説明

金属材料の燃焼試験用試験片、燃焼試験装置、および燃焼伝播温度並びに燃焼伝播速度の測定方法

【課題】金属材料の燃焼伝播性を正確にかつ客観的に評価することができる金属材料の燃焼試験用試験片、燃焼試験装置、および燃焼伝播温度並びに燃焼伝播速度の測定方法を提供することである。
【解決手段】試験片1は被試験用の金属材料からなり、長手方向のいずれかに切り欠き部2が設けられた棒状物であって、前記切り欠き部2から長手方向に離隔した位置に熱電対挿入穴3が設けられている。この熱電対挿入穴3に熱電対を挿入して燃焼試験を行うと、切り欠き部で着火して燃焼が上記挿入穴に到達した時点の温度、すなわち燃焼伝播温度を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の燃焼試験用試験片、燃焼試験装置に関し、より詳しくは焼成炉等の製造に使用する金属材料を選定するのに適した燃焼試験用試験片、燃焼試験装置、および燃焼伝播温度並びに燃焼伝播速度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素等の支燃性ガスが存在する雰囲気下で金属材料を安全に使用するには、この材料の燃焼伝播性を把握しておくことが重要である。燃焼伝播性とは、支燃性ガスが存在する雰囲気下で材料に着火したときに、着火された材料の燃焼が伝播する性質をいう。
【0003】
この燃焼伝播性の評価は、例えば酸素等の支燃性ガスを所定濃度で含む雰囲気に設定された燃焼容器内において、図6に示すように略中央付近にはV字形の切り欠き部51が設けられた試験片50を燃焼させることによって行われる。試験時には、燃焼容器内に収容した試験片50の両端に、電源に配線された2本の電極がそれぞれ接続され、両電極を通じて試験片50に通電することにより試験片50が加熱され、ついには断面積が小さく抵抗の高い切り欠き部51の下端で溶断し、その際に発生するスパークや熱エネルギーによって試験片に着火する。
【0004】
着火後、切り欠き部51から試験片50の両端に向かって燃焼が伝播し、試験片50が完全燃焼した場合は「燃焼伝播性あり」と評価され、部分燃焼および溶断のみの場合は「燃焼伝播性なし」と評価される。
【0005】
特許文献1には、水蒸気が存在する雰囲気下であっても、水蒸気を凝縮させることなく金属材料の燃焼伝播性を評価できる金属材料の燃焼試験装置が記載されており、この燃焼試験装置において上記したような試験片50が用いられている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−183608号公報(図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、無機化合物を酸化焼成してセラミックスを製造する際には、焼成炉内を90vol.%以上の酸素雰囲気とし、約750℃で焼成することがある。その焼成炉の炉材としては、酸素雰囲気中で炉内に強力な着火源(ヒーターからのスパークなど)が存在した場合でも安全に焼成できる炉材(母材)を使用することが必要である。このため、各種金属材料の燃焼伝播性を検討する必要がある。しかし、前記した評価方法は、着火後の燃焼伝播を目視によって判断するだけであるため、定性的であり、従って750℃以上の温度に耐えうるという客観的な評価方法が求められている。
【0008】
よって、本発明の主たる課題は、金属材料の燃焼伝播性を正確にかつ客観的に評価することができる金属材料の燃焼試験用試験片、燃焼試験装置および燃焼伝播温度並びに燃焼伝播速度の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる金属材料の燃焼試験用試験片は、被試験用の金属材料からなり、長手方向のいずれかに切り欠き部が設けられた棒状物であって、前記切り欠き部から長手方向に離隔した位置に温度検出部を設けたことを特徴とする。前記切り欠き部から温度検出部までの距離は、10mm以上であるのがよい。
【0010】
