加熱されることになる。また、本実施形態に係る冷却手段6は、金属材1の長手方向に直交する断面を囲繞するように、加熱コイル51の内側に環状に配置された複数のノズル61を具備する。そして、ノズル61から金属材1に向けて冷却媒体611を供給(噴射)することにより、加熱手段5によって加熱された金属材1の部位が冷却されることになる。図3に示すように、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とが一体化されている。すなわち、ノズル61は、加熱コイル51を構成する導電性材料の内側の一部を穿孔することによって形成されており、加熱コイル51の中空部52に供給された冷却媒体611を金属材1に向けて噴射する構成とされている。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、加熱手段5と冷却手段6とを別体とすることも無論可能である。
【0046】
本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構として、金属材1の長手方向に略直交する平面内の一軸方向(本実施形態では左右方向)に沿って加熱手段5及び冷却手段6を移動させて、それぞれ位置HY、CYとする第3シフト機構521、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向(本実施形態では上下方向)に沿って加熱手段5及び冷却手段6を移動させて、それぞれ位置HZ、CZとする第4シフト機構522、前記一軸方向周りに加熱手段5及び冷却手段6を傾斜させて、それぞれ回転位置θHY、θCYとする第3チルト機構523、及び前記他軸方向周りに加熱手段5及び冷却手段6を傾斜させて、それぞれ回転位置θHZ、θCZとする第4チルト機構524の内、少なくとも1以上の機構を備えている。本実施形態に係る加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構52は、好ましい構成として、これら第3シフト機構521、第4シフト機構522、第3チルト機構523及び第4チルト機構524の全てを備える構成とされている。そして、各機構521〜524を適宜駆動することにより、挟持手段4の駆動と、加熱手段5及び冷却手段6の駆動とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0047】
第3シフト機構521及び第4シフト機構522は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の回転動力を直線運動に変換して加熱手段5及び冷却手段6に伝達するボールねじ等の機械要素から構成することが可能である。また、第3チルト機構523及び第4チルト機構524は、例えば、前記と同様の駆動源や、該駆動源の動力を加熱手段5及び冷却手段6に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。これら各機構521〜524のより具体的な構成については、公知の各種機構を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。当然のことながら、例えば、加熱手段5及び冷却手段6に接続した汎用の多軸ロボットを加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構として用いることも可能である。
【0048】
なお、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とが一体化されているため、両手段5、6を一体的に駆動する駆動機構52を採用して駆動機構を共用しているが、加熱手段5と冷却手段6とを別体とした場合には、それぞれに独立した駆動機構を設ければよい。
【0049】
また、熱間曲げ加工装置10は、加熱手段5の加熱出力を設定する加熱手段設定部53及び/又は冷却手段6による冷却媒体の供給を設定する冷却手段設定部62を備える。本実施形態では、加熱手段設定部53及び冷却手段設定部62の双方を備える構成とされている。加熱手段設定部53は、例えば、通電量可変の高周波電源等から構成され、加熱手段(加熱コイル)5への高周波電流の通電量を設定する(通電のオン/オフを含む)ことによって加熱出力を設定する構成とされる。また、冷却手段設定部62は、例えば、冷却手段6に冷却媒体611を供給する配管に設けられた流量調整弁や、環状に配置された各ノズル61の開閉弁から構成され、前記流量調整弁を調整することによってノズル61から供給される冷却媒体611の全体供給量(流量)を設定(供給のオン/オフを含む)したり、前記開閉弁により各ノズル61の開閉を調整することによって周方向の冷却媒体611の供給量(流量)分布を設定する構成とされる。そして、各設定部53、63を適宜制御することにより、挟持手段4の駆動と、加熱手段5の加熱出力及び冷却手段6による冷却媒体の供給とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0050】
なお、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、上述した構成の他、送出手段3と支持手段2との間に配置され、送り出し前の金属材1の長手方向一端部を把持して他端部を送出手段3に取り付けるためのクランプ7を備えている。そして、クランプ7の駆動機構として、金属材1の長手方向周りにクランプ7を回転させて回転位置θXとするクランプ回転機構71を備えている。クランプ回転機構71は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の動力をクランプ7に伝達する回転ギア等の機械要素から構成することが可能である。このクランプ回転機構71を駆動して、クランプ7を金属材1の長手方向周りに回転させることにより、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。
【0051】
また、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10は、必要に応じて、挟持手段4、加熱手段5及び冷却手段6を金属材1の長手方向に沿って移動させて、それぞれ位置KX、HX、CXとするシフト機構を備える構成とすることも可能である。斯かるシフト機構は、例えば、ACサーボモータ、油圧サーボモータ等の駆動源や、該駆動源の回転動力を直線運動に変換して挟持手段4、加熱手段5及び冷却手段6のそれぞれに伝達するボールねじ等の機械要素や汎用のロボットなどから構成することが可能である。
【0052】
以上に説明した構成を有する熱間曲げ加工装置10を構成する各手段は、制御装置20によって制御され、これにより金属材1に熱間曲げ加工が施される。基本的に、制御装置20は、送出手段3によって長手方向に送り出した金属材1を支持手段2で案内支持しながら、加熱手段5の配置箇所で局部的に金属材1を加熱し、挟持手段4によって前記加熱された金属材1の部位に曲げモーメントを付与し、その直後に冷却手段6によって金属材1の加熱された部位を冷却するように、熱間曲げ加工装置10を構成する各手段を制御する。
【0053】
ここで、制御装置20としては、所定の動作プログラムをインストールした制御用コンピュータを利用できる他、アナログ型のプログラム設定器等を利用することも可能である。そして、制御装置20は、熱間曲げ加工後の金属材1(熱間曲げ加工製品)が目標品質(形状、硬度、ミクロ組織等)となるように予め決定された制御パターンを記憶している。より具体的に説明すれば、予め種々の適当な制御パターンに基づいて、金属材1に熱間曲げ加工を施し、得られた熱間曲げ加工製品の形状、硬度を測定したり、ミクロ組織等を観察することにより、目標品質が得られる良好な制御パターンを選定し、これを制御装置20に記憶している。そして、制御装置20は、前記記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4を制御すると共に、支持手段2、加熱手段5及び冷却手段6の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴としている。以下、制御装置20の具体的構成について、複数の例を挙げて、より詳細に説明する。
【0054】
<第1構成例>
図4は、本発明の第1構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。図4に示すように、本構成例の制御装置20Aは、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4を制御する構成とされている。そして、本構成例において記憶される制御パターンは、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間tに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(送出手段3、挟持手段4)の制御量とされている。
【0055】
より具体的に説明すれば、本構成例の制御装置20Aには、下記(1)〜(5)の制御パターンが、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
(1)経過時間tに対応付けられた送出手段3の送り出し量FXsからなる制御パターン21A
(2)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(挟持手段4の左右方向位置に相当)KYsからなる制御パターン22A
(3)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2シフト機構412の駆動位置(挟持手段4の上下方向位置に相当)KZsからなる制御パターン23A
(4)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(挟持手段4の左右方向周りの回転位置に相当)θKYsからなる制御パターン24A
(5)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2チルト機構414の駆動位置(挟持手段4の上下方向周りの回転位置に相当)θKZsからなる制御パターン25A
なお、図4に示すFXs、KYs、KZs、θKYs、θKZsは、それぞれ図1に示すFX、KY、KZ、θKY、θKZの設定値を意味する。
【0056】
制御装置20は、金属材1の送り出し開始を示す適宜のトリガー信号を起点として、クロックを出力するクロック発生器201を具備する。そして、クロック発生器201から出力されるクロックの数(金属材1の送り出し開始からの経過時間tに相当)と、各制御パターン21A〜25Aとに応じて決定される制御量設定値FXs、KYs、KZs、θKYs、θKZsを各被制御手段に逐次出力するように構成されている。具体的には、送り出し量FXsは送出手段3に出力される。そして、送出手段3は、入力された送り出し量FXsに相当する金属材1の送り出し量となるように予め設定された駆動量だけ、駆動源であるACサーボモータ等を駆動する。なお、本構成例のクロック発生器201は、好ましい態様として、クロックレートが可変とされている。従って、例えば、制御パターン21Aが、経過時間t(クロック数)に比例する送り出し量FXsとされている場合、クロック発生器201のクロックレートを高くすると、単位時間(実時間)当たりに出力されるクロック数が増えるため、単位時間当たりの送り出し量FXsの変化(すなわち、送り出し速度)も大きくなる。逆に、クロックレートを低くすると、送り出し速度は小さくなる。つまり、上記好ましい態様によれば、クロック発生器201のクロックレートの設定を変更するだけで、金属材1の送り出し速度を容易に変更可能である。
