説明

金属製スクラップ付着夾雑物除去装置及び金属製スクラップ付着夾雑物除去方法

【課題】 ダイオキシン類や揮発性有機化合物等の有害物質の大気への排出量を低減することができ、且つ夾雑物を燃焼除去する際に使用される重油や天然ガス等の化石燃料の使用量を低減して二酸化炭素の排出量を削減することが可能な金属製スクラップ付着夾雑物除去装置及び金属製スクラップ付着夾雑物除去方法を提供すること。
【解決手段】 金属製スクラップを加熱して夾雑物を燃焼除去する加熱炉と、金属を担体に担持させた触媒を備えた触媒槽とを備えており、前記触媒槽は前記加熱炉に接続されており、前記夾雑物の燃焼により発生するガスが前記触媒槽を通過して大気へ排出されることを特徴とする金属製スクラップ付着夾雑物除去装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製スクラップ付着夾雑物除去装置及び金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関し、より詳しくは、金属製スクラップに付着する夾雑物の燃焼時に発生するダイオキシンの排出量を低減することができ、且つ化石燃料の使用量を削減して二酸化炭素の排出量を削減することができる金属製スクラップ付着夾雑物除去装置及び金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の金属のスクラップを金属製品の原材料として再利用するシステムが構築されている。
例えば、サッシ、使用済みのアルミ缶、アルミニウムダライ粉等のアルミニウムスクラップは、アルミニウム製品の原材料(アルミニウム二次合金地金)として再利用される。
【0003】
通常、スクラップには塗料、ビニール等の可燃物、油水分等の夾雑物が付着しており、スクラップを金属製品として再生するためには先ずこれらの夾雑物を除去する必要がある。
【0004】
図9は従来の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置を示す模式図である。
従来の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置(a)には、金属製スクラップを加熱して夾雑物(塗料、ビニール、油水分等)を燃焼除去する加熱炉(b)と、加熱処理した際に発生するガスを再燃焼させる再燃焼炉(c)とが備えられており、再燃焼炉(c)には再燃焼させたガスを急冷する急冷槽(d)が接続されている。急冷槽(d)を通過したガスは粉塵除去装置(e)を通って大気へ放出される。
【0005】
先ず、金属製スクラップは、加熱炉(b)に導入されて加熱処理(例えば400℃程度)が施され、夾雑物が燃焼除去される。夾雑物が除去されたスクラップは加熱炉(b)に備えられた排出口(f)から排出され回収される。回収されたスクラップは選別機(g)に導入され、異種金属が取り除かれる。
一方、夾雑物の燃焼除去の際に発生するガスは、加熱炉(b)に接続される再燃焼炉(c)に導入される。このガスは、塗料やビニール等の夾雑物が燃焼した際に発生するものであり、ダイオキシン類、揮発性有機化合物等を含んでいる。
再燃焼炉(c)での処理温度は加熱炉(b)での処理温度よりも高い温度(例えば800℃)であり、この処理によりダイオキシン類が分解される。
ガスは再燃焼炉(c)で再燃焼された後に急冷槽(d)にて急冷される。この急冷処理よって、ダイオキシン類の再合成が抑制される。
急冷槽(c)を通過したガスは粉塵除去装置(e)に導入されて粉塵が除去された後に大気へ放出される。
【0006】
上記した従来の方法では、再燃焼時の温度が十分に高くないとダイオキシンが完全に分解されず、また、急冷までの滞留時間が長いとダイオキシン類が再合成されるという虞があった。これに加えて、ダイオキシン類が分解する800℃以上の温度まで再燃焼炉(c)の温度を上げようとすると、多量の化石燃料(重油、天然ガス等)を要し、そのため二酸化炭素の排出量が増加するという問題があった。
【0007】
特許文献1には、アルミニウムダライ粉の再生処理時に発生するダイオキシン類の除去方法が開示されている。
特許文献1の開示技術は、スクラップ(アルミニウム)に付着する夾雑物を燃焼除去した際に発生するダイオキシン類を含有するガスを、煤を含むガスに混入してダイオキシン類を煤に吸着させるものである。
【0008】
特許文献1の開示技術を用いると、スクラップの不完全燃焼によって発生する大量の煤をダイオキシン類の除去剤として用いるため、特別な装置を使用せずにダイオキシン類の除去が可能となる。
