金属製中空柱状部材及びその製造方法
【課題】斜め荷重を含む、軸方向の荷重ベクトルが大きい荷重負荷時においても、局所的な折れ曲がりによる全体座屈が発生し難く、かつ荷重負荷による入力エネルギーの吸収能の高い中空柱状部材を提供する。
【解決手段】中空柱状部材1は四隅にそれぞれコーナー部2を有し、4辺のうちの少なくとも1辺以上に1つないし複数の凹み部3が成形され、その断面内の最小辺長Lminと最大辺長Lmaxとの比Lmin/Lmaxに、その断面における総稜線数Nを乗じたC値(=N(Lmin/Lmax))が4〜40であることを特徴とする金属製中空柱状部材。
【解決手段】中空柱状部材1は四隅にそれぞれコーナー部2を有し、4辺のうちの少なくとも1辺以上に1つないし複数の凹み部3が成形され、その断面内の最小辺長Lminと最大辺長Lmaxとの比Lmin/Lmaxに、その断面における総稜線数Nを乗じたC値(=N(Lmin/Lmax))が4〜40であることを特徴とする金属製中空柱状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製中空柱状部材及びその製造方法に関し、特に、筐体を構成するフレーム部材として使用される、鋼、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属製の薄肉中空柱状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料高・原料高に伴い製造の現場ではコスト削減が早急に要求されている。しかし、コスト削減により製品の性能が悪くなることは、メーカーの信用失墜につながる可能性がある。特に筐体を構成するフレーム部材の性能悪化は安全性の面で避けなければならない。自動車分野では衝突安全性の維持と燃費向上のため、車体に搭載されるフレーム部材に超ハイテンを適用する例が多くなっている。すなわち、材料の質の変更によりコストの削減が図られている。
【0003】
製品の質を維持または向上させ、かつコスト削減を可能とする技術として、上記の材料そのものの変更によるコスト削減方法があるが、新材料の開発は長い時間と莫大な開発コストを要する。また他のコスト削減方法として、部材形状を最適化することが考えられる。この手法は開発期間と開発コストの面で優れた手法であり、過去に様々な検討が行われている。
【0004】
本発明に関連する先行技術として、特許文献1には、軸方向の少なくとも一部における横断面形状が複数の頂点を有する閉断面であって、内部へ向かって凹んだ溝部を形成する衝撃吸収部材が開示されている。
【0005】
また、特許文献2に中空矩形断面を有するアルミニウム合金押出部材からなるエネルギー吸収部材において、壁面部の外側に矩形断面の凸部を有する部材が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、略矩形断面形状をなす自動車のフロントサイドフレーム構造として、側面に軸線方向に延在する、内側に凸状となるビードや、外側に凸状となるビードが形成されている構造が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−207724号公報
【特許文献2】特開2002−12165号公報
【特許文献3】特開平8−108863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献を含めても、具体的かつ即座に設計に適用できる利便性の高い設計指針は今まで開示されていない。エネルギー吸収能に優れ、かつ局所的な折れ曲がりによる全体座屈が発生し難い断面形状を統計的にまとめた例はなく、設計者の経験と部材レベルの検証の繰り返しという、人材の育成に大きく依存し、かつ時間および開発コストを多くかけ、様々な設計の現場で品質に大きな差が出ているのが現状である。したがって設計者の経験に依存する度合いを低減させ、無駄なコストを消費しないような設計指針は、高品質保持および開発期間短縮を促し、結果として開発競争力およびその持続力を高める結果となりうる。
【0009】
ここで、全体座屈とは、柱状部材が十分に蛇腹状に変形せず、局所的に折れ曲がる現象を指すこととする。一般的にエネルギー吸収能と局所的な折れ曲がりによる全体座屈に対する耐性とは相反する関係にあり、そもそもこの2つを両立させることが難しい。エネルギー吸収能の向上を図れば全体座屈がし易くなり、全体座屈を防ぐため曲げ剛性を高めようとすれば、エネルギー吸収能が低減する。そのため、設計者にはエネルギー吸収能と耐全体座屈性のバランスがとれた設計が要求される。
【0010】
以上の点から、特許文献1に記載された部材は、エネルギー吸収能を高めるために耐全体座屈性が大きく低減するという問題がある。なるほど特許文献1に示される部材は、荷重がある範囲の方向に継続的に負荷するようなとき、優れた衝撃吸収能(以下、エネルギー吸収能と称する)を発揮する可能性がある。
【0011】
しかし、部材の変形に伴い負荷された荷重方向は複雑となるのが普通であり、曲げ剛性の低い断面構造は容易に全体座屈を引き起こす。特許文献1に記載された発明は「蛇腹状に座屈することによって所定の衝撃吸収能を確保すること」(特許文献1の段落番号0032)を課題としているが、特許文献1の図1に記載されているように、コーナー部をカットして八角形断面を基本とする形状は、曲げ剛性を大きく低減させるため、小さな座屈を繰り返すような蛇腹状変形をせず折れ曲がりによる全体座屈を引き起こしやすい。そのため、実際のエネルギー吸収能は想定されるエネルギー吸収能より極端に低くなるおそれがある。
【0012】
また、特許文献1の図17、図18、図19(a)等には、コーナー部(角部、以下同じ)を有する四角形断面の形状も記載されているが、コーナー部の曲率や、寸法が明らかではなく、開示されている図のコーナー部は、図の通り内角が直角で成形されていると仮定すると、加工による板減を引き起こしやすく結果的に弱部になりやすい。同様に多角形で成形された部材は各角部において成形時に局所的な板減を引き起こすため、容易に破断する虞がある。
【0013】
加えて、特許文献1の請求項5で規定されている辺長はかなり広い範囲であり、エネルギー吸収能に大きなばらつきを含む。例えば、四角形状で、それぞれの辺で凹み部が中央に1つ存在し、かつ厚さt=1.6[mm]とすると、請求項5の規定によれば、凹み部の幅W1は6.4(=4×1.6)<W1<104(=65×1.6)となり、残余領域のそれぞれの幅Xi(i=1,2)は6.4<Xi<104のうちから選択できることになる。そのうちX1=X2=100[mm]、W1=10[mm]を採用した場合、即ち、4辺の各辺で窪み部の幅が10mmで、残余領域のそれぞれの幅が100mmとなる場合には、コーナー部の曲率が極めて大きい略四角形であるとしても、後述の本発明で規定するC値は2となり(=20(10/100))、エネルギー吸収能が極めて低い部材となる。このように、極端に断面形状を非対称化させると、さらに蛇腹状に変形せずに折れ曲がりによる全体座屈を引き起こしやすくなる虞がある。
【0014】
特許文献2は、中空矩形断面の辺上に1つないし複数の凸部を有するものであり、凸部形成でコーナー部を増やすことにより部材のエネルギー吸収量の向上を図っている。しかし、凸部を形成した薄肉中空柱状部材は、凸部の外周を延長した直線同士の交点上に図25の符号Aに示すようなコーナー部を有さないため、後述の図2で示すように、コーナー部を有さない部材の場合、曲げ剛性が大きく低減し、小さな座屈を繰り返すような蛇腹状変形をせず折れ曲がりによる全体座屈を引き起こしやすい。そのため荷重の負荷方向によっては、実際のエネルギー吸収能は想定されるエネルギー吸収能より極端に低くなるおそれがある。
【0015】
特許文献3は、本発明と同様に略四角形の辺上に1つないし複数の凹み部を有するものである。しかし、特許文献3は特許文献1と同様に耐座屈性を弱めることでエネルギー吸収能を高めようとするものであり、かつ明確な設計指針が与えられていないため、例えばフレーム部材の中央に局所的にのみ凹み部を設けるような、中央からの折れ曲がりによる全体的な座屈を容易に引き起こすおそれのある形状も多く含んでおり、目的とは逆にエネルギー吸収能を低下させるおそれがある。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、様々な薄肉断面形状における変形によるエネルギー吸収能および耐全体座屈性の両立を図り、エネルギー吸収能に優れ、かつ座屈し難い薄肉中空柱状部材の設計指針を提示すること、並びに金属製中空柱状部材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的に従い、本発明者らは断面形状を様々に変化させエネルギー吸収能と耐全体座屈性を調査した結果、四隅にコーナー部を有する中空部材が折れ曲がりに対する抵抗力に優れること、またその形状は閉断面の最小辺長・最大辺長および総稜線数の関数(C値)が、エネルギー吸収量および座屈のし易さの指標である最小断面二次半径に相関することを見出した。すなわちC値はエネルギー吸収能および耐全体座屈性に優れた薄肉中空柱状部材の設計指針になりうることを知見した。したがって、構造内部材の設置空間が把握できていれば、C値により最良の部材形状が探索可能となる。なお、断面形状は軸方向に一定である必要はなく、軸方向の一部にC値を満たさない箇所があってもよい。ただしその箇所は、曲げに対し構造的な弱部になる可能性があるため、曲げ剛性の高い形状である、凹み部のない断面形状で形成されることが望ましい。
【0018】
即ち、上記課題を解決するため、本発明の要旨は以下の通りである。
発明(1)
四隅にそれぞれ曲率を有するコーナー部を有し、前記コーナー部を含んで閉断面を形成する略四角形の断面形状からなる中空の金属製中空柱状部材であって、4辺のうちの少なくとも一辺以上に1つないし複数の凹み部を有し、その断面内の最小辺長Lminと最大辺長Lmaxとの比Lmin/Lmaxに、その断面における総稜線数Nを乗じて得られるC値(=N(Lmin/Lmax))が4以上40以下であることを特徴とする、金属製中空柱状部材。
但し、前記辺長、前記総稜線数は以下により定義されるものとする。
辺長:
一辺の中間に位置する凹み部の辺長は、隣接した凸部の肩部端点を直線で結んだ距離とする。
一辺の端部にある凸部の辺長は、当該凸部の端部と反対側に位置する肩部端点から端部までの直線距離とする。
一辺の中間に位置する凸部の辺長は、凸部の両側の肩部端点間の直線距離とする。
総稜線数:
閉断面内で曲率を取り除いた各頂点を直線で結んだときの直線の総数。
【0019】
発明(2)
発明(1)において、閉断面の全周長をπとし、部材厚をtとしたときの比π/tが20以上であることを特徴とする金属製中空柱状部材。
【0020】
発明(3)
発明(1)又は(2)において、2箇所のコーナー部の外側又は対向する2辺の間の外側に、それぞれフランジ部を有することを特徴とする金属製中空柱状部材。
