説明

金属管の摩擦肉盛装置及びその摩擦肉盛方法並びに複合金属管

【課題】所望形状の摩擦肉盛層を金属管の表面に安定かつ容易に形成できる金属管の摩擦肉盛装置及びその摩擦肉盛方法並びに複合金属管を提供する。
【解決手段】金属管11の内側に内面治具12を当接させて内側から支持すると共に、高速回転させた肉盛材13を金属管11の外面上の接合部へ押し付け、金属管11をその長さ方向へ移動させながら外面を摩擦肉盛した後、金属管11を回動又は移動させその外面を順次摩擦肉盛して、摩擦肉盛層を形成する金属管の摩擦肉盛装置10であって、内面治具12は、金属管11の内面に当接し内側から支持する裏当て金具22と、これを金属管11の内面に当接及び離脱させる操作手段29、30と、金属管11の周方向に回転し操作手段29、30の裏当て金具22への押圧力を調整する回転軸部33とを有し、裏当て金具22で支持された金属管11の外面に摩擦肉盛層を形成し、複合金属管を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電用ボイラー管等の金属管に摩擦肉盛層を形成する金属管の摩擦肉盛装置及びその摩擦肉盛方法並びに複合金属管に関する。
【背景技術】
【0002】
基材を溶融させることなく、しかもその希釈がほとんどない状態で、高速成膜が可能な固相表面改質技術として、摩擦肉盛方法がある。
この摩擦肉盛方法は、肉盛材を所定の回転速度に調節した後、肉盛材の軸方向に圧力をかけて基材に接触させ、肉盛材を十分に加熱させた時点で、基材に対し移動させることにより、肉盛材と基材との界面に定常的な摩擦熱を発生させ、肉盛材を基材上に塑性的に圧着させて、摩擦肉盛層を形成する方法である。
この方法を使用し、基材となる金属板の表面に摩擦肉盛層を形成する場合は、例えば、台上に金属板を配置した後、回転する肉盛材に圧力をかけて金属板に接触させ移動させている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−14030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基材として金属管を使用する場合、金属管は筒状となって中空であるため、回転する肉盛材に圧力をかけて金属管に接触させると、その圧力で金属管が潰れる恐れがあり、金属管を使用できなくなるという問題があった。また、金属管が潰れない程度に圧力を弱めれば、所望形状の摩擦肉盛層を形成しずらく、また金属管の表面と摩擦肉盛層との密着強度が低下するという問題もあった。
このため、従来は、金属管の表面に摩擦肉盛層を形成するという試みはなされていなかった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、所望形状の摩擦肉盛層を金属管の表面に安定かつ容易に形成できる金属管の摩擦肉盛装置及びその摩擦肉盛方法並びに複合金属管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置は、金属管の内側に内面治具を当接させて該金属管を内側から支持すると共に、高速回転させた肉盛材を前記金属管の外面上の接合部へ押し付け、該金属管をその長さ方向(軸方向)へ移動させながら該金属管の外面を摩擦肉盛した後、該金属管を回動又は移動させて該金属管の外面を順次摩擦肉盛することで、該金属管の外面の一部又は全部に摩擦肉盛層を形成する金属管の摩擦肉盛装置であって、
前記内面治具は、前記金属管の内面に当接し該金属管を内側から支持する裏当て金具と、
前記裏当て金具を前記金属管の内面に当接及び離脱させるテーパー金具又は楕円形金具からなる操作手段と、
前記金属管の周方向に回転し前記操作手段の前記裏当て金具への押圧力を調整する回転軸部とを有する。
【0007】
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、前記裏当て金具は、2又は3以上に分割された分割金具部を有し、該各分割金具部の前記金属管の内面と当接する側に、該金属管の内面に符合する支持面が形成され、かつ該支持面とは反対側に、側断面視して該支持面に対し前記分割金具部の長さ方向に1度以上10度以下の範囲で傾斜した傾斜面が形成され、前記操作手段には前記テーパー金具を使用して、前記各分割金具部を前記テーパー金具に対し前記傾斜面を介して摺動自在とし、しかも前記テーパー金具と前記回転軸部とはねじ機構で連結され、該回転軸部を回転させることで、前記テーパー金具を前記金属管の長さ方向へ移動させて、前記金属管の前記接合部の径方向の前記裏当て金具の幅を調節することが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、前記テーパー金具は、前記内面治具の長さ方向中央部を中心として対向配置され、前記ねじ機構は、前記内面治具の長さ方向中央部を中心として両側に同ピッチの右ねじと左ねじを有し、前記回転軸部を回転して前記対向するテーパー金具を近づけ又は遠ざけることが好ましい。
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、前記裏当て金具の前記分割金具部及び前記テーパー金具のいずれか一方の摺動面側には、ガイド溝が形成されていることが好ましい。
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、前記分割金具部及び前記テーパー金具のいずれか一方又は双方の摺動面側には、焼きつき防止処理がなされていることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、前記ねじ機構は、角ねじ、台形ねじ、又はボールねじであることが好ましい。