【0057】
同様にして、駆動位置KYs、KZs、θKYs、θKZsは、それぞれ挟持手段4の第1シフト機構411、第2シフト機構412、第1チルト機構413、第2チルト機構414に出力される。そして、これら各機構411〜414は、各機構411〜414が前記入力された各駆動位置KYs、KZs、θKYs、θKZsとなるように予め設定された駆動量だけ、各機構411〜414の駆動源を駆動する。
【0058】
以上に説明した本構成例の制御装置20Aによれば、熱間曲げ加工後の金属材1が目標品質となるように予め決定された制御パターン21A〜25Aに基づいて、熱間曲げ加工装置10を構成する各手段(送出手段3、挟持手段4)を制御するため、精度の良い熱間曲げ加工が可能である。また、いったん目標品質を得るための制御パターン21A〜25Aを決定しさえすれば、該決定した制御パターン21A〜25Aに基づいて熱間曲げ加工装置10の各手段(送出手段3、挟持手段4)を制御するだけでよく、熟練者の勘や技能に頼る必要がないため、熱間曲げ加工の作業能率を高めることも可能である。
【0059】
なお、前述したように、送出手段3は、制御装置20から入力された制御量(送出手段3による金属材1の送り出し量)が得られるように、予め設定された駆動量だけ駆動源を駆動する。同様に、挟持手段4も、制御装置20から入力された制御量(挟持手段4の駆動機構41の駆動位置)が得られるように、予め設定された駆動量だけ駆動源を駆動する。これら駆動源の駆動制御方法としては、図13(a)に示すような、一般的な制御方法を採用することも可能である。すなわち、制御装置20から初めに入力された制御量に対応する駆動量がS1である場合には、停止状態から駆動速度V1となるまで加速し、該駆動速度V1で所定時間駆動した後に、減速して再び停止状態とする。そして、上記動作に対応するハッチング部分の面積が駆動量S1に等しくなるように、駆動速度V1及び動作時間T1を設定する。制御装置20から次に入力された制御量に対応する駆動量がS2である場合には、再び、停止状態から駆動速度V2となるまで加速し、該駆動速度V2で所定時間駆動した後に、減速して停止状態とする。そして、上記動作に対応するハッチング部分の面積が駆動量S2に等しくなるように、駆動速度V2及び動作時間T2を設定する。以下、同様の動作を繰り返す方法であり、複雑な曲げ製品を得ることができる。ただし、図13(a)に示す制御方法によれば、加速、定速、減速、停止を繰り返す動作となるため、高寸法精度が求められる製品に対しては、図14(a)に示すように、駆動位置精度が不十分となる場合もある。
【0060】
これに対し、本実施形態のように、送出手段3の駆動源や、挟持手段4の駆動機構41の駆動源として、駆動速度を任意に設定可能なACサーボモータ等を用いる場合には、図13(b)に示すような制御方法を採用することが可能である。すなわち、制御装置20から初めに入力された制御量に対応する駆動量がS1’である場合には、停止状態から駆動速度V1’となるまで加速し、該駆動速度V1’で所定時間駆動する。そして、上記動作に対応するハッチング部分の面積が駆動量S1’に等しくなるように、駆動速度V1’及び動作時間T1’を設定する。制御装置20から次に入力された制御量に対応する駆動量がS2’である場合には、駆動速度V1’から駆動速度V2’となるまで加速(又は減速)し、該駆動速度V2’で所定時間駆動する。そして、上記動作に対応するハッチング部分の面積が駆動量S2’に等しくなるように、駆動速度V2’及び動作時間T2’を設定する。以下、同様の動作を繰り返す方法である。図13(b)に示す方法によれば、図14(b)に示すように、駆動位置を精度良く近似できるため、高い駆動位置精度を確保することができる。
【0061】
また、本構成例では、金属材1の曲げ方向が3次元的に異なる曲げ加工を施すことができるように、挟持手段4の第1シフト機構411、第2シフト機構412、第1チルト機構413、第2チルト機構414の全てを制御する態様について説明したが、曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工しか施さない場合には、何れかの機構の制御を省略する(或いは、機構自体を設けない構成とする)ことが可能である。また、金属材1の曲げ半径が大きい場合には、第1チルト機構413、第2チルト機構414の制御を省略する(或いは、第1チルト機構413、第2チルト機構414自体を設けない構成とする)ことも可能である。
【0062】
さらに、熱間曲げ加工装置10が、挟持手段4を金属材1の長手方向に沿って移動させて位置KXとするシフト機構を備える構成である場合、前述したのと同様に、制御装置20Aに、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の前記シフト機構の駆動位置(挟持手段4の金属材1の長手方向に沿った位置に相当)からなる制御パターンを予め記憶させ、制御装置20Aが、前記記憶された制御パターンに基づいて挟持手段4を制御する構成とすることも可能である。
【0063】
<第2構成例>
図5は、本発明の第2構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図5において、図4に示す第1構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図5に示すように、本構成例の制御装置20Bも、第1構成例と同様に、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4を制御する構成とされている。ただし、制御装置20Bが金属材1に関する経時的情報(本構成例では、金属材1の送り出し量FXiであり、図1に示すFXの検出値に相当する)を検出する送出量検出手段202を備える点で相違する。また、制御装置20Bに記憶される制御パターン21B〜25Bの内、送出手段3についての制御パターン21Bを除き、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(挟持手段4)の制御量とされている点でも相違する。さらに、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22B〜25Bとに基づいて、被制御手段(挟持手段4)を制御する点でも相違する。なお、送出手段3についての制御パターン21Bは、第1構成例と同様に、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間t(実際には、クロック発生器201から出力されるクロックの数)に対応付けられた送出手段3の制御量とされており、送出手段3は、この制御パターン21Bに基づいて制御される。
【0064】
送出量検出手段202としては、例えば、送出手段3の機械要素であるボールねじやピストンロッド等の駆動方向の変位を変位計で測定して、送り出し量FXiを直接的に検出する構成や、送出手段3の駆動源であるACサーボモータ等の回転量をエンコーダで検出し、それをボールねじ等の駆動方向の変位に換算して、送り出し量FXiを間接的に検出する構成を採用することが可能である。
【0065】
制御パターン22B〜25Bは、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiを変数とする関数形式や、送り出し量FXiと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。制御パターン21Bは、第1構成例と同様に、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
【0066】
その他、送出手段3の駆動源や、挟持手段4の駆動機構41の駆動源を駆動制御する方法として、前述した図13(a)や(b)に示す方法を採用できる点は、第1構成例と同様である。ただし、駆動機構41の駆動源を駆動制御する方法については、本構成例では、制御量が金属材1の送り出し量FXiに対応付けられているため、図13(a)、(b)に示すグラフの横軸は金属材1の送り出し量となり、縦軸は単位送り出し量当たりの駆動量となる。また、曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工しか施さない場合には、挟持手段4の何れかの機構の制御を省略する(或いは、機構自体を設けない構成とする)ことが可能である点、金属材1の曲げ半径が大きい場合には、挟持手段4の第1チルト機構413、第2チルト機構414の制御を省略する(或いは、第1チルト機構413、第2チルト機構414自体を設けない構成とする)ことも可能である点も、第1構成例と同様である。
【0067】
また、熱間曲げ加工装置10が、挟持手段4を金属材1の長手方向に沿って移動させて位置KXとするシフト機構を備える構成である場合、前述した制御パターン22B〜25Bと同様に、制御装置20Bに、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた挟持手段4の前記シフト機構の駆動位置(挟持手段4の金属材1の長手方向に沿った位置に相当)からなる制御パターンを予め記憶させ、制御装置20Bが、前記記憶された制御パターンに基づいて挟持手段4を制御する構成とすることも可能である。
【0068】
以上に説明した本構成例の制御装置20Bによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Bによれば、第1構成例の制御装置20Aと異なり、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4の制御量を制御パターン22B〜25Bとして用い、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22B〜25Bとに基づいて挟持手段4を制御することになる。従って、送出手段3の時間応答性と、挟持手段4の駆動機構の時間応答性との差異等があったとしても、第1構成例の制御装置20Aと異なり、本来曲げ加工されるべき金属材1の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0069】
<第3構成例>
図6は、本発明の第3構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図6において、図4に示す第1構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図6に示すように、本構成例の制御装置20Cは、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、支持手段2、クランプ7、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。そして、本構成例において記憶される制御パターンは、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間tに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(送出手段3、挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている。