しかしながら、特許文献1の開示技術では、ダイオキシン類は分解されずに煤に吸着されることになる。従って、大気中へ排出されるガスには、煤に吸着されなかったダイオキシン類が含有される虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−33627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、ダイオキシン類や揮発性有機化合物等の有害物質の大気への排出量を低減することができ、且つ夾雑物を燃焼除去する際に使用される重油や天然ガス等の化石燃料の使用量を低減して二酸化炭素の排出量を削減することが可能な金属製スクラップ付着夾雑物除去装置及び金属製スクラップ付着夾雑物除去方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、金属製スクラップを加熱して夾雑物を燃焼除去する加熱炉と、金属を担体に担持させた触媒を備えた触媒槽とを備えており、前記触媒槽は前記加熱炉に接続されており、前記夾雑物の燃焼により発生するガスが前記触媒槽を通過して大気へ排出されることを特徴とする金属製スクラップ付着夾雑物除去装置に関する。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記加熱炉と前記触媒槽の間に前記ガスが燃焼される燃焼炉が設けられることを特徴とする請求項1記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置に関する。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記燃焼炉内の温度が350〜450℃であることを特徴とする請求項2記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置に関する。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記加熱炉は外部から誘導加熱により加熱されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置に関する。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記加熱炉が回転式加熱炉であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置に関する。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記担体に担持される前記金属が白金であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置に関する。
【0017】
請求項7に係る発明は、前記金属製スクラップがアルミニウムからなることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置に関する。
【0018】
請求項8に係る発明は、金属製スクラップを加熱炉に導入して加熱処理を施し、前記加熱処理により前記金属製スクラップに付着する夾雑物を燃焼除去した際に発生するガスを前記加熱炉から排気し、前記加熱炉から排気した前記ガスを、金属を担体に担持させた触媒を備えた触媒槽に導入し、前記触媒槽を通過したガスを大気へ排出することを特徴とする金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する。
【0019】
請求項9に係る発明は、前記加熱炉から排気した前記ガスを燃焼炉内に導入して燃焼させた後に前記触媒槽に導入することを特徴とする請求項8記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する。
【0020】
請求項10に係る発明は、前記燃焼炉内の温度が350〜450℃であることを特徴とする請求項9記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する。
【0021】
請求項11に係る発明は、前記加熱炉は外部から誘導加熱により加熱されることを特徴とする請求項8乃至10いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する。
【0022】
請求項12に係る発明は、前記加熱炉が回転式加熱炉であることを特徴とする請求項8乃至11いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する。
【0023】
請求項13に係る発明は、前記担体に担持される前記金属が白金であることを特徴とする請求項8乃至12いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する。
【0024】
請求項14に係る発明は、前記金属製スクラップがアルミニウムからなることを特徴とする請求項8乃至13いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明によれば、金属製スクラップを加熱して夾雑物を燃焼除去する加熱炉と、金属を担体に担持させた触媒を備えた触媒槽とを備えており、前記触媒槽は前記加熱炉に接続されており、前記夾雑物の燃焼により発生するガスが前記触媒槽を通過して大気へ排出されることにより、ダイオキシン類や揮発性有機化合物等の有害物質の大気への排出量を低減することができるとともに、加熱の際の化石燃料の使用量を削減することができる。従って、ダイオキシン類の低減だけではなく、二酸化炭素の排出量削減も可能となる。
