説明

金属被膜吸着体

【課題】本発明は、有機溶剤を吸着させる無機系吸着材からなる吸着体であって、マイクロ波又は高周波で直接加熱し、無機系吸着材の再生を行うことができる吸着体、及び通電加熱で加熱再生可能な吸着体を提供する。
【解決手段】本発明は、有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、無機系吸着材の表面に、空孔を持つ金属被膜層を形成したことを特徴とする金属被膜吸着体の構成、有機溶剤を吸着し、通電により加熱再生される吸着体であって、担体の表面に、金属被膜層を形成し、次に、無機系吸着材をバインダーと共に担持させたことを特徴とする金属被膜吸着体の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)などの有機溶剤を含む被処理ガスから有機溶剤を吸着、回収する吸着体に係り、より詳しくは、吸着体表面に、金属被膜層を有する金属被膜吸着体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤を含む被処理ガスから、有機溶剤を吸着、回収する一般的な吸着回収装置では、有機溶剤を吸着させた吸着材から有機溶剤を脱離させ、吸着材を再生するために、吸着材を水蒸気で加熱していた。
【0003】
しかし、水蒸気による吸着材の加熱再生では、吸着した有機溶剤を脱離させる熱エネルギーよりも、有機溶剤を脱離させる温度まで吸着材自体を加熱する熱エネルギーの方が遙かに大きい。一般には、有機溶剤の5〜10倍(体積基準)もの多量の水蒸気が必要となる。従って、有機溶剤の凝縮回収時に、多量の凝縮水が混ざった状態で有機溶剤が回収される。
【0004】
この凝縮水には有機溶剤が少なからず含まれておりそのまま排水できず、別途凝縮水の排水処理装置が必要であった。このため、水蒸気加熱を用いた有機溶剤の吸着回収装置及び凝縮水の排水処理装置からなる吸着回収システムは、設備費、維持費ともに大きい。
【0005】
この欠点を改善する方法として、吸着材から有機溶剤を離脱するため、吸着材を水蒸気によらず加熱する脱離手段がある。例えば、加熱した空気など非凝縮性のガスで吸着材を加熱する方法、熱媒体、電気ヒーター、マイクロ波、高周波のエネルギーにより加熱した水蒸気や油などの伝熱体と吸着材を熱交換器を介して接触させることにより、間接的に吸着材を加熱する方法、また通電やマイクロ波や高周波のエネルギーにより吸着材を直接加熱する方法などが知られている。
【0006】
しかし、吸着材として一般的に用いられるゼオライトは、通電やマイクロ波や高周波では加熱されない。そこでマイクロ波や高周波で加熱するために、発熱材となる金属やセラミックスなどを混合した吸着材が開発され、特許文献1〜4に開示されている。
【0007】
特許文献1の第4項9〜21行には、「本発明で用いる好ましい吸着剤は、あらかじめその吸着剤に磁性体を担持ないし含有させたものである。このような吸着剤は、粉末状の吸着剤と粉末状の磁性体との混合物を、所要形状に成形することによって得られる成形物である。この場合、成形助剤としてバインダーが用いられるが、このバインダーは従来慣用されているものであればよく、例えば、水、ベントナイト、水ガラス、高分子物質等が用いられる。また、吸着剤を合成する段階で部分的又は全体的に磁性を持たせる方法で作られたものや、吸着剤に超微粒子状の磁性体を担持・付着させたものや、磁性体粒子表面に吸着剤を付着させたもの等も好ましい吸着剤である。この成形物の形状は、球形状、円柱状、円筒状等の各種の形状であることができる。このような成形物や磁性体を担持させた吸着剤は、その中に磁性体を含むことから、これにマイクロ波等を照射すると、発熱を生じる。本発明においては、その成形物中や吸着剤中の磁性体の割合は、0.05〜50容積%、好ましくは0.1〜20容積%、より好ましくは0.5〜10容積%の範囲に設定するのがよい。」との記載がある。
【特許文献1】WO/2003/080237
【0008】
特許文献2には、粒子状物質を捕集するフィルタ部材にNOx吸収材と触媒を担持 して、排気ガス中のNOxと粒子状物質を共に浄化でき、しかも、NOx吸収材と触媒とフィルタ部材を再生するためのマイクロ波 を発生させる高周波発振器とその電源を小型化できる排気ガス浄化装置として、エンジンの排気ガスG中のNOxと粒子状物質を共に浄化する排気ガス浄化装置1を、NOx吸収材41と触媒42と電気伝導率の大きな材料で形成された粒子43を担持 したフィルタ部材40と、マイクロ波 発生装置51を備えた再生装置50で形成し、前記マイクロ波 発生装置51で発生させたマイクロ波 を導波管51bにより導いて、前記フィルタ部材40に照射するように構成した排気ガス浄化装置が開示されている。
