説明

金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム及びその製造方法

【課題】 ベースフィルム、その上に形成された金属膜、さらにその上に形成された接着剤層を基本構成とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムであって、接着剤層が薄い場合であっても、優れたシールド効果を有するとともに、接着剤層と金属膜との接着力が優れ、フレキシブルプリント配線板との貼り合わせの際の熱プレス等により剥離の問題を生じることのない金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 ベースフィルム、そのベースフィルム上に形成された金属膜、その金属膜上に形成されたCr及び/又はNiの薄膜、及びそのCr及び/又はNiの薄膜上に形成された接着剤層を有することを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム、及びこの金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板等の電気回路から発生する電磁波ノイズをシールドするシールドフィルム等に好適に用いられる、金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板等の電気回路から発生する電磁波ノイズは、他の電気回路、電気製品や人体等へ好ましくない影響を与えることがある。そこで、電磁波ノイズを遮断(シールド)するシールドフィルムをフレキシブルプリント配線板等に貼り、発生する電磁波ノイズの外部への漏出を防いでいる。
【0003】
シールドフィルムとしては、ベースフィルムとその上に積層したシールド層(導電性層)を基本構成とするものが広く知られている。そして、優れたシールド効果(電磁波ノイズの遮断効果)を得るために、シールド層として、導電性フィラーを接着剤中に分散させた導電性接着剤層と金属膜との組合せ(特開平7−122882号公報第1欄第2〜6行、図1)が提案されており、この導電性接着剤層がフレキシブルプリント配線板等と貼り合わされる。
【0004】
フレキシブルプリント配線板は、電気製品の屈曲部に用いられる場合が多く、この場合は繰返しの屈曲に耐えられる屈曲性が求められ、シールドフィルムを貼り合わせたフレキシブルプリント配線板にも屈曲性が求められる。しかし、従来のシールドフィルムは、機械的強度を得る等の理由によりある程度の厚みを必要とし、通常、厚み30〜35μm程度のものが使用されている。
【0005】
このような厚いシールドフィルムを用いると、フレキシブルプリント配線板と貼り合わせた際に、配線板全体として柔軟性に欠けたものとなるとともに、フレキシブルプリント配線板全体の屈曲性に対するシールドフィルムの影響が大きくなり、シールドフィルムが全体の屈曲性を低下させる主たる原因にもなる。そこで、より薄くてかつ高い屈曲性を有するシールドフィルムが望まれる。
【0006】
より薄いシールドフィルムを得るためには、接着剤層を薄くすることが望まれていた。しかし接着剤層を薄くすると、熱プレスの際に接着剤層と金属膜の界面の接着力が低下するという問題が生じた。そこで、薄くてかつ接着力の低下の問題のない、フィルムの開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平7−122882号公報(第1欄第2〜6行、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ベースフィルム、その上に形成された金属膜、さらにその上に形成された接着剤層を基本構成とする積層フィルムであって、接着剤層が薄い場合であっても、接着剤層と金属膜との接着力が優れ、フレキシブルプリント配線板との貼り合わせの際の熱プレス等により剥離の問題を生じることのない金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム、及びこの積層フィルムの製造方法を提供することを課題とする。特に、接着剤層が導電性接着剤層であり、フレキシブルプリント配線板のシールドフィルム等として好適に用いられる積層フィルム、及びこの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、接着剤層と金属膜の間にCr及び/又はNiの薄膜を設けることにより、接着剤層と金属膜との接着力が向上し、前記の課題が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、ベースフィルム、そのベースフィルム上に形成された金属膜、その金属膜上に形成されたCr及び/又はNiの薄膜、及びそのCr及び/又はNiの薄膜上に形成された接着剤層を有することを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを提供するものである(請求項1)。