加えて、加熱の際の燃料として例えば重油を使用する際、重油の使用量を低減できるため、重油に含まれる水素の混入による品質の劣化を防ぐことができる。
【0026】
請求項2に係る発明によれば、前記加熱炉と前記触媒槽の間に前記ガスが燃焼される燃焼炉が設けられることにより、既存の設備の構成を大幅に変更することなく、ダイオキシン類や揮発性有機化合物の排出量を低減することができる。
【0027】
請求項3に係る発明によれば、前記燃焼炉内の温度が350〜450℃であることにより、重油や天然ガス等の化石燃料の使用量を低減することができるとともに、燃焼による白煙や黒煙の発生を抑えることができる。
【0028】
請求項4に係る発明によれば、前記加熱炉は外部から誘導加熱により加熱されることにより、重油や天然ガス等の化石燃料の使用量をより低減することができ、二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0029】
請求項5に係る発明によれば、前記加熱炉が回転式加熱炉であることにより、スクラップを効率的に加熱して夾雑物を燃焼除去することができる。
【0030】
請求項6に係る発明によれば、前記担体に担持される前記金属が白金であることにより、ダイオキシンの分解効率をより向上させることができる。そのため、加熱炉の温度を低下させることが可能となり、化石燃料の使用量を削減することができる。
【0031】
請求項7に係る発明によれば、ダイオキシンの排出を抑制して種々の金属加工製品に汎用可能なアルミニウムスクラップに付着する夾雑物を除去することができる。
【0032】
請求項8に係る発明によれば、金属製スクラップを加熱炉に導入して加熱処理を施し、前記加熱処理により前記金属製スクラップに付着する夾雑物を燃焼除去した際に発生するガスを前記加熱炉から排気し、前記加熱炉から排気した前記ガスを、金属を担体に担持させた触媒を備えた触媒槽に導入し、前記触媒槽を通過したガスを大気へ排出することにより、ダイオキシン類や揮発性有機化合物等の有害物質の大気への排出量を低減することができるとともに、加熱の際の化石燃料の使用量を削減して二酸化炭素の排出量も削減することができる環境負荷の少ない金属性スクラップ付着夾雑物除去方法とすることができる。
【0033】
請求項9に係る発明によれば、前記加熱炉から排気した前記ガスを燃焼炉内に導入して燃焼させた後に前記触媒槽に導入することにより、既存の設備の構成を大幅に変更することなく、ダイオキシン類や揮発性有機化合物の排出量を低減することができる。
【0034】
請求項10に係る発明によれば、前記燃焼炉内の温度が350〜450℃であることにより、重油や天然ガス等の化石燃料の使用量を低減することができるとともに、燃焼による白煙や黒煙の発生を抑えることができる。
【0035】
請求項11に係る発明によれば、前記加熱炉は外部から誘導加熱により加熱されることにより、化石燃料の使用量をより低減することができ、二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0036】
請求項12に係る発明によれば、前記加熱炉が回転式加熱炉であることにより、スクラップを効率的に加熱して夾雑物を燃焼除去することが可能となる。
【0037】
請求項13に係る発明によれば、前記担体に担持される前記金属が白金であることにより、ダイオキシン類の分解効率をより向上させることができ、加熱炉の温度を低下させることが可能となり、化石燃料の使用量を削減することができる。
【0038】
請求項14に係る発明によれば、ダイオキシンの排出を抑制して種々の金属加工製品に汎用可能なアルミニウムスクラップに付着する夾雑物の除去が可能な方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置を示す模式図である。
【図2】誘導加熱により加熱する場合の加熱炉の概略図であって、(a)は断面図であり、(b)は斜視図である。
【図3】本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置の他の実施形態を示す模式図である。
【図4】本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置の更に他の実施形態を示す模式図である。
【図5】実施例及び比較例のダイオキシン類の定量結果を示す図である。
【図6】実施例及び比較例の揮発性有機化合物の定量結果を示す図である。
【図7】実施例及び比較例の粉塵の定量結果を示す図である。
【図8】実施例及び比較例の全炭化水素の定量結果を示す図である。
【図9】従来の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置及び金属製スクラップ付着夾雑物除去方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置を示す模式図である。
金属製スクラップ付着夾雑物除去装置(1)は、金属製スクラップを加熱して夾雑物を燃焼除去する加熱炉(2)を備えている。