【特許文献2】特開2002−349229号公報
【0009】
特許文献3には、オゾン分解手段として、加熱手段およびオゾンを接触・熱分解する白金担持ゼオライトを用いるチッ素酸化物の除去装置(請求項5)、またチッ素酸化物を含有するガスをオゾン酸化処理する手段、オゾン酸化処理されたガスを接触により吸着除去する吸着手段、マグネトロン、吸着剤 にマグネトロンよりのマイクロ波 を照射して再生する再生手段、吸着塔を減圧して脱着されたガスを脱硝手段へ導く手段、および、脱着されたガスを脱硝する脱硝手段を有するチッ素酸化物の除去装置において、吸着手段がマイクロ波 を吸収して発熱する材料を含み、吸着手段のガス出入り口が金属 ゲートで遮断され、吸着剤 を充填した吸着塔の内側がガラスまたは緻密なアルミナセラミックスでライニングされていることを特徴とするチッ素酸化物の除去装置(請求項18)が開示されている。
【特許文献3】特開2002−263444号公報
【0010】
特許文献4には、悪臭成分の除去機能を有する高性能脱臭用フィルターが配設され、そのメンテナンス性に優れた空気調和機として、 少なくとも無機繊維と誘電体と貴金属 を担持 した無機酸化物と吸着材 から構成される脱臭用フィルター11が室内機熱交換器の上流側に配設されている空気調和機において、脱臭用フィルターが無機繊維40〜60wt%、誘電体10〜20wt%、貴金属 を担持 した無機酸化物1〜5wt%、吸着材 20〜40wt%、無機結合剤1〜5wt%で構成され、吸着材 が比表面積100〜500m2/gのゼオライト であり、誘電体が比誘電率500以上、平均粒径が1μm以下であることを特徴とする。又、室内機内部より脱臭用フィルターを外し、前記脱臭用フィルターにマイクロ波 を照射することによって200〜300℃の温度に加熱して、前記脱臭用フィルターに吸着した臭気を再生浄化する脱臭用フィルターの利用方法が開示されている。
【特許文献4】特回2001−276196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜4の吸着材は、いずれも粉末状の金属などの発熱体を吸着材に混合し、成型したもの、或いは吸着体表面にバインダーと共に担持させたものである。発熱体を吸着材に混合又は担持させる場合、均一性分散、即ち均一加熱性、或いは作業性の面から、採用される発熱材の粒子は細かい方が望ましい。しかしながら、発熱材の粒子が細かすぎるとマイクロ波や高周波による発熱効率が悪くなるという問題が残る。
【0012】
そこで、本発明は、有機溶剤を吸着させる無機系吸着材からなる吸着体であって、マイクロ波又は高周波で直接加熱し、無機系吸着材の再生を行うことができる吸着体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するために、有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、無機系吸着材の表面に、空孔を持つ金属被膜層を形成したことを特徴とする金属被膜吸着体の構成とした。有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、マイクロ波又は高周波難加熱性の担体の表面に、金属被膜層を形成し、次に、無機系吸着材をバインダーと共に担持させたことを特徴とする金属被膜吸着体の構成とした。また、有機溶剤を吸着し、通電により加熱再生される吸着体であって、担体の表面に、金属被膜層を形成し、次に、無機系吸着材をバインダーと共に担持させたことを特徴とする金属被膜吸着体の構成とした。
【0014】
さらに、前記金属が、ニッケルであることを特徴とする前記何れかに記載の金属被膜吸着体の構成、前記無機系吸着材が、ゼオライトを含むことを特徴とする前記何れかに記載の金属被膜吸着体の構成、前記金属被膜層の形成が、無電解メッキであることを特徴とする前記何れかに記載の金属被膜吸着体の構成、前記金属被膜吸着体が、複数の貫通孔を有することを特徴とする前記何れかに記載の金属被膜吸着体の構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。ゼオライトなどの無機系吸着材を水蒸気を用いなくともマイクロ波又は高周波で直接加熱し、吸着材を再生することができる。従って、従来のように、凝縮水の排水処理装置が不要になり、設備費、維持費が安く小型のVOC吸着回収処理システムが実現できる。
【0016】
さらに、無電解メッキ法を採用することにより、吸着材の表面に金属被膜層を簡易かつ部分的に厚みを調整して形成することができる。従って、マイクロ波により、放電現象を起こすことがなく、均一かつ急速に加熱し、有機溶剤を吸着した吸着材を再生することができる。