【0010】
この金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムは、フレキシブルプリント配線板のシールドフィルム等に好適に用いられる。請求項2は、このシールドフィルムとしての態様に該当し、前記の積層フィルムであって、シールドフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを提供するものである。シールドフィルムとして用いられる場合は、接着剤層が導電性接着剤層であることが好ましい。
【0011】
このシールドフィルムでは、ベースフィルム上に形成された金属膜、その金属膜上に形成されたCr及び/又はNiの薄膜により、シールド効果を担うシールド層が構成される。さらに接着剤層が導電性接着剤層である場合は、このCr及び/又はNiの薄膜上に形成された導電性接着剤層もシールド効果を担うシールド層を構成する。シールドフィルムの使用時には、このシールド層が、フレキシブルプリント配線板等の電気回路のグランド回路(アース回路)と接合され共振回路を形成し、その結果、発生した電磁ノイズを遮断しシールド効果を発揮する。
【0012】
ベースフィルム上に形成された金属膜は、銀、銅、アルミニウム等の導電性が高い金属からなる薄膜である。特に好ましくは銀である。請求項3は、この態様に該当し、前記の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムであって、金属膜が、銀、銅又はアルミニウムの膜であることを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを提供するものである。
【0013】
金属膜の厚みは、フィルムの可撓性、柔軟性を維持するため、通常、1μm程度以下が好ましく、さらに好ましくは0.4μm程度以下である。一方、銀等の導電性が高い金属を用いた場合は、0.04μm程度以上あれば優れたシールド効果が得られる。
【0014】
接着剤層は、前記金属膜上に、この金属膜と接触して形成される。前記のように、シールドフィルムとして用いられる場合は、接着剤層が導電性接着剤層であることが好ましいが、この導電性接着剤層は、導電性を有しシールド効果を発揮する役割と、接着剤層としての役割を担う。シールドフィルムとしての使用時には、この導電性接着剤層とフレキシブルプリント配線板が貼り合わされ、フレキシブルプリント配線板中のグランド回路と接合する。通常、金属膜は直接グランド回路と接合されないので、導電性接着剤層は、金属膜とグランド回路を導通する役割も担う。
【0015】
導電性接着剤層は、接着剤に導電性フィラーを分散させることにより形成される。請求項4は、この態様に該当し、前記の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムであって、接着剤層が、接着剤に導電性フィラーを分散させた導電性接着剤層であることを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを提供するものである。
【0016】
導電性接着剤層は、導電性を有しシールド効果を発揮する役割と、接着剤層としての役割を担うため、そこに用いられる接着剤としては、導電性フィラーをよく分散し、かつ優れた接着性能を有する樹脂が好ましく用いられる。
【0017】
フレキシブルプリント配線板分野では、ポリビニルブチラール/エポキシ樹脂系、アクリロニトリルブタジンゴム(NBR)/フェノール樹脂系、エポキシ/ナイロン樹脂系、NBR/エポキシ樹脂系、アクリルエラストマー/エポキシ樹脂系等の接着剤が可撓性フィルムと銅箔との貼り合わせに使用されているが、前記の導電性接着剤層に使用する接着剤としても、同様なものを用いることができる。また、従来のシールドフィルムで用いられているこれらの接着剤に難燃剤を添加したものも用いることができる。
【0018】
特に、エポキシ/ナイロン樹脂系接着剤は優れた接着性能を有するため好ましい。請求項5は、この好ましい態様に該当し、前記請求項4の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムであって、前記接着剤が、エポキシーナイロン系接着剤であることを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを提供するものである。
【0019】
導電性接着剤層中に分散される導電性フィラーは、導電性接着剤層に導電性を付与するものである。この導電性フィラーとしては、金属フィラーやカーボンフィラーが例示される。金属フィラーとしては、ニッケル、銅、銀等の金属粉、ハンダ等の合金粉、金属ウイスカー、銀がコートされた銅、金属メッキを施したガラス繊維やカーボン等を挙げることができる。導電性フィラーの粒径としては、平均粒径で2〜30μm程度の範囲内が好ましく、又粒子の形状としては、球状、鱗片状等が挙げられる。
【0020】