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、更に、前記金属管をその軸心を中心として回転させる回転用モータを設け、前記金属管の内側に前記内面治具を配置した状態で該金属管を回動させた後に、前記金属管の別の外面を摩擦肉盛することが好ましい。
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、更に、前記金属管をその長さ方向に移動させる移動手段を設け、前記金属管の内側に前記内面治具を配置した状態で該金属管を移動させた後に、前記金属管の別の外面を摩擦肉盛することが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、前記裏当て金具は、前記金属管の内面に当接する側の断面形状が円弧状であり、前記操作手段に前記回転軸部が取り付けられた前記楕円形金具を使用し、該回転軸部を回動させ該楕円形金具を回動させて、該楕円形金具の長軸側の外面を、前記接合部の直下にある前記裏当て金具とその反対側にある前記金属管の内面にそれぞれ当接させることが好ましい。
第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置において、前記裏当て金具は、2つに分割された分割金具部を有し、前記金属管の内面に当接する側の断面形状が円弧状であり、前記操作手段に前記回転軸部が取り付けられた前記楕円形金具を使用し、該回転軸部を回動させ該楕円形金具を回動させて、該楕円形金具の長軸側の外面を、前記接合部の直下にある前記各分割金具部にそれぞれ当接させることが好ましい。
【0011】
前記目的に沿う第2の発明に係る金属管の摩擦肉盛方法は、第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置を使用して、前記回転軸部を回転し、前記テーパー金具を前記金属管の長さ方向へ移動させて、該金属管の前記接合部の径方向の前記裏当て金具の幅を調節することにより、該裏当て金具を前記金属管の内面に当接させて、該金属管を該裏当て金具で支持する。
前記目的に沿う第3の発明に係る金属管の摩擦肉盛方法は、第1の発明に係る金属管の摩擦肉盛装置を使用して、前記回転軸部を回動し、前記楕円形金具を回動させることにより、前記裏当て金具を前記金属管の内面に当接させて、前記金属管を該裏当て金具で支持する。
【0012】
前記目的に沿う第4の発明に係る複合金属管は、第2、第3の発明に係る金属管の摩擦肉盛方法を使用して、前記金属管に前記摩擦肉盛層を形成する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜10記載の金属管の摩擦肉盛装置、及び請求項11、12記載の金属管の摩擦肉盛方法は、金属管の内面に当接し内側から支持する裏当て金具と、この裏当て金具を金属管の内面に当接及び離脱させる操作手段と、この操作手段の裏当て金具への押圧力を調整する回転軸部とを有する内面治具を、金属管の内側に配置し、裏当て金具で支持された金属管の外面に摩擦肉盛層を形成するので、簡単な構成である金属管の摩擦肉盛装置を使用して、金属管を潰すことなく、所望形状の摩擦肉盛層を金属管の表面に安定かつ容易に形成できる。
【0014】
特に、請求項2記載の金属管の摩擦肉盛装置は、裏当て金具が、所定角度で傾斜した傾斜面が形成された分割金具部を有しており、この各分割金具部をテーパー金具に対し傾斜面を介して摺動自在とするので、テーパー金具を金属管の長さ方向に移動させることにより、複数の分割金具部で構成される裏当て金具の幅を調節できる。また、テーパー金具と回転軸部とはねじ機構で連結されており、回転軸部を回転させることで、テーパー金具を金属管の長さ方向へ移動させて、裏当て金具の幅を調節できるので、裏当て金具の幅を、簡単な構成で容易に調節できる。
【0015】
請求項3記載の金属管の摩擦肉盛装置は、テーパー金具を、内面治具の長さ方向中央部を中心として対向配置し、それぞれのテーパー金具とこれが連結される回転軸部にねじ機構である同ピッチの右ねじと左ねじを形成するので、回転軸部を時計回り又は反時計回りの一方向に回転させることで、対向するテーパー金具を近づけ又は遠ざけることができ、操作性を良好にできる。
請求項4記載の金属管の摩擦肉盛装置は、分割金具部又はテーパー金具の摺動面側に、ガイド溝を形成するので、テーパー金具に対する分割金具部の位置ずれを防止できる。
請求項5記載の金属管の摩擦肉盛装置は、分割金具部又はテーパー金具の摺動面側に、焼きつき防止処理がなされているので、摩擦肉盛で発生する熱によって、金属金具部とテーパー金具との焼きつきが発生することを防止できる。
【0016】
請求項6記載の金属管の摩擦肉盛装置は、ねじ機構が、角ねじ、台形ねじ、又はボールねじであるので、使用によるねじ山の潰れを防止できる。
請求項7記載の金属管の摩擦肉盛装置は、金属管をその軸心を中心として回転させる回転用モータが設けられ、これにより金属管を回動できるので、例えば、摩擦肉盛を行う接合機の接合角度を変えることなく、常に同一方向、例えば、金属管の上方から、摩擦肉盛を実施でき、金属管の摩擦肉盛装置の装置構成を簡単にできる。