加熱炉(2)には、触媒槽(3)が接続されており、この触媒槽(3)には金属を担体に担持させた触媒(図示略)が備えられている。
【0041】
金属製スクラップには、塗料、ビニール、プラスチック等の可燃物、水、油等の夾雑物が付着している。スクラップから再生金属製品を得るためには、これらの夾雑物を除去する必要がある。上記した夾雑物は金属製スクラップを加熱処理することにより除去される。
【0042】
金属製スクラップは、先ず加熱炉(2)に導入されて加熱処理が施される。このとき、金属製スクラップに付着する上記した夾雑物が燃焼しガスが発生する。
このガスは加熱炉(2)から炉外へ排気され、加熱炉(2)に接続して設置された触媒槽(3)に導入された後に、該触媒槽(3)を通過して大気へ排出される。
一方、夾雑物が除去された金属製スクラップは、加熱炉(2)に設けられたスクラップ排出口(4)から加熱炉(2)の炉外へ排出されて回収される。回収された金属製スクラップは選別機(5)に導入されて混入する異種金属が取り除かれる。例えば、アルミニウムの場合、磁選別により混入する鉄が取り除かれる。異種金属が取り除かれた金属製スクラップは回収されてダライ製品となる。
【0043】
加熱炉(2)は金属製スクラップを内部に収容して加熱できるものであれば特に限定されず、公知の加熱炉(2)を使用することができる。例えば、キルンを使用する場合はロータリーキルンのような回転式加熱炉であることが好ましい。
加熱炉(2)を回転式とすることで金属製スクラップを均一に加熱することができ、効率的に夾雑物を燃焼除去することができる。
【0044】
加熱炉(2)の加熱手段は特に限定されず、公知のもの(例えば燃焼バーナー)を使用することができる。
また、加熱炉(2)は外部から加熱されてもよく、加熱炉(2)の外壁にコイル(6)を配設して誘導加熱にて加熱炉(2)を加熱することができる(図2参照)。誘導加熱を用いることで重油や天然ガス等の化石燃料を使用する必要がなく、金属製スクラップに付着する夾雑物の除去の際の二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0045】
金属製スクラップを加熱して夾雑物を燃焼除去する際の加熱炉(2)内の温度は250〜550℃であることが好ましい。この温度範囲であると、金属製スクラップに付着する夾雑物を確実に除去することができる。
加熱炉(2)内の温度が250℃未満であると夾雑物が十分に燃焼せずにスクラップ表面に残留する虞があり、一方550℃を超えると夾雑物は確実に燃焼除去されるが使用される化石燃料が増加するため、いずれの場合も好ましくない。
【0046】
加熱炉(2)において金属製スクラップに加熱処理が施されると、金属製スクラップに付着する夾雑物が燃焼する。この夾雑物の燃焼に伴って、ガスが発生する。
上記したように、金属製スクラップには塗料、ビニール、プラスチック等が付着しており、これらの中には塩素を含有する物質が含まれている。このような物質が不完全燃焼すると、ポリ塩化ジベンゾフラン、ポリ塩化ジベンゾ−p−ジオキシン、コプラナーポリ塩化ビフェニル等のダイオキシン類が生成する。また、ガスにはダイオキシン類の他に揮発性有機化合物も含まれる。
【0047】
ダイオキシン類や揮発性有機化合物の有害な物質を含むガスの排出量を低減するために、本発明では、夾雑物の燃焼により発生したガスは触媒槽(3)を介して大気中へ排出される。この触媒槽(3)は加熱炉(2)に接続され、加熱炉(2)で発生したガスが触媒槽(3)に導入される。
【0048】
触媒槽(3)は金属を担体に担持させた触媒を備えている。
金属を担体に担持させた触媒は、ダイオキシン類を分解できるものであれば特に限定されず、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)等が例示されるが、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)は金属製スクラップに付着する切削油等に含まれる硫黄との相互作用によりダイオキシンの分解を妨げる虞があるため好ましくない。一方、白金(Pt)はダイオキシンの分解効率が高く、また、切削油等に含まれる硫黄との相互作用も生じないため好適に使用される。
【0049】
上記した金属を担持させる担体は特に限定されず、例えば炭素(活性炭)、シリコーン樹脂、セラミックス等を使用することができるが、耐熱性に優れるセラミックスを使用することが好ましい。セラミックスとしては、アルミナ(Al)や炭化ケイ素(SiC)等が例示される。また、セラミックスを使用することで、揮発性有機化合物やガス中の粉塵を吸着して大気への排出を防止することが可能となる。
【0050】
上記した触媒槽(3)を通過させたガスは、そのまま大気へ排出してもよいが、集塵機のような粉塵除去装置(7)を通過させて排出してもよい(図3参照)。触媒槽(3)を通過させることにより粉塵が除去されるが、上記した構成を備えることで大気へ排出されるガス中の粉塵量をより低減することができる。
【0051】