【0021】
発明(4)
発明(1)〜(3)の何れかにおいて、用途が自動車用であることを特徴とする金属製中空柱状部材。
【0022】
発明(5)
発明(1)又は(2)の金属製中空柱状部材の製造方法であって、1つの板材を曲げ加工、プレス加工又はロールフォーミングにより成形し、端部同士をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合することを特徴とする金属製中空柱状部材の製造方法。
【0023】
発明(6)
発明(1)又は(2)の金属製中空柱状部材の製造方法であって、1つの板材を曲げ加工又はプレス加工により成形し、端部同士を溶接し、ハイドロフォーム又はロールフォーミングで再成形することを特徴とする金属製中空柱状部材の製造方法。
【0024】
発明(7)
発明(3)の金属製中空柱状部材の製造方法であって、2つの板材を曲げ又はプレス加工により成形し、フランジ部をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合したことを特徴とする金属製中空柱状部材の製造方法。
【0025】
発明(8)
発明(1)又は(2)の金属製中空柱状部材の製造方法であって、シームレスパイプをハイドロフォーム又はロールフォーミングで成形することを特徴とする金属製中空柱状部材の製造方法。
【0026】
なお、本発明で、略四角形とは、窪み部を除く各辺を延長した直線の交点で形成される図形が四角形であることを言う。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、所定の設置可能空間内で、荷重方向によらず折れ曲がりによる全体座屈を引き起こし難く、かつエネルギー吸収能に優れた最良の断面形状を有する金属製中空柱状部材及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の薄肉中空柱状部材を実施するための好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
まず、上記発明(1)について説明する。
第一に、薄肉金属製中空柱状部材に荷重が負荷された場合、エネルギー吸収能の観点から、折れ曲がりによる全体座屈は避けなければならない。軸方向に荷重が加わる場合でも、変形により荷重方向が複雑化し、一定して軸方向に荷重が加わることはないので、折れ曲がりによる全体座屈を防ぐためには、曲げ剛性、すなわち最小断面二次モーメントの大きさが重要となる。図2は縦の長さが80mm、横の長さが80mm、図3は縦の長さが60mm、横の長さが100mmの四角形内で、種々の断面形状とそれらの最小断面二次モーメントを比較したものである。図2、図3で示した断面形状を有する6つの薄肉金属製中空柱状部材は、ともに材料としてJSC590Yを用いた。板厚はともに1.6mmである。図中に示された形状は各断面形状の略図である。また図中の矢印はそれぞれの形状と最小断面二次モーメントとが対応している。図から四角形内のコーナー部に凹み部のある断面形状(図2、図3のそれぞれ右側の四角形)は他の断面形状に比べ、極端に最小断面二次モーメントが低いことがわかる。すなわち、折れ曲がりによる全体座屈を防ぐためには、四隅にそれぞれコーナー部を有し、前記コーナー部を含んで閉断面を形成する略四角形が最良の断面形状であると考えられる。
【0030】
第二に、本発明者らは略四角形で様々な断面形状における最小断面二次半径を検討した。最小断面二次半径rmin[M]は、最小断面二次モーメントImin[M4]と断面積A[M2]により下式で表される幾何学的変数である。
【0031】
【数1】
【0032】
最小断面二次半径rmin[M]は、一般的に耐座屈性を表す指標であるが、最小断面二次モーメントを断面積で除したものであるため、板厚の影響を除いた曲げ剛性を表す指標と捉えることができる。すなわち、最小断面二次半径rminは全体座屈の指標となり、最小断面二次半径rminが大きい断面形状を有する部材は全体座屈が発生し難い部材であるといえる。
【0033】
図4に各断面形状に対するC値と最小断面二次半径rminを比較した結果を示す。図4は、略四角形の縦の長さが80mm、横の長さが80mmの場合の結果である。図からC値の増加とともに最小断面二次半径rminが減少していることが確認できる。特にC値が3程度と小さい値である場合、最小断面二次半径rminの変動が大きい。またC値がある程度大きくなると最小断面二次半径rminの変動が小さくなってくることが確認できる。
【0034】
ここで、C値は本発明者らが新たに発明した設計指針値であり、上述したように、中空の金属製柱状部材の断面内の最小辺長Lmin[M]と最大辺長Lmax[M]との比Lmin/Lmaxに、その断面における総稜線数Nを乗じて得られた値である。一般に総稜線数Nをある程度大きくすると吸収エネルギー量は向上する傾向があるが、凹み部の位置、総数、大きさによっても吸収エネルギー量は大きくばらつくため、総稜線数Nだけでは薄肉中空柱状部材の性能を的確に評価することは難しい。そこで、本発明者らは最小辺長Lmin[M]と最大辺長Lmax[M]との比Lmin/Lmaxを総稜線数Nに乗じることにより、総稜線数の影響だけでなく、凹み部の位置、総数、大きさの影響をも考慮できるような設計指針値Cを発明した。
【0035】
第三に、本発明者らは略四角形で様々な断面形状における吸収エネルギー量をFEMに基づく数値解析により検討した。FEMで用いたモデルは長手方向長さが400mmの鋼製薄肉中空柱状部材であり、剛体壁により軸方向かつ圧縮方向に100mmの強制変位を与えた。複数の断面形状において同様の解析を行い、それぞれの断面形状に対するエネルギー吸収量を調べた。図5に各断面形状に対するC値と吸収エネルギーE[J]を比較したものを示す。図5は略四角形の縦の長さが80mm、横の長さが80mmの場合の結果である。図からC値の増加とともに吸収エネルギーEが増加していることが確認できる。またC値が大きくなるにつれ吸収エネルギーEの上昇が飽和することが確認できる。
【0036】
これらの知見から、曲げ剛性の高い略四角形状の金属製薄肉中空柱状部材の性能は、C値により良好にまとめることができることを知見した。また、本発明者らは、鋼製だけでなく、アルミニウム、ステンレス、チタン等においてもC値が4〜40の薄肉中空柱状部材がエネルギー吸収能および耐全体座屈性に優れた部材であることを見出した。C値が4未満である場合、エネルギー吸収能が急激に減少するため構造体の筐体を構成するフレーム材として機能しなくなるおそれがある。またC値が40超である部材は、総稜線数が多い部材であり製作が難しく、製作コストも増大する。さらにエネルギー吸収量の増加量および最小断面二次半径の減少量ともに微小であるため、利点が見出せないC値の領域である。C値が4に近いほど吸収エネルギーが比較的大きく、耐全体座屈性が非常に高い部材を意味する。逆にC値が40に近いほど吸収エネルギーが非常に大きく、耐全体座屈性が比較的大きい部材を意味する。従って、C値は4以上とし、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上とするのが好適である。また、C値の上限は40以下とし、好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下とするのが好適である。
【0037】
設置場所により適切にC値を考慮した部材を設置することが望まれる。また、設計の際に基本となる設置できる空間であるが、薄肉中空柱状部材のエネルギー吸収量および耐全体座屈性を高めるため、可能な限りその略四角形の面積を1500mm2以上に大きくすること、および正方形に近い形状とすること、つまり、略四角形の2辺の比を1〜1.2とすることが望ましい。
【0038】
さらに、断面形状のコーナー部においては曲率を付与することで、急激な板減を避けることができるので、2.5mm−1以下とすることが好ましく、耐全体座屈性を向上させるために0.02mm−1以上とすることが好ましい。
【0039】
なお、C値は最小辺長Lminと最大辺長Lmaxとの比Lmin/Lmaxに、その閉断面における総稜線数Nを乗じた値であるが、その詳細を図6に示す。各辺長は、略四角形のコーナー部2および凹み部3の形成により生じた凸部4において曲率を取り除いたときの形状を元に算出する。端部にある凸部4については凸部の肩部端点5から端部6までを結んだ直線の長さを辺長とし、凹み部3については隣接した凸部4の肩部端点5を直線で結んだ長さを辺長とする。また、中間にある凸部の場合(図示しない)は凸部の肩部端点間の直線距離とする。端点5および端点7に曲率を付与するときは、その曲率半径を0mmとしたときの形状を元に最小辺長Lminと最大辺長Lmaxを算出する。これにより閉断面内で最短のものをLmin[M]、最長のものをLmax[M]とする。また、総稜線数は各頂点を直線で結んだときの直線の総数とする。図中の丸囲いの数字はある一辺中の稜線を左端から数えたときの例であり、図6の場合、略四角形の1辺について、稜線数は5となるので、残る3辺も同じ形状であれば、総稜線数は20となる。
【0040】
次に、上記発明(2)について説明する。
第一に耐全体座屈性を向上させるために、略四角形の一辺の端部に付与される曲率半径Rは大きすぎてはならない。第二に角部の急激な板減を避けるため略四角形の一辺の端部に付与される曲率半径Rは小さすぎてはならない。そこで略四角形の一辺の長さをn分割した長さが曲率半径Rに相当するとすると、略四角形における閉断面の全周長πはおよそ以下の(1)式で表すことができる。
【0041】
【数2】
【0042】
なお、ここで閉断面の全周長とは、凹み部を有した断面形状であった場合でも略四角形の全周長を指すものとする(例えば、前述の図2の場合、π=320(=4×80)であり、図3の場合、π=320(=2×(60+100))である)。(1)式の両辺を厚さtで割ると、以下の(2)式が得られる。
【0043】
【数3】
【0044】
また、曲げにより発生する最大ひずみεfは、以下の(3)式で表される。
【0045】
【数4】
【0046】
よって略四角形における閉断面の全周長πと板厚tとの比は、(2)式および(3)式より、以下の(4)式で記述することができる。
【数5】
【0047】
なお、上式は耐全体座屈性のためn>10、また急激な板減を防ぐためεf<1の2つの条件を高機能な金属製中空柱状部材の必要条件としている。
【0048】
以上より、全周長πと板厚tとの比π/tは、耐全体座屈性とエネルギー吸収性能をより向上させるため20以上とし、好ましくは80以上、更に好ましくは160以上とするのが好適である。
【0049】
次に、上記(3)について説明する。