請求項8記載の金属管の摩擦肉盛装置は、金属管をその長さ方向に移動させる移動手段が設けられ、これにより金属管をその長さ方向に移動できるので、例えば、長尺の金属管に対して摩擦肉盛する場合であっても、摩擦肉盛を行う接合機を金属管に沿って移動させる必要がなく、金属管の摩擦肉盛装置の装置構成を簡単にできる。
【0017】
請求項9記載の金属管の摩擦肉盛装置、及びこれを使用する請求項12記載の金属管の摩擦肉盛方法は、金属管の内面に当接する側の形状が断面円弧状となった裏当て金具と、操作手段に回転軸部が取り付けられた楕円形金具を使用し、回転軸部を回動させて楕円形金具を回動させ、この楕円形金具の長軸側の外面を裏当て金具とその反対側にある金属管の内面にそれぞれ当接させるので、簡単な装置構成で裏当て金具を金属管の内面に当接させた状態を維持でき、金属管への摩擦肉盛を容易に実施できる。
請求項10記載の金属管の摩擦肉盛装置、及びこれを使用する請求項12記載の金属管の摩擦肉盛方法は、裏当て金具が、2つに分割された分割金具部を有しているので、楕円形金具を回動させた場合に、楕円形金具が金属管の内面を摺動しないため、金属管の内面を傷つける恐れがない。
【0018】
請求項13記載の複合金属管は、金属管の表面に摩擦肉盛層が形成されているので、摩擦肉盛層を構成する金属成分により金属管の成分が希釈されることがなく、良好な品質の複合金属管を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1(A)〜(C)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置の内面治具の部分側断面図、部分拡大側断面図、正面図、図2は同金属管の摩擦肉盛装置の説明図、図3(A)〜(C)はそれぞれ本発明の第2の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置の内面治具の部分側断面図、部分拡大側断面図、正面図、図4(A)〜(C)はそれぞれ本発明の第3〜第5の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置の正面図である。
【0020】
図1(A)〜(C)、図2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置(以下、単に摩擦肉盛装置ともいう)10は、長尺の金属管11の内側に内面治具12を当接させて金属管11を内側から支持すると共に、高速回転させた肉盛材13を金属管11の外面上の接合部へ押し付け、金属管11をその長さ方向へ移動させながら金属管11の外面を摩擦肉盛した後、金属管11を回動(回転)又は移動させて金属管11の外面を順次摩擦肉盛することで、金属管11の外面の一部又は全部に摩擦肉盛層を形成する装置である。なお、ここでは、回転する肉盛材13を金属管11の上方から押し付けて摩擦肉盛を行う場合について、以下に説明するが、他の方向から行ってもよい。
【0021】
図2に示すように、金属管の摩擦肉盛装置10は、架台14と、この架台14上に配置される治具テーブル15と、取り付けられた肉盛材13を高速回転させる主軸ヘッド16と、この主軸ヘッド16を昇降自在とし、肉盛材13を金属管11の外上面の接合部に対して押し付けるシリンダー16aとを有している。
この治具テーブル15には、摩擦肉盛が行われる金属管11を位置決めする複数(ここでは、合計10個)の金属管荷重受け治具17と、この金属管荷重受け治具17の両側に配置され、金属管荷重受け治具17に載置された金属管11の位置決め(クランプのみ)を行うフリー側チャック18、及び金属管11の回転及び位置決め(回転とクランプ)を行う駆動側チャック19とが設けられている。なお、駆動側チャック19には、NC回転テーブル(回転用モータの一例)20が設けられ、金属管11をその軸心を中心として回転(回動)できる構成となっている。この金属管11の回転は、NC回転テーブルを使用することなく、手動で行ってもよい。
これにより、金属管11は、治具テーブル15に固定されて位置決めされる。
【0022】
この治具テーブル15は、治具テーブル移動用サーボモータ15aにより、架台14上を移動自在な構成となっており、治具テーブル15に固定された金属管11を、その長さ方向に移動させることができる。この架台14と治具テーブル15には、摩擦肉盛する際に、金属管11をその長さ方向に移動させるボールねじ送り機構(移動手段の一例)が設けられている。なお、ボールねじ送り機構の代わりに、例えば、ロープ送り機構、チェーン送り機構、ギア送り機構、リンク送り機構、又はシリンダー送り機構のような、従来公知の送り機構を使用してもよく、また手動で行ってもよい。
金属管11内に配置される内面治具12の一方側(フリー側チャック18側)には、シャフト21が接続され、金属管11内から突出したシャフト21が、内面治具用支持治具21aにより吊り下げ支持されている。また、この内面治具用支持治具21aの近傍には、金属管11を吊り下げ支持する金属管用支持治具21bが配置されている。
このシャフト21の端部には、シャフト21の回転(回動)用モータ(サーボモータ)21cが接続されている。
【0023】
図1(A)〜(C)に示すように、内面治具12は、金属管11の内面に当接し金属管11を内側から支持する裏当て金具22を有している。
この裏当て金具22は、例えば、クロムモリブデン鋼(SCM)で構成され、金属管11の長さ方向の長さL1が例えば300〜800mm程度である。なお、裏当て金具22は、内面治具12の長さ方向中央部を中心として左右対称となっている。