また、加熱炉(2)で発生するガスは、加熱炉(2)から排気された後に直接触媒槽(3)に導入されてもよいが、加熱炉(2)と触媒槽(3)との間に燃焼炉(8)を設置して、燃焼炉(8)に導入されてもよい(図4参照)。
このような構成とすることで、既存の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置(図9参照)の構成を大幅に変更することなく、夾雑物除去の際に排出されるダイオキシン類や揮発性有機化合物等の排出を低減することができる。
燃焼炉(8)の炉内の温度は、従来はダイオキシン類を分解するために800℃以上に設定されるが、本発明においては触媒槽(3)でダイオキシン類が分解されるため、350〜450℃の範囲に設定される。加熱炉(2)での加熱処理で発生するガスは自燃性であるため、上記した温度範囲で燃焼可能である。従って、燃焼炉(8)の炉内温度を800℃以上の高温に加熱するための手段(例えば燃焼バーナー)が不要となり、装置(設備)の簡略化が可能となるとともに、従来に比して化石燃料の使用量を低減することができる。また、上記の加熱手段が不要となることで、燃焼による白煙や黒煙の発生を抑えることができる。
【0052】
金属製スクラップを加熱炉(2)に投入する前に遠心分離を施してもよい(図示略)。遠心分離を施すことで、金属製スクラップに付着する水分量及び油分量は約3%まで低減することができる。予め油水分を除去することで加熱炉(2)の温度をさらに下げることができ、化石燃料の使用量を低減することが可能となる。
【0053】
本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置(1)は、種々の金属に対して利用することができる。特に、様々な加工製品に汎用可能なアルミニウムに対して好適に利用される。
【実施例】
【0054】
以下、本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置及び金属製スクラップ付着夾雑物除去方法に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。
但し、本発明は下記実施例には限定されない。
【0055】
図1に示すような本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置(1)を使用し、金属製スクラップを加熱処理(350〜400℃の範囲に設定)し、発生したガスを捕集してガス中のダイオキシン類、揮発性有機化合物、粉塵、全炭化水素の夫々について定量した。ダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾフラン、ポリ塩化ジベンゾ−p−ジオキシン、コプラナーポリ塩化ビフェニル)は、実測濃度を毒性等量に換算した。
測定対象は、触媒槽(3)を通過して大気へ排出されたガスとした。触媒槽(3)に設置する触媒として、白金(Pt)をセラミックスに担持させた白金担持セラミックスを使用した。
尚、ダイオキシン類はJIS−K−0311、揮発性有機化合物は平成17年6月環境省告示第61号 別表第1 FID法、粉塵はJIS−Z−8808、全炭化水素はGC−FID法により夫々測定した。
アルミニウム製のダライ粉、缶、チップを使用したものを実施例1、アルミニウム製の缶を使用したものを実施例2、アルミニウム製のダライ粉を使用したものを実施例3とした。
【0056】
また、図1に示す本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置(1)の触媒槽(3)を通さずに大気へ排出されたガスを比較例1とし、ダイオキシン類、揮発性有機化合物、粉塵、全炭化水素について定量した。尚、金属製スクラップとしてアルミニウム製のダライ粉、缶、チップを使用し、加熱処理(350〜400℃の範囲に設定)を施した。
更に、図9に示す従来の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置(a)を使用して大気へ排出されたガスを比較例2とし、ダイオキシン類、粉塵について定量した。尚、金属製スクラップとしてアルミニウム製のダライ粉、缶、チップを使用し、加熱炉(b)にて加熱処理(350〜400℃の範囲に設定)を施した後に、再燃焼炉(c)にて再燃焼処理(750〜800℃の範囲に設定)を施した。図9に示すように、粉塵除去装置(e)を通した後に排出されたガスを捕集した。
【0057】
実施例1〜3及び比較例1,2の測定結果を図5〜8に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1及び図5〜8より、実施例1〜3のガスに含有されるダイオキシン類、揮発性有機化合物、粉塵、全炭化水素は、比較例1に比して極めて少ないことが分かった。
このことから、ダイオキシン類は触媒槽(3)で分解されており、更に、ガスの温度低下による再合成も抑制されていることが分かる。揮発性有機化合物、粉塵、炭化水素の夫々の排出量も少ないことから、これらは触媒槽(3)の触媒担体に吸着されたと考えられる。