【0017】
加えて、金属被膜層は、極めて薄く形成されるため、従来の吸着材への混合、表面への担持に比べ、極めて少ない量で済むため、高価な金属を使用しても極めて低廉で金属被膜吸着体を提供することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、有機溶剤を吸着させた無機系吸着材をマイクロ波又は高周波で直接加熱し、吸着材の再生を行うことができる吸着体であって、均一かつ素早く吸着材を加熱させ、揮発性有機化合物(VOC)などの有機溶剤を含む被処理ガスから有機溶剤の吸着、回収に使用される吸着体を提供する目的を、有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、無機系吸着材の表面に、空孔を持つ金属被膜層を形成したことを特徴とする金属被膜吸着体の構成とし、また、有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、マイクロ波又は高周波難加熱性の担体の表面に、金属被膜層を形成し、次に、無機系吸着材をバインダーと共に担持させたことを特徴とする金属被膜吸着体の構成とすることで実現した。
【0019】
また、マイクロ波に替え、通電加熱によっても加熱再生可能となる吸着体を提供する目的を、有機溶剤を吸着し、通電により加熱再生される吸着体であって、担体の表面に、金属被膜層を形成し、次に、無機系吸着材をバインダーと共に担持させたことを特徴とする金属被膜吸着体の構成とすることで実現した。
【0020】
ここで、無機系吸着材とは、従来から吸着回収に使用されている非有機性吸着材であって、マイクロ波、高周波で加熱されないも或いは加熱されにくいものをいう。例えば、シリカゲル、アルミナ、マグネシア、カルシア、シリカ−アリミナ、ゼオライト等が包含される。
【0021】
金属被膜吸着体の形状は、粉末状や繊維状、顆粒状等の種々の形状が採用でき、特に制約されないが、金属被膜吸着体の吸着面積を広く確保するため、複数の貫通孔を有する構造が好適である。貫通孔は、略円、或いは、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形(ハニカム構造)、略八角形などの多角形が採用できる。従って、それら形状に応じて、適宜無機系吸着材の形状を選択する。
【0022】
空孔を有する金属被膜層は、無電解メッキ法、真空蒸着法により、無機系吸着材の外表面に一部を残して(未完全に)、マイクロ波発熱性の金属を形成したものをいう。また、吸着材は、被処理ガスと接触し、目的の被吸着物質を吸着させるものである。従って、金属被膜層は、無機系吸着材の外表面に、外表面が露出した状態で、即ち、外表面の一部を残し、形成される必要がある。メッキ温度、メッキ時間、メッキ浴中の金属イオン濃度を適宜調節することで、最適な金属被膜層の厚さ、吸着材の露出度合いを調節することができる。吸着材の吸着能力試験において、吸着材の外表面の露出度合いを知ることができる。
【0023】
ここで、無電解メッキ法とは、外部電源を使用せずに、電気化学的酸化還元反応により金属を被処理物、ここでは無機系吸着材表面に、還元析出させるものであり、(1)異種金属のイオン化傾向の差(電位差)を利用する浸漬メッキ、置換メッキ、(2)金属と還元剤を含んだ溶液内で、酸化還元反応により金属を析出させる化学メッキがある。本発明では何れの方法も採用することができる。
【0024】
本発明において、吸着材の外表面を部分的の覆う金属被膜層としては、即ち、無電解メッキ法において採用できる金属は、マイクロ波又は高周波で加熱されるものであればよく、好ましくは均一に被膜され、金属被膜層に硬さがあるものが好ましい。
【0025】
例えば、採用される金属としては、ニッケル、鉄、スズ、銅、銀、金、白金などが例示できる。但しこれらに限定されるものではない。
【0026】
ニッケルの無電解メッキ法について簡単に説明する。
(1)次亜リン酸の還元作用によるニッケルメッキ被膜形成
次亜リン酸水溶液は加熱しただけでは還元反応を起こさない。そこで、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウムなどの鉄族元素や白金族元素の金属を含浸することにより、それら金属の表面が触媒となり、次亜リン酸イオンの脱水素反応が起こり、原子状水素Hとメタ亜リン酸イオンPO になる。メタ亜リン酸イオンは水と結合して亜リン酸イオンとなる。原子状水素Hの一部は直接結合して水素ガスになり、一部はニッケルイオンの還元剤となりニッケルを被処理面に析出させ、一部は次亜リン酸を還元してリンとなる。