裏当て金具22は、金属管11の軸心を中心として2つに分割された同一形状の分割金具部23、24を有している。この2つの分割金具部は異なる形状でもよい。
【0024】
この分割金具部23、24には、それぞれ金属管11の内面に当接する側に、金属管11の内面に符合する円弧状の支持面25、26が形成されている。この支持面25(支持面26も同様)は、摩擦肉盛を行うに際し、金属管11を内側から支持するための面であるため、金属管11を正断面視した場合、金属管11の軸心を中心として、その角度θ1を、90度以上150度以下(好ましくは、下限を100度、更には110度、上限を140度、更には130度)の範囲内で規定するとよい。
また、分割金具部23(分割金具部24も同様)の支持面25と反対側には、分割金具部部23の上下方向の厚みが、その長さ方向中央部に向かって徐々に厚くなるようにテーパー状となって、傾斜面27、28が形成されている。この傾斜面27(傾斜面28も同様)は、側断面視して支持面25に対する角度θ2を、分割金具部23の長さ方向に1度以上10度以下(好ましくは、下限を2度、上限を5度)の範囲にして傾斜させている。
【0025】
内面治具12は、裏当て金具22を金属管11の内面に当接及び離脱させる操作手段の一例であるテーパー金具(楔金具)29、30を有している。
テーパー金具29、30は、例えば、銅又は銅合金で構成された同一形状のものである。このテーパー金具29とテーパー金具30は、内面治具12の長さ方向中央部を中心として対向配置され、長さL2が、裏当て金具22の長さL1の半分よりも短く(例えば50〜180mm程度)なっている。
また、テーパー金具29(テーパー金具30も同様)は、軸方向と直交する断面が長方形となっており、上下方向の幅(分割金具部23、24と接触する面間の距離)が、内面治具12の長さ方向中央部に向かって徐々に狭くなるように縮幅している(楔機構を形成している)。
【0026】
前記した各分割金具部23、24は、テーパー金具29、30に対し、傾斜面27、28を介して摺動自在になっている。なお、テーパー金具29(テーパー金具30も同様)の縮幅は、分割金具部23、24の傾斜面27の角度θ2に対応して縮幅させているため、各分割金具部23、24で構成される裏当て金具22の上下方向の幅は、裏当て金具22の長さ方向に渡って同一である。
この分割金具部23、24の傾斜面27は、それぞれ分割金具部23の長さ方向に渡って凹状となったガイド溝31、32内(即ち、溝底)に形成され、このガイド溝31内にテーパー金具29(テーパー金具30も同様)の上部が、ガイド溝32内にテーパー金具29の下部が、それぞれ摺動自在に嵌め込まれている。なお、テーパー金具にガイド溝を形成することもでき、この場合、ガイド溝内に分割金具部の上部及び下部を摺動自在に嵌め込む。
【0027】
内面治具12は、その軸心を金属管11の軸心と一致させ、金属管11の軸心を中心として、時計回り又は反時計回りに回転する(即ち、周方向に回転する)回転軸部33を有している。
この回転軸部33には雄ねじ部が形成され、この雄ねじ部が、テーパー金具29、30の軸心方向に形成された雌ねじ部に螺合し、回転軸部33とテーパー金具29、30とを連結している。なお、この雄ねじ部と雌ねじ部で、ねじ機構34が構成されている。このねじ機構34は、台形ねじであるが、角ねじ又はボールねじでもよい。
回転軸部33には、内面治具12の長さ方向中央部を中心として両側、即ちテーパー金具29側に右ねじ、テーパー金具30側に左ねじが、それぞれ同ピッチで形成され、回転軸部33を一方向に回転させることで、対向するテーパー金具29とテーパー金具30を近づけ又は遠ざけることができる。なお、右ねじと左ねじは逆でもよい。
【0028】
また、回転軸部33には、対向配置されたテーパー金具29とテーパー金具30との間に配置され、回転軸部33の径よりも突出し、分割金具部23、24の長さ方向中央部の凹部35、36内に回転自在に配置される位置決め部37が設けられている。これにより、回転軸部33に対する裏当て金具22の各分割金具部23、24の位置ずれを防止できる。
このように構成することで、内面治具12の使用にあっては、回転軸部33を回転させることで、対向するテーパー金具29、30を、金属管11の長さ方向で近づけ又は遠ざけて、裏当て金具22への押圧力を調整し、金属管11の径方向の裏当て金具22の幅を調節できる。
【0029】
なお、摩擦肉盛に際しては、内面治具12に熱が伝わるため、例えば、分割金具部23、24及びテーパー金具29、30のいずれか一方又は双方の摺動面側に、窒化処理等の焼きつき防止処理を施すとよいが、施さなくてもよい。
また、テーパー金具と回転軸部の熱膨張の差により、テーパー金具と回転軸部のねじのピッチがずれる恐れもあるので、テーパー金具を、その長さ方向に2又は3以上に分割し、例えば、1ピッチ又は2ピッチ以上の隙間をあけて、回転軸部に螺合させるとよい。これにより、熱膨張の差を隙間で吸収でき、テーパー金具に対する回転軸部の回転をスムーズにできる。
【0030】
以上に示した内面治具12の回転軸部33は、回転用モータ21cに接続されたシャフト21に、ユニバーサルジョイントを介して接続されている。これにより、摩擦肉盛の開始前又は終了後、回転軸部33を回転させて、裏当て金具22の分割金具部23、24を金属管11の内面に当接又は内面から離脱させる。なお、回転軸部用モータを使用することなく、手動で回転させてもよい。