【0070】
より具体的に説明すれば、本構成例の制御装置20Cには、下記(1)〜(6)の制御パターンが、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
(1)経過時間tに対応付けられた送出手段3の送り出し量FXsからなる制御パターン21C
(2)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の駆動機構41の駆動位置からなる制御パターン22C(経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(挟持手段4の左右方向位置に相当)KYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2シフト機構412の駆動位置(挟持手段4の上下方向位置に相当)KZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(挟持手段4の左右方向周りの回転位置に相当)θKYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2チルト機構414の駆動位置(挟持手段4の上下方向周りの回転位置に相当)θKZsからなる制御パターン)
(3)経過時間tに対応付けられた支持手段2の駆動機構21の駆動位置(支持手段2の金属材1の長手方向周りの回転位置に相当)θSXsからなる制御パターン23C
(4)経過時間tに対応付けられたクランプ7の駆動機構71の駆動位置(クランプ7の金属材1の長手方向周りの回転位置に相当)θXsからなる制御パターン24C
(5)経過時間tに対応付けられた加熱手段5の駆動機構52の駆動位置からなる制御パターン25C(経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第3シフト機構521の駆動位置(加熱手段5の左右方向位置に相当)HYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第4シフト機構522の駆動位置(加熱手段5の上下方向位置に相当)HZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第3チルト機構523の駆動位置(加熱手段5の左右方向周りの回転位置に相当)θHYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第4チルト機構524の駆動位置(加熱手段5の上下方向周りの回転位置に相当)θHZsからなる制御パターン)
(6)経過時間tに対応付けられた冷却手段6の駆動機構52の駆動位置からなる制御パターン26C(経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第3シフト機構521の駆動位置(冷却手段6の左右方向位置に相当)CYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第4シフト機構522の駆動位置(冷却手段6の上下方向位置に相当)CZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第3チルト機構523の駆動位置(冷却手段6の左右方向周りの回転位置に相当)θCYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第4チルト機構524の駆動位置(冷却手段6の上下方向周りの回転位置に相当)θCZsからなる制御パターン)
【0071】
なお、図6に示すθSXs、θXs、HYs、HZs、θHYs、θHZs、CYs、CZs、θCYs、θCZsは、それぞれ図1に示すθSX、θX、HY、HZ、θHY、θHZ、CY、CZ、θCY、θCZの設定値を意味する。また、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とが一体化され、両手段5、6を一体的に駆動する駆動機構52を採用しているため、HYs=CYs、HZs=CZs、θHYs=θCYs、θHZs=θCZsとなる。しかしながら、加熱手段5と冷却手段6とを別体とし、それぞれに独立した駆動機構を設ける場合には、無論、HYs≠CYs、HZs≠CZs、θHYs≠θCYs、θHZs≠θCZsとすることが可能である。
【0072】
制御装置20Cは、クロック発生器201から出力されるクロックの数(金属材1の送り出し開始からの経過時間tに相当)と、各制御パターン21C〜26Cとに応じて決定される制御量設定値FXs、KYs、KZs、θKYs、θKZs、θSXs、θXs、HYs、HZs、θHYs、θHZs、CYs、CZs、θCYs、θCZsを各被制御手段に逐次出力するように構成されている。ただし、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とを一体的に駆動する駆動機構52を採用しているため、実際にはCYs、CZs、θCYs、θCZsは出力されない。しかしながら、加熱手段5と冷却手段6とを別体とし、それぞれを別個の駆動機構で駆動する場合には、冷却手段6の駆動機構にCYs、CZs、θCYs、θCZsが出力されることになる。
【0073】
具体的には、駆動位置θSXsは、支持手段2の駆動機構(第2回転機構)21に出力され、第2回転機構21は、該第2回転機構21が前記入力された駆動位置(回転位置)θSXsとなるように予め設定された駆動量だけ、第2回転機構21の駆動源を駆動する。また、駆動位置θXsは、クランプ7の駆動機構(クランプ回転機構)71に出力され、クランプ回転機構71は、該クランプ回転機構71が前記入力された駆動位置(回転位置)θXsとなるように予め設定された駆動量だけ、クランプ回転機構71の駆動源を駆動する。本実施形態では、クランプ回転機構71を第2回転機構21と同期駆動するため、θXs=θSXsとされている。さらに、駆動位置HYs(=CYs)、HZs(=CZs)、θHYs(=θCYs)、θHZs(=θCZs)は、それぞれ加熱手段5(及び冷却手段6)の第3シフト機構521、第4シフト機構522、第3チルト機構523、第4チルト機構524に出力される。そして、これら各機構521〜524は、各機構521〜524が前記入力された各駆動位置HYs、HZs、θHYs、θHZsとなるように予め設定された駆動量だけ、各機構521〜524の駆動源を駆動する。
【0074】
なお、送出手段3による金属材1の送り出し量FXs、及び挟持手段4の駆動機構41の駆動位置KYs、KZs、θKYs、θKZsについては、第1構成例と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
その他、送出手段3の駆動源や、挟持手段4の駆動機構41の駆動源を駆動制御する方法として、前述した図13(a)や(b)に示す方法を採用できる点は、第1構成例と同様である。本構成例では、支持手段2の駆動機構21、クランプ7の駆動機構71、加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構52についても、前述した図13(a)や(b)に示す方法を採用して駆動源を駆動制御することが可能である。また、曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工しか施さない場合には、挟持手段4の何れかの機構の制御を省略する(或いは、機構自体を設けない構成とする)ことが可能である点、金属材1の曲げ半径が大きい場合には、挟持手段4の第1チルト機構413、第2チルト機構414の制御を省略する(或いは、第1チルト機構413、第2チルト機構414自体を設けない構成とする)ことも可能である点も、第1構成例と同様である。
【0076】
また、熱間曲げ加工装置10が、挟持手段4を金属材1の長手方向に沿って移動させて位置KXとするシフト機構を備える構成である場合、第1構成例と同様に、制御装置20Cに、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の前記シフト機構の駆動位置(挟持手段4の金属材1の長手方向に沿った位置に相当)からなる制御パターンを予め記憶させ、制御装置20Cが、前記記憶された制御パターンに基づいて挟持手段4を制御する構成とすることも可能である。熱間曲げ加工装置10が、加熱手段5、冷却手段6を金属材1の長手方向に沿って移動させて、それぞれ位置HX、CXとするシフト機構(本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とが一体化されているため、HX=CXであり、両手段5、6を一体的に駆動するシフト機構とされる)を備える構成である場合も、同様の構成とすることが可能である。
【0077】
以上に説明した本構成例の制御装置20Cによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Cによれば、挟持手段4の駆動と、加熱手段5及び冷却手段6の駆動とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。また、支持手段2の駆動機構21を駆動して金属材1の長手方向周りに支持手段2を回転させることにより、さらにはクランプ7の駆動機構71を支持手段2の駆動機構21と同期駆動(θXs=θSXs)してクランプ7を回転させることにより、挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させなくても、金属材1にねじり変形を付与することが可能である。
【0078】
なお、金属材1へのねじり変形の付与は、本構成例のように、挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させることなく、その回転位置を固定する一方、支持手段2及びクランプ7を金属材1の長手方向周りに回転させる制御によって行える他、下記の(1)〜(3)の制御によって行うことも可能である。
(1)支持手段2及びクランプ7を金属材1の長手方向周りに回転させることなく、その回転位置を固定する一方、挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させて回転位置θKXsとする。
(2)挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させることなく、その回転位置を固定する一方、支持手段2を金属材1の長手方向周りに回転させて回転位置θSXsとする。この際、クランプ7による金属材1の把持を解除し、クランプ7に対して金属材1を長手方向周りに自由に回転し得る状態(アイドル状態)とする。
(3)挟持手段4を金属材1の長手方向周りに回転させて回転位置θKXsとする一方、支持手段2及びクランプ7を金属材1の長手方向周りに同期回転させて回転位置θSXs(=θXs)とする。
【0079】
<第4構成例>