C値による設計指針はフランジ部を有する薄肉中空柱状部材においても適用可能である。本発明者らは、図7(a)の断面形状にフランジ部を付与した2種類の薄肉中空柱状部材に対しエネルギー吸収量および最小断面二次半径を調査した。それぞれの断面形状の寸法を、図10、図11に示す。両部材とも鋼製(JSC590Y鋼)とし、長さは400mm、厚さtは1.6mm、および全角部に0.25mm−1の曲率が付与されている。図7(a)の部材の全角部の曲率も0.25mm−1である。剛体壁により軸方向かつ圧縮方向に100mmの強制変位を与えたときのエネルギー吸収量およびその部材の最小断面二次半径を、フランジ部を有さない図7(a)で示される薄肉中空柱状部材と、上記図10と図11で示される薄肉中空柱状部材のそれぞれにおいて比較した。その結果を図12、図13に示す。
【0050】
図12および図13は、各断面形状における最小断面二次半径および吸収エネルギー量を比較したものである。これらの実施例から、最小断面二次半径および吸収エネルギー量は、フランジ部の有無に関わらず、C値が4〜40の範囲内で想定される範囲内にあり、フランジ部を付与した場合でもC値は良好な設計指針を与えることがわかる。
【0051】
図10に示されるフランジを略四角形の隣り合う角部に付与した場合、フランジ部を持たない形状に比べてエネルギー吸収量が若干高く、また若干最小断面二次半径も大きい。したがってフランジ部を略四角形の隣り合う角部に付与した形状が最良と考えられるが、フランジ部を大きくしすぎるとフランジ部の高い曲げ剛性のため、断面内の曲げ剛性が極端に不均一になり全体座屈を引き起こしやすくなる。
【0052】
図11に示されるフランジを略四角形の対向する二辺の外側に付与した場合、フランジ部を持たない形状に比べて、最小断面二次半径は若干低下するもののエネルギー吸収量は大きく向上する。これは、断面内の曲げ剛性が比較的対称であること、最小断面二次半径が小さくなり蛇腹状に変形したことによりエネルギー吸収量が大きくなったと考えられる。フランジ部を付与することによりエネルギー吸収量が向上したが、フランジ部が大きすぎる場合、小さな座屈を繰り返すような蛇腹状変形をせず折れ曲がりによる全体座屈を引き起こしやすい。
【0053】
また、フランジ部が小さすぎると接合が困難となり接合部が弱くなるおそれがある。上記の知見に従い、接合部が弱化することを防ぐためフランジ部の長さは4t以上、全体座屈を起こし難くするためフランジ部の長さは12t以下とすることが望ましい。
【0054】
次に、上記発明(4)について説明する。
自動車分野では、衝突安全性能のいっそうの向上化、燃費向上のためのいっそうの車体軽量化、グローバル展開に向けた多くの車種の開発期間短縮といった多く課題に対し、多くの設計者、研究者が取り組んでいる。
【0055】
衝突安全性能関係において、日本では国連統一基準(ECE規則)R94のオフセット衝突時の乗員保護と同等の基準が制定され、2007年の新型乗用車から適用になっている。また2.5t以下の商用車にも適用が拡大されている。米国では2009年からFMVSS214に32km/hポール側突の追加が計画されている。FMVSS301が改正され80km/hオフセット後突が2006年から段階的に適用される。
【0056】
燃費関係において、日本ではエネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)の改正により、2015年度を目標達成年度とした「重量車燃費基準」が策定され、2006年4月から施行される。米国では、連邦は2008−2011年式の小型トラックのCAFEシステムに関する改正案を発表した。連邦・カリフォルニア州両方において、次期規制強化が議論されている。
【0057】
グローバル展開に関しては、自動車の輸出量は近年増加の一途をたどっており、2001年と2005年を比較しても約22%と急激に増加している。日本のメーカーのロシア進出等、今後海外生産が国内生産を上回ることが予想される。
【0058】
以上のような背景から、急ピッチで進む設計期間の短縮、車体軽量化、衝突安全性の一層の向上のために、本発明は、設計者の負担を減らし、上記課題を早急に解決する有効なツールとなると考えられる。自動車の衝突時に動的な荷重が負荷される部材は数多くあるが、特に前面衝突時の衝突エネルギー吸収に大きく寄与するフロントサイドメンバ、または後面衝突時の衝突エネルギー吸収に大きく寄与するリアサイドメンバの形状決定時に本発明は大きく貢献できると考えられる。
【0059】
次に、上記発明(5)について説明する。
図7(a)で示される断面形状を持つ薄肉中空柱状部材を製作する場合、まず、図14(a)に示す断面形状の板材を用意し、図14(b)のように2つの凹み部11および両端に曲げ部12をプレスにより形成する。角部の曲率はプレス荷重や、必要によりしわ押え荷重を制御することにより、適正範囲に制御することができる。次に凹み部11に挟まれた中央平面部10を上下に挟み込むように冶具により固定し、図14(c)に示すように、冶具の両端に曲げ部14を再びプレスにより成形する。次に、図14(d)に示すように、上記工程により重なった板材の両端部13を溶接により接合し所定の形状を形成する。また凹み部の総数および位置はプレス成形に使用する型の変更、またはカムを組み合わせることで調節可能である。
【0060】
プレス時のパッド背圧およびプレス荷重は材質および部材寸法により異なるが、JSC590Y鋼を用いて図7(a)で示した薄肉中空柱状部材の場合、プレス荷重は50t以上、パッド背圧は5t以上とすることが望ましい。また次工程である曲げ工程も同様にプレス荷重は100t以上、パッド背圧は10t以上が好適である。なお、成形工程を容易にするため、冶具の両端の固定部は脱着可能とし成形部材は長手方向に引き抜くことで取り出しを可能とすることが望ましい。
【0061】
別の成形方法として、ロールフォーミングを利用してもよい。まず、図15(a)に示す断面形状の板材を用意し、複数のロールにより図15(b)のように、最終的に一つの板材をロール15およびロール16により2つの凹み部17とコーナー部18を成形する。角部の曲率はロールの圧下荷重を制御することにより、適正範囲に制御することが可能である。次に図15(c)に示すように、上記工程により重なった板材の両端部19を溶接により接合し所定の形状を形成する。
【0062】
接合においては、本成形部材を衝撃吸収部材として利用する場合、局所的な弱部を低減するため、熱影響部が少ないレーザー溶接を用いることが望ましい。
【0063】
次に、上記発明(6)について説明する。
図7(a)で示される断面形状を持つ薄肉中空柱状部材を製作する場合、溶接鋼管をハイドロフォームにより拡管し、2つの凹み部21および4つの曲げ部22を成形する。角部の曲率はハイドロフォームの金型、媒体の圧力を制御することにより、適正範囲に制御することが可能である。凹み部の総数および位置は、ハイドロフォームに使用する型を変更することで調節することが可能である。
【0064】
ハイドロフォーム時の軸押量および内圧は材質および部材寸法により異なるが、JSC590Y鋼を用いて図7(a)で示した薄肉中空柱状部材を成形する場合、まず、図16(a)に示す断面形状の板材を用意し、図16(b)に示す溶接鋼管を製造する。その後、粗形状を成形するために、図16(c)のように溶接鋼管を金型で挟み込み、鋼管内に内圧を40MPa以上、軸押量を50mm以上負荷することが望ましい。次に形状の細部を成形するために、軸押量を負荷せず100MPa以上の内圧のみを負荷することが望ましい。これにより、図16(d)に示す薄肉中空柱状部材が形成される。
【0065】
別の成形方法として、ロールフォーミングを利用してもよい。まず、図17(a)に示す断面形状の板材を用意し、図17(b)に示す溶接鋼管を製造する。そして、複数のロールにより図17(c)のように、最終的に溶接鋼管にロール23およびロール24により2つの凹み部25とコーナー部26を成形する。角部の曲率の制御は、図15と同様である。
【0066】
また局所的な弱部を低減するため、熱影響部が少ないレーザー溶接を用いている溶接鋼管が望ましい。
【0067】
次に、上記発明(7)について説明する。
図7(a)で示される断面形状を持つ薄肉中空柱状部材を製作する場合、まず、図18(a)に示す断面形状の板材を用意し、図18(b)のように2つの曲げ部32の間に1つの凹み部31をプレスにより成形する。角部の曲率の制御は図14と同様である。プレス成形品の両端には2つのフランジ部33を有するようにする。そして、図18(c)に示すように、同成形工程により成形した2つの部材のフランジ部33を重ね合わせ、溶接を行う。また凹み部の総数および位置はプレス成形に使用する型の変更、またはカムを組み合わせることで調節可能である。
【0068】
プレス時のパッド背圧およびプレス荷重は材質および部材寸法により異なるが、JSC590Y鋼を用いて図7(a)で示した薄肉中空柱状部材の場合、プレス荷重は100t以上、パッド背圧は10t以上とすることが望ましい。接合においては、本成形部材を衝撃吸収部材として利用する場合、局所的な弱部を低減するため、熱影響部が少ないレーザー溶接を用いることが望ましい。
【0069】
次に、上記発明(8)について説明する。
図7(a)で示される断面形状を持つ薄肉中空柱状部材を製作する場合、まず図19(a)に示す断面形状のシームレスパイプを用意し、図19(b)に示すように、シームレスパイプを型の中に挿入し、ハイドロフォームにより拡管し、図19(c)に示すように、2つの凹み部41および4つの曲げ部42を成形する。凹み部の総数および位置は、ハイドロフォームに使用する型を変更することで調節することが可能である。角部の曲率の制御は図16と同様である。
【0070】
ハイドロフォーム時の軸押量および内圧は材質および部材寸法により異なるが、JSC590Y鋼を用いて図7(a)で示した薄肉中空柱状部材を成形する場合、まず、粗形状を成形するために、図19(b)のように溶接鋼管を金型で挟み込み、鋼管内に内圧を40MPa以上、軸押量を50mm以上負荷することが望ましい。次に形状の細部を成形するために、軸押量を負荷せず100MPa以上の内圧のみを負荷することが望ましい。
【0071】
別の成形方法として、ロールフォーミングを利用してもよい。まず、図20(a)に示す断面形状のシームレスパイプを用意し、図20(b)に示すように、シームレスパイプを複数のロールに挿入し、図20(c)のように、最終的に溶接鋼管をロール43およびロール44により2つの凹み部45とコーナー部46を成形する。角部の曲率の制御は図15と同様である。
【0072】
