説明

金属用塗料及び該金属用塗料の塗膜が形成された金属材料

【解決手段】(A)合成樹脂の固形分;
(B)充填剤;
(C−1)下記式(1)


で表されるアセチレングリコール及び/又は下記式(2)


で表されるアセチレングリコールのエトキシル化体、
(C−2)下記式(3)
HO(C24O)w(C36O)x(C24O)y(C36O)zH (3)
で表されるポリオキシ(エチレン・プロピレン)ブロックポリマー
の混合物
を含むことを特徴とする金属用塗料。
【効果】本発明によれば、防錆顔料を含まない金属用塗料でありながら、防錆性を発揮し、なおかつ耐水性、金属に対する密着性も優れた金属用塗料を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属用塗料に関し、特に優れた防錆性を発揮しながら、耐水性、金属に対する密着性に優れた金属用塗料に関する。また、本発明は、該塗料による塗膜が形成された金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
かつて防錆といえば、鉛丹、シアナミド鉛、鉛酸カルシウムなどの鉛塩系や、塩基性クロム酸亜鉛、クロム酸ストロンチウムなどのクロム酸金属塩系の防錆顔料が主として用いられていたが、健康障害や環境保全上の問題からその使用が次第に規制されるに至った。その後、リン酸亜鉛、リン酸カルシウムマグネシウム、リン酸チタン、リン酸シリカなどのリン酸金属塩系、トリポリリン酸アルミニウムなどの縮合リン酸金属塩系、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カルシウム、亜リン酸ストロンチウム、亜リン酸アルミニウムなどの亜リン酸金属塩系、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、ホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛等の無公害、無毒の防錆顔料が開発されているが、やはり防錆顔料を使用するという点で、大きな変化はなかった。
【0003】
また、特開平5−140491号公報(特許文献1)には、界面活性剤並びにアセチレンアルコール系化合物及び/又はアセチレングリコール系化合物を添加してなる金属板の水性型耐蝕刻性塗料が紹介されており、これは前記界面活性剤並びにアセチレンアルコール系化合物とアセチレングリコール系化合物の併用によって樹脂を均一に金属表面に行き渡らせており、耐蝕刻性を樹脂によって発現させている。
【0004】
更に、特開2000−104015号公報(特許文献2)には、熱硬化特性を有する水系ポリウレタン樹脂からなる熱硬化性防錆塗料が紹介されているが、ウレタン樹脂には、高価格であるという難点がある。
【0005】
【特許文献1】特開平5−140491号公報
【特許文献2】特開2000−104015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、有毒とされる鉛塩系、クロム塩系防錆顔料はもとより、防錆顔料そのものを含まない金属用塗料であり、なおかつ耐水性、金属に対する密着性にも優れた金属用塗料及びその塗膜が形成された金属材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、塗料の基礎となる下記に示す合成樹脂と充填剤に、アセチレングリコール系界面活性剤と特定重量平均分子量の範囲にあるポリオキシ(エチレン・プロピレン)ブロックポリマーの混合物を配合した金属用塗料が、優れた防錆性を発揮しながら、耐水性、金属に対する密着性にも優れたものであることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、
(A)合成樹脂の固形分 100質量部;
(B)充填剤 1〜200質量部;
(C−1)下記式(1)
【化1】


で表されるアセチレングリコール及び/又は下記式(2)
【化2】


(式中、m及びnはそれぞれ正数であり、m+nは2〜30である。)
で表されるアセチレングリコールのエトキシル化体:10〜95質量%、
(C−2)下記式(3)
HO(C24O)w(C36O)x(C24O)y(C36O)zH (3)
(式中、w、x、y、zは0又は正数である。但し、w+x+y+z>0である。)
で表される重量平均分子量が1,500〜10,000であり、エチレンオキサイドの含有量が35〜90質量%、プロピレンオキサイドの含有量が10〜65質量%のポリオキシ(エチレン・プロピレン)ブロックポリマーから選ばれる1種又は2種以上:5〜90質量%、
(C−1)水、水溶性有機溶剤、及び式(1)及び(2)以外のアセチレングリコール及びそのエトキシル化体から選ばれる1種又は2種以上:0〜25質量%
の混合物 0.01〜10質量部
を含むことを特徴とする金属用塗料、及びこの金属用塗料の塗膜が形成された金属材料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防錆顔料を含まない金属用塗料でありながら、防錆性を発揮し、なおかつ耐水性、金属に対する密着性も優れた金属用塗料を提供できる。
しかも、本発明の金属用塗料は、金属表面に油状物があっても、直接その上に塗布することが可能であり、ハジキや塗布ムラも発生しないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の金属用塗料は、
(A)合成樹脂の固形分 100質量部;
(B)充填剤 1〜200質量部;
(C−1)下記式(1)
【化3】