【0027】
(2)ジメチルアミンボランの還元作用によるニッケルメッキ被膜形成
還元剤としてDMAB(ジメチルアミンボラン)を使用したとき、主反応は次のようになる。
3Ni2++(CHNHBH+3HO→
3Ni+HBO+(CHHN+5H
さらに、副反応と伴い、副産物として水素ガスが発生し、ホウ素も共析される。
【0028】
(3)ヒドラジンの還元作用によるニッケルメッキ被膜形成
還元剤として、塩酸ヒドラジンや硫酸ヒドラジンが用いられる。無電解ニッケルメッキ中のヒドラジンの酸化反応は次亜リン酸塩やDMABを還元剤とする無電解メッキとは異なり、反応中に水素ガスを発生しない。メッキ浴のpHが高くなると、還元力が強くなるため強アルカリ性で使用される。還元剤の酸化反応に伴い、メッキ浴のpHは低下し、析出速度は遅くなるので、アルカリ性で効果のある緩衝剤およびニッケルと錯体を形成する錯化剤を選択する必要がある。得られるメッキ被膜の組成は、ほぼニッケル金属のみとなる。
【0029】
以下、添付図面に基づき、本発明である金属被膜吸着体について詳細に説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は本発明である金属被膜吸着体の一例の模式図である。図2は本発明である金属被膜吸着体の一例の部分断面模式図である。
【0031】
本発明である金属被膜吸着体1は、有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、無機系吸着材2の外表面の一部2aを残し、空孔3aを有する金属被膜層3が形成されている。ここでは、一部2aを確認できるよう大きく描写されているが、実際は、目視できない程度に一部2aは、無機系吸着材2の外表面全面に、無機系吸着材2の外表面を露出するように多数存在する。被吸着ガスと無機系吸着材2が接触できるようにするためである。
【0032】
金属被膜層3は、無電解メッキ法により、形成されることが望ましく、その厚さは、厚い部分でも1μm以下であり、平均約0.1μm程度である。薄いメッキ被膜を形成することにより、必然的に空孔3aも形成される。
【実施例2】
【0033】
図3は、本発明である第2の金属被膜吸着体の斜視方向から撮影した写真である。図4は、図3の金属被膜吸着体の拡大写真である。写真中央の白枠が、直下の拡大写真に対応する。なお、写真右の数字は拡大倍率である。図5は、図3の金属被膜吸着体を構成する無機系吸着材(ゼオライト)の斜視方向から撮影した写真である。
【0034】
本発明である金属被膜吸着体4は、図5に示すゼオライト素材の無機系吸着材5の外表面に、ニッケルを無電解メッキ法により、ゼオライト外表面を完全に覆わないように、空孔3aを有する金属被膜層3を形成してなる。
【0035】
この金属被膜吸着体4の大きさは、縦約2.5cm、横約7cm、高さ約3.5cmである。1辺約2mmの略三角形状の貫通孔4aが高さ方向に複数貫通する。なお、金属被膜層3は、図5に示す複数の貫通孔5aを有するゼオライト素材の無機系吸着材5に、一般的なニッケルの無電解メッキ法よって、ニッケル被膜を形成した。
【0036】
これにより、ゼオライト表面を、未完全に覆う金属被膜層を形成することができた。即ち、マイクロ波で加熱され、かつ被吸着物質をメッキ被膜なしの無機系吸着材5の吸着能力と同程度の吸着能力を発揮することができた。
【0037】
図6は、本発明である金属被膜吸着体にマイクロ波を照射したときの表面温度分布である。金属被膜吸着体4は、図3の金属被膜吸着体4と同一である(図3の右側面に対応。)。照射したマイクロ波は、2.45GHであった。温度部分は、日本アビオニクス社製、赤外線サーモグラフィ(TVS700)で測定した。
【0038】
本発明である金属被膜吸着体4がマイクロ波で加熱されていることが分かる。図右の温度バーに対応する金属被膜吸着体4の温度部分を線で結んだ。金属被膜吸着体4の頂部は約90℃、側面は約30℃であった。さらに、長時間マイクロ波を照射すると、全面が100℃を越える温度を示した(図示せず)。
【0039】
図7は、無機系吸着材(ゼオライト)にマイクロ波を照射したときの表面温度分布である。無機系吸着材5は、金属被膜吸着体4に用いたにニッケルメッキを施していない略三角形の複数の貫通孔5aを有するゼオライトである。マイクロ波の照射、温度測定方法は図6の場合と同様である。
【0040】
観測の結果からも明らかなように、ゼオライト素材のみの無機系吸着材5は、マイクロ波によって、全く加熱されておらず、照射前の無機系吸着材5の外表面温度と変化がなかった。無機系吸着材5の全面に渡り、ほぼ同一温度約25℃であった。図右の温度バーに対応する無機系吸着材5の温度部分を線で結んだ。