また、凹み部3の形状は、凸部4の肩部端点5と共有する角部の内角を90°以上とすること、凹み部4の深さは少なくとも板厚の5倍以上とすることがエネルギー吸収量の向上のために望ましい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。金属製薄肉中空柱状部材の設置空間として縦方向長さと横方向長さがそれぞれ100mmおよび60mmである略四角形断面を持つ部材が設置可能であり、また柱状部材の少なくともひとつの側面に凹凸のないことを設置可能条件とし、その範囲内での全体座屈の発生し難い断面形状を探索した。材料として、JSC590Yを用いた。例えば、本発明例として、断面形状が図7(a)に示されるような部材を1枚の鋼板からプレス加工して、端部同士を溶接して製造した。軸方向長さは400mmの中空柱状部材、板厚は1.6mmである。すなわちπ/t=200に相当する。また、すべての角部には0.25mm−1の曲率が付与されている。肩部端点の内角は全て110度とした。また、凹み部の深さは10mmとした。図7の部材のC値は6.66であり(=12(33.3/60)、本発明の範囲内である。剛体壁により100mmだけ軸方向かつ圧縮方向につぶし、その吸収エネルギー量を調べた。
【0074】
図7(b)は断面形状が図7(a)である中空柱状部材のFEMメッシュ分割図である。図7(c)は最終的な変形状況の把握のため軸方向かつ圧縮方向に200mmつぶした後の変形図である。図7(c)から、凹み部を図7(a)のように付与した断面形状では蛇腹状に変形してつぶれていることが確認できた。
【0075】
またC値が2、12、22、28と異なる他の形状においても同様の解析を行い、吸収エネルギー量および最小断面二次半径を比較した。略四角形の寸法、コーナー部の曲率半径、肩部端点の内角、板厚は、全て図7の部材と同一とした。すなわち、C値は異なる断面形状であるが、全てπ/t=200(=(2・160/1.6))である。その結果を図8および図9に示す。C値が6.66〜28となる断面形状を有する中空柱状部材は、C値が2である中空柱状部材と比較し、図8から耐全体座屈性が比較的優れ、図9からエネルギー吸収量がより大きいものであることが確認できた。
【0076】
さらにC値がそれぞれ2、7、12、22、28であり、略四角形寸法、コーナー部の曲率半径、肩部端点の内角は同一であるが、板厚を4mm、8mm(それぞれπ/t=80=2・160/4、π/t=40=2・160/8に相当)と変更した部材に対して、同様の解析を行いC値の違いによる最小断面二次半径およびエネルギー吸収量の変化を調査した。その結果を図21、図22、図23、図24に示す。
【0077】
図21、図22はそれぞれπ/t=80である部材に対するC値の違いによる最小断面二次半径およびエネルギー吸収量の比較図、図23、図24はそれぞれπ/t=40である部材に対するC値の違いによる最小断面二次半径およびエネルギー吸収量の比較図である。以上の結果からπ/tの異なる薄肉中空柱状部材に対しても、多少の差異はあるが最小断面二次半径およびエネルギー吸収量は、C値の違いにより図8、図9と同様の傾向が見られ、C値=4〜40を満たす部材は全体座屈が発生し難く、かつ荷重負荷による入力エネルギーの吸収能が高いことが確認できた。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一例である中空柱状部材の軸方向の一部における断面形状を模式的に示す説明図である。
【図2】断面の縦方向長さと横方向長さがともに80mmである略四角形のコーナー部の有無による最小断面二次モーメントIminの変化を示す説明図である。
【図3】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mmである略四角形のコーナー部の有無による最小断面二次モーメントIminの変化を示す説明図である。
【図4】断面の縦方向長さと横方向長さがともに80mmである薄肉中空柱状部材のC値と最小断面二次半径rminの関係を示すグラフである。
【図5】断面の縦方向長さと横方向長さがともに80mmである薄肉中空柱状部材のC値とエネルギー吸収量Eの関係を示すグラフである。
【図6】最小辺長Lmin、最大辺長Lmaxおよび断面における総稜線数Nを示す説明図である。
【図7】(a)は本発明例の一つである断面形状を示す説明図であり、(b)はエネルギー吸収量を算出するため用いたFEMメッシュ分割図であり、(c)は200mmだけ軸方向かつ圧縮方向につぶしたときの変形図である。
【図8】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が1.6mm(すなわちπ/t=200)である薄肉中空柱状部材のC値と最小断面二次半径rminの関係を示すグラフである。
【図9】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が1.6mm(すなわちπ/t=200)である薄肉中空柱状部材のC値とエネルギー吸収量Eの関係を示すグラフである。
【図10】本発明例の一つである2箇所のコーナー部の外側にそれぞれフランジ部を有する断面形状の詳細の説明図である。
【図11】本発明例の一つである2辺の間の外側にそれぞれフランジ部を有する断面形状の詳細の説明図である。
【図12】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mmである断面形状で、フランジ部の有無および位置の違いによる最小断面二次半径rminの変化を示す説明図である。
【図13】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mmである断面形状で、フランジ部の有無および位置の違いによるエネルギー吸収量Eの変化を示す説明図である。
【図14】1つの板材を曲げ、又はプレス加工により成形し、端部同士をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図15】1つの板材をロールフォーミングにより成形し、端部同士をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図16】1つの板材を曲げ、又はプレス加工により成形し、端部同士を溶接し、ハイドロフォームで再成形して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図17】1つの板材を曲げ、又はプレス加工により成形し、端部同士を溶接し、ロールフォーミングで再成形して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図18】2つの板材を曲げ、又はプレス加工により成形し、フランジ部をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接、又は接着で接合して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図19】シームレスパイプをハイドロフォームで成形して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図20】シームレスパイプをロールフォーミングで成形して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図21】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が4.0mm(すなわちπ/t=80)である薄肉中空柱状部材のC値と最小断面二次半径rminの関係を示すグラフである。
【図22】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が8.0mm(すなわちπ/t=80)である薄肉中空柱状部材のC値とエネルギー吸収量Eの関係を示すグラフである。
【図23】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が8.0mm(すなわちπ/t=40)である薄肉中空柱状部材のC値と最小断面二次半径rminの関係を示すグラフである。
【図24】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が8.0mm(すなわちπ/t=40)である薄肉中空柱状部材のC値とエネルギー吸収量Eの関係を示すグラフである。
【図25】従来技術である凸部を形成した薄肉中空柱状部材の凸部の外周を延長した直線同士の交点上に位置するコーナー部Aの説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1 金属製中空柱状部材
2 コーナー部
3 凹み部
4 部
5 肩部端点
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製中空柱状部材及びその製造方法に関し、特に、筐体を構成するフレーム部材として使用される、鋼、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属製の薄肉中空柱状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料高・原料高に伴い製造の現場ではコスト削減が早急に要求されている。しかし、コスト削減により製品の性能が悪くなることは、メーカーの信用失墜につながる可能性がある。特に筐体を構成するフレーム部材の性能悪化は安全性の面で避けなければならない。自動車分野では衝突安全性の維持と燃費向上のため、車体に搭載されるフレーム部材に超ハイテンを適用する例が多くなっている。すなわち、材料の質の変更によりコストの削減が図られている。
【0003】
製品の質を維持または向上させ、かつコスト削減を可能とする技術として、上記の材料そのものの変更によるコスト削減方法があるが、新材料の開発は長い時間と莫大な開発コストを要する。また他のコスト削減方法として、部材形状を最適化することが考えられる。この手法は開発期間と開発コストの面で優れた手法であり、過去に様々な検討が行われている。
【0004】
本発明に関連する先行技術として、特許文献1には、軸方向の少なくとも一部における横断面形状が複数の頂点を有する閉断面であって、内部へ向かって凹んだ溝部を形成する衝撃吸収部材が開示されている。
【0005】
また、特許文献2に中空矩形断面を有するアルミニウム合金押出部材からなるエネルギー吸収部材において、壁面部の外側に矩形断面の凸部を有する部材が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、略矩形断面形状をなす自動車のフロントサイドフレーム構造として、側面に軸線方向に延在する、内側に凸状となるビードや、外側に凸状となるビードが形成されている構造が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−207724号公報
【特許文献2】特開2002−12165号公報
【特許文献3】特開平8−108863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献を含めても、具体的かつ即座に設計に適用できる利便性の高い設計指針は今まで開示されていない。エネルギー吸収能に優れ、かつ局所的な折れ曲がりによる全体座屈が発生し難い断面形状を統計的にまとめた例はなく、設計者の経験と部材レベルの検証の繰り返しという、人材の育成に大きく依存し、かつ時間および開発コストを多くかけ、様々な設計の現場で品質に大きな差が出ているのが現状である。したがって設計者の経験に依存する度合いを低減させ、無駄なコストを消費しないような設計指針は、高品質保持および開発期間短縮を促し、結果として開発競争力およびその持続力を高める結果となりうる。