図7は、本発明の第4構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図7において、図6に示す第3構成例や図5に示す第2構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図7に示すように、本構成例の制御装置20Dも、第3構成例と同様に、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、支持手段2、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。ただし、制御装置20Dが金属材1に関する経時的情報(本構成例では、金属材1の送り出し量FXiであり、図1に示すFXの検出値に相当する)を検出する送出量検出手段202を備える点で相違する。また、制御装置20Dに記憶される制御パターン21D〜26Dの内、送出手段3についての制御パターン21Dを除き、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている点でも相違する。さらに、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22D〜26Dとに基づいて、被制御手段(挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6)を制御する点でも相違する。なお、送出手段3についての制御パターン21Dは、第3構成例と同様に、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間t(実際には、クロック発生器201から出力されるクロックの数)に対応付けられた送出手段3の制御量とされており、送出手段3は、この制御パターン21Dに基づいて制御される。すなわち、本構成例の制御装置20Dと第3構成例の制御装置20Cとの関係は、第2構成例の制御装置20Bと第1構成例の制御装置20Aとの関係と同様である。従って、本構成例の制御装置20Dについては、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0080】
以上に説明した本構成例の制御装置20Dによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Dによれば、第3構成例の制御装置20Cと異なり、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6の制御量を制御パターン22D〜26Dとして用い、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22D〜26Dとに基づいて挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6を制御することになる。従って、送出手段3の時間応答性と、挟持手段4、支持手段2、クランプ7、加熱手段5、冷却手段6の駆動機構の時間応答性との差異等があったとしても、第3構成例の制御装置20Cと異なり、本来曲げ加工されるべき金属材1の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0081】
<第5構成例>
図8は、本発明の第5構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図8において、図4に示す第1構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図8に示すように、本構成例の制御装置20Eは、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。そして、本構成例において記憶される制御パターンは、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間tに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(送出手段3、挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている。
【0082】
より具体的に説明すれば、本構成例の制御装置20Eには、下記(1)〜(4)の制御パターンが、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
(1)経過時間tに対応付けられた送出手段3の送り出し量FXsからなる制御パターン21E
(2)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の駆動機構41の駆動位置からなる制御パターン22E(経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(挟持手段4の左右方向位置に相当)KYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2シフト機構412の駆動位置(挟持手段4の上下方向位置に相当)KZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(挟持手段4の左右方向周りの回転位置に相当)θKYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2チルト機構414の駆動位置(挟持手段4の上下方向周りの回転位置に相当)θKZsからなる制御パターン)
(3)経過時間tに対応付けられた加熱手段5の加熱手段設定部53による加熱出力設定値(例えば、加熱手段5への高周波電流の通電量に相当)HPsからなる制御パターン23E
(4)経過時間tに対応付けられた冷却手段6の冷却手段設定部62による冷却媒体611の供給設定値(例えば、冷却手段6のノズル61から供給される冷却媒体611の全体供給量(流量)に相当)CPsからなる制御パターン24E
なお、本構成例では、冷却媒体611の全体供給量を設定する場合について例示しているが、冷却手段6の各ノズル61の開閉を調整することによって周方向の冷却媒体611の供給量(流量)分布を設定する場合には、各ノズル61に対応する複数の制御パターンを記憶しておけばよい。
【0083】
制御装置20Eは、クロック発生器201から出力されるクロックの数(金属材1の送り出し開始からの経過時間tに相当)と、各制御パターン21E〜24Eとに応じて決定される制御量設定値FXs、KYs、KZs、θKYs、θKZs、HPs、CPsを各被制御手段に逐次出力するように構成されている。
【0084】
具体的には、加熱出力設定値HPsは、加熱手段5の加熱手段設定部53に出力され、加熱手段設定部53は、加熱手段5が前記入力された加熱出力設定値HPsに相当する加熱出力(高周波電流の通電量)を示すように、加熱手段設定部53の高周波電源等を制御する。また、冷却媒体の供給設定値CPsは、冷却手段6の冷却手段設定部62に出力され、冷却手段設定部62は、冷却手段6が前記入力された供給設定値CPsに相当する冷却媒体の供給(全体供給量)を示すように、冷却手段設定部62の流量調整弁等を制御する。
【0085】
なお、送出手段3による金属材1の送り出し量FXs、及び挟持手段4の駆動機構41の駆動位置KYs、KZs、θKYs、θKZsについては、第1構成例及び第3構成例と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
その他、送出手段3の駆動源や、挟持手段4の駆動機構41の駆動源を駆動制御する方法として、前述した図13(a)や(b)に示す方法を採用できる点は、第1構成例及び第3構成例と同様である。また、曲げ方向が2次元的に異なる曲げ加工しか施さない場合には、挟持手段4の何れかの機構の制御を省略する(或いは、機構自体を設けない構成とする)ことが可能である点、金属材1の曲げ半径が大きい場合には、挟持手段4の第1チルト機構413、第2チルト機構414の制御を省略する(或いは、第1チルト機構413、第2チルト機構414自体を設けない構成とする)ことも可能である点も、第1構成例及び第3構成例と同様である。
【0087】
また、熱間曲げ加工装置10が、挟持手段4を金属材1の長手方向に沿って移動させて位置KXとするシフト機構を備える構成である場合、第1構成例と同様に、制御装置20Eに、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の前記シフト機構の駆動位置(挟持手段4の金属材1の長手方向に沿った位置に相当)からなる制御パターンを予め記憶させ、制御装置20Eが、前記記憶された制御パターンに基づいて挟持手段4を制御する構成とすることも可能である。
【0088】
以上に説明した本構成例の制御装置20Eによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Eによれば、挟持手段4の駆動と、加熱手段5の加熱出力及び冷却手段6による冷却媒体の供給とを同調させることができ、より一層精度の良い曲げ加工が可能になる。
【0089】
<第6構成例>
図9は、本発明の第6構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図9において、図8に示す第5構成例や図7に示す第4構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図9に示すように、本構成例の制御装置20Fも、第5構成例と同様に、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、支持手段2、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。ただし、制御装置20Fが金属材1に関する経時的情報(本構成例では、金属材1の送り出し量FXiであり、図1に示すFXの検出値に相当する)を検出する送出量検出手段202を備える点で相違する。また、制御装置20Fに記憶される制御パターン21F〜24Fの内、送出手段3についての制御パターン21Fを除き、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている点でも相違する。さらに、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22F〜24Fとに基づいて、被制御手段(挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)を制御する点でも相違する。なお、送出手段3についての制御パターン21Fは、第5構成例と同様に、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間t(実際には、クロック発生器201から出力されるクロックの数)に対応付けられた送出手段3の制御量とされており、送出手段3は、この制御パターン21Fに基づいて制御される。すなわち、本構成例の制御装置20Fと第5構成例の制御装置20Eとの関係は、第2構成例の制御装置20Bと第1構成例の制御装置20Aとの関係や、第4構成例の制御装置20Dと第3構成例の制御装置20Cとの関係と同様である。従って、本構成例の制御装置20Fについては、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0090】
以上に説明した本構成例の制御装置20Fによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Fによれば、第5構成例の制御装置20Eと異なり、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6の制御量を制御パターン22F〜24Fとして用い、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22F〜24Fとに基づいて挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6を制御することになる。従って、送出手段3の時間応答性と、挟持手段4の駆動機構や、加熱手段5、冷却手段6の設定部の時間応答性との差異等があったとしても、第5構成例の制御装置20Eと異なり、本来曲げ加工されるべき金属材1の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0091】