で表されるアセチレングリコール及び/又は下記式(2)
【化4】


(式中、m及びnはそれぞれ正数であり、m+nは2〜30である。)
で表されるアセチレングリコールのエトキシル化体:10〜95質量%、
(C−2)下記式(3)
HO(C24O)w(C36O)x(C24O)y(C36O)zH (3)
(式中、w、x、y、zは0又は正数である。但し、w+x+y+z>0である。)
で表される重量平均分子量が1,500〜10,000であり、エチレンオキサイドの含有量が35〜90質量%、プロピレンオキサイドの含有量が10〜65質量%のポリオキシ(エチレン・プロピレン)ブロックポリマーから選ばれる1種又は2種以上:5〜90質量%、
(C−1)水、水溶性有機溶剤、及び式(1)及び(2)以外のアセチレングリコール及びそのエトキシル化体から選ばれる1種又は2種以上:0〜25質量%
の混合物 0.01〜10質量部
を含むものである。
【0011】
本発明の金属用塗料に配合する混合物のうち(C−1)成分は、上述したように、下記式(1)で示される2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、下記式(2)で示される2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド誘導体から選ばれる1種又は2種以上のアセチレングリコール類である。
【0012】
【化5】


(式中、m及びnはそれぞれ正数であり、m+nは2〜30、好ましくは4〜12である。)
【0013】
ここで、上記式(2)で示されるエトキシル化体中のエチレンオキサイド付加モル総数は2〜30モル、好ましくは4〜12モルである。エチレンオキサイドの付加モル数が30モルを超えた場合は塗料化し、塗布した際にハジキが発生する場合がある。
【0014】
なお、(C−1)成分はナトリウム含有量が1,000ppm以下(0〜1,000ppm)であることが好ましい。ナトリウム量を前記量以下に抑えることで防錆性、耐水性の低下を防ぐことができる。更に、該効果を高めるためにカリウム含有量が2,000ppm以下(0〜2,000ppm)であることが好ましい。このようにナトリウム量、カリウム量を上記含有量にする手段としては、アセチレングリコールを精製したり、純度の高い原料を用いたり、製造工程中でできるかぎり金属汚染が起こらない環境で合成し、アセチレングリコールを製造することにより得ることができる。塗工される金属としては、鉄、鋼、銅、アルミニウムが好ましい。使用する材料表面については表面加工が施されていても構わない。
【0015】
本混合物中の(C−1)成分は、分子中に三重結合を持つものであり、この三重結合により鉄、鋼、銅、アルミニウム等の金属との親和力が強く、塗布後の膜が密に形成され、優れた密着性と防錆性を発揮すると推測される。また、その構造中に疎水基を持つため、水を呼び込みにくく、耐水性にも優れるものである。
【0016】
これらのアセチレングリコール類[(C−1)成分]は、その1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができ、本発明の金属用塗料に混合する際の配合物を調製する際に用いられる量は、(C−1)成分と(C−2)成分及び後述する(C−3)成分の合計量中10〜95質量%であり、好ましくは40〜70質量%である。10質量%未満であると塗料化した際に立つ泡に対する気液置換効果が低下し、結果として膜を形成した際にピンホールが増加する等の不具合が生じる場合がある。95質量%を超えると水性塗料として配合した場合に水への溶解性が悪くなる場合がある。
【0017】
(C−1)成分のアセチレングリコール類に配合する(C−2)成分のポリオキシ(エチレン・プロピレン)ブロックポリマーは、下記式(3)
HO(C24O)w(C36O)x(C24O)y(C36O)zH (3)
(式中、w、x、y、zは0又は正数である。但し、w+x+y+z>0である。)
で表され、具体的には、例えばHO(C24O)w(C36O)20(C24O)yH(但し、w+y=27)、HO(C24O)w(C36O)30(C24O)yH(但し、w+y=160)、HO(C24O)w(C36O)35(C24O)yH(但し、w+y=30)、HO(C24O)w(C36O)35(C24O)yH(但し、w+y=48)、HO(C24O)w(C36O)20(C24O)yH(但し、w+y=155)、HO(C36O)x(C24O)155(C36O)z(但し、x+z=30)等を挙げることができ、その1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
なお、これら(C−2)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は1,500〜10,000であり、特に3,000〜9,000が好ましく、分子量が1,500未満では水性塗料として配合した場合に水への溶解性が悪くなる場合がある。10,000を超えた場合には、塗料化した際に塗布ムラが発生することがある。
【0019】
また、エチレンオキサイドの含有量は35〜90質量%であり、より好ましくは35〜85質量%、更に好ましくは40〜70質量%であることが好ましく、含有量が35質量%未満では、樹脂成分への混和性が低下する場合があり、90質量%を超えると塗料化した際にハジキが発生する場合がある。
【0020】
プロピレンオキサイドの含有量についても10〜65質量%であり、より好ましくは15〜65質量%、更に好ましくは30〜60質量%である。
【0021】
(C−2)成分の配合量は、(C−1)成分と(C−2)成分及び下記(C−3)成分の合計量中5〜90質量%であり、好ましくは30〜60質量%である。(C−1)成分量が少なすぎると、(C−1)成分の十分な可溶化が行われず、凝集物が発生する場合があり、多すぎると、配合時の泡立ちが多くなり、塗工不良の原因となる場合がある。
【0022】
本発明では、上記(C−1)及び(C−2)成分の2成分の合計が100質量%になるように用いるのが好ましいが、更に(C−3)成分として、純水、あるいはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどの水溶性有機溶剤、あるいは5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル数4)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(エチレンオキサイド付加モル数10)、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル数30)、4,7−ジメチル−5−デシン−4,7−ジオール、8−ヘキサデシン−7,10−ジオール、7−テトラデシン−6,9−ジオール、2,3,6,7−テトラメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジエチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオールなどの上記式(1)又は(2)以外のアセチレングリコール及びそのエトキシル化体を併用してもよく、これらは本発明の金属用塗料の特性を損なわない限り、0〜25質量%、好ましくは5〜20質量%の量で用いることができる。
【0023】
上記(C−1)成分、(C−2)成分、(C−3)成分の混合物の配合量は、上述した通り、(A)成分の固形分100質量部に対し0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜2質量部である。該混合物の配合量が少なすぎると、塗料にハジキ等の塗工不良が発生する場合があり、多すぎると、泡立ちが多くなり、塗工不良が発生する場合がある。