【0009】
ここで、全体座屈とは、柱状部材が十分に蛇腹状に変形せず、局所的に折れ曲がる現象を指すこととする。一般的にエネルギー吸収能と局所的な折れ曲がりによる全体座屈に対する耐性とは相反する関係にあり、そもそもこの2つを両立させることが難しい。エネルギー吸収能の向上を図れば全体座屈がし易くなり、全体座屈を防ぐため曲げ剛性を高めようとすれば、エネルギー吸収能が低減する。そのため、設計者にはエネルギー吸収能と耐全体座屈性のバランスがとれた設計が要求される。
【0010】
以上の点から、特許文献1に記載された部材は、エネルギー吸収能を高めるために耐全体座屈性が大きく低減するという問題がある。なるほど特許文献1に示される部材は、荷重がある範囲の方向に継続的に負荷するようなとき、優れた衝撃吸収能(以下、エネルギー吸収能と称する)を発揮する可能性がある。
【0011】
しかし、部材の変形に伴い負荷された荷重方向は複雑となるのが普通であり、曲げ剛性の低い断面構造は容易に全体座屈を引き起こす。特許文献1に記載された発明は「蛇腹状に座屈することによって所定の衝撃吸収能を確保すること」(特許文献1の段落番号0032)を課題としているが、特許文献1の図1に記載されているように、コーナー部をカットして八角形断面を基本とする形状は、曲げ剛性を大きく低減させるため、小さな座屈を繰り返すような蛇腹状変形をせず折れ曲がりによる全体座屈を引き起こしやすい。そのため、実際のエネルギー吸収能は想定されるエネルギー吸収能より極端に低くなるおそれがある。
【0012】
また、特許文献1の図17、図18、図19(a)等には、コーナー部(角部、以下同じ)を有する四角形断面の形状も記載されているが、コーナー部の曲率や、寸法が明らかではなく、開示されている図のコーナー部は、図の通り内角が直角で成形されていると仮定すると、加工による板減を引き起こしやすく結果的に弱部になりやすい。同様に多角形で成形された部材は各角部において成形時に局所的な板減を引き起こすため、容易に破断する虞がある。
【0013】
加えて、特許文献1の請求項5で規定されている辺長はかなり広い範囲であり、エネルギー吸収能に大きなばらつきを含む。例えば、四角形状で、それぞれの辺で凹み部が中央に1つ存在し、かつ厚さt=1.6[mm]とすると、請求項5の規定によれば、凹み部の幅W1は6.4(=4×1.6)<W1<104(=65×1.6)となり、残余領域のそれぞれの幅Xi(i=1,2)は6.4<Xi<104のうちから選択できることになる。そのうちX1=X2=100[mm]、W1=10[mm]を採用した場合、即ち、4辺の各辺で窪み部の幅が10mmで、残余領域のそれぞれの幅が100mmとなる場合には、コーナー部の曲率が極めて大きい略四角形であるとしても、後述の本発明で規定するC値は2となり(=20(10/100))、エネルギー吸収能が極めて低い部材となる。このように、極端に断面形状を非対称化させると、さらに蛇腹状に変形せずに折れ曲がりによる全体座屈を引き起こしやすくなる虞がある。
【0014】
特許文献2は、中空矩形断面の辺上に1つないし複数の凸部を有するものであり、凸部形成でコーナー部を増やすことにより部材のエネルギー吸収量の向上を図っている。しかし、凸部を形成した薄肉中空柱状部材は、凸部の外周を延長した直線同士の交点上に図25の符号Aに示すようなコーナー部を有さないため、後述の図2で示すように、コーナー部を有さない部材の場合、曲げ剛性が大きく低減し、小さな座屈を繰り返すような蛇腹状変形をせず折れ曲がりによる全体座屈を引き起こしやすい。そのため荷重の負荷方向によっては、実際のエネルギー吸収能は想定されるエネルギー吸収能より極端に低くなるおそれがある。
【0015】
特許文献3は、本発明と同様に略四角形の辺上に1つないし複数の凹み部を有するものである。しかし、特許文献3は特許文献1と同様に耐座屈性を弱めることでエネルギー吸収能を高めようとするものであり、かつ明確な設計指針が与えられていないため、例えばフレーム部材の中央に局所的にのみ凹み部を設けるような、中央からの折れ曲がりによる全体的な座屈を容易に引き起こすおそれのある形状も多く含んでおり、目的とは逆にエネルギー吸収能を低下させるおそれがある。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、様々な薄肉断面形状における変形によるエネルギー吸収能および耐全体座屈性の両立を図り、エネルギー吸収能に優れ、かつ座屈し難い薄肉中空柱状部材の設計指針を提示すること、並びに金属製中空柱状部材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的に従い、本発明者らは断面形状を様々に変化させエネルギー吸収能と耐全体座屈性を調査した結果、四隅にコーナー部を有する中空部材が折れ曲がりに対する抵抗力に優れること、またその形状は閉断面の最小辺長・最大辺長および総稜線数の関数(C値)が、エネルギー吸収量および座屈のし易さの指標である最小断面二次半径に相関することを見出した。すなわちC値はエネルギー吸収能および耐全体座屈性に優れた薄肉中空柱状部材の設計指針になりうることを知見した。したがって、構造内部材の設置空間が把握できていれば、C値により最良の部材形状が探索可能となる。なお、断面形状は軸方向に一定である必要はなく、軸方向の一部にC値を満たさない箇所があってもよい。ただしその箇所は、曲げに対し構造的な弱部になる可能性があるため、曲げ剛性の高い形状である、凹み部のない断面形状で形成されることが望ましい。
【0018】
即ち、上記課題を解決するため、本発明の要旨は以下の通りである。
発明(1)
四隅にそれぞれ曲率を有するコーナー部を有し、前記コーナー部を含んで閉断面を形成する略四角形の断面形状からなる中空の金属製中空柱状部材であって、4辺のうちの少なくとも一辺以上に1つないし複数の凹み部を有し、その断面内の最小辺長Lminと最大辺長Lmaxとの比Lmin/Lmaxに、その断面における総稜線数Nを乗じて得られるC値(=N(Lmin/Lmax))が4以上40以下であることを特徴とする、金属製中空柱状部材。
但し、前記辺長、前記総稜線数は以下により定義されるものとする。
辺長:
一辺の中間に位置する凹み部の辺長は、隣接した凸部の肩部端点を直線で結んだ距離とする。
一辺の端部にある凸部の辺長は、当該凸部の端部と反対側に位置する肩部端点から端部までの直線距離とする。
一辺の中間に位置する凸部の辺長は、凸部の両側の肩部端点間の直線距離とする。
総稜線数:
閉断面内で曲率を取り除いた各頂点を直線で結んだときの直線の総数。
【0019】
発明(2)
発明(1)において、閉断面の全周長をπとし、部材厚をtとしたときの比π/tが20以上であることを特徴とする金属製中空柱状部材。
【0020】
発明(3)
発明(1)又は(2)において、2箇所のコーナー部の外側又は対向する2辺の間の外側に、それぞれフランジ部を有することを特徴とする金属製中空柱状部材。
【0021】
発明(4)
発明(1)〜(3)の何れかにおいて、用途が自動車用であることを特徴とする金属製中空柱状部材。
【0022】
発明(5)
発明(1)又は(2)の金属製中空柱状部材の製造方法であって、1つの板材を曲げ加工、プレス加工又はロールフォーミングにより成形し、端部同士をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合することを特徴とする金属製中空柱状部材の製造方法。
【0023】
発明(6)
発明(1)又は(2)の金属製中空柱状部材の製造方法であって、1つの板材を曲げ加工又はプレス加工により成形し、端部同士を溶接し、ハイドロフォーム又はロールフォーミングで再成形することを特徴とする金属製中空柱状部材の製造方法。
【0024】
発明(7)
発明(3)の金属製中空柱状部材の製造方法であって、2つの板材を曲げ又はプレス加工により成形し、フランジ部をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合したことを特徴とする金属製中空柱状部材の製造方法。
【0025】
発明(8)
発明(1)又は(2)の金属製中空柱状部材の製造方法であって、シームレスパイプをハイドロフォーム又はロールフォーミングで成形することを特徴とする金属製中空柱状部材の製造方法。
【0026】
なお、本発明で、略四角形とは、窪み部を除く各辺を延長した直線の交点で形成される図形が四角形であることを言う。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、所定の設置可能空間内で、荷重方向によらず折れ曲がりによる全体座屈を引き起こし難く、かつエネルギー吸収能に優れた最良の断面形状を有する金属製中空柱状部材及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の薄肉中空柱状部材を実施するための好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
まず、上記発明(1)について説明する。
第一に、薄肉金属製中空柱状部材に荷重が負荷された場合、エネルギー吸収能の観点から、折れ曲がりによる全体座屈は避けなければならない。軸方向に荷重が加わる場合でも、変形により荷重方向が複雑化し、一定して軸方向に荷重が加わることはないので、折れ曲がりによる全体座屈を防ぐためには、曲げ剛性、すなわち最小断面二次モーメントの大きさが重要となる。図2は縦の長さが80mm、横の長さが80mm、図3は縦の長さが60mm、横の長さが100mmの四角形内で、種々の断面形状とそれらの最小断面二次モーメントを比較したものである。図2、図3で示した断面形状を有する6つの薄肉金属製中空柱状部材は、ともに材料としてJSC590Yを用いた。板厚はともに1.6mmである。図中に示された形状は各断面形状の略図である。また図中の矢印はそれぞれの形状と最小断面二次モーメントとが対応している。図から四角形内のコーナー部に凹み部のある断面形状(図2、図3のそれぞれ右側の四角形)は他の断面形状に比べ、極端に最小断面二次モーメントが低いことがわかる。すなわち、折れ曲がりによる全体座屈を防ぐためには、四隅にそれぞれコーナー部を有し、前記コーナー部を含んで閉断面を形成する略四角形が最良の断面形状であると考えられる。
【0030】
第二に、本発明者らは略四角形で様々な断面形状における最小断面二次半径を検討した。最小断面二次半径rmin[M]は、最小断面二次モーメントImin[M4]と断面積A[M2]により下式で表される幾何学的変数である。
【0031】
【数1】
【0032】