接着剤への導電性フィラーの配合割合は、所望のシールド効果が達成される割合が求められる。導電性フィラーの種類、形状、大きさ、比重や、導電性接着剤層の厚み等により、その好ましい範囲は変動するが、金属フィラーを用いる場合は、通常、接着剤100重量部に対して10〜100重量部が好ましく、特に好ましくは10〜30重量部である。
【0021】
前記のように、屈曲性向上のために、接着剤層の厚みは、薄い方が好ましい。ただし、厚みの具体的な好ましい範囲は、接着剤の種類等により変動し、機械的強度やフィルムとしての柔軟性等を考慮して決められる。導電性フィラーを分散させる接着剤としてエポキシ/ナイロン樹脂系接着剤を用いた場合は、その厚みの好ましい範囲は、5〜10μmである。厚みが5μm未満であると、フレキシブルプリント配線板に貼り合わされるとき、導体回路段差の空間をその接着剤層で埋めきれず、この層を形成した初期段階での密着性が低下し、製造工程中の高温時に気泡が発生して剥離の原因となる。一方10μmを越えると、積層フィルム、しいてはそれを貼り合わせたフレキシブルプリント配線板等について、所望の優れた可撓性、柔軟性、屈曲性が得られない場合がある。
【0022】
本発明は、接着剤層と金属膜の間にCr及び/又はNiの薄膜を設けることをその特徴とする。Cr及び/又はNiの薄膜としては、Cr又はCrを主体とする金属の薄膜、Ni又はNiを主体とする金属の薄膜、Cr及びNi、又はCr及びNiを主体とする金属の薄膜が挙げられる。
【0023】
Cr及び/又はNiの薄膜の厚みは、3オングストローム以上が望ましい。3オングストローム未満であると、接着剤層と金属膜の剥離の防止効果が得られない場合がある。請求項6は、この態様に該当し、前記の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムであって、Cr及び/又はNiの薄膜の厚みが、3オングストローム以上であることを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを提供するものである。
【0024】
より好ましくは、Cr及び/又はNiの薄膜の厚みは、5オングストローム以上、かつ100オングストローム以下の範囲である。5オングストローム以上とすることにより、接着剤層と金属膜の剥離の防止効果がより向上する。一方、100オングストロームを超えると、CrやNiは銀に比べると導電性が悪いので導電性が低下し、又全体の厚みが厚くなるとともにCrやNiは堅く柔軟性がないので屈曲性が悪くなる。請求項7は、このより好ましい態様に該当し、前記の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムであって、Cr及び/又はNiの薄膜の厚みが、5オングストローム以上、100オングストローム以下であることを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを提供するものである。
【0025】
本発明の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを構成するベースフィルムは、積層フィルムに機械的強度を付与するとともに、シールドフィルムとしてフレキシブルプリント配線板に貼り合わされて使用される時には、シールド層の保護層の役割もする。ベースフィルムとしては、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等の樹脂フィルムが挙げられる。特に、芳香族ポリアミド樹脂は、引っ張り弾性率が11〜15GPとポリフェニレンサルファイドに比べても2.5〜4程度大きく、耐熱性も優れている。従って、ベースフィルムを薄くすることができる、さらに高い屈曲性も得ることができるので、好ましい。
【0026】
請求項8は、このより好ましい態様に該当し、前記の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムであって、ベースフィルムが、芳香族ポリアミド樹脂のフィルムであることを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを提供するものである。ここで、芳香族ポリアミド樹脂のフィルムであるとは、芳香族ポリアミド樹脂のみからなる場合、及び芳香族ポリアミド樹脂を主体とする場合のいずれをも含む意味である。
【0027】
なお、芳香族ポリアミド樹脂は、芳香環がアミド基と直接結合した構造を持つ樹脂であり、一般にアラミド樹脂と言われている。芳香族ポリアミド樹脂としては、パラ系アラミド樹脂やメタ系アラミド樹脂等が例示されるが、本発明においては、通常、弾性率が高いパラ系アラミド樹脂が好ましく用いられる。
【0028】