一方、比較例2のダイオキシン類量及び粉塵量は、実施例1〜3に比して少ない結果であったが、比較例2で使用した重油量は、実施例1〜3で使用した重油量の約4倍であった。
また、実施例1〜3においては、加熱処理時の白煙や黒煙の発生は見られなかったのに対し、比較例2では再燃焼処理時に白煙、黒煙の発生が確認された。
【0060】
以上より、本発明に係る金属製スクラップ付着夾雑物除去装置及び金属製スクラップ付着夾雑物除去方法を利用すると、ダイオキシン類、揮発性有機化合物、粉塵、炭化水素の排出量を従来のものよりも低減することができるとともに、化石燃料の使用量の削減が可能であり、二酸化炭素の排出量も低減でき、且つ白煙や黒煙の発生を抑制できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、アルミニウムをはじめとする種々の金属製スクラップの再生金属製品製造において、金属製スクラップの前処理に好適に利用される。
【符号の説明】
【0062】
1 金属製スクラップ付着夾雑物除去装置
2 加熱炉
3 触媒槽
4 スクラップ排出口
5 選別機
6 コイル
7 粉塵除去装置
8 燃焼炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製スクラップを加熱して夾雑物を燃焼除去する加熱炉と、
金属を担体に担持させた触媒を備えた触媒槽とを備えており、
前記触媒槽は前記加熱炉に接続されており、
前記夾雑物の燃焼により発生するガスが前記触媒槽を通過して大気へ排出されることを特徴とする金属製スクラップ付着夾雑物除去装置。
【請求項2】
前記加熱炉と前記触媒槽の間に前記ガスが燃焼される燃焼炉が設けられることを特徴とする請求項1記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置。
【請求項3】
前記燃焼炉内の温度が350〜450℃であることを特徴とする請求項2記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置。
【請求項4】
前記加熱炉は外部から誘導加熱により加熱されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置。
【請求項5】
前記加熱炉が回転式加熱炉であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置。
【請求項6】
前記担体に担持される前記金属が白金であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置。
【請求項7】
前記金属製スクラップがアルミニウムからなることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去装置。
【請求項8】
金属製スクラップを加熱炉に導入して加熱処理を施し、
前記加熱処理により前記金属製スクラップに付着する夾雑物を燃焼除去した際に発生するガスを前記加熱炉から排気し、
前記加熱炉から排気した前記ガスを、金属を担体に担持させた触媒を備えた触媒槽に導入し、
前記触媒槽を通過したガスを大気へ排出することを特徴とする金属製スクラップ付着夾雑物除去方法。
【請求項9】
前記加熱炉から排気した前記ガスを燃焼炉内に導入して燃焼させた後に前記触媒槽に導入することを特徴とする請求項8記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法。
【請求項10】
前記燃焼炉内の温度が350〜450℃であることを特徴とする請求項9記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法。
【請求項11】
前記加熱炉は外部から誘導加熱により加熱されることを特徴とする請求項8乃至10いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法。
【請求項12】
前記加熱炉が回転式加熱炉であることを特徴とする請求項8乃至11いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法。
【請求項13】
前記担体に担持される前記金属が白金であることを特徴とする請求項8乃至12いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法。
【請求項14】
前記金属製スクラップがアルミニウムからなることを特徴とする請求項8乃至13いずれかに記載の金属製スクラップ付着夾雑物除去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−169538(P2011−169538A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35414(P2010−35414)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(500548839)アサヒセイレン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】