<第7構成例>
図10は、本発明の第7構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図10において、図6に示す第3構成例や図8に示す第5構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図10に示すように、本構成例の制御装置20Gは、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。そして、本構成例において記憶される制御パターンは、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間tに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(送出手段3、挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている。
【0092】
より具体的に説明すれば、本構成例の制御装置20Gには、下記(1)〜(6)の制御パターンが、経過時間t(実際にはクロック数)を変数とする関数形式や、経過時間tと制御量とが関連付けられたテーブル形式として記憶されている。
(1)経過時間tに対応付けられた送出手段3の送り出し量FXsからなる制御パターン21G
(2)経過時間tに対応付けられた挟持手段4の駆動機構41の駆動位置からなる制御パターン22G(経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(挟持手段4の左右方向位置に相当)KYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2シフト機構412の駆動位置(挟持手段4の上下方向位置に相当)KZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(挟持手段4の左右方向周りの回転位置に相当)θKYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた挟持手段4の第2チルト機構414の駆動位置(挟持手段4の上下方向周りの回転位置に相当)θKZsからなる制御パターン)
(3)経過時間tに対応付けられた加熱手段5の駆動機構52の駆動位置からなる制御パターン23G(経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第3シフト機構521の駆動位置(加熱手段5の左右方向位置に相当)HYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第4シフト機構522の駆動位置(加熱手段5の上下方向位置に相当)HZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第3チルト機構523の駆動位置(加熱手段5の左右方向周りの回転位置に相当)θHYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた加熱手段5の第4チルト機構524の駆動位置(加熱手段5の上下方向周りの回転位置に相当)θHZsからなる制御パターン)
(4)経過時間tに対応付けられた加熱手段5の加熱手段設定部53による加熱出力設定値(加熱手段5への高周波電流の通電量に相当)HPsからなる制御パターン24G
(5)経過時間tに対応付けられた冷却手段6の駆動機構52の駆動位置からなる制御パターン25G(経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第3シフト機構521の駆動位置(冷却手段6の左右方向位置に相当)CYsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第4シフト機構522の駆動位置(冷却手段6の上下方向位置に相当)CZsからなる制御パターン、経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第3チルト機構523の駆動位置(冷却手段6の左右方向周りの回転位置に相当)θCYsからなる制御パターン、及び経過時間tに対応付けられた冷却手段6の第4チルト機構524の駆動位置(冷却手段6の上下方向周りの回転位置に相当)θCZsからなる制御パターン)
(6)経過時間tに対応付けられた冷却手段6の冷却手段設定部62による冷却媒体の供給設定値(冷却手段6のノズル61から供給される冷却媒体611の全体供給量(流量)に相当)CPsからなる制御パターン26G
なお、図10では、制御パターン26Gは1つの制御パターンからなり、冷却媒体611の全体供給量を設定する場合について図示しているが、冷却手段6の各ノズル61の開閉を調整することによって周方向の冷却媒体611の供給量(流量)分布を設定する場合には、各ノズル61に対応する複数の制御パターンを記憶しておけばよい。
【0093】
本構成例の制御装置20Gは、金属材1の長手方向に略直交する平面内における金属材1の変位を測定する変位測定手段203、加熱手段5近傍における金属材1の温度(加熱手段5によって加熱された部位の温度、或いは前記部位に近接する部位の温度)を測定する加熱温度測定手段204、及び冷却手段6近傍における金属材1の温度(冷却手段6によって冷却された部位の温度、或いは前記部位に近接する部位の温度)を測定する冷却温度測定手段205の内、少なくとも1以上の測定手段を備えることを特徴としている。本構成例では、好ましい態様として、変位測定手段203、加熱温度測定手段204及び冷却温度測定手段205の全てを備える構成とされている。そして、本構成例の制御装置20Gは、上記測定手段203〜205の測定値に基づいて、記憶された制御パターン21G〜26Gの内、制御パターン23G〜26Gを修正し、該修正後の制御パターン23G〜26Gに基づいて、熱間曲げ加工装置10の被制御手段(加熱手段5、冷却手段6)を制御することを特徴としている。なお、制御パターン21G、22Gについては、測定手段203〜205の測定値に基づいて修正することなく、予め記憶された状態のままで用いられる。
【0094】
なお、本構成例の制御装置20Gは、測定手段203〜205の測定値に基づいて、記憶された制御パターン23G〜26Gを修正する点を除き、第3構成例の制御装置20Cや第5構成例の20Eと略同様の動作となるため、以下では、主として上記修正動作について説明する。
【0095】
変位測定手段203としては、例えば、超音波式、渦流式、光学式等の各種非接触式の変位計が好適に用いられる。また、加熱温度測定手段204、冷却温度測定手段205としては、放射温度計等の非接触式温度計が好適に用いられる。以下、変位測定手段203の測定値に基づく制御パターンの修正、加熱温度測定手段204の測定値に基づく制御パターンの修正、冷却温度測定手段205の測定値に基づく制御パターンの修正について、順に説明する。
【0096】
<変位測定手段203の測定値に基づく制御パターンの修正>
図10は、変位測定手段203による金属材1の変位測定値に基づいて、制御パターン23G、25G及び26Gを修正する例を示している。より具体的には、変位測定手段203を加熱手段5近傍に配置し、該変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて、制御パターン23Gの内、加熱手段5の第3シフト機構521の駆動位置HYsからなる制御パターン、加熱手段5の第4シフト機構522の駆動位置HZsからなる制御パターンを修正(例えば、金属材1の変位が目標範囲内となるように、駆動位置HYs、HZsを変更)し、該修正後の制御パターン23Gに基づいて、加熱手段5の駆動機構52を制御する構成とされている。前述のように、本実施形態に係る加熱手段5は、金属材1の長手方向に直交する断面を囲繞する加熱コイルであるため、加熱コイルと金属材1との芯ずれが小さくなるように金属材1の変位の目標範囲を定めておけばよい。これにより、修正前の制御パターン23Gでは、加熱コイルと金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な加熱ができない場合であっても、修正後の制御パターン23Gに基づいて加熱コイルの位置を制御すれば、加熱コイルと金属材1との芯ずれが小さくなる結果、金属材1の周方向に均一な加熱ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、加熱コイルと金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、加熱コイルと金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン23Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0097】
また、制御装置20Gは、変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて、制御パターン25Gの内、冷却手段6の第3シフト機構521の駆動位置CYsからなる制御パターン、冷却手段6の第4シフト機構522の駆動位置CZsからなる制御パターンを修正(例えば、金属材1の変位が目標範囲内となるように、駆動位置CYs、CZsを変更)し、該修正後の制御パターン25Gに基づいて、冷却手段6の駆動機構52を制御する構成とされている。ただし、前述のように、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とを一体的に駆動する駆動機構52を採用しているため、HYs=CYs、HZs=CZsであり、実際には修正後のCYs、CZsは駆動機構52に出力されない。しかしながら、加熱手段5と冷却手段6とを別体とし、それぞれを別個の駆動機構で駆動する場合には、冷却手段6の駆動機構に修正後のCYs、CZsが出力されることになる。これにより、修正前の制御パターン25Gでは、冷却手段6と金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な冷却ができない場合であっても、修正後の制御パターン25Gに基づいて冷却手段6の位置を制御すれば、冷却手段6と金属材1との芯ずれが小さくなる結果、金属材1の周方向に均一な冷却ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、冷却手段6と金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、冷却手段6と金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン25Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0098】