最小断面二次半径rmin[M]は、一般的に耐座屈性を表す指標であるが、最小断面二次モーメントを断面積で除したものであるため、板厚の影響を除いた曲げ剛性を表す指標と捉えることができる。すなわち、最小断面二次半径rminは全体座屈の指標となり、最小断面二次半径rminが大きい断面形状を有する部材は全体座屈が発生し難い部材であるといえる。
【0033】
図4に各断面形状に対するC値と最小断面二次半径rminを比較した結果を示す。図4は、略四角形の縦の長さが80mm、横の長さが80mmの場合の結果である。図からC値の増加とともに最小断面二次半径rminが減少していることが確認できる。特にC値が3程度と小さい値である場合、最小断面二次半径rminの変動が大きい。またC値がある程度大きくなると最小断面二次半径rminの変動が小さくなってくることが確認できる。
【0034】
ここで、C値は本発明者らが新たに発明した設計指針値であり、上述したように、中空の金属製柱状部材の断面内の最小辺長Lmin[M]と最大辺長Lmax[M]との比Lmin/Lmaxに、その断面における総稜線数Nを乗じて得られた値である。一般に総稜線数Nをある程度大きくすると吸収エネルギー量は向上する傾向があるが、凹み部の位置、総数、大きさによっても吸収エネルギー量は大きくばらつくため、総稜線数Nだけでは薄肉中空柱状部材の性能を的確に評価することは難しい。そこで、本発明者らは最小辺長Lmin[M]と最大辺長Lmax[M]との比Lmin/Lmaxを総稜線数Nに乗じることにより、総稜線数の影響だけでなく、凹み部の位置、総数、大きさの影響をも考慮できるような設計指針値Cを発明した。
【0035】
第三に、本発明者らは略四角形で様々な断面形状における吸収エネルギー量をFEMに基づく数値解析により検討した。FEMで用いたモデルは長手方向長さが400mmの鋼製薄肉中空柱状部材であり、剛体壁により軸方向かつ圧縮方向に100mmの強制変位を与えた。複数の断面形状において同様の解析を行い、それぞれの断面形状に対するエネルギー吸収量を調べた。図5に各断面形状に対するC値と吸収エネルギーE[J]を比較したものを示す。図5は略四角形の縦の長さが80mm、横の長さが80mmの場合の結果である。図からC値の増加とともに吸収エネルギーEが増加していることが確認できる。またC値が大きくなるにつれ吸収エネルギーEの上昇が飽和することが確認できる。
【0036】
これらの知見から、曲げ剛性の高い略四角形状の金属製薄肉中空柱状部材の性能は、C値により良好にまとめることができることを知見した。また、本発明者らは、鋼製だけでなく、アルミニウム、ステンレス、チタン等においてもC値が4〜40の薄肉中空柱状部材がエネルギー吸収能および耐全体座屈性に優れた部材であることを見出した。C値が4未満である場合、エネルギー吸収能が急激に減少するため構造体の筐体を構成するフレーム材として機能しなくなるおそれがある。またC値が40超である部材は、総稜線数が多い部材であり製作が難しく、製作コストも増大する。さらにエネルギー吸収量の増加量および最小断面二次半径の減少量ともに微小であるため、利点が見出せないC値の領域である。C値が4に近いほど吸収エネルギーが比較的大きく、耐全体座屈性が非常に高い部材を意味する。逆にC値が40に近いほど吸収エネルギーが非常に大きく、耐全体座屈性が比較的大きい部材を意味する。従って、C値は4以上とし、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上とするのが好適である。また、C値の上限は40以下とし、好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下とするのが好適である。
【0037】
設置場所により適切にC値を考慮した部材を設置することが望まれる。また、設計の際に基本となる設置できる空間であるが、薄肉中空柱状部材のエネルギー吸収量および耐全体座屈性を高めるため、可能な限りその略四角形の面積を1500mm2以上に大きくすること、および正方形に近い形状とすること、つまり、略四角形の2辺の比を1〜1.2とすることが望ましい。
【0038】
さらに、断面形状のコーナー部においては曲率を付与することで、急激な板減を避けることができるので、2.5mm−1以下とすることが好ましく、耐全体座屈性を向上させるために0.02mm−1以上とすることが好ましい。
【0039】
なお、C値は最小辺長Lminと最大辺長Lmaxとの比Lmin/Lmaxに、その閉断面における総稜線数Nを乗じた値であるが、その詳細を図6に示す。各辺長は、略四角形のコーナー部2および凹み部3の形成により生じた凸部4において曲率を取り除いたときの形状を元に算出する。端部にある凸部4については凸部の肩部端点5から端部6までを結んだ直線の長さを辺長とし、凹み部3については隣接した凸部4の肩部端点5を直線で結んだ長さを辺長とする。また、中間にある凸部の場合(図示しない)は凸部の肩部端点間の直線距離とする。端点5および端点7に曲率を付与するときは、その曲率半径を0mmとしたときの形状を元に最小辺長Lminと最大辺長Lmaxを算出する。これにより閉断面内で最短のものをLmin[M]、最長のものをLmax[M]とする。また、総稜線数は各頂点を直線で結んだときの直線の総数とする。図中の丸囲いの数字はある一辺中の稜線を左端から数えたときの例であり、図6の場合、略四角形の1辺について、稜線数は5となるので、残る3辺も同じ形状であれば、総稜線数は20となる。
【0040】
次に、上記発明(2)について説明する。
第一に耐全体座屈性を向上させるために、略四角形の一辺の端部に付与される曲率半径Rは大きすぎてはならない。第二に角部の急激な板減を避けるため略四角形の一辺の端部に付与される曲率半径Rは小さすぎてはならない。そこで略四角形の一辺の長さをn分割した長さが曲率半径Rに相当するとすると、略四角形における閉断面の全周長πはおよそ以下の(1)式で表すことができる。
【0041】
【数2】
【0042】
なお、ここで閉断面の全周長とは、凹み部を有した断面形状であった場合でも略四角形の全周長を指すものとする(例えば、前述の図2の場合、π=320(=4×80)であり、図3の場合、π=320(=2×(60+100))である)。(1)式の両辺を厚さtで割ると、以下の(2)式が得られる。
【0043】
【数3】
【0044】
また、曲げにより発生する最大ひずみεfは、以下の(3)式で表される。
【0045】
【数4】
【0046】
よって略四角形における閉断面の全周長πと板厚tとの比は、(2)式および(3)式より、以下の(4)式で記述することができる。
【数5】
【0047】
なお、上式は耐全体座屈性のためn>10、また急激な板減を防ぐためεf<1の2つの条件を高機能な金属製中空柱状部材の必要条件としている。
【0048】
以上より、全周長πと板厚tとの比π/tは、耐全体座屈性とエネルギー吸収性能をより向上させるため20以上とし、好ましくは80以上、更に好ましくは160以上とするのが好適である。
【0049】
次に、上記(3)について説明する。
C値による設計指針はフランジ部を有する薄肉中空柱状部材においても適用可能である。本発明者らは、図7(a)の断面形状にフランジ部を付与した2種類の薄肉中空柱状部材に対しエネルギー吸収量および最小断面二次半径を調査した。それぞれの断面形状の寸法を、図10、図11に示す。両部材とも鋼製(JSC590Y鋼)とし、長さは400mm、厚さtは1.6mm、および全角部に0.25mm−1の曲率が付与されている。図7(a)の部材の全角部の曲率も0.25mm−1である。剛体壁により軸方向かつ圧縮方向に100mmの強制変位を与えたときのエネルギー吸収量およびその部材の最小断面二次半径を、フランジ部を有さない図7(a)で示される薄肉中空柱状部材と、上記図10と図11で示される薄肉中空柱状部材のそれぞれにおいて比較した。その結果を図12、図13に示す。
【0050】
図12および図13は、各断面形状における最小断面二次半径および吸収エネルギー量を比較したものである。これらの実施例から、最小断面二次半径および吸収エネルギー量は、フランジ部の有無に関わらず、C値が4〜40の範囲内で想定される範囲内にあり、フランジ部を付与した場合でもC値は良好な設計指針を与えることがわかる。
【0051】
図10に示されるフランジを略四角形の隣り合う角部に付与した場合、フランジ部を持たない形状に比べてエネルギー吸収量が若干高く、また若干最小断面二次半径も大きい。したがってフランジ部を略四角形の隣り合う角部に付与した形状が最良と考えられるが、フランジ部を大きくしすぎるとフランジ部の高い曲げ剛性のため、断面内の曲げ剛性が極端に不均一になり全体座屈を引き起こしやすくなる。
【0052】
図11に示されるフランジを略四角形の対向する二辺の外側に付与した場合、フランジ部を持たない形状に比べて、最小断面二次半径は若干低下するもののエネルギー吸収量は大きく向上する。これは、断面内の曲げ剛性が比較的対称であること、最小断面二次半径が小さくなり蛇腹状に変形したことによりエネルギー吸収量が大きくなったと考えられる。フランジ部を付与することによりエネルギー吸収量が向上したが、フランジ部が大きすぎる場合、小さな座屈を繰り返すような蛇腹状変形をせず折れ曲がりによる全体座屈を引き起こしやすい。
【0053】
また、フランジ部が小さすぎると接合が困難となり接合部が弱くなるおそれがある。上記の知見に従い、接合部が弱化することを防ぐためフランジ部の長さは4t以上、全体座屈を起こし難くするためフランジ部の長さは12t以下とすることが望ましい。
【0054】
次に、上記発明(4)について説明する。
自動車分野では、衝突安全性能のいっそうの向上化、燃費向上のためのいっそうの車体軽量化、グローバル展開に向けた多くの車種の開発期間短縮といった多く課題に対し、多くの設計者、研究者が取り組んでいる。
【0055】
衝突安全性能関係において、日本では国連統一基準(ECE規則)R94のオフセット衝突時の乗員保護と同等の基準が制定され、2007年の新型乗用車から適用になっている。また2.5t以下の商用車にも適用が拡大されている。米国では2009年からFMVSS214に32km/hポール側突の追加が計画されている。FMVSS301が改正され80km/hオフセット後突が2006年から段階的に適用される。
【0056】
燃費関係において、日本ではエネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)の改正により、2015年度を目標達成年度とした「重量車燃費基準」が策定され、2006年4月から施行される。米国では、連邦は2008−2011年式の小型トラックのCAFEシステムに関する改正案を発表した。連邦・カリフォルニア州両方において、次期規制強化が議論されている。
【0057】
グローバル展開に関しては、自動車の輸出量は近年増加の一途をたどっており、2001年と2005年を比較しても約22%と急激に増加している。日本のメーカーのロシア進出等、今後海外生産が国内生産を上回ることが予想される。