これにより、裏当て金具22で金属管11を支持することができる。
【0031】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛方法について、前記した摩擦肉盛装置10を使用して、図1(A)〜(C)、図2を参照しながら説明する。
まず、摩擦肉盛を行う金属管11と、摩擦肉盛に使用する肉盛材13を準備する。
この金属管11は、例えば、鋼管であり、その内径が30〜100mm程度、長さが1〜10m程度のものである。なお、金属管は、金属製であり、しかも摩擦肉盛できるものであれば、これに限定されるものではない。
また、肉盛材13には、通常、摩擦肉盛が行われている材料、例えば、ニッケル基合金(例えば、Ni−Cr−Fe合金であるインコネル、Ni−Fe−Mo合金であるハステロイ)等を使用できる。
以下、金属管11の外周に肉盛材13を摩擦肉盛する方法について説明する。
【0032】
1.回転軸部33に接続されたシャフト21の回転を停止して、内面治具12の回転と長さ方向の移動を固定する。また、金属管11を架台14の治具テーブル15上に配置する。なお、架台14の両側には、長尺の金属管11又は長尺のシャフト21をそれぞれ支持する複数台の支持台車を配置してもよく、この場合、各支持台車上に設けられた金属管11の受け部及びシャフト21の受け部を、ローラ等の転がり受け構造にするのがよい。
2.フリー側チャック18と駆動側チャック19を閉め、治具テーブル15上に金属管11を固定する。
3.シャフト21を自由状態にして、内面治具12の回転と長さ方向の移動が可能な状態にする。なお、架台14上に配置された金属管11内に、内面治具12を装入するに際しては、対向配置されるテーパー金具29とテーパー金具30との距離を広げ、裏当て金具22の幅を、金属管11の内径よりも狭くして装入する。
【0033】
4.回転用モータ21cを作動させ、金属管11の長さ方向に対向配置されるテーパー金具29とテーパー金具30との距離を縮め、金属管11の径方向の裏当て金具22の幅を調節する。なお、回転用モータ21cは、裏当て金具22の各分割金具部23、24の各支持面25、26を、金属管11の内面に当接させた後に停止する。
5.金属管荷重受け治具17により、金属管11を固定する。
6.治具テーブル移動用サーボモータ15aを作動させ、治具テーブル15を移動させることで、金属管11の肉盛開始位置を主軸ヘッド16に合わせる。
7.金属管11の所定の位置に摩擦肉盛を行う。なお、摩擦肉盛を行うに際しては、肉盛材13を高速回転(例えば、200〜1500回/分程度)し、この肉盛材13を金属管11の外面上の接合部へ押し付けながら、治具テーブル15を所定長さ(例えば、5〜40cmの範囲内)移動させる。肉盛後、治具テーブル15をスタート位置(初期位置)に戻す。
【0034】
8.所定長さの肉盛層を形成した後、金属管荷重受け治具17による金属管11の固定状態を解除する。
9.フリー側チャック18を開放し、NC回転テーブル20により、駆動側チャック19を金属管11及び内面治具12と共に所定角度まで回動させる。
10.フリー側チャック18を閉め、治具テーブル15上に金属管11を固定する。
11.金属管荷重受け治具17により、金属管11を固定する。
12.金属管11の所定の位置に摩擦肉盛を行う。なお、摩擦肉盛を行うに際しては、高速回転させた肉盛材13を金属管11の外面上の接合部へ押し付けながら、治具テーブル15を所定長さ(例えば、5〜40cmの範囲内)移動させる。肉盛後、治具テーブル15をスタート位置へ戻す。
【0035】
13.内面治具12の回転と長さ方向の移動を固定する。
14.金属管荷重受け治具17により、金属管11の固定を解除する。
15.回転用モータ21cを逆回転させ、金属管11の長さ方向に対向配置されるテーパー金具29とテーパー金具30との距離を離し、金属管11の内面から裏当て金具22(即ち、分割金具部23、24)を離す。
16.フリー側チャック18を開き、金属管11の固定状態を解除する。
17.NC回転テーブル20により、駆動側チャック19を金属管11と共に所定角度まで回動させる。
18.フリー側チャック18を閉め、治具テーブル15上に金属管11を固定する。
19.シャフト21を自由状態にして、内面治具12の回転と長さ方向の移動が可能な状態にする。
【0036】
20.回転用モータ21cを作動させ、前記したように、テーパー金具29とテーパー金具30との距離を縮め、金属管11の径方向の裏当て金具22の幅を調節して、裏当て金具22の各分割金具部23、24の各支持面25、26を、金属管11の内面に当接させる。
21.金属管荷重受け治具17により、金属管11を固定する。
22.金属管11の所定の位置に摩擦肉盛を行う。なお、摩擦肉盛を行うに際しては、高速回転させた肉盛材13を金属管11の外面上の接合部へ押し付けながら、治具テーブル15を所定長さ(例えば、5〜40cmの範囲内)移動させる。肉盛後、治具テーブル15をスタート位置に戻す。
23.金属管荷重受け治具17により、金属管11の固定状態を解除する。
【0037】
24.フリー側チャック18を開き、NC回転テーブル20により、駆動側チャック19を金属管11及び内面治具12と共に所定角度まで回動させる。
25.フリー側チャック18を閉め、治具テーブル15上に金属管11を固定する。
26.金属管荷重受け治具17により、金属管11を固定する。