【実施例3】
【0041】
図8は本発明である第3の金属被膜吸着体の模式図である。図9は本発明である第3の金属被膜吸着体の部分断面模式図である。
【0042】
本発明である金属被膜吸着体6は、有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、マイクロ波又は高周波難加熱性の担体7の表面に、薄い金属被膜層8を形成し、次に、無機系吸着材9をバインダーと共に担持させてなる。さらに、金属被膜吸着体6を貫通する複数の貫通孔6a(図8上下方向)を有する。
【0043】
マイクロ波又は高周波難加熱性の担体7は、ここではセラミックスを採用した。ハニカム形状に成型した焼成前のセラミックス組成物に、前述の実施例1、2同様の無電解メッキ法により金属被膜層8を形成した。その後、無機系吸着材9をバインダーとともに表面に塗布し、焼成して金属被膜吸着体6とした。マイクロ波、高周波で加熱する場合の担体としては、セラミックスの他に、ガラスも採用できる。
【0044】
金属被膜層8には、空孔があっても無くてもよい。セラミックスに、マイクロ波又は高周波による発熱、有機溶剤の吸着機能を求めていないためである。
【0045】
無機系吸着材9は、先の実施例1、2の無機系吸着材の素材と同様であるが、その形状は、球形などで、粉末状としバインダーとともに、金属被膜層の表面に担持される。
【0046】
バインダーとしては、水ガラス、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等がある。
【0047】
金属被膜吸着体6では、金属被膜層8の上に無機系吸着材9の層が形成されるので、金属被膜層の性状や成膜工程により吸着能に影響を受けることがなく、本構成では成膜条件の自由度が高くマイクロ波の加熱に適した金属被膜層が容易に得られる。
【実施例4】
【0048】
次に、通電加熱で金属被膜吸着体を加熱し、再生する金属被膜吸着体について説明する。先ず、通電加熱で加熱する金属被膜吸着体の作成方法について、図10〜図11を参照し述べる。
【0049】
図10〜図11は、本発明である通電加熱用の金属被膜吸着体の作成工程を示す部分断面模式図である。ハニカム構造である担体を用いた場合は、貫通孔方向に、電流が流れるように、吸着材を担持させる金属被膜、及び電極となる金属被膜を形成する。
【0050】
図10(A)は、ゼオライトをハニカム構造に成型した実施例3と同一の担体7であって、貫通孔7aに沿った一部断面図である。図10(B)は、所定の形状に整形した担体7をメッキ液に浸漬し、無電解メッキ法によって、通電加熱に適当な電気抵抗が得られる程度の薄い金属被膜(一次金属被膜層10)を担体7の表面全体に成膜した様子を表している。
【0051】
図11(C)は、図10(B)の金属被膜担体7に、さらに貫通孔7aの開口部がある上端面7b、下端面7cに無電解メッキ法により、電気抵抗が十分低くなるような厚い金属被膜層を形成し、電極(それぞれ上電極11、下電極12)としたことを表している。上下電極11、12は、すでに一次金属被膜層10が形成されているため、通常の電気メッキにより、厚い金属被膜層を形成し、電極としてもよい。また、貫通孔7a内に形成した金属被膜層の金属と異なる金属で、電極を形成してもよい。
【0052】
図11(D)は、図11(C)の金属被膜した担体7の側面7dにマスキング13を施したところを表している。次の工程で、側面7dに無機系吸着材を担持させる必要が無いためである。
【0053】
図12(E)は、側面7dのマスキング13の後、無機系吸着材9とバインダーの混合物を、ディッピングなどにより、貫通孔7aの内壁に担持させた様子を表している。その後、マスキング13を除去し、焼成することで、通電加熱可能な金属被膜吸着体14が完成する。なお、有機溶剤などの被吸着物質を含む被処理ガスは、貫通孔7a内に導入し、貫通孔7a内の無機系吸着材に吸着させる。
【0054】
図12(F)は、上述のようにして得た金属被膜吸着体14に通電している様子を表している。電源15と、金属被膜吸着体14の上下電極11、12は、リード線15aを介して接続する。これにより、電気が貫通孔7a方向に通電する。一次金属被膜層10が所定の抵抗値を有するため、加熱される。従って、金属被膜吸着体14は、被吸着物を脱離し、再生される。
【0055】
このようにしてなる金属被膜吸着体14では、貫通孔14a方向に電流を流す必要がある。担体7が絶縁体もしくは高電気抵抗体のセラミックスであるため、断面方向には電流は流れない。
【0056】
この場合の担体としては、絶縁体もしくは通電加熱に用いる貫通穴内壁面に形成された金属膜よりも遥かに高い電気抵抗を有し、耐熱性が必要で、ガラスやセラミックスのようなものが採用できる。