芳香族ポリアミド樹脂からなるベースフィルムの厚みとしては、2〜12μm程度が好ましく、より好ましくは4〜9μm程度である。厚みが、2μm未満であるとピンホール等の存在確率が増え、又機械的強度が低下する場合があり、本発明の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを構成するベースフィルムとして好ましくない場合があり、一方厚みが12μmを越えると屈曲性が低下する場合がある。
【0029】
本発明の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムをシールドフィルムとして用いる場合は、上記の基本的構成、すなわちベースフィルムとシールド層に加えて、ベースフィルム側にハンドリングのための補強フィルムを、シールド層側にはゴミ付着防止の保護フィルムが貼付されて販売されることが多い。補強フィルム、保護フィルムに用いられる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等が例示される。
【0030】
本発明は、さらに、前記の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの製造方法も提供するものである。すなわち、ベースフィルム上に金属膜を形成し、形成された金属膜上にCr及び/又はNiを蒸着又はスパッタリングして、Cr及び/又はNiの薄膜を形成し、この形成された薄膜上に接着剤層を形成することを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの製造方法である(請求項9)。
【0031】
金属膜をベースフィルム上に形成する方法としては、金属の蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング等が例示されるが、成膜スピードの観点から真空蒸着が好ましい。前記のように、金属膜としては銀等の金属が好ましいが、ベースフィルムを構成する樹脂と銀等の金属との密着性は高くない。従って、ベースフィルム上に銀等をそのまま蒸着しても密着性が充分でない場合が多い。そこで通常は蒸着前に、厚み0.1μm程度のポリマー層をコートするプライマー処理がなされている。
【0032】
しかし、ベースフィルムと蒸着層の密着性をさらに向上させるために、好ましくは、ベースフィルムに、窒素プラズマ処理を施した後蒸着を行う。窒素プラズマ処理を施すことにより、蒸着した金属膜とベースフィルムとの密着性がさらに向上する。窒素プラズマ処理は、通常は、5〜25m/分程度の搬送速度で、プラズマ密度0.01〜0.2W/cm、圧力0.01〜0.1Torr程度の条件で行われる。請求項10は、この好ましい態様に該当し、前記の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの製造方法であって、ベースフィルム表面に窒素プラズマ処理をした後、そのベースフィルム表面に金属膜の金属を蒸着して金属膜を形成することを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの製造方法を提供するものである。
【0033】
金属膜上への、Cr及び/又はNiの薄膜の形成の方法としては、金属の蒸着やスパッタリング、イオンプレーティング等が例示される。中でも、蒸着やスパッタリングによって金属膜を形成すると、金属膜の形成に引き続き、同じ装置を使用して、Cr及び/又はNiの薄膜を形成でき、生産性が向上するのでより好ましい。
【0034】
Cr及び/又はNiの薄膜上へ導電性接着剤層を形成する方法としては、導電性フィラーと接着剤を構成する樹脂とを混合したペーストを作成し、このペーストをCr及び/又はNiの薄膜上に塗布した後硬化する方法、溶媒に接着剤を構成する樹脂を溶解し導電性フィラーを分散させた後、この液をCr及び/又はNiの薄膜上に塗布し、その後溶媒を乾燥して硬化する方法等が例示される。
【0035】
金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムがシールドフィルムの場合、前記のようにして製造されたフィルムには、通常さらに、ベースフィルム側にハンドリングのための補強フィルムを、シールド層側にはゴミ付着防止の保護フィルムが貼付されて販売されることが多いが、フレキシブルプリント配線板等への貼りあわせの際には、保護フィルムが取り除かれて、接着剤層とフレキシブルプリント配線とが貼りあわされる。接着剤層とフレキシブルプリント配線とが貼りあわされた後、接着のための熱プレスをすることにより、屈曲性に優れ、電気回路から発生する電磁波ノイズがシールドされ、かつ金属膜と接着剤層との剥離等の問題が生じないフレキシブルプリント配線板が得られる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムは、ベースフィルム、その上に形成された金属膜、そのさらに上に形成された接着剤層を有するものであるが、接着剤層が薄い場合であっても、金属膜と接着剤層との優れた接着力を有し、フレキシブルプリント配線板との貼り合わせのための熱プレスの際等に、従来は問題となっていた剥離の問題を、ほとんど生じることはない。