【0024】
上記のような金属用塗料添加剤を使用して塗料に配合するものであるが、本発明の塗料の基本となる合成樹脂(A)成分は、(メタ)アクリル酸エステル樹脂系エマルジョン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、ポリエステル樹脂、水溶性エポキシ樹脂から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。この中では、(メタ)アクリル酸エステル樹脂系エマルジョン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョンが、汎用性、価格の面から好適であるまた、樹脂は、公知の重合方法で乳化重合等したものでもよいし、市販品を使用してもよい。なお、(A)成分で用いられるエマルジョン中の固形分量は20〜60質量%が好ましく、更に好ましくは30〜50質量%である。
【0025】
(A)成分、特に(メタ)アクリル酸エステル樹脂系エマルジョン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョンに使用される不飽和基含有単量体は特に指定されるものではなく、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体類、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系単量体類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル等のエチレン性不飽和モノカルボン酸エステル類、イタコン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジブチル等のエチレン性不飽和ジカルボン酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸類、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸類、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体類、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール基含有単量体類、メトキシエチルアクリレート等のアルコキシル基含有単量体類、アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体類、アクリルアミド等のアミド基含有単量体類、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有単量体類、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート等の1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体類等が挙げられ、これらの単量体を用いて乳化重合することができる。
【0026】
上記乳化重合には、公知のあらゆる乳化重合法を採用することができる。不飽和基含有単量体及びその他の重合助剤(例えば、アルキル硫酸エステル塩等の乳化剤、過硫酸アンモニウム等の重合開始剤、炭酸ソーダ等のpH調整剤、各種消泡剤等)を初期に一括添加してもよいし、連続的に添加してもよいし、その一部を重合中に連続又は分割して添加してもよい。
【0027】
上記乳化重合に用いられる乳化剤としては、下記(1)〜(4)の界面活性剤が挙げられ、これら界面活性剤の1種又は2種以上が使用される。
【0028】
(1)アニオン系界面活性剤、例えばアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルリン酸エステル塩等の界面活性剤。
【0029】
(2)ノニオン系界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、又はアセチレンアルコール、アセチレングルコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物等の界面活性剤。
【0030】
(3)カチオン系界面活性剤、例えばアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルアミン塩等の界面活性剤。
【0031】
(4)分子中にラジカル重合能を有する二重結合を持つ重合性界面活性剤、例えばアルキルアリルスルホコハク酸塩、メタアクリロイルポリオキシアルキレン硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩等の重合性界面活性剤。
【0032】
これら界面活性剤の使用量は、不飽和基含有単量体に対して0.3〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0033】
上記乳化重合に用いられる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、2,2’−ジアミジノ−2,2’−アゾプロパンジ塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物が挙げられる。また、公知のレドックス系開始剤、例えば過硫酸カリウムと亜硫酸水素ナトリウム等も挙げられる。重合開始剤の使用量は、不飽和基含有単量体に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜2質量部である。
【0034】
上記乳化重合を行う重合温度は、通常は10〜90℃、好ましくは50〜80℃である。重合時間は3〜20時間である。この重合は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気中で行うのが好ましい。
【0035】
また、(B)成分である充填剤は、チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、シリカ、重質炭酸カルシウム、クレー、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ガラスビーズ、樹脂ビーズから選ばれる1種又は2種以上である。
その配合量は、(A)成分の固形分100質量部に対して1〜200質量部、好ましくは5〜150質量部、更に好ましくは10〜100質量部である。1質量部未満であると、塗膜の乾燥時間が遅くなり、作業上好ましくない場合があり、200質量部を超えると、高粘度となると同時に塗膜伸び率が低下し、結果として形成された塗膜の強度が低下する場合がある。
【0036】
本発明の金属用塗料は、例えば、上記各成分をプロペラ式撹拌機などの公知の混合調製方法により混合することによって得られる。また、常温にて固体の成分については、必要により加温して混合するものである。
【0037】
更に、本発明の金属用塗料の性能を損なわない程度に以下の添加剤、例えば湿潤剤、分散剤、消泡剤、成膜助剤、凍結安定剤、レベリング剤、光安定剤、防腐剤等から選ばれる添加剤を配合することができる。
【0038】
なお、上記によって得られた塗料は、鉄、鋼、銅、アルミニウムから選ばれる金属からなる板材、成形物等に、はけ塗り、バーコータ、ロールコータ等の公知の塗布方法で、好ましくは乾燥厚さ1〜1,000μmに塗布され、使用されるものである。その際必要により加温することも可能である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、例中の部及び%はそれぞれ質量部、質量%を示す。
【0040】
[実施例及び比較例]
(C−1)、(C−2)、(C−3)成分の配合量を表1に示す。
<(C−1)、(C−2)配合物>
【表1】