27.金属管11の所定の位置に摩擦肉盛を行う。なお、摩擦肉盛を行うに際しては、高速回転させた肉盛材13を金属管11の外面上の接合部へ押し付けながら、治具テーブル15を所定長さ(例えば、5〜40cmの範囲内)移動させる。肉盛後、治具テーブル15をスタート位置に戻す。
以上のステップ13〜27の各操作を順次繰り返し行うことで、裏当て金具22で支持された金属管11の外面の一部(例えば、片面側のみ)又は全部(全周面)に摩擦肉盛層を形成した複合金属管を製造できる。
【0038】
ここで、金属管11の長さ方向の摩擦肉盛する箇所を変更する場合について、以下に説明する。これは、前記した肉盛材13を摩擦肉盛する方法のステップ7、12、22、27で示したように、肉盛後、治具テーブル15をスタート位置に戻すのではなく、スタート位置に戻さない状態で行う。
1.回転軸部33に接続されたシャフト21の回転を固定して、内面治具12の回転と長さ方向の移動を固定する。
2.金属管荷重受け治具17により、金属管11の固定状態を解除する。
3.フリー側チャック18と駆動側チャック19を開放し、金属管11の固定状態を解除する。
4.金属管11を肉盛終了位置に固定した状態で、治具テーブル15のみを肉盛開始位置まで後退させる。
5.フリー側チャック18と駆動側チャック19を閉め、金属管11を治具テーブル15上に固定する。
6.回転用モータ21cを逆回転させ、金属管11の長さ方向に対向配置されるテーパー金具29とテーパー金具30との距離を離し、金属管11の内面から裏当て金具22(即ち、分割金具部23、24)を離す。
【0039】
7.シャフト21を自由状態にして、内面治具12の回転と長さ方向の移動が可能な状態にする。
8.内面治具12を肉盛開始位置まで後退させる。
以降は、前記した肉盛材13を摩擦肉盛する方法のステップ4〜27を行うことで、裏当て金具22で支持された金属管11の外面の一部(例えば、片面側のみ)又は全部(全周面)に摩擦肉盛層を形成した複合金属管を製造できる。
【0040】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置について説明するが、金属管の摩擦肉盛装置10と同一部材には同一番号を付して説明する。
図3(A)〜(C)に示すように、内面治具40は、金属管11の内面に当接し金属管11を内側から支持する裏当て金具41を有している。この裏当て金具41は、前記した裏当て金具22と同様の機能を有するもので、その形状のみが異なるものであり、分割金具部42、43を有している。この分割金具部42、43には、それぞれ金属管11の内面に当接する側に、金属管11の内面と平行な円弧状の支持面44、45が形成され、この支持面44、45と反対側には、分割金具部42、43の厚みが、その長さ方向中央部に向かって徐々に薄くなるように、傾斜面46、47が形成されている。
【0041】
また、内面治具40は、回転軸部33を有しており、この回転軸部33にねじ機構34を介してテーパー金具48、49が螺合している。このテーパー金具48、49は、前記したテーパー金具29、30と同様の機能を有するもので、その形状のみが異なるものであり、軸方向と直交する断面が長方形となっており、上下方向の幅が、内面治具40の長さ方向中央部に向かって徐々に厚くなるように拡幅している。
このため、裏当て金具41の幅を調整するに際して、対向配置されるテーパー金具48とテーパー金具49とを近づけることで、裏当て金具41の幅が狭くなり、テーパー金具48とテーパー金具49とを離すことで、裏当て金具41の幅が広くなる。
【0042】
図4(A)に示す本発明の第3の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置(以下、単に摩擦肉盛装置ともいう)は、内面治具50を有しており、この内面治具50は、金属管11の内面に当接し金属管11を内側から支持する裏当て金具51を有している。
この裏当て金具51は、例えば、クロムモリブデン鋼(SCM)で構成され、金属管11の長さ方向の長さが例えば300〜800mm程度である。また、裏当て金具51は、金属管11の内面に当接する側に、断面形状が円弧状の支持面52が形成され、その反対側には、金属管11の長さ方向に渡って、位置決めのための凹部53が形成されている。
この裏当て金具51の支持面52は、摩擦肉盛を行うに際し、金属管11を内側から支持するための面であるため、金属管11を正断面視した場合、金属管11の軸心を中心として、90度以上150度以下(好ましくは、下限を100度、更には110度、上限を140度、更には130度)の範囲内で規定するとよい。
【0043】
また、内面治具50は、裏当て金具51を金属管11の内面に当接及び離脱させる断面楕円形の楕円形金具(操作手段の一例)54を有している。
断面視して、この楕円形金具54の長軸方向の長さは、この長軸が金属管11の径方向に配置され、その両外面が、裏当て金具51の凹部53内とその反対側に位置する金属管11の内面にそれぞれ当接した場合、金属管11の内面に裏当て金具51の支持面52が当接する長さに設定されている。一方、楕円形金具54の短軸方向の長さは、この短軸が金属管11の径方向に配置された場合、金属管11の内面から裏当て金具51の支持面52が離れる長さに設定されている。
なお、楕円形金具54には、この楕円形金具54を回動自在とする回転軸部が取付けられている。
【0044】
このように構成することで、回転軸部を所定角度(ここでは、90度)回動させることにより、裏当て金具51を金属管11の内面に当接又は離脱させることができる。