さらに、制御装置20Gは、変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて、制御パターン26Gを修正(金属材1の変位に応じて、冷却媒体611の供給設定値CPsを変更)し、該修正後の制御パターン26Gに基づいて、冷却手段設定部62を制御する構成とされている。より具体的には、変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて制御パターン26Gを修正する場合、制御パターン26Gとしては、各ノズル61から供給する冷却媒体611の供給量からなる複数の制御パターンが記憶される。そして、変位測定手段203で測定した金属材1の変位に基づいて、冷却手段6と金属材1との間の芯ずれを検知し、金属材1から離れたノズル61からの冷却媒体611の供給量が増加するように該ノズル61についての制御パターンを修正する一方、金属材1に近いノズル61からの冷却媒体611の供給量が減少するように該ノズル61についての制御パターンを修正し、該修正後の制御パターン26Gに基づいて、冷却手段設定部62を制御する構成とされる。これにより、修正前の制御パターン26Gでは、加熱コイルと金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な冷却ができない場合であっても、修正後の制御パターン26Gに基づいて周方向の冷却媒体611の供給量分布を設定すれば、金属材1の周方向に均一な冷却ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、加熱コイルと金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、加熱コイルと金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン26Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0099】
<加熱温度測定手段204の測定値に基づく制御パターンの修正>
図10は、加熱温度測定手段204による加熱手段5近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、制御パターン23G及び24Gを修正する例を示している。より具体的には、制御パターン23Gを修正する場合、加熱温度測定手段204は、金属材1の周方向に沿った複数点の温度を測定できるように、金属材1の周方向に沿って複数の放射温度計等を配置した構成とされる。そして、加熱温度測定手段204によって測定した各点の温度測定値に基づいて、制御パターン23Gの内、加熱手段5の第3シフト機構521の駆動位置HYsからなる制御パターン、加熱手段5の第4シフト機構522の駆動位置HZsからなる制御パターンを修正(例えば、各点の測定温度が略同等となるように、駆動位置HYs、HZsを変更)し、該修正後の制御パターン23Gに基づいて、加熱手段5の駆動機構52を制御する構成とされている。これにより、修正前の制御パターン23Gでは、加熱コイルと金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な加熱ができない場合であっても、修正後の制御パターン23Gに基づいて加熱コイルの位置を制御すれば、加熱コイルと金属材1との芯ずれが小さくなる結果、金属材1の周方向に均一な加熱ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、加熱コイルと金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、加熱コイルと金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン23Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0100】
また、制御装置20Gは、加熱温度測定手段204による加熱手段5近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、制御パターン24Gを修正(例えば、金属材1の温度測定値が目標範囲内となるように、加熱出力設定値HPsを変更)し、該修正後の制御パターン24Gに基づいて、加熱手段設定部53を制御する構成とされている。これにより、設定温度(予測温度)ではなく実測温度に基づいた適切な加熱が可能となる結果、十分な硬度の熱間曲げ加工製品を得ることができる。
【0101】
なお、図10には示していないが、加熱温度測定手段204による加熱手段5近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、金属材1の送り出し速度を制御する(例えば、金属材1の温度測定値が目標値よりも小さければ送り出し速度を小さくし、目標値よりも大きければ送り出し速度を大きくする等)構成を採用することも可能である。具体的には、加熱温度測定手段204による金属材1の温度測定値に基づいて、クロック発生器201のクロックレートの設定を変更し、これにより金属材1の送り出し速度を制御すればよい。
【0102】
<冷却温度測定手段205の測定値に基づく制御パターンの修正>
図10は、冷却温度測定手段205による冷却手段6近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、制御パターン25G及び26Gを修正する例を示している。より具体的には、制御パターン25Gを修正する場合、冷却温度測定手段205は、金属材1の周方向に沿った複数点の温度を測定できるように、金属材1の周方向に沿って複数の放射温度計等を配置した構成とされる。そして、冷却温度測定手段205によって測定した各点の温度測定値に基づいて、制御パターン25Gの内、冷却手段6の第3シフト機構521の駆動位置CYsからなる制御パターン、冷却手段6の第4シフト機構522の駆動位置CZsからなる制御パターンを修正(例えば、各点の測定温度が略同等となるように、駆動位置CYs、CZsを変更)し、該修正後の制御パターン23Gに基づいて、冷却手段6の駆動機構52を制御する構成とされている。ただし、前述のように、本実施形態では、加熱手段5と冷却手段6とを一体的に駆動する駆動機構52を採用しているため、HYs=CYs、HZs=CZsであり、実際には修正後のCYs、CZsは駆動機構52に出力されない。しかしながら、加熱手段5と冷却手段6とを別体とし、それぞれを別個の駆動機構で駆動する場合には、冷却手段6の駆動機構に修正後のCYs、CZsが出力されることになる。これにより、修正前の制御パターン25Gでは、冷却手段6と金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な冷却ができない場合であっても、修正後の制御パターン25Gに基づいて冷却手段6の位置を制御すれば、冷却手段6と金属材1との芯ずれが小さくなる結果、金属材1の周方向に均一な冷却ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、冷却手段6と金属材1との間に故意に芯ずれを生じさせて硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、冷却手段6と金属材1の芯ずれ量が所望の値となるように制御パターン25Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0103】
また、制御装置20Gは、冷却温度測定手段205による冷却手段6近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、制御パターン26Gを修正(例えば、金属材1の温度測定値が目標範囲内となるように、冷却媒体611の供給設定値CPsを変更)し、該修正後の制御パターン26Gに基づいて、冷却手段設定部62を制御する構成とされている。これにより、設定温度(予測温度)ではなく実測温度に基づいた適切な冷却が可能となる結果、十分な硬度の熱間曲げ加工製品を得ることができる。
【0104】
さらに、制御パターン26Gとして、各ノズル61から供給する冷却媒体611の供給量からなる複数の制御パターンが記憶される場合、冷却温度測定手段205は、金属材1の周方向に沿った複数点の温度を測定できるように、金属材1の周方向に沿って複数の放射温度計等を配置した構成とされる。そして、冷却温度測定手段205によって測定した各点の温度測定値に基づいて、冷却手段6と金属材1との間の芯ずれを検知し、金属材1から離れたノズル61からの冷却媒体611の供給量が増加するように該ノズル61についての制御パターンを修正する一方、金属材1に近いノズル61からの冷却媒体611の供給量が減少するように該ノズル61についての制御パターンを修正し、該修正後の制御パターン26Gに基づいて、冷却手段設定部62を制御する構成とされる。これにより、修正前の制御パターン26Gでは、冷却手段6と金属材1との間に芯ずれが生じていることに起因して、金属材1の周方向に均一な冷却ができない場合であっても、修正後の制御パターン26Gに基づいて周方向の冷却媒体611の供給量分布を設定すれば、金属材1の周方向に均一な冷却ができるようになり、ひいては周方向に硬度ムラのない熱間曲げ加工製品を得ることが可能である。また、製品の用途によっては、故意に硬度ムラを発生させた方が良い場合もある。このような場合には、冷却手段6によって金属材1の周方向に所望の不均一な冷却ができるように制御パターン26Gを修正することにより、所望の硬度ムラ(金属材1の周方向の硬度分布)を得ることが可能である。
【0105】
なお、図10には示していないが、冷却温度測定手段205による冷却手段6近傍における金属材1の温度測定値に基づいて、金属材1の送り出し速度を制御する(例えば、金属材1の温度測定値が目標値よりも小さければ送り出し速度を小さくし、目標値よりも大きければ送り出し速度を大きくする等)構成を採用することも可能である。具体的には、冷却温度測定手段205による金属材1の温度測定値に基づいて、クロック発生器201のクロックレートの設定を変更し、これにより金属材1の送り出し速度を制御すればよい。
【0106】
<第8構成例>
図11は、本発明の第8構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。なお、図11において、図10に示す第7構成例や図7に示す第4構成例と実質的に同じ構成、機能を有する要素や、同じ意味のパラメータには同じ参照符号を付している。図11に示すように、本構成例の制御装置20Hも、第7構成例と同様に、予め決定され記憶された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の送出手段3及び挟持手段4の他、加熱手段5及び冷却手段6を制御する構成とされている。ただし、制御装置20Hが金属材1に関する経時的情報(本構成例では、金属材1の送り出し量FXiであり、図1に示すFXの検出値に相当する)を検出する送出量検出手段202を備える点で相違する。また、制御装置20Hに記憶される制御パターン21H〜26Hの内、送出手段3についての制御パターン21Hを除き、送出量検出手段202によって検出される金属材1の送り出し量FXiに対応付けられた熱間曲げ加工装置10の被制御手段(挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)の制御量とされている点でも相違する。さらに、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22H〜26Hとに基づいて、被制御手段(挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6)を制御する点でも相違する。なお、送出手段3についての制御パターン21Hは、第7構成例と同様に、送出手段3による金属材1の送り出し開始からの経過時間t(実際には、クロック発生器201から出力されるクロックの数)に対応付けられた送出手段3の制御量とされており、送出手段3は、この制御パターン21Hに基づいて制御される。すなわち、本構成例の制御装置20Hと第7構成例の制御装置20Gとの関係は、第2構成例の制御装置20Bと第1構成例の制御装置20Aとの関係、第4構成例の制御装置20Dと第3構成例の制御装置20Cとの関係、第6構成例の制御装置20Fと第5構成例の制御装置20Eとの関係と同様である。従って、本構成例の制御装置20Hについては、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0107】