本発明にかかる金属材料の燃焼試験装置は、上記の試験片を収容した燃焼容器と、前記燃焼容器に支燃性ガスまたは支燃性ガスと不活性ガスとの混合ガスを供給するためのガス供給手段と、前記試験片に着火させるための点火手段と、前記試験片の温度検出部に取り付ける温度検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる燃焼伝播温度の測定方法は、上記の試験片に通電した切り欠き部で着火させ、試験片の燃焼が前記温度検出部に到達した時点の温度を、温度検出部に取り付けた温度検出手段で測定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる燃焼伝播温度の測定方法は、前記切り欠き部における断面積が異なる複数の試験片を用いて測定し、燃焼が伝播する下限温度である燃焼伝播限界温度を求めることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる燃焼伝播速度の測定方法は、上記の試験片に通電して切り欠き部で着火させ、試験片の燃焼が温度検出部に到達した時間を測定することを特徴とする。
さらに、本発明にかかる焼成炉の製造方法は上記の方法で測定した燃焼伝播限界温度が炉内温度以上である金属材料を炉材として使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の試験片は、切り欠き部から長手方向に離隔した位置に温度検出部を設けたので、この温度検出部に温度検出手段を取り付けて燃焼試験を行うと、切り欠き部で着火して燃焼が上記温度検出部に伝播してくる温度、すなわち燃焼伝播温度を測定することができる。このような燃焼伝播温度は、焼成炉等の耐熱性が要求される部材に使用する金属材料を選定するうえで有益であり、燃焼が伝播する下限温度である燃焼伝播限界温度が耐熱温度以上である金属材料を選定すればよい。
【0015】
具体的には、前記切り欠き部における断面積が異なる複数の試験片を用いて測定し、燃焼が伝播する下限温度である燃焼伝播限界温度を求めることことによって、正確な評価が可能になる。
【0016】
また、本発明の試験片を使用して、燃焼伝播温度と共に、燃焼伝播速度も測定することができるので、金属材料の選定により一層有益な情報が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明において、温度検出手段としては、熱電対、測温抵抗体などが挙げられ、温度検出部としては、この温度検出手段の先端部を試験片に密接させて保持する部分であって、挿入穴、フック状の取り付け金具などが挙げられる。
また、通常、支燃性ガスとしては、酸素、空気、二酸化窒素、亜酸化窒素などが、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、ハロゲンなどが挙げられる。チタンなどは、窒素、二酸化炭素中でも燃焼し、窒化チタンなどを生成するので、チタンなどの場合には、窒素、二酸化炭素も支燃性ガスになる。
なお、金属に酸素が十分に固定化された場合には、不活性ガスの雰囲気下でも燃焼して測定できる可能性がある。
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はこの実施形態にかかる燃焼試験用試験片を示す斜視図、図2は前記試験片を用いる燃焼試験装置の一例を示す概略図である。
この実施形態においては、温度検出手段として熱電対、温度検出部としては熱電対の挿入穴、支燃性ガスとして酸素を用いている。
【0019】
図1に示すように、この試験片1は、被試験用の金属材料の棒状物からなり、長手方向の中央付近にV字状の切り欠き部2が設けられ、さらにこの切り欠き部2から長手方向に離隔した位置に熱電対挿入穴3が設けられている。
【0020】
試験片1に用いる金属材料は、燃焼伝播性を評価しようとするステンレス鋼材、圧延鋼材、チタン系材料などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0021】
また、試験片1のサイズも特に限定されるものではないが、複数の測定結果を比較できるように所定の寸法で統一して試験を行うのが好ましい。試験片1の一例としては、長さ50mm、幅2mm、高さ2mmの四角柱形状が挙げられる。切り欠き部2は上端の幅が2mm程度のもので、切り欠き部2の下端から底面までの高さは0.25mm程度であるのが良い。また、熱電対挿入穴3の径は、使用する熱電対を挿入・保持するのに充分な大きさであればよく、通常、熱電対の径とほぼ同じ径(例えば1mm程度)であるのがよい。なお、温度検出部の穴は貫通の有無は問わず、熱電対の先端部を試験片1に密接して保持できるものであれば良い。
【0022】