又、本発明の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの製造方法によれば、この積層フィルムを容易に製造することができる。そして、このようにして製造された金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムを、貼りあわせることにより、優れた屈曲性と優れたシールド効果を有し、剥離の問題も生じないフレキシブルプリント配線板を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に本発明を実施するための最良の形態を、図を用いて説明する。なお、本発明はこの形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り、他の形態へ変更することができる。
【0038】
図1は、本発明の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの一例を示す断面図である。この例では、芳香族ポリアミド樹脂からなるベースフィルム1の上に銀蒸着層2(金属膜)が形成されている。銀蒸着層2の上には、Cr又はNiからなり、厚みが5〜100μmの薄膜3が形成されている。薄膜3の上には導電性接着剤層4が形成されている。
【0039】
この金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムは、芳香族ポリアミド樹脂からなるベースフィルム1の上に真空蒸着により銀蒸着層2を形成し、その後、銀蒸着層2の上に真空蒸着又はスパッタリング等によりCr及び/又はNiの薄膜3を形成し、さらにこの上に、導電性フィラーと接着剤を混合したペースト又は溶液を塗布し硬化して導電性接着剤層4を形成することにより得られる。
【0040】
次に、上記のような積層フィルムを、フレキシブルプリント配線板に貼り合わせて用いる方法の例を説明する。まずフレキシブルプリント配線板のカバーレイに直径1〜2mm程度の穴(スルーホール)を数カ所開けておき、グランド回路が露出するように加工しておく。次に積層フィルムの導電性接着剤層4とカバーレイを熱プレスで貼り合せる。このときグランド回路と導電性接着剤層4との接合部を形成することにより、回路のグランドと銀蒸着層との間で共振回路が形成され、グランドのノイズを減衰させることができる。熱プレス後は一体化したフレキシブルプリント配線板として出荷する。
【0041】
図2は、前記の例に従い金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムが、貼り合わされたフレキシブルプリント配線板を表す断面図である。なお、図2は、フレキシブルプリント配線板の片面に積層フィルムが貼り合わされた例であるが、フレキシブルプリント配線板の両面に積層フィルムが貼り合わされる場合にも、本発明を適用することができる。
【0042】
図2の例においては、フレキシブルプリント配線板は、カバーレイ6、グランド回路8、他の回路9、ポリイミド樹脂膜10からなり、カバーレイ6には直径1〜2mm程度の穴(スルーホール7)が開けられている。導電性接着剤層4とカバーレイ6を熱プレスで貼り合せることにより、このスルーホール7の部分で導電性接着剤層4とグランド回路8との電気的接合が形成されている。
【実施例】
【0043】
次に本発明を、実施例を用いてより具体的に説明するが、実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
実施例1
厚み4.5μmの芳香族ポリアミドフィルム(東レ製パラ系アラミド樹脂、商品名ミクトロン)を真空装置内にセットして、真空度1×10−5Torr台まで放置後、窒素ガスにより窒素プラズマ処理を施した。プラズマ処理中の真空度は0.02Torr、プラズマは単位面積あたり0.2W/cm程度であった。プラズマ時間は、該芳香族ポリアミドフィルムの送り速度の10m/分に対応する時間で行った。次に、真空蒸着装置にて、厚さ1500オングストロームの銀蒸着層をプラズマ処理面上に形成した。
【0045】
銀蒸着層の形成後、この銀蒸着層上に、表1に示す金属(Cr又はNi)の薄膜を、表1に示す形成方法(真空蒸着又はスパッタリング)で形成した。形成後の厚みを、表1に示す。
【0046】
一方、エポキシ−ナイロン樹脂系接着剤(東海ゴム/東亜合成製、商品名:AS−78)に、還元銀粉末(福田金属粉工業製、商品名:AgC−74T)を14重量%となるように加え、さらに粘度調整のための溶媒(トルエン、メタノール混合溶媒)を加えて粘度を4000mPa・Sとし、導電性接着剤溶液を作成した。こうして作成した導電性接着剤溶液を、前記のようにして形成されたCr又はNiの薄膜上に、スロットダイコーターで塗布しその後乾燥しシールドフィルムを得た。乾燥温度は130℃、塗布時の搬送速度は7m/分であった。その結果、乾燥後の導電性接着剤層の厚みは8μmであった。