以上に説明した本構成例の制御装置20Hによっても、精度の良い熱間曲げ加工が可能であると共に、熟練者の勘や技能に頼る必要がなく、熱間曲げ加工の作業能率を高めることが可能である。特に、本構成例の制御装置20Hによれば、第7構成例の制御装置20Gと異なり、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6の制御量を制御パターン22H〜26Hとして用い、送出量検出手段202によって検出した金属材1の送り出し量FXiと、制御パターン22H〜26Hとに基づいて挟持手段4、加熱手段5、冷却手段6を制御することになる。従って、送出手段3の時間応答性と、挟持手段4の駆動機構や、加熱手段5及び冷却手段6の駆動機構、設定部の時間応答性との差異等があったとしても、第7構成例の制御装置20Gと異なり、本来曲げ加工されるべき金属材1の長手方向部位にズレが生じ難く、良好な加工精度を維持することが可能である。
【0108】
図12は、本実施形態に係る熱間曲げ加工装置10の制御装置20(第2構成例の制御装置20B)を用いて、金属材1(管)に曲げ加工(曲率半径R=150mm、45°曲げ)を施した例を示す。図12(a)は、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4の第1シフト機構411の駆動位置(シフト量)からなる制御パターンを、図12(b)は、金属材1の送り出し量に対応付けられた挟持手段4の第1チルト機構413の駆動位置(チルト量)からなる制御パターンを、図12(c)は、得られた熱間曲げ加工製品の外観写真を示す。図12に示すように、熱間曲げ加工後の金属材1が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、熱間曲げ加工装置10の被制御手段を制御することにより、目標品質(曲率半径R=150mm、45°曲げ)に対して精度良く熱間曲げ加工できることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る制御方法を適用する熱間曲げ加工装置、及び該制御方法を実施するための制御装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は、熱間曲げ加工される金属材の例を示す縦断面図であり、図2(a)はロールフォーミング等で製造された開断面材を、図2(b)は押し出し加工で製造された異型断面材を示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る加熱手段及び冷却手段の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、本発明の第2構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第3構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、本発明の第4構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、本発明の第5構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、本発明の第6構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、本発明の第7構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】図11は、本発明の第8構成例である制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係る熱間曲げ加工装置の制御装置を用いて、金属材(管)に曲げ加工(曲率半径R=150mm、45°曲げ)を施した例を示す。図12(a)は、金属材の送り出し量に対応付けられた挟持手段の第1シフト機構の駆動位置(シフト量)からなる制御パターンを、図12(b)は、金属材の送り出し量に対応付けられた挟持手段の第1チルト機構の駆動位置(チルト量)からなる制御パターンを、図12(c)は、得られた熱間曲げ加工製品の外観写真を示す。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係る熱間曲げ加工装置の駆動源の駆動制御方法の一例を示す図であり、図13(a)は一般的な制御方法を、図13(b)は高い駆動位置精度を確保する場合の制御方法を示す。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に係る熱間曲げ加工装置の駆動源の駆動制御方法による制御結果の一例を模式的に示す図であり、図14(a)は図13(a)に示す制御方法によって得られる制御結果を、図14(b)は図13(b)に示す制御方法によって得られる制御結果を示す。
【符号の説明】
【0110】
1・・・金属材
2・・・支持手段
3・・・送出手段
4・・・挟持手段
5・・・加熱手段
6・・・冷却手段
7・・・クランプ
10・・・熱間曲げ加工装置
20・・・制御装置
21・・・支持手段の駆動機構
41・・・挟持手段の駆動機構
52・・・加熱手段及び冷却手段の駆動機構
53・・・加熱手段設定部
62・・・冷却手段設定部
71・・・クランプの駆動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段と、送り出された金属材を案内支持する支持手段と、金属材を局部的に加熱する加熱手段と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段と、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールにより金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段とが、金属材の長手方向に沿って配置され、金属材を間欠的に又は連続的に熱間曲げ加工する熱間曲げ加工装置の制御方法であって、
熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の前記送出手段及び前記挟持手段を制御すると共に、前記支持手段、前記加熱手段及び前記冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴とする金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項2】
前記熱間曲げ加工装置は、前記挟持手段の駆動機構として、金属材の長手方向に略直交する平面内の一軸方向に沿って前記挟持手段を移動させる第1シフト機構、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向に沿って前記挟持手段を移動させる第2シフト機構、前記一軸方向周りに前記挟持手段を傾斜させる第1チルト機構、及び前記他軸方向周りに前記挟持手段を傾斜させる第2チルト機構の内、少なくとも1以上の機構を備え、
前記挟持手段の駆動機構の駆動位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項3】
前記熱間曲げ加工装置は、前記挟持手段の駆動機構として、金属材の長手方向周りに前記挟持手段を回転させる第1回転機構を備え、
前記第1回転機構の駆動位置を制御することを特徴とする請求項2に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項4】
前記熱間曲げ加工装置は、前記支持手段の駆動機構として、金属材の長手方向周りに前記支持手段を回転させる第2回転機構を備え、
前記第2回転機構の駆動位置を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項5】
前記熱間曲げ加工装置は、前記加熱手段及び/又は前記冷却手段の駆動機構として、金属材の長手方向に略直交する平面内の一軸方向に沿って前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を移動させる第3シフト機構、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向に沿って前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を移動させる第4シフト機構、前記一軸方向周りに前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を傾斜させる第3チルト機構、及び前記他軸方向周りに前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を傾斜させる第4チルト機構の内、少なくとも1以上の機構を備え、
前記加熱手段及び/又は前記冷却手段の駆動機構の駆動位置を制御することを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項6】
前記加熱手段の加熱出力及び/又は前記冷却手段による冷却媒体の供給を制御することを特徴とする請求項2から5の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項7】
前記制御パターンは、前記送出手段による金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項8】
前記制御パターンは、金属材に関する経時的情報に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされており、
検出した金属材に関する経時的情報と、前記制御パターンとに基づいて、前記被制御手段を制御することを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項9】
金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位、前記加熱手段近傍における金属材の温度、及び前記冷却手段近傍における金属材の温度の内、少なくとも1以上を測定し、
前記測定値に基づいて、前記制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の被制御手段を制御することを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項10】
金属材をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段と、送り出された金属材を案内支持する支持手段と、金属材を局部的に加熱する加熱手段と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段と、金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段とが、金属材の長手方向に沿って配置された熱間曲げ加工装置を制御する装置であって、
熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンを記憶し、
前記記憶された制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の前記送出手段及び前記挟持手段を制御すると共に、前記支持手段、前記加熱手段及び前記冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴とする金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置。
【請求項11】
前記制御パターンは、前記送出手段による金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされていることを特徴とする請求項10に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置。
【請求項12】
金属材に関する経時的情報を検出する検出手段を備え、
前記記憶される制御パターンは、前記検出手段によって検出される金属材に関する経時的情報に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされており、
前記検出手段によって検出した金属材に関する経時的情報と、前記制御パターンとに基づいて、前記被制御手段を制御することを特徴とする請求項10に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置。
【請求項13】
金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位を測定する変位測定手段、前記加熱手段近傍における金属材の温度を測定する加熱温度測定手段、及び前記冷却手段近傍における金属材の温度を測定する冷却温度測定手段の内、少なくとも1以上の測定手段を備え、
前記測定手段の測定値に基づいて、前記記憶された制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の被制御手段を制御することを特徴とする請求項10から12の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置。
【請求項14】
請求項1から9の何れかに記載の制御方法を用いて前記熱間曲げ加工装置を制御する工程を含むことを特徴とする熱間曲げ加工製品の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法で製造した熱間曲げ加工製品。
【請求項1】
金属材をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段と、送り出された金属材を案内支持する支持手段と、金属材を局部的に加熱する加熱手段と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段と、金属材の長手方向に沿って回転可能なロールにより金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段とが、金属材の長手方向に沿って配置され、金属材を間欠的に又は連続的に熱間曲げ加工する熱間曲げ加工装置の制御方法であって、
熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の前記送出手段及び前記挟持手段を制御すると共に、前記支持手段、前記加熱手段及び前記冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴とする金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項2】
前記熱間曲げ加工装置は、前記挟持手段の駆動機構として、金属材の長手方向に略直交する平面内の一軸方向に沿って前記挟持手段を移動させる第1シフト機構、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向に沿って前記挟持手段を移動させる第2シフト機構、前記一軸方向周りに前記挟持手段を傾斜させる第1チルト機構、及び前記他軸方向周りに前記挟持手段を傾斜させる第2チルト機構の内、少なくとも1以上の機構を備え、
前記挟持手段の駆動機構の駆動位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項3】
前記熱間曲げ加工装置は、前記挟持手段の駆動機構として、金属材の長手方向周りに前記挟持手段を回転させる第1回転機構を備え、
前記第1回転機構の駆動位置を制御することを特徴とする請求項2に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項4】
前記熱間曲げ加工装置は、前記支持手段の駆動機構として、金属材の長手方向周りに前記支持手段を回転させる第2回転機構を備え、
前記第2回転機構の駆動位置を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項5】
前記熱間曲げ加工装置は、前記加熱手段及び/又は前記冷却手段の駆動機構として、金属材の長手方向に略直交する平面内の一軸方向に沿って前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を移動させる第3シフト機構、前記平面内の前記一軸方向に直交する他軸方向に沿って前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を移動させる第4シフト機構、前記一軸方向周りに前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を傾斜させる第3チルト機構、及び前記他軸方向周りに前記加熱手段及び/又は前記冷却手段を傾斜させる第4チルト機構の内、少なくとも1以上の機構を備え、
前記加熱手段及び/又は前記冷却手段の駆動機構の駆動位置を制御することを特徴とする請求項2から4の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項6】
前記加熱手段の加熱出力及び/又は前記冷却手段による冷却媒体の供給を制御することを特徴とする請求項2から5の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項7】
前記制御パターンは、前記送出手段による金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項8】
前記制御パターンは、金属材に関する経時的情報に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされており、
検出した金属材に関する経時的情報と、前記制御パターンとに基づいて、前記被制御手段を制御することを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項9】
金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位、前記加熱手段近傍における金属材の温度、及び前記冷却手段近傍における金属材の温度の内、少なくとも1以上を測定し、
前記測定値に基づいて、前記制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の被制御手段を制御することを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御方法。
【請求項10】
金属材をその長手方向に間欠的に又は連続的に送り出す送出手段と、送り出された金属材を案内支持する支持手段と、金属材を局部的に加熱する加熱手段と、加熱された金属材の部位を冷却する冷却手段と、金属材を挟持して前記加熱された金属材の部位に曲げモーメントを付与する挟持手段とが、金属材の長手方向に沿って配置された熱間曲げ加工装置を制御する装置であって、
熱間曲げ加工後の金属材が目標品質となるように予め決定された制御パターンを記憶し、
前記記憶された制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の前記送出手段及び前記挟持手段を制御すると共に、前記支持手段、前記加熱手段及び前記冷却手段の内、少なくとも1以上の手段を制御することを特徴とする金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置。
【請求項11】
前記制御パターンは、前記送出手段による金属材の送り出し開始からの経過時間に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされていることを特徴とする請求項10に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置。
【請求項12】
金属材に関する経時的情報を検出する検出手段を備え、
前記記憶される制御パターンは、前記検出手段によって検出される金属材に関する経時的情報に対応付けられた前記熱間曲げ加工装置の被制御手段の制御量とされており、
前記検出手段によって検出した金属材に関する経時的情報と、前記制御パターンとに基づいて、前記被制御手段を制御することを特徴とする請求項10に記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置。
【請求項13】
金属材の長手方向に略直交する平面内における金属材の変位を測定する変位測定手段、前記加熱手段近傍における金属材の温度を測定する加熱温度測定手段、及び前記冷却手段近傍における金属材の温度を測定する冷却温度測定手段の内、少なくとも1以上の測定手段を備え、
前記測定手段の測定値に基づいて、前記記憶された制御パターンを修正し、該修正後の制御パターンに基づいて、前記熱間曲げ加工装置の被制御手段を制御することを特徴とする請求項10から12の何れかに記載の金属材の熱間曲げ加工装置の制御装置。
【請求項14】
請求項1から9の何れかに記載の制御方法を用いて前記熱間曲げ加工装置を制御する工程を含むことを特徴とする熱間曲げ加工製品の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法で製造した熱間曲げ加工製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図12】
【公開番号】特開2008−23573(P2008−23573A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201228(P2006−201228)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(503202712)住金プラント株式会社 (9)
【出願人】(000229612)住友鋼管株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(503202712)住金プラント株式会社 (9)
【出願人】(000229612)住友鋼管株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
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