【0058】
以上のような背景から、急ピッチで進む設計期間の短縮、車体軽量化、衝突安全性の一層の向上のために、本発明は、設計者の負担を減らし、上記課題を早急に解決する有効なツールとなると考えられる。自動車の衝突時に動的な荷重が負荷される部材は数多くあるが、特に前面衝突時の衝突エネルギー吸収に大きく寄与するフロントサイドメンバ、または後面衝突時の衝突エネルギー吸収に大きく寄与するリアサイドメンバの形状決定時に本発明は大きく貢献できると考えられる。
【0059】
次に、上記発明(5)について説明する。
図7(a)で示される断面形状を持つ薄肉中空柱状部材を製作する場合、まず、図14(a)に示す断面形状の板材を用意し、図14(b)のように2つの凹み部11および両端に曲げ部12をプレスにより形成する。角部の曲率はプレス荷重や、必要によりしわ押え荷重を制御することにより、適正範囲に制御することができる。次に凹み部11に挟まれた中央平面部10を上下に挟み込むように冶具により固定し、図14(c)に示すように、冶具の両端に曲げ部14を再びプレスにより成形する。次に、図14(d)に示すように、上記工程により重なった板材の両端部13を溶接により接合し所定の形状を形成する。また凹み部の総数および位置はプレス成形に使用する型の変更、またはカムを組み合わせることで調節可能である。
【0060】
プレス時のパッド背圧およびプレス荷重は材質および部材寸法により異なるが、JSC590Y鋼を用いて図7(a)で示した薄肉中空柱状部材の場合、プレス荷重は50t以上、パッド背圧は5t以上とすることが望ましい。また次工程である曲げ工程も同様にプレス荷重は100t以上、パッド背圧は10t以上が好適である。なお、成形工程を容易にするため、冶具の両端の固定部は脱着可能とし成形部材は長手方向に引き抜くことで取り出しを可能とすることが望ましい。
【0061】
別の成形方法として、ロールフォーミングを利用してもよい。まず、図15(a)に示す断面形状の板材を用意し、複数のロールにより図15(b)のように、最終的に一つの板材をロール15およびロール16により2つの凹み部17とコーナー部18を成形する。角部の曲率はロールの圧下荷重を制御することにより、適正範囲に制御することが可能である。次に図15(c)に示すように、上記工程により重なった板材の両端部19を溶接により接合し所定の形状を形成する。
【0062】
接合においては、本成形部材を衝撃吸収部材として利用する場合、局所的な弱部を低減するため、熱影響部が少ないレーザー溶接を用いることが望ましい。
【0063】
次に、上記発明(6)について説明する。
図7(a)で示される断面形状を持つ薄肉中空柱状部材を製作する場合、溶接鋼管をハイドロフォームにより拡管し、2つの凹み部21および4つの曲げ部22を成形する。角部の曲率はハイドロフォームの金型、媒体の圧力を制御することにより、適正範囲に制御することが可能である。凹み部の総数および位置は、ハイドロフォームに使用する型を変更することで調節することが可能である。
【0064】
ハイドロフォーム時の軸押量および内圧は材質および部材寸法により異なるが、JSC590Y鋼を用いて図7(a)で示した薄肉中空柱状部材を成形する場合、まず、図16(a)に示す断面形状の板材を用意し、図16(b)に示す溶接鋼管を製造する。その後、粗形状を成形するために、図16(c)のように溶接鋼管を金型で挟み込み、鋼管内に内圧を40MPa以上、軸押量を50mm以上負荷することが望ましい。次に形状の細部を成形するために、軸押量を負荷せず100MPa以上の内圧のみを負荷することが望ましい。これにより、図16(d)に示す薄肉中空柱状部材が形成される。
【0065】
別の成形方法として、ロールフォーミングを利用してもよい。まず、図17(a)に示す断面形状の板材を用意し、図17(b)に示す溶接鋼管を製造する。そして、複数のロールにより図17(c)のように、最終的に溶接鋼管にロール23およびロール24により2つの凹み部25とコーナー部26を成形する。角部の曲率の制御は、図15と同様である。
【0066】
また局所的な弱部を低減するため、熱影響部が少ないレーザー溶接を用いている溶接鋼管が望ましい。
【0067】
次に、上記発明(7)について説明する。
図7(a)で示される断面形状を持つ薄肉中空柱状部材を製作する場合、まず、図18(a)に示す断面形状の板材を用意し、図18(b)のように2つの曲げ部32の間に1つの凹み部31をプレスにより成形する。角部の曲率の制御は図14と同様である。プレス成形品の両端には2つのフランジ部33を有するようにする。そして、図18(c)に示すように、同成形工程により成形した2つの部材のフランジ部33を重ね合わせ、溶接を行う。また凹み部の総数および位置はプレス成形に使用する型の変更、またはカムを組み合わせることで調節可能である。
【0068】
プレス時のパッド背圧およびプレス荷重は材質および部材寸法により異なるが、JSC590Y鋼を用いて図7(a)で示した薄肉中空柱状部材の場合、プレス荷重は100t以上、パッド背圧は10t以上とすることが望ましい。接合においては、本成形部材を衝撃吸収部材として利用する場合、局所的な弱部を低減するため、熱影響部が少ないレーザー溶接を用いることが望ましい。
【0069】
次に、上記発明(8)について説明する。
図7(a)で示される断面形状を持つ薄肉中空柱状部材を製作する場合、まず図19(a)に示す断面形状のシームレスパイプを用意し、図19(b)に示すように、シームレスパイプを型の中に挿入し、ハイドロフォームにより拡管し、図19(c)に示すように、2つの凹み部41および4つの曲げ部42を成形する。凹み部の総数および位置は、ハイドロフォームに使用する型を変更することで調節することが可能である。角部の曲率の制御は図16と同様である。
【0070】
ハイドロフォーム時の軸押量および内圧は材質および部材寸法により異なるが、JSC590Y鋼を用いて図7(a)で示した薄肉中空柱状部材を成形する場合、まず、粗形状を成形するために、図19(b)のように溶接鋼管を金型で挟み込み、鋼管内に内圧を40MPa以上、軸押量を50mm以上負荷することが望ましい。次に形状の細部を成形するために、軸押量を負荷せず100MPa以上の内圧のみを負荷することが望ましい。
【0071】
別の成形方法として、ロールフォーミングを利用してもよい。まず、図20(a)に示す断面形状のシームレスパイプを用意し、図20(b)に示すように、シームレスパイプを複数のロールに挿入し、図20(c)のように、最終的に溶接鋼管をロール43およびロール44により2つの凹み部45とコーナー部46を成形する。角部の曲率の制御は図15と同様である。
【0072】
また、凹み部3の形状は、凸部4の肩部端点5と共有する角部の内角を90°以上とすること、凹み部4の深さは少なくとも板厚の5倍以上とすることがエネルギー吸収量の向上のために望ましい。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。金属製薄肉中空柱状部材の設置空間として縦方向長さと横方向長さがそれぞれ100mmおよび60mmである略四角形断面を持つ部材が設置可能であり、また柱状部材の少なくともひとつの側面に凹凸のないことを設置可能条件とし、その範囲内での全体座屈の発生し難い断面形状を探索した。材料として、JSC590Yを用いた。例えば、本発明例として、断面形状が図7(a)に示されるような部材を1枚の鋼板からプレス加工して、端部同士を溶接して製造した。軸方向長さは400mmの中空柱状部材、板厚は1.6mmである。すなわちπ/t=200に相当する。また、すべての角部には0.25mm−1の曲率が付与されている。肩部端点の内角は全て110度とした。また、凹み部の深さは10mmとした。図7の部材のC値は6.66であり(=12(33.3/60)、本発明の範囲内である。剛体壁により100mmだけ軸方向かつ圧縮方向につぶし、その吸収エネルギー量を調べた。
【0074】
図7(b)は断面形状が図7(a)である中空柱状部材のFEMメッシュ分割図である。図7(c)は最終的な変形状況の把握のため軸方向かつ圧縮方向に200mmつぶした後の変形図である。図7(c)から、凹み部を図7(a)のように付与した断面形状では蛇腹状に変形してつぶれていることが確認できた。
【0075】
またC値が2、12、22、28と異なる他の形状においても同様の解析を行い、吸収エネルギー量および最小断面二次半径を比較した。略四角形の寸法、コーナー部の曲率半径、肩部端点の内角、板厚は、全て図7の部材と同一とした。すなわち、C値は異なる断面形状であるが、全てπ/t=200(=(2・160/1.6))である。その結果を図8および図9に示す。C値が6.66〜28となる断面形状を有する中空柱状部材は、C値が2である中空柱状部材と比較し、図8から耐全体座屈性が比較的優れ、図9からエネルギー吸収量がより大きいものであることが確認できた。
【0076】
さらにC値がそれぞれ2、7、12、22、28であり、略四角形寸法、コーナー部の曲率半径、肩部端点の内角は同一であるが、板厚を4mm、8mm(それぞれπ/t=80=2・160/4、π/t=40=2・160/8に相当)と変更した部材に対して、同様の解析を行いC値の違いによる最小断面二次半径およびエネルギー吸収量の変化を調査した。その結果を図21、図22、図23、図24に示す。
【0077】
図21、図22はそれぞれπ/t=80である部材に対するC値の違いによる最小断面二次半径およびエネルギー吸収量の比較図、図23、図24はそれぞれπ/t=40である部材に対するC値の違いによる最小断面二次半径およびエネルギー吸収量の比較図である。以上の結果からπ/tの異なる薄肉中空柱状部材に対しても、多少の差異はあるが最小断面二次半径およびエネルギー吸収量は、C値の違いにより図8、図9と同様の傾向が見られ、C値=4〜40を満たす部材は全体座屈が発生し難く、かつ荷重負荷による入力エネルギーの吸収能が高いことが確認できた。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一例である中空柱状部材の軸方向の一部における断面形状を模式的に示す説明図である。
【図2】断面の縦方向長さと横方向長さがともに80mmである略四角形のコーナー部の有無による最小断面二次モーメントIminの変化を示す説明図である。
【図3】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mmである略四角形のコーナー部の有無による最小断面二次モーメントIminの変化を示す説明図である。
【図4】断面の縦方向長さと横方向長さがともに80mmである薄肉中空柱状部材のC値と最小断面二次半径rminの関係を示すグラフである。
【図5】断面の縦方向長さと横方向長さがともに80mmである薄肉中空柱状部材のC値とエネルギー吸収量Eの関係を示すグラフである。
【図6】最小辺長Lmin、最大辺長Lmaxおよび断面における総稜線数Nを示す説明図である。