【0041】
(C−1)成分
C−1−1:式(1)で示される2,5,8,11−テトラメチル−6−デシン−5,8−ジオール
C−1−2:式(2)で示される2,5,8,11−テトラメチル−6−デシン−5,8−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル数m+n=6)
C−1−3:式(2)で示される2,5,8,11−テトラメチル−6−デシン−5,8−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル数m+n=50)
C−1−2’:組成は2,5,8,11−テトラメチル−6−デシン−5,8−ジオールのエトキシル化体(エチレンオキサイド付加モル数m+n=6)
(C−2)成分
C−2−1:エパン750(第一工業製薬社製商品名、HO(C24O)w(C36O)35(C24O)yH、w+y=48、重量平均分子量4,000、エチレンオキサイド含有量51%、プロピレンオキサイド含有量49%)
C−2−2:エパン680(第一工業製薬社製商品名、HO(C24O)w(C36O)30(C24O)yH、w+y=160、重量平均分子量8,800、エチレンオキサイド含有量80%、プロピレンオキサイド含有量20%)
C−2−3:エパン485(第一工業製薬社製商品名、HO(C24O)w(C36O)20(C24O)yH、w+y=155、重量平均分子量8,000、エチレンオキサイド含有量85%、プロピレンオキサイド含有量15%)
C−2−4:プルロニック25R8(BASF製商品名、HO(C36O)x(C24O)155(C36O)zH、x+z=30、重量平均分子量8,550、エチレンオキサイド含有量80%、プロピレンオキサイド含有量20%)
C−2−5:エパン410(第一工業製薬社製商品名、HO(C24O)w(C36O)20(C24O)yH、w+y=2、重量平均分子量1,330、エチレンオキサイド含有量7%、プロピレンオキサイド含有量92%)
C−2−6:エパン785(第一工業製薬社製商品名、HO(C24O)w(C36O)35(C24O)yH、w+y=250、重量平均分子量13,000、エチレンオキサイド含有量84%、プロピレンオキサイド含有量16%)
(C−3)成分
EG:エチレングリコール
PG:プロピレングリコール
C−3−1:サーフィノール104(エアプロダクツ社製商品名、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)
C−3−2:サーフィノール440(エアプロダクツ社製商品名、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエトキシル化体、エチレンオキサイドの付加モル数3.5モル)
【0042】
なお、ICP発光分光光度計 IRIS Intorepid II XSPにてNaを定量した。
【0043】
<金属用塗料配合>
ビニブラン2583(日信化学工業社製アクリルエマルジョン商品名、固形分45%)50部、充填剤ペースト30部、イオン交換水15部、アジピン酸ジヒドラジト5%水溶液4部、配合物(M−1〜M−11)1部を混合して評価用金属用塗料を得た。
《充填剤ペースト調製》
二酸化チタン(石原産業社製タイペークR−780)70部、消泡剤(エアプロダクツ社製サーフィノールDF−58)0.5部、顔料分散剤(ビックケミー社製ディスパーBYK−190)5部、イオン交換水24.5部を混合した後、更にディスパーにて分散し、顔料ペーストを得た。
【0044】
<金属用塗料塗布試料作製>
亜鉛メッキ鋼板に乾燥膜厚が10μmとなるように塗布し、その後110℃で10分間乾燥し、評価用試料板とした。
《塗料の性能評価》
粘度 パドル型粘度計を用いて測定した(23℃)。
pH JIS Z 8802に準じ、試料をそのまま用いて測定した。
防錆性 評価用試料板をJIS K 5600に従い、塩水噴霧試験を行った。
試験後、カット部の錆び発生状態、密着性、塗膜外観を評価した。
◎:カット部からの錆が発生しておらず、密着性が100/100。
○:カット部からの赤さびが5%以下。
△:カット部からの赤さびが6〜20%。
×:カット部からの赤さびが20%を超える。
密着性 JIS K 5600の碁盤目テープ法により試験を行った。
セロハンテープ剥離後の塗膜の状態を確認し、剥がれが生じなかった面積を
表示した。
耐水性 密着性と同様の試料板を50℃温水中に10日間浸漬した後、塗膜外観(変色
、ふくれ、剥がれ等)、密着性を評価した。
◎:塗膜外観に変化がなく、密着性が100/100。
○:カット部からのふくれがあり、密着性が80/100以上。
△:カット部からのふくれがあり、密着性が50/100以上。
×:カット部からのふくれがあり、密着性が50/100未満。
上記結果を表2に示す。
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)合成樹脂の固形分 100質量部;
(B)充填剤 1〜200質量部;
(C−1)下記式(1)
【化1】