【0057】
よって、図10〜図11に示す方法により、上下電極11、12を作成する他、貫通孔7aが設けられている両面に、被処理ガスを通すことのできる電極(パンチングメタルや網状)を導電性接着剤などで、一次金属被膜層10に接着し、通電すれば金属被膜層が通電により加熱される。
【0058】
このようにして、メッキ法により、担体7を加熱する一次金属被膜層10を形成し、さらに厚い金属被膜層を電極とすることで、担体7の加熱に必要最小現の金属被膜層を形成することができ、高価な金属を用いても、極めて低価格で、通電加熱用の吸着体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明である金属被膜吸着体の一例の模式図である。
【図2】本発明である金属被膜吸着体の一例の部分断面模式図である。
【図3】本発明である第2の金属被膜吸着体の斜視方向から撮影した写真である。
【図4】図3の金属被膜吸着体の拡大写真である。
【図5】図3の金属被膜吸着体を構成する無機系吸着材(ゼオライト)の斜視方向から撮影した写真である。
【図6】本発明である金属被膜吸着体にマイクロ波を照射したときの表面温度分布である。
【図7】無機系吸着材(ゼオライト)にマイクロ波を照射したときの表面温度分布である。
【図8】本発明である第3の金属被膜吸着体の模式図である。
【図9】本発明である第3の金属被膜吸着体の部分断面模式図である。
【図10】本発明である通電加熱用の金属被膜吸着体の作成工程を示す部分断面模式図である。
【図11】本発明である通電加熱用の金属被膜吸着体の作成工程を示す部分断面模式図である。
【図12】本発明である通電加熱用の金属被膜吸着体の作成工程を示す部分断面模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1 金属被膜吸着体
2 無機系吸着材
2a 一部
3 金属被膜層
3a 空孔
4 金属被膜吸着体
4a 貫通孔
5 無機系吸着材
5a 貫通孔
6 金属被膜吸着体
6a 貫通孔
7 担体
7a 貫通孔
7b 上端面
7c 下端面
7d 側面
8 金属被膜層
9 無機系吸着材
10 一次金属被膜層
11 上電極
12 下電極
13 マスキング
14 金属被膜吸着体
14a 貫通孔
15 電源
15a リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、無機系吸着材の表面に、空孔を持つ金属被膜層を形成したことを特徴とする金属被膜吸着体。
【請求項2】
有機溶剤を吸着し、マイクロ波又は高周波照射により加熱再生される吸着体であって、マイクロ波又は高周波難加熱性の担体の表面に、金属被膜層を形成し、次に、無機系吸着材をバインダーと共に担持させたことを特徴とする金属被膜吸着体。
【請求項3】
有機溶剤を吸着し、通電により加熱再生される吸着体であって、担体の表面に、金属被膜層を形成し、次に、無機系吸着材をバインダーと共に担持させたことを特徴とする金属被膜吸着体。
【請求項4】
前記金属が、ニッケルであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の金属被膜吸着体。
【請求項5】
前記無機系吸着材が、ゼオライトを含むことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の金属被膜吸着体。
【請求項6】
前記金属被膜層の形成が、無電解メッキであることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の金属被膜吸着体。
【請求項7】
前記金属被膜吸着体が、複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の金属被膜吸着体。

【図1】
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【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−12394(P2010−12394A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173608(P2008−173608)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(506149748)エンバイロメント・テクノロジー・ベンチャーズ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】