切り欠き部2から熱電対挿入穴3までの距離dは、10mm以上、好ましくは20〜50mm程度であるのがよい。距離dが10mm未満であると、燃焼が切り欠き部2から熱電対挿入穴3に到達するまでの時間が短すぎるため、燃焼伝播温度や燃焼伝播速度の測定の精度が低下するおそれがある。
【0023】
図2に示すように、燃焼試験装置4は、金属材料の試験片1を収容し、この試験片1を燃焼させるための燃焼容器5と、酸素ボンベ6、供給配管7および流量調整弁8からなり燃焼容器5に酸素を供給するための酸素供給手段と、試験片1に点火して着火させるための電極9、9および電源10からなる点火手段と、前記試験片1の熱電対挿入穴3に先端部を挿入する熱電対11とを備える。
【0024】
燃焼容器5は、略真空に耐えうるように設計された密閉容器であり、その側面には出入口12が設けられている。この出入口12を開けて内部に試験片1を配置する。また、燃焼容器5内には、燃焼容器5内の気体を排出するための開閉弁16付き排気管13が接続されている。
【0025】
酸素ボンベ6に充填されている酸素は、供給配管7を経て燃焼容器5に供給される。酸素の供給量は流量調整弁8の開度を調節することによって任意に制御することができる。供給配管7には圧力ゲージ25が取り付けられている。
【0026】
供給配管7には、配管14を介して真空ポンプ15が接続される。真空ポンプ15は、配管14、7を通じて燃焼容器5内のガスを吸引し、燃焼容器5内を略真空の状態にするためのものである。この真空ポンプ15により燃焼容器5内を略真空にした後、開閉弁17を閉じ、開閉弁16を開き、流量調整弁8を開いて酸素ガスを燃焼容器5に供給する。
【0027】
試験片1の両端には電源10に配線された2本の電極9、9がそれぞれクリップ18、18によって接続される。電極9、9は磁製管19、20に挿通されている。電源10と電極9、9との間にはブレーカー21が介在し、所定値(例えば30A)以上の電流を遮断するようになっている。電極9、9は電源10の配線とクリップ22、22によって接続されている。
【0028】
試験片1の熱電対挿入穴3に挿入される熱電対11は、フッ素樹脂チューブ23内を挿通して、燃焼容器5より外に引出され、記録計24に接続される。熱電対11としては、例えばシース径が1mm程度のK型(クロメル−アルメル)熱電対、E型(クロメル−コンスタンタン)熱電対、R型(白金ロジウム−白金)熱電対などが採用可能である。
【0029】
次に、上記試験片1および燃焼試験装置4を使用して金属材料の燃焼伝播性を評価する試験方法の一例を説明する。
【0030】
すなわち、試験片1を図2に示すような燃焼容器5内に設置し、容器内を略真空にしたのち、酸素ボンベ6から所定量の酸素ガスを燃焼容器5内に導入する。酸素ガスの流量調整弁8を閉にした後、この状態で電源10から電極9、9を通じて試験片1に通電する。通電により試験片1の切り欠き部2が溶断し着火する。通電終了後、試料片1を取り出し、目視により燃焼伝播の有無を判定する。
【0031】
以上の試験では、同じ金属材料で作った複数の試験片1を準備し、試験片1にかかる温度を変えて燃焼伝播の有無を判定する。試験片1にかかる温度を調整するために、図3に示すように、切り欠き部2の側面2a、2bをやすり等で切削して断面積を小さくすることにより、溶断するまでの時間を変化させ試験片1に電流が流れる時間を調整する。そして、試験片1に通電して切り欠き部2で着火させたとき、燃焼が熱電対挿入穴に到達した時点の試験片温度を測定する。なお断面積を調整して温度を調整する代わりに、試験片1に印加する電圧を変化させても良い。
【0032】
燃焼伝播の有無の判定基準は、図4に示すように試験片1の切り欠き部2が溶断後、完全に燃焼した場合を「燃焼伝播性あり」、部分燃焼および溶断のみで終了した場合を「燃焼伝播性なし」とした。
【0033】
そして、「燃焼伝播性あり」と判断した試験片1の燃焼が熱電対に到達した時点の温度を熱電対11で測定し、これを燃焼伝播温度とする。また、着火後、燃焼が当該試験片1の切り欠き部2から熱電対挿入穴3まで伝播する時間を計測し、これと切り欠き部2から熱電対挿入穴3までの距離とから燃焼伝播速度を求めることができる。
【0034】