なお、図4(B)に示す本発明の第4の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置の内面治具のように、断面が多角形(ここでは、八角形)の直線部分に丸みを持たせた形状の楕円形金具(操作手段の一例)55を使用することもできる。
更に、図4(C)に示す本発明の第5の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置の内面治具のように、裏当て金具56として、金属管11の軸心を中心として2つに分割された分割金具部57、58を有するものを使用してもよい。この分割金具部57、58は、同一形状であり、前記した裏当て金具51と同様、金属管11の内面と当接する面とは反対側に、分割金具部57、58の長さ方向に渡って、位置決めのための凹部59、60が形成されている。
【0045】
なお、操作手段である楕円形金具61の軸心は、金属管11の軸心と一致している。
この楕円形金具61の長軸方向の長さは、この長軸が金属管11の径方向に配置され、その両外面が、分割金具部57、58の凹部59、60内にそれぞれ当接した場合、金属管11の内面に分割金具部57、58が当接する長さに設定されている。一方、楕円形金具61の短軸方向の長さは、この短軸が金属管11の径方向に配置された場合、金属管11の内面から分割金具部57、58が離れる長さに設定されている。
以上により、回転軸部を所定角度(ここでは、90度)回動し、楕円形金具54、55、61を回動させて、肉盛材が押し付けられる金属管11を裏当て金具51、56で支持し、金属管11に摩擦肉盛層が形成された複合金属管を製造できる。
【0046】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の金属管の摩擦肉盛装置及びその摩擦肉盛方法並びに複合金属管を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、テーパー金具を、内面治具の長さ方向中央部を中心として対向配置した場合について説明したが、対向配置させることなく、1つのテーパー金具のみを使用してもよい。この場合、その形状に応じて、裏当て金具は前記した裏当て金具の半分の長さになる。
また、テーパー金具を、金属管の長さ方向に渡って複数配置してもよい。この場合、その形状に応じて、裏当て金具の長さを決定する。
【0047】
また、前記実施の形態においては、裏当て金具が、2つに分割された分割金具部で構成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、3つ又は4つ以上の複数の分割金具部に分割してもよい。この場合、複数の分割金具部を同一形状とし、金属管の軸心を中心として等角度に配置することが好ましい。なお、このように、裏当て金具を分割した場合には、それに応じてテーパー金具の断面形状も、例えば、三角形、四角形、五角形、又は六角形以上に変更するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置の内面治具の部分側断面図、部分拡大側断面図、正面図である。
【図2】同金属管の摩擦肉盛装置の説明図である。
【図3】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の第2の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置の内面治具の部分側断面図、部分拡大側断面図、正面図である。
【図4】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の第3〜第5の実施の形態に係る金属管の摩擦肉盛装置の正面図である。
【符号の説明】
【0049】
10:金属管の摩擦肉盛装置、11:金属管、12:内面治具、13:肉盛材、14:架台、15:治具テーブル、15a:治具テーブル移動用サーボモータ、16:主軸ヘッド、16a:シリンダー、17:金属管荷重受け治具、18:フリー側チャック、19:駆動側チャック、20:NC回転テーブル(回転用モータ)、21:シャフト、21a:内面治具用支持治具、21b:金属管用支持治具、21c:回転用モータ、22:裏当て金具、23、24:分割金具部、25、26:支持面、27、28:傾斜面、29、30:テーパー金具(操作手段)、31、32:ガイド溝、33:回転軸部、34:ねじ機構、35、36:凹部、37:位置決め部、40:内面治具、41:裏当て金具、42、43:分割金具部、44、45:支持面、46、47:傾斜面、48、49:テーパー金具(操作手段)、50:内面治具、51:裏当て金具、52:支持面、53:凹部、54:楕円形金具(操作手段)、55:楕円形金具(操作手段)、56:裏当て金具、57、58:分割金具部、59、60:凹部、61:楕円形金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管の内側に内面治具を当接させて該金属管を内側から支持すると共に、高速回転させた肉盛材を前記金属管の外面上の接合部へ押し付け、該金属管をその長さ方向へ移動させながら該金属管の外面を摩擦肉盛した後、該金属管を回動又は移動させて該金属管の外面を順次摩擦肉盛することで、該金属管の外面の一部又は全部に摩擦肉盛層を形成する金属管の摩擦肉盛装置であって、
前記内面治具は、前記金属管の内面に当接し該金属管を内側から支持する裏当て金具と、
前記裏当て金具を前記金属管の内面に当接及び離脱させるテーパー金具又は楕円形金具からなる操作手段と、
前記金属管の周方向に回転し前記操作手段の前記裏当て金具への押圧力を調整する回転軸部とを有することを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項2】
請求項1記載の金属管の摩擦肉盛装置において、前記裏当て金具は、2又は3以上に分割された分割金具部を有し、該各分割金具部の前記金属管の内面と当接する側に、該金属管の内面に符合する支持面が形成され、かつ該支持面とは反対側に、側断面視して該支持面に対し前記分割金具部の長さ方向に1度以上10度以下の範囲で傾斜した傾斜面が形成され、前記操作手段には前記テーパー金具を使用して、前記各分割金具部を前記テーパー金具に対し前記傾斜面を介して摺動自在とし、しかも前記テーパー金具と前記回転軸部とはねじ機構で連結され、該回転軸部を回転させることで、前記テーパー金具を前記金属管の長さ方向へ移動させて、前記金属管の前記接合部の径方向の前記裏当て金具の幅を調節することを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項3】
請求項2記載の金属管の摩擦肉盛装置において、前記テーパー金具は、前記内面治具の長さ方向中央部を中心として対向配置され、前記ねじ機構は、前記内面治具の長さ方向中央部を中心として両側に同ピッチの右ねじと左ねじを有し、前記回転軸部を回転して前記対向するテーパー金具を近づけ又は遠ざけることを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項4】
請求項2及び3のいずれか1項に記載の金属管の摩擦肉盛装置において、前記裏当て金具の前記分割金具部及び前記テーパー金具のいずれか一方の摺動面側には、ガイド溝が形成されていることを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項5】
請求項4記載の金属管の摩擦肉盛装置において、前記分割金具部及び前記テーパー金具のいずれか一方又は双方の摺動面側には、焼きつき防止処理がなされていることを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の金属管の摩擦肉盛装置において、前記ねじ機構は、角ねじ、台形ねじ、又はボールねじであることを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の金属管の摩擦肉盛装置において、更に、前記金属管をその軸心を中心として回転させる回転用モータを設け、前記金属管の内側に前記内面治具を配置した状態で該金属管を回動させた後に、前記金属管の別の外面を摩擦肉盛することを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の金属管の摩擦肉盛装置において、更に、前記金属管をその長さ方向に移動させる移動手段を設け、前記金属管の内側に前記内面治具を配置した状態で該金属管を移動させた後に、前記金属管の別の外面を摩擦肉盛することを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項9】
請求項1記載の金属管の摩擦肉盛装置において、前記裏当て金具は、前記金属管の内面に当接する側の断面形状が円弧状であり、前記操作手段に前記回転軸部が取り付けられた前記楕円形金具を使用し、該回転軸部を回動させ該楕円形金具を回動させて、該楕円形金具の長軸側の外面を、前記接合部の直下にある前記裏当て金具とその反対側にある前記金属管の内面にそれぞれ当接させることを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項10】
請求項1記載の金属管の摩擦肉盛装置において、前記裏当て金具は、2つに分割された分割金具部を有し、前記金属管の内面に当接する側の断面形状が円弧状であり、前記操作手段に前記回転軸部が取り付けられた前記楕円形金具を使用し、該回転軸部を回動させ該楕円形金具を回動させて、該楕円形金具の長軸側の外面を、前記接合部の直下にある前記各分割金具部にそれぞれ当接させることを特徴とする金属管の摩擦肉盛装置。
【請求項11】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の金属管の摩擦肉盛装置を使用して、前記回転軸部を回転し、前記テーパー金具を前記金属管の長さ方向へ移動させて、該金属管の前記接合部の径方向の前記裏当て金具の幅を調節することにより、該裏当て金具を前記金属管の内面に当接させて、該金属管を該裏当て金具で支持することを特徴とする摩擦肉盛方法。
【請求項12】
請求項9及び10のいずれか1項に記載の金属管の摩擦肉盛装置を使用して、前記回転軸部を回動し、前記楕円形金具を回動させることにより、前記裏当て金具を前記金属管の内面に当接させて、前記金属管を該裏当て金具で支持することを特徴とする摩擦肉盛方法。
【請求項13】
請求項11及び12のいずれか1項に記載の金属管の摩擦肉盛方法を使用して、前記金属管に前記摩擦肉盛層を形成したことを特徴とする複合金属管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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