【図7】(a)は本発明例の一つである断面形状を示す説明図であり、(b)はエネルギー吸収量を算出するため用いたFEMメッシュ分割図であり、(c)は200mmだけ軸方向かつ圧縮方向につぶしたときの変形図である。
【図8】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が1.6mm(すなわちπ/t=200)である薄肉中空柱状部材のC値と最小断面二次半径rminの関係を示すグラフである。
【図9】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が1.6mm(すなわちπ/t=200)である薄肉中空柱状部材のC値とエネルギー吸収量Eの関係を示すグラフである。
【図10】本発明例の一つである2箇所のコーナー部の外側にそれぞれフランジ部を有する断面形状の詳細の説明図である。
【図11】本発明例の一つである2辺の間の外側にそれぞれフランジ部を有する断面形状の詳細の説明図である。
【図12】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mmである断面形状で、フランジ部の有無および位置の違いによる最小断面二次半径rminの変化を示す説明図である。
【図13】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mmである断面形状で、フランジ部の有無および位置の違いによるエネルギー吸収量Eの変化を示す説明図である。
【図14】1つの板材を曲げ、又はプレス加工により成形し、端部同士をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図15】1つの板材をロールフォーミングにより成形し、端部同士をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図16】1つの板材を曲げ、又はプレス加工により成形し、端部同士を溶接し、ハイドロフォームで再成形して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図17】1つの板材を曲げ、又はプレス加工により成形し、端部同士を溶接し、ロールフォーミングで再成形して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図18】2つの板材を曲げ、又はプレス加工により成形し、フランジ部をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接、又は接着で接合して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図19】シームレスパイプをハイドロフォームで成形して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図20】シームレスパイプをロールフォーミングで成形して本発明部材の断面形状を形成する工程を示す説明図である。
【図21】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が4.0mm(すなわちπ/t=80)である薄肉中空柱状部材のC値と最小断面二次半径rminの関係を示すグラフである。
【図22】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が8.0mm(すなわちπ/t=80)である薄肉中空柱状部材のC値とエネルギー吸収量Eの関係を示すグラフである。
【図23】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が8.0mm(すなわちπ/t=40)である薄肉中空柱状部材のC値と最小断面二次半径rminの関係を示すグラフである。
【図24】断面の縦方向長さと横方向長さがそれぞれ60mmおよび100mm、板厚が8.0mm(すなわちπ/t=40)である薄肉中空柱状部材のC値とエネルギー吸収量Eの関係を示すグラフである。
【図25】従来技術である凸部を形成した薄肉中空柱状部材の凸部の外周を延長した直線同士の交点上に位置するコーナー部Aの説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1 金属製中空柱状部材
2 コーナー部
3 凹み部
4 部
5 肩部端点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四隅にそれぞれ曲率を有するコーナー部を有し、前記コーナー部を含んで閉断面を形成する略四角形の断面形状からなる中空の金属製中空柱状部材であって、
4辺のうちの少なくとも一辺以上に1つないし複数の凹み部を有し、その断面内の最小辺長Lminと最大辺長Lmaxとの比Lmin/Lmaxに、その断面における総稜線数Nを乗じて得られるC値(=N(Lmin/Lmax))が4以上40以下であることを特徴とする、金属製中空柱状部材。
但し、前記辺長、前記総稜線数は以下により定義される。
辺長:
一辺の中間に位置する凹み部の辺長は、隣接した凸部の肩部端点を直線で結んだ距離とする。
一辺の端部にある凸部の辺長は、当該凸部の端部と反対側に位置する肩部端点から端部までの直線距離とする。
一辺の中間に位置する凸部の辺長は、凸部の両側の肩部端点間の直線距離とする。
総稜線数:
閉断面内で曲率を取り除いた各頂点を直線で結んだときの直線の総数。
【請求項2】
閉断面の全周長をπとし、部材厚をtとしたときの比π/tが20以上であることを特徴とする、請求項1記載の金属製中空柱状部材。
【請求項3】
2箇所のコーナー部の外側又は対向する2辺の間の外側に、それぞれフランジ部を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の金属製中空柱状部材。
【請求項4】
用途が自動車用であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の金属製中空柱状部材。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の金属製中空柱状部材の製造方法であって、
1つの板材を曲げ加工、プレス加工又はロールフォーミングにより成形し、端部同士をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合することを特徴とする、金属製中空柱状部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の金属製中空柱状部材の製造方法であって、
1つの板材を曲げ加工、又はプレス加工により成形し、端部同士を溶接し、ハイドロフォーム又はロールフォーミングで再成形することを特徴とする、金属製中空柱状部材の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の金属製中空柱状部材の製造方法であって、
2つの板材を曲げ加工又はプレス加工により成形し、フランジ部をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合したことを特徴とする、金属製中空柱状部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の金属製中空柱状部材の製造方法であって、
シームレスパイプをハイドロフォーム又はロールフォーミングで成形することを特徴とする、金属製中空柱状部材の製造方法。
【請求項1】
四隅にそれぞれ曲率を有するコーナー部を有し、前記コーナー部を含んで閉断面を形成する略四角形の断面形状からなる中空の金属製中空柱状部材であって、
4辺のうちの少なくとも一辺以上に1つないし複数の凹み部を有し、その断面内の最小辺長Lminと最大辺長Lmaxとの比Lmin/Lmaxに、その断面における総稜線数Nを乗じて得られるC値(=N(Lmin/Lmax))が4以上40以下であることを特徴とする、金属製中空柱状部材。
但し、前記辺長、前記総稜線数は以下により定義される。
辺長:
一辺の中間に位置する凹み部の辺長は、隣接した凸部の肩部端点を直線で結んだ距離とする。
一辺の端部にある凸部の辺長は、当該凸部の端部と反対側に位置する肩部端点から端部までの直線距離とする。
一辺の中間に位置する凸部の辺長は、凸部の両側の肩部端点間の直線距離とする。
総稜線数:
閉断面内で曲率を取り除いた各頂点を直線で結んだときの直線の総数。
【請求項2】
閉断面の全周長をπとし、部材厚をtとしたときの比π/tが20以上であることを特徴とする、請求項1記載の金属製中空柱状部材。
【請求項3】
2箇所のコーナー部の外側又は対向する2辺の間の外側に、それぞれフランジ部を有することを特徴とする、請求項1又は2記載の金属製中空柱状部材。
【請求項4】
用途が自動車用であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の金属製中空柱状部材。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の金属製中空柱状部材の製造方法であって、
1つの板材を曲げ加工、プレス加工又はロールフォーミングにより成形し、端部同士をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合することを特徴とする、金属製中空柱状部材の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の金属製中空柱状部材の製造方法であって、
1つの板材を曲げ加工、又はプレス加工により成形し、端部同士を溶接し、ハイドロフォーム又はロールフォーミングで再成形することを特徴とする、金属製中空柱状部材の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の金属製中空柱状部材の製造方法であって、
2つの板材を曲げ加工又はプレス加工により成形し、フランジ部をドリルねじ、ボルト、リベット、溶接又は接着で接合したことを特徴とする、金属製中空柱状部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の金属製中空柱状部材の製造方法であって、
シームレスパイプをハイドロフォーム又はロールフォーミングで成形することを特徴とする、金属製中空柱状部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図7】
【公開番号】特開2008−284931(P2008−284931A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129896(P2007−129896)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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