具体的には試験片1の熱電対挿入穴3の時間による温度変化を記録することによって行われる。試験片に通電すると、試験片は加熱され、熱電対挿入穴の温度は急速に上昇してゆき、ついには切り欠き部2で溶断する。溶断すると通電が停止するために温度は低下してゆき、温度変化に極大点が生じる。本発明においては、この温度が極大を示す点を切り欠き部が溶断した時点と見なす。溶断して試験片に着火し、燃焼が伝播してくると、低下してゆく温度が急激に上昇し、温度変化に極小点が生じる。この温度の極小を示す点が、熱電対挿入穴まで燃焼が伝播した時点に相当する。この温度の極小値を燃焼伝播温度とする。また切り欠き部から熱電対挿入穴までの距離と、極大を示す時点から極小を示す時点までの時間とから燃焼伝播速度を求める。
溶断しただけで燃焼しなかった場合、部分燃焼したが燃焼が伝播しなかった場合には、熱電対挿入穴の温度の低下はそのまま継続し、反転して急激な温度上昇を示さないので、燃焼伝播性の有無を把握できるが、最終的には上記したとおり、試料片を取り出し、目視により燃焼伝播の有無を判定する。
【0035】
前記切り欠き部における断面積が異なる複数の試験片を用いて測定し、燃焼が伝播する下限温度である燃焼伝播限界温度を求める。測定した温度のうち、燃焼伝播しなかった時の試験片温度(上記の極大を示す点の温度)の最高温度と、燃焼が伝播した燃焼伝播温度の最低温度との範囲内に、燃焼が伝播する下限温度である燃焼伝播限界温度が存在する。試験回数を多くすることによって、この温度範囲は狭まり、収斂してくるが、通常、燃焼伝播限界温度は範囲で示される。
なお、燃焼が熱電対挿入穴まで伝播した場合には、熱電対の先端部が損傷してしまうので、熱電対を繰り返し使用する観点から、切り欠き部の断面積が小さい試験片から順に、すなわち、燃焼が伝播しない温度を測定する方から測定するのが好ましい。
【0036】
このように本発明の試験片1および燃焼試験装置4を用いることで、燃焼伝播温度および燃焼伝播速度を求めることができるので、例えば焼成炉の設計にあたっては、炉材にしようとする金属材料を選定する目安として、当該燃焼伝播温度および燃焼伝播速度を利用することができる。すなわち、燃焼が伝播する下限温度である燃焼伝播限界温度が炉内温度以上である金属材料を炉材として使用することにより焼成炉の安全性を高めることができる。
【0037】
なお、点火手段としては、上記実施形態で説明した電極9、9および電源10からなるものの他、例えば電熱線等を使用することもできる。電熱線としては、抵抗率が大きく、融点が高く、酸化しにくく、温度係数が小さいニクロム線、カンタル線、アドバンス線等の金属線や炭素、炭化けい素等の炭化物を線状にしたもの等が使用できる。
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
【0039】
図1および図2に示した試験片1および燃焼試験装置4を用いて、以下の手順で各種金属材料の燃焼伝播性を評価した。
(1)試験片1を図2に示すような燃焼容器5内に設置し、熱電対11を熱電対挿入穴3に挿入した
(2)容器内を真空にしたのち、酸素ボンベ6(酸素濃度99.6容積%)を用いて燃焼容器5内を常圧に戻した。
(3)開閉弁16を開き、その後10分間、流量600ml/分で酸素ガスを燃焼容器5内に流通させた。
(4)10分後、酸素ガスの流量調整弁8を閉にした。
(5)この状態で電源10から電極9、9を通じて試験片1に通電した(60Vの電圧を印加)通電により試験片1の切り欠き部2が溶断し、着火した。
(6)通電終了後、試験片1を取り出し、目視により燃焼伝播の有無を確認した。
【0040】
使用した試験片1は、長さ50mm、幅2mm、高さ2mmの四角柱形状であり、切り欠き部2は上端の幅が2mmで、切り欠き部2の下端から底面までの高さは0.25mm、切り欠き部2から熱電対挿入穴3までの距離dは25mmである。
【0041】
使用した金属材料は、一般構造用圧延鋼材「SS400」、ステンレス鋼材「SUS304」、同「SUS310S」であり、さらに参考としてチタンを用いた。各試験片1は図3に示すように切り欠き部2の側面2a、2bを切削して、切り欠き部2における断面積の異なる複数の各試験片を用意し、上記手順にて燃焼伝播性を評価した。
燃焼伝播の有無の判定基準は、図4に示すように、完全に燃焼した場合を「燃焼伝播性あり」、部分燃焼および溶断のみで終了した場合を「燃焼伝播性なし」とした。尚、燃焼が途中まで伝播したケースは無かった。
【0042】