で表されるアセチレングリコール及び/又は下記式(2)
【化2】


(式中、m及びnはそれぞれ正数であり、m+nは2〜30である。)
で表されるアセチレングリコールのエトキシル化体:10〜95質量%、
(C−2)下記式(3)
HO(C24O)w(C36O)x(C24O)y(C36O)zH (3)
(式中、w、x、y、zは0又は正数である。但し、w+x+y+z>0である。)
で表される重量平均分子量が1,500〜10,000であり、エチレンオキサイドの含有量が35〜90質量%、プロピレンオキサイドの含有量が10〜65質量%のポリオキシ(エチレン・プロピレン)ブロックポリマーから選ばれる1種又は2種以上:5〜90質量%、
(C−1)水、水溶性有機溶剤、及び式(1)及び(2)以外のアセチレングリコール及びそのエトキシル化体から選ばれる1種又は2種以上:0〜25質量%
の混合物 0.01〜10質量部
を含むことを特徴とする金属用塗料。
【請求項2】
前記(A)成分が、(メタ)アクリル酸エステル樹脂系エマルジョン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、ポリエステル樹脂、及び水性エポキシ樹脂から選ばれる1種又は2種以上からなる請求項1記載の金属用塗料。
【請求項3】
前記(B)成分が、チタン、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、シリカ、重質炭酸カルシウム、クレー、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ガラスビーズ、及び樹脂ビーズから選ばれる1種又は2種以上からなる請求項1又は2記載の金属用塗料。
【請求項4】
前記(C−1)成分のナトリウム含有量が1,000ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の金属用塗料。
【請求項5】
塗布される金属が、鉄、鋼、銅又はアルミニウムである請求項1乃至4のいずれか1記載の金属用塗料。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の金属用塗料の塗膜が形成された金属材料。

【公開番号】特開2008−63472(P2008−63472A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243762(P2006−243762)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000226666)日信化学工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】