【0047】
このシールドフィルムについて、シールド性能の目安であるシート抵抗は300mΩ/口以下と問題ないことを確認した。その後、フレキシブルプリント配線板(厚み12μmの銅及び厚み25μmのポリイミドからなる2層基板に、厚み15μmの接着剤と、厚み25μmのポリイミドからなるカバ−レイを貼り合わせたもの)を作成して、前記のシールドフィルムを180℃×30分、30kg/cmの条件で熱プレスして貼り合わせた後、熱プレス後の、導電性接着剤層と銀蒸着膜との接着性評価(ピール強度の測定)を行った。
【0048】
ピール強度の測定は、碁盤目テストで評価した。碁盤目テストは、フレキシブルプリント配線板とシールドフィルムを貼り合せたサンプルに、10mm四方内に1mm間隔の碁盤目状の切り込みを加え、上面に粘着テープを被せ、テープ剥離試験を3回行い、剥離数をカウントする方法で行った。その結果を表1に示す。又、トータル300個中の剥離数が10を越えるものを×、2〜10のものを△、剥離数が1以下のものを○と判定した。
【0049】
【表1】


【0050】
表1の結果から明らかなように、銀蒸着膜上にNiやCrの薄膜を形成することにより、導電性接着剤層と銀蒸着膜との接着性が向上し、導電性接着剤層の銀蒸着膜からの剥離を大きく減少することができる。特に、薄膜の厚みを5オングストローム以上とすることにより、剥離を充分防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のシールドフィルムの例を示す断面図である。
【図2】本発明のシールドフィルムが貼り合わされたフレキシブルプリント配線板の例を表す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ベースフィルム
2 銀蒸着層(金属薄膜)
3 薄膜
4 導電性接着剤層
6 カバーレイ
7 スルーホール
8 グランド回路(アース回路)
9 他の回路
10 ポリイミド樹脂膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム、そのベースフィルム上に形成された金属膜、その金属膜上に形成されたCr及び/又はNiの薄膜、及びそのCr及び/又はNiの薄膜上に形成された接着剤層を有することを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム。
【請求項2】
シールドフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム。
【請求項3】
前記金属膜が、銀、銅又はアルミニウムの膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム。
【請求項4】
前記接着剤層が、接着剤に導電性フィラーを分散させた導電性接着剤層であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム。
【請求項5】
前記接着剤が、エポキシーナイロン系接着剤であることを特徴とする請求項4に記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム。
【請求項6】
Cr及び/又はNiの薄膜の厚みが、3オングストローム以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム。
【請求項7】
Cr及び/又はNiの薄膜の厚みが、5オングストローム以上、100オングストローム以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム。
【請求項8】
ベースフィルムが、芳香族ポリアミド樹脂のフィルムであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルム。
【請求項9】
ベースフィルム上に金属膜を形成し、形成された金属膜上にCr及び/又はNiを蒸着又はスパッタリングして、Cr及び/又はNiの薄膜を形成し、この形成された薄膜上に接着剤層を形成することを特徴とする金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
ベースフィルム表面に窒素プラズマ処理をした後、そのベースフィルム表面に金属膜の金属を蒸着して金属膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の金属膜及び接着剤層を有する積層フィルムの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7589(P2006−7589A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187923(P2004−187923)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】