この評価結果と、熱電対11にて測定した温度とから燃焼伝播温度を求めた。その結果を図5に示した。図5から、SS400の燃焼伝播限界温度は299℃(燃焼非伝播温度)〜351℃(燃焼伝播温度)の範囲内であることが確認された。同様に、SUS304の燃焼伝播限界温度は689℃〜715℃の範囲内であることが確認された。SUS310Sの燃焼伝播限界温度は767℃以上であることが確認された。また、チタン材の燃焼伝播限界温度は28.6℃〜83.2℃の範囲内であることが確認された。以上の結果から、焼成炉に使用する炉材(母材)としては一般構造用圧延鋼材よりステンレス鋼材が推奨され、特にSUS310Sの使用が望ましいことがわかる。
なお、燃焼伝播が確認されなかった試験片は、切欠き部のみの溶断であった。また、燃焼伝播が確認された試験片は、試験片自体が消失し熱電対もシース部先端が消失していた。
【0043】
以上の試験によりSS400>SUS304>SUS310Sの順番で燃焼伝播性が高いことが判明した。この原因としては、各試験片に含まれる化学成分の差が影響するものと考えられる。
【0044】
次に、溶断後燃焼伝播性ありのSUS304試験片について、溶断から燃焼炎が熱電対に到達した時点までの時間を熱電対に取り付けた記録計で計測し、この時間と切り欠き部から熱電対挿入穴までの距離(25mm)とから燃焼速度を求めた。その結果を燃焼伝播温度と共に表1に示す。
【表1】

【0045】
表1から、各金属試験片の酸素雰囲気中における燃焼速度は、試験片にかかる温度にもよるがほぼ10mm/sec以上であり、非常に燃焼速度が早いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の試験片の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の燃焼試験温度を示す概略図である。
【図3】温度調整方法を示す試験片の平面図である。
【図4】燃焼伝播の有無を評価する基準を示す説明図である。
【図5】実施例における燃焼伝播試験の結果を示すグラフである。
【図6】従来の試験片を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1:試験片
2:切り欠き部
3:熱電対挿入穴
4:燃焼試験装置
5:燃焼容器
6:酸素ボンベ
9:電極
11:熱電対
15:真空ポンプ
50:試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験用の金属材料からなり、長手方向のいずれかに切り欠き部が設けられた棒状物であって、前記切り欠き部から長手方向に離隔した位置に温度検出部を設けたことを特徴とする金属材料の燃焼試験用試験片。
【請求項2】
切り欠き部から温度検出部までの距離が10mm以上である請求項1に記載の試験片。
【請求項3】
請求項1に記載の試験片を収容した燃焼容器と、前記燃焼容器に支燃性ガスまたは支燃性ガスと不活性ガスとの混合ガスを供給するためのガス供給手段と、前記試験片を着火させるための点火手段と、前記試験片の温度検出部に取り付ける温度検出手段とを備えたことを特徴とする金属材料の燃焼試験装置。
【請求項4】
請求項1に記載の試験片に通電して前記切り欠き部で着火させ、試験片の燃焼が前記温度検出部に到達した時点の温度を、温度検出部に取り付けた温度検出手段で測定することを特徴とする燃焼伝播温度の測定方法。
【請求項5】
前記切り欠き部における断面積が異なる複数の試験片を用いて測定し、燃焼が伝播する下限温度である燃焼伝播限界温度を求めることを特徴とする請求項4に記載の燃焼伝播温度の測定方法。
【請求項6】
請求項1に記載の試験片に通電して切り欠き部で着火させ、試験片の燃焼が温度検出部に到達した時間を測定することを特徴とする燃焼伝播速度の測定方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法で測定した燃焼伝播限界温度が炉内温度以上である金属材料を炉材として使用することを特徴とする焼成炉の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−226831(P2006−226831A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40962(P